説明

織物と織機

【課題】金網等の金属製の線材の織物は従来から一般工業用に限らず、厨房用品や排水設備等の一般産業用の機能材として幅広く利用されているが、更なる生産拡大のためには新たな用途の開拓が求められている。そのため、装飾用途やその他の用途でも利用できないかと模索されている。
【解決手段】帯状面材、例えば金網材9と金属製の線材5とを縦線3とし、別の金属製の線材11を横線とし、縦線3に横線11を織り込んでなる金属製の織物1。縦線3として帯状面材である金網材が使用されており、斬新で装飾性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物と織機に係り、特に縦線として帯状面材が使用された織物とその織物を容易に製造するための工夫された織機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の線材を使用した織物は、従来から一般工業用に限らず、厨房用品や排水設備等の一般産業用の機能材として幅広く利用されているが、更なる生産拡大のためには新たな用途の開拓が求められている。
そのため、装飾用途でも利用できないかと模索されている。
その一例として、本発明者は、先に、複数枚の金網を重ね合わせて光干渉模様、即ちモアレ模様を呈するもの作り出しているが、装飾材としての利用の途を確立するためには、種類の豊富化が更に求められている。
また、その他の用途も模索されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故、本発明は、上記課題を解決するために、金属製の線材と共に種々の帯状面材を織り込むことで、従来には無い新規な複合織物とその織物を容易に製造するための工夫された織機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、帯状面材とその帯状面材どうしの間に配置された1本以上の金属製の線材とを縦線とし、別の金属製の線材を横線とし、前記縦線に前記横線を織り込んでなる織物である。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載した織物において、線材にはクリンプが付けられていることを特徴とする織物である。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した織物において、横線は平線であることを特徴とする織物である。
【0007】
請求項4の発明は、請求項3に記載した織物において、平線は加工硬化されたものであることを特徴とする織物である。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した織物において、帯状面材は金網材であることを特徴とする織物である。
【0009】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した織物を製織するための織機であって、縦線としての帯状面材用の綜絖は、全体として板状をなしており、上下の綜絖保持レールが挿通される穴の形成された上下取付部に対して、その中間の帯状面材が挿通される横長孔の形成された保持部は屈曲されており、その保持部の板面は前記綜絖保持レールに対して略平行に配向していることを特徴とする織機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の織物によれば、帯状面材が縦線として使用され、別の金属製の線材と共に織り込まれており、帯状面材の織り込みにより従来には無い新規で斬新な複合織物となっている。そのため、そのまま装飾物として利用することができるだけでなく、帯状面材に描画部としての機能を担わせることもできる。
また、本発明の工夫された織機によれば、上記した新規な織物を容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る織物1を、図面に従って説明する。
この織物1は平織りされたものであり、縦線3と横線11とが一定の間隔を保ちながら一本ずつ相互に交わっている。
縦線3はステンレス製の線材5と金属製の帯状面材としての金網材9とで構成されている。
線材5は断面が長方形をなした平線であり、長辺が上下方向を向いて横線11と交差している。この平線は予め引っ張られて加工硬化されている。また、横線11が交差する部分にはクリンプ7(波形の屈曲)が付けられている。金網材9はアルミニウム製のメッシュの細かい金網材である。
縦線3は、金網材9どうしの間には線材5が3本ずつ配置されて構成されている。
横線11は縦線3の上記した線材5と同じ線材で構成されている。この横線としての線材11は3本が1セットになっており、この1セットが縦方向に一定の間隔だけおいて配置されている。
【0012】
織物1では、縦線3として金網材9が使用されている。従来は線材と金網は異なる材料であり、金網を織物の縦線として使用することは考えられていなかった。また、金網を織り込めるような織機もなかった。
しかしながら、金網を織り込めるよう織機の綜絖(所謂、飾り)を工夫して製織してみたところ、図1に示すような織物1を作り上げることができた。
金網材9の生のエッジは鋭利で危ないが、この織物1では線材5の間に配置されているのでエッジ処理をせずに済む。
さらに、面材としての金網材9が織込まれて織物1を構成しているので、織物1の形状が安定的に保持される。従って、織物1の全体の面積を大きくできる。
【0013】
縦線の線材5と横線の線材11には交差する部分にそれぞれクリンプ7,13が付けられているので、縦線の線材5と横線の線材11は互いに強固に織り込まれる。従って、縦線として一部に金網材9が使用されていても、織り目は正しく保持される。
【0014】
加えて、横線の線材11として平線を使用しているので、平線の厚みやクリンプの深さを調整することで、金網材9を挟み込む横線11どうしのクリアランスを所望のものに高精度に調整できる。そのため、金網材9の厚さに対応して調整されたクリアランスに、平坦な金網材9がそのまま挟み込まれ、金網材9には上下方向の凹凸は殆ど発生しない。また、横線11の平線は金網材9と面接触する。従って、金網材9はより安定的に織り込まれる。
【0015】
織物1は金網材9と線材5、11という異種材料の新規な組み合わせにより構成されており、斬新で装飾性に優れている。さらに、メッシュの細かい金網材9を使用したことにより、織物1は透けないので、前方にその織物1が配置されると、その奥側のものを隠蔽でき、その点からも利用価値がある。
平線の方が丸線より一層視界を遮ぎ易く、背景に影響されない。しかも、平線の方が丸線より軽い。従って、平線を使用することが装飾用途からも好ましい。
上記を考慮して、この織物1では、縦線の線材5としても平線が使用されている。
【0016】
図2は、織物1の室内の装飾材としての使用例を示す。この例では、織物1が複数並列配置された状態で、天井15から吊下げられており、その両側には照明器具17が複数配置されている。
この使用例では、織物1が室内にモダンな雰囲気を与えている。
【0017】
次に、この織物1を製織するための織機19について説明する。
織機19自体は通常の金属製線材の織機と基本的には同じ構造をしており、多数の縦線5が並列に揃えられた状態で引き出される。
縦線5は1本おきに区別されて2つの群に分けられており、各群は前後一対の綜絖(飾り)群21,23にそれぞれ通されてセットされる。
織りを開始すると、図3に示すように、一対の綜絖群21,23は互いに反対方向に上下動されて、縦線5間に開口部が形成される。その開口部に横線11が通され、筬49によって縦線群どうしの間に織り込まれる。次に、一対の綜絖群21,23は逆の向きに互いに反対方向に上下動されて、縦線5間に次の開口部が形成される。その開口部に横線11が通され、筬49によって縦線群どうしの間に織り込まれる。この繰り返しにより縦線5に横線11が織り込まれていく。
【0018】
綜絖群21(又は23)は、図4に示すように、線材5用の綜絖25と金網材9用の綜絖31とからなり、線材5と金網材9の並列に合わせて、綜絖31の間に3つの綜絖25が配置されている。
線材5用の綜絖25は棒状をしており、その上下端付近にそれぞれレール挿通穴27が形成され、中間に線材挿通孔29が形成されている。
【0019】
金網材9用の綜絖31は、図5に詳細に示すように、全体として薄板状をしている。
中間の保持部33は2枚の薄板35,35が上下に間隔をおいて配置されており、2つの連結棒37が上記した上下の薄板35,35の両側縁の間でそれぞれ掛け渡され、その上下端が薄板35,35に溶接されて一体に構成されている。上下の薄板35,35と両側の連結棒37とによって囲まれた部分が金網材挿通孔39となっている。この金網材挿通孔39は横長の長方形をなしている。
幅の広い保持部33を挟んで上下に幅の狭い取付部41が溶接により取付けられて一体に構成されている。取付部41の上下端付近にそれぞれレール挿通穴43が形成されている。
【0020】
取付部41の板面は、中間で3回にわたって、図中実線45で示すように屈曲されており、保持部33側では保持部33の板面と同じ方向に配向しているが、レール挿通穴43の形成部分では保持部33の板面と略垂直に交差している。
従って、金網材9用の綜絖31は、上下のレール挿通穴43にそれぞれ上下の綜絖保持レール47が挿通された状態では、保持部33の板面は綜絖保持レール47に対して略平行に配向している。
【0021】
縦線3は綜絖保持レール47と垂直に交差するように、図示しないロールから引き出される。
線材5用の綜絖25では、線材挿通孔29の形成面と縦線3の整列方向との交差角度が90度からある程度ずれていても、線材5の断面は小さいので、線材挿通孔29の大きさに有る程度の余裕を持たせれば、線材5は線材挿通孔29から前方向にスムーズに引き出される。
しかしながら、金網材9は面状材なので、綜絖31の金網材挿通孔39の形成面と縦線3の整列方向との交差角度が線材5と同じ程度ずれてしまうと、金網材9が金網材挿通孔39から前方向に引き出されるためには金網材挿通孔39の横幅をかなり長く設定して、金網材9の幅方向に対して傾斜した金網材挿通孔39に挿通させることになるので、引き出された金網材9は片寄り易くなっている。
これに対して、実際の綜絖31では、金網材挿通孔39の形成面、すなわち保持部33の板面は綜絖保持レール47に対して略平行に配向しているので、保持部33の板面と縦線3である金網材9の整列方向との交差角度は略90度になる。
従って、金網材9は金網材挿通孔39からスムーズに前方向に引き出される。
【0022】
さらに、縦線3の線材5は、柔らかいと前方向に引き出されるときにねじれてしまう。その際、線材5が丸線ならばねじれても横線11に対する線材断面の向きは変わらないが、平線の場合には断面の向きが変わってしまう。従って、そのままでは織り込めないが、この実施の形態では引っ張られて加工硬化した平線と線材5として使用しているので、ねじれることはない。
【0023】
図6は、織機19で織り込むために用意する材料の一例である。
織機19にかけて製織する場合には、用意する縦線の長さは製品として必要な長さにある程度のプラス分を加えたものとなるが、プラス分は後でカットされて廃棄される。
従って、プラス分を比較的廉価な板材51で構成し、金網材9にその板材51を仮止めしたものを縦線として使用し、織込み終了後にその板材51をカットして分離すれば、金網材9は無駄に使用せずに済む。
【0024】
図7は、別例の織物53である。
この織物53は、図1の織物1に、さらに横線として別の金網材55が織り込まれている。その金網材55を織り込むために、縦線3の線材5のうち金網材55を上側から挟むものには、金網材55の幅に対応して比較的長いクリンプ57が付けられている。
このように、金属製の帯状面材を横線として使用することもできる。このように構成すると、織物材どうしの重なりによる光干渉模様を作り出すことができる。
【0025】
図8は、帯状面材として有機EL(素子)61を使用して製造した織物59を示す。有機EL61が金属製の線材63と共に織り込まれて織物59になった後に、電圧印加手段等が取り付けられている。
このように帯状面材に有機ELを使用すれば、織物59を映像スクリーンとしても利用できるので、商業施設の屋内の壁65に取り付けることで通行人に映像を楽しませることもできる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
即ち、線材や帯状面材の種類は特に限定されず、従来からあるまたは将来案出されるものを任意に利用することができる。
例えば、帯状面材は金属材に限らず、樹脂やその他のもの、例えば、上記したような有機ELや太陽電池でもよい。
また、帯状面材の一つとして金網材を使用したときでも、金網材として、粗い網目や細かい網目のもの、色月のもの、エンボス加工されたものなど種々のものを使用できるので、併用する線材との間で膨大な数の組み合わせが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の織物は、新規で斬新な複合織物であり、金属製の線材を使用した織物の用途を無限に拡大できる可能性を秘めている。
さらに、本発明の織物は、綜絖の形状を工夫することで従来の金属線材用の織機をそのまま使用して製織することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る織物の斜視図である
【図2】図1に示す織物の使用状態の説明図である。
【図3】図1に示す織物を製造するための織機の要部部分の模式図である。
【図4】図3で取付けられた綜絖の斜視図である。
【図5】金網材用の綜絖の斜視図である。
【図6】織り込み用の金網材の改変例である。
【図7】別例の織物の斜視図である。
【図8】別例の織物の展示例である。
【符号の説明】
【0029】
1‥‥織物
3‥‥縦線 5‥‥線材
7‥‥クリンプ 9‥‥金網材
11‥‥横線(線材) 13‥‥クリンプ
15‥‥天井 17‥‥照明器具
19‥‥織機 21,23‥‥一対の綜絖群
25‥‥線材用の綜絖 27‥‥レール挿通穴
29‥‥線材挿通孔 31‥‥金網材用の綜絖
33‥‥保持部 35‥‥薄板
37‥‥連結棒 39‥‥金網材挿通孔
41‥‥取付部 43‥‥レール挿通穴
45‥‥屈曲部 47‥‥綜絖保持レール
49‥‥筬
51‥‥金属の板材
53‥‥織物
55‥‥金網材 57‥‥クリンプ
59‥‥織物 61‥‥有機EL(素子)
63‥‥線材 65‥‥壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状面材とその帯状面材どうしの間に配置された1本以上の金属製の線材とを縦線とし、別の金属製の線材を横線とし、前記縦線に前記横線を織り込んでなる織物。
【請求項2】
請求項1に記載した織物において、線材にはクリンプが付けられていることを特徴とする織物。
【請求項3】
請求項1または2に記載した織物において、横線は平線であることを特徴とする織物。
【請求項4】
請求項3に記載した織物において、平線は加工硬化されたものであることを特徴とする織物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した織物において、帯状面材は金網材であることを特徴とする織物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した織物を製織するための織機であって、縦線としての帯状面材用の綜絖は、全体として板状をなしており、上下の綜絖保持レールが挿通される穴の形成された上下取付部に対して、その中間の帯状面材が挿通される横長孔の形成された保持部は屈曲されており、その保持部の板面は前記綜絖保持レールに対して略平行に配向していることを特徴とする織機。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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