説明

織物及び印刷用ブランケット

【課題】この発明は、印刷用ブランケットの洗浄の際に、ブランケット支持体層との接着性を確保しつつブランケット側面及び底面からの洗浄液の進入を防止するための織物を提供すること、及び該織物を用いた印刷用ブランケットを提供することを目的とする。
【解決手段】経糸と撥油加工した緯糸とを用い、織物片面に現われる前記緯糸の量を、織物組織図で表される面積比率において60%〜80%にしてなる印刷用ブランケット用織物であり、及び表面印刷層と少なくとも一層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、該織物を支持体層の少なくとも一つの層に用いた印刷用ブランケットであるが、この場合、該織物は支持体層のボトム層に用い、前記緯糸の量が面積比率において60%〜80%として現われる片面を当該ブランケットの底面になるように用いるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷用ブランケットを構成する表面印刷層支持体としての織物及びこの織物を用いた印刷用ブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機の印刷ユニットでは、例えば、図6に示すように、版胴の画面をブランケット胴の外周に密着させて巻き付けたブランケットに転写し、これを被印刷体(紙など)に更に転写するようになっている。版胴の画面を被印刷体へ仲介するこの印刷用ブランケットは、通常、ゴム層からなる表面ゴム層(表面印刷層)とこれを支持する支持体層とで形成されており、支持体層はさらに複数の層からなり、各層は織物や不織布で形成されたり、またこれらの織物等の層にスポンジ層等の緩衝層が加わって形成される場合がある。
【0003】
ところで、支持体層の織物は、ロールの回転に伴う縦方向の送り伸びを小さくするため、経糸方向に(残留伸度4%以下に)ストレッチ加工したものを使用する。その結果、経糸に絡んで波線状態となっている緯糸は経糸の伸長に伴なって波幅が狭まりその長さ方向に収縮しているので、ブランケットはその後の印圧によって緯糸方向(横方向)に伸びやすくなる。かかる緯糸の状態は、回転中のブランケット表面ゴム層の横方向へ動きの原因となりやすい。高速回転を伴わない印刷では、表面ゴム層に加わる横方向の負荷が小さいことから、表面ゴム層の横方向への動きも少なく且つ表面ゴム層のそのような移動が発生しても印刷不良や紙離れ不良は発生しにくいが、印刷速度の高速化に伴う印圧の増加は、表面ゴム層の横方向の動きによるドットゲインや紙離れ不良を招来しており、特に図6に示すような二つのブランケット胴によるB−B型印刷においては、転写を確実にすべくさらに印圧が大きくなるので、前記横方向の動きに伴う印刷不良や紙離れ不良を増大させる傾向にある。
【0004】
なお、ブランケットの表面ゴム層の横方向の動きを防止するための発明として、経糸を緯糸より多くした高密度の織物が開示されているが(例えば、特許文献1参照)、更なる改良が求められている。
【0005】
また、印刷不良の他の原因として、近年ブランケットの溶剤による洗浄装置を使用したブランケットの洗浄の際に、洗浄液が支持体層の織物層等に浸入してブランケットを膨潤させることが挙げられる(膨潤により支持体層間が剥離することがある。)。この洗浄液は、表面ゴム層のゴム面からは浸入しないが、支持体層側面の織物等が露出している部分から毛細管現象により、及び、ブランケット底面から支持体層内部に浸入する。また、ブランケットをブランケット胴に装着したまま洗浄する場合も、洗浄液は、支持体層側面の織物層等が露出している部分はもちろん、ブランケット底面からも、ブランケット胴との接触部分に毛細管現象により浸入し、さらにブランケット内部に浸透する。
【0006】
かかる洗浄液浸入の問題を解決するための考案や発明として、(1)ブランケットの支持体層側面とボトム層全体に、シール層を設けたブランケット(例えば、特許文献2参照)や(2)ボトム層の織物表面に、フッ素系樹脂のコーティング層を設けたブランケット(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【0007】
しかし、(1)のブランケットでは基布層の側面と裏面全体にシール層を設けているが、ブランケット製造後にシールすることから、シール加工が困難であるばかりでなく、このようなシールはシール層に亀裂が入り割れるとシール効果がなくなる問題があり、(2)のブランケットの基布は、全体が撥油加工されているため、スポンジ層を含む他の支持体層等との接着強力が十分でないことも起こり得るため、接着不良に基づく印刷不良やブランケットの破損を招来する問題がある。
【特許文献1】特開昭47−32908号公報
【特許文献2】実開昭64−22462号公報
【特許文献3】特開平3−158295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、印刷用ブランケットの前記表面ゴム層の横方向の動きを防止するための織物又は他の支持体層との接着性を確保しつつブランケット側面及び底面からの洗浄液の進入を防止するための織物を提供すること、及びかかる織物を用いて、印刷時の表面ゴム層の横方向の動き若しくは洗浄時の洗浄液の浸入の阻止を達成する又はそれら双方の阻止を同時に達成する印刷用ブランケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明者は、上記目的を達成すべく、一連の研究を重ねた。そして、緯糸に所定繊度のモノフィラメントを用いた織物が印圧時のフランケットの表面ゴム層の横方向の動き防止に有効であること、また緯糸に撥油加工糸を用い、綾織などによって、基布の一方の面と他方の面において撥油性に差を設けた基布をボトム層等に用いると、洗浄液のブランケット側面及び/又は底面からの浸入を有効に防止できると共に、スポンジ層等の他の支持体層との接着性にも優れていることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のうち第1の発明は、経糸が紡績糸又はマルチフィラメント、緯糸が繊度が50d〜300dのモノフィラメントであって、該緯糸が織物中で直線状態を形成していることを特徴とする、印刷用ブランケット用織物である。
【0011】
この場合、経糸の紡績糸としては、綿糸等の天然繊維、レーヨン、リヨセル等の再生繊維、又はナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊維の紡績糸が例示され、マルチフィラメントとしてはレーヨン、リヨセル等の再生繊維、又はナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊維のマルチフィラメントが例示される。緯糸のモノフィラメントとしては、50d〜300d、好ましくは70d〜200d、より好ましくは100d〜150dの繊度のものを用いるとよい。けだし、50d未満ではフィラメントの硬さが不足し、緯糸の直線状態の維持が困難になり、300dを超えると経糸の繊度とのバランスがくずれ、機械織が困難になるからである。なお、本発明において、緯糸の直線状態とは緯糸としてのモノフィラメントが直線〜ほぼ直線になっていることを意味し、本発明の効果を妨げない範囲で、多少曲がって波を形成した状態をも含む。
【0012】
本発明のうち第2の発明は、経糸と撥油加工した緯糸とを用い、織物の片面に現われる該緯糸の量を、織物組織図で表される面積比率において60%〜80%にしたことを特徴とする、印刷用ブランケット用織物である。
【0013】
第2発明は、経糸、緯糸共に、糸の種類や材質は特に限定されないが紡績糸を用いるのが好ましい。この場合、紡績糸としては、綿糸等の天然繊維はもちろん、レーヨン、リヨセル等の再生繊維、又はナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊維の紡績糸が例示される。撥油加工は、糸に撥油性を付与する加工であれば、特に限定されないが、例えばフッ素系撥油剤を用いる加工等が例示できる。また、本発明において織物組織図で表される面積比率とは、該組織図における緯糸と経糸の桝目の数の比率を%で表した数値である。
【0014】
本発明のうち第3発明は、表面印刷層と少なくとも一層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、第1発明記載の織物を支持体層のトップ層に用いたことを特徴とする印刷用ブランケットであり、
第4発明は、表面印刷層と少なくとも一層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、第2発明記載の織物を支持体層の少なくとも一つの層に用いたことを特徴とする印刷用ブランケットであり、
第5発明は、第2発明記載の織物が支持体層のボトム層に用いられ、かつ前記緯糸の量が面積比率において60%〜80%として現われる片面が当該ブランケットの底面になるように用いられていることを特徴とする第4発明記載の印刷用ブランケットであり、
第6発明は,表面印刷層と少なくとも二層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、第1発明記載の織物をトップ層の支持体層に用い、第2記載の織物をトップ層以外の支持体層に用いたことを特徴とする印刷用ブランケットであり、
第7発明は、第2発明記載の織物がボトム層の支持体層に用いられ、かつ前記緯糸の量が面積比率において60%〜80%として現われる片面が当該ブランケットの底面になるように用いられていることを特徴とする第6発明記載の印刷用ブランケットである。
【0015】
本発明の印刷用ブランケットにおいて、表面印刷層としては、特に限定されないが、従来のゴム印刷層が例示できる。また、少なくとも一層からなる支持体層は、複数層であることが好ましく、織物層や不織布層だけでなく、緩衝層としてのスポンジ層が含まれていても良い。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の織物によれば、緯糸が所定繊度のモノフィラメントであって硬くかつ直線状態で織り込まれており、この織物を使用してブランケットを製造する際に縦方向に引張しても、従来の織物の如く経糸方向の伸長に伴って緯糸がその長さ方向に収縮することがほとんどなく直線状態を維持することから、高速印刷運転中の張力やブランケット装着時の取付け締め圧力によっても緯糸方向にはほとんど伸びない。したがって、印刷用ブランケット支持体として用いた第1発明の織物は、回転中のブランケット表面印刷層の横方向への動きを十分阻止でき、最近の印刷機の高速化に伴う印圧の増加や前記B−B型印刷に伴う印圧の増加があっても、前記表面印刷層の横方向の動きによる印刷不良や紙離れ不良を発生せず、鮮明な印刷を確保できる。また、印刷用ブランケット支持体として用いた第1発明の織物は、緯糸が直線状態を維持して収縮しないことから、新聞印刷等で一つのシリンダーに2つのブランケットを装着した場合に発生することのある所謂アワーグラス現象をも阻止できるし、さらに、この緯糸は、モノフィラメントであることから、当該緯糸を通じての毛細管現象による洗浄液のブランケット内浸入を生じない。
【0017】
第2発明の織物によれば、撥油加工した緯糸を用い、織物の片面に現われるこの緯糸の量を、織物組織図で表される面積比率において60%〜80%にしていることから、第2発明の織物を印刷用ブランケットの支持体層に用いると、(1)印刷用ブランケット洗浄の際に、印刷用ブランケット側面にその端部が現われ従来毛細管現象によって洗浄液をブランケット内に浸入させていた緯糸は、撥油加工されているので、該ブランケット側面からの洗浄液の浸入を十分阻止でき、また、(2)織物の両面に現われる撥油加工緯糸量に所定の差異を設けているので、かかる緯糸量の多く現われる面においては、洗浄液の浸入を防止でき、かかる緯糸量の少ない面においては、撥油加工による接着性阻害が小さく、他の層との接着性を十分確保できる。特にスポンジ層との接着においては、接着加工工程において高圧をかけず低圧での加工を可能にすることから、高圧加工によって生じるスポンジ層内の気泡(バルーン)のつぶれを防止することができ、或いは気泡の生成を阻害しない。すなわち、この織物は、ブランケット内において、片方の面において洗浄液の浸入を防止しつつ、他方の面において接着性を確保できる複合機能を有する。
【0018】
第3発明によれば、表面印刷層と少なくとも一層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、第1発明記載の織物を支持体層のトップ層に用いているので、第1発明記載の織物が表面印刷層の横方向の動きを直接防止できることになり、このブランケットは従来の印刷層の横の横方向の動きによる印刷不良をより確実に防止できる。また、緯糸がモノフィラメントであることから、支持体層のトップ層において、ブランケット側面からの洗浄液の浸入を防止できる。
【0019】
第4発明によれば、表面印刷層と少なくとも一層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、第2発明記載の織物を支持体層の少なくとも一つの層に用いているので、ブランケット洗浄の際に、この織物を用いた層ではブランケット側面からの洗浄液の浸入を防止できる。この場合、緯糸の出現が少ない面は、特別に接着性を高めたゴム接着剤を使用せず、且つ低圧での接着加工であっても、例えばスポンジ層との接着を可能にする。一方、緯糸の出現が多い面は、スポンジ層以外であれば、通常のゴム等の接着剤を使用して低圧加工によっても十分接着が可能であり、この面が直接洗浄液と接触してもその面からのブランケット内への洗浄液浸入を防止できる。したがって、例えば、支持体層の全てに第2発明記載の織物を用いた場合は、各織物同士の接着はゴム等の接着剤を必要とするが、ブランケット全側面からと底面からの洗浄液の浸入を防止できることになる。また、例えば、支持体層にスポンジ層を設け、他の支持体層の全てを第2発明記載の織物とした場合は、該スポンジ層には緯糸の出現の少ない織物面を向けることにより、織物とスポンジ層間は特別に接着性を高めたゴム等の接着剤を不要としつつ、上記と同様に、ブランケット全側面及び底面からの洗浄液の浸入を防止できることになる。
【0020】
第5発明によれば、前記印刷用ブランケットにおいて、第2発明記載の織物が支持体層のボトム層に用いられかつ前記緯糸の量が面積比率において60%〜80%として現われる面(すなわち、前記緯糸の出現が多い面)が当該ブランケットの底面になるように用いられていることから、ブランケット底面からの洗浄液の浸入が防止でき、かつボトム層においてはブランケット側面からの洗浄液の浸入も防止できる。したがって、ボトム層において本発明の織物を用い、他の支持体層に、(1)少なくとも緯糸を撥油加工した織物(例えば、本発明の織物若しくは平織物)又は(2)全体を撥油加工した織物や不織布を用い、各支持体層間を接着剤で接着すれば、ブランケットの全側面及び底面からの洗浄液の浸入を防止できることになる。
【0021】
第6発明によれば、表面印刷層と少なくとも二層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、第1発明記載の織物をトップ層の支持体層に用い、第2記載の織物をトップ層以外の支持体層に用いたことから、第1発明記載の織物によって、ブランケットは印刷時の印圧によって緯糸方向に伸びることはなく、最近の印刷機の高速化に伴う印圧の増加や前記B−B型印刷に伴う印圧の増加があっても、ブランケット表面印刷層の横方向の動きによる印刷不良は発生せず、さらに第1発明記載の織物及び第2発明の織物によってこれらの織物を用いた層側面からの洗浄液の浸入を阻止できる。
【0022】
特に、第6発明の印刷用ブランケットにおいて、第7発明の如く、第2発明記載の織物がボトム層の支持体層にいられかつ前記緯糸の出現の多い面が当該ブランケットの底面になるように用いられていれば、第2発明の織物によってブランケット底面からの洗浄液の浸入を防止できることになる。したがって、第7発明によれば、第1発明記載の織物によって前記ブランケット表面印刷層の横方向の動きによる印刷不良は発生せず、さらに第1発明記載の織物及び第2発明記載の織物によってこれらの織物を用いた層側面からの洗浄液の浸入及び底面からの洗浄液の浸入を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】の(1)は、本発明に係る緯糸がモノフィラメントで直線状態ある織物の縦断面の模式図であり、(2)は該織物の横断面の模式図である。
【図2】は、本発明に係る印刷用ブランケットの表面ゴム層及び支持体各層の積層状態の一例を示す概略構成図である。
【図3】は、本発明に係る緯糸がモノフィラメントで直線状態である織物の製造工程において、採用すべきモノフィラメントの状態の一例を示す概略図である。
【図4】は、本発明に係る撥油加工糸済み緯糸を用いた綾織物で、緯糸の出現の多い面側を示した組織図の一例である。
【図5】の(1)は、本発明に係る緯糸がモノフィラメントである織物の引張試験結果(応力―歪曲線)を従来織物4層の積層物と対比して示したグラフであり、(2)は(1)のグラフにおける試験力(N)が200、ストローク(ひずみ)が10%までのグラフの部分拡大図である。
【図6】は、B−B型オフセット印刷機ブランケット胴を含む印刷ユニットの印刷工程の模式図である。
【実施例】
【0024】
つぎに、実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明を実施するための具体例とその結果(効果)を示す一例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0025】
(実施例1)
緯糸に繊度が150dのポリエステルモノフィラメント(東レモノフィラメント(株)製)を、経糸に60番手綿双糸を用い、次のようにして緯糸が直線状態の平織物を作成した。すなわち、例えば、織機(スルテックジャパン製プロジェクタイル)を用い、図3に示すように、少し緩んだ状態の緯糸11になるように緯管(図示せず)にて経糸中に打ち込み、筬(図示せず)でこの横糸を折り前13に打ちつけて織り込んでゆくと、このモノフィラメントは硬いことから、図1に示すような緯糸が直線状に織り込まれた本発明の織物となる。この織物は、ブランケット支持体としての使用のために、径方向にストレッチ加工しても、緯糸の直線状態が維持される。
【0026】
(実施例2)
緯糸に繊度が100dのポリエステルモノフィラメント(ユニプラス滋賀(株)製)を、経糸に60番手綿双糸を用い、実施例1と同様にして緯糸が直線状態の平織物(図1参照)を作成した。この織物も、ブランケット支持体としての使用のために、径方向にストレッチ加工しても、緯糸の直線状態が維持される。
【0027】
(実施例3)
まず、30番手の綿単糸にフッ素系撥油加工剤(日華化学(株)製NKガード)を用いて撥油加工した。 次にこの撥油加工綿単糸を緯糸とし、経糸に30番手の綿双糸を用いて、図4の組織図で示す綾織物を製造した。この場合、織物の片面に現われる前記緯糸の量は、織物組織図の緯糸(白桝目)と経糸(黒桝目)の桝目の数の比率を%で表した数値であり、(81/108)×100=75%となる。
【0028】
(実施例4)
第1層に、経糸が60番手の綿双糸であり、緯糸が30番手の綿単糸であって、厚みが0.25〜0.26mmの平織物を、
第2層に、経糸が30番手の綿双糸であり、緯糸が30番手の綿単糸であって、厚みが0.30〜0.31mmの平織物を、
第3層に、経糸が30番手の綿双糸であり、緯糸が30番手の綿単糸であって、厚みが0.30〜0.31mmの平織物を、
第4層に、経糸が20番手の綿双糸であり、緯糸が20番手の綿単糸であって、厚みが0.38〜0.39mmの平織物を用い、これらを積層して各層間をゴム接着剤で接着し、これを縦方向に引長してブランケット支持体3(経糸方向の残留伸度は約4%以下)を作成した。
【0029】
次に、実施例1で作成した織物をブランケット支持体1、実施例2で作成した織物をブランケット支持体2とし、支持体1、支持体2及び支持体3に対し、引張試験機(島津製作所製オートグラフ)を用い、JIS K6301に準拠して引張試験を行った。その結果を図5に示す。
【0030】
支持体1と支持体2は、1層の織物であるにも拘わらず、初期モジュラス(負荷が約100N程度まで)において、緯糸方向のモジュラスは、4層の織物で構成される支持体3の緯糸方向のモジュラスより数倍大きく、経糸方向のモジュラスに近い値となった。したがって、実際の印刷圧力(約2N程度まで)を考慮すると、本発明の織物の緯糸方向の伸びは、印刷時において、1層で従来の4層の支持体層の経糸方向の伸びと近似する程度の伸びしか示さないことになり、従来の4層支持体の経糸方向とほぼ同一の補強効果を示すことになる。
【0031】
(実施例5)
表面ゴム層3に対し、実施例1又は実施例2の織物5を支持体層4のトップ層とし、支持体層4の第2層にスポンジ層6、第3層と第4層及びボトム層に実施例2の織物7,8,9(ボトム層においては、撥油加工緯糸の多い面をブランケット底面側とする)を用いて作成した印刷用ブランケットの模式的な概略構成図を図2に示す。この場合、スポンジ層6に対して第3層の織物7は緯糸出現の少ない面側がスポンジ層側と接するようにすると共に、織物9は緯糸出現の多い面をブランケット底面側とした。また、この場合、スポンジ層6と織物7の界面は特別に接着性を高めたゴム接着剤を用いず、それ以外の界面と同様に、通常のゴム接着剤を用いた。
【0032】
このブランケットは、支持体層4のトップ層5の補強効果により、印刷時において表面ゴム層3の横方向の動きが生じることなく、垂直方向の運動のみが生じていることから、印刷不良は発生せず、かつブランケットの洗浄時において、トップ層5のモノフィラメント緯糸及び第3層〜ボトム層の撥油加工緯糸の端部がブランケット側面に現われることから、支持体層4側面からの洗浄液の侵入がなく、さらにブランケット底面が実施例3の織物の緯糸出現の多い面(面積比率において75%)となっていることから、ブランケット底面からの洗浄液の浸入も十分阻止できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、印刷用ブランケット表面印刷層の支持体として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 緯糸
2 経糸
3 表面印刷層
4 支持体層
5 緯糸がモノフィラメントの本発明に係る織物
6 スポンジ層
7 緯糸が撥油加工糸の本発明に係る織物
8 同上
9 同上
11 緩んだ状態の緯糸
12 織前
13 支持体1緯糸方向の応力―歪曲線
14 支持体2緯糸方向の応力―歪曲線
15 支持体3経糸方向の応力―歪曲線
16 支持体3緯糸方向の応力―歪曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と撥油加工した緯糸とを用い、織物の片面に現われる該緯糸の量を、織物組織図で表される面積比率において60%〜80%にしたことを特徴とする、印刷用ブランケット用織物。
【請求項2】
表面印刷層と少なくとも一層からなる支持体層とを有する印刷用ブランケットにおいて、請求項1記載の織物を支持体層の少なくとも一つの層に用いたことを特徴とする印刷用ブランケット。
【請求項3】
請求項1記載の織物が支持体層のボトム層に用いられ、かつ前記緯糸の量が面積比率において60%〜80%として現われる片面が当該ブランケットの底面になるように用いられていることを特徴とする請求項2記載の印刷用ブランケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166498(P2009−166498A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39229(P2009−39229)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【分割の表示】特願2008−503715(P2008−503715)の分割
【原出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(508254347)森内織物株式会社 (1)
【Fターム(参考)】