説明

織物構造体、ならびにそのような構造体を含むパネルまたは容器

【課題】 設計および使用方法が単純であって、ひと続きであり、縫製、接着、さらにはこれら2つの組み付け方法を組み合わせたものにより、当初別々であった要素を組み付けることにより得られる先行技術の既知の製品よりも高い機械的特性をもたらす単純な織物部材を提供する。
【解決手段】 本発明は、少なくとも一本の連続地糸(13)により相互に結合された少なくとも2つの織物ウォール(11、12)を備える織物構造体に関する。本発明によれば、少なくとも一本の地糸(13)の連続する2つのウォール(11、12)のシンカ間の長さの変動は、縦糸方向においておよび/または横糸方向において前記構造体の少なくとも一部分上では連続的である。本発明は、航空、海事、家具類、自動車の分野に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織物構造体ならびにそのような構造体を具備する部材に関する。より詳細には本発明は、そのような構造体を備え膨張可能なタンクを形成する柔軟容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偶発的に滑走路から逸脱した商業飛行機および軍用機の泥除去および回収を容易にするために設計された飛行機立て直し用エアバッグが知られている。
【0003】
これらのエアバッグにより、滑走路からの飛行機の逸脱に直面した空港の緊急救助要員は飛行機を押し上げ、次にすばやくかつ安全に飛行機を牽引することができるので、飛行機に対し二次的損害が生じるのを防止することができる。
【0004】
図1は、先行技術による持ち上げ用エアバッグの断面図である。通常このバッグは、防水性確保のため塗装され熱間加硫された2つの織物ウォール1、2を含む。これらの織物ウォール1、2は外周部においてゴム製余肉部3と結合6される。
【0005】
これらのウォール1、2はまた、バッグの膨張によりそれらウォールが加圧された時、平行になりそれぞれ等間隔になるポリアミド糸4により相互に結合される。
【0006】
この糸4は、ウォール1、2を平行な状態に保つよう、同一の長さである。これにより、このバッグがセットされた飛行機の構造体に均一な押し上げ圧力を加えることができる。
【0007】
たとえば、飛行機の翼5など破損しやすい構成要素の持ち上げ時は、これらの構成要素上に構造上の破損が生じるのを防ぐには、この点はきわめて重要である(図2)。
【0008】
ところで、製造の欠陥により生じるか、時間の経過とともに、持ち上げ用エアバッグの破断点のレベルにおいて発生するこれらエアバッグの空気損失がみられることがある。たとえば、製造の欠陥は、加硫不良、さらには加硫前のゴム製余肉部3の滑りを原因とすることがある。
【0009】
そのような不良により、飛行機の構造体に加えられる持ち上げ力が不均一になり、場合によっては二次的損害の原因となる。
【0010】
したがって、応力に対してより高い強度を有すよう単一部材で作製されるエアバッグに対する切迫したニーズが存在する。
【0011】
より一般的には、ポリスチレンボールを充填したオットマン、肘掛け椅子カバーなど複雑な形状を有する多くの織物品は、当初は別々の織物部材を組み合わせることにより得られ、次に製品に最終的な形状を付与するために、たとえば縫製により結合される。
【0012】
ところが、これらの製品は本来、このような組み合せゾーンにおいてはある構造的脆弱さを有する。
【0013】
これらのゾーンにおいて製品が早期に摩耗し、その結果、製品の充填材の損失をきたすことがある。
【0014】
最後に、複雑な形状を有するこれらの製品の組み付け時間は比較的長くなることがあり、有資格作業者を必要とすることがあるので、製品は高価になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の目的は、設計および使用方法が単純であって、ひと続きであり、縫製、接着、さらにはこれら2つの組み付け方法を組み合わせたものにより、当初別々であった構成要素を組み付けることにより得られる先行技術の既知の製品よりも高い機械的特性をもたらす単純な織物部材を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、円錐形または円筒形など複雑な形状を有し、ラドーム、飛行機の胴体部分、船体、さらには家具などの複合部品を作製するためにより高い機械的強度を有するひと続きの織物構造体である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のため、本発明は、少なくとも一本の連続地糸により相互に結合された少なくとも2つの織物ウォールを備える織物構造体に関する。
【0018】
本発明によれば、少なくとも一本の地糸の連続する2つのシンカ間の長さの変動は、縦糸方向においておよび/または横糸方向において構造体の少なくとも一部分上では連続的である。
【0019】
これら2つのシンカのそれぞれは、異なるウォールまたは布の基本織りに属する。別の言い方をすれば、これら2つのシンカのそれぞれは、異なるウォール横糸により、ライザまたは結合された地糸に対応するので、これらのウォールは地糸により相互に結合される。したがって2つの織物ウォール間の結合は追加の縦糸により確保される。
【0020】
この織物構造体は閉じていても、あるいは少なくとも部分的に閉じていてもよい。この開口部は、織物構造体の任意の地点、すなわち織物構造体の端部のうちの少なくとも1つ、に設け、これらのウォールの対応する縁同士は結合されなくなるようにするか、さらにはウォールのうちの少なくとも1つに孔を存在させることにより設けることもできる。
【0021】
この織物構造体の断面は、必要のない縦糸を場合によっては切断した後、円形、正方形、直角形、菱形、T字形、U字形、L字形、H字形、I字形など任意の形状を有することができるのが有利である。
【0022】
「連続的変化」とは、この変化が均一であり飛躍または段階を有さないことを意味する。
【0023】
「連続地糸」とは、ウォールを組み付けるための各ウォールの織り作業の後には地糸が付け加えられないが、製造の進行にともない、これらの織物ウォールの横糸には挿入されることを意味する。
【0024】
したがって地糸は、2つのウォールの部分上においてこれらウォールの織りの必須部分を成す。
【0025】
このようにして得られる織物構造体はひと続きであるため、応力に対しより高い機械的強度が同構造体に付与される。
【0026】
この織物構造体は単一部材によるものであっても、反対に異なる材料を含むものであってもよい。
【0027】
「織物構造体は単一部材による」という表現は、この織物構造体がシングルピースであり、1つの材料で作製されることを意味する。しかしながら、使用する縦糸または横糸は異なる形態のものであってもよい、すなわち、たとえば、モノフィラメント糸であっても、マルチフィラメント糸であっても、平糸であっても、撚り繊維で形成された糸であっても、単純糸であっても、ロータであってもよく、異なる厚さまたは直径をもつことができる。
【0028】
これらの糸はたとえば木綿糸、ポリエステル糸、ポリアミド糸、ポリプロピレン糸、アミドンベースの生分解性プラスチック材料、酸化分解性プラスチック材料、カーボンファイバ、グラファイト、ガラス、シリカ、アラミドで形成された糸とすることができる。
【0029】
またウォールは、織物構造体に関して想定する用途に応じて異なる寸法および/または異なる形状を有することができる。
【0030】
したがって、もっぱら一例としては、両凸対称断面形状を有する飛行機の翼を製造するために、凸面上部ウォールと、平面中間ウォールと、中間ウォールを基準として凸面上部ウォールと対称な凸面下部ウォールとを含む織物構造体を使用することができる。平面凸面断面形状を有する翼を得る場合には、これらの該ウォールは、単一曲率の凸面上面を形成するための凸面部分と、平面下面を形成するための平面部分とを含むことになる。もちろんこれらのウォールはそれらの端部で結合され、翼の前縁および後縁を形成する。いったん構造体が硬化すれば、地糸の密度およびその組成により、上部および下部ウォールを支持することができ、翼が応力に耐えるのに必要な機械的剛性が確保される。
【0031】
有利にはこの構造体は、上部ウォールと、中間ウォールと、下部ウォールとを含み、これらウォールは重ねられ、少なくとも一本の第1地糸が前記上部ウォールと中間ウォールを結合し、少なくとも一本の第2地糸が前記下部ウォールと中間ウォールを結合し、これらの第1地糸および第2地糸のうちの少なくとも一方が、連続する2つのシンカ間で長さの変化を有し、前記シンカのそれぞれが、横糸方向および/または縦糸方向において前記構造体の少なくとも一部分上では連続的である、異なるウォールの横糸によって捕捉されるシンカに対応する。
【0032】
本発明は、少なくとも一本の連続地糸により相互に結合された上部織物ウォールおよび下部織物ウォールを備える織物構造体にも関する。
【0033】
本発明によれば、前記少なくとも一本の連続地糸は横糸方向に複数のフロート部分を有し、これらの部分のそれぞれは、上部ウォールの少なくとも二本の縦糸ならびに下部ウォールの少なくとも二本の縦糸によって結合された前記少なくとも一本の地糸に対応し、前記フロート部分の長さの変化は、横糸方向および/または縦糸方向において前記構造体の少なくとも一部分上では連続的である。
【0034】
したがって2つの織物構造体間の結合は、先に説明したような追加縦糸からではなく、追加糸群から得られる。
【0035】
この織物構造体の個別の様々な実施形態においては、各実施形態が特定の長所を有するとともに、多くの技術的組み合せが可能である:
‐ 地糸が加圧されるため、これらの地糸の連続する2つのシンカ間の長さの少なくとも大部分は等間隔であるまたは等間隔ではなく直線である、
‐ ウォールおよび/または地糸は異なる材料で作製される、
【0036】
織物構造体が複数の異なる機械的強度ゾーンを有するよう、地糸は複数の異なる材料で作製できることが有利である。
【0037】
もっぱら一例としては、構造体の他の地糸よりも低い機械的強度、すなわち他の地糸の破断閾値よりも低い破断閾値を有する地糸で織られた構造体内にマーキングゾーンを生成することができる。
【0038】
この織物構造体から製造される持ち上げ用柔軟容器を膨張させる際に、推奨最大圧力閾値を上回る圧力を加えることにより、低い強度を有するこれらの地糸の破断を発生させることができるので、作業者は、破断圧力閾値を超えたことおよび容器の膨張を停止するための操作を行わなければならないことを、直接目で見ることができる。
【0039】
このようにこのマーキングゾーンは、持ち上げ作業の際、の滑走路から逸脱した飛行機の構成要素に二次的損害が発生しないことを確認するための簡単かつ効果的な確認および安全手段を提供する。
【0040】
‐ これらのウォールは連続するか、連続しない。
【0041】
もっぱら一例としては、これらのウォールのうちの少なくとも1つは孔を含むことができる。したがって織物構造体は孔を含むことができ、リングを形成する。
【0042】
‐ ウォールの少なくとも一方のウォールの縦糸および/または横糸の長さは他方のウォールの縦糸および/または横糸の長さと異なる。
【0043】
これはたとえば、異なる織り方をウォールが有する場合に得ることができる。これらのウォールは基本的に平織または綾織をもつことができる。
【0044】
ウォールのうち、地面と接触するようになっているウォールは、ロードホールディング力をこのウォールに付与するために、突起部および凹部を含む表面起伏を有することもできる。
【0045】
代替方法としては、構造体が重ねられた時、一方の構造体が他方に対し滑るのを防止するよう、織物構造体の第一ウォールが凹部で構成される表面起伏を有し、第二ウォールが第一ウォールの凹部と協動するようになっている突起部を有する。
【0046】
これらの突起部および凹部はそれぞれオスくぼみ、メスくぼみとすることができる。一例としては、これらのくぼみはハニカムウィーブから得ることができる。
【0047】
より一般的には、ウォールが同一の織り方を有していても、縦糸および/または横糸の長さは異なっていてもよく、これらのウォールのうちの1つがより長くなる。
【0048】
‐ 織物構造体が、これらのウォールを結合する少なくとも1つの側面ウォールを含み、これらの縦糸および/または横糸の少なくとも何本かがこれらのウォールのうちの少なくともいくつかのウォールの中ならびに前記側面ウォールの中の双方にセットされ、前記糸は連続している。
【0049】
この個別の実施形態においては、織物構造体は少なくとも部分的に閉じている。上側ウォール、下側ウォールおよび側面ウォールの全面または一部分にわたり縦糸および/または横糸が連続していることにより、上側織物構造体の機械的強度が確保される。
【0050】
‐ 地糸の密度は1本/10cmより高い、
【0051】
しかしながらこの地糸の密度は、織物構造体に関して想定する適用例によって異なる。したがってこの地糸の密度は1本/10cmから数百本10cmまで変化することがある。
【0052】
‐ 地糸は柔軟性を有する、
【0053】
一例としては、これらの地糸は、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、単純糸またはロータ糸、集塊化繊維を含む糸、平糸、柔軟性金属糸、外装補強糸、すなわち芯糸および熱可塑性材料で作製された外装をそれぞれ含む糸、ならびにこれらの要素の組み合せを含む群の中から選択される。
【0054】
「平糸」とは、横断方向断面が、全長にわたりほぼ一定で、楕円、正方形、圧縮円および変形正方形または直角形、すなわち凸弧形状を有する2つの対辺と、直線で同じ長さで平行な他の二辺を有する形状のダイを通って押し出し成形、圧延または他の加工がされる製品を意味する。
【0055】
さらにこれらの平糸は中空であってもよく、また、たとえば扁平管状断面を有してもよい。
【0056】
本発明はまた柔軟容器にも関する。この容器は上で説明したような構造体を備える。
【0057】
この構造体は防水であるのが好ましい。そのために、ウォールには、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリウレタンを基材とする材料、さらに好ましくは難燃化可塑化PVCを基材とする材料などの防水材料が塗布されていることがある。
【0058】
たとえば、滑走路から逸脱した飛行機の翼の下に設置された持ち上げに使用可能なエアバッグの場合、容器は、耳と、容器が加圧されている時に円形部分を形成するようになっているゾーンと、エアバッグを形成するための中央平坦ゾーンとを含む。
【0059】
本発明はまた、それぞれの間に間隔がとられた少なくとも2つのウォールを備えるパネルにも関する。
【0060】
本発明によれば、これら2つのウォールは上で説明したような構造体によって形成される。
【0061】
構造体全体は硬化樹脂内に埋め込むことができる。代替方法としては、地糸およびウォールを構成する糸があらかじめ含浸され、織物構造体が重合化される。
【0062】
たとえば、これらの糸は熱硬化または熱可塑性樹脂、特にポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)のファミリの樹脂などの熱安定熱可塑性樹脂であらかじめ含浸することができる。
【0063】
重合化作業は先行技術のよく知られた工程であるのでここで改めて説明することはしない。ここでは単に例としてレジントランスファーモールディング(RTM)法またはリキッドレジン注入モールディング(LRI)法を挙げておく。
【0064】
もちろん、重合中は直線地糸のフロート部分を維持するよう努めるものとする。そのためには、樹脂による織物構造体の含浸ステップの際、織物構造体を圧縮しないようにする。
【0065】
本発明のパネルは、各ウォールの面内はもとより、これらのウォールを結合する地糸のためこれらのウォールに対し直角な方向においても良好な機械的特性を有するのが有利である。
【0066】
本発明は、上で説明したような少なくとも1つのパネルを備える船舶に関する。
【0067】
本発明は、上で説明したような少なくとも1つのパネルを備える飛行機に関する。前記少なくとも1つのパネルは飛行機の胴体さらにはラドームの一部を構成することができる。
【0068】
本発明は、ポリスチレンボールが充填されたシート、家具、スポンジまたはダウンが充填された掛布団などの内装材または外装材にも関する。
【0069】
本発明によれば、この装材は上で説明したような構造体を含む。
【0070】
より一般的には、本発明は、上で説明したような構造体を具備するあらゆる製造物に関する。
【0071】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】先行技術による持ち上げ用エアバッグの断面図である。
【図2】図1の滑走路から逸脱した飛行機の翼の下に設置された持ち上げ用エアバッグの重なりを示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態によるパネルの斜視図である。
【図4】図3のパネルの製造に使用される織物構造体の軸A−Aによる断面図である。
【図5】縦糸方向の図4の織物構造体の地糸の2つの連続するシンク間の長さの変化の略図である。
【図6】図4の織物構造体の織り方の略図である。
【図7】図4の織物構造体の製造に使用されるテンプルの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図3は本発明の好ましい実施形態によるパネルの斜視図である。このパネルは、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂の硬化基質内に埋め込まれた織物構造体10で構成される。
【0074】
図4は、図3のパネルの製造に使用された織物構造体10の断面図である。織物構造体10はただ1つの部材であり、炭素ファイバで形成された糸で構成される。
【0075】
この織物構造体10は、連続地糸13により相互に結合された2つの織物ウォール11、12を含む。上部ウォール11は傾斜し、水平である下部ウォール12に対しある角度を形成する。
【0076】
これら2つのウォール11、12は連続し平坦である。これらは、重合後に円形または準円形を有するようになっている織物部分14,15により各端部に結合されるので、結果としてパネルは閉じた物体を形成する。
【0077】
これら2つのウォール11、12は、織物構造体の良好な防水化を確保するために、10本/cmを超える本数の縦糸と、6本/cmを超える本数の横糸とを有する1:1平織を有する。
【0078】
図5は、ここではパネルの長さである縦糸方向(X軸、17)における2つの連続するシンク間の地糸の長さ(Y軸、16)の変化の略図である。
【0079】
これら2つのシンクのそれぞれは、異なるウォールの横糸により、ライザまたは結合地糸に対応し、これらのウォールは相互に結合される。これら2つの連続するシンク間において、対応する地糸13はフロートしている、すなわちフロートする糸の部分を有する。
【0080】
したがって縦糸方向のこの長さの変化(ΔL)は、縦糸方向に連続する同一の地糸の2つのフロート部分の長さの差を求めることにより計算される。
【0081】
図5から、織物構造体の縦糸方向における2つの連続するシンク間の地糸の長さの変化は直線18を描くことがわかる。したがってこの変化は漸進的、すなわち連続的かつ一定である。
【0082】
より一般的には、地糸である追加の縦糸の場合において証明したことを追加の横糸にも適用することができよう。同様に、織物構造体は縦糸方向または横糸方向に複数の地糸を含むので、所与の方向に連続するフロート部分の長さが連続的に変化することを証明することができ、これらの部分のそれぞれが異なる地糸に属する。これらの方向は横糸方向、縦糸方向、さらには対角線方向とすることができる。対角線の場合、フロート部分は相互に変位させることができ、たとえば互い違いに配置することができる。
【0083】
この織物構造体は以下に説明する製造方法により得られた。
【0084】
最初に、各ウォールの基本織りに従って上部布11および下部布12を織ることにより、ウォールを同時に織ることから始めるが、地糸13は上部布11の基本織りに結合されるだけである。前記少なくとも地糸13によりこれら2つのウォールを結合する時点、すなわち、地糸を下部布内に結合する前に、織りを中断し、テンプルと呼ばれるロッド19を織りゾーンに挿入すると、前記少なくとも一本の地糸13だけが引かれるようになる。このようにして引かれた地糸の長さ部分は上部布11の上方にセットされる。
【0085】
もちろん、対称的に作業を行い、地糸を下部布に挿入した後、地糸を上部布の基本織りに結合する前に、下部布の下の地糸を引くことも可能であろう。
【0086】
図4では、垂直カラムにそれぞれ対面した符号5および6の地糸を引くために織りゾーンにテンプルを挿入することにより、概略的には、織りの列21が、糸群すなわち織り位相の置き換えに対応することが確認できる。符号1および3の縦糸は下部布の縦糸に相当し、符号2および4の縦糸は上部布の縦糸に相当する。
【0087】
このようにして引かれた地糸の長さ、ならびに上部布と下部布の距離は、前記少なくとも一本の地糸によるウォールのこの結合における最終の織物構造体のウォール間の距離に相当する。
【0088】
地糸が適当な長さまで引かれたら、テンプルが織りゾーンが引き抜かれ、通常の織物ウォールの製造が再開され、この地糸によりウォールが次回結合されるまで継続される。
【0089】
したがってこれらの地糸13は、織物構造体の上部ウォール11および下部ウォール12を形成する2つの布の上方(あるいは対称的にその下方)で引かれ、したがって一部、織物構造体の外側にセットされる。
【0090】
次にこれらの地糸は、布同士を遠ざけることにより織物構造体の中に戻される。
【0091】
前記少なくとも一本の地糸を引く段階において地糸がロッド19の表面で滑らないようにするために、ロッド19は、粗面、あるいはそれぞれが地糸を受け入れるようになっている垂直溝の網20をその端部のうちの1つに有することが有利である。さらにロッドは水平面21、22内で移動可能であるのが有利である。
【0092】
ウォール11、12はここでは平面であるので、ロッド19は均一の直径を有し、表面の起伏は有さない(図7)。織物構造体のウォールのうちの1つに特定の形状を付与することを所望する場合には、ロッドは粗面または溝の網を備える端部上に表面の起伏を含むことになり、この起伏は、このようにして引かれた地糸のレベルにおけるウォールに付与すべき起伏の型を構成する。もちろん、織物構造体の織りが進行するに従い、このウォールの最終形状を作成するために、地糸を引く段階でテンプルを交換することが必要となることがある。
【0093】
より一般的には、本発明は、少なくとも一本の地糸により結合された少なくとも2枚の布を織る方法に関する。本発明によれば、
a) 少なくとも一本の縦糸または少なくとも1つの糸群を第1布の基本織りに挿入することによりこれらの布の織りを開始し、この縦糸またはこの糸群が前記地糸を構成し、
b) 前記少なくとも一本の地糸を第2布の基本織りに挿入する前に、これらの布の織りを中断し、
c) 引かれた長さの少なくとも一部を、このようにして引かれたこれらの布で形成された一体物の外側にセットすることにより、前記少なくとも一本の地糸を第2布の側に引き、
d) 前記少なくとも一本の地糸を第二布の基本織りに挿入して布の織りを再開し、
‐ これらの布のうちの1つの布の基本織りに前記少なくとも一本の地糸を新しく挿入する毎に、以下のサイクルを反復する:
e) 布の織りを中断する、
f) 引かれた長さの少なくとも一部を、このようにして引かれたこれらの布で形成された一体物の外側にセットすることにより、前記少なくとも一本の地糸を引く、
g) 次に、前記少なくとも一本の地糸を前記布の基本織りに挿入して布の織りを再開する。
【0094】
前記少なくとも一本の地糸を引く作業は把握要素を使用して行うことができるが、この要素は、上で説明したテンプル、あるいは端部にフックを具備するニードルアセンブリとすることができ、これらの各ニードルにより一本の地糸のみを引くことができる。これらのニードルは電磁石あるいは油圧または空圧ピストンにより駆動される。さらにニードルは移動運動に適している。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の方法は、複合板金部品、ならびに、たとえば胴体または飛行機の翼またはレードームなど胴体の一部分など、飛行機の製造に関わる構造部品の作製に適用することができる。また推進装置のタンクあるいはタンクのスカートを作製することも可能である。
【0096】
たとえば船体、コンテナ、フロートの作製など、海事的応用も可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 織物構造体
11(上部)ウォール
12(下部)ウォール
13 (連続)地糸
14、15 織物部分
16 Y軸
17 X軸
18 直線
19 ロッド
20 網
21、22 水平面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一本の連続地糸(13)により相互に結合された少なくとも2つの織物ウォール(11、12)を備える織物構造体において、少なくとも一本の地糸(13)の連続する2つのシンカ間の長さの変動が、縦糸方向においておよび/または横糸方向において前記構造体の少なくとも一部分上では連続的であることを特徴とする織物構造体。
【請求項2】
上部ウォール(11)と、中間ウォールと、下部ウォール(12)とを含み、前記ウォールが重ねられ、少なくとも一本の第1地糸が前記上部ウォールと中間ウォールを結合し、少なくとも一本の第2地糸が前記下部ウォールと中間ウォールを結合し、前記第1地糸および第2地糸のうちの少なくとも一方が、連続する2つのシンカ間で長さの変化を有し、前記シンカのそれぞれが、横糸方向および/または縦糸方向において前記構造体の少なくとも一部分上では連続的である、異なるウォールの横糸によって捕捉されるシンカに対応することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
少なくとも一本の連続地糸(13)により相互に結合された上部織物ウォール(11)および下部織物ウォール(12)を備える織物構造体において、前記少なくとも一本の連続地糸(13)が横糸方向に複数のフロート部分を有し、これらの部分のそれぞれが、上部ウォールの少なくとも二本の縦糸ならびに下部ウォールの少なくとも二本の縦糸によって結合された前記少なくとも一本の地糸(13)に対応し、前記フロート部分の長さの変化が、横糸方向および/または縦糸方向において前記構造体の少なくとも一部分上では連続的であることを特徴とする織物構造体。
【請求項4】
前記地糸(13)が加圧されるため、前記地糸(13)の連続する2つのシンカ間の長さの少なくとも大部分が等間隔であるまたは等間隔ではないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記ウォール(11、12)の少なくとも一方のウォールの縦糸および/または横糸の長さが他方のウォール(11、12)の縦糸および/または横糸の長さと異なることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記ウォール(11、12)が異なる織り方を有することを特徴とする請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
前記ウォール(11、12)が連続しているまたはしていないことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項8】
前記構造体がただ1つの部材であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項9】
前記ウォール(11、12)および/または前記地糸(13)が異なる材料で作製されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項10】
前記地糸(13)が、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、集塊化繊維を含む糸、平糸、柔軟性金属糸、およびこれらの要素の組み合せを含む群の中から選択されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項11】
前記織物構造体が、前記ウォール(11、12)を接続する少なくとも1つの側面ウォール(14、15)を含み、前記縦糸および/または横糸が、前記ウォール(11、12)のうちの少なくとも1つの中および前記側面ウォール(14、15)の中に組み込まれ、前記糸が連続していることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の構造体を備えることを特徴とする柔軟容器。
【請求項13】
前記構造体がさらに防水であることを特徴とする請求項12に記載の容器。
【請求項14】
耳と、容器が加圧されている時に円形部分を形成するようになっているゾーンと、エアバッグを形成するための中央平坦ゾーンとを含むことを特徴とする請求項13に記載の容器。
【請求項15】
前記ウォール(11、12)が請求項1から11のいずれか1項に記載の構造体によって形成されることを特徴とするそれぞれの間に間隔がとられた少なくとも2つのウォールを備えるパネル。
【請求項16】
請求項15に記載の少なくとも1つのパネルを備えることを特徴とする船舶。
【請求項17】
請求項15に記載の少なくとも1つのパネルを備える少なくとも一本の連続地糸(13)により相互に結合された上部織物ウォール(11)および下部織物ウォール(12)を備えることを特徴とする織物構造体飛行機。
【請求項18】
請求項1から11のいずれか1項に記載の構造体を含むことを特徴とする内装材または外装材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−511173(P2011−511173A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543523(P2010−543523)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050938
【国際公開番号】WO2009/095404
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(504144895)
【Fターム(参考)】