説明

缶用孔開け器

【課題】平面を有する缶のその平面に、複数の孔を容易に開けて、均等に配置する。
【解決手段】平面状の孔開け面を有する缶のその孔開け面に孔を開けるための缶用孔開け器において、先端が尖っている複数の棒状の孔開け部材と、この孔開け部材をその軸方向に摺動可能に所定間隔で保持する保持部材とを備えている。そして、この保持部材は、孔開け面に当接する当接面と、この当接面に形成されて複数の孔開け部材の先端部を突出させる開口部とを有する。この保持部材を孔開け面に当接し、孔開け部材の先端部を突出させることにより、缶の孔開け面に複数の孔を均等に配置して容易に開けることができる。さらに、缶が孔開け面に交差する平面である交差面を有している場合には、この交差面に当接して、保持部材の位置決めをする位置決め部材を備えることによって、孔開け面の所定位置に保持部材を当接させて、孔を開けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面を有する缶のその平面に、液体、粉体等の内容物を散布する孔を開けるための缶用孔開け器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体、粒体等を地面、床面等に散布する場合には、それぞれの用途に応じ機械式の散布機が用いられることが多い。しかし、このような機械式の散布機は、その設備コストが高く、また、散布作業前において缶等の容器から内容物を移したり、散布作業後において散布機を洗浄したり、等の手間がかかっていた。
【0003】
そこで、設備コストを抑え、上記のような散布作業前後の手間を軽減するために、現場では、缶等の容器に直接複数の流出孔を開けて、この流出孔から内容物を散布する方法が実際には行われている。例えば、特許文献1には、円筒の底面に細孔を複数個あけた農薬微粒剤の散布容器が示されている。そして、特許文献1の第1図に示されるような孔を開けるには、通常、釘等が用いられている。
【特許文献1】実開昭61−12381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、釘等を用いて複数の孔を開けるには、缶の側面等に釘を金槌で叩いて貫通させるという作業を一つづつ繰り返し行う必要があり、作業が面倒であった。また、複数の孔を手作業で均等に配置することは困難であり、内容物を均一に散布したい場合には不適であった。
【0005】
本発明の課題は、平面を有する缶のその平面に、複数の孔を容易に開けて、均等に配置することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜3に示すように、平面状の孔開け面(側面12)を有する缶(一斗缶1)の前記孔開け面に複数の孔(流出孔3)を開けるための缶用孔開け器2であって、先端が尖っている複数の棒状の孔開け部材21と、該孔開け部材21をその軸方向に摺動可能に所定間隔で保持する保持部材(前方保持部材22、後方保持部材23)とを備え、前記保持部材は、前記孔開け面に当接する当接面(前方側面22b)と、この当接面に形成されて前記複数の孔開け部材の先端部を突出させる開口部22cとを有することを特徴とする。
【0007】
このように、先端部が尖った複数の棒状の孔開け部材21が、その軸方向に保持部材によって摺動可能に保持されて、この保持部材の当接面22bが缶の孔開け面に当接して、複数の孔開け部材の先端部が当接面に形成された開口部22cから突出することにより、缶の孔開け面に複数の孔を容易に開けることができる。また、これらの孔開け部材21は所定間隔で保持されていることにより、孔を均等に配置することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図1〜3に示すように、請求項1に記載の缶用孔開け器2において、前記保持部材には、前記缶の孔開け面と交差する交差面(上面11)に当接して、前記保持部材の位置決めを行う位置決め部材25が設けられていることを特徴とする。
【0009】
このように、位置決め部材25が、缶の孔開け面と交差する交差面に当接して、保持部材の位置決めを行うことにより、保持部材を孔開け面の所定位置に当接させて、孔を所定位置に開けることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図1、2に示すように、請求項1または2に記載の缶用孔開け器2において、前記保持部材と前記位置決め部材25の少なくともいずれか一方に、前記孔開け面または交差面に吸着する吸着手段(ゴム磁石板26、27)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このように、吸着手段を、保持部材および位置決め部材25の少なくともいずれか一方に設け、缶の孔開け面または交差面に吸着させることにより、位置決めされた保持部材がずれることを防止することができる。
【0012】
吸着手段としては、磁石、吸盤、粘着材等が挙げられる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図1、2に示すように、請求項1から3のいずれか一項に記載の缶用孔開け器2において、前記孔開け部材21と前記保持部材のうちの一方(例えば、孔開け部材21)には前記孔開け部材21を係止する係止部(中軸部21b、係止部材21e)が設けられ、他方(前方保持部材22、後方保持部材23)には前記係止部に係止する被係止部(22d、23d)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
このように、孔開け部材21および保持部材のうちの一方に設けられた係止部が、他方に設けられた被係止部に係止することにより、摺動可能に保持されている孔開け部材21の保持部材からの抜け出しを防止することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図1、2に示すように、請求項1から4のいずれか一項に記載の缶用孔開け器2において、前記孔開け部材21は、その先端面が孔開け部材の軸方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【0016】
このように、孔開け部材21の先端面が軸方向に対して傾斜していることにより、缶の孔開け面に開けられた孔の内周の全周にわたってバリが生じることがなく、内容物の流出が阻害されることを無くすことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、平面状の孔開け面を有する缶の孔開け面に複数の孔を開けるための缶用孔開け器において、先端が尖っている複数の棒状の孔開け部材と、この孔開け部材をその軸方向に摺動可能に所定間隔で保持する保持部材とを備え、この保持部材は、缶の孔開け面に当接する当接面と、この当接面に形成されて複数の孔開け部材の先端部を突出させる開口部とを有するため、缶の孔開け面に複数の孔を均等に配置して容易に開けることができる。さらに、缶が孔開け面と交差する交差面を有している場合には、この交差面に当接して、保持部材の位置決めを行う位置決め部材を備えることによって、孔開け面の所定位置に保持部材を当接させて、孔を開けることができる。
【0018】
そして、これらの保持部材と位置決め部材の少なくともいずれか一方に、缶の孔開け面または交差面に吸着する吸着手段が備えられることによって、位置決めされた保持部材のずれを防ぐことができる。
【0019】
また、孔開け部材と保持部材のうちの一方に孔開け部材を係止する係止部が設けられ、他方にこの係止部に係止する被係止部が設けられることによって、孔開け部材が保持部材から抜け出すことを防止できる。また、孔開け部材の先端面を軸方向に対して傾斜させることにより、缶の孔開け面に開けられた孔の内周の全周にわたってバリが生じることなく、内容部の流出が阻害されることが無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本実施の形態は、本発明を、道床安定剤が容れられた一斗缶1の側面12(孔開け面)に、道床安定剤を散布するための複数の流出孔3を開けるための缶用孔開け器2に適用したものである。道床安定剤とは、有道床軌道の道床抵抗力を高めるために道床に散布する合成樹脂からなるもので、例えば、湿気硬化型ウレタン樹脂などである。
【0021】
ここで、孔開けの対象となる一斗缶1は、図3(a)に示すように、平面である上面、底面および側面で構成され、上面11が240mmの略角形で、高さが350mmの略立方体の形状で、スチール製のものである。その上面11の中央付近には持ち手を有し、一隅角部には注ぎ口を有し、外周端部には上方に僅かに突出した縁部11aを有している。本実施の形態において、孔開け面である側面12は、注ぎ口を挟み込むように配置されている2つの側面を除いた側面の内の一方である。
【0022】
まず、この缶用孔開け器2を構成する各部材について説明する。缶用孔開け器2は、図1(a)、(b)に示すように、先端部が尖っている複数の棒状の孔開け部材21と、この孔開け部材21をその軸方向に摺動可能に所定間隔で保持して一斗缶1の側面12に当接する保持部材と、この保持部材を一斗缶1の上面11(交差面)に当接して保持部材の位置決めをする位置決め部材25とを備えている。以下において、前(方)とは、缶用孔開け器2を一斗缶1に当接させた状態で側面12に直交する方向の、缶用孔開け器2から一斗缶1への向きとし、後(方)とは、その逆向きを意味するものとする。
【0023】
孔開け部材21は、図2(d)に示すように、断面が円形の棒状、ステンレス製のもので、前軸部21a、中軸部21b(係止部)および後軸部21cの軸部と、係止部材21e(係止部)とからなる。前軸部21aは、径が2.5mmである。そして、その先端面は孔開け部材の軸方向に対して傾斜して、つまり、先端面が斜めになり一端が尖って形成されている。中軸部21bおよび後軸部21cは、径が6mmで、それらの境目には外周面にわたって溝21dが形成されており、略円環状の一部を切り欠いた形状の係止部材21eが嵌め込まれて中軸部21bの外周面から外方に突出するようになっている。
【0024】
保持部材は、軽くて取り扱いが容易で耐薬品性を有するポリアセタール樹脂製で、長方形板状の前方保持部材22、後方保持部材23および角形棒状の連結部材24とで構成されている。前方保持部材22と後方保持部材23とは、下端部間が連結部材24で連結され、上端部間が後述する位置決め部材25の後方部分で連結されている。
【0025】
前方保持部材22は、図2(c)に示すように、側面12に当接する前方側面22b(当接面)と、この前方側面22bに形成されて複数の孔開け部材21の先端部を突出させる開口部22cとを有している。この開口部22cは、孔開け部材21の前軸部21aをその軸方向に摺動可能に保持する軸受孔22aが二段で千鳥状に配置されて形成されている。軸受孔22aは、内径3mmの貫通孔であり、中心間隔が15mmの等間隔で、一段目に14個、二段目に13個、合計27個形成されている。一段目と二段目の間隔は15mmである。
【0026】
この前方保持部材22の前方側面22bには、一斗缶1の側面12に当接する部分の略全面にわたって厚さ2mmのゴム磁石板26(吸着手段)が貼り付けられている。このゴム磁石板26には、軸受孔22aと対応する位置に、軸受孔22aの径よりも若干大きい径の挿通孔26aが形成されている。
【0027】
後方保持部材23は、図2(a),(c)に示すように、孔開け部材21の後軸部21cをその軸方向に摺動可能に保持する軸受孔23aの内径が6.5mmで形成されていることを除き、前方保持部材22と同様のものである。
【0028】
前方保持部材22と後方保持部材23とは、所定の間隔をおいて平行に配置され、前方保持部材22の後方側面と後方保持部材23の前方側面の下端部間が連結部材24によって連結されている。これにより、前方保持部材22と後方保持部材23との向い合う側面間には空間が形成され、孔開け部材21の中軸部21bがこの空間に収められるように組み立てられる。
【0029】
位置決め部材25は、図3(b)に示すように、略長方形板状のものであり、その幅は一斗缶1の上面11の縁部11aの内面間に略等しい寸法で形成されている。また、一斗缶1の側面12の上部の縁部11aに位置決め部材25が接触しないように、中間部25bの側部と下部に凹みが形成されている。
【0030】
この位置決め部材25の前部25aの下面には、一斗缶1の上面11に当接する部分の略全面にわたって厚さ2mmのゴム磁石板27(吸着手段)が貼り付けられている。
【0031】
そして、後方保持部材23の後方側面と位置決め部材25の後部25cの後方側面には、その全面にわたって厚さ1mmの板状のステンレス製の保護板28が取り付けられている。この保護板28には、後方保持部材23の軸受孔23aと対応する位置に、軸受孔23aの径よりも若干大きい径の挿通孔28aが形成されている。
【0032】
缶用孔開け器2は、図1に示すように、以上のように構成する各部材等をボルト、ねじ等で組み立てて完成する。複数の孔開け部材21は、その前軸部21aおよび後軸部21cを、それぞれ対応する前方保持部材22および後方保持部材23の軸受孔22a、23aでその軸方向に摺動可能に保持されている。そして、一斗缶1の側面12に当接する前の状態では、前軸部21aは前方保持部材22の前方側面22bの開口部22cから突出しておらず、後軸部21cは後方保持部材23の後方側面から突出している。一方、一斗缶1の孔開け面に流出孔3を開けた状態では、前軸部21aは前方保持部材22の前方側面22bの開口部22cから突出し、後軸部21cは後方保持部材23の後方側面から突出する長さが短くなる。
【0033】
このとき、孔開け部材21の中軸部21bは、前方保持部材22と後方保持部材23の間の空間内にあって、孔開け部材21の中軸部21bの前端面が前方保持部材22の軸受孔22aの周囲の後方側面(被係止部22d)に当接して係止することにより、前方に抜け出すことを防止され、孔開け部材21の係止部材21eが後方保持部材23の軸受孔23aの周囲の前方側面(被係止部23d)に当接して係止することにより、後方に抜け出すことを防止されている。
【0034】
次に、上記した缶用孔開け器2を用いて一斗缶1の側面12に流出孔3を開ける方法について説明する。まず、一斗缶1を、その上面11を上にして床面等に載置する。缶用孔開け器2の孔開け部材21の前軸部21aの先端は、前方保持部材22の軸受孔22a内に収容しておく。図3(a)に示すように、位置決め部材25の前部25aの下面を一斗缶1の上面11の横方向の両縁部11a間に嵌め込むようにして一斗缶1の上面11に当接させながら、前方保持部材22の前方側面22dを一斗缶1の側面12に当接させる。位置決め部材25の前部25aの下面および前方保持部材22の前方側面22dは、それぞれ一斗缶1の上面11および側面12にゴム磁石板26、27によって吸着されてずれが防止される。
【0035】
後方保持部材23の後方側面から突出している孔開け部材21の後軸部21cの後端面を一つづつ金槌K等で叩いて、孔開け部材21の前軸部21aの先端を突出させ、一斗缶1の側面12を貫通させて流出孔3を開ける。予め孔開け部材21が所定位置に配されているので、複数の孔を開ける場合であっても、手間がかからない。図3(b)に示すように、缶用孔開け器2を取り外すと一斗缶1の側面上部付近に径が2.5mmの流出孔3が二段で千鳥状に27個形成される。
【0036】
流出孔3が形成された一斗缶1を用いて道床安定剤を散布する場合には、一斗缶1の流出孔3が形成されている側面12を下方(道床)に向けて、一斗缶1内の道床安定剤を流出孔3から流出させる。流出孔3の径、数、配置を上記のように設定することは、散布量が約2kg/m2となり、道床安定剤の散布に好適である。
【0037】
また、流出孔3は、孔開け部材21の先端面が斜めになり一端が尖った状態になっているため、孔の内周の全周にわたってバリが生じることはなく、道床安定剤を安定して流出させることができる。
【0038】
なお、以上の実施の形態においては、複数の流出孔を径が2.5mmで15mm間隔の千鳥状の配置としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、散布する量や内容物等に応じて変更される性質のものである。
また、全ての孔開け部材により流出孔を開ける必要はなく、これにより流出孔の数を調節してもよい。また、孔開け部材を一つづつ叩いて孔を開けることとしたが、孔開け面が凹まない程度の強度をもつものであれば、複数あるいは全ての孔開け部材を一括して叩いても良い。
その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を適用した一実施の形態の缶用孔開け器を示す断面図であり、(a)は孔を開ける前の状態を、(b)は孔を開けた後の状態を示している。
【図2】同、缶用孔開け器の構成を示す図であり、(a)は缶用孔開け器の後方側面図、(b)は上面図、(c)は右側面図、(d)は孔開け部材の軸部の側面図、(e)係止部材の正面図である。
【図3】同、(a)は缶用孔開け器を使用する状況の説明図であり、(b)は缶用孔開け器により孔を開けた一斗缶の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 一斗缶
2 缶用孔開け器
3 流出孔
11 上面(交差面)
11a 縁部
12 孔開け面
21 孔開け部材
21a 前軸部
21b 中軸部(係止部)
21c 後軸部
21d 溝
21e 係止部材(係止部)
22 前方保持部材
22a、23a 軸受孔
22b 前方側面(当接面)
22c 開口部
22d、23d 被係止部
23 後方保持部材
24 連結部材(保持部材)
25 位置決め部材
26、27 ゴム磁石板(吸着手段)
26a、27a、28a 挿通孔
28 保護板
K 金槌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の孔開け面を有する缶の前記孔開け面に複数の孔を開けるための缶用孔開け器であって、
先端が尖っている複数の棒状の孔開け部材と、
該孔開け部材をその軸方向に摺動可能に所定間隔で保持する保持部材とを備え、
前記保持部材は、前記孔開け面に当接する当接面と、この当接面に形成されて前記複数の孔開け部材の先端部を突出させる開口部とを有することを特徴とする缶用孔開け器。
【請求項2】
前記保持部材には、前記缶の孔開け面と交差する交差面に当接して、前記保持部材の位置決めを行う位置決め部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の缶用孔開け器。
【請求項3】
前記保持部材と前記位置決め部材の少なくともいずれか一方に、前記孔開け面または前記交差面に吸着する吸着手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の缶用孔開け器。
【請求項4】
前記孔開け部材と前記保持部材のうちの一方には前記孔開け部材を係止する係止部が設けられ、他方には前記係止部に係止する被係止部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の缶用孔開け器。
【請求項5】
前記孔開け部材は、その先端面が孔開け部材の軸方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の缶用孔開け器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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