説明

罫線割れ特性と印刷効果が改善されたカートン原紙

【課題】 優れたインキ発色性を有した自然色調の色相をもつ多層抄きカートン原紙で、かつ、紙器・包装材料・箱等に加工した時の罫線割れ特性が改善された多層抄きカートン原紙を提供することにある。
【解決手段】 多層抄きカートン原紙の最上層が段ボール古紙を高濃度叩解したパルプ(A)と未晒クラフトパルプ(B)を主体として構成され、かつ、その表面反射特性L*、a*、b*の値が所定の範囲内にあるときに視覚的には非常に優れたインキ発色性を示し、更に、ティシュペーパーの箱とした場合、取出し口のフィルムを無くすことで、中身のティシュペーパーの白さとカートン原紙の色彩が鮮やかなものとなる。罫線割れ特性が改善されているので、あらゆる紙器・包装材料・箱に加工可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層抄きのカートン原紙に関する。さらに詳しくは、本発明は特にカートン原紙が特定の色相を保持させることにより印刷インキの発色を良くする(印刷効果向上)、カートン原紙をティシュペーパーの箱に加工した場合、中身のティシュペーパーが白く美しく見える(外観美的効果向上)、カ−トン罫線割れ特性の改善により面取り加工が容易となった罫線割れ特性が改善されたカートン原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
カートン原紙、特に、ティシュペーパーの箱に加工される多層原紙は一般的に最上層(表面層とも言う)が漂白されたクラフトパルプが使用されるが、最近の自然志向、環境への配慮から取り出し口にフィルムを貼付しないカートンが提案されているが、美麗印刷、広告、宣伝効果の主張、顧客への視覚的訴えの為に原紙の表面層としては依然として、白物が使用されてきた。
【0003】
上記のような背景により最近、原紙の表面層、及び裏面層を半晒クラフトパルプを使用した、いわゆる未印刷、又は無印刷のティシュペーパーの箱が提案、販売されているが、デザイン性が乏しく特徴付けが難しいため、依然として、印刷された顧客の目を引きつけるインキ発色性に優れた自然色調の多層抄きカートン原紙が要望されている。
【0004】
板紙に関しては、罫線割れの改良として分子内に炭素数12〜24のアルキル基、またはアルキロイル基を少なくとも1つ以上含有するカチオン性界面活性剤をパルプスラリーに添加し、抄紙する板紙の製造が知られている(特許文献1)。
【0005】
そして紙をその特性を表面反射特性で表記することが提案されている。その例としては、電子写真転写紙では複写機によって転写された原像の色調が原版の色調を正確に再現するためL*≧90,a*=+4〜−2,b*=+2〜−9に調整することが(特許文献2、特許文献3)、被熱転写用紙としては受像層の白色度経時変化の低下、画像の鮮明度を長期間にわたって維持する為に、受容層が塗布された面の表面反射特性が、JIS Z 8722に規定された方法で測定しJIS Z 8730によって規定された方法で表示した場合のL、aおよびbの値が各々、L=90以上、a=−1.0〜+2.0、b=−2.0〜−5.0の範囲にあることが提案されている(特許文献4)。また、軽量塗被紙として原紙の地合いムラ、塗被層の塗布ムラに視感の悪さの改良、印刷物の品質を向上させる為に、原紙、塗被層に着色剤、黒色染料、顔料等を配合して塗工用原紙白色度と塗被紙白色度の差を6%以内にするために、a*=−5〜0.5、b*=―1〜8.0に調整することが提案されている(特許文献5)。しかしながら、多層抄きカートン原紙において、その特性を表面反射特性で表記することは具体的には提案されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−200279号公報
【特許文献2】特許第3384394号公報
【特許文献3】特許第3217085号公報
【特許文献4】特許第2672317号公報
【特許文献5】特許第2554344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れたインキ発色性を有した白物でない自然色調の色相をもつ多層抄きカートン原紙で、かつ、紙器・包装材料・箱等に加工した時の罫線割れ特性が改善された多層抄きカートン原紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すぐれたインキ発色性を有する多層抄きカートン原紙を提供するために、本発明者らは種々の実験の結果、視覚的に非常にすぐれ、特に、好適な明度を有するカートン原紙を得ることができることを見出し、更に、青色、赤色ならびに白色の各着色料の種類ならびに量を適宜変えて自然色調を検討した結果、表面反射特性L*、a*、b*の値が所定の範囲内にあるときに視覚的には非常にすぐれたインキ発色性を示すことを見出した。
【0009】
紙器・包装材料・箱に加工した時の罫線割れ特性を改善した多層抄きカートン原紙提供するために、本発明者らは、安定的に罫線割れ特性が改善されたカートン原紙を得るための要因を多角的に検討した結果、カートン原紙の最上層を段ボール古紙を高濃度叩解したパルプ(A)と未晒クラフトパルプ(B)を主体として構成して製造することにより、上記問題点を解決できることを見出し本発明を完成した。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の(1)〜(6)から構成される。
【0011】
(1)多層抄きのカートン原紙であって、その最上層が段ボール古紙を高濃度叩解したパルプ(A)と未晒クラフトパルプ(B)を主体として構成され、かつ、その表面反射特性(JIS Z 8729に規定された表示法、光源:C/2)が
L*=59.5〜63.0,a*=4.0〜6.0,b*=19.0〜21.5
に調整されており、かつ、直径1.0mm以上のチリが10個/m以下であることを特徴とするカートン原紙。
【0012】
(2)最上層に使用されるパルプ(A)のフリーネスが200〜350mlCSFであることを特徴とする(1)項に記載のカートン原紙。
【0013】
(3)カートン原紙が3〜9層の多層抄きで有ることを特徴とする(1)〜(2)項のいずれかに記載のカートン原紙。
(4)最上層には更にポリビニルアルコールが表面塗工されていることを特徴とする(1)〜(3)項のいずれかに記載のされたカートン原紙。
【0014】
(5)最上層表面の王研式平滑度が5秒以上であることを特徴とする(1)〜(4)項のいずれかに記載のカートン原紙。
【0015】
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の多層抄きカートン原紙を使用することを特徴とする取出し口のフィルムが無いティシュペーパーの箱。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特に、カートン原紙の最上層に漂白パルプを使わずに、自然色の特定の色相を持つことで印刷インキの発色性を高め、特に、ティシュペーパーの箱とした場合、中身のティシュペーパーが白く美しく見える。チリをなくすることで、バーコードの誤読がなくなる。罫線割れ特性が改善されているので、あらゆる紙器・包装材料・箱等に加工可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の表面反射特性値L*、a*、b*は、JIS Z 8722及びJIS Z8729に規定された方法によって得られ、この規定によれば、L*、a*、b*の3つの値によって測定対象物の色相が表わされる。ここで、L*は明度を表わし、この数値が大きい程、明度が高いことを示す。また、a*は赤味を表わし数値が大きい程、赤味が強いことを示し、−(マイナス)になると赤味が不足していること、いいかえれば、緑色味が強いことを示す。更に、b*は、黄色味の指標であり、この数値が大きい場合は黄色味が強いことを示し、−(マイナス)になると黄色味が不足し青くなることを示している。そして、a*、b*のいずれも0の場合は、無色を意味している。
【0018】
上記の値のうち、明度を表わすL*は色調とは直接関係ないが、L*が低くなると色相に視覚的な「冴え」がなくなってしまう。したがって、カートン原紙として明るい色相を得る為には、L*は61程度であることが望ましい。本発明のカートン原紙は、箱等に加工して内容物の白さとのコントラストを狙っているので、最上層の明度の上げすぎは好ましくない。
また、a*の値は5.0程度の赤味、更に、b*の値は20.0程度の黄味の色相にすることが、印刷インキの発色性が良いことを見いだし、本発明に至った。また、本発明の色相のカートン原紙をティシュペーパーの箱とした場合、ティシュペーパーの白さが際立つのでもっとも好ましい。
また、箱の取出し口のフィルムをなくすことで、ティシュペーパーの白とカートン原紙の色相が冴え、しかもティシュペーパーがなくなった後、そのまま、分別することなく古紙として回収が可能である。
本発明においては、表面反射特性が上記の値の範囲内になるように、層に各種の着色剤を複合的に添加される。このような目的で添加される着色剤としては、白色顔料、青染料、黄染料、赤染料がある。さらに、これらの他にも蛍光増白剤を添加することもできる。
本発明においては、上記の着色剤を多層抄きの最上層に内添、及び/または最上層に表面塗工することによって、結果的に上記の表面反射特性の値に調整することができる。
【0019】
本発明における高濃度叩解とは、段ボール古紙を叩解する際のパルプ濃度が20〜35重量%の範囲であることを意味する。この高濃度叩解によれば、6重量%以下で行う通常の低濃度叩解に比べ、繊維の切断が少なくなり、フィブリル化が促進されるので、比表面積と柔軟性が増加し、これによって、パルプ強度が向上し、チリが少なく及び印刷適性に優れ、罫線割れ特性が良好なパルプが得られる。パルプ濃度が20重量%未満である場合には、得られる原紙の罫線割れ適性が良好とならず、35重量%を越えた場合は、パルプスラリーの流動性が低下し、安定した叩解が困難となる。本発明が対象としている高濃度パルプは、パルパーで離解、精選後得られた段ボール古紙パルプをシックナー、スクリュープレス等のパルプ搾水装置により搾水したパルプである。本発明が対象にしている段ボール古紙は、通常の段ボール箱古紙のほか、未晒のクラフト袋、電話帖など茶〜黄色の古紙が混合使用できる。本発明における高濃度叩解した段ボール古紙パルプ(A)のフリーネスは200〜350mlCSFの範囲であることが必要である。200mlCSF未満であると抄紙工程での脱水性が低下し、350mlCSFを越えると高濃度叩解から得られる上記メリットが低下するとともに、多層抄きカートン原紙の最上層表面の平滑度が低下する。
【0020】
本発明においては、上記の高濃度叩解した段ボール古紙パルプ(A)と未晒クラフトパルプ(B)が主体として多層抄きのカートン原紙の最上層に使用される。本発明においては含有量が30〜60絶乾重量%となるように未晒のクラフトパルプ(B)を使用することが好ましい。60絶乾重量%を越えて配合すると原紙の地合が不均一となり、原紙の表面性がわるくなるので印刷適性が劣化する。このパルプ(A)と(B)からなる最上層表面に観察されるチリ特性としては、直径1.0mm以上のチリが10個/m以下であることが好ましい。チリ個数が10個/mを越えて多い場合、バーコードを印刷した紙器・包装材料・箱として使用する時、バーコード読取時の誤読の原因となる。
【0021】
本発明の多層抄きカートン原紙は、上記パルプ(A)と(B)を最上層となるように多層抄き抄紙機で抄き合わせて抄造される。抄き合わせられる層の数は最上層を含めて3〜9層であることが好ましい。1層または2層抄きの場合は、紙器として使用するために罫線をいれて箱とした時に曲げ応力が緩和されず、罫線割れとなる。3層抄き以上の場合は、層間で剥離を起こして罫線割れは少なくなる。10層抄き以上では各層の米坪が少なくなり過ぎ、事実上、抄造できない。本発明の多層抄きカートン原紙の最上層以外の層のパルプは最上層に使用したパルプを使用しても良いし、雑誌古紙、新聞古紙等回収古紙を離解して得られるパルプ、それを脱墨したパルプおよび晒クラフトパルプなどのバージンパルプのように特に限定はされない。抄紙に際しては、ロジンやアルキルケテンダイマー等のサイズ剤、ポリアクリルアミドや澱粉等の紙力増強剤、硫酸バンド等のpH調整剤等、その他公知の内添薬品を適宜用いることができる。また、最上層とその他の層の間に、層間澱粉または層間紙力剤をスプレーすることで罫線割れ特性が更に改善される。
【0022】
本発明の多層抄きカートン原紙は、以上のように抄紙した紙の最上層にはポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)が表面塗工することで抄造される。表面塗工の方法は、通常採用される任意の設備で良く、例えば、バーコーター、ロッドメタリングコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、マシンカレンダーに付けられた水ドクター等が用いられる。本発明のポリビニルアルコールの塗工量は固形分重量で0.1〜0.5g/mとなるように塗工するのが好ましい。塗工量が0.1g/m未満である場合には、原紙の表面強度が不十分となり、オフセット印刷時に最上層表面のパルプが取られる。また、印刷したインキが原紙の内部に沈み込み、印刷インキの発色が低下する。0.5g/mを越えて多い場合は、原紙に汚れが生じ、見た目が低下する。
【0023】
本発明の多層抄きカートン原紙において、その最上層の表面の王研式平滑度は5秒以上が好ましく、5秒に満たない時は抄紙機に設置されているマシンカレンダー及び/またはグロスカレンダーにて平滑化処理がなされる。王研式平滑度が5秒未満の場合、オフセット印刷した時にインキが紙に載らず、白抜けが発生する。特に、グラビア印刷の時はこの欠点が顕著になるので、必要な平滑度にあわせて、カレンダーのニップ数、線圧等を決定して抄造される。
【0024】
本発明の多層抄きカートン原紙は、紙器・包装材料・箱として使用されることが多く、その米坪は230から600g/mである。中でもティシュペーパーの箱として使用する場合は、米坪370g/m、厚さ460μmが常用される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何等制限されるものではない。なお、実施例及び比較例中の%は、特にことわらない限り重量%を示す。また、実施例及び比較例において行った評価と評価法は次の通りである。
【0026】
(1)フリーネス(カナダ標準ろ水度ともいう):JIS P 8121による。
(2)米坪:JIS P 8124による。
(3)厚さ:JIS P 8118による。
(4)色相:JIS Z 8729による。
(5)チリ:直径1.0mm以上の1m当りのチリの個数を目視計測する。 JIS P 8145に準じる。
(6)平滑度:JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.5−2による。
(7)インキ白抜け:RI印刷機で、マゼンタのプロセスインキを用いて、供給インキ量0.5ccでオフセット印刷し、最上層表面の白抜けを目視評価。
(8)インキ発色性:RI印刷機で、マゼンタのプロセスインキを用いて、供給インキ量0.25ccでオフセット印刷し、インキの発色性を目視評価。
(9)罫線割れ長さ率:乾燥機で絶乾状態まで乾燥したサンプルを最上層面を外側にして半分に折りたたみ、所定のクリアランスに設定しラボミニカレンダーを使用して、加圧処理を行った。この折った部分の割れ長さを測定し、下式から割れ長さ率を求めた。
割れ長さ率(%)=[割れた長さ(mm)/折った部分の全体長さ(mm)]×100
(10)ピッキング:JAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.1による。
【0027】
<実施例1>
ラブフレーカー型DDR(ラブフレーカー42型:相川鉄工製)を用いて、パルパーで離解、精選後得られた段ボール古紙パルプをパルプ濃度25重量%で、フリーネスが300mlCSFとなるように叩解したパルプ(A)を含有する溶液と、針葉樹の未晒しのクラフトパルプをパルプ濃度4重量%で、フリーネス500mlCSFとなるように通常に叩解したパルプ(B)を含有する溶液を、パルプ(A)/パルプ(B)の絶乾重量比が60/40となるように混合して最上層用のパルプスラリーを得た。得られた最上層用パルプスラリーに、スラリーpHが5.0となるように硫酸バンドを添加すると共に、パルプトン当り200gの黄染料と500gの赤染料を添加した後、テスト丸網抄紙機の最上層とした。その他の層にはパルプ濃度4重量%で、フリーネス300mlCSFとなるように通常に叩解した段ボール古紙パルプを用いて抄紙した。次いで、マシンカレンダーの水ドクターにポリビニルアルコール水溶液(ポバールVF−17:日本酢ビ・ポバール社製)を添加し、固形分濃度で0.15g/mとなるように最上層の表面にポリビニルアルコールを塗工し、同時に、カレンダー処理を行った。この時、最上層の付け量は50g/mで、その他の層は8層で、合計9層抄の米坪368g/mの多層抄のカートン原紙を得た。
得られた原紙を用いて、最上層表面の色相、チリ、平滑度、インキ白抜け、発色性、罫線割れ長さ率、ピッキングを評価した。抄造条件と品質評価の結果を表1に示す。
【0028】
<実施例2>
その他の層にフリーネス330mlCSFとなるように通常叩解した雑誌古紙パルプを用いた事以外は実施例1と同様にして、合計9層抄の米坪353g/mの多層抄きカートンを得た。ただし、最上層の付け量は50g/mとし、最上層の色相が所定の範囲に入るように黄染料と赤染料の添加量を増した。実施例1と同じ項目を測定・評価した。
【0029】
<実施例3>
高濃度叩解した段ボール古紙パルプ(A)のフリーネスを350mlCSFとし、最上層の付け量を100g/m、その他の層は2層で、合計3層抄の米坪364g/mとした事以外は実施例1同様にして、カートン原紙を得た。実施例1と同じ項目を測定・評価した。
【0030】
<比較例1>
高濃度叩解した段ボール古紙パルプ(A)のフリーネスを420mlCSFとした事の以外は実施例1と同様にして、合計9層抄の米坪369g/mの多層抄のカートン原紙を得た。実施例1と同じ項目を測定・評価した。
【0031】
<比較例2>
離解、精選した段ボール古紙パルプをパルプ濃度4重量%で、フリーネス480mlCSFとなるように通常に叩解したパルプを実施例1のパルプ(A)の替わりに使用し、最上層の付け量を150g/mとし、その他の層は1層で、合計2層抄き以外、実施例1と同様にして、合計2層抄の米坪350g/mのカートン原紙を得た。実施例1と同じ項目を測定・評価した。
【0032】
<比較例3>
抄紙後、得られた紙匹にポリビニルアルコールを塗工せず、かつカレンダーを施さなかった事以外、実施例1と同様にして合計9層抄の米坪360g/mの多層抄きカートン原紙を得た。実施例1と同じ項目を測定・評価した。
【0033】
<比較例4>
最上層のパルプスラリーとして、パルプ(A)/パルプ(B)の絶乾重量比が30/70である事以外、実施例1と同様にして、合計9層抄の米坪374g/mの多層抄きのカートン原紙を得た。実施例1と同じ項目を測定・評価した。
【0034】
実施例1〜3と比較例1〜4の評価結果を表1に示す。
実施例1〜3では良好な評価結果を示すの対して、比較例1はチリ、インキ白抜き、罫線割れ長さが劣る。比較例2では2層抄きのため、インキ白抜きと罫線割れ長さが大幅に劣る。比較例3ではポリビニルアルコールが未塗工でカレンダー処理がなされていないので平滑度が低く、インキ白抜きと発色性に劣り、表面強度にも劣る。比較例4では所定の色相の範囲に入っていないので、鮮やかさにかける発色を示していた。
【0035】
<実施例4>
実施例1で得たカートン原紙を使用してティシュペーパーの箱を製作した時、特に罫線形状の工夫等をすることなく加工でき、罫線割れはおこらなかった。特に、取り出し口のフィルムをなくすことで、ティシュペーパーの白さとカートン原紙の色彩が鮮やかなものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の多層抄きカートン原紙は、紙器・包装材料・箱等、特に、取出し口のフィルムが無いティシュペーパーの箱として利用できる。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層抄きカートン原紙であって、その最上層が段ボール古紙を高濃度叩解したパルプ(A)と未晒クラフトパルプ(B)を主体として構成され、かつその表面反射特性(JIS Z 8729に規定された表示法、光源:C/2)が
L*=59.5〜63.0,a*=4.0〜6.0,b*=19.0〜21.5
に調整されており、かつ直径1.0mm以上のチリが10個/m2以下であることを特徴とするカートン原紙。
【請求項2】
最上層に使用されるパルプ(A)のフリーネスが200〜350mlCSFであることを特徴とする請求項1に記載のカートン原紙。
【請求項3】
カートン原紙が3〜9層の多層抄きであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のカートン原紙。
【請求項4】
最上層には更にポリビニルアルコールが表面塗工されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカートン原紙。
【請求項5】
最上層表面の王研式平滑度が5秒以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカートン原紙。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の多層抄きカートン原紙を使用することを特徴とする取出し口のフィルムが無いティシュペーパーの箱。


【公開番号】特開2006−200095(P2006−200095A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15553(P2005−15553)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(503072126)王子板紙株式会社 (4)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】