説明

置き敷き用タイルユニット

【課題】日光の熱による接着劣化が防止された置き敷き用タイルユニットを提供する。
【解決手段】樹脂マット1に比重1.3〜1.8のタイル2を接着してなる置き敷き用タイルユニット。施釉された釉薬層付きタイルの場合、釉薬層の内部又は釉薬層の下側に微細粒子を存在させることにより釉薬層表面を凹凸面としてもよい。このように表面が凹凸面になっていると、置き敷き用タイルユニット上面に打ち水したときにタイル表面に水が十分に保水され、タイル表面をよく冷やすことが可能となる。また、タイル表面が凹凸面であると、置き敷き用タイルユニットに乗った人の足裏とタイル表面との接触面積が小さくなり、タイルに触れた足裏で感取される熱さ又は冷たさが緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂マットの上面にタイルを接着してなる置き敷き用タイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
バルコニー、プールサイドなどに置き敷きされる置き敷き用タイルユニットとして、樹脂マットの上面にタイルを接着したものが広く用いられている。
【0003】
第1図は、従来の置き敷き用タイルユニット10の代表的な一例(実用新案登録第2551990号)を示す縦断面図、第2図はその樹脂マットの平面図である。
【0004】
樹脂マット1は、タイル2を敷設するための基台となるものであり、該タイル2の平面形状に合わせた正方形状のタイル取付部3が縦3列、横3列に配置されている。各タイル取付部3には、複数の縦桟4及び横桟5が格子状に渡され、碁盤目状に複数個の通孔6が形成されている。樹脂マット1の隣接する2辺には、隣合う樹脂マット1を連結するための連結用の係止片7が形成されている。複数の樹脂マット1を連結する際には、該係止片7を連結すべき樹脂マット1の縦桟4又は横桟5等に係止させる。
【0005】
樹脂マット1の裏面側には、前記縦桟4及び横桟5が交差する格子部分に、円柱形状の脚片8が形成され、この脚片8によって、置き敷き用タイルユニット10の排水空間9が形成される。タイル2は、各タイル取付部3の上面に接着剤によって接着されている。この接着剤としてはエポキシ系接着剤などが用いられている。
【0006】
同様のタイルユニットは、特許第2783127号などにも記載されている。
【0007】
第4図は同号特許で開示される置き敷き用タイルユニット50の一部破断平面図、第5図はこの置き敷き用タイルユニット50の分解斜視図、第6図は樹脂マットの一部の斜視図、第7図は置き敷き用タイルユニット50の一部の縦断面図である。
【0008】
この置き敷き用タイルユニット50に用いられている樹脂マット30は、多数の縦桟12及び横桟14から成る格子状の部材であって、各縦桟12,横桟14の交差部に脚16が裏面側(図では上側)に突出形成されている。なお、この樹脂マット30は、9枚(3×3=9枚)のタイルを敷設する大きさのものとなっている。
【0009】
各縦桟12,横桟14の交差部であって且つ脚16が形成されていない部位にはリング部18が形成されている。リング部18は一定寸法だけ裏面側に突出されている。
【0010】
リング部18の内部は、タイル40と樹脂マット30との固着のための接着剤を注入して溜めるための接着剤溜め部である。この接着剤溜め部は、第6図の通り樹脂マット30を厚み方向に貫通する開口として設けられている。硬化した接着剤と樹脂マット30との結合強度を増大させるために、リング部18内には、硬化した接着剤の係止部として、桟12,14を延長した形状の十字形上の梁状部20が設けられている。
【0011】
後述の通り、リング部18内に充填されて固化し、塊となった接着剤は、梁状部20に対して係合状態となり、この機械的な係合作用によって樹脂マット30に対ししっかり保持される。
【0012】
尚、リング部18はタイル1枚分のスペースに対して4個所設けられている。
【0013】
この樹脂マット30に対してタイル40を接合することにより置き敷き用タイルユニット50が製造される。
【0014】
タイル40を樹脂マット30に接着するには、規定枚数(この場合は9枚)のタイル40を裏返しにした状態で整列する。このタイル22の裏面上に樹脂マット30を裏返し状態で重ねる。次に、接着剤28をリング部18に注入する。この接着剤28は、タイル40の裏面に直に接触する。この接着剤28を硬化させることにより、タイル40が樹脂マット30に強固に接合される。即ち、この接着剤28はタイル40に対しなじみの良いものであり、強力に付着している。また、接着剤28の硬化物は、梁状部20によって樹脂マット30に強固に一体化されている。従って、タイル40は樹脂マット30に対し極めてしっかり結合される。
【0015】
樹脂マット30には、隣接する置き敷き用タイルユニット50同士を連結するためのフック部38が設けられている。このフック部38は、樹脂マット30の隣り合う2辺から延出した鉤状のものである。
【0016】
なお、第8図のリング18Aのように、内周面をテーパ形状とすることにより接着剤28が樹脂マット30に固定されることもあり、第9,10図のリング部18Bのように梁状部20の代わりに突起20Tをリング部18Bの内周からと突設し、これによって接着剤28が樹脂マット30に固定されることもある。
【特許文献1】実用新案登録第2551990号公報
【特許文献2】特許第2783127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
置き敷き用タイルユニット10を日当りの良い箇所に置き敷きした場合、特に夏季などにあっては、直射日光によりタイル2が熱くなり、その熱でタイル2と樹脂マット1とを接着している接着剤が劣化するおそれがある。
【0018】
本発明はかかる直射日光の熱による接着剤の劣化が防止(抑制を包含する。)される置き敷き用タイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の置き敷き用タイルユニットは、樹脂マットの上面にタイルを接着してなる置き敷き用タイルユニットにおいて、該タイルの少なくとも上面部が微細気孔を有した低熱伝導部となっていることを特徴とするものである。
【0020】
このタイルの比重は、1.3〜1.8であることが好ましい。
【0021】
また、タイルの比重をdとし、タイルの厚さをt(mm)とした場合、t≧21.417d−2.932であることが好ましい。
【0022】
本発明では、タイルは表面に釉薬層を有しており、該釉薬層は、該釉薬層内又は釉薬層の下側に存在する微細粒子によって表面が凹凸面となっている構成とされてもよい。
【0023】
また、本発明では、タイルは表面に釉薬層を有しており、該釉薬層は中空粒子を含有している構成とされてもよい。
【0024】
さらに、本発明では、タイルは表面に釉薬層を有しており、該釉薬層は抗菌材料を含有する構成とされてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の置き敷き用タイルユニットは、少なくとも上面部が微細気孔を有した低熱伝導部となっているので、タイルが日光の照射を受けても、タイル上面の熱がタイルの下面側へ伝わることが抑制される。これにより、タイルと樹脂マットとを接着している接着剤の劣化が防止される。
【0026】
このタイルは十分な断熱性を有すると共に所定の強度を有することが好ましく、そのためにはタイルの比重(嵩比重。以下、同様。)は1.3〜1.8であることが好ましい。
【0027】
なお、t≧21.417d−2.932であると、タイルの断熱性と強度とが十分に両立する。
【0028】
タイルは、施釉されていてもよく、施釉されていなくてもよい。施釉しておくと、ストッキングやくつ下が引掛って破れることが防止される。
【0029】
施釉された釉薬層付きタイルの場合、釉薬層の内部又は釉薬層の下側に微細粒子を存在させることにより釉薬層表面を凹凸面としてもよい。このように表面が凹凸面になっていると、置き敷き用タイルユニット上面に打ち水したときにタイル表面に水が十分に保水され、タイル表面をよく冷やすことが可能となる。また、タイル表面が凹凸面であると、置き敷き用タイルユニットに乗った人の足裏とタイル表面との接触面積が小さくなり、タイルに触れた足裏で感取される熱さ又は冷たさが緩和される。
【0030】
釉薬層は中空粒子を含有してもよい。釉薬層が中空粒子を含有することにより、釉薬層の熱伝導率が低下し、断熱効果が得られる。また、中空粒子を含有することにより釉薬層表面が凹凸面となった場合には、上記と同様の効果が奏される。
【0031】
本発明では、釉薬層は抗菌材料を含有してもよい。これにより、釉薬層へのカビの付着などが防止(抑制を包含する。)される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明の置き敷き用タイルユニットの外観上の構成の一例は、前記第1〜2図及び第4〜7図の通りである。ただし、樹脂マット1,30のタイル取付部の数や形状などは図示のものに限定されず、その他のものであってもよい。
【0034】
本発明のタイルユニットは、そのタイルの断熱性が高い点に構成上の特徴がある。
【0035】
即ち、本発明では、タイルとして少なくとも上面部が微細気孔を有し、それ故に熱伝導性が低いものとなっているタイルを用いる。好ましくは、タイル全体が微細気孔を有し、タイル全体として多孔状の低熱伝導性となっていることが好ましい。
【0036】
タイルとしては、比重が1.3〜1.8特に1.35〜1.65とりわけ1.4〜1.7のものが好ましい。比重が1.8以下であると、タイルの熱伝導性が十分に低いものとなる。ただし、比重が1.3よりも小さくなると、タイルの強度が不足し、タイルが割れ易くなる。
【0037】
なお、タイルの厚みが大きくなると、タイルの強度が増大するので、比重が小さいタイルについては、厚みを大きくするのが好ましい。本発明では、比重dとタイル厚みt(mm)との間にt≧21.417d−2.932の関係が成り立つタイルを用いるのが好ましい。
【0038】
タイルをこのように低比重の多孔状にするには、タイル製造時に原料にSiCなどの発泡剤を添加して焼成時に発泡させたり、セラミックよりなる中空バルーン(例えば、アルミナバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン)を配合する方法などを採用することができる。
【0039】
このタイルは、釉薬層を有した施釉タイルであってもよく、釉薬層を有しない無釉タイルであってもよい。ただし、施釉タイルであれば、くつ下やストッキングが引掛って破れることが十分に防止される。
【0040】
このように釉薬層を有するタイルの場合、釉薬層内に微細粒子を分散含有させるか、釉薬層とタイル素地との間に微細粒子を存在させることにより、釉薬層表面を凹凸面としてもよい。
【0041】
釉薬層表面が凹凸面となっていると、タイルユニットに散水した場合、タイル表面に水膜が形成され、十分な打ち水効果が得られる。また、釉薬層表面が凹凸面となっていると、足裏とタイルとの接触面積が小さくなり、足裏で感取される熱さ又は冷たさが緩和される。
【0042】
このような微細粒子としては、長石、ガラス粒子、シリカ、アルミナ、珪酸アルミニウムなどの珪酸化合物、金属珪素複合体などが例示される。微細粒子の平均粒径(JIS篩による。)は、1〜100μm程度好ましくは20〜50μmが好適である。微細粒子の配合量は、釉薬層表面の平均粗さRaが1〜50μm特に1〜30μmになる程度が好適である。釉薬層内に微細粒子を分散含有させる場合、微細粒子の配合量は5〜30重量%程度が好適である。
【0043】
微細粒子を釉薬層とタイル素地との間に介在させて釉薬層表面を凹凸面とする場合も、微細粒子の材料は上記と同様である。平均粒径は1〜200μm程度が好ましい。この微細粒子は、釉掛け前にタイル素地上に散布等により供給され、その後、釉掛けされ、焼成される。この場合、微細粒子は、タイル素地表面100cm当り、0.1〜1g程度存在させるのが好ましい。釉薬層表面の凹凸面の表面粗さの好適範囲は上記と同様である。
【0044】
本発明では、釉薬層に銀、酸化チタンなどの抗菌材を配合してもよい。これにより、釉薬層にカビが付くことが防止される。酸化チタンを配合した場合には、光触媒作用による汚れ付着防止効果も奏される。
【0045】
このタイルを樹脂マットに接着するための接着剤としては、エポキシ系接着剤、変成シリコーン系接着剤などを用いることができる。樹脂マットの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)などの合成樹脂が好適である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0047】
第1,2図に示す構成のポリエチレン製樹脂マットに対し、比重の異なるタイルをエポキシ系接着剤によって接着した。
【0048】
なお、タイル素地の原料としては、表1の調合物A及びBを用い、両者を表2のA/B比の割合で混合した。SiC入りのAの割合を多くすることにより、タイルの比重が小さくなる。成形は乾式プレス成形とし、焼成は1200℃×12Hrとした。
【0049】
タイルの大きさは100×100×10mmであり、施釉はしなかった。
【0050】
タイルの熱伝導率を熱伝導率計(昭和電工株式会社製QTM−DM2)によって計測し、結果を表2に示した。
【0051】
また、重さ30kgのサンドバック(BLT10−03で規定)を上方50cmから自然落下させ、タイルの破損状況を観察した。その結果を、タイル割れにくさとして表2に示した。
【0052】
さらに、タイル表面温度が約50℃のタイル表面に触れた時に熱く感じにくい感覚を4段階評価した結果を断熱性能として表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
なお、表2の割れにくさの評価基準は次の通りである。
○:割れなし
△:一部に割れ発生
×:必ず割れる
【0056】
表2の通り、タイルの比重が1.3〜1.8特に1.35〜1.65の範囲であると、熱伝導性が低くて剥れにくく、またタイルも割れにくく、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】タイルユニットの樹脂マットの平面図である。
【図2】タイルユニットの断面図である。
【図3】実施例の結果を示すグラフである。
【図4】置き敷き用タイルユニットの一部破断平面図である。
【図5】図4の置き敷き用タイルユニットの分解斜視図である。
【図6】樹脂マットの一部の斜視図である。
【図7】置き敷き用タイルユニットの一部の断面図である。
【図8】置き敷き用タイルユニットの一部の断面図である。
【図9】置き敷き用タイルユニットの一部の断面図である。
【図10】樹脂マットの一部の斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1,30 樹脂マット
2,40 タイル
3 タイル取付部
10,50 タイルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂マットの上面にタイルを接着してなる置き敷き用タイルユニットにおいて、
該タイルの少なくとも上面部が微細気孔を有した低熱伝導部となっていることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記タイルの比重が1.3〜1.8であることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項3】
請求項2において、タイルの比重をdとし、タイルの厚さをt(mm)とした場合、t≧21.417d−2.932であることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記タイルは表面に釉薬層を有しており、
該釉薬層は、該釉薬層内又は釉薬層の下側に存在する微細粒子によって表面が凹凸面となっていることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記タイルは表面に釉薬層を有しており、該釉薬層は中空粒子を含有していることを特徴とする置き敷き用タイルユニット。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記タイルは表面に釉薬層を有しており、該釉薬層は抗菌材料を含有することを特徴とする置き敷き用タイルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−38446(P2008−38446A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213536(P2006−213536)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】