説明

置換めっき方法及び装置

【課題】置換めっき液中の溶存酸素濃度を極力に低減させ、しかも、液中の溶存酸素濃度を低減させたままの状態で、置換めっき液を置換めっき処理に使用できるようにする。
【解決手段】表面を下向きにして基板を保持する基板ホルダ100と、置換めっき液102を保持する密閉された保持槽104と、保持槽104で保持された置換めっき液102を内部に導入して、基板ホルダ100で保持された基板の表面を置換めっき液102に接触させる処理槽106と、保持槽104及び処理槽106を経由させて置換めっき液102を循環させる液循環系路120を有し、基板ホルダ100及び処理槽106は、内部雰囲気を制御可能な密閉された筺体144内に配置され、処理槽106内には、該処理槽106の置換めっき液102中に不活性ガスをバブリングして置換めっき液102中の溶存酸素濃度を低減させる散気管126が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換めっき方法及び装置に関し、特に、半導体ウエーハ等の基板の表面に設けた埋込み配線の露出表面に、無電解めっきで保護膜を選択的に形成するのに先立って、無電解めっきの時の触媒核となる触媒金属膜を置換反応で形成するのに使用される置換めっき方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造のバックエンドの分野では、半導体デバイスの信頼性を確保するために、例えばダマシン銅配線の露出表面にCoWP合金等からなる保護膜を選択的に形成して配線を保護することが検討されている。
【0003】
図1は、半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す。先ず図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材201上の導電層201aの上に、例えばSiOからなる酸化膜やLow−K材膜等の絶縁膜(層間絶縁膜)202を堆積し、この絶縁膜202の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、配線用の微細凹部としてのビアホール203と配線溝204を形成し、その上にTaN等からなるバリア層205、更にその上に電解めっきの給電層としてのシード層206をスパッタリング等により形成する。
【0004】
そして、図1(b)に示すように、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、基板Wのビアホール203及び配線溝204内に銅を充填させるとともに、絶縁膜202上に銅膜207を堆積させる。その後、化学機械的研磨(CMP)などにより、絶縁膜202上のバリア層205、シード層206及び銅膜207を除去して、ビアホール203及び配線溝204内に充填させた銅膜207の表面と絶縁膜202の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁膜202の内部にシード層206と銅膜207からなる配線(銅配線)208を形成する。
【0005】
次に、図1(d)に示すように、基板Wの表面に無電解めっきを施し、配線208の露出表面に、Co合金やNi合金等からなる保護膜209を選択的に形成し、これによって、配線208の表面を保護膜209で覆って保護する。
ここで、銅等からなる配線208の表面に無電解めっきでCoWP合金等からなる保護膜209を選択的に成膜するには、無電解めっきに先立って、配線208の表面に、置換めっきによってパラジウム(Pd)触媒を付与することが一般的である。
【0006】
Pdを含む酸性の触媒溶液を使用して、置換反応で配線208の表面にPd触媒を付与する工程、つまり酸性の置換めっき液を使用して、配線208の表面に置換めっきでPd金属膜を形成する工程では、触媒溶液(置換めっき液)中に溶存酸素が存在するため、PdとCuの置換反応が生ずると同時に、酸素の還元反応によって、銅の溶解が促進される。特に配線208とバリア層205との界面では、局部的に銅の溶解が早くなる傾向がある。そのため、配線208の表面の平坦性が損なわれるはかりでなく、配線208の抵抗が上昇してしまう。それを回避するために、出願人は、触媒溶液(置換めっき液)中の溶存酸素濃度を極力低減させることを提案している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−29810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、触媒溶液(置換めっき液)中の溶存酸素濃度を低減しただけでは、銅の溶解を極力防止して、銅配線の抵抗上昇率を、例えば3%以下、好ましくは2%以下に抑えられるようにしたPd触媒付与(置換めっき)処理を行うことは困難であることが判った。
【0008】
一方、半導体デバイス製造のフロントエンドでは、ゲート電極部またはドレン・ソースのシリコン上にコバルトまたはニッケル等の合金膜を無電解めっきで成膜して、電極部の接触抵抗を低減させるプロセスが考えられる。このように、シリコン上に合金膜を無電解めっきで形成するためには、その前に、置換めっきによって、シリコン上に触媒核となる金属膜を形成することが必要となる。一般に、置換めっき液中の酸素溶存濃度が高いと、置換めっき時の触媒金属とシリコン下地との置換効率が低下し、余分のシリコンが置換めっき液中に溶出してしまう。
【0009】
置換めっきによって、銅配線の表面等に触媒となる金属膜を形成する装置としては、基板の表面に向けて触媒溶液(置換めっき液)をスプレーノズルからスプレーするようにしたものが広く知られている。しかし、この場合、触媒溶液(置換めっき液)として、液中の溶存酸素濃度を極力に低減させたものを使用しても、スプレーノズルからスプレーされる触媒溶液(置換めっき液)が基板に達するまでの間に、酸素が触媒溶液(置換めっき液)中に再び取込まれ、置換めっき処理中における触媒溶液(置換めっき液)中の溶存酸素濃度を低減することは困難となる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、例えば銅配線の抵抗上昇率を、3%以下、好ましくは2%以下に抑えられるようにしたPd触媒付与(置換めっき)処理を行うことができるようにした置換めっき方法、及び置換めっき液中の溶存酸素濃度を極力に低減させ、しかも、液中の溶存酸素濃度を低減させたままの状態で、置換めっき液を置換めっき処理に使用できるようにした置換めっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、金属下地表面を有機酸を含む洗浄液に接触させて前洗浄し、前洗浄後の金属下地表面を液中の溶存酸素濃度を使用温度での飽和酸素溶解度未満、好ましくは70%以下に低減させた置換めっき液に接触させ、金属下地表面に置換反応によって金属膜を形成することを特徴とする置換めっき方法である。
【0012】
このように、銅配線等の金属下地表面を有機酸を含む洗浄液に接触させる前洗浄処理と、液中の溶存酸素濃度を低減させた置換めっき液を使用した置換めっき処理とを組合せることで、つまり、置換めっきを行う前に、金属下地表面に残留する酸化物や防食材を、有機酸を含む洗浄液で、金属下地のエッチングを抑制しつつ、洗浄して除去することで、例えば銅の溶解を極力防止して、銅配線の抵抗上昇率を、例えば3%以下、好ましくは2%以下に抑えることができるようにしたPd触媒付与(置換めっき)処理を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記置換めっき液中の溶存酸素濃度を使用温度での飽和酸素溶解度の40%以下にすることを特徴とする置換めっき方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記金属下地は、基板の表面に形成した配線用凹部内に埋込んだ埋込み配線で、前記金属膜は、この表面に無電解めっきで保護膜を形成する時に触媒核となる触媒金属膜であることを特徴とする請求項1または2記載の置換めっき方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記置換めっき液は、前記洗浄液に含まれる有機酸及び/または金属下地に化学吸着するN原子を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の置換めっき方法である。
このように、置換めっき液中に洗浄液に含まれる有機酸を含むことで、置換めっき液中の金属イオンの1部を有機酸で錯化させて、金属下地のエッチング効果を緩和し、しかも、置換めっき液への洗浄液の混入の影響を無視することができる。また、置換めっき液中に、金属下地に化学吸着するN原子を有する化合物を含むことで、置換めっき中に金属下地の結晶粒界にN原子を有する化合物を選択的に吸着させて、金属下地を保護することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、表面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、置換めっき液を保持する密閉された保持槽と、前記保持槽で保持された置換めっき液を内部に導入して、前記基板ホルダで保持された基板の表面を置換めっき液に接触させる処理槽と、前記保持槽及び前記処理槽を経由させて置換めっき液を循環させる液循環系路を有し、前記基板ホルダ及び前記処理槽は、内部雰囲気を制御可能な密閉された筺体内に配置され、前記処理槽内には、該処理槽の置換めっき液中に不活性ガスをバブリングして置換めっき液中の溶存酸素濃度を低減させる散気管が配置されていることを特徴とする置換めっき装置である。
【0017】
これにより、処理槽から離れた保持槽内で置換めっき液中の溶存酸素濃度を低減させ、しかもこの溶存酸素濃度を低減させた置換めっき液が空気に接触することを極力防止しながら、基板に接触させて置換めっき処理を行うことで、液中の溶存酸素濃度を低減させたままの状態で、置換めっき液を置換めっき処理に使用することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記液循環系路を介して、0.3〜3L/minの流量で置換めっき液を循環させながら、前記保持槽の置換めっき液中に、前記散気管を通して、1〜10L/minの不活性ガスを導入することを特徴とする請求項5記載の置換めっき装置である。
これにより、気液自由表面から置換めっき液中へ取込まれる酸素量が増えることを防止しつつ、置換めっき液中の溶存酸素濃度を飽和溶解度の1/3以下に低減させることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、表面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、置換めっき液を保持する密閉された保持槽と、前記保持槽で保持された置換めっき液を内部に導入して、前記基板ホルダで保持された基板の表面をめっき液に接触させる処理槽と、前記保持槽及び前記処理槽を経由させて置換めっき液を循環させる液循環系路を有し、前記基板ホルダ及び前記処理槽は、内部雰囲気を制御可能な密閉された筺体内に配置され、前記液循環系路中には、脱気モジュールが介装されていることを特徴とする置換めっき装置である。
【0020】
これにより、液循環系路に沿って流れる置換めっき液中の溶存酸素濃度を低減させ、しかもこの溶存酸素濃度を低減させた置換めっき液が空気に接触することを極力防止しながら、基板に接触させて置換めっき処理を行うことで、液中の溶存酸素濃度を低減させたままの状態で、置換めっき液を置換めっき処理に使用することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記液循環系路を介して、1〜4L/minの流量で置換めっき液を循環させることを特徴とする請求項7記載の置換めっき装置である。
この置換めっき液の流量範囲で、置換めっき液の脱気効率が最も高くなることが確かめられている。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記保持槽の上部には、置換めっき液の自由液面位置における断面積を最小にする狭窄部を有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の置換めっき装置である。
これにより、保持槽内に位置する置換めっき液の溶存酸素濃度が上昇することを極力防止することができる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、前記処理槽内には、この内部を流れる置換めっき液の流れを整える複数の整流板が配置されていることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の置換めっき装置である。
これにより、置換めっきで、基板の表面により均一な膜厚の金属膜を成膜することができる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、前記置換めっき液は、前記洗浄液に含まれる有機酸及び/または金属下地に化学吸着するN原子を有する化合物を含むことを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の置換めっき装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の置換めっき方法によれば、銅等の金属下地表面を有機酸を含む洗浄液に接触させる前洗浄処理と、液中の溶存酸素濃度を低減させた置換めっき液を使用した置換めっき処理とを組合せることで、例えば銅の溶解を極力防止して、銅配線の抵抗上昇率を、例えば3%以下、好ましくは2%以下に抑えられるようにしたPd触媒付与(置換めっき)処理を行うことが可能となる。また、本発明の置換めっき装置によれば、液中の溶存酸素濃度を低減させたままの状態で、置換めっき液を置換めっき処理に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の例では、置換めっき装置として、置換めっき液として触媒溶液を使用した触媒付与装置を使用し、図1(c)に示す、金属下地としての銅からなる配線208の表面に、置換めっきによって、触媒核としてパラジウム金属膜を形成し、しかる後、無電解めっきによって、図1(d)に示すように、触媒核としてパラジウム金属膜を形成した配線208の表面に、CoWP合金からなる保護膜209を形成するようにした例を示す。
【0027】
なお、金属下地は、銅の他に、銅合金、Al,Agまたはその合金、W,Ta,Ti,Ruまたはその合金等であってもよい。更に、Si,Geまたはその化合物であってもよい。置換めっきは、Pdの他に、Ag,Co,Ni,Au,Ptの中の少なくとも1種類の金属を含むものであってもよい。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態の置換めっき装置を備え、埋込み配線208の露出表面に、CoWP合金等からなる保護膜209を無電解めっきで選択的に形成するのに使用される保護膜形成装置50の全体構成を示す。図2に示すように、この保護膜形成装置50は、ロード・アンロード部1、搬送ロボット2、リンス・乾燥装置3、搬送ロボット4、前洗浄装置5、触媒付与装置(置換めっき装置)7、無電解めっき装置9、及び基板受渡し装置17を備えている。更に、この保護膜形成装置50は、装置内の温度と湿度の制御が可能な低酸素化ガス供給装置11、低酸素化ガス供給口12、各装置内に設けられるガスを循環もしくは排出ガス処理装置へ排出させるための排気口13、排気口13からガスを循環させるガス循環装置14、及び循環ガス供給口15を備えている。
【0029】
この保護膜形成装置50は、低酸素化ガス供給装置11から、低酸素化ガス供給口12を通して、装置内に温度と湿度が制御された低酸素ガスが送られ、リンス・乾燥装置3、搬送ロボット4、前洗浄装置5、触媒付与装置7、無電解めっき装置9、及び基板受渡し装置17全体の環境を低酸素条件とするものである。そして、リンス・乾燥装置3、前洗浄装置5、触媒付与装置7、及び無電解めっき装置9には、それぞれ純水、洗浄液および無電解めっき液を供給および排出するための手段、及びそれぞれの液中の溶存酸素濃度を低減する装置が備えられている。
【0030】
図3は、触媒付与装置に適用した本発明の実施の形態の置換めっき装置7の概要を示す。この触媒付与装置(置換めっき装置)7は、置換めっき液として、パラジウムイオン等の触媒金属イオンを含む酸性の触媒溶液を使用し、この触媒溶液中のPdと配線208を構成する銅(Cu)との置換反応によって、配線208の表面に、触媒核となるPdからなるPd金属膜を形成するためのものである。
【0031】
図3に示すように、この触媒付与装置(置換めっき装置)7は、表面を下向きにして基板Wを保持する、上下動及び回転自在な基板ホルダ100と、触媒溶液(置換めっき液)102を保持する保持槽104と、この保持槽104で保持された触媒溶液102を内部に導入して、基板ホルダ100で保持した基板Wの表面を触媒溶液102に接触させる、上方に開放した処理槽106を有している。処理槽106は、保持槽104の上方に配置されている。そして、保持槽104と処理槽106の底壁との間は、内部に循環ポンプ108、フィルタ110及び脱気モジュール112を設置した液供給管114で繋がれ、処理槽106の上端外周部に設けた液回収溝116と保持槽104とは、液回収管118で繋がれている。これにより、循環ポンプ108の駆動に伴って、保持槽104内の触媒溶液102が処理槽106内に導入され、処理槽106の液回収溝116内にオーバフローした触媒溶液102が、その自重によって保持槽104内に戻されて循環する、液循環系路120が構成されている。
【0032】
このフィルタ110として、メッシュサイズが0.2μm以下、好ましくは0.05μm以下のものが使用される。処理槽106の容積は、例えば20L以下で、7L程度であることが好ましい。保持槽104の容積は、処理槽106の溶液の、例えば1.5〜10倍で、4倍程度であることが好ましい。触媒溶液102の量は、例えば5〜100Lであり、15〜40Lであることが好ましい。
【0033】
保持槽104は、自動制御で開閉できる蓋体122で密閉され、この周壁には、保持槽104内の触媒溶液102上方の空間に、Nガス等の不活性ガスを導入する不活性ガス導入管124が接続されている。この不活性ガス導入管124から保持槽104内に導入される不活性ガスの流量は、例えば0〜10L/minで調整される。更に、保持槽104内の触媒溶液102に浸漬される底部近傍に位置に、周囲に多数の散気孔を有する散気管126が配置されている。この散気管126は、Nガス等の不活性ガスを保持槽104内の触媒溶液102中にバブリングして、触媒溶液102中の溶存酸素濃度を低減させるためのものであり、不活性ガス導入管128に接続されている。この散気管126を通して保持槽104内に導入される不活性ガスの流量は、例えば1〜20L/minで調整される。
【0034】
処理槽106は、この底部から触媒溶液102を内部に導入し、触媒溶液102の上方に向け流れを作り、周壁をオーバフローさせるよう構成されており、処理槽106の内部には、ここを流れる触媒溶液102の流れを整える、2枚の整流板130a,130bが配置されている。更に、処理槽106の底部近傍に位置して、周囲に多数の散気孔を有する散気管132が配置されている。この散気管132は、Nガス等の不活性ガスを処理槽106内の触媒溶液102中にバブリングして、触媒溶液102中の溶存酸素濃度を低減させるためのものであり、不活性ガス導入管134に接続されている。この散気管132を通して処理槽106内に導入される不活性ガスの流量は、例えば0〜10L/minで調整される。
【0035】
処理槽106の近傍に位置して、処理槽106の上端開口部を自動制御で開閉自在に覆う処理槽蓋136が配置されている。この処理槽蓋136の上面には、上方に向けてリンス用の純水を噴射する純水スプレーノズル138が取付けられ、この純水スプレーノズル138は、外部から延びる純水供給管140が接続されている。これにより、処理槽蓋136を処理槽106の上端開口部を覆う位置から待避させた状態で、基板ホルダ100で保持した基板Wを下降させて、基板Wの表面(下面)を処理槽106内の触媒溶液102に接触させる。そして、基板ホルダ100で保持した基板Wを上昇させた後、処理槽蓋136を処理槽106の上端開口を覆う位置に位置させ、純水スプレーノズル138から基板Wに向けて純水(リンス液)を噴射して、基板Wの表面を純水でリンスするのであり、この時、純水が処理槽106内に流入することが防止される。
【0036】
更に、処理槽106の上端開口部を処理槽蓋136で覆った時、処理槽106内の触媒溶液102の自由表面と処理槽蓋136との間の空間に、Nガス等の不活性ガスを導入する不活性ガス導入管141が備えられている。この不活性ガス導入管141から処理槽106内の触媒溶液102の自由表面と処理槽蓋136との間の空間に導入される不活性ガスの流量は、例えば0〜10L/minで調整される。
【0037】
基板ホルダ100、処理槽106及び処理槽蓋136は、雰囲気制御部142を介して、内部の雰囲気を制御可能な筺体144の内部に配置されている。筺体144は、基板を出し入れする窓を有しており、導入するNガス等の不活性ガスの流量および排出流量によって、筐体144内の雰囲気を調整する。
【0038】
次に、この触媒付与装置7による基板Wの処理手順を説明する。
先ず、基板Wを、筐体144に設けられた窓(図に示せず)から筐体144内に導入し、処理槽106の上方に設置した基板ホルダ100で表面を下向きにして基板Wを保持する。そして、筺体144の窓を閉じ、筺体144の内部を所定の不活性ガス雰囲気に調整した後、処理槽106の上端開口部を覆う処理槽蓋136を待避位置に移動させて、基板Wを所定の回転速度、例えば0〜100rpmで回転させながら、処理槽106内の触媒溶液102に接触させ、これにより、基板の表面に置換めっきによって触媒金属を、つまり、この例では、配線208(図1(c)参照)の表面に、触媒核としてPd金属膜を形成する。
【0039】
この触媒溶液102としては、例えば、100g/L以下の濃度のHSOの水溶液に、0.1g/L以下程度の濃度PdSOを溶かし、pHを2以下に調整したものが使用される。この触媒溶液102には、必要に応じて、下記の前処理液に含まれる、カルボン酸やアルカンスルホン酸等の有機酸や、ベンゾトリアゾール、ピラゾール、イミダゾールまたはベンゾイミダゾール等のN原子を有する化合物が添加される。処理時間は、例えば30sec程度である。
【0040】
この時、液循環系路120を介して、触媒溶液102を循環させながら、保持槽104の触媒溶液102中に、散気管126を通してNガス等の不活性ガスを導入する。更に、必要に応じて、不活性ガス導入管124から保持槽104内にNガス等の不活性ガスを導入し、同時に、散気管132を通して、処理槽106内の触媒溶液102中にNガス等の不活性ガスを導入する。
【0041】
これにより、処理槽106から離れた保持槽104内で触媒溶液102中の溶存酸素濃度を低減させ、しかもこの溶存酸素濃度を低減させた触媒溶液102が空気に接触することを極力防止しながら、基板に接触させて置換めっき処理を行うことで、液中の溶存酸素濃度を低減させたままの状態で、触媒溶液(置換めっき液)102を置換めっき処理に使用することができる。
【0042】
特に、この例における脱気モジュール112を省略した場合には、液循環系路120を介して、0.3〜3L/minの流量で触媒溶液を循環させながら、保持槽104の触媒溶液102中に、散気管126を通して、1〜10L/minの不活性ガスを導入することで、気液自由表面から触媒溶液102へ取込まれる酸素量が増えることを防止しつつ、触媒溶液102中の溶存酸素濃度を溶解度の1/3以下に低減させることができる。
【0043】
ここで、この例にあっては、液循環系路120内に脱気モジュール112を設けることで、液循環系路120に沿って流れる触媒溶液102中の溶存酸素濃度を低減させることができ、この場合、液循環系路120を介して、1〜4L/minの流量で触媒溶液102を循環させることで、触媒溶液102の脱気効率を最も高くすることができる。
【0044】
これにより、前洗浄後の基板の配線208等の金属下地表面を、液中の溶存酸素濃度を使用温度での飽和酸素溶解度未満、好ましくは、70%以下、更に好ましくは40%以下に低減させた置換めっき液に接触させて、金属下地表面に、置換反応によって、Pd金属膜等の金属膜を形成する。
また、触媒溶液の還元性を上げる目的として、比較的に標準単極電位の低い水素を触媒溶液中に溶け込ませることで、配線208等の金属下地の溶出を抑えることができる。
【0045】
そして、基板Wを触媒溶液102から引上げた後、処理槽106の上端開口部を処理槽蓋136で覆う。この状態で、必要に応じて、不活性ガス導入管141から処理槽蓋136で覆われた領域にNガス等の不活性ガスを導入して、触媒溶液102が空気に接触して、溶存酸素濃度が上昇することを防止しつつ、処理槽蓋136の上面に設置した純水スプレーノズル138から純水を噴射して基板Wをリンスする。リンス後、基板Wを回転させることによって、基板Wの表面に残った触媒溶液102をある程度で振り切って、基板Wを筐体144から引き出す。
【0046】
上記のように、下方から処理槽106の内部に触媒溶液102を供給することで、処理槽106内に供給されて保持された触媒溶液102の液面が泡立って、触媒溶液102中に大気中の空気が巻き込まれて触媒溶液102の溶存酸素量が増加することを防止することができる。また、処理槽106をオーバフローした触媒溶液102を、液回収管118を介して保持槽104内に戻し、しかも、液回収管118の下端が保持槽104内の触媒溶液102の液面下方に達するようにすることで、保持槽104内の触媒溶液102の戻り液による波立ちを防止することができる。
【0047】
更に、基板ホルダ100で水平に保持した基板Wの表面(下面)を処理槽106内の触媒溶液102に同時に接触させることで、基板Wの表面近傍における触媒溶液102の流れを均一にして、基板Wの表面にめっき成長のばらつきが生じることを防止することができる。しかも、整流板130a,130bを介して、処理槽106内の触媒溶液の流れをより均一にすることができる。
【0048】
なお、この例では、保持槽104として、矩形ボックス状のものを使用しているが、図4に示すように、上部に、触媒溶液102の自由液面位置における断面積を最小にする狭窄部104aを設けることで、保持槽104内に位置する触媒溶液102の溶存酸素濃度が上昇することを極力防止するようにしてもよい。
【0049】
次に、図2に示す無電解めっきシステムによる基板Wの処理について説明する。
先ず、図1(c)に示す、配線208が形成された基板Wをロード・アンロード部1から搬送ロボット2により受渡し装置17に渡す。
【0050】
次いで、搬送ロボット4により、受渡し装置17にある基板を前洗浄装置5に導入し、基板の表面を、カルボン酸やアルカンスルホン酸等の有機酸を含む洗浄液に接触させて前洗浄し、これによって、金属下地として配線208がエッチングされるのを抑制しながら、基板の表面に残存する酸化物や防食剤を除去して、配線208の表面を活性化させる。この洗浄液として、ベンゾトリアゾール、ピラゾール、イミダゾールまたはベンゾイミダゾール等の配線(金属下地)208に化学吸着するN原子を有する化合物を添加したものを使用しても良い。これにより、配線208の結晶粒界の隙間にN原子を有する化合物を優先的に付着させ、結晶粒界への触媒溶液の浸入を防止して、配線抵抗の上昇を抑制することができる。
【0051】
この前洗浄液としては、pHが2以上、好ましくはpHが2〜5のクエン酸、またはクエン酸を主成分とする有機酸を使用しても良い。前洗浄液を基板Wに接触させる方式として、浸漬方式、スプレー方式またはロール洗浄方式等、任意の方式が採用される。前洗浄時間は、例えば常温で10秒以上であり、その際、基板を回転させて良い。
【0052】
この前洗浄装置5では、思わぬガス等が生成するおそれがあるので、排気口13から排出されるガスはそのまま循環させず、また、好ましくはそのまま装置外に排出させるのではなく、排ガス処理装置に送るようにする。この前洗浄装置5で使用される処理液は、溶存酸素濃度が低減されていることが好ましく、また、前洗浄装置5及び装置内全体が低酸素条件とされているので、前処理中、及びその後の搬送過程において溶存酸素濃度が上昇するおそれはない。
【0053】
前洗浄装置5で前洗浄後の基板の表面に純水を供給してリンスした後、基板を触媒付与装置(置換めっき装置)7に移送し、ここで、前述のように、基板Wの表面を触媒溶液102に接触させて置換めっきを行い、これによって、配線208の表面に、触媒核としてPd金属膜を形成する。そして、触媒付与装置7内で基板の表面に純水を供給してリンスする。
【0054】
この触媒溶液102として、洗浄液に含まれるカルボン酸等の有機酸及び/または金属下地に化学吸着するN原子を有するベンゾトリアゾール等の化合物を含むようにしてもよい。このように、触媒溶液102中に洗浄液に含まれる有機酸を含むことで、触媒溶液102中の金属イオン(Pdイオン)の1部を有機酸で錯化させて、配線208のエッチング効果を緩和し、しかも、触媒溶液102への洗浄液の混入の影響を無視することができる。また、触媒溶液102中に、配線208に化学吸着するN原子を有する化合物を含むことで、触媒溶液102中に配線208の結晶粒界にN原子を有する化合物を選択的に吸着させて、配線208を保護することができる。
【0055】
この触媒付与装置7では、思わぬガス等が生成するおそれがあるので、排気口13から排出されるガスはそのまま循環させず、また、好ましくはそのまま装置外に排出させるのではなく、排ガス処理装置に送るようにすると良い。
【0056】
このような条件下で触媒核となるPd金属膜を形成した基板を、搬送ロボット4によって、無電解めっきによる保護膜の形成を行う無電解めっき装置9へ移送する。無電解めっき装置9で、触媒核としてPd金属膜を形成した配線208の表面に、例えばCoWP合金からなる保護膜209(図1(d)参照)を形成する。この無電解めっき装置9で使用されるめっき液に関しては、必要に応じで溶存酸素濃度を低減することができる。装置内は低酸素条件にしておく。また、めっき液はガス等が生成するおそれがあるので、排気口13から排出されるガスはそのまま循環させず、また、好ましくはそのまま装置外に排出させるのではなく、排ガス処理装置に送るようにする。
【0057】
このCoWP無電解めっき液の組成及び条件は、例えは以下の通りである。
CoWP無電解めっき液
組 成:
次亜リン酸ナトリウム 10g/L
硫酸コバルト 4g/L
クエン酸ナトリウム 40g/L
ホウ酸 30g/L
タングステン酸ナトリウム 6g/L
条 件:
液温 75℃
pH 9(pH調整には、水酸化ナトリウムを用いた)
【0058】
そして、保護膜209を形成した基板Wを、搬送ロボット4によって、リンス・乾燥装置3へ移送する。この段階では、配線208が大気に曝されることがないので、溶存酸素を低減させる必要はないが、基板Wを出し入れする都合上、装置内は低酸素条件にしておく。洗浄工程にもよるが、排気口13から排出されるガスはそのまま循環させず、また、好ましくはそのまま装置外に排出させるのではなく、排ガス処理装置に送るようにする。
そして、基板Wを搬送ロボット4により雰囲気ガス置換室3に導入したのち、搬送ロボット2によりロード・アンロード部1へ移送して、次工程へと搬送する。
【0059】
この例によれば、配線208の表面を、有機酸を含む洗浄液に接触させる前洗浄処理と、液中の溶存酸素濃度を低減させた触媒溶液(置換めっき液)102を使用した触媒付与(置換めっき)処理とを組合せることで、つまり、触媒付与を行う前に、配線208の表面に残留する酸化物や防食材を、有機酸を含む洗浄液で、配線208がエッチングされることを抑制しながら、確実に洗浄して除去することで、例えば銅の溶解を極力防止して、銅からなる配線208の抵抗上昇率を、例えば3%以下、好ましくは2%以下に抑えられるようにしたPd触媒付与(置換めっき)処理を行うことが可能となる。
【0060】
本発明の装置において低酸素化ガス供給装置11は、不活性ガスを用いる他に、循環させるガス中の酸素を取り除く方法を用いることも可能である。また、この低酸素化ガス供給装置11のガス流量は装置内の酸素濃度に合わせて調整することが好ましい。
【0061】
CMP等の平坦化工程で使用される平坦化装置も図2のように低酸素化されている。この平坦化装置を図2の保護膜形成装置と連結した基板処理装置の全体構成の一例を図5に示す。図5は、平坦化工程から保護膜形成にいたるまでの基板処理装置の全体構成を示す図面である。
【0062】
この基板処理装置は、図2に示す保護膜形成装置50の他に、カセット21、搬送ロボット22、雰囲気ガス置換室23、搬送ロボット24、平坦化装置25、洗浄・乾燥装置26、装置内の温度と湿度の制御が可能な低酸素化ガス供給装置27、低酸素化ガス供給口28、循環ガス供給口29、各装置内に設けられるガスを循環もしくは排出ガス処理装置へ排出させるための排気口30、排気口30からガスを循環させるガス循環装置31を有する平坦化装置52を備えている。そして、保護膜形成装置50と平坦化装置52は、基板Wを低酸素条件下で搬送可能な基板搬送ユニット32で連結されている。
【0063】
この基板処理装置は、各装置で、個別に低酸素化状態を作り出すことも可能だが、基板搬送ユニット32により、装置間で低酸素化状態を維持した状態で基板を搬送することが可能である。この基板搬送ユニット32による基板の搬送は、乾燥状態に限らず、湿潤状態でも可能となっている。
【0064】
基板搬送ユニット32を用いることで、処理時間が短縮され、不活性ガスが節約される。また、基板搬送ユニット32による基板の搬送を湿潤状態で行うことによって、基板の乾燥に伴うパーティクルの付着の心配が無くなり、さらに、配線208の酸化を抑え、そのままウエットな状態を維持しつつ保護膜209を形成できるので、理想的な保護膜209が形成される。
【0065】
ただし、平坦化工程の仕上げとして、乾燥状態で基板表面を改質するようなプロセスなどが必要な場合は、基板搬送ユニット32による基板の搬送は、そのまま低酸素雰囲気の乾燥状態で構わない。
【0066】
図5のように連結方式ではなく、平坦化工程から保護膜形成工程までのウエットプロセスにかかる装置全てを一つの装置として構成し、低酸素化状態を作りだすことも好ましい。しかし、将来、平坦化工程から保護膜形成工程に至るまでに新たなプロセスが加わった場合のことを考えると、図5にあるような連結式の方がそれに対応しやすいという利点があると考えられる。
【0067】
次に、図3に示す脱気モジュール112を省略した触媒付与装置(置換めっき装置)7を備えた図2に示す保護膜形成装置50を使用し、条件を変えて、図1(d)に示すように、配線208の表面にCoWP合金からなる保護膜209を形成した時の結果を以下に説明する。ここで、基板として、300mmの半導体ウエーハを使用した。触媒溶液は常温で使用し、触媒溶液の常温で飽和酸素溶解度に達する溶存酸素濃度は約8.4ppmである。そして、保護膜形成後の特定の配線に対する電気抵抗を測定し、処理前の値に比較して、変化値(抵抗上昇率)を算出した。また、基板の触媒付与(置換めっき)処理時における触媒溶液(置換めっき液)中の溶存酸素濃度を測定した。各基板の処理条件および各配線の抵抗上昇率の平均値を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
基板No.1では、処理槽106内の触媒溶液102中に散気管126を通してNガスのバブリングを行うことなく、基板の表面に触媒付与処理を行った。この時の溶存酸素濃度は、飽和酸素溶解度近傍の8.4ppmで、抵抗上昇率は6.3%である。これにより、この場合、抵抗上昇率を約3%以下に抑えられないことが判る。
【0070】
次に、配線のエッチングを抑制する効果のある有機酸を含む洗浄液を使用して基板の前洗浄を行った場合(No.2〜No.18)と、基板の前洗浄を行わなかった場合(No.19〜No.21)とを比較すると、前洗浄を行った場合(No.2〜No.18)の抵抗上昇率は、約3%以下、好ましくは、2%以下に抑えられるが、前洗浄を行わなかった場合(No.19〜No.21)の抵抗上昇率は4%を超えている。これにより、有機酸を含む洗浄液に接触させる前洗浄処理と、液中の溶存酸素濃度を低減させた触媒溶液(置換めっき液)を使用した触媒付与(置換めっき)処理とを組合せることで、配線の抵抗上昇率を、例えば3%以下、好ましくは2%以下に抑えられることが判る。
【0071】
しかし、例えば基板No.4のように、循環流量が5L/minと高い場合、抵抗上昇率は3%を超えており、このため、抵抗上昇率を3%以内に抑えるためには、循環流量を3L/min以下にすることが好ましく、抵抗上昇率を2%以内に抑えるためには、循環流量を1L/min以下にすることが好ましい。
これにより、触媒溶液中の溶存酸素濃度を飽和酸素溶解度の約40%の3.3ppm程度以下にして、抵抗上昇率を約3%以下に抑えることができる。
【0072】
基板No.5,No.6は、保持槽104内の触媒溶液102中にバブリングするNガスの流量を変えた条件で触媒付与処理を行った場合で、基板No.2と比較して判るように、保持槽104内の触媒溶液102中にバブリングするNガスの流量が減少すると、溶存酸素濃度が増えて抵抗上昇率も上昇する。これにより、抵抗上昇率を2%以下に抑えるために、保持槽104内の触媒溶液102中にバブリングするNガスの流量を10L/min以上に維持することが望ましい。
【0073】
基板No.7〜No.9は、保持槽104及び処理槽106内の双方の触媒溶液102中に散気管106,132を通してNガスのバブリングを行ったケースである。この場合、触媒溶液102中に導入されるNガスの合計流量が増えるため、溶存酸素濃度の低減効果が促進される。このため、循環流量が3L/minでも、配線抵抗上昇率を2%以下に抑えることができる。
【0074】
基板No.10〜No.12は、触媒溶液102中に導入されるNガスの流量は10L/minであるが、保持槽104及び処理槽106の双方の触媒溶液102中にNガスを5L/minずつ入れるケースである。この場合、基板No.2〜No.4に比較して、ほぼ同じ効果が得られたことが判る。
基板No.13〜No.18は、保持槽104または処理槽106の少なくとも一方の上方雰囲気中にNガスを封入するケースである。何れの条件においても、Nガスの封入がない同条件より、僅かであるが、配線抵抗上昇の低減効果が認められる。
【0075】
次に、触媒溶液として、有機酸及びN原子を含む化合物を添加したものを用い、他は上記と同様にして、配線208の表面にCoWP合金からなる保護膜209を形成した時の結果を表2に示す。
【表2】

【0076】
表1に示す基板No.2〜No.4と表2に示す基板No.22〜No.24とを比較すると、有機酸とN原子を含む化合物を添加した触媒溶液(置換めっき液)を使用して触媒付与(置換めっき)処理を行うことで、配線抵抗上昇率の更なる低減効果が見られることが判る。
【0077】
次に、図3に示す脱気モジュール112を有する触媒付与装置(置換めっき装置)7を備えた図2に示す保護膜形成装置50を使用し、上記と同様にして、配線208の表面にCoWP合金からなる保護膜209を形成した時の結果を表3に示す。触媒溶液には、有機酸及びN原子を含む化合物を添加していない。
【0078】
【表3】

表1の基板No.1に比較すると、表3に示す基板No.25〜No.28には、配線の抵抗上昇率の低減効果が見られる。特に、流量が3L/minの条件では、脱気効果および配線抵抗上昇の抑制効果が最も顕著であることが判る。
基板No.28は、脱気モジュール112による脱気処理と、保持槽104内の触媒溶液102中へのNガスのバブリング処理を併用のケースであり、単一条件に比べて、脱気効果及び配線抵抗上昇の抑制効果がより顕著であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の置換めっき装置(触媒付与装置)を備えた保護膜形成装置の全体構成を示す図である。
【図3】図2の置換めっき装置(触媒付与装置)の概要図である。
【図4】図2の置換めっき装置(触媒付与装置)の処理槽の変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の置換めっき装置(触媒付与装置)を備えた基板処理装置の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
5 前洗浄装置
7 触媒付与装置(置換めっき装置)
9 無電解めっき装置
25 平坦化装置
32 基板搬送ユニット
50 保護膜形成装置
52 平坦化装置
100 基板ホルダ
102 触媒溶液(置換めっき液)
104 保持槽
104a 狭窄部
106 処理槽
110 フィルタ
112 脱気モジュール
114 液供給管
118 液回収管
120 液循環系路
122 蓋体
124,128,134,140 不活性ガス導入管
126,132 散気管
130a,130b 整流板
136 処理槽蓋
138 純水スプレーノズル
142 雰囲気制御部
144 筺体
208 配線(金属下地)
209 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属下地表面を有機酸を含む洗浄液に接触させて前洗浄し、
前洗浄後の金属下地表面を液中の溶存酸素濃度を使用温度での飽和酸素溶解度未満に低減させた置換めっき液に接触させ、金属下地表面に置換反応によって金属膜を形成することを特徴とする置換めっき方法。
【請求項2】
前記置換めっき液中の溶存酸素濃度を使用温度での飽和酸素溶解度の40%以下にすることを特徴とする置換めっき方法。
【請求項3】
前記金属下地は、基板の表面に形成した配線用凹部内に埋込んだ埋込み配線で、前記金属膜は、この表面に無電解めっきで保護膜を形成する時に触媒核となる触媒金属膜であることを特徴とする請求項1または2記載の置換めっき方法。
【請求項4】
前記置換めっき液は、前記洗浄液に含まれる有機酸及び/または金属下地に化学吸着するN原子を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の置換めっき方法。
【請求項5】
表面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、
置換めっき液を保持する密閉された保持槽と、
前記保持槽で保持された置換めっき液を内部に導入して、前記基板ホルダで保持された基板の表面を置換めっき液に接触させる処理槽と、
前記保持槽及び前記処理槽を経由させて置換めっき液を循環させる液循環系路を有し、
前記基板ホルダ及び前記処理槽は、内部雰囲気を制御可能な密閉された筺体内に配置され、
前記処理槽内には、該処理槽の置換めっき液中に不活性ガスをバブリングして置換めっき液中の溶存酸素濃度を低減させる散気管が配置されていることを特徴とする置換めっき装置。
【請求項6】
前記液循環系路を介して、0.3〜3L/minの流量で置換めっき液を循環させながら、前記保持槽の置換めっき液中に、前記散気管を通して、1〜10L/minの不活性ガスを導入することを特徴とする請求項5記載の置換めっき装置。
【請求項7】
表面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、
置換めっき液を保持する密閉された保持槽と、
前記保持槽で保持された置換めっき液を内部に導入して、前記基板ホルダで保持された基板の表面をめっき液に接触させる処理槽と、
前記保持槽及び前記処理槽を経由させて置換めっき液を循環させる液循環系路を有し、
前記基板ホルダ及び前記処理槽は、内部雰囲気を制御可能な密閉された筺体内に配置され、
前記液循環系路中には、脱気モジュールが介装されていることを特徴とする置換めっき装置。
【請求項8】
前記液循環系路を介して、1〜4L/minの流量で置換めっき液を循環させることを特徴とする請求項7記載の置換めっき装置。
【請求項9】
前記保持槽の上部には、置換めっき液の自由液面位置における断面積を最小にする狭窄部を有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の置換めっき装置。
【請求項10】
前記処理槽内には、この内部を流れる置換めっき液の流れを整える複数の整流板が配置されていることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の置換めっき装置。
【請求項11】
前記置換めっき液は、前記洗浄液に含まれる有機酸及び/または金属下地に化学吸着するN原子を有する化合物を含むことを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の置換めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−13783(P2008−13783A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182706(P2006−182706)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】