説明

置換クロルメタン化合物の製造方法

【課題】アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基で置換されたクロルメタン化合物を工業的により有利に製造できる方法の提供。
【解決手段】第6族元素金属または第6族元素化合物と、過酸化水素とを反応させて第6族元素酸化物を調製し、次いで、該第6族元素酸化物およびリン酸塩の存在下、置換メタン化合物(例えばアセチルアセトン)と過酸化水素と金属塩素化物とを反応させる式(2)で示される置換クロルメタン化合物(例えば2−クロロ−3,5−オエンタンジオン)の製造方法。


(式中、E〜Eは、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基または水素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基で置換されたクロルメタン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基で置換されたクロルメタン化合物の製造方法としては、例えば、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基で置換されたメタン化合物と過酸化水素と塩化水素とを反応させる方法(例えば、特許文献1参照。)や、過酸化水素および酸の存在下に上記と同様の基で置換されたメタン化合物と金属ハロゲン化物とを反応させる方法(例えば、特許文献2参照。)が知られている。しかしながら、前者の方法は、塩化水素を用いており、工業的製法としては、より取り扱いの容易な塩素化物を用いて塩素化できる製造方法の開発が求められていた。また、後者の方法はハロゲン化物を用いるハロゲン化方法ではあるものの、その実施例は臭素化のみしか記載されておらず、塩素化反応に適用してみたところ、収率の点で工業的に満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−371048号公報
【特許文献2】特開2006−111595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明者は、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基で置換されたクロルメタン化合物を工業的により有利に製造できる方法を開発すべく、鋭意検討したところ、第6族元素金属または第6族元素化合物と、過酸化水素とを反応させて第6族元素酸化物を調製し、次いで、該第6族元素酸化物およびリン酸塩の存在下、対応する置換メタン化合物と過酸化水素と金属塩素化物とを反応させることにより、目的の置換クロルメタン化合物を容易に製造できることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、第6族元素金属または第6族元素化合物と、過酸化水素とを反応させて第6族元素酸化物を調製し、次いで、該第6族元素酸化物およびリン酸塩の存在下、式(1)
【化1】

(式中、E〜Eは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基または水素原子を表す。ただし、E〜Eのうち2つ以上が同時に水素原子であることはない。)
で示される置換メタン化合物と過酸化水素と金属塩素化物とを反応させる式(2)
【化2】

(式中、E〜Eは、それぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される置換クロルメタン化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、比較的取り扱いの容易な塩素化物を用いて、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基で置換されたクロルメタン化合物を製造できるため、工業的に有利である。また、酸性条件下での反応を回避できるので、酸に活性な置換基を有するクロルメタン化合物の製造を行う場合には、特に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、上記式(1)で示される置換メタン化合物(以下、置換メタン化合物(1)と略記する。)について説明する。
【0008】
式(1)において、E〜Eで表される置換基のうち、アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられる。これらのアルコキシカルボニル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等のアリールオキシ基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアルコキシカルボニル基の具体例としては、例えばフェニルメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0009】
アルキルカルボニル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロヘキサンカルボニル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数2〜20のアルキルカルボニル基が挙げられる。これらのアルキルカルボニル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等のアリールオキシ基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアルキルカルボニル基の具体例としては、例えばフェニルアセチル基、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。
【0010】
アリールカルボニル基としては、例えばベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数7〜11のアリールカルボニル基が挙げられる。これらのアリールカルボニル基上に置換していてもよい基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、3−オキソブチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、ベンジル基等の置換されていてもよいアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアリールカルボニル基の具体例としては、4−メトキシベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基等が挙げられる。
【0011】
かかる置換メタン化合物(1)としては、例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジシクロヘキシル、アセチルアセトン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、4,6−ノナジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1−フェニル−1,3−プロパンジオン、3−オキソブタン酸メチル、3−オキソブタン酸エチル、3−オキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル等が挙げられる。
【0012】
次に、第6族元素金属または第6族元素化合物と、過酸化水素とを反応させて第6族元素酸化物を調製する方法について説明する。
【0013】
第6族元素金属としては、例えば、タングステン金属、モリブデン金属等が挙げられる。第6族元素化合物としては、例えば、ホウ化タングステン、炭化タングステン、酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム、タングステンカルボニル錯体等のタングステン化合物;ホウ化モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン、モリブデンカルボニル錯体等のモリブデン化合物;等が挙げられる。
【0014】
過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。過酸化水素水中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて希釈、濃縮等により濃度調整を行ったものを用いればよい。
【0015】
第6族元素酸化物調製に用いる過酸化水素の使用量は、第6族元素金属または第6族元素化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0016】
第6族元素酸化物の調製は、通常、水の存在下で実施される。
【0017】
第6族元素酸化物の調製は、通常、第6族元素金属または第6族元素化合物と、過酸化水素とを混合、接触させることにより行われ、その接触効率をより向上させるため、第6族元素酸化物調製液中で、第6族元素金属または第6族元素化合物が十分分散するよう、攪拌しながら反応を行うことが好ましい。また、第6族元素金属または第6族元素化合物と、過酸化水素との接触効率を高め、第6族元素酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状の第6族元素金属または第6族元素化合物または粒径の小さな第6族元素金属または第6族元素化合物を用いることが好ましい。
【0018】
第6族元素酸化物の調製温度は、通常−10〜100℃である。
【0019】
第6族元素金属または第6族元素化合物と過酸化水素とを、水中、有機溶媒中もしくは有機溶媒と水との混合溶媒中で反応させることにより、第6族元素金属または第6族元素化合物の全部もしくは一部が溶解して、第6族元素酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができるが、該第6族元素酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、置換メタン化合物(1)と過酸化水素と金属塩素化物との反応に用いてもよいし、該調製液をそのまま触媒として用いてもよい。該調製液をそのまま触媒として用いる場合は、該調製液中の過酸化水素量を考慮して、置換メタン化合物(1)と金属塩素化物とともに反応させる過酸化水素の使用量を決めてもよい。
【0020】
また、第6族元素金属または第6族元素化合物とリン酸塩と置換メタン化合物(1)と過酸化水素と金属塩素化物とを接触、混合して、第6族元素酸化物の調製操作と、置換メタン化合物(1)と過酸化水素と金属塩素化物との反応を同時に行ってもよい。
【0021】
次に、上記で調製された第6族元素酸化物およびリン酸塩の存在下、置換メタン化合物(1)と過酸化水素と金属塩素化物とを反応させて、上記式(2)で示される置換クロルメタン化合物(以下、置換クロルメタン化合物(2)と略記する。)を製造する方法について説明する。
【0022】
第6族元素化合物の使用量は、置換メタン化合物(1)に対して、通常0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、活性メチレン化合物(1)に対して、1モル倍以下である。
【0023】
過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。過酸化水素水中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて希釈、濃縮等により濃度調整を行ったものを用いればよい。
【0024】
過酸化水素の使用量は、置換メタン化合物(1)に対して、通常1モル倍以上であり、その使用量の上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、置換メタン化合物(1)に対して20モル倍以下である。
【0025】
金属塩素化物としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩素化物;塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム等のアルカリ土類金属塩素化物が用いられる。好ましくはアルカリ金属塩素化物であり、より好ましくは塩化カリウムである。
【0026】
金属塩素化物の使用量は、通常、置換メタン化合物(1)に対して1モル倍以上であり、その使用量の上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、置換メタン化合物(1)に対して5モル倍以下である。
【0027】
リン酸塩としては、緩衝作用を奏するものであれば特に限定されることなく使用可能である。かかるリン酸塩としては、例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸アルカリ金属塩;ピロリン酸マグネシウム、リン酸カルシウム等のリン酸アルカリ土類金属塩;等が挙げられる。反応性の面からリン酸アルカリ金属塩が好ましく、リン酸水素二アルカリ金属塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等)またはリン酸二水素アルカリ金属塩(リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等)がより好ましい。
【0028】
リン酸塩の使用量は、通常、置換メタン化合物(1)に対して0.1モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、置換メタン化合物(1)に対して5モル倍以下である。
【0029】
本反応は、通常、水の存在下に実施される。水は、過酸化水素に含まれる水であってもよいし、第6族元素酸化物の調製に用いられた水であってもよいし、それらとは別に加えて用いる水であってもよい。
【0030】
水の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、置換メタン化合物(1)に対して100重量倍以下である。
【0031】
反応温度は、通常0〜100℃の範囲である。
【0032】
反応試剤の混合順は、反応温度以下で混合する場合は、特に制限されない。反応温度条件で混合する場合は、リン酸塩を共存させた第6属元素酸化物と活性メチレン化合物(1)と金属塩素化物の混合物に、過酸化水素を加えていくことが好ましい。
【0033】
本反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0034】
反応終了後の混合物に、例えば、晶析処理や蒸留処理等を施したり、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理を施し、得られる有機層を濃縮処理したりすることにより、置換クロルメタン化合物(2)を取り出すことができる。取り出された置換クロルメタン化合物(2)は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の手段によりさらに精製されてもよい。
【0035】
ここで、水に不溶の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;等が挙げられる。
【0036】
かくして得られる置換クロルメタン化合物(2)としては、例えば2−クロロマロン酸ジメチル、2−クロロマロン酸ジエチル、2−クロロマロン酸ジn−プロピル、2−クロロマロン酸ジイソプロピル、2−クロロマロン酸ジn−ブチル、2−クロロマロン酸ジシクロヘキシル、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、4−クロロ−3,5−ヘプタンジオン、3−クロロ−2,4−ヘプタンジオン、4−クロロ−3,5−オクタンジオン、3−クロロ−2,4−ヘキサンジオン、5−クロロ−4,6−ノナジオン、2−クロロ−1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、2−クロロ−1−フェニル−1,3−プロパンジオン、2−クロロ−3−オキソブタン酸メチル、2−クロロ−3−オキソブタン酸エチル、2−クロロ−3−オキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0038】
実施例1
還流冷却管を付した50mLフラスコに、タングステン金属50mgと30重量%過酸化水素水300mgを加え、室温で30分攪拌すると無色透明な液状の混合物が得られた。該混合物に、水1gとリン酸二水素カリウム200mgとアセチルアセトン200mgと塩化カリウム600mgを加え、40℃に昇温した。得られた混合物を同温度で攪拌しながら、そこに、30重量%過酸化水素水2gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物を、さらに同温度で4時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、そこに酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると、混合物は2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、アセチルアセトンの転化率は50%であり、2−クロロ−3,5−ペンタンジオンの選択率は98%であった。
【0039】
実施例2
還流冷却管を付した50mLフラスコに、タングステン金属50mgと30重量%過酸化水素水300mgを加え、室温で30分攪拌すると無色透明な液状の混合物が得られた。該混合物に、水1gとリン酸二水素カリウム200mgと3−オキソブタン酸エチル260mgと塩化カリウム600mgを加えた。得られた混合物を室温で攪拌ながら、そこに、30重量%過酸化水素水3gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物を、さらに室温で5時間攪拌した。反応終了後の混合物に、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると、混合物は2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、3−オキソブタン酸エチルの転化率は35%であり、2−クロロ−3−オキソブタン酸エチルの選択率は63%であった。
【0040】
比較例1:第6族元素酸化物の非存在下での塩素化反応(実施例1との比較)
還流冷却管を付した50mLフラスコに、水1gとリン酸二水素カリウム200mgとアセチルアセトン200mgと塩化カリウム600mgを加え、40℃に昇温した。得られた混合物を同温度で攪拌しながら、そこに、30重量%過酸化水素水2gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物を、さらに同温度で4時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、そこに酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると、混合物は2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、アセチルアセトンの転化率は10%であり、2−クロロ−3,5−ペンタンジオンの選択率は0%であった。
【0041】
比較例2:リン酸塩の非存在下、酸の存在下での塩素化反応(特開2006−111595号公報に記載の反応による塩素化)
還流冷却管を付した50mLフラスコに、アセチルアセトン200mg、30重量%塩化カリウム水溶液1.0g、30重量%過酸化水素水450mg、10重量%硫酸1.96gを加え、室温で4時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、そこに酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると、混合物は2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、アセチルアセトンの転化率は5%であり、2−クロロ−3,5−ペンタンジオンの選択率は80%であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
置換クロルメタン化合物は、医農薬や香料をはじめとする各種化学製品およびそれらの合成中間体等として重要な化合物であり(例えば、J. Org. Chem. , 60, 3074 (1995)およびBioorganic & Medicinal Chem. Lett., 14, 2245 (2004)参照)、本発明によれば、これらの化合物を、取り扱いの容易な塩素化物を用いて製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第6族元素金属または第6族元素化合物と、過酸化水素とを反応させて第6族元素酸化物を調製し、次いで、該第6族元素酸化物およびリン酸塩の存在下、式(1)
【化1】

(式中、E〜Eは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基または水素原子を表す。ただし、E〜Eのうち2つ以上が同時に水素原子であることはない。)
で示される置換メタン化合物と過酸化水素と金属塩素化物とを反応させる式(2)
【化2】

(式中、E〜Eは、それぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される置換クロルメタン化合物の製造方法。
【請求項2】
リン酸塩が、リン酸アルカリ金属塩またはリン酸アルカリ土類金属塩である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
リン酸塩が、リン酸水素二アルカリ金属塩またはリン酸二水素アルカリ金属塩である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
金属塩素化物が、アルカリ金属塩素化物またはアルカリ土類金属塩素化物である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−57369(P2009−57369A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186899(P2008−186899)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】