説明

置換4−アミノ−ピリミジンの新規合成

本発明は、構造式IVの化合物(式中Rがアミノ保護基であり、Rが水素またはC1−10アルキルである)の製造方法であって、a)構造式Iaの化合物(式中Mは好ましくはLi+、Na、K、1/2Mg2+および1/2Zn2+からなる群から選択されたカチオンである)(構造式Ia)を、溶媒中で、アンモニウム塩NH(式中Xは好ましくは塩化物、臭化物、サルフェートおよびアセテートからなる群から選択されたアニオンである)と反応させて構造式IIの化合物とするステップと;b)構造式IIの化合物を、塩基の存在下、ニトリルR−CNと反応させて構造式IVの化合物とするステップと、を含む方法に関する。本発明はさらに、構造式IIの化合物、およびビタミンBの製造のためのその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、N置換N−(3−アミノ−2−シアノアリル)アミン(特にN−(3−アミノ−2−シアノアリル)ホルムアミド)から置換4−アミノ−ピリミジンへの直接的変換に関する。詳細には、本発明は、N−置換N−(3−アミノ−2−シアノアリル)アミン類(特にN−(3−アミノ−2−シアノアリル)ホルムアミド)およびアルキルニトリル例えばアセトニトリルの環化反応による、2−アルキル−4−アミノ−5−ホルミルアミノメチルピリミジン類(特に2−メチル−4−アミノ−5−ホルミルアミノメチル−ピリミジン)に至る新しい反応に関する。
【0002】
[4−アミノピリミジンの重要性]
4−アミノピリミジンおよびアミノ置換誘導体は、いくつかの抗生物質中、除草剤中ならびにビタミンB中に構造要素として見出すことができる。
【0003】
例えば、チアミン類似体であるAmprolium(CORID(登録商標)として販売)は、チアミンの能動輸送を競合的に阻害する。コクシジウム属(coccidia)はこの阻害に対して宿主よりも50倍感受性が高い。Amproliumは、曝露された畜牛における費用の高いコクシジウム属感染を予防し、それがまさに発生した場合には臨床的突発に対処することができる。小腸内にコクシジウム属を停止させることにより、CORID(登録商標)はより損害の大きい大腸内のコクシジウム症を予防する。
【化1】



【0004】
[4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジンの重要性]
4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジンはビタミンBの合成における重要な中間体である。ビタミンB(チアミン)は主としてクロリドヒドロクロリド(1)およびニトレートの形で使用される。
【化2】



【0005】
それは自然界に広く存在し、例えば小麦麦芽100g中に2.05mg、大豆100g中に1.3mg存在する。人間の体内のビタミンB不足は、脚気と結びつけられ、炭水化物状態の不均衡および神経機能に対する有害効果が付随する。人間は、体重1kgあたり20〜30μgを必要とし、これは0.3〜1.5mg/日の一日許容量に相当する。天然供給源からのチアミンの抽出は、経済的な収益性が高くないと考えられるため、それを化学合成により製造する必要がある。ビタミンBの工業的生産は、1937年スイスのHoffmann−La Rocheおよび米国のMerckにより開始された。市販のチアミン形態は、クロリドヒドロクロリドおよびモノニトレートである。
【0006】
チアゾールおよびピリミジン環を含むチアミンの合成における重要な中間体は4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジンである。チアミン合成に向けての1つの主要なアプローチは、ピリミジン合成およびそれに続く、4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチル-ピリミジンおよび3−クロロ−5−ヒドロキシペンタン−2−オンからのピリミジン部分、3−メルカプトケトンまたは対応するアセテートに付着したチアゾール環の形成である。4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジンの合成についてはいくつかの手順が公開済みである。ビルディングブロックは、C2単位例えばアセトアミジンおよび通常はCO由来のC1単位に基づいている。合成のための安価な出発材料として、アクリロニトリルをC3単位として使用することができる。
【0007】
[先端技術]
特公昭39−022009号公報および特公昭39−022010号公報は、塩酸ホルムアミジンをナトリウムおよびエタノールと反応させてアミジンを遊離させその後2−(エトキシメトキシメチル)−3−エトキシ−プロピオニトリルを添加することによる2−メチル−4−アミノ−5−ホルミルアミノメチルピリミジンの合成について記述している。この手順は、追加の反応ステップ、ヒドロクロリドからのホルムアミジンの遊離およびエノールエチルエーテルの合成を必要とすることから、不利である。
【0008】
7個を超えるステップのためのUBE−Takeda手順(欧州特許出願公開第A055108号明細書;欧州特許出願公開第A279556号明細書;独国特許出願公開第A3303815号明細書;欧州特許出願公開第A124780号明細書;欧州特許出願公開第A290888号明細書;独国特許出願公開第A3222519号明細書)は、第1のステップの中に、アクリロニトリルからシアノアセトアルデヒド−ジメチルアセタールへの変換を含んでいる。このステップは非常に複雑で、メチルニトリルでのアクリルニトリルの酸化が亜硝酸ガスの形成を導き、このガスをニトライトに再酸化しなければならないことから、大規模な研究を必要とする(欧州特許出願公開第A055108号明細書)。
【0009】
5ステップ超のUBEアプローチ(独国特許出願公開第A3218068号明細書、特開昭58−065262号公報)は、塩酸アセトアミジンを2当量必要とする。塩酸アセトアミジンは高価であり;したがって、出発材料として2当量を使用するのは不利である。
【0010】
BASFの5ステップ手順(欧州特許出願公開第A172515号明細書)は、対応するエナミンの合成のためにo−クロロアニリンを使用する。o−クロロアニリンは癌を誘発することが疑われている。エナミンは、アセトアミジンでの環化のための後続ステップにおいて使用される。4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジンの形成の後、o−クロロアニリンを分離し、複雑なプロセスにおいて再利用しなくてはならない。
【0011】
独国特許出願公開第A3431270号明細書は、具体的には発癌性がきわめて高いo−クロロアニリンをアミンとして使用する欧州特許出願公開第A172515号明細書と同じ技術の使用を記述しており、最終製品であるビタミンB1の中には微量のo−クロロアニリンが発見された。
【0012】
アクリロニトリルはアンモニアの存在下で反応してアミノプロピオニトリル(APN)となる。APNは、例えばビタミンBの合成ならびにパントテン酸カルシウムの合成の両方のための出発材料として有用であることから(スキーム1参照)、商業的に有利な中間体である。
【0013】
このアプローチにおける重要なステップは、アセトアミジンを用いたα−ホルミル−β−ホルミルアミノプロピオニトリルナトリウム塩の誘導体の環化である。これらの誘導体は例えば、α−ホルミル−β−ホルミルアミノプロピオニトリルナトリウム塩のエナミン、アセテートまたはメチレノールエーテルであり得る(例えば欧州特許出願公開第A001760号明細書、独国特許出願公開第A2818156号明細書、独国特許出願公開第A2323845号明細書を参照のこと)。α−ホルミル−β−ホルミルアミノプロピオニトリルナトリウム塩の誘導体とアセトアミジンの間の環化反応のためには、アセトアミジンをそのヒドロクロリドから遊離させなくてはならない。この手順のためには、市販の塩酸アセトアミジンを、通常はナトリウムメタノレートである塩基1当量で中和しなければならず、不安定な遊離アセトアミジン塩基および1当量の塩廃棄物が導かれる。塩酸アセトアミジンの合成は腐食性が高く、アセトアミジン自体非常に高価である。したがって、この手順がもつ重大な欠点は、塩の形成、塩基のための追加コスト、そして例えば塩のろ過によるものなどの後処理を含めた追加の反応ステップにある。アミンは、化学的補助物質として役立ち、アセトアミジンとの反応の時点で放出され、再循環され得るが、アミンによる最終製品の損失および汚染が観察されている。
【0014】
独国特許出願公開第A3511273号明細書は、言及された出発材料のいずれかを誘導体化する必要も、アセトアミジンをそのヒドロクロリドから遊離させる必要もない、塩酸アセトアミジンでのα−ホルミル−β−ホルミルアミノプロピオニトリルナトリウム塩の直接環化について記述している。
【化3】



【0015】
プロセスは、92%の最低純度をもつα−ホルミル−β−ホルミルアミノプロピオニトリルナトリウム塩を還流下で4〜6時間イソプロパノール、メチルイソブチルカルビノール、開鎖または環状エーテルのような溶媒中で塩酸アセトアミジンと反応させ、2−メチル−4−アミノ−5−ホルミルアミノメチルピリミジンを生成するステップおよびそれに続いて加水分解を行ない4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジンを導くステップで構成されている。報告された収量は57%である。残念なことに、報告された条件の下で、報告された収量を得ることは不可能であった。報告された条件下で得ることのできる最高の収量は、事実上35%であった。
【0016】
独国特許出願公開第A3511273号明細書中に記載されている方法を工業規模で利用する上での主たる欠点は、収量が低いこと(このため方法は経済的に魅力のないものとなっている)そして出発材料が92%の最低純度を有していなければならないという事実にある。それに加えて、アセトアミジンのヒドロクロリドしか使用できない。
【0017】
J.Heterocyclic Chem.1982、19,493〜496は、例えばプロピオニトリル、ベンゾニトリルまたはp−クロロベンゾニトリルと3−アミノクロトノニトリルを、水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物または水酸化カリウムの存在下で反応させることによる2−置換4−アミノ−6−メチルピリミジンの合成について記述している。
【0018】
したがって、以下の発明の目的は、多大な収量改善を可能にしかつ最も好ましくは硫酸ジメチルまたはo−クロロアニリンなどの毒性の高い作用物質を使用することなく、4−アミノ−5−アミノメチル−2−アルキルピリミジン(構造式Vの化合物、特に4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチル-ピリミジン)
【化4】



に至る新しい方法を提供することにあった。
【0019】
したがって本発明は、構造式IV
【化5】



の化合物(式中Rがアミノ保護基であり、Rが水素またはC1−10アルキルである)の製造方法であって、
a)構造式Ia
【化6】



の化合物(式中Mはカチオンである)を、溶媒中でアンモニウム塩NH(式中Xはアニオンである)と反応させて、構造式II
【化7】



の化合物とするステップと;
b) 構造式IIの化合物を、塩基の存在下、ニトリルR−CN(構造式IIIの化合物)と反応させて、構造式IVの化合物とするステップと、
を含む方法に関する。
【0020】
は、アミノ保護基である。このような基は、当業者にとって公知である。このような基の例としては、Boc(=tert−ブトキシカルボニル)、Cbz(=ベンジルオキシカルボニル)、アリルオキシ、ベンジルおよびCH(OMe)(トリメトキシフェニルメチレン)ならびにアミド(R=C(O)Rで、Rは水素または直鎖または分枝鎖C1−4アルキルである)がある。置換基Rは好ましくは水素、メチル、エチル、n−プロピルまたはn−ブチルであり、より好ましくはRは水素またはメチルであり、最も好ましくはRは水素である。
【0021】
好ましくはRはホルミルまたはアセチルであり、より好ましくはRはホルミルである。
【0022】
に関しては、アルキルは直鎖または分枝鎖または環状であってよく、好ましくはC1−10アルキルは直鎖(C1−10アルキル)または分枝鎖(C3−10アルキル)である。好ましくはRはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはイソプレニルであり、好ましくはRはメチル、イソプロピルまたはイソプレニルであり、より好ましくはRはメチルである。
【0023】
カチオンMは好ましくはLi、Na、K、1/2Mg2+および1/2Zn2+からなる群から選択される。
【0024】
構造式Iaの化合物は、例えば、欧州特許出願公開第A205131号明細書および独国特許出願公開第A2323845号明細書で記述されているように、アクリロニトリルへのアンモニアの添加によるアミノプロピオニトリルの合成とそれに続くギ酸メチルおよびナトリウムメトキシドを用いたホルミル化などにより、当業者にとって公知のあらゆる方法で調製可能である。
【0025】
アニオンXは、好ましくは、塩化物、臭化物、サルフェート、アセテート、オキサレート、HPO2−からなる群から選択され、より好ましくはXは塩化物である。すなわち塩化アンモニウムは、構造式IIの化合物に至るまで構造式Iaの化合物と反応させられる。
【0026】
[ステップa)]
ステップa)を実施するための溶媒はさほど重要ではない。適切な溶媒は、例えばアルコール、例えばメタノール、2−プロパノールおよび1−ブタノール;芳香族炭化水素、例えばトルエン;エステル、例えば酢酸エチル;エーテル、例えばジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン;ニトリル、例えばアセトニトリルである。溶媒の量もさほど重要ではない。反応は一般に、溶媒中のエノラートIaの懸濁液中で実施され、したがって出発エノラートの濃度は、懸濁液の合計重量に基づいて10〜50重量%の範囲内にある。
【0027】
好ましくは、ステップb)で使用されるニトリルR−C≡N、例えばアセトニトリルは、溶媒として使用される。ビタミンBの調製のためには、溶媒としてアセトニトリルを使用することが好ましい。
【0028】
好ましい溶媒混合物の一例は、100:0から0:100の体積比、好ましくは(80〜50):(20〜50)の体積比、特に好ましくは65〜35の体積比での2−プロパノールとトルエンの混合物である。
【0029】
エノラートは120℃超で分解し始めることから、反応を実施する温度は120℃を超えるべきではない。エノラートの分解温度がさらに低い場合、反応温度もそれに応じて低下させなくてはならない。好ましい温度は、60〜90℃の範囲内、より好ましくは70〜85℃の範囲内にある。
【0030】
反応は、大気圧下でも5バールのN下でも、または5バールのNH下でも実施してよい。
【0031】
出発材料のモル比、すなわちアンモニア塩NH対構造式Iaのエノラートのモル比は0.9:1〜2.4:1の範囲内で変動してよい。最高の結果は、1.3:1のNH対エノラートモル比で得られた。
【0032】
全面的な転換を達成するために、生成された水を除去する必要はない。
【0033】
反応の持続時間は、出発材料の量に応じて30分〜20時間の範囲内、好ましくは3〜7時間の範囲内にある。
【0034】
出発材料は、反応容器に対して任意の順序で添加することができる。
【0035】
本発明によると、ステップa)の反応条件を以下のように調整することが有利である:
・温度は40〜120Cの範囲内、好ましくは60〜90C、より好ましくは70〜85Cの範囲内;
・圧力は1〜5バール、好ましくは1〜2バールの範囲内;
・反応時間は0.5〜20時間、好ましくは2〜10時間、より好ましくは3〜7時間;最も好ましくは3〜5時間の範囲内;
・保護雰囲気下。
【0036】
[ステップb)]
構造式IIの化合物は、75〜99%の範囲内の純度で良好に利用できる。
【0037】
グルー・ジアミンを合成するために構造式IVの化合物が使用される場合、アセトニトリル(すなわちR=メチル)が用いられ、アンプロリウムの場合はプロピオニトリル(すなわちR=プロピル)が用いられる。
【0038】
有利にも、ニトリルはステップa)で溶媒としてすでに使用されている。したがって、ステップa)がすでに実施された溶媒を除去する必要は一切なく、これはすなわち、ステップa)を実施した後に塩基を添加するだけでよいことを意味している。
【0039】
塩基としては、当業者にとって公知の任意の塩基を使用してよい。一般に、対応する酸が9超のpKaを有する塩基が適切であるはずである。適切な塩基の例は、アルカリ金属水酸化物(特に水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウム)および擬似アルカリ金属水酸化物などの水酸化物、アルカリ金属水素化物例えばNaHおよびアルコレート例えばナトリウムメタノレートおよびカリウムtert−ブタノレートである。水酸化物は、固体形態ならびにアルコール溶液中で使用してよい。水酸化物の水溶液も同様に可能であり、これは、反応系が一定量の水を許容することを意味している。反応系の総重量に基づいて含水量が10重量%以上となることだけは回避しなければならない。
【0040】
ニトリルも溶媒として役立つ場合、これを構造式IIの化合物に比べて余剰に使用してよい。そうでなければ、構造式IIの化合物に対して化学量論量で使用してもよい。好ましくは、ニトリルは、構造式IIの化合物に比べ少なくとも1.5モル当量で使用される。
【0041】
塩基を触媒量で使用してもよい。通常は、構造式IIの化合物に比べて最高1当量(好ましくは0.01〜1当量)が使用される。好ましくは、化合物IIの量に基づいて、およそ0.2mol%が使用される。
【0042】
ステップb)は、30〜120℃の範囲内の温度で実施されてよく、より好ましくはステップb)は35〜60℃の範囲内の温度で、さらに一層好ましくは40〜50℃の範囲内の温度で、最も好ましくは40〜45℃の範囲内の温度(最適温度:42℃)で実施されてよい。
【0043】
出発材料は、反応容器に対して任意の順序で添加することができる。
【0044】
本発明によると、ステップb)の反応条件を以下のように調整することが有利である:
・温度は10〜120Cの範囲内、好ましくは20〜85C、より好ましくは40〜45Cの範囲内;
・圧力は0.5〜5バール、好ましくは1〜3バールの範囲内;
・反応温度は、0.5〜20時間、好ましくは2〜18時間、より好ましくは7〜15時間の範囲内;
・保護雰囲気下。
【0045】
構造式IIの化合物、特にRがホルミル、アセチルまたはtert−ブトキシカルボニルである化合物は新規であり、これまで特徴づけされたことがない。好ましいのは、Rがホルミルおよびアセチルである構造式IIの化合物であり、より好ましいのは、Rがホルミルである構造式IIの化合物である。
【0046】
こうして本発明は、トランス−N−(3−アミノ−2−シアノアリル)ホルムアミド、シス−N−(3−アミノ−2−シアノアリル)ホルムアミドおよびその任意の混合物、ならびにトランス−N−(3−アミノ−2−シアノアリル)アセトアミド、シス−N−(3−アミノ−2−シアノアリル)アセトアミドおよびその任意の混合物と同様、構造式IIaの化合物(トランス−1−N(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノ−2−シアノアリルアミン)、構造式IIbの化合物(シス−1−N(tert−ブトキシカルボニル)−3−アミノ−2−シアノアリルアミン)および構造式IIcの化合物(構造式IIaおよびIIbの化合物の任意の混合物)に関する。
【化8】



【0047】
構造式IIの化合物(特にR=ホルミル、アセチルまたはtert−ブトキシカルボニルである場合)は新規であることから、それらの調製方法も同様に新規である。したがって、本発明は同様に、構造式II
【化9】



の化合物(式中Rがアミノ保護基(上で定義された通り、かつ上で記した好適性で)である)の製造方法であって、構造式Ia
【化10】



の化合物(式中Mはカチオン(以上で定義された通り、かつ以上で記した好適性で)である)を、溶媒(以上で定義された通り、かつ以上で記した好適性で)中において、アンモニア塩NH(式中Xはアニオン(以上で定義された通り、かつ以上で記した好適性で)である)と反応させて、構造式(II)の化合物とするステップを含む方法にも関する。
【0048】
この反応についての好適姓及び好ましい条件は、すでに以上で開示されている。
【0049】
本発明の別の実施形態は、好ましくは本発明の方法にしたがって得られた構造式IVa
【化11】



の化合物(式中Rはアミノ保護基であり、Rはメチルである)の、ビタミンBの調製方法における中間体としての使用である。
【0050】
本発明のもう一つの目的は、本発明の方法にしたがって得られた構造式II
【化12】



の化合物(式中Rは、アミノ保護基(以上で定義された通り、かつ以上で記した好適性で)である)の、ビタミンBの調製方法における中間体としての使用である。
【0051】
さらに、本発明の一実施形態は、構造式IVaの化合物からアミノ保護基Rが除去される、グルー・ジアミン(GDA:5−アミノメチル−2−メチル−ピリミジン−4−イル−アミン)の製造方法にある。
【0052】
本発明は同様に、前記グルー・ジアミンの製造方法において、構造式IVの化合物(式中R=ホルミルまたはアセチルでありR=メチルである)が加水分解される、方法をも包含している。この加水分解は、例えば国際公開第2007/104442号パンフレット;国際公開第2006/079504号パンフレットおよび独国特許出願公開第A3511273号明細書の中で記述されているような水酸化物などの塩基およびイオン交換体の存在下で実施されてよい。
【0053】
このようにして得られたGDAを、例えばさらに二硫化炭素および3−クロロ−5−アセトキシペンタン−2−オンまたは別のクロロケトン誘導体例えば3−クロロ−5−ヒドロキシペンタン−2−オン、3−メルカプト−5−ヒドロキシペンタン−2−オンまたは3−メルカプト−5−アセトキシペンタン−2−オンまたはその混合物と反応させて、構造式VI
【化13】



の化合物〔RはC1−4アルカノイル、好ましくはアセチル(例えばG.Moine and H−P.Hohmann、「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」、VCH、Vol.A27、1996、515−517中およびその中で引用されている参考文献を参照のこと)である〕を形成させてもよい。
【0054】
したがって、構造式VIの化合物のこのような製造方法も同様に本発明の一部である。
【0055】
構造式VIの化合物を次にさらに酸と反応させて、構造式VII
【化14】



の化合物を形成させてもよい(例えばG.Moine and H−P.Hohmann、「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」、VCH、Vol.A27、1996、515−517中およびその中で引用されている参考文献を参照のこと)。
【0056】
したがって、構造式VIIの化合物のこのような製造方法も同様に本発明の一部である。
【0057】
構造式VIIの化合物を次に、構造式VIII
【化15】



のビタミンBまで、好ましくはHでさらに酸化させてもよい。(例えばG.Moine and H−P.Hohmann、「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」、VCH、Vol.A27、1996、515−517中およびその中で引用されている参考文献を参照のこと)。
【0058】
したがって本発明は、ビタミンBの製造方法であって、構造式IVa
【化16】



の化合物から、アミノ保護基Rを除去してグルー・ジアミンを得、こうして得られたグルー・ジアミンを、好ましくは上でより詳細に記述された通りの構造式VII、
【化17】



の化合物までさらに反応させて、このように得られた構造式VIIの化合物を好ましくはHを用いてさらに酸化させてビタミンBを生成する、ビタミンBの製造方法を含んでいる。
【0059】
好ましくは、構造式IV中のRはC(O)Rであり、ここでRは水素または直鎖または分枝鎖C1−4アルキル(構造式IVaの化合物)
【化18】



であり、こうして例えば以上で引用した参考文献で記述されているように、C(O)R基を加水分解してグルー・ジアミンが得られるようになっている。
【0060】
構造式Iの化合物から出発してビタミンB1に至るまでの全体的反応スキームは、図1に示されている。
【0061】
本発明は、以上で記述した通りの本発明の方法にしたがって得られた構造式IVaの化合物の、ビタミンB1の製造方法における中間体としての使用をも含んでいる。
【0062】
最終的に本発明は、ビタミンB1の製造方法における中間体としての、上述の通りに得たGDAの使用を含んでいる。
【0063】
本発明についてここで、以下の非限定的な実施例の中で例証する。
【0064】
[実施例]
[実施例1]:α−ホルミル−β−ホルミルアミノプロピオニトリルナトリウム塩からのエナミンの調製
【化19】



【0065】
[装置]:1000ml入りの2口丸底フラスコ、アルゴン供給源、機械式撹拌機、油加熱浴
【0066】
イソプロパノール:トルエン(65:35Vol%)の混合物500mlの中に100.0gのα−ホルミル−β−ホルミルアミノプロピオニトリルナトリウム塩(純度88%)およびアンモニウムクロリド37.3gを懸濁させ、130℃の浴温度まで加熱した。ゆっくりと撹拌しながら(毎分50回転)、混合物を3時間還流させた。3時間後、混合物を25℃まで冷却した。懸濁液をP3ガラスフィルタでろ過し、MeOHで洗浄した。溶媒を減圧(浴温度40℃、50mbar)下で蒸発させた。黄色がかった粘性油を得た。収量:濾液71.52g(純度75.6%):75%
【0067】
[精製]
400gのSiO上で30gの粗生成物を精製した。したがって、メタノール(MeOH):メチレンクロリド(CHcl)(1:9;Vol%)の混合物7Lおよび13バールで150mL/分の流量を用いてハイドロマトリクス上に物質を吸収させた。最終的に20gの生成物(純度90%)を得た。
【0068】
[分光学による特性評価]
H−NMR、DMSO−d6、δppm単位:Z異性体δ=3.65(d、J=5.65Hz、2H、CH);6.45(d、J=11.11Hz、2H、NH);6.86(t、J=11.11Hz、1H、C=CH);7.98(d、J=1.69Hz、1H、HCO)、8.15(m、1H、NH)。E異性体:δ=3.72(d、J=6.03Hz、2H、CH);6.62(d、J=10.7Hz、2H、NH)、6.94(t、J=10.7、1H、C=CH)、8.03(d、J=1.69Hz、1H、HCO)、8.35(m、1H、NH)。
13C−NMR、DMSO−d6、δppm単位:E異性体:δ=32.9、73.8、123.5、148.9、161.4。
Z異性体:37.6、71.8、119.9、150.8、160.8。
MS(電子衝撃):M269(bis−トリメチルシランアダクツ)
【0069】
[実施例2−8]
同じプロトコルを適用して実施例1を反復したが、溶媒および反応時間は異なるものであった。反応温度は、対応する溶媒の還流温度であった。
【0070】
【表1】



【0071】
同じプロトコルを適用して実施例1を反復したが、NHClの量は変更した。
【0072】
【表2】



【0073】
[実施例9]:N−ホルミルグルー・ジアミンに至るまでのN−(3−アミノ−2−シアノアリル)ホルムアミドとアセトニトリルの反応
【化20】



【0074】
[機器]:
磁気撹拌器の備わった20mL入りの2口フラスコ、温度計、還流凝縮器およびアルゴン供給源。
【0075】
[調製]:
250mgのN−(3−アミノ−2−シアノアリル)ホルムアミドを7.5mLのアセトニトリル中に溶解させ、74.8mgの水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物を添加した。溶液を42℃で16時間撹拌した。その後、溶媒を蒸発させた。N−ホルミルグルー・ジアミンの収量は、転換済みエナミン(転換率80%)に基づき58%であった。
【0076】
同じプロトコルを適用して実施例9を反復したが、温度は変更した。
【0077】
【表3】



【0078】
同じプロトコルを適用して実施例9を反復したが、温度と塩基は変更した。
【0079】
【表4】



【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】構造式Iの化合物からビタミンB1に至るまでの全体的反応スキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rがアミノ保護基であり、好ましくはRがホルミル、アセチルまたはtert−ブトキシカルボニルである、構造式IIの化合物のトランス異性体。
【化1】



【請求項2】
Rがアミノ保護基であり、好ましくはRがホルミル、アセチルまたはtert−ブトキシカルボニルである、構造式IIの化合物のシス異性体。
【化2】



【請求項3】
請求項1および2に記載のシスおよびトランス異性体の混合物。
【化3】



【請求項4】
構造式II
【化4】



の化合物(式中Rがアミノ保護基である)の製造方法であって、構造式Ia
【化5】



の化合物(式中Mはカチオンである)を、溶媒中でアンモニア塩NH(式中Xはアニオンである)と反応させて構造式(II)の化合物とするステップを含む方法。
【請求項5】
構造式IV
【化6】



の化合物(式中Rがアミノ保護基であり、Rが水素またはC1−10アルキルである)の製造方法であって、
a)構造式Ia
【化7】



の化合物(式中Mはカチオンである)を、溶媒中でアンモニウム塩NH(式中Xはアニオンである)と反応させて、構造式II
【化8】



の化合物とするステップと;
b)構造式IIの化合物を、塩基の存在下、ニトリルR−CNと反応させて構造式IVの化合物とするステップと、
を含む方法。
【請求項6】
がホルミルまたはアセチルであり;好ましくはRがホルミルである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
がメチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはイソプレニルであり;好ましくはRがメチル、イソ−プロピルまたはイソ−プレニルであり、より好ましくはRがメチルである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
構造式IVの化合物からアミノ保護基Rが除去される、グルー・ジアミンの製造方法。
【請求項9】
構造式IVの化合物(式中R=ホルミルまたはアセチルであり、R=メチルである)が加水分解される、グルー・ジアミンの製造方法。
【請求項10】
構造式VI
【化9】



の化合物(式中RがC1−4−アルカノイル、好ましくはアセチルである)の製造方法であって、好ましくは請求項8または9に記載の方法により得られるグルー・ジアミンを、二硫化炭素および、好ましくは3―クロロ−5−ヒドロキシペンタン−2−オン、3−クロロ−5−アセトキシペンタン−2−オン、3−メルカプト−5−ヒドロキシペンタン−2−オン、3−メルカプト−5−アセトキシペンタン−2−オンおよびその任意の混合物からなる群から選択されたクロロケトン誘導体と反応させて、構造式VIの化合物とすることを特徴とする方法。
【請求項11】
構造式VII
【化10】



の化合物の製造方法であって、好ましくは請求項10に記載の方法で得られる構造式VIの化合物を、さらに酸と反応させて、構造式VIIの化合物とすることを特徴とする方法。
【請求項12】
ビタミンBの製造方法であって、構造式IVa
【化11】



の化合物から、アミノ保護基Rを除去してグルー・ジアミンを得、こうして得られたグルー・ジアミンをさらに、好ましくは請求項11に記載の構造式VII
【化12】



の化合物まで反応させ、このように得られた構造式VIIの化合物を好ましくはHを用いてさらに酸化させてビタミンBとすることを特徴とする方法。
【請求項13】
がC(O)Rであり、ここでRは水素または直鎖または分枝鎖C1−4アルキル(構造式IVaの化合物)であり、前記C(O)R基を加水分解してグルー・ジアミンを得る、請求項12に記載の方法。
【化13】



【請求項14】
請求項8または9に記載の方法にしたがって得られたグルー・ジアミンの、ビタミンBの前記調製用方法における中間体としての使用。
【請求項15】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法にしたがって得られた構造式IVa
【化14】



の化合物(式中Rはアミノ保護基である)の、ビタミンBの調製方法における中間体としての使用。
【請求項16】
請求項4に記載の方法にしたがって得られた構造式II
【化15】



の化合物(式中Rはアミノ保護基である)の、ビタミンBの調製方法における中間体としての使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−528693(P2011−528693A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519158(P2011−519158)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059415
【国際公開番号】WO2010/010113
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】