説明

置換5−メトキシメチルピリジン−2,3−ジカルボン酸誘導体の製造方法

置換5-メトキシメチルピリジン-2,3-ジカルボン酸誘導体の製造方法。式(I)[式中、Zは、H又はハロゲンであり;Z1は、H、ハロゲン、CN又はNO2であり;Yは、OMであり、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。]の2,3-二置換-5-メトキシメチルピリジンの製造方法であって、(i)式(II)[式中、Qは、第三級の脂肪族又は環式の、飽和、部分的に不飽和若しくは芳香族アミンであり;Zは、H又はハロゲンであり;Z1は、H、ハロゲン、CN又はNO2であり;Y1及びY2は、相互に独立して、OR1、NR1R2であるか、又はY1Y2が一緒になって-O-、-S-若しくは-NR3-であり;R1及びR2は、相互に独立して、H、C1-C4アルコキシ若しくはフェニル(1〜3個のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよいC1-C4アルキル、又は1〜3個のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルであり;R3は、H又はC1-C4アルキルである。]の化合物を、75〜110℃の温度における閉鎖容器中の圧力下で、少なくとも20重量%のH2O(水及び臭化物(II)の総量に基づく)を含有するメタノール/H2O混合物中でMOCH3及び/又はMOH(ここで、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)を含有する塩基と反応させる工程を含む前記方法。式(I)の化合物は、イマザモックスのような、除草活性イミダゾリノンの合成中間体に有用である。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-メトキシメチルピリジン-2,3-ジカルボン酸誘導体の製造方法、さらにはイマザモックスのような、除草活性5-置換-2-(2-イミダゾリン-2-イル)ニコチン酸へのこれらの化合物の変換に関する。
【背景技術】
【0002】
2-(2-イミダゾリン-2-イル)ニコチン酸の誘導体、例えばイマザモックス(2-[(RS)-4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル]-5-メトキシメチルニコチン酸):
【化1】

【0003】
は、ALS阻害剤として作用する有用な選択的除草剤であり、出芽前及び出芽後施用に使用することができる。
【0004】
これらの化合物の合成のための様々な方法が、文献(例えば、欧州特許出願公開第0 322 616号明細書、米国特許第5,378,843号明細書、米国特許第5,760,239号明細書、欧州特許出願公開第0 933 362号明細書、又はQ. Biら, Modern Agrochemicals, 第6(2)巻, (2007) p. 10-14を参照されたい)より公知である。
【0005】
米国特許第5,378,843号明細書は、[(5,6-ジカルボキシ-3-ピリジル)メチル]トリメチルアンモニウムブロミド ジメチルエステルをナトリウムメトキシド/メタノール及びNaOH/水と反応させた後、酸性化させることによる、5-(メトキシメチル)-2,3-ピリジンジカルボン酸の合成を開示する。
【0006】
米国特許第5,760,239号明細書は、約120〜180℃の温度における適切なアルコール及び塩基との単一工程の閉鎖反応を介する、5,6-ジカルボキシル-3-ピリジルメチルアンモニウムハライドを5-(アルコキシメチル)ピリジン-2,3-ジカルボン酸塩へ変換するための改善された方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 322 616号明細書
【特許文献2】米国特許第5,378,843号明細書
【特許文献3】米国特許第5,760,239号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 933 362号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Q. Biら, Modern Agrochemicals, 第6(2)巻, (2007) p. 10-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
工業スケールの合成はこれらの方法によって行われているが、全体収率の改善又は特定の溶媒若しくは試薬を回避することのような、経済的及び環境的側面を具体的に鑑みれば、未だ改善の余地がある。
【0010】
本発明の課題は、5-メトキシメチルピリジン-2,3-ジカルボン酸又はカルボキシレートの改善された製造方法を提供することである。本発明の更なる課題は、除草活性2-(2-イミダゾリン-2-イル)ニコチン酸又はその誘導体へのこれらの化合物の改善された変換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
5,6-二置換-3-メチルピリジンのメトキシル化及び第三級アミンとの更なる反応が、約75〜110℃の温度における圧力下で、メタノール/水並びにメタノラート又はメタノラート及び水酸化物の混合物の系における処理によって顕著に改善され得ることを見出した。
【0012】
よって、本発明の一態様において、式(I):
【化2】

【0013】
[式中、
Zは、H又はハロゲンであり;
Z1は、H、ハロゲン、CN又はNO2であり;
Yは、OMであり、
Mは、H、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。]
の2,3-二置換-5-メトキシメチルピリジンの製造方法であって、
(i)式(II):
【化3】

【0014】
[式中、
Qは、第三級の脂肪族又は環式の、飽和、部分的に不飽和若しくは芳香族アミンであり;
Zは、H又はハロゲンであり;
Z1は、H、ハロゲン、CN又はNO2であり;
Y1及びY2は、相互に独立して、OR1、NR1R2であるか、又はY1Y2が一緒になって-O-、-S-若しくは-NR3-であり;
R1及びR2は、相互に独立して、H、
C1-C4アルコキシ若しくはフェニル(1〜3個のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよいC1-C4アルキル、又は
1〜3個のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルであり;
R3は、H又はC1-C4アルキルである。]
の化合物を、約75〜110℃の温度における閉鎖容器中の圧力下で、少なくとも20重量%のH2O(水及び臭化物(II)の総量に基づく)を含有するメタノール/H2O混合物中でMOCH3及び/又はMOH(ここで、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)を含有する塩基と反応させる工程、
を含む前記方法が提供される。
【0015】
本発明の更なる態様において、式(III):
【化4】

【0016】
[式中、
Z、Z1は、式(I)で定義したとおりであり;
R4は、C1-C4アルキルであり;
R5は、C1-C4アルキル、C3-C6シクロアルキルであるか、又はR4及びR5は、それらが結合している原子と一緒になって、メチルで置換されていてもよいC3-C6シクロアルキル基であり、
R6は、水素;式-N=C (低級アルキル)2の基;以下の基:C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、C3-C6-シクロアルキル、ベンジルオキシ、フリル、フェニル、ハロフェニル、低級アルキルフェニル、低級アルコキシフェニル、ニトロフェニル、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、シアノ若しくはトリ低級アルキルアンモニウムのうちの1個で置換されていてもよいC1-C12アルキル;以下の基:C1-C3アルコキシ、フェニル、ハロゲン若しくは低級アルコキシカルボニルのうちの1個、又は2個のC1-C3アルコキシ基若しくは2個のハロゲン基で置換されていてもよいC3-C12アルケニル;1若しくは2個のC1-C3アルキル基で置換されていてもよいC3-C6-シクロアルキルであるか、又は
好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、銅、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、銀、ニッケル、アンモニウム及び有機アンモニウムからなる群より選択されるカチオンである。]
の除草活性イミダゾリノン化合物の製造方法であって、
(i)上記のような式(I)の化合物を調製する工程、
(ii)式(I)の化合物を式(III)の除草活性化合物へと変換する工程
を含む前記方法が提供される。
【0017】
本発明の方法により、高い収率、高い生産性(高い空時収率、低い固定費)、低い原料物質コスト(NaOHはNaメチラートより廉価である)及び式(I)の化合物に対する改善された選択性が達成される。それにより、より低い温度、より高い水分量及びより短い反応時間がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましいのは、各記号が以下の意味を有する式(I)の化合物である。
【0019】
Zは、好ましくはHである。
【0020】
Z1は、好ましくはHである。
【0021】
Yは、好ましくはOHである。
【0022】
好ましくは、式(I)の全ての記号が好ましい意味を有する。
【0023】
特に好ましい式(I)の化合物は、式(Ia):
【化5】

【0024】
の化合物である。
【0025】
式(II)の化合物及びその調製は、例えば米国特許第5,378,843号明細書から公知である。
【0026】
式(II)の好ましい化合物は、式(I)の好ましい化合物を導く化合物である。好ましいY1、Y2は、OR1(R1はC1-C4アルキルである)である。水の存在により、ジエステル(又は他の基)の部分的な加水分解が起こり得ることが理解される。
【0027】
Qは、好ましくは、
【化6】

【0028】
[式中、
Z2は、O、S又はNR12であり;
R12は、C1-C4アルキルであり;
R7及びR8は、相互に独立して、水素、ハロゲン、C1-C4アルキル若しくはC1-C4アルコキシであるか、又は、一緒になった場合、R7及びR8は、O、S若しくはNR12で中断されていてもよく、且つ1〜3個のハロゲン原子、C1-C4アルキル基若しくはC1-C4アルコキシ基で置換されていてもよい5-若しくは6-員の飽和若しくは不飽和環を形成し、
R9、R10及びR11は、相互に独立して、C1-C4アルキルであるか、又はR9及びR10は、一緒になった場合、5-若しくは6-員環(ここで、R9R10は、O、S若しくはNR9で中断されていてもよい構造-(CH2)n-(式中、nは3、4若しくは5の整数である)によって表される)を形成し、但しR11は、C1-C4アルキルである。]
である。
【0029】
Q+は、より好ましくは、+NR9R10R11又はピリジニウムであり、
R9、R10及びR11は、より好ましくは、相互に独立して、C1-C4アルキルであるか、又はR9及びR10は、一緒になった場合、5-若しくは6-員環(ここで、R9R10は、O、S若しくはNR12で中断されていてもよい構造-(CH2)n-(式中、nは3、4若しくは5の整数である)によって表される)を形成し、但しR11は、C1-C4アルキルであり;特に好ましくは、R9、R10及びR11は、C1-C4アルキルである。
【0030】
特に好ましい式(II)の化合物は、式(IIa):
【化7】

【0031】
の化合物である。
【0032】
反応は、メタノール及び少なくとも20重量%の水(水及び臭化物(II)の総量に基づく)を含有する溶媒混合物中で実施される。好ましくは、水分量は、約25〜約75%であり、より好ましくは30〜70%であり、特に好ましくは、約40〜約50%である。溶媒混合物の残部は、メタノール及び約50%以下、好ましくは約20%以下の更なる溶媒であって、該溶媒は好ましくはトルエン、クロロベンゼン及びエタノールから選択される。
【0033】
メタノールの臭化物(II)に対する重量比は、通常は0.5〜25:1の範囲であり、好ましくは1〜20:1であり、より好ましくは1〜10:1であり、特に2〜3:1である。
【0034】
塩基は、MeOM、MOH又はMeOM及びMOHの混合物を含む。ここで、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、好ましくはNa又はK、特にNaである。MeOM/MOHの混合物の場合、Mは同一又は異なっていることができ、好ましくは同一である。
【0035】
MeOMが存在する場合、MeOM、好ましくはMeONaの、臭化物(II)に対するモル比は、通常は1〜10:1の範囲であり、好ましくは1〜7.5:1であり、より好ましくは1.25〜7:1であり、特に1.25〜2:1である。
【0036】
MOHが存在する場合、MOH、好ましくはNaOHの、臭化物(II)に対するモル比は、通常は0.5〜10:1の範囲であり、好ましくは1〜7:1であり、より好ましくは3〜5:1である。MeOM及びMOHの混合物が塩基として使用される場合、MOHの臭化物(II)に対するモル比は、通常は0.5〜7.5:1の範囲であり、好ましくは1〜5:1であり、より好ましくは3〜5:1である。好ましい一実施形態において、如何なるMOHも反応混合物に添加されない。経済的な理由から、MeOMに関して過剰のMOHを使用することが有利である。別の好ましい実施形態において、MOHのみが、3〜10:1の範囲で、より好ましくは4〜7:1で、より好ましくは4.5〜6:1で使用される。
【0037】
添加される塩基の総量/臭化物(II)のモル比は、通常は約2.5〜10:1であり、好ましくは約3〜7:1であり、特に好ましくは約4.5〜6:1である。典型的には、MeOMをメタノールに添加し溶解させる。典型的には、MOHを水に添加し溶解させる。
【0038】
反応は、約75〜110℃の範囲、好ましくは約80〜105℃の範囲、より好ましくは約80〜100℃の範囲で実施される。
【0039】
反応は、閉鎖容器中(例えばParr高圧リアクター(Parr pressure reactor)中)で、通常は約1.01〜5.00 barの範囲、好ましくは約1.02〜4.00 bar、特に約1.03〜3.50 barの加圧下で実施される。好ましい実施形態において、如何なる外部圧力も適用されず、反応は、閉鎖容器中の反応温度における溶媒から形成される圧力下で実施される。
【0040】
反応時間は、通常は約5〜20時間の範囲であり、好ましくは約6〜9時間の範囲であり、特に約8時間である。
【0041】
好ましい実施形態において、約25〜75重量%の水(水及び臭化物(II)の総量に基づく)を含有する臭化物(II)をメタノール中に溶解させ、水性NaOHを約25〜40℃の範囲の温度でゆっくりと添加し、その後、メタノール中のNaOCH3を、約40〜50℃の範囲の温度でゆっくりと添加する。次いで、反応混合物を、閉鎖された高圧リアクター中(反応温度に到達したときに圧力が形成される)で反応温度(典型的には80〜100℃)まで加熱する。
【0042】
反応終了後、反応混合物を冷却し、公知の手順(例えば、化合物(I)が沈殿し、濾別出来るまで冷却し、硫酸のような酸により処理する)にしたがって後処理することができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)の化合物の製造方法であって、
(i-1)式(IV):
【化8】

【0044】
[式中、記号は式(II)で示す意味(但しY1、Y2はOHではない)を有する]の化合物を、水相及び有機相(ここで、該有機相は、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン及びテトラクロロメタンから選択される溶媒を含有し、該水相のpH値は、3〜< 8である)を含有する溶媒混合物中、ラジカル開始剤の存在下で臭素と反応させて、3-ブロモメチル-5,6-二置換ピリジン化合物(V):
【化9】

【0045】
[式中、Y1、Y2、Z及びZ1は、式(II)で示す意味(但しY1、Y2はOHではない)を有する]を得る工程;並びに
(i-2)式(V)の臭素化合物を、溶媒中、約0〜100℃の範囲の温度で第三級アミンQと反応させて、アンモニウム塩(II)を得る工程、及び
(i-3)アンモニウム塩(II)を、約75〜110℃の温度における閉鎖容器中の圧力下で、メタノール/H2O混合物中でMOCH3及びMOH(該Mはアルカリ金属である)を含む塩基と反応させる工程、
を含む前記方法が提供される。
【0046】
工程(i-1)において、ピリジン化合物(IV)の臭素に対するモル比は、通常は1:0.5〜1.2の範囲であり、好ましくは1:0.6〜1.0であり、より好ましくは1:0.7〜0.95である。
【0047】
半当量の臭素と反応させることもでき、反応混合物中でH2O2のような酸化剤を用いてHBrから生成させることもできる。
【0048】
反応を開始させるのに好適なフリーラジカル生成剤は、選択された反応温度で分解するものである。好ましい開始剤の例は、アゾ化合物及びペルオキシドのようなフリーラジカル生成剤である。しかしながら、酸化還元系、特にクメンヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドに基づくものを用いることもできる。
【0049】
本発明の方法に使用するのに好適なラジカル開始剤は、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、有機及び無機ペルオキシド(ジラウロイルペルオキシド、過酸化水素、ペルオキシピバル酸tert-ブチル、ベンゾイルペルオキシド等)を含み、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)及びジラウロイルペルオキシドが好ましく、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル及び2,2'-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)が特に好ましい。
【0050】
開始剤の臭素に対するモル比は、0.04〜0.15:1の範囲であることが好ましく、0.06〜0.10:1であることがより好ましい。
【0051】
有機溶媒は、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン及びテトラクロロメタンからなる群より選択され、好ましくは1 ,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼンである。1,2-ジクロロエタンが特に好ましい。混合物、特にジクロロベンゼンの混合物も可能である。
【0052】
有機溶媒の量は、広い範囲で様々な値を取り得る。好ましくは、1 molの化合物(II)当たり900〜2000 g、より好ましくは1000〜1300 gの有機溶媒が使用される。
【0053】
反応混合物は、有機相及び水相を含有する。水相の量は、広い範囲で様々な値を取り得る。好ましくは、1 molの式(II)の化合物当たり140〜500 g、より好ましくは140〜300 g、特に150〜200 gの水が使用される。
【0054】
反応の間に、水相のpH値は、3〜< 8の範囲、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜7に維持される。pH値の制御は、好適な塩基、好ましくはアルカリ金属の水酸化物(例えばNaOH)又はアルカリ土類金属の水酸化物のような無機塩基を添加することによって達成することができる。水性NaOHは好ましい塩基であり、特に希釈形態(例えば5〜20重量%のNaOHを含有する)が好ましい。
【0055】
所望のpH値制御を達成するため、反応の間に亘って連続的に塩基を添加することができ、又はpH値を連続的にチェックし、接続された自動投入装置(automated dosage device)によって塩基を添加する。
【0056】
好ましい一実施形態において、反応の工程(i-1)は、化合物(IV)を有機相中に溶解させ、且つ水を添加して水相を形成させることによって実施される。
【0057】
開始剤を、室温で又は加熱後の反応温度で、純粋な化合物として、又は溶液で添加する。開始剤の分解温度に応じて、臭素の投入開始前に、開始剤の一部又は略全量を添加しなければならない。臭素添加の間に添加されなければならないスターター(starter)の量もまた、分解速度に応じて様々である。最小濃度のフリーラジカルが、臭素化反応の間に亘って常に利用可能であるべきである。
【0058】
2,2'-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)のために、開始剤を含有する有機溶媒溶液を添加する。pH値を制御するため、塩基に加えて臭素のゆっくりとした添加を、同時に、又は少し時間を空けた後に開始することができる。臭素化反応を開始するときに混合物中に十分な量のフリーラジカルを含有するために、臭素/塩基の投入を後で開始することが好ましい。反応完了後、混合物を冷却し、相を分離する。
【0059】
反応は、通常は約50〜約120℃、好ましくは約60〜約90℃の温度で実施される。
【0060】
反応は、大気圧下又は6 bar以下の過剰圧力下で実施し得る。大気圧が好ましい。
【0061】
反応時間(工程(i-1)のため)は反応パラメーターとは異なるが、通常は1〜24時間である。
【0062】
全体収率を改善し、且つ反応の選択性を向上させる(すなわち、望ましくないジブロモ体及びトリブロモ体の副生成物の形成を抑制する)ために、5〜60%(化合物(IV)の量に基づく)、好ましくは30〜55%以下の変換のみで反応を実施することが好ましい。好ましい一実施形態において、約50%(化合物(IV)の量に基づく)以下の変換で反応を実施する。変換率は、当業者に公知の標準的な方法によって(例えばHPLC分析によって)チェックし得る。
【0063】
所望の変換率に到達したら、反応を停止し相を分離する。
【0064】
有機相は、工程(i-1)の生成物、化合物(V)、未反応の出発物質(IV)、並びにジブロモ体及びトリブロモ体の副生成物を含有しており、これを水で抽出して、酸及び臭化物のような水溶性不純物を除去し得る。生成物(III)を公知の手順によって単離することができるが、好ましくは、該有機相を更なる後処理をすることなく第三級アミンQとの反応に用いる(工程(i-2))。
【0065】
化合物(V)の収率を向上させるために、有機溶媒を用いて水相を抽出し、有機相を合わせることもできる。
【0066】
反応の工程(i-2)において、化合物(V)を第三級アミンQと反応させて、アンモニウム化合物(II)を得る。
【0067】
好ましい第三級アミンQは、上記の式(II)中のQの好ましい意味から導き出される。すなわち、ピリジン及び第三級アルキルアミンNR9R10R11がより好ましく、ここで、
R9、R10及びR11は、相互に独立して、C1-C4 アルキルであるか、又はR9及びR10は、一緒になった場合、5-若しくは6-員環(ここで、R9R10は、O、S若しくはNR12で中断されていてもよい構造-(CH2)n-(式中、nは3、4若しくは5の整数である)によって表される)を形成し、但しR11は、C1-C4 アルキルであり、
R12は、C1-C4 アルキルである。
【0068】
トリメチルアミン、NMe3は特に好ましい。
【0069】
通常は、過剰の第三級アミンを用いる。1当量の化合物(V)当たり、典型的には1.1〜2、好ましくは1.05〜1.5当量の第三級アミンを用いる。
【0070】
通常は、第三級アミン(溶媒に溶解されていてもよい)は、化合物(V)の溶液へゆっくりと添加され、該溶液中で塩(II)が形成されて沈殿する。好ましいアミンNMe3の場合(該アミンは室温で気体状である)、閉鎖容器中で処理し、気体状の該アミン又は加圧下で液化した該アミンを化合物(V)の溶液に仕込むことが好ましい。
【0071】
工程(i-2)を、約0〜70℃、より好ましくは5〜70℃、特に好ましくは5〜40℃の温度で実施することが好ましい。周囲環境の圧力下で又は加圧下で反応を実施することができる。好ましい実施形態において、反応温度において形成される溶媒及び/又はアミンの圧力下で、閉鎖容器中で反応を実施する。
【0072】
反応混合物の後処理及びアンモニウム化合物(II)の単離は、慣用の方法によって実施することができ、例えば、化合物(II)を濾別することができる。
【0073】
好ましい実施形態において、水を反応混合物に添加して、生成物である化合物(II)を溶解させ、水相及び有機相を分離する。生成物(II)の純度を向上させ、且つ有機相中に回収される出発物質(V)の収率を向上させるために、水相を有機溶媒で更に抽出してもよい。水の量は、水相を形成させるのに十分な量でなければならず、水相中で20〜45重量%の化合物(II)の溶液を形成させるように選択されることが好ましい。
【0074】
アンモニウム化合物(II)を、公知の方法によって水相から単離することができる。好ましい実施形態において、化合物(II)を単離せず、工程(i-2)から得られる水相を更に後処理することなく次の反応に用いる。これが可能であり、有利でもあるのは、大量の水が本発明のメトキシル化工程で許容されるからである。しかしながら、水相を、水と共沸体を形成する溶媒(例えばトルエン)と混合することもでき、水を共沸蒸留によって除去する。結果として得られる化合物(II)の懸濁物を、更なる反応に用いることが出来る。
【0075】
さらに好ましい実施形態において、化合物(V)を分離後、80%以下の出発物質(IV)(工程(i-1)で使用される元の量に基づく)を含有する工程(i-2)からの有機相を回収し、工程(i-1)の反応プロセスに循環させる。好ましくは、以前の工程(i-1)で変換された量を補うために、更なる出発物質(IV)を添加する。それ故、原則として、工程(i-1)の有機相は、何回でも循環させることができる。しかしながら、大部分が化合物(IV)のジ-及びトリ臭素化生成物である副生成物の蓄積のために、20サイクル以下、好ましくは10サイクル以下が通常実行できる。
【0076】
環化反応プロセスの好ましい実施形態において、最終サイクルで追加の出発物質(IV)を添加しないことで、全体収率及び変換率を向上させる。
【0077】
環化反応プロセスの更なる実施形態において、特定の量、好ましくは約5〜20重量%の有機相を除去して、有機相中の副生成物の蓄積を減少又は抑制する。本発明のこの実施形態において、有機相を使用することができるサイクル数に実質的な制限はない。
【0078】
式(I)の化合物は、有機合成において価値ある中間体である。それらは、除草活性イミダゾリノン化合物(III)への変換に特に有用である。
【0079】
除草活性イミダゾリノン(III)への化合物(I)の更なる変換は、当該技術分野で公知の方法によって達成することができる。
【0080】
イミダゾリノン除草剤を生成させるために使用し得る方法は、"The Imidazolinone Herbicides"(D. L. Shaner及びS. L. O'Connor編, 1991発行, CRC Press, Boca Raton, Florida)という書籍、特に"Synthesis of The Imidazolinone Herbicides"という表題の第2章(8-14頁)及びそこに引用されている参照文献に例示されている。以下の特許文献:米国特許第5371229; 5250694; 5276157; 51 10930; 5122608; 5206368; 4925944; 4921961 ; 4959476; 5103009; 4816588; 4757146; 4798619; 4766218; 5001254; 5021078; 472301 1 ; 4709036; 4658030; 4608079; 4719303; 4562257; 4518780; 4474962; 4623726; 4750978; 4638068; 4439607; 4459408; 4459409; 4460776; 4125727 及び4758667号明細書、並びに欧州特許出願公開第0 041 623号明細書も、ピリジンの二価酸(diacid)、エステル及び塩をイミダゾリノン最終生成物へ変換するために使用し得る方法を例示する。
【0081】
本発明の好ましい実施形態によれば、除草活性イミダゾリノン(III)への化合物(I)の変換は、欧州特許出願公開第0 041 623号明細書、米国特許第4,518,780号明細書又は欧州特許出願公開第0 144 595号明細書に記載される方法と類似の方法で実施される。
【0082】
これらの実施形態によれば、化合物(I)はまず、無水酢酸との反応のような公知の方法によってそれぞれの無水物へ変換される。
【0083】
一実施形態において、化合物(III)は、
(i) 上記で概説したような、化合物(I)[式中、YはOHである。]の調製;
(ii-1) 化合物(I)の無水物(VI):
【化10】

【0084】
への変換、
(ii-2) 無水物(VI)を、式(VII):
H2N-CR4R5-CONH2 (VII)
[式中、R4及びR5は式(III)と同様である。]
の2-アミノアルカンカルボキサミドと反応させて、アミド(VIII):
【化11】

【0085】
[式中、記号は式(III)と同様である。]
を得る工程、及び
(ii-3) アミド(VIII)を縮合させて、除草活性イミダゾリノン(III)を得る工程
によって調製される。
【0086】
工程(ii-2)及び(ii-3)を、ワンポット反応として実施し得る。
【0087】
一実施形態において、工程(ii-2)を、欧州特許出願公開第0 322 616号明細書の実施例10に開示される手順と同様に実施する。化合物(I)、置換2-アミノアルカンカルボキサミド(Vl)及び第三級アミン(好ましくはトリエチルアミン)を、アセトニトリルのような極性非プロトン性溶媒中で反応させて、アンモニウム塩(VIII)を得る。これを酸性化させて酸(VIII)を得ることができる。
【0088】
代替の手順が米国特許第4,518,780号明細書及び欧州特許出願公開第0 144 595号明細書に開示される。後者の文献において、ピリジン、ピコリン、キノリン及びルチジンから選択される窒素塩基の添加が、反応の位置選択性を改善する(すなわち2-付加生成物の量を増加させる)ことが開示される。
【0089】
工程(ii-3)の一実施形態において、欧州特許第0 322 616号明細書の実施例11と同様に、アミド化合物(VIII)、好ましくはアンモニウム塩の形態の該化合物(R6はHNR3である)を、アルカリ金属メトキシド、好ましくはメタノール中のNaOCH3と反応させる。結果として得られる懸濁物を、完全に変換されるまで還流状態に保持する。冷却後、混合物を酸性化させて、化合物(III)をアンモニウム塩(pHを約4に酸性化させる)又は遊離酸(pHを≦2に酸性化させる)のいずれかとして得る。
【0090】
さらに好ましい実施形態において、工程(ii-2)からの反応混合物を、水性塩基の存在下(通常は化合物(VIII)に基づき3〜100当量)でメタノール(通常は化合物(VIII)に基づき2〜100当量)と反応させる。ここで、塩基はMOH及びMOCH3(式中、Mはアルカリ金属であり、好ましくはNa又はKであり、特にNaである)から選択されることが好ましい。
【0091】
反応を、20〜120℃の範囲、好ましくは40〜90℃の範囲の温度で実施する。反応を、大気圧下又は加圧下、好ましくは所望の反応温度で形成される圧力下で実施することができる。反応時間は、通常は1〜8時間であり、好ましくは1〜5時間である。
【0092】
生成物(III)の単離は、標準的な方法で達成することができる。好ましい実施形態において、水を添加し有機溶媒を蒸留除去する。残渣を水に溶解させ、酸性化させることができ、このとき化合物(III)は沈殿する。濾過後、粗生成物を、例えば水で撹拌するか又は再結晶により、更に精製することができる。
【0093】
更なる実施形態において、化合物(III)は、
(i)上記で概説したような、化合物(I)[式中、YはOHである。]の調製;
(ii-1)化合物(I)の、無水物(VI):
【化12】

【0094】
への変換、
(ii-2)無水物(VI)を、アミノカルボニトリル(IX):
H2N-CR4R5-CN (IX)
[式中、R4及びR5は式(III)と同様である。]
と反応させて、アミドニトリル化合物(X):
【化13】

【0095】
[式中、R4、R5及びR6は式(III)と同様である。]
を得る工程、及び
(ii-3)化合物(X)のニトリル基を加水分解して、アミド(VIII):
【化14】

【0096】
[式中、記号は式(III)と同じ意味を有する。]
を得る工程、及び
(ii-4)アミド(VIII)を縮合させて、除草活性イミダゾリノン(III)を得る工程
によって調製される。
【0097】
無水物(VI)の調製は、上記のように実施することができる。
【0098】
工程(ii-2)で用いられるアミノカルボニトリル(IX)は、市販されているか、又は当該技術分野で公知の方法によって調製することができる。通常は、1当量の化合物(VI)当たり0.8〜1.2当量のアミノニトリル(IX)を使用し、好ましくは0.95〜1.1当量である。
【0099】
反応は溶媒中で実施され、該溶媒は、好ましくは芳香族炭化水素(好ましくはトルエン、メシチレン)、塩素化された芳香族炭化水素(クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)塩素化された炭化水素(1.2-ジクロロエタン、ジクロロメタンなど)、酢酸、並びにこれらの混合物である。
【0100】
酢酸が主要な溶媒として使用されない場合、0.5〜4当量、好ましくは1〜3当量(化合物(I)に基づく)の添加が有利である。開環反応の選択性(2-位と3-位)を改善する更なる有利な添加物は、欧州特許出願公開第0 144 555号明細書に列挙されており、該添加物は、ピリジン、4-ピコリン、2-ピコリン及びキノリンを含む。
【0101】
反応は、通常は約40〜約120℃の範囲、好ましくは約60〜約100℃の範囲の温度で実施される。反応時間は、通常は約1〜約3時間である。
【0102】
好ましい実施形態において、無水物(VI)を溶媒中に溶解させて反応温度に昇温し、そしてアミノニトリル(IX)を徐々に添加する。反応が完了して冷却した後、ニトリル化合物(X)を標準的な方法で単離することができる。
【0103】
しかしながら、好ましい実施形態において、化合物(X)は単離されず、反応混合物はそのまま次のニトリルの加水分解工程(工程(iv-3))に使用される。
【0104】
典型的な手順において、やや過剰(例えば、化合物(X)に基づき1.1〜1.5当量)の強鉱酸、好ましくは硫酸(好ましくは30〜98%濃度)及び水(例えば、2〜10当量)を、通常は約30〜120℃の範囲、好ましくは50〜90℃の温度で添加する。完全に変換されるまで、混合物を更に撹拌する。反応時間は、通常は1〜8時間、好ましくは1〜5時間である。
【0105】
後処理及び単離を、水性溶液(例えばアンモニウム塩として)のような標準的な方法によって達成することができる。好ましい実施形態において、反応混合物はそのまま次の縮合工程(工程(ii-4))に使用される。
【0106】
代替の実施工程において、ニトリル基の加水分解を、例えば欧州特許出願公開第0 144 595号明細書及び米国特許第4,518,780号明細書に開示されているような水性NaOH/H2O2との反応によって実施する。
【0107】
除草活性イミダゾリノンへ導くアミド化合物(VIII)の縮合は、上記のように実施し得る。
【0108】
上記のプロセスの全ては、式(III)[式中、Z及びZ1がHであり、R6がHであり、R4がCH3であり、R5がCH(CH3)2である。]の化合物、すなわちイマザモックスの調製に特に好ましい。
【0109】
以下の実施例によって本発明を例示するが、それによって本発明を限定することはない。
【実施例】
【0110】
[比較例1]
5-(メトキシメチル)-2,3-ピリジンジカルボン酸の調製(欧州特許出願公開第0 548 532号明細書の実施例3にしたがう)
【化15】

【0111】
メタノール中25%のナトリウムメトキシド(270 g, 1.25 mol)及び [(5,6-ジカルボキシ-3-ピリジル)-メチル]トリメチルアンモニウムブロミド、ジメチルエステル (Ia) (347 g, 1.00 mol)のメタノール (650 ml)中の混合物を、窒素下、還流温度で1時間加熱する。水(1 L) 及び水酸化ナトリウム (80.0 g, 2.0 mol)を添加し、ポットが100〜105℃になるまで反応混合物を蒸留する。反応混合物を室温に冷却し、硫酸で処理してpHを1.5〜2の値に調整し、濾過して固体を得る。固体を水洗し、減圧オーブン中で乾燥させて、表題化合物を白色固体(融点161〜162℃)として得る。該化合物は、HPLC分析により99%超の純度である。
【0112】
反応の第一工程(5-メチル基のメトキシル化)で水が存在しないので、出発物質のための手間のかかる乾燥又は固体の単離プロセスを必要とする。それ故、このプロセスは、工業用途にはあまり好ましくない。
【0113】
[比較例2]
[5,6-(ジカルボキシラート-3-ピリジル)メチル]トリメチルアンモニウムブロミド二ナトリウムからの5-(メトキシメチル)ピリジン-2,3-ジカルボキシラート二ナトリウムの調製(欧州特許出願公開第0 747 360号明細書の実施例3にしたがう)
【化16】

【0114】
[(5,6-ジカルボキシラート-3-ピリジル)メチル]トリメチルアンモニウムブロミド二ナトリウム (5.0 g, 13.8 mmol)及びメタノール中25重量/重量%のナトリウムメトキシド溶液 (4.46 g, 20.7 mmol NaOCH3)のメタノール(75 g)中の混合物を、高圧リアクター中、120℃で21時間加熱する。反応物を室温に冷却し、水で処理して、最終重量55.03 gに濃縮する。5.0 gのサンプルをLC分析(30% CH3CN, 0.77 M H3PO4) によってアッセイする。反応溶液の残部を蒸発乾固させ、固体残渣を得て、NMR分析によって同定する。
【0115】
高温にもかかわらず、反応時間は本発明の方法よりかなり長い。
【0116】
[実施例1]
5-(メトキシメチル)-2,3-ピリジンジカルボン酸の調製
約40重量%の水を含有する臭化物(IIa) (0.41 mol)を、メタノールに溶解させる。水性NaOHを、35℃で30分間にわたって添加し、混合物をさらに15分間撹拌する。メタノール中のNaOCH3を、45℃で20分間にわたって添加する。
反応混合物をParr 高圧リアクターへ移し、反応温度(80〜100℃)に加熱する。約60℃でリアクターを閉鎖し、その内部で反応温度において約40〜45 Psiの範囲の圧力を形成させる。外部圧力を付与しない。
【0117】
6〜8時間後、混合物を冷却し、公知の手順に従って後処理を行う。
【0118】
例えば、反応混合物を室温に冷却し、硫酸で処理してpHを1.5〜2の値に調整して、濾過して固体を得る。固体を水洗し、減圧オーブン中で乾燥させて、表題化合物を白色固体(融点161〜162℃)として得る。該化合物は、HPLC分析により99%超の純度である。
【0119】
同様にして、表1に示す実施例2〜17を実施した。
【表1】

【0120】
より高温且つより長い反応時間であれば変換率が改善されることが見出される。加えて、多量の塩基によって変換が促進される。
【0121】
本発明の方法は、比較例と比べて多量の水の存在下でも実施することができる。
【0122】
[実施例18]
[(5,6-ジカルボキシ-3-ピリジル)メチル]トリメチルアンモニウムブロミド、ジメチルエーテル (IIa) の合成
a) 5-(ブロモメチル)-2,3-ピリジンジカルボン酸ジメチル (Va)の合成 (50% 変換)
【化17】

【0123】
218.4 g (1.0 mol)の化合物(Va)を、1139.0 gの1,2-ジクロロエタン (EDC)に溶解させ、160.0 gの水を仕込み、72℃(還流温度より約1〜2℃低い)に加熱した。160.0 gのEDC中、14.4 g (0.075 mol)の2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル) (Vazo 67)を、72℃で2時間にわたって添加した。30分後、約375.0 gの水性NaOH (15%)の投入によってpH制御(pH 5〜7)しながら、143.8 g (0.9 mol) の臭素を2時間にわたって添加した。反応を完了(HPLCアッセイ)させるため、混合物を1時間にわたって撹拌した。40℃に冷却後、相を分離した。
【0124】
b) 化合物 (IIa)の合成
【化18】

【0125】
3359.0 gのEDC中、ジ-及びトリ臭素化副生成物との混合物(工程aからの有機相、未反応の化合物 (IIa)及び高度に臭素化された副生成物を含む)中の288.1 g (1.0 mol) の化合物 (IlIa)を仕込んだ。混合物を30℃に加熱し、容器を200 mbarに排気した。
【0126】
70.9 g (1.2 mol)のトリメチルアミン (TMA)を、40℃で2時間、気相に添加した(閉鎖系)。混合物を更に1時間撹拌した(HPLC変換率チェック: 溶液中の化合物 (IlIa) < 0.1%)。
【0127】
過剰のTMAを、EDCとともに蒸留除去(質量: EDC質量の40%)し、50〜55℃ (370〜250 mbar)で工程2 (1344 g)へ移した。留出物のpHは< 9だった。630.0 gの水を壁面に噴霧して、固体を溶解させ、混合物を次の容器に移した。その後、混合物を0.25時間撹拌し、40℃で下層の有機相を分離した。320.4 gのEDCを添加した。混合物を撹拌し、40℃で下層の有機相を分離した。320.4 gのEDCを用いて、逆抽出を繰り返した(40℃)。2つの逆抽出相を第一の有機相と合わせて、(更なるサイクルのために50%の新たな化合物 (IIa)を添加した後)次の臭素化バッチへ循環させた。
【0128】
工程a)及びb)を6回繰り返した。最終サイクルにおいては、化合物 (IVa)を工程a)に添加せず、0.8 molのTMAを工程b)に加えた。化合物 (IIa)の全体の変換率は96.6%である。化合物 (IIa)の収率(7サイクル後)は77.4%であり、純度は> 95%である (HPLCによって決定された)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
Zは、H又はハロゲンであり;
Z1は、H、ハロゲン、CN又はNO2であり;
Yは、OMであり、
Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。]
の2,3-二置換-5-メトキシメチルピリジンの製造方法であって、
(i)式(II):
【化2】

[式中、
Qは、第三級の脂肪族又は環式の、飽和、部分的に不飽和若しくは芳香族アミンであり;
Zは、H又はハロゲンであり;
Z1は、H、ハロゲン、CN又はNO2であり;
Y1及びY2は、相互に独立して、OR1、NR1R2であるか、又はY1Y2が一緒になって-O-、-S-若しくは-NR3-であり;
R1及びR2は、相互に独立して、H、
C1-C4アルコキシ若しくはフェニル(1〜3個のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよいC1-C4アルキル、又は
1〜3個のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルであり;
R3は、H又はC1-C4アルキルである。]
の化合物を、75〜110℃の温度における閉鎖容器中の圧力下で、少なくとも20重量%のH2O(水及び臭化物(II)の総量に基づく)を含有するメタノール/H2O混合物中でMOCH3及び/又はMOH(ここで、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)を含有する塩基と反応させる工程、
を含む前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
(i-1)式(IV):
【化3】

[式中、Y1、Y2はOHではなく、その他の記号は請求項1に記載の式(II)で示す意味を有する]の化合物を、水相及び有機相(ここで、該有機相は、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン及びテトラクロロメタンから選択される溶媒を含有し、該水相のpH値は、3〜< 8である)を含有する溶媒混合物中、ラジカル開始剤の存在下で臭素と反応させて、3-ブロモメチル-5,6-二置換ピリジン化合物(V):
【化4】

[式中、Y1、Y2はOHではなく、その他の記号は式(II)で示す意味を有する]を得る工程;並びに
(i-2)式(V)の臭素化合物を、溶媒中、0〜100℃の範囲の温度で第三級アミンQと反応させて、アンモニウム塩(II)を得る工程、及び
(i-3)アンモニウム塩(II)を、75〜110℃の温度における閉鎖容器中の圧力下で、メタノール/H2O混合物中でMOCH3及びMOH(該Mはアルカリ金属である)を含む塩基と反応させる工程、
を含む前記方法。
【請求項3】
式(II)の化合物が式(IIa):
【化5】

の化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
メタノールの化合物(II)に対する比が0.5〜25:1の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
塩基がMeOM及びMOHの混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
塩基がMeOMである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
MeOMの化合物(II)に対するモル比が1〜10:1の範囲である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
塩基がMOHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
MOHの化合物(II)に対するモル比が0.5〜10:1の範囲である、請求項5又は8に記載の方法。
【請求項10】
添加される塩基の総量に対する臭化物(II)のモル比が3〜7:1の範囲である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応温度が約75〜110℃の範囲である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
1.01〜5.00 barの圧力下で実施される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式(III):
【化6】

[式中、
Z、Z1は、請求項1に記載の式(I)で定義したとおりであり;
R4は、C1-C4アルキルであり;
R5は、C1-C4アルキル、C3-C6シクロアルキルであるか、又はR4及びR5は、それらが結合している原子と一緒になって、メチルで置換されていてもよいC3-C6シクロアルキル基であり、
R6は、水素;式-N=C (低級アルキル)2の基;以下の基:C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、C3-C6-シクロアルキル、ベンジルオキシ、フリル、フェニル、ハロフェニル、低級アルキルフェニル、低級アルコキシフェニル、ニトロフェニル、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、シアノ若しくはトリ低級アルキルアンモニウムのうちの1個で置換されていてもよいC1-C12アルキル;以下の基:C1-C3 アルコキシ、フェニル、ハロゲン若しくは低級アルコキシカルボニルのうちの1個、又は2個のC1-C3 アルコキシ基若しくは2個のハロゲン基で置換されていてもよいC3-C12アルケニル;1若しくは2個のC1-C3アルキル基で置換されていてもよいC3-C6-シクロアルキルであるか、又は
カチオンである。]
の除草活性イミダゾリノン化合物の製造方法であって、
(i)請求項1〜12のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を調製する工程、
(ii)式(I)の化合物を式(III)の除草活性化合物へと変換する工程
を含む前記方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
(i)請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物(I)[式中、YはOHである。]の調製;
(ii-1) 化合物(I)の、無水物(VI):
【化7】

[式中、Z及びZ1は、請求項13に記載の式(III)と同様である。]
への変換、
(ii-2) 無水物(VI)を、式(VII):
H2N-CR4R5-CONH2 (VII)
[式中、R4及びR5は、請求項13に記載の式(III)と同様である。]
の2-アミノアルカンカルボキサミドと反応させて、アミド(VIII):
【化8】

[式中、記号は請求項13に記載の式(III)と同様である。]
を得る工程、及び
(ii-3) アミド(VIII)を縮合させて、除草活性イミダゾリノン(III)を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
(i)請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物(I)[式中、YはOHである。]の調製;
(ii-1)化合物(I)の、無水物(VI):
【化9】

への変換、
(ii-2)無水物(VI)を、アミノカルボニトリル(IX):
H2N-CR4R5-CN (IX)
[式中、R4及びR5は式(III)と同様である。]
と反応させて、アミドニトリル化合物(X):
【化10】

[式中、記号は式(III)と同様である。]
を得る工程、
(ii-3)化合物(X)のニトリル基を加水分解して、アミド(VIII):
【化11】

[式中、記号は式(III)と同じ意味を有する。]
を得る工程、及び
(ii-4)アミド(XI)を縮合させて、除草活性イミダゾリノン(III)を得る工程
を含む、前記方法。

【公表番号】特表2012−510978(P2012−510978A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539047(P2011−539047)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066496
【国際公開番号】WO2010/066669
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】