説明

美容施術方法およびそれに用いる化粧料保持用シート部材

【課題】化粧料の有効成分を皮膚に充分に浸透させることができ、その有効成分によって優れた美容効果を得ることのできる美容施術方法およびそれに用いる化粧料保持用シート部材を提供する。
【解決手段】小片状の化粧料保持用のシート部材10やフェイスマスク11に化粧料を含浸保持させ、これを顔面等の皮膚に貼り付けた状態で、その上から、皮膚に対しパッティング動作を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた美容効果を得ることのできる美容施術方法およびそれに用いる化粧料保持用シート部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、顔や首もとに化粧料を塗布したのち、その化粧料に含有される有効成分の浸透を促進するために、化粧料を塗布した皮膚を手指でパッティング(軽く叩いて刺激を与える動作)することが、よく行われている。また、化粧料を含浸させた化粧綿で皮膚をパッティングすることも、よく行われている。
【0003】
このような美容方法において、パッティングによる美容効果をさらに高めるために、皮膚への浸透効果に優れる種々の化粧料が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、パッティングによることなく、化粧料の有効成分を皮膚に効果的に浸透させる方法として、顔面に、化粧料を含浸させたフェイスマスクを密着させて所定時間維持する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−199645号公報
【特許文献2】特開2003−341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、化粧料を塗布した皮膚をパッティングしても、化粧料が垂れおちたり、飛び散ったりして、皮膚に吸収される量が少なく、充分な美容効果を得ることができない。また、パッティングの強さが強すぎると、皮膚表面を傷つけたり、毛細血管を収縮させてしまい、逆効果になってしまうことがある。さらに、顔面にフェイスマスクを密着させる方法では、フェイスマスク側に化粧料が多く残留するため、化粧料に無駄が多く、使用する量の割りに、やはり充分な美容効果を得ることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、化粧料の有効成分を、適度な刺激で皮膚に充分に浸透させることができ、しかも化粧料保持用シートの皮膚への密着性を高めてその有効成分によって優れた美容効果を得ることのできる美容施術方法およびそれに用いる化粧料保持用シート部材の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、化粧料保持用のシート部材に化粧料を含浸保持させ、これを顔面等の皮膚に貼り付けた状態で、その上から、皮膚に対しパッティング動作を行うようにした美容施術方法を第1の要旨とし、そのなかでも、特に、上記化粧料保持用のシート部材が、表層と中間層の裏層の3層を備え、上記表層および裏層が、ともに所定厚みの不織布を複数枚積層してなる複合層で形成され、上記中間層が、上記表層および裏層の不織布より嵩高い不織布を複数枚積層してなる複合層で形成されたものである美容施術方法を第2の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記化粧料保持用シート部材が、表裏面に毛羽立ち防止加工を施した後、全体を精錬漂白処理したものである美容施術方法を第3の要旨とする。
【0009】
さらに、本発明は、上記第2の要旨である美容施術方法に用いられる化粧料保持用のシート部材であって、上記表層および裏層が、ともに所定厚みの不織布を複数枚積層してなる複合層で形成され、上記中間層が、上記表層および裏層の不織布より嵩高い不織布を複数枚積層してなる複合層で形成されたものである化粧料保持用シート部材を第4の要旨とし、そのなかでも、特に、表裏面に毛羽立ち防止加工を施した後、全体を精錬漂白処理したものである化粧料保持用シート部材を第5の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
すなわち、従来は、美容施術を行うに際し、皮膚に化粧料を塗布してからパッティングしたり、化粧料を含浸させた化粧綿で皮膚をパッティングしたりしていたのに対し、本発明は、化粧料を含浸保持させたシート部材を皮膚に貼り付け、その状態で、シート部材の上からパッティングするようにしたものである。この方法によれば、化粧料を無駄なく効果的に皮膚に浸透させることができるため、非常に優れた美容効果を得ることができる。
【0011】
なお、化粧料保持用シート部材として、上記のような特殊な3層構造のものを用いると、化粧料を含浸保持させた状態においてもクッション性が良好で、優れた保水力を有しているため、パッティングによっても、化粧料が飛び散ったり液垂れしたりすることなく、充分な量の化粧料を皮膚に浸透させることができる。皮膚に貼り付けた状態での風合いにも優れている。
【0012】
そして、特に、上記化粧料保持用シート部材として、表裏面に毛羽立ち防止加工を施した後、全体を精錬漂白処理したものを用いると、これを皮膚に貼り付けた状態で繰り返しパッティングを行っても、表面が毛羽立たず、皮膚から剥がれ落ちたりせず、良好に使用することができるという利点を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
本発明の美容施術方法は、化粧料保持用シート部材に化粧料を含浸保持させた状態で皮膚に貼り付け、上記化粧料を含浸保持したシート部材の上からは、皮膚に対しパッティング動作を行うというものである。
【0015】
上記化粧料保持用シート部材としては、化粧料を含浸保持することができるシート状のものであれば、特に限定するものではなく、布、紙、不織布、綿等、どのようなものであってもよい。もちろん、従来から、美容用に用いられている化粧綿(コットン)、フェイスマスク等を利用するようにしてもよい。
【0016】
そして、なかでも、図1に示すような3層構造のシート部材を用いることが、特に好適である。このものは、表層1および裏層2が、ともに、比較的細くて長い、しなやかな繊維からなり、肌への触感、風合いに優れている。また、中間層3は、比較的短く太くて縮れた、嵩高加工が施された繊維からなり、化粧料を含浸保持させても、クッション性が確保されるようになっている。
【0017】
なお、上記表層1、裏層2、中間層3は、いずれも、化粧料を含浸させてもへたらないよう、所定厚みの不織布を複数層積層した構成になっている(図では各層1〜3とも3層積層されている)。そして、上記間層3は、上記表層1および裏層2の不織布より嵩高い不織布を複数枚積層した構成になっている。
【0018】
また、上記化粧料保持用シート部材は、その表裏面が、ウォータージェット加工等により毛羽立ち防止加工が付与されているものであることが好ましい。すなわち、皮膚に貼り付けて繰り返しパッティングを行う際に、そのパッティングされる面が毛羽立つと、指や皮膚表面に毛羽がからみついたり、化粧料の液垂れを招いたりするので、これを防止するために、上記毛羽立ち防止加工が有効である。
【0019】
なお、上記化粧料保持用シート部材を作製する場合、予め一括漂白した原料綿を用いると、これは過精錬となっており繊維が傷んでいるため、上記ウォータージェット加工による毛羽立ち防止加工を施しても、充分な効果が得られない。そこで、原料綿をカード化し不織布として積層したものに対し、過精錬とならないよう後から漂白して毛羽立ち防止加工を施すようにすることが好適である。
【0020】
上記化粧料保持用シート部材は、図2(a)に示すように、従来の化粧綿と同じようなサイズに切断して使用するようにしてもよいし、例えば図2(b)に示すようなフェイスマスク形状に切断して使用するようにしてもよい。もちろん、シート部材の形状は、これらに限るものではなく、美容施術を行おうとする部位に応じて、適宜の形状のものを用意することができる。
【0021】
そして、上記図2(a)に示すような小片(従来の化粧綿等も含む)を用いる場合は、有効成分を浸透させたい部位に、化粧料を含浸保持させたシート部材を貼り付け、その状態で、その上から、手指でパッティング動作を行う。この動作により、皮膚表面の角質層が膨潤し、化粧料を充分に皮膚に浸透させることができる。例えば、図3(a)に示すように、化粧料を含浸保持させた小片状のシート部材10を両頬に貼り、その上から指全体で、1秒間に約3回の割合で10〜15秒間パッティングを行うことが好適である。
【0022】
なお、上記小片状のシート部材10を貼り付けてパッティングを行う際、1枚のシート部材10を2枚に裂いて左右の頬に貼るようにしてもよい。その場合、裂いた面を皮膚に当てて毛羽立てないようにすることが好ましい。
【0023】
また、上記小片状のシート部材10を貼り付けてパッティングを行う前に、同様の化粧料を顔全体に付けてなじませ、皮膚を直接パッティングするようにすると、一層効果的である。また、上記シート部材10を貼り付けてパッティングを行った後、シート部材10が乾いてきたら剥がし、こすり合わせた手を両頬に当てて温める動作を繰り返し行う(例えば3回行う)と、より一層効果的である。
【0024】
一方、上記図2(b)に示すようなフェイスマスクを用いる場合は、化粧料を含浸保持させたフェイスマスクを顔面等に広げて貼り付け、その状態で、その上から、手指でパッティング動作を行う。この動作により、上記と同様の効果を得ることができる。例えば、図3(b)に示すように、化粧料を含浸保持させたフェイスマスク11を顔面に貼り、その上から指全体で、1秒間に約3回の割合で頬を下から上に約60秒間、額を中心から側方に約20秒間、指が当たる位置を移動させながらパッティングを行うことが好適である。
【0025】
なお、上記フェイスマスク11を貼り付けてパッティングを行った後、フェイスマスク11が乾いてきたら、こすり合わせた手を両頬、額、あごの順でのせて温める動作を、それぞれ繰り返し行う(例えば3回ずつ行う)と、より一層効果的である。
【0026】
そして、本発明において、上記化粧料保持用シート部材に含浸保持させる化粧料としては、特に限定するものではないが、一般に、皮膚に浸透させて水分を補給したり保湿効果を高めるような有効成分が含有されたものを用いることが好適である。
【0027】
また、本発明によれば、皮膚表面の角質層を膨潤させ、化粧料を皮膚内側に充分に浸透させることができるため、この美容施術のあと、皮膚を引き締める効果を有する化粧料を皮膚に付与して、皮膚を引き締めるようにすると、皮膚内側に浸透した化粧料の有効成分が、長期にわたって優れた効果を維持するため、非常に優れた美容効果を得ることができる。
【実施例】
【0028】
つぎに、本発明の実施例について、比較例とともに説明する。
【0029】
〔実施例1〕
図1に示す3層構造のシート部材であって、図2(a)に示すような小片のコットン(カネボウ化粧品社製)2枚に、化粧水(カネボウ化粧品社製)をそれぞれ3ミリリットル含浸保持させ、図3(a)に示すように、両頬に貼り、1秒間に3回の割合で10秒間パッティングを行った。
【0030】
〔実施例2〕
図2(b)に示すフェイスマスク(カネボウ化粧品社製)に、化粧水(カネボウ化粧品社製)を10ミリリットル含浸保持させ、図3(b)に示すように、顔面に貼り、1秒間に3回の割合で頬を下から上に60秒間、額を中心から側方に20秒間、指が当たる位置を移動させながらパッティングを行った。
【0031】
〔比較例〕
実施例1と同様のコットン1枚に、化粧水(カネボウ化粧品社製)を適量、含浸保持させ、これを指先に挟んで、両頬に対し、1秒間に3回の割合で10秒間パッティングを行った。
【0032】
これらの美容施術の前後における肌の状態(キメ均一度、血色、ハリ弾力)について、下記の方法で測定して評価した。その結果を、後記の表1にまとめて示す。また、その結果を、棒グラフとして、図4〜図6に示す。
【0033】
〔キメ均一度〕
CCDカメラで約30倍に拡大した肌表面の画像を、皮丘(凸部)と皮溝(凹部)で2値化(一定の明るさの基準値より明るい部分を白、暗い部分を黒で表現)し、白と黒の模様の出現パターンのばらつきを元にスコア化し、ばらつきが少ないほどキメ均一度が高いとする。なお、評価は、施術前の皮膚の状態のスコアを100とし、施術後の各例のスコアを、前記100の値に対する相対値として示す。
【0034】
〔はり弾力〕
肌に一定周波数で振動を与える振動子を接触させ、肌の粘弾性により振動数が変位する度合いをスコア化し、変位が大きいほどはり弾力が高いとする。なお、評価は、施術前の皮膚の状態のスコアを100とし、施術後の各例のスコアを、前記100の値に対する相対値として示す。
【0035】
〔血色〕
CCDカメラのRGB出力から肌の色を算出し、標準的色相値を基準にスコア化し、赤味に寄れば寄るほど血色がよいとする。なお、評価は、施術前の皮膚の状態のスコアを100とし、施術後の各例のスコアを、前記100の値に対する相対値として示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上記の結果から、実施例1、2の美容施術後の肌は、非常に良好な仕上がりになることがわかる。これに対し、比較例では、このような効果が得られず、特に、キメ均一度と血色は、施術前より低い値となっていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の化粧料保持用シート部材の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】(a)、(b)はともにその形態の説明図である。
【図3】(a)、(b)はともにその使用態様の説明図である。
【図4】実施例1、2および比較例の美容施術が肌のキメ均一度に与える影響を示す棒グラフである。
【図5】実施例1、2および比較例の美容施術が肌のはり弾力に与える影響を示す棒グラフである。
【図6】実施例1、2および比較例の美容施術が肌の血色に与える影響を示す棒グラフである。
【符号の説明】
【0039】
10 小片状のシート部材
11 フェイスマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料保持用のシート部材に化粧料を含浸保持させ、これを顔面等の皮膚に貼り付けた状態で、その上から、皮膚に対しパッティング動作を行うようにしたことを特徴とする美容施術方法。
【請求項2】
上記化粧料保持用のシート部材が、表層と中間層の裏層の3層を備え、上記表層および裏層が、ともに所定厚みの不織布を複数枚積層してなる複合層で形成され、上記中間層が、上記表層および裏層の不織布より嵩高い不織布を複数枚積層してなる複合層で形成されたものである請求項1記載の美容施術方法。
【請求項3】
上記化粧料保持用シート部材が、表裏面に毛羽立ち防止加工を施した後、全体を精錬漂白処理したものである請求項2記載の美容施術方法。
【請求項4】
請求項2記載の美容施術方法に用いられる化粧料保持用のシート部材であって、上記表層および裏層が、ともに所定厚みの不織布を複数枚積層してなる複合層で形成され、上記中間層が、上記表層および裏層の不織布より嵩高い不織布を複数枚積層してなる複合層で形成されたものであることを特徴とする化粧料保持用シート部材。
【請求項5】
表裏面に毛羽立ち防止加工を施した後、全体を精錬漂白処理したものである請求項4記載の化粧料保持用シート部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−305(P2006−305A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178710(P2004−178710)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【Fターム(参考)】