説明

群青組成物およびその製造方法

【課題】 耐薬品性、特に耐アルカリ性に優れた、群青組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 群青粒子およびこの群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、この被覆層が、この群青粒子を被覆するカップリング剤層;およびこのカップリング剤層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層;を含む、群青組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐薬品性、特に耐アルカリ性に優れた、群青組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
群青(ウルトラマリン)は、紺青(プルシアンブルー)とともに代表的な青色無機顔料である。群青顔料は、一般に光、熱、溶媒、アルカリに対しては強いことで知られる一方、酸に対しては弱く、HSを発生して分解褪色することも知られている。
【0003】
群青顔料の性質を改善する手段として、特開昭61−111366号公報(特許文献1)には、褪色を抑制すべく、耐酸性あるいは耐蝕性を向上させるために群青粒子表面にシリカを被覆する方法が開示されている。また、特開2002−105354号(特許文献2)には、群青粒子表面にIIIA族、IIIB族、IVA族、IVB族、VA族、VIB族から選ばれる1種または2種以上の元素の金属酸化物被覆層を少なくとも1層有することを特徴とする群青組成物が記載されており、そしてこれは耐酸性および耐熱性に優れると記載されている。このように、群青顔料の耐酸性を向上させる方法はこれまでに幾つか提案されている。
【0004】
これに対して、群青顔料の耐アルカリ性を向上させる方法は、これまでほとんど提案されていない。群青顔料の耐アルカリ性に関する問題として、例えばポルトランドセメントなどの水硬化性セメントを結合材とする、セメントペースト、モルタル、コンクリートなどのセメント組成物に対して、群青顔料を用いて着色を試みる場合、褪色が生じて白色化するという問題がある。このようなセメント組成物は水和によって硬化する。しかしながらセメント組成物中には、硬化後も水和に必要とされる水分量を超える水分が残存し、これがpH12以上の強アルカリ性をもたらす。群青顔料はアルカリに対して比較的強いものの、このような強アルカリ性に対して耐えるのは困難であり、褪色が生じてしまう。このような群青顔料の褪色は、群青顔料中のナトリウム原子がセメント組成物中のカルシウム原子と置換反応を起こすことが要因と考えられている。また硬化を促進させるために、セメント組成物を高温高湿条件下に置くことが多い。この操作によって群青顔料の褪色も促進されてしまうこととなる。
【0005】
特開2002−105354号公報(特許文献2)によって得られる群青組成物は、アルミナやジルコニア、チタニアなどを複合化した酸化物の沈着被膜を多層に用いることによって、群青組成物の被膜層を厚く強くしている。そしてこれにより、被膜層の剥離が抑えられ、群青組成物の耐酸性や耐熱性が改善される。しかし、このような群青組成物は、被膜自身が硬質であるため、高温時に群青との熱膨張率差のために被膜と群青の界面に熱応力が発生し、割れが生じる可能性が高い。そのため、群青組成物をセメント組成物の顔料として用いた場合などのように、高温時に群青組成物と共存する水が酸性や強いアルカリ性である場合、群青組成物の被膜の割れ目から水分が進入し、群青中に溶け込み、NaS結合を切断し、NaまたはSが遊離したりする。その結果として、褪色し白色化する。またこのような群青組成物は、被膜の多層化による、着色力の低下をも伴いやすい。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−111366号公報
【特許文献2】特開2002−105354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点を解決する、耐薬品性、特に耐アルカリ性に優れた、群青組成物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
群青粒子およびこの群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、この被覆層が、
この群青粒子を被覆するカップリング剤層、および
このカップリング剤層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む群青組成物を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0009】
また本発明は、群青粒子およびこの群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、この被覆層が、
この群青粒子を被覆するカップリング剤層、
このカップリング剤層の表面を被覆する疎水性層、および
この疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む群青組成物も提供する。
【0010】
また、上記界面活性剤層は、ポリエーテル変性ポリシロキサンを含むのが好ましい。
【0011】
また本発明は、群青粒子およびこの群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、
この被覆層が、
この群青粒子を被覆する疎水性層、および
この疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む、群青組成物も提供する。
【0012】
この疎水性層は、シリコーンオイルを含むのが好ましい。
【0013】
上記群青組成物は、平均粒子径0.1〜50μmであるのが好ましく、特に0.2〜10μmであるのが好ましい。
【0014】
また、上記群青組成物は、被覆層が、群青粒子100重量%に対して1〜60重量%であるのが好ましい。
【0015】
本発明はまた、群青組成物の製造方法も提供する。このような方法の1態様として、
群青粒子およびカップリング剤を混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する、カップリング剤層形成工程、
得られた粒子および界面活性剤を混合して、カップリング剤層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、界面活性剤層形成工程、
を包含する方法が挙げられる。
【0016】
また、群青組成物の製造方法の他の1態様として、
群青粒子およびカップリング剤を混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する、カップリング剤層形成工程、
得られた粒子、界面活性剤および油状物を混合して、カップリング剤層の表面を被覆する疎水性層およびこの疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、疎水性層および界面活性剤層形成工程、
を包含する方法が挙げられる。
【0017】
さらに、群青組成物の製造方法の他の1態様として、
群青粒子および油状物を混合して、群青粒子の表面上に疎水性層を形成する、疎水性層形成工程、および
得られた粒子および界面活性剤を混合して、疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、界面活性剤層形成工程、
を包含する方法が挙げられる。
【0018】
本発明はまた、上記群青組成物の製造方法により得られる群青組成物も提供する。
【0019】
本発明はさらに、上記群青組成物を含む着色剤、特にセメント組成物用着色剤も提供する。
【0020】
本発明はさらに、上記群青組成物によって着色されたセメント組成物も提供する。
【0021】
本発明はさらに、上記群青組成物によって着色された成型物も提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の群青組成物は、耐薬品性、特に強アルカリであるセメントアルカリに対しても耐えうるほど耐アルカリ性に優れる。そのため、本発明は、これまで利用することができなかったセメント組成物の分野においても、群青の利用を可能とするものであり、非常に意義がある。セメント組成物の青色顔料としては現在、コバルトブルーが用いられている。しかしながらコバルトは非常に高価であり、また環境に対する問題もある。そのため実際のところは、セメント組成物に対してコバルトブルーはほとんど用いられておらず、そして青色に着色されたセメント組成物を製造することは非常に困難であった。
【0023】
本発明の群青組成物を用いることによって、コストおよび環境に対する問題を伴うことなく、青色に着色されたセメント組成物を調製することが可能となる。本発明の群青組成物は、セメント用着色顔料として利用範囲が大きく広がって行くことが期待される。そして、本発明の群青組成物を用いることによって、3原色を持つセメント組成物が完成する。これにより、セメント組成物の意匠性を大幅に向上させることができ、セメント組成物の利用範囲はさらに広がると考えられる。
【0024】
さらに本発明の群青組成物は、合成樹脂、塗料、印刷インキなどにおいても高い着色力を有する。そして優れた耐候性により、従来の群青組成物において度々生じていた色相の変化(褪色・脱色)が低減されている。そのため、本発明の群青組成物は、合成樹脂、塗料、印刷インキなどの分野においても好ましく用いられる。
【0025】
さらに、本発明の群青組成物は、液晶ディスプレイなどのカラー表示装置などにも好適に用いることができる。本発明の群青組成物は優れた耐候性を有し、高温環境下における群青色の褪色および白色化の発生の可能性が低減されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の群青組成物は、群青粒子と、この群青粒子を被覆する被覆層とを有する。そして本発明の群青組成物の1態様として、群青粒子を被覆する被覆層が、
群青粒子を被覆するカップリング剤層、および
このカップリング剤層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含むものが挙げられる。
【0027】
図1は、この群青組成物の1態様を模式的に示す図である。図1に示されるとおり、群青組成物10は、群青粒子1と、被覆層9とを有する。そして被覆層9は、カップリング剤層3および界面活性剤層7を有する。
【0028】
群青粒子
群青は合成青色無機顔料の一つである。群青は、硫黄を含むアルミノシリケート錯体の微粒子である。群青の分子構造は、完全に明らかとはなっていないが、一例として一般に:Na(AlSi24)S(2〜4)が挙げられる。そして上記した通り、群青は強アルカリ性に弱く、酸には非常に弱いという性質を有する。群青粒子は、カオリン、ソーダ灰、硫黄、および還元剤(木炭、石炭またはロジンなど)を粉砕混合し、そして750〜850℃で40〜50時間焼成するなどの公知の製造方法によって、製造することができる。
【0029】
本発明の群青組成物に含まれる群青粒子は、平均粒子径が0.1〜50μm、特に0.2〜10μmであることが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満の場合は青色の発色が不充分であり、平均粒子径が50μmを超えると散乱のために暗色を帯び、群青本来の色彩が損なわれることがある。
【0030】
用いることのできる群青粒子の例として、例えば、第一化成工業株式会社製群青粒子、汎用タイプ(No.300、1500、2000など)、シリカ被覆タイプ(AP31、201、205、151など)などを挙げることができる。さらに、Nubiola社、Holiday pigment社製などの群青粒子を用いてもよい。
【0031】
カップリング剤
群青粒子を被覆するカップリング剤層は、カップリング剤から構成される。カップリング剤として、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを挙げることができる。
【0032】
シラン系カップリング剤としては、ビニルタイプ、アミノタイプ、エポキシタイプ、スチリルタイプ、メタクリロキシタイプ、アクリロキシタイプ、ウレイドタイプ、クロロプロピルタイプ、メルカプトタイプ、スルフィドタイプ、イソシアネートタイプなどが挙げられる。具体的には、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
チタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネートなどが挙げられる。
【0034】
アルミニウム系カップリング剤としては、アルキルアセトアセタトアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0035】
カップリング剤層は、これらのカップリング剤を1種のみ含んでもよく、また2種以上を含んでもよい。
【0036】
カップリング剤として、シラン系カップリング剤を用いるのが好ましい。シラン系カップリング剤は、疎水層に含まれる油状物、そして界面活性剤層に含まれる界面活性剤との親和性がよいためである。市販のカップリング剤として、例えば東レダウコーニング・シリコーン株式会社社製のSHシリーズ、SZシリーズ、PRXシリーズ、信越化学工業株式会社製のKBMシリーズ、KBEシリーズなどが挙げられる。
【0037】
本発明の群青組成物において、カップリング剤層は、被覆される群青粒子100重量%に対して1〜60重量%であるのが好ましく、5〜50重量%であるのがより好ましい。カップリング剤層が1重量%未満である場合は、層の平均厚みが非常に薄くなり、厚みのバラツキによって被覆されていない群青粒子表面が生じることがあり好ましくない。また60重量%を超えると取り扱い時に過剰のカップリング剤が取れて悪影響を及ぼす可能性がある。例えばポルトランドセメントの着色顔料として用いる場合、過剰のカップリング剤はポルトランドセメントの硬化の障害となることがある。
【0038】
群青粒子がこのようなカップリング剤層によって被覆されることによって、群青粒子が有機膜に強固に被覆されることとなり、耐薬品性が向上するという利点が得られる。
【0039】
油状物
本発明の群青組成物の他の1態様として、群青粒子および該群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、この被覆層が、
群青粒子を被覆するカップリング剤層、
カップリング剤層の表面を被覆する疎水性層、および
疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む、群青組成物が挙げられる。つまりこの態様においては、群青粒子を被覆するカップリング剤層の表面を、さらに疎水性層が被覆する構造を有する。
【0040】
図2は、この群青組成物の他の1態様を模式的に示す図である。図2に示されるとおり、群青組成物20は、群青粒子1と、被覆層9とを有する。そして被覆層9は、カップリング剤層3、疎水性層5および界面活性剤層7を有する。
【0041】
本発明の群青組成物の他の1態様として、群青粒子および該群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、この被覆層が、
群青粒子を被覆する疎水性層、および
疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む、群青組成物が挙げられる。この態様においては、群青粒子を被覆する疎水性層の表面を、界面活性剤層が被覆する構造を有する。
【0042】
図3は、この群青組成物の他の1態様を模式的に示す図である。図3に示されるとおり、群青組成物30は、群青粒子1と、被覆層9とを有する。そして被覆層9は、疎水性層5および界面活性剤層7を有する。
【0043】
この疎水性層は、水に難溶性または不溶性である油状物を含む。このような油状物として、例えば、動物油脂、植物油脂、およびこれらの加工油脂、そして鉱物性油などが挙げられる。
【0044】
植物油脂として、例えばヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ゴマ油、ナタネ油、グレープ種子油、パーム油、オリーブ油、ウォールナッツ油、ククイナッツ油、スイートアーモンド油、ココアバター、シアバター、マンゴーバター、アボガドバターなどが挙げられる。動物油脂として、例えば乳脂、牛脂、豚脂、鯨油、魚油、馬油などの油脂が挙げられる。そしてこれらの加工油脂も用いることができる。
【0045】
鉱物性油として、例えばパラフィン系オイル、オレフィン系オイル、ナフテン系オイルおよび芳香族系オイル、シリコーンオイルなどが挙げられる。パラフィン系オイルはC2n+2で示される飽和鎖式化合物を1種または2種以上含む。オレフィン系オイルは1またはそれ以上の二重結合を有する鎖式化合物を1種または2種以上含む。ナフテン系オイルは、少なくとも1個の飽和環(ナフテン環)を含む、一般式C2nの環式化合物を1種または2種以上含む。芳香族炭化水素は、少なくとも1個の芳香族環を含む環式化合物を1種または2種以上含む。
【0046】
シリコーンオイルは、シロキサン結合を有する油状物であり、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルポリシロキサン、そして変性シリコーンオイルなどが挙げられる。変性シリコーンオイルとして、例えば、アルキル/アラルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性・アルコール変性シリコーンオイルなどが挙げられる。但しこれらのシリコーンオイルは、上記の通り水に難溶性または不溶性である油状物であることを条件とする。
【0047】
これらの油状物は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
油状物として、上記のうちシリコーンオイル、パラフィン系オイル、オレフィン系オイル、ナフテン系オイルなどが好ましく用いられ、シリコーンオイルが特に好ましく用いられる。シリコーンオイルは、群青粒子を被覆するカップリング剤との親和性が高く、群青粒子の耐薬品性、耐アルカリ性などを有効に向上させることができ、また透明性にも優れるため、群青組成物の着色性能の悪化が生じないからである。
【0049】
好ましく用いられる、市販のシリコーンオイルとして、例えば信越化学工業株式会社製、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル/アラルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0050】
本発明の群青組成物において、疎水性層を形成する場合は、被覆される群青粒子100重量%に対して1〜60重量%であるのが好ましく、5〜50重量%であるのがより好ましい。疎水性層が1重量%未満である場合は、疎水性層を設けることによる効果を得ることは困難である。また60重量%を超えると取り扱い時に過剰の油状物が被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。例えばポルトランドセメントの着色顔料として用いる場合、過剰のカップリング剤はポルトランドセメントの硬化の障害となることがある。
【0051】
群青組成物に疎水性層が形成されることによって、例えば本発明の群青組成物をセメント着色剤として用いる場合は、セメント組成物中に含まれる水分が群青粒子に到達することをより有効に回避することができる。
【0052】
また、図3に示されるように、群青組成物に直接接する疎水性層を形成し、その表面の少なくとも一部に界面活性剤層を形成する場合であっても、疎水性を付与することができ、群青顔料の耐アルカリ性を高めることができる。
【0053】
なお、本発明の群青組成物においては、群青粒子を被覆する被覆層である、カップリング剤層、疎水性層および界面活性剤層は、それぞれの層が明確に分離した層である必要はない。例えば、疎水性層を形成する油状物と界面活性剤とが互いに共通する骨格を有する場合など、油状物と界面活性剤との親和性が高い場合は、疎水性層と界面活性剤層とが互いに混層する場合も考えられる。そして本発明は、このような疎水性層と界面活性剤層とが混層を形成する態様を排除するものではない。
【0054】
界面活性剤
本発明の1態様において、群青粒子を被覆するカップリング剤層の表面の少なくとも一部は、界面活性剤によって被覆されている。また本発明の他の1態様においては、群青粒子を被覆するカップリング剤層の表面を、さらに疎水性層が被覆しており、そしてその疎水性層の表面の少なくとも一部が界面活性剤によって被覆されている。
【0055】
界面活性剤として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの任意の界面活性剤を用いることができる。そして用いることができる界面活性剤として、例えば、陽イオンまたは陰イオンを有するアルキルまたはアリール骨格界面活性剤、フッ素系界面活性剤、高分子界面活性剤、ポリエチレンオキシド付加物、ポリエーテル変性シリコーンオイル、糖エステルなどが挙げられる。
【0056】
界面活性剤として、アルキルまたはアリール骨格界面活性剤、フッ素系界面活性剤またはポリエーテル変性シリコーンオイルを用いるのが好ましい。これらの界面活性剤は、疎水層を形成する油状物との親和性が良好であり、また、表面エネルギーを効果的に下げることができるという利点も有する。
【0057】
好ましく用いられる、市販の界面活性剤として、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製KF−351など)、フッ素系界面活性剤(株式会社ネオス製フタージェント250)などが挙げられる。
【0058】
本発明の群青組成物において、界面活性剤層は、被覆される群青粒子に対して0.1〜60重量%であるのが好ましく、0.2〜10重量%であるのがより好ましい。界面活性剤層が0.1重量%未満である場合は、得られる群青組成物の十分な親水化が達成されないおそれがある。また60重量%を超える場合は、取り扱い時に過剰の界面活性剤層が、着色物の物性や群青の発色性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0059】
本発明において、界面活性剤層は、カップリング剤層によって被覆された群青粒子、疎水性層によって被覆された群青粒子、またはカップリング剤層と疎水性層によって被覆された群青粒子の親水性を向上させて、群青組成物を水分散可能とする役割を有する。そして群青組成物における界面活性剤層は、このように群青組成物の親水性を向上させる範囲で存在すればよく、カップリング剤層または疎水性層の表面全てを被覆する必要はない。
【0060】
また、本発明の群青組成物をセメント着色剤として用いる場合、この界面活性剤層は分散性および耐アルカリ性を向上させる役割に加えて、セメント組成物の硬化不良の発生を防ぐという役割も有する。群青粒子の表面上にカップリング剤層と疎水性層とを設けた群青組成物を、セメント組成物に加えたところ、セメント組成物が硬化しないという問題が生じた。しかしながら、群青組成物に界面活性剤層を設けることによって、群青組成物を加えた際に生じるセメント組成物の硬化不良の問題が解消されることとなった。
【0061】
群青組成物およびその製造方法
本発明の群青組成物の製造方法の1態様としては、下記工程:
群青粒子およびカップリング剤を混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する、カップリング剤層形成工程、および
得られた粒子および界面活性剤を混合して、粒子の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、界面活性剤層形成工程、
を含む方法が挙げられる。
【0062】
この製造方法においては、まず群青粒子とシランカップリング剤とを有機溶媒中で混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する。そしてカップリング剤層が形成された群青粒子と、界面活性剤とを水性溶媒中で混合することによって、カップリング剤層の表面上に界面活性剤層が形成される。
【0063】
カップリング剤層の形成に用いることができる有機溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。また界面活性剤層の形成に用いることができる水性溶媒として、例えば水、イオン交換水、蒸留水、そしてこれらと水混和性有機溶媒(例えば低級アルコール、エーテルなど)との混合物が挙げられる。
【0064】
カップリング剤は、用いられる群青粒子100重量部に対して1〜60重量部の量で用いるのが好ましく、5〜50重量部であるのがより好ましい。カップリング剤の使用量が1重量部未満である場合は、層の平均厚みが非常に薄くなり、厚みのバラツキによって被覆されていない群青粒子表面が生じることがあり好ましくない。また60重量部を超えると、得られる群青組成物に過剰量のカップリング剤が付着することとなるおそれがあり、これが被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0065】
また界面活性剤は、用いられる群青粒子100重量部に対して0.1〜50重量部の量で用いるのが好ましく、0.2〜10重量部であるのがより好ましい。界面活性剤の使用量が0.1重量部未満である場合は、得られる群青組成物の十分な親水化が達成されないおそれがある。また50重量部を超えると、得られる群青組成物に過剰量の界面活性剤が付着することとなるおそれがあり、これが被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0066】
本発明の群青組成物の製造方法の他の1態様としては、下記工程:
群青粒子およびカップリング剤を混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する、カップリング剤層形成工程、および
得られた粒子、界面活性剤および油状物を混合して、カップリング剤層の表面を被覆する疎水性層およびこの疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、疎水性層および界面活性剤層形成工程、
を含む方法が挙げられる。
【0067】
この製造方法においては、まず群青粒子とシランカップリング剤とを有機溶媒中で混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する。そしてカップリング剤層が形成された群青粒子と、油状物と、界面活性剤とを水性溶媒中で混合することによって、カップリング剤層の表面を被覆する疎水性層およびこの疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、疎水性層および界面活性剤層が形成される。有機溶媒および水性溶媒は、上記したものを用いることができる。
【0068】
カップリング剤は、用いられる群青粒子100重量部に対して1〜60重量部の量で用いるのが好ましく、5〜50重量部であるのがより好ましい。カップリング剤の使用量が1重量部未満である場合は、層の平均厚みが非常に薄くなり、厚みのバラツキによって被覆されていない群青粒子表面が生じることがあり好ましくない。また60重量部を超えると、得られる群青組成物に過剰量のカップリング剤が付着することとなるおそれがあり、これが被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0069】
油状物は、用いられる群青粒子100重量部に対して1〜60重量部の量で用いるのが好ましく、5〜50重量部であるのがより好ましい。油状物が1重量部未満である場合は、疎水性層を設けることによる効果を得ることは困難である。また60重量部を超えると取り扱い時に過剰の油状物が被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。例えばポルトランドセメントの着色顔料として用いる場合、過剰のカップリング剤はポルトランドセメントの硬化の障害となることがある。また界面活性剤は、用いられる群青粒子100重量部に対して0.1〜50重量部の量で用いるのが好ましく、0.2〜10重量部であるのがより好ましい。界面活性剤の使用量が0.1重量部未満である場合は、得られる群青組成物の十分な親水化が達成されないおそれがある。また60重量部を超えると、得られる群青組成物に過剰量の界面活性剤が付着することとなるおそれがあり、これが被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0070】
本発明の群青組成物の製造方法の他の1態様としては、下記工程:
群青粒子および油状物を混合して、群青粒子の表面上に疎水性層を形成する、疎水性層形成工程、および
得られた粒子および界面活性剤を混合して、疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、界面活性剤層形成工程、
を含む方法が挙げられる。
【0071】
この製造方法においては、まず群青粒子と油状物とを水性溶媒中で混合して、群青粒子の表面上に疎水性層を形成する。次いで疎水性層が形成された群青粒子と、界面活性剤とを水性溶媒中で混合することによって、疎水性層の表面上に界面活性剤層が形成される。水性溶媒は、上記したものを用いることができる。
【0072】
油状物は、用いられる群青粒子100重量部に対して1〜60重量部の量で用いるのが好ましく、5〜50重量部であるのがより好ましい。油状物が1重量部未満である場合は、疎水性層を設けることによる効果を得ることは困難である。また60重量部を超えると取り扱い時に過剰の油状物が被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。また界面活性剤は、用いられる群青粒子100重量部に対して0.1〜50重量部の量で用いるのが好ましく、0.2〜10重量部であるのがより好ましい。界面活性剤の使用量が0.1重量部未満である場合は、得られる群青組成物の十分な親水化が達成されないおそれがある。また60重量部を超えると、得られる群青組成物に過剰量の界面活性剤が付着することとなるおそれがあり、これが被着色物に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0073】
こうして得られる群青組成物は、被着層が群青粒子100重量%に対して1〜100重量%であるのが好ましく、2〜60重量%であるのがより好ましく、2〜50重量%であるのがさらに好ましい。ここで被覆層は、カップリング剤層および/または疎水性層、そして界面活性剤層を含む層である。
【0074】
本発明の群青組成物において、群青粒子を被覆する被覆層が、カップリング剤層、界面活性剤層および疎水性層を含む態様のものが、とりわけ耐アルカリ性に優れるものであり、より好ましい。また、このような態様の群青組成物は、群青粒子がカップリング剤層によって被覆されることによって耐薬品性などが向上し、そしてさらにカップリング剤層が油状物からなる疎水性層によって被覆されることにより、高温時に界面活性剤層と群青層の熱膨張量の差により生ずる歪を容易に解消することができるため耐熱性もより向上するという、優れた効果を有する。
【0075】
上記製造方法により得られる群青組成物は、好ましくは0.1〜50μmの平均粒子径を有する。平均粒子径は、0.2〜10μmであるのがより好ましい。ここで「平均粒子径」とは、一般に粒子の粒度(粒子径が粗いか細かいか)を表わすために用いられるものであり、重量50%に相当するメジアン径や算術平均径、表面積平均径、体積面積平均径などが使用される。本明細書に示す平均粒子径は、湿式レーザー法粒度分布測定装置によって測定された値で示している。このレーザー法は、粒子を溶媒に分散させ、その分散溶媒にレーザー光線を当て、得られた散乱光を捕捉、演算することにより、平均粒子径、粒度分布等を測定する方法である。
【0076】
本発明の群青組成物は、カップリング剤層、カップリング剤層および疎水性層のうち少なくとも2層が、群青粒子を被覆する構造を有する。本発明の群青組成物を例えばセメント組成物に用いる場合、これらの層の存在によって、セメント組成物中に含まれる水分が群青粒子に到達することが回避される。これにより、本発明の群青組成物を、pH12以上の強アルカリであるセメントアルカリに用いても褪色しないという、優れた性能が発揮される。そして界面活性剤層の存在によって、優れた水分散性が発揮される。
【0077】
また、本発明の群青組成物が有する、群青粒子を被覆しうるカップリング剤層、界面活性剤層、疎水性層は、何れも柔軟性に優れるものである。そのため、群青組成物が高温環境下に置かれた場合であっても、これらの層は群青粒子の体積膨張に従って伸び縮みすることができる。これにより、本発明の群青組成物は、高温環境下に置いた場合であっても、割れや剥離などの問題は生じない。このように、本発明の群青組成物は、優れた耐候性をも有する。
【0078】
なお、従来の群青組成物である、特開昭61−111366号公報(特許文献1)により得られる群青組成物は、群青粒子表面に不定形シリカを沈着被覆される場合に群青粒子自体を損なうことなく褪色を防ぐことができると記載されている。しかし、ここに記載されている群青組成物は、被膜が付着するとき、被膜の核が形成され、それが広がることによって形成される。そのため、広がった先端が他の広がりと重ね合わさる部分に欠陥が生じやすく、これにより強度の低下、そして小さな空隙の発生が起こるおそれがある。さらにこの不定形シリカによる被膜は硬質である。そのため、高温時に群青粒子との熱膨張率差のために被膜と群青の界面に熱応力が発生し、そして割れが生じ、最終的には剥離するおそれがある。これに対して、本発明の群青組成物が有する、群青粒子を被覆しうるカップリング剤層、界面活性剤層および疎水性層は、何れも柔軟性に優れるものであるため、このような剥離などのおそれが大幅に改善されている。
【0079】
本発明の群青組成物は、耐薬品性、特に強アルカリであるセメントアルカリに対しても耐えうるほど耐アルカリ性に優れる。そのため、本発明の群青組成物は、これまで利用することができなかったセメント組成物の分野においても用いることができる。
【0080】
さらに本発明の群青組成物は、合成樹脂、セラミック組成物、塗料、印刷インキなどにおいても高い着色力を有する。そして優れた耐候性により、従来の群青組成物において度々生じていた色相の変化(褪色・脱色)が低減されている。そのため、本発明の群青組成物は、合成樹脂またはセラミック組成物からなる成型物の着色に好ましく用いることができる。本発明の群青組成物はさらに、塗料、印刷インキなどにおける着色剤としても好ましく用いることができる。
【0081】
さらに、本発明の群青組成物は、液晶ディスプレイなどのカラー表示装置などにも好適に用いることができる。本発明の群青組成物は優れた耐候性を有し、高温環境下における群青色の褪色および白色化の発生の可能性が低減されている。
【実施例】
【0082】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表わす。
【0083】
実施例1
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)1部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)が入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0084】
実施例2
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青に対して0.5重量%を添加)が入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0085】
実施例3
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して2.5重量%を添加)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0086】
実施例4
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF861、群青粒子に対して25重量%)が入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0087】
実施例5
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して25重量%)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0088】
実施例6
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)2.5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KP574、群青粒子に対して2.5重量%)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0089】
実施例7
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KP574、群青粒子に対して25重量%)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0090】
実施例8
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して50重量%)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0091】
実施例9
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して100重量%)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0092】
実施例10
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.2000;平均粒子径0.8μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して2.5重量%を添加)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0093】
実施例11
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部を水中に分散させた。この分散物に、活性化させたシリカゾル(珪酸ソーダを溶解した水溶液;加えた珪酸ソーダ中におけるシリカ相当量 20部)を加え、30分間撹拌し、次いで水洗・濾過して乾燥させて、シリカ被覆群青組成物を得た。
得られた群青粒子100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、十分に撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。得られた粒子を、界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して25重量%を添加)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0094】
実施例12
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して25重量%を添加)とを水中に入れ、よく撹拌した後、乾燥させた。それを界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)が入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0095】
比較例1
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部を水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0096】
比較例2
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部とシランカップリング剤(東レダウコーニング・シリコーン製SH−6020)5部とをトルエン中に入れ、よく撹拌した後、トルエン臭がなくなるまで乾燥させた。それを水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0097】
比較例3
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部を、界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)が入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0098】
比較例4
群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部を、界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して5重量%)とが入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0099】
比較例5 群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部を、界面活性剤(信越化学工業(株)製KF−351、群青粒子に対して0.5重量%を添加)とシリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF9901、群青粒子に対して25重量%)が入った水の中に添加し、スターラーで30分間よく撹拌した後、ろ過することによって群青組成物を得た。
【0100】
比較例6 群青粒子(第一化成工業(株)製NO.300;平均粒子径2.3μm)100部を水中に分散させ、そこへ活性化させたシリカゾル(珪酸ソーダを溶解した水溶液;珪酸ソーダ中におけるシリカ相当量:20部)を添加し、30分間撹拌した後、水洗・濾過して乾燥させることで、シリカ被覆群青組成物を得た。
【0101】
実施例および比較例により得られた群青組成物について、下記試験を行った。
【0102】
分散性評価
実施例および比較例の群青組成物の調製において、全成分を加え撹拌した後、この分散水液中における群青組成物の分散状態を、目視にて以下の基準で判断した。
【0103】
【表1】

【0104】
褪色度の評価
耐セメントアルカリ試験
水(68ml)を加えながら、群青組成物(群青組成物量:7.5g)と白セメント(150g)を乳鉢で混練後、その分散液をPPカップの中に注ぎ、80℃でかつ、水蒸気が過飽和な湿潤な場所に10時間放置し、養生した。群青組成物の性能は青色の褪色白色化の程度を目視によって以下の基準で判断した。
【0105】
【表2】

【0106】
平均粒子径の測定
実施例および比較例により得られた群青組成物の平均粒子径を測定した。測定器として日機装株式会社製Microtrac HRA 9820−X100を用いて、実施例および比較例により得られた群青組成物(15〜20 mg)をエタノール(150ml)中に添加した後、ホモジナイザーで撹拌したものを測定試料とした。
【0107】
上記試験結果を表1に示す。
【0108】
【表3】

*1:カップリング剤層からなる被覆層である。
*2:疎水性層と界面活性剤層からなる被覆層である。但しこれらの被覆層は、油状物および界面活性剤を含む水溶液中に群青粒子を添加することによって形成している。
*3:シリカからなる被覆層である。
【0109】
上記評価結果から、本発明の群青組成物は、比較例の群青組成物と比べて、分散性そして耐アルカリ性に優れるものであることが確認された。また、測定された平均粒子径から、群青粒子の上に有効に被膜が形成されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の群青組成物は、耐薬品性、特に強アルカリであるセメントアルカリに対しても耐えうるほど耐アルカリ性に優れる。そのため、本発明は、これまで利用することができなかったセメント組成物の分野においても、群青粒子の利用を可能とするものであり、非常に意義がある。本発明の群青組成物を用いることによって、コストおよび環境に対する問題を伴うことなく、青色のセメント組成物を調製することが可能となる。本発明の群青組成物は、セメント用着色顔料として利用範囲が大きく広がって行くことが期待される。そして、本発明の群青組成物を用いることによって、3原色を持つセメント組成物が完成する。これにより、セメント組成物の意匠性を大幅に向上させることができ、セメント組成物の利用範囲はさらに広がると考えられる。
【0111】
さらに本発明の群青組成物は、合成樹脂、塗料、印刷インキなどの分野においても好適に用いることができる。加えて、液晶ディスプレイなどのカラー表示装置などにも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の群青組成物の1態様を説明する模式図である。
【図2】本発明の群青組成物の他の1態様を説明する模式図である。
【図3】本発明の群青組成物の他の1態様を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0113】
1…群青粒子、3…カップリング剤層、5…疎水性層、7…界面活性剤層、9…被覆層、10…群青組成物、20…群青組成物、30…群青組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
群青粒子および該群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、
該被覆層が、
該群青粒子を被覆するカップリング剤層、および
該カップリング剤層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む、群青組成物。
【請求項2】
群青粒子および該群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、
該被覆層が、
該群青粒子を被覆するカップリング剤層、
該カップリング剤層の表面を被覆する疎水性層、および
該疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む、群青組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤層が、ポリエーテル変性ポリシロキサンを含む、請求項1または2に記載の群青組成物。
【請求項4】
群青粒子および該群青粒子を被覆する被覆層を有する群青組成物であって、
該被覆層が、
該群青粒子を被覆する疎水性層、および
該疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層、
を含む、群青組成物。
【請求項5】
前記疎水性層が、シリコーンオイル、パラフィン系オイル、オレフィン系オイルまたはナフテン系オイルを含む、請求項2〜4いずれかに記載の群青組成物。
【請求項6】
平均粒子径0.1〜50μmである、請求項1〜5いずれかに記載の群青組成物。
【請求項7】
前記被覆層が、群青粒子100重量%に対して1〜60重量%である、請求項1〜6いずれかに記載の群青組成物。
【請求項8】
群青粒子およびカップリング剤を混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する、カップリング剤層形成工程、および
得られた粒子および界面活性剤を混合して、カップリング剤層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、界面活性剤層形成工程、
を包含する、群青組成物の製造方法。
【請求項9】
群青粒子およびカップリング剤を混合して、群青粒子の表面上にカップリング剤層を形成する、カップリング剤層形成工程、および
得られた粒子、界面活性剤および油状物を混合して、カップリング剤層の表面を被覆する疎水性層および該疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、疎水性層および界面活性剤層形成工程、
を包含する、群青組成物の製造方法。
【請求項10】
群青粒子および油状物を混合して、群青粒子の表面上に疎水性層を形成する、疎水性層形成工程、および
得られた粒子および界面活性剤を混合して、疎水性層の表面の少なくとも一部を被覆する界面活性剤層を形成する、界面活性剤層形成工程、
を包含する、群青組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10いずれかに記載の群青組成物の製造方法により得られる、群青組成物。
【請求項12】
請求項1〜7いずれかまたは請求項11記載の群青組成物を含む着色剤。
【請求項13】
請求項1〜7いずれかまたは請求項11記載の群青組成物を含むセメント組成物用着色剤。
【請求項14】
請求項1〜7いずれかまたは請求項11記載の群青組成物によって着色されたセメント組成物。
【請求項15】
請求項1〜7いずれかまたは請求項11記載の群青組成物によって着色された成型物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−182938(P2006−182938A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378999(P2004−378999)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(390000734)第一化成工業株式會社 (2)
【出願人】(590002460)
【Fターム(参考)】