説明

羽ばたき翼の駆動機構の制御方法及び装置

【課題】運転状態が変化しても羽ばたき翼に作用する慣性力をキャンセルできるようにする。
【解決手段】小型飛行装置の胴体の左右に配した羽ばたき翼の基端側に設けた支軸を、胴体の左右両側位置に回転可能に支持させ、各支軸に取り付けたギアを互いに噛合させると共に、一方のギアには、翼駆動用モータ6に取り付けた駆動ギヤを噛合させて、翼駆動用モータ6により左右の羽ばたき翼を羽ばたき作動させることができるようにした駆動機構1を形成する。翼駆動用モータ6へ入力される電圧eに対して、羽ばたき翼の羽ばたき角に一致するギアの回転角度θの位相が−90度進みとなるように、翼駆動用モータ6へ入力させる電圧の周波数を制御させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽ばたき型小型飛行装置における羽ばたき翼を駆動機構により羽ばたき作動させる際に、該羽ばたき翼に作用する慣性力の変動を吸収できるようにするために用いる羽ばたき翼の駆動機構の制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内外の高所位置や災害発生現場等の人が容易に近づくことが困難な場所、あるいは、化学物質、微生物、放射性物質等での汚染が想定されるような場所の現場状況を調べる場合等に、大きさが数十センチメートル以下というような非常に小型の飛行装置(Micro Air Vehicle:MAV)に、カメラ、マイク、雰囲気ガス中の化学物質、微生物、放射性物質等の有無を検出するための所要の分析装置等の機器を搭載して、該小型飛行装置を目標となる位置まで飛行させ、該小型飛行装置に搭載された機器により検出される現場の計測結果を基に、遠隔地より上記目標位置の情報収集を実施できるようにすることが考えられてきている。
【0003】
ところで、飛行体とその周囲の流体との相互作用を、流体の慣性力と粘性力の比であるレイノルズ数で整理すると、従来一般に実用化されているメートルサイズの飛行体では、たとえば、通常の航空機のレイノルズ数が10〜10のオーダーを示すように、レイノルズ数が高くて慣性力が支配的となっているのに対し、上記のようなサイズが小さい小型飛行装置では、レイノルズ数が10〜10程度と低い値となり、周囲の気体(流体)との相互作用では、慣性力と共に粘性力の影響が大となる。又、上記小型飛行装置は、サイズが小さくて機体重量が軽いことから、気流等の影響を容易に受け易く、常に突風の中を飛行するような状態となる。更に、屋内での飛行や、屋外での気流中を飛行させるためには、垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の非常に高度な飛行性能が要求されることから、航空機やヘリコプター等の従来の飛行体とは非常に異なる設計が必要とされている。
【0004】
そのため、上記小型飛行装置にて垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行等を行わせることができるようにするため飛行手段の1つとして、羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置が考えられてきている。
【0005】
この種の羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置として、本発明者は、胴体の左右位置の複数個所、たとえば、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら羽ばたき作動させるための翼駆動用モータや線形アクチュエータ等のアクチュエータを個別に設けてなる構成を備えた羽ばたき型小型飛行装置を提案している。
【0006】
かかる形式の羽ばたき型小型飛行装置によれば、上記各羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向の角度姿勢、すなわち、迎角をそれぞれ調整すると共に、上記各アクチュエータによる各羽ばたき翼を所定の周波数で羽ばたき作動させる際の振幅をそれぞれ制御することにより、該各羽ばたき翼の羽ばたき作動により得られる揚力と、推進力の大きさをそれぞれ調整して、上記各羽ばたき翼より胴体にそれぞれ作用させる揚力の大きさと、推進力の大きさ及び方向を個別に制御することで、気流中でも水平姿勢を保持したり、垂直離着陸や空中停止飛行等の高度な飛行性能を達成できるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
又、本発明者は、先の出願(特願2004−333507号)において、胴体の左右位置に、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるための別々の翼駆動用モータやアクチュエータを設け、該各アクチュエータの出力軸に、左右一対の羽ばたき翼を個別に取り付けて、上記各アクチュエータにより上記左右の羽ばたき翼の羽ばたき作動を独立に制御できるようにし、更に、上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変位させて胴体の姿勢を制御できるようにしてある重心移動装置を設けてなる構成を備えた羽ばたき型小型飛行装置も提案している。
【0008】
かかる形式の羽ばたき型小型飛行装置によれば、上記重心移動装置にて機体重心の位置を胴体の前後方向へ変位させることにより、上記胴体の前後方向角度姿勢と一緒に左右の各羽ばたき翼の迎角を変更することができるようになる。このことから、上記胴体の前後方向角度姿勢と一緒の各羽ばたき翼の迎角の制御と、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の均等な制御を行うことにより、上記各羽ばたき翼にて発生させる力の方向及び大きさを変更し、該各羽ばたき翼より胴体へ作用させる揚力と推進力の大きさをそれぞれ調整できるようにして、前進飛行時の速度を低速から高速まで自在に変更したり、上昇、下降を自在に行なうことができるようにしてある。更に、上記左右の各羽ばたき翼の羽ばたき作動を左右で相違させて、該各羽ばたき翼より胴体の左右位置へ作用させる推進力の大きさを変更するときに、胴体の左右位置へ作用する揚力の大きさの差が生じるときには、この揚力の差を打ち消すように上記重心移動装置にて機体の左右の重量バランスを変更することで、胴体の左右方向を水平状態に保持したまま左右方向へ旋回させることができるようにしてある。したがって、飛行速度、飛行高度を自在に変更したり、左右方向への旋回飛行を自在に行って、高度な飛行性能を達成することができるようにしてある。
【0009】
ところで、上記した各形式の羽ばたき型小型飛行装置では、使用目的に対応させたペイロードを十分に搭載できるようにしたり、長距離を長時間飛行できるようにすることが求められることがあり、そのために、各翼を数10Hz〜数100Hzというような高い周波数で羽ばたかせる必要が生じることがある。このように、各翼を高い周波数で羽ばたかせる場合には、各翼各羽ばたき翼の羽ばたき作動時に発生する慣性力の変動をいかに処理するかが重要となる。
【0010】
そのために、上記した各形式の羽ばたき型小型飛行装置では、いずれも、各羽ばたき翼を羽ばたき作動させるアクチュエータを、それぞれ対応する羽ばたき翼に復元力を作用させて羽ばたき作動させることができるようにしたアクチュエータとして、該アクチュエータの可動部、該アクチュエータにて羽ばたき作動させられる羽ばたき翼、及び、該羽ばたき翼の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、アクチュエータより羽ばたき翼へ作用させる復元力とにより形成される振動系の共振周波数と等しい周波数となるように、上記アクチュエータにて羽ばたき翼を羽ばたき作動させることで、上記慣性力をキャンセルすることができるようにしてある。
【0011】
具体的には、上記アクチュエータとして翼駆動用モータを用いる場合には、該翼駆動用モータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにした共振型の構成とするようにしてある。したがって、各翼駆動用モータにて出力軸に取り付けた羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときには、弾性部材により復元力としての復元トルクを作用させるようにする。これにより、翼駆動用モータの回転する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より翼駆動用モータの出力軸に与えるようにしてある復元トルクとが作る振動系に対して、翼駆動用モータの出力軸の交互の正、逆転駆動により変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数が上記振動系の共振周波数に等しくなるよう上記翼駆動用モータの出力軸の交互の正、逆転駆動の周波数を調整することで、上記慣性力をキャンセルさせて、翼駆動用モータの負荷を軽減することができるようにしてある。
【0012】
又、アクチュエータとして線形アクチュエータを用いる場合には、該線形アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の構成とするようにしてある。したがって、各線形アクチュエータにて出力軸に取り付けた羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときには、弾性部材により復元力を作用させることにより、線形アクチュエータの振動する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より線形アクチュエータの出力軸に与えるようにしてある復元力とが作る振動系に対して、線形アクチュエータの出力軸の振動により変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数が上記振動系の共振周波数に等しくなるように上記線形アクチュエータの出力軸を振動させる周波数を調整することで、上記慣性力をキャンセルさせて、線形アクチュエータの負荷を軽減することができるようにしてある。
【0013】
【特許文献1】特開2006−088769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、上記した各形式の羽ばたき型小型飛行装置では、翼駆動用モータや線形アクチュエータ等のアクチュエータにより羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときの周波数が、上記共振周波数とが等しい周波数となるようにして、上記アクチュエータにより往復動させる羽ばたき翼に作用する慣性力をキャンセルさせるようにしてある。しかし、実際には、飛行状態の変化に応じて羽ばたき翼の往復動の速度を変化させると、該羽ばたき翼に作用する空気力が変化して、負荷質量やダンピング係数が変化する。このために、上記翼駆動用モータや線形アクチュエータ等のアクチュエータに復元力を付与するための弾性部材における弾性係数が一定であっても、該アクチュエータの可動部、該アクチュエータにて羽ばたき作動させられる羽ばたき翼、及び、該羽ばたき翼の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、アクチュエータより羽ばたき翼へ作用させる復元力とにより形成される振動系の共振周波数が変化することとなる。
【0015】
そこで、本発明は、上記のように、羽ばたき翼の往復動の速度を変化させて、羽ばたき翼に作用する空気力の変化に伴う付加質量やダンピング係数が変化して、上記振動系の共振周波数が変化しても、この共振周波数の変化に追従してアクチュエータにより羽ばたき翼を往復動させるときの周波数を最適に変化させることができる羽ばたき翼駆動機構の制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、小型飛行装置の胴体の左右両側に配した羽ばたき翼の基端側を、アクチュエータの出力軸に連結して、復元力を作用させながら上記アクチュエータの出力軸の回転方向又は直線方向の往復駆動によって上記羽ばたき翼を羽ばたき作動させることができるようにしてある羽ばたき翼の駆動機構における上記アクチュエータへ入力させる電圧に対して、上記羽ばたき翼の羽ばたき角の位相が−90度進みとなるように、上記アクチュエータへ入力させる電圧の周波数を制御するようにする羽ばたき翼の駆動機構の制御方法とする。
【0017】
又、上記において、アクチュエータへ入力させる電圧の周波数の制御を、上記アクチュエータへ入力させる電圧と、上記羽ばたき翼の羽ばたき角との積の値を、所要のローパスフィルタにて処理し、更に、電圧制御発振器により、上記ローパスフィルタにて処理した後に得られる値がゼロとなるようにするための所要の電圧に応じた周波数の発振を行わせ、アンプより上記アクチュエータへ、上記電圧制御発振器より発振される周波数に応じた周波数の電圧となるように電力供給を行うことで行わせるようにする。
【0018】
更に、請求項3に係る発明に対応して、小型飛行装置の胴体の左右両側に配した羽ばたき翼の基端側を、アクチュエータの出力軸に連結して、復元力を作用させながら上記アクチュエータの出力軸の回転方向又は直線方向の往復駆動によって上記羽ばたき翼を羽ばたき作動させることができるようにしてある羽ばたき翼の駆動機構における上記アクチュエータへ入力させる電圧と、上記羽ばたき翼の羽ばたき角との積を算出する乗算器と、該乗算器の算出値を処理する所要のローパスフィルタと、上記ローパスフィルタにて処理した後に得られる値がゼロとなるように所要の電圧に応じた周波数の発振を行わせるための電圧制御発振器と、上記アクチュエータへ、上記電圧制御発振器より発振される周波数に応じた周波数の電圧の電力供給を行うことができるようにしてあるアンプとを備えた羽ばたき翼の駆動機構の制御装置とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)小型飛行装置の胴体の左右両側に配した羽ばたき翼の基端側を、アクチュエータの出力軸に連結して、復元力を作用させながら上記アクチュエータの出力軸の回転方向又は直線方向の往復駆動によって上記羽ばたき翼を羽ばたき作動させることができるようにしてある羽ばたき翼の駆動機構における上記アクチュエータへ入力させる電圧に対して、上記羽ばたき翼の羽ばたき角の位相が−90度進みとなるように、上記アクチュエータへ入力させる電圧の周波数を制御するようにする羽ばたき翼の駆動機構の制御方法としてあるので、小型飛行装置を飛行させるべく羽ばたき翼を羽ばたき作動させる際に、運転状態の変化によって各羽ばたき翼の往復動の速度を変化させることに伴って、該各羽ばたき翼に作用する空気力の負荷質量や、ダンピング係数が変化して、アクチュエータへの入力電圧の周波数、及び、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の周波数が、上記アクチュエータの可動部、羽ばたき作動させられる各羽ばたき翼、及び、該各羽ばたき翼の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、上記羽ばたき翼へ作用させている復元力とにより形成される振動系の共振周波数からずれを生じても、上記アクチュエータの入力電圧の周波数と、羽ばたき翼の羽ばたき作動の周波数を自動的に変化させて、上記共振周波数からのずれを解消できる。したがって、上記小型飛行装置の運転状態を変化させても、羽ばたき翼を、上記共振周波数に一致する周波数で羽ばたき作動させることができて、上記羽ばたき翼に作用する慣性力をキャンセルさせることが可能となる。
(2)アクチュエータへ入力させる電圧の周波数の制御を、上記アクチュエータへ入力させる電圧と、上記羽ばたき翼の羽ばたき角との積の値を、所要のローパスフィルタにて処理し、更に、電圧制御発振器により、上記ローパスフィルタにて処理した後に得られる値がゼロとなるようにするための所要の電圧に応じた周波数の発振を行わせ、アンプより上記アクチュエータへ、上記電圧制御発振器より発振される周波数に応じた周波数の電圧となるように電力供給を行うことで行わせるようにする制御方法、及び、上記と同様の羽ばたき翼の駆動機構における上記アクチュエータへ入力させる電圧と、上記羽ばたき翼の羽ばたき角との積を算出する乗算器、該乗算器の算出値を処理する所要のローパスフィルタ、上記ローパスフィルタにて処理した後に得られる値がゼロとなるように所要の電圧に応じた周波数の発振を行わせるための電圧制御発振器、上記アクチュエータへ、上記電圧制御発振器より発振される周波数に応じた周波数の電圧の電力供給を行うことができるようにしてあるアンプを備えてなる構成を有する羽ばたき翼の駆動機構の制御装置とすることにより、上記(1)の制御方法を実現可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1乃至図5(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)は本発明の羽ばたき翼の駆動機構の制御方法及び装置の実施の一形態を示すもので、図1はブロック図、図2は、本発明の適用対象となる羽ばたき型小型飛行装置の羽ばたき翼2の駆動機構1を示すものである。
【0022】
図2に示す駆動機構1は、胴体3の前後方向所要位置に備えるようにする。すなわち、胴体3の前後方向所要位置の左右両側部に、開口を設けて、該開口を通して左右一対の羽ばたき翼2の各基端側(内端側)を胴体3内へ位置させるようにする。該各羽ばたき翼2の基端部には、直角方向に支軸4が固定して取り付けてあり、該各支軸4が胴体3内の固定部(図示せず)に回転自在に挿通されて、図示しない軸受で回転自在に支持させるようにしてある。又、上記両支軸4には、同径のギヤ5が一体として回転できるようにそれぞれ取り付けてあり、該ギヤ5同士は図2に示す如く噛合して、一方のギヤ5が回転すると他方のギヤ5も同時に回転できるようにしてある。更に、胴部3内の固定部には、アクチュエータとしての翼駆動用モータ6が設置され、該翼駆動用モータ6の出力軸6aに取り付けた小径の駆動ギヤ7を、上記2つのギヤ5のいずれか一方に図示の如く噛合させた構成としてある。これにより、翼駆動用モータ6を駆動して駆動ギヤ7を介して動力を一方のギヤ5に伝えることにより、2つのギヤ5が同時に反対方向に回転し、支軸4を介し羽ばたき翼2が同時に上下方向へ回動して羽ばたき作動することができるようにしてある。更に、上記左右の羽ばたき翼2の支軸4と胴部3内の固定部、あるいは、上記翼駆動用モータ6における出力軸と胴部3内の固定部との間に、ばね等の図示しない弾性部材を介在させて設けて、該弾性部材の弾性力を、左右の羽ばたき翼2を振幅の中央の中立位置に引き戻すための復元力として作用させることができるようにしてある。
【0023】
ここで、先ず、上記翼駆動用モータ6を、図3に示す如き電気子(回転子)8の外部に界磁コイル9を備えてなる他励式直流モータとして、その働きを考える。なお、2次的な影響は無視することとする。
【0024】
電流iのときの上記翼駆動用モータ6の回転トルク(発生トルク)は、磁束をΦとすると、k´を定数として、k´Φである。又、回転数nのときの逆起電力は、kを定数として、kΦである。
【0025】
上記モータ6における電気子8の端子電圧、すなわち、入力電圧をe、内部抵抗をr、モータ6の回転慣性をJ、負荷トルクをqとすると、下記の方程式が得られる。
【0026】
すなわち、力学的関係は、
【数1】

又、電気的関係は、
【数2】

である。なお、上記(A2)式には、コイルを流れる電流が変動することによる自己誘導電圧が含まれるべきであると思われるが、ここでは省略している。
【0027】
上記(A2)式を電流iについて解くと、
【数3】

となり、これを上記(A1)式に代入すると、
【数4】

が得られる。
【0028】
次に、上記翼駆動用モータ6に取り付けてある駆動ギア7と、上記一方の羽ばたき翼2の支軸4に取り付けてあるギア5との間で生じる減速について考える。
【0029】
図4は、上記翼駆動用モータ6の出力軸に取り付けてある駆動ギア7と、上記一方の羽ばたき翼2の支軸4に取り付けてあるギア5との力学系を取り出して示したもので、上記駆動ギア7の直径をdとし、上記一方の羽ばたき翼2側のギア5の直径をdとする。上記駆動ギア7から上記モータ6へ伝達されるトルク(負荷トルク)をqとすると、上記直径dの駆動ギア7から上記直径dのギア5には、(d1/d)・qのトルクが伝達される。よって、この条件の下で、上記モータ6の回転速度(回転数)をn(rps)とすると共に、上記一方の羽ばたき翼2側から上記支軸4を介してギア5へ伝達されるトルク(負荷トルク)をqとし、ギア5の回転慣性をJとし、該ギア5の回転量(回転角度)をθとすると、該ギア5の運動方程式は、
【数5】

で与えられる。
【0030】
上記翼駆動用モータ6に関しては、(A1)式で述べたように、その力学的関係は、
【数6】

であるので、上記(B1)式を負荷トルクqについて解いて(B2)式に代入すると、
【数7】

となる。この式に、上記モータ6の回転数nと、上記ギア5の回転角度θとの関係式である
【数8】

を代入すると、
【数9】

となる。
【0031】
一方、(A2)式、(A3)式で述べたように、上記翼駆動用モータ6の電気的関係
【数10】

を電流iについて解くと、
【数11】

であるので、これを上記(B5)式に代入すると、
【数12】

となる。
【0032】
次いで、以上のことを基にして、本発明の導出について述べる。図2に示した如き構成としてある羽ばたき型小型飛行装置における翼駆動用モータ6の運動方程式は、該モータ6の回転数をn、入力電圧をe、負荷トルクをq、回転慣性をJ、磁束をΦ、内部抵抗をrとし、逆起電力に関連する定数をk、発生トルクに関連する定数をk´とすると、前述の(A4)式より
【数13】

として与えられる。
【0033】
又、上記翼駆動用モータ6の回転は、出力軸6aに取り付けてある駆動ギア7から一方(図上左側)の羽ばたき翼2の支軸4に取り付けてあるギア5へ減速されて伝達されるようにしてある。ギア5の回転慣性をJ、羽ばたき翼2の1枚当りの負荷トルクをqとし、上記駆動ギア7とギア5との間における上記モータ6から伝えられる回転の減速比をρとし、更に、上記ギア5には、他方の羽ばたき翼2の支軸4に取り付けたギア5が噛合させてあって、左右の羽ばたき翼2が、上記1つの翼駆動用モータ6の出力により羽ばたき作動させられるものとすると、上記(1)式は、前述の(B8)式により
【数14】

となる。
【0034】
ここで、左右の各羽ばたき翼2の回転中心となる支軸4の中心から、各羽ばたき翼2の重心までの距離をl、羽ばたき翼2の1枚当りの質量をm、各支軸4の中心から各羽ばたき翼2に作用する空気力の作用点までの距離をl、空気力によって作用する付加質量をm、ダンピング係数をnとし、更に、各羽ばたき翼2に図示しない弾性部材により作用させてある復元力をkとして、羽ばたき翼2の1枚当りの負荷トルクqを、
【数15】

と記載するようにする。又、上記ギア5の回転角度θと、上記モータ6の回転数nとの間には、
【数16】

という関係があるので、(3)式と(4)式を(2)式へ代入すると、
【数17】

が導かれる。なお、この(5)式では、(A2)式の導出時において述べたように、回転子コイルの自己誘導電圧は無視したものとしてある。又、この運動方程式における左辺第2項をみると、電気的な力が減衰力を与えていることが分かる。又、上記(A3)式と(4)式より、
【数18】

が求められる。
【0035】
そこで、
【数19】

を、上記(5)式と(6)式に代入すると、それぞれ、
【数20】

【数21】

となるので、電圧eに対するギア5の回転角度θの応答関数は、
【数22】

となる。よって、電圧eに対する電流iの応答関数は、(9)式と(10)式より、
【数23】

と求まる。なお、ここで、上記翼駆動用モータ6における回転子コイルの自己誘導電圧を含める場合には、インダクタンスをLとすると、上記モータの内部抵抗rを、r+j2πfLとすればよいと考えられる。したがって、上記モータ6の回転子コイルの自己誘導電圧を含めることは、慣性を大にする作用が予想される。
【0036】
次に、上記翼駆動用モータ6へ投入されるパワーは、
【数24】

であるので、これより平均Mean[e]、周波数Freq[e]、偏角Arg[e]は、
【数25】

と求まる。
【0037】
共振周波数fを、上記(10)式で示した応答関数Hθ1em(f)の大きさを最大にする周波数とすると、(10)式の分母の絶対値を最小にするものとなるので、
【数26】

である。したがって、制御目標となる共振周波数fは、
【数27】

と求まる。
【0038】
具体例を挙げて説明すると、図3に示した翼駆動用モータ6を、端子間抵抗(内部抵抗)が17.0Ω、印加電圧が12.0Vのときの起動電流が12.0V/17.0Ω=0.706Aで、そのときの起動トルクが0.00434Nmであるとする。これにより、k´Φは、
k´Φ=0.00434/0.706=0.00615Nms/A
となる。一方、無負荷回転数が18000rpmで、印加電圧が12Vのときの無負荷電流が0.012Aであるとする。これにより、kΦは、
Φ=(12−0.012×17)/(18000/60)=0.0393Vs
となる。
【0039】
更に、図2に示した羽ばたき型小型飛行装置における各種パラメータを以下のように設定する。
【0040】
支軸4の中心から羽ばたき翼2の重心までの距離:l=0.05m
羽ばたき翼2の1枚当りの質量:m=0.0025kg
支軸4中心から羽ばたき翼2に作用する空気力の作用点までの距離:l=0.075m
上記空気力による負荷質量:m=0.02kg
上記空気力によるダンピング係数:n=0.01kg/s
羽ばたき翼2に作用させる復元力:k=1.0Nm/rad
翼駆動用モータ6の回転慣性:J=0.000001kgm
駆動ギア7とギア5間における減速比:ρ=0.0625
なお、ギア5の回転慣性Jは無視できるものとして、J=0とした。
【0041】
これらのパラメータを用いて上記(15)式により共振周波数fを求めると、10.131Hzとなる。よって周期Tは、0.0987sとなる。
【0042】
(10)式、(11)式、(13)式を計算した結果を図5(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)に示す。上記共振周波数において、図5(イ)に示す如く、電圧eに対するギア5の回転角度の応答関数:Hθ1em(f)の絶対値は大幅に増加して極大となる。一方、図5(ハ)に示す如き電圧eに対する電流iの応答関数:Himem(f)の絶対値、図5(ホ)に示す如き規格化されたパワーの平均:mean[e]/|E|、図5(ヘ)に示す如き規格化されたパワーの振幅:Amp[e]/|E|は、いずれも大幅に減少する。
【0043】
又、共振周波数の前後においては、図5(ロ)に示す如く、上記応答関数Hθ1em(f)の位相は0〜−180度に変化し、図5(ニ)に示す如き上記応答関数Himem(f)の位相、及び、図5(ト)に示す如きパワーの位相:eの位相は、いずれも−45〜45度に変化する。
【0044】
更に、図5(ロ)より、羽ばたき翼2の羽ばたき角、すなわち、ギア5の回転角度:θ(t)と、電圧e(t)の位相差が、上記共振周波数(同調点)を挟んで0から−180度に変化する際、上記同調点における両者の位相差は、−90度である。よって、本発明では上記ギアの回転角度θ(t)と電圧e(t)との関係を同調維持制御に用いることにした。
【0045】
ここで、厳密には、前述の(5)式において、左辺第1項の慣性力項と、左辺第3項の復元力項がキャンセルした状態で、dθ(t)/dtとe(t)が同位相、すなわち、位相差が−90度となることから、厳密な意味で同調点ではない。
【0046】
そこで、電圧e(t)と、羽ばたき翼2の羽ばたき角と一致するギア5の回転角度:θ(t)を、
【数28】

と書くことにすると、振幅EとΘ及び位相差φは次のようにして求めることができる。すなわち、e(t)、θ(t)、e(t)θ(t)は、それぞれ、
【数29】

【数30】

となるので、ローパスフィルタ(以下、LPFと記す)を通して、上記(18)式における右辺第2行の第2項を消すと、振幅EとΘ及び位相差φを求めることが可能となる。
【0047】
そこで、本発明では、図1にブロック図で示す如く、図2に示した如き羽ばたき型小型飛行装置における各羽ばたき翼2の駆動機構1に設けた図示しない検出部より入力される上記各羽ばたき翼2の羽ばたき角と一致するギア5の回転角度θと、上記各羽ばたき翼2を駆動する翼駆動用モータ6へ後述するアンプ10より入力させる電圧eとの積を求める乗算器11、LPF12、加算器13、電圧に比例した周波数を発振する電圧制御発振器(Voltage Contorol Oscillator:VCO)14、及び、上記アンプ10を、上記翼駆動用モータ6の上流側に設けて、羽ばたき翼2の駆動機構1の制御装置を構成するようにする。更に、かかる構成としてある制御装置を用いて羽ばたき翼2の駆動機構1の制御を行う場合は、翼駆動用モータ6の出力により各羽ばたき翼2を往復動させる際、各羽ばたき翼2の羽ばたき角と一致するギア5の回転角度θと、上記アンプ10より翼駆動用モータ6へ入力される電圧eとを上記乗算器11に入力して両者の積を算出した後、該上記θとeの積を上記LPF12を通すことで、上記(18)式における右辺第2行の第2項の成分を消す。次いで、上記VCO14より、上記(18)式にて残っている右辺第2行の第1項の成分をゼロとさせることができるようにするための所要の電圧に応じた周波数の発振を行わせて上記アンプ10へ入力させ、しかる後、該アンプ10より、上記翼駆動用モータ6へ上記VCO14より発振される周波数に応じた周波数で駆動用の電力供給を行うようにする。その後、この電力供給によって運転される翼駆動用モータ6にて駆動される羽ばたき翼2の羽ばたき角に相当するギア5の回転角度θと、上記アンプ10より翼駆動用モータ6へ入力される電圧eとを、再び上記乗算器11へ入力させて上記と同様の制御ループを繰り返すようにし、この制御ループの繰り返しの際には、上記加算器13にて、従前のLPF12の出力に対して1制御ループ(1タイムステップ)経過後の新たなLPF12の出力を加算してVCO14へ出力させるようにする。
【0048】
このように、本発明の羽ばたき翼の駆動機構の制御方法及び装置によれば、羽ばたき型小型飛行装置にて各羽ばたき翼2を羽ばたき作動させて飛行させる際に、運転状態の変化によって各羽ばたき翼2の往復動の速度を変化させることに伴って、該各羽ばたき翼2に作用する空気力の負荷質量mや、ダンピング係数nが変化し、この変化に起因して翼駆動用モータ6を駆動するための入力電圧eの周波数、及び、各羽ばたき翼2の羽ばたき作動の周波数が、上記翼駆動用モータ6の可動部、羽ばたき作動させられる各羽ばたき翼2、及び、該各羽ばたき翼2の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、図示しない弾性部材より各羽ばたき翼2へ作用させている復元力とにより形成される振動系の共振周波数からずれを生じても、翼駆動用モータ6を駆動するための入力電圧eの位相に対して、各羽ばたき翼2の羽ばたき角に一致するギア5の回転角度θの位相が−90度進みとなるように制御することで、上記共振周波数からのずれを解消できるようになる。
【0049】
したがって、上記羽ばたき型小型飛行装置の運転状態を変化させる場合に、羽ばたき翼2の羽ばたき作動の周波数と、上記振動系の共振周波数にずれが生じても、後述する数値シミュレーションの結果から明らかなように、羽ばたき翼2の羽ばたき作動の周波数を、上記振動系の共振周波数に一致するように自動的に変化させることができることから、上記各羽ばたき翼2に作用する慣性力をキャンセルさせた状態で該各羽ばたき翼2を羽ばたき作動させることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、以下に述べるようにしたものも含むものである。たとえば、上記実施の形態においては、左右一対の羽ばたき翼2を、1つの翼駆動用モータ6により駆動する構成の駆動機構2について説明したが、各羽ばたき翼2ごとに個別の翼駆動用モータ6を装備して、各羽ばたき翼2を個別の翼駆動用モータ6の回転駆動力により羽ばたき作動させる形式の駆動機構に本発明を適用してもよい。この場合は、(2)式における左辺括弧内の第2項の係数、右辺括弧内の第2項の分子の係数、及び、(5)式における左辺第1項の括弧内の第2項、第3項及び第4項の係数、左辺第2項の括弧内の第2項の係数、左辺第3項の係数を、いずれも1とすることで、上記と同様に各式を導くことができることから、この場合であっても、翼駆動用モータ6を駆動するための入力電圧eに対して、各羽ばたき翼2の羽ばたき角に一致するギア5の回転角度θの位相が−90度進みとなるように制御することで、共振周波数からのずれを自動的に解消できるようになる。
【0051】
前記した羽ばたき型小型飛行装置の構造的な各種パラメータや、翼駆動用モータ6の電気的な各種パラメータは、具体例として挙げたものであって、それぞれ示した数値に限定されるものではない。
【0052】
各羽ばたき翼2の駆動機構1を、アクチュエータとしての翼駆動用モータ6を備えてなる形式のものとして示したが、出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる線形アクチュエータの上記出力軸に取り付けたラックと、各羽ばたき翼2の支軸4に取り付けたピニオンを噛合させてなる構成として、出力軸の振幅に応じた羽ばたき角で上記羽ばたき翼2を羽ばたき作動させることができるようにしてあれば、線形アクチュエータを用いてなる形式の羽ばたき翼2の駆動機構にも適用できる。
【0053】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明者が実施した数値シミュレーション結果について説明する。
【0055】
(1)
図1に示したと同様の構成におけるローパスフィルタ(LPF)12を、図6にブロック図を示す如き2セクション4次バターワースフィルタとし、このLPF12の伝達関数が、
【数31】

により与えられるものとする。下記の表1と表2に、以下の計算で使用される上記LPF12の2セクション4次のバターワースフィルタとしての設計仕様と、フィルタ係数をそれぞれ示す。
【表1】

【表2】

このLPF12を2段直列で用いて図6に示した羽ばたき翼の駆動機構の制御方法の数値シミュレーションを行った。スタート時の周波数f(0)を9.93Hzとした場合の周波数fの径時的な変化と、パワーp(t)の径時的な変化についての結果を図7(イ)と(ロ)にそれぞれ示す。なお、上記パワーp(t)の変化は、羽ばたき翼2の1回の羽ばたき動作ごとに周期的に生じているものであるため、図7(ロ)では、上記パワーp(t)の変化を上下の包絡線で示してある。
制御に使ったルールは、
【数32】

である。ここで、t+1はネクストタイムステップを示す。その他の羽ばたき型小型飛行装置における構造的な各種パラメータ、及び、翼駆動用モータ6の電気的な各種パラメータは前述したと同様の値とする。
図7(イ)に示す結果より明らかなように、スタート時の周波数が、共振周波数より低くても、周波数fは、時間の経過とともに一定の共振周波数(10.13Hz)の値に収束することが判明した。又、図7(ロ)に示す結果より明らかなように、上記周波数fの収束に伴って、羽ばたき翼2の駆動に要するパワーの低下が実現されていることが判明した。
【0056】
(2)
上記と同様の数値シミュレーションを、スタート時の周波数f(0)を10.33Hzとした場合について実施した。周波数fの径時的な変化の結果を図8に示す。
図8の結果より明らかなように、スタート時の周波数が、共振周波数より高い場合にも、周波数fは、時間の経過とともに一定の共振周波数(10.13Hz)に収束することが判明した。
【0057】
以上、(1)と(2)の結果から、スタート時の周波数が共振周波数からずれていても、周波数fを自動的に共振周波数に一致させるようにすることができることから、本発明の羽ばたき翼の駆動機構の制御方法及び装置が有効に作用することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の羽ばたき翼の駆動機構の制御方法及び装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】図1の制御方法を適用する羽ばたき型小型飛行装置の概要を示す正面図である。
【図3】図2の小型飛行装置に用いる翼駆動用モータを示す概要図である。
【図4】図2の小型飛行装置における翼駆動用モータに取り付けてある駆動ギアと、羽ばたき翼の支軸に取り付けてあるギアとの力学系を取り出して示した図である。
【図5】(15)式と、(10)式、(11)式、(13)式の具体的な数値計算の結果を示すもので、(イ)は電圧に対するギアの回転角度の応答関数の絶対値、(ロ)は該応答関数の偏角、(ハ)は電圧に対する電流の応答関数の絶対値、(ニ)は該応答関数の偏角、(ホ)は規格化されたパワーの平均、(ヘ)は規格化されたパワーの振幅、(ト)は上記パワーの位相を、それぞれ周波数変化に対して示す図である。
【図6】本発明者の行った数値シミュレーションで用いたローパスフィルタを示すブロック図である。
【図7】本発明の有効性を検証するために行った数値シミュレーションの結果を示すもので、(イ)は周波数の径時的な変化を、(ロ)は羽ばたき翼の羽ばたき作動に要するパワーの径時的な変化をそれぞれ示す図である。
【図8】は本発明の有効性を検証するために別の条件で行った数値シミュレーションの結果を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 駆動機構
2 羽ばたき翼
3 胴体
6 翼駆動用モータ(アクチュエータ)
6a 出力軸
10 アンプ
11 乗算器
12 ローパスフィルタ
14 電圧制御発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型飛行装置の胴体の左右両側に配した羽ばたき翼の基端側を、アクチュエータの出力軸に連結して、復元力を作用させながら上記アクチュエータの出力軸の回転方向又は直線方向の往復駆動によって上記羽ばたき翼を羽ばたき作動させることができるようにしてある羽ばたき翼の駆動機構における上記アクチュエータへ入力させる電圧に対して、上記羽ばたき翼の羽ばたき角の位相が−90度進みとなるように、上記アクチュエータへ入力させる電圧の周波数を制御するようにすることを特徴とする羽ばたき翼の駆動機構の制御方法。
【請求項2】
アクチュエータへ入力させる電圧の周波数の制御を、上記アクチュエータへ入力させる電圧と、上記羽ばたき翼の羽ばたき角との積の値を、所要のローパスフィルタにて処理し、更に、電圧制御発振器により、上記ローパスフィルタにて処理した後に得られる値がゼロとなるようにするための所要の電圧に応じた周波数の発振を行わせ、アンプより上記アクチュエータへ、上記電圧制御発振器より発振される周波数に応じた周波数の電圧となるように電力供給を行うことで行わせるようにする請求項1記載の羽ばたき翼の駆動機構の制御方法。
【請求項3】
小型飛行装置の胴体の左右両側に配した羽ばたき翼の基端側を、アクチュエータの出力軸に連結して、復元力を作用させながら上記アクチュエータの出力軸の回転方向又は直線方向の往復駆動によって上記羽ばたき翼を羽ばたき作動させることができるようにしてある羽ばたき翼の駆動機構における上記アクチュエータへ入力させる電圧と、上記羽ばたき翼の羽ばたき角との積を算出する乗算器と、該乗算器の算出値を処理する所要のローパスフィルタと、上記ローパスフィルタにて処理した後に得られる値がゼロとなるように所要の電圧に応じた周波数の発振を行わせるための電圧制御発振器と、上記アクチュエータへ、上記電圧制御発振器より発振される周波数に応じた周波数の電圧の電力供給を行うことができるようにしてあるアンプとを備えた構成を有することを特徴とする羽ばたき翼の駆動機構の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−1269(P2008−1269A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173756(P2006−173756)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(504182406)有限会社数理解析研究所 (6)
【Fターム(参考)】