羽根板構造緑化パネル
【課題】構造が単純であり、植栽部へ効率的に灌水を行うことができ、風圧や火災に強いこと、さらに意匠性が高いことを特徴とする緑化パネル構造物を提供する。
【解決手段】植物が植栽された植栽部を備える複数の羽根板3を一本の連結部材4を介して上下に隙間をあけて連結して配置された単純な構造を有し、羽根板3を連結部材4の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置することによって、植栽部への灌水が調整でき、また通気を可能とすることによって緑化パネル構造物に対する風圧を減少させることができ、さらに緑化面の視認性を高め意匠性を向上させることができる。さらに羽根板3を上下に隙間をあけて連結して配置したことにより火災による緑化パネル構造物の全焼を防ぐことができる。
【解決手段】植物が植栽された植栽部を備える複数の羽根板3を一本の連結部材4を介して上下に隙間をあけて連結して配置された単純な構造を有し、羽根板3を連結部材4の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置することによって、植栽部への灌水が調整でき、また通気を可能とすることによって緑化パネル構造物に対する風圧を減少させることができ、さらに緑化面の視認性を高め意匠性を向上させることができる。さらに羽根板3を上下に隙間をあけて連結して配置したことにより火災による緑化パネル構造物の全焼を防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物が植栽された植栽部を備える羽根板を上下に隙間をあけて、連結部材を介して複数連結してなる緑化パネル構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の温度が局所的に高くなる「ヒートアイランド現象」は、一つの要因として都市部の建築物や構造物の壁面が太陽光などによって加熱・蓄熱されることによって生じると考えられている。このため近年ではこのヒートアイランド現象を緩和するために、日射熱の軽減や大気中の二酸化炭素量を削減することを目的として、建築物や構造物の壁面を植物によって緑化することが注目されている。
【0003】
建築物や構造物の壁面を緑化するために、今日様々な建築資材、例えば、緑化パネルが開発されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、従来の緑化を目的とした建築資材は、構造が複雑であり設置が容易でないこと、また植栽部への灌水が効率的に行えないこと、ならびに風圧に弱く破損しやすいこと、また火災などの燃焼に対して耐性を有さないこと等様々な構造的課題を有していた。さらに、建築資材という観点においては、緑化面の視認性が低く意匠性の乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-208537号公報
【特許文献2】特開2002-34347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、構造が単純であること、植栽部への灌水が効率的に行えること、風圧や火災に強いこと、さらに意匠性の高いことを特徴とする緑化パネル構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、植物が植栽された植栽部を備える複数の羽根板を一本の連結部材を介して上下に隙間をあけて連結して配置する単純な構造の緑化パネル構造物において、当該羽根板を連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 羽根板、および
該羽根板を複数配置し連結するための連結部材、
を備えた緑化パネル構造物であって、該羽根板が該羽根板の厚さ方向に直行する少なくとも一面側に植物が植栽された植栽部を備え、かつ該羽根板を貫通する該連結部材を介して上下に隙間をあけて連結されている、上記緑化パネル構造物。
【0009】
[2] 羽根板が、連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置され該連結部材を介して連結されている、[1]の緑化パネル構造物。
[3] 羽根板が、取水口および/または通水路を備え、該取水口および/または通水路を通って、該連結部材を介して連結されている上段の羽根板から下段の羽根板へと水が流下する、[1]または[2]の緑化パネル構造物。
【0010】
[4] 羽根板が、連結部材の軸方向に対して上向きに凹面または凸面を有し、凹面を有する羽根板と凸面を有する羽根板が連結部材の軸方向の上下に交互に配置され該連結部材を介して連結されている、[1]〜[3]のいずれかの緑化パネル構造物。
[5] 羽根板および/または連結部材の一部または全体が、難燃剤を含むか、または難燃材により被膜されている、[1]〜[4]のいずれかの緑化パネル構造物。
【0011】
[6] 植物が蘚苔類である、[1]〜[5]のいずれかの緑化パネル構造物。
[7] 植物が、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)である、[6]の緑化パネル構造物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の緑化パネル構造物は、植物が植栽された植栽部を備える複数の羽根板を一本の連結部材を介して上下に隙間をあけて連結して配置された単純な構造を有し、当該羽根板を連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置することによって、植栽部への灌水が調整でき、また通気を可能とすることによって緑化パネル構造物に対する風圧を減少させることができ、さらに緑化面の視認性を高め意匠性を向上させることができる。さらに羽根板を上下に隙間をあけて連結して配置したことにより火災による緑化パネル構造物の全焼を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図2】図2は、各羽根板上面の上下方向の辺(a)の長さの総和が連結部材の長さ(b)よりも大きくなっている緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図3】図3は、プレート状の羽根板(3’)およびトナー状の羽根板(3”)の断面図を示す。
【図4】図4は、着色パネルを有する羽根板を一部に有する緑化パネル構造物の正面図(A)および着色パネルを有する羽根板を一部に有する緑化パネル構造物を複数並列して用いた場合の正面図(B)を示す。
【図5】図5は、通水路を備える緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図6】図6は、通水路を備える緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図7】図7は、樋を備える取水口および通水路を有する羽根板の側断面図を示す。
【図8】図8は、最上端部および最下端部が対角にあるように調整した緑化パネル構造物の斜視図を示す。
【図9】図9は、最上端部の対角に最下端部を有する形状の羽根板を有する緑化パネル構造物の斜視図を示す。
【図10】図10は、通水路を備える緑化パネル構造物を複数並列して用いた場合の正面図を示す。
【図11】図11は、凹面を有する羽根板および凸面を有する羽根板を有する緑化パネル構造物の斜視図を示す。
【図12】図12は、凹面を有する羽根板および凸面を有する羽根板を有する緑化パネル構造物の側面図(a)ならびに凹面を有する羽根板の断面図(b)および凸面を有する羽根板の断面図(c)を示す。
【図13】図13は、難燃剤が塗布された羽根板の正面図(a)、難燃剤が塗布された連結部材を有する緑化パネル構造物の側面図(b)ならびに難燃剤が塗布された羽根板および連結部材有する緑化パネル構造物の側面図(c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。ただし、図に示された発明は本発明の一実施形態を示すものであり、本発明をこれらの発明に限定することを意図しない。
【0015】
図1に示すとおり、本発明の緑化パネル構造物1は、植栽部2を含む複数の羽根板3が、上下に隙間をあけて、連結部材4を介して連結して配置された建築資材である。ここで「複数」とは、2枚以上、3枚以上、4枚以上または5枚以上の羽根板を示し、その上限は本発明の緑化パネル構造物が設置される建築物または建築物壁面の大きさ、および本発明の緑化パネル構造物の使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0016】
本発明の緑化パネル構造物は、例えば建築物および建築物壁面等に取り付けることができる。ここで「建築物」とは、ビルや家屋等の建物、橋梁、道路・軌道壁等の建築物を指す。「壁面」とは、外壁も内壁も含む、建築物の壁面を指す。また、「壁面」は、垂直面であっても、傾斜面であっても良い。
【0017】
緑化パネル構造物1は、建築物または建築物壁面等に設けられた支持土台5に固定された連結部材4に、当該連結部材4を介して上下方向に所定の隙間を空けて複数の羽根板3を取り付けたものである。
【0018】
連結部材4は、建築物および建築物壁面等に鉛直方向に沿って、または鉛直方向に対して一定の角度で傾斜して支持土台5に固定する。連結部材4は、その上端および下端のいずれも、または上端もしくは下端のいずれかを支持土台5に固定する。連結部材4は、柱状または紐状(針金、紐、縄、鎖等を含む)の形状を有し、直線状または湾曲もしくは分岐を有する形状であっても良い。また、連結部材4は、中空または中実の形状を有し、その断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、丸、楕円、角形等、いかなる形状であっても良い。また連結部材4は、中空である場合に各羽根板3上の植栽部2に水を給排水するための通水路として機能しても良い。連結部材4は、羽根板3を複数連結して固定できる強度を有すればいかなる材料から形成されても良く、例えば、これらに限定されないが金属、樹脂、セラミック、木等から形成される。連結部材4は、羽根板3に羽根板3の厚さ方向に貫通して設けられた貫通孔6を貫通できる太さであれば良い。
【0019】
羽根板3は、羽根板3を貫通して設けられた貫通孔6を貫通する連結部材4を介して、当該連結部材4の軸方向に対して一定の角度で傾斜するとともに、上下に所定間隔離間して配置されている。このため連結部材4を羽根板3に貫通させるだけの簡便な構造で緑化パネルの角度を安定して固定できるとともに、上下に隣り合う羽根板3間からの採光、植栽部2への灌水、緑化パネル構造物1に対する風圧の緩和を可能とし、また一定の方向からの羽根板上面の全体またはその一部の視認性を高めることができるようになっている。羽根板3は、連結部材4を支持軸としてそれぞれが独立に可動式であっても良いし、それぞれ独立に一定の角度で傾斜して固定される固定式であっても良い。
【0020】
羽根板3は、連結部材4が貫通できる貫通孔6を少なくとも1個有する。貫通孔6は、羽根板3の厚さ方向に直行する面に垂直に、または当該面に対して一定の角度で傾斜して設けることができる。貫通孔6を複数個、例えば2個有する場合、一枚の羽根板3を2本の連結部材4が貫通する。好ましくは、貫通孔6は一枚の羽根板3に一つ存在する。貫通孔6の位置は、羽根板3の重心を通る位置にあっても良いし、重心を通らない位置にあっても良い。
【0021】
羽根板3は、植栽部2が配置された面を上側に連結部材4に連結されている。
羽根板3の形状は、特に限定されるものではなく、羽根板3の厚さ方向に直行する面の形状は、丸、楕円、三角、正方形、ひし形等、いかなる形状であっても良い。
【0022】
図2に示すように、各羽根板3上面の上下方向の辺(または直径)(a)の総和が連結部材4の長さ(b)よりも大きくなっても良い。このような形状を有する羽根板3を備える緑化パネル構造物は、羽根板上面の総面積を、緑化パネル構造物を設置する壁面の面積よりも大きくすることが可能であり、結果として緑化の総面積を大きくすることができる。
【0023】
図3は、羽根板3の断面図を示す。羽根板3の形状は、プレート状のもの(3’)が好ましく、また羽根板3の縁部の一部またはその全体が上方に立ち上がっているもの(3”)であっても良い。また、羽根板3の形状は、凹面または凸面を有するものであっても良い。
【0024】
羽根板3の側面、すなわち、厚さ方向に水平な面の形状はその目的に応じて任意に形成することができ、特に限定されない。
【0025】
羽根板3は、植栽部2を保持でき、かつ屋内外の設置に長期耐え得ることができる強度を有すればいかなる材料から形成されても良く、例えば、これらに限定されないが金属、樹脂、木、多孔質材料(セラミック、コンクリート等)から形成される。必要に応じて、水の流れを制御するために羽根板3はその全体または一部が防水シートによって覆われていても良い。
【0026】
植栽部2は、植物7が植え付けられた、または着生された植栽基盤8からなる。植栽基盤8は、植物7を担持することができるとともに、植物7が生育するのに必要な水分および/または養分を保持できる物質で構成され、例えば、土、軽石、木片、植物繊維、不織布、および多孔質材料(セラミック、コンクリート等)からなる群から選択される一つ以上の物質を用いることができるがこれらに限定されない。好ましくは不織布を用いる。さらに、植栽基盤8には、保水剤(架橋ポリアクリル酸ソーダゲルやPVA等)を含めても良い。植栽基盤8に植え付けられたまたは着生された植物7は当該植栽基盤8上で自生する。
【0027】
植栽基盤8に植えつけられるかまたは着生される植物7としては、植栽部2において生育し自生し得る植物であれば特に限定されず、例えば、芝、ツル性木本、リュウノヒゲ、ヤブラン、セダム類、蘚類、苔類、ツノゴケ類等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは蘚類、苔類、および/またはツノゴケ類を用いる。
【0028】
蘚類、苔類、ツノゴケ類は、肥料を混入した水(液肥)を与えて日光を当てるだけで生育可能であること、過剰に伸びたりしないために必要最小限のメンテナンスで済むこと、および乾燥条件に強いこと等の有利点を有する。
【0029】
蘚類としては、ミズゴケ類(ミズゴケ亜綱)、クロゴケ類(クロゴケ亜綱)、ナンジャモンジャゴケ類(ナンジャモンジャゴケ亜綱)およびマゴケ類(マゴケ亜綱)等が利用できる。
【0030】
苔類としては、ゼニゴケ類(ゼニゴケ亜綱)およびウロコゴケ類(ウロコゴケ亜綱)等が利用できる。
ツノゴケ類としては、ツノゴケ亜綱等を利用できる。
【0031】
好ましくは、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)、ハイゴケ(Hypnum plumaeforme)、ウマスギゴケ(Polytrichum commune Hedw.)、スギゴケ(Polytrichum juniperinum Willd. ex Hedw.)、ヤマトフデゴケ(Campylopus japonicus Broth.)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)、ヒノキゴケ(Pyrrhobryum dozyanum)、ホソバオキナゴケ(Leucobryum juniperoideum)、カモジゴケ(Dicranum scoparium)、ミノゴケ(Macromitrium japonicum Dozy et Molk.)、ナガバチヂレゴケ(Ptychomitrium linearifolium Reimers et Sakurai)、シナチヂレゴケ(Ptychomitrium gardneri)を利用できる。
【0032】
特に好ましくは、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)を利用する。エゾスナゴケは渇水などを含む環境変化に特に強いために、様々な環境(例えば、道路や線路脇・高層ビル群の谷間など風圧が強い場所等)において生育可能である。故に、エゾスナゴケを羽根板の植栽部に備えることによって、緑化パネル構造物の設置適用範囲を広げることができる。
【0033】
植栽部2は、羽根板3の厚さ方向に直行する少なくとも一面、好ましくは上側の面の全体に設けられていても良いし、当該面の一部に設けられていても良い。また植栽部2の形状は、羽根板3の厚さ方向に直行する面の形状および/または本発明の緑化パネル構造物の使用目的に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではなく、例えば、丸、楕円、三角、正方形、長方形、ひし形等、いかなる形状であっても良い。また、植栽部2は、羽根板3と共に連結部材4により貫通されていても良い。
【0034】
本発明の緑化パネル構造物1は、含まれる羽根板3の全てが植栽部2を有していなくても良い。例えば、羽根板3には植栽部2に代えて、着色パネル(例えば、緑色パネル)、看板、掲示板、照明器具等、本発明の緑化パネル構造物1の使用目的に応じて適当なものを含めることができる。図4は、植栽部2に代えて、着色パネル9を有する羽根板3を一部に有する緑化パネル構造物1を示す(図4(A))。着色パネル9を有する羽根板3が含まれることによって、緑化パネル構造物1の意匠性を高めることができる。また、複数の緑化パネル構造物1を並列し、着色パネル9を有する羽根板3の位置を適宜調整することによって、着色パネル9を有する羽根板3および/または植栽部2を有する羽根板3によって文字、図形などを構成することができる(図4(B))。
【0035】
本発明の緑化パネル構造物1は、羽根板3上の植栽部2への灌水を効率的に行うことができる。
【0036】
図5に示すとおり、最も単純には本発明の緑化パネル構造物1は、傾斜した羽根板3の上面の最下端部に少なくとも1つの通水路10を備える。通水路10の個数は、羽根板3および植栽部2の形状および大きさに応じて適宜決定することができる。
【0037】
羽根板3の上方より植栽部2を有する羽根板3の上面に流下した水(好ましくは液肥)11は、羽根板3上面の傾斜面に沿って流れ、この際に植栽部2に灌水しながら羽根板3の最下端部またはその近傍に向かって流れる。最下端部またはその近傍に到達した水11は、下段に配置された別の羽根板3の最上端部またはその近傍に通水路10を通って流下する。
【0038】
「最上端部」とは、連結部材4に傾斜して配置された羽根板3の植栽部2を有する上面において鉛直方向に最も高い位置を指す。「最上端部」は、羽根板の植栽部2を有する上面上にある点であっても良いし、羽根板の植栽部2を有する上面の一辺であっても良い。一方、「最下端部」とは連結部材4に傾斜して配置された羽根板3の植栽部2を有する上面において鉛直方向に最も低い位置を指す。「最下端部」は、羽根板の植栽部2を有する上面上にある点であっても良いし、羽根板の植栽部2を有する上面の一辺であっても良い。
【0039】
通水路10は下段に配置された別の羽根板の最上端部またはその近傍に直接接していても良いし(図6)、離れていても良い(図5)。
【0040】
通水路10は、通水可能であればどのような形状であっても良く、最も単純には羽根板3の最下端部またはその近傍に直接固定された中実のスティック状、プレート状の通水路10が挙げられる。これらの通水路10は、水の表面張力を利用して上段の羽根板3の最下端部またはその近傍の水を、下段に配置された別の羽根板の最上端部またはその近傍に通水する。
【0041】
別の実施形態において通水路10は、パイプ状の形状を有し羽根板3に設けられた取水口12に固定され、上段の羽根板3の最下端部またはその近傍の水が取水口12より通水路10のパイプ中を通過して、下段に配置された別の羽根板の最上端部またはその近傍に流下する(図7および図9参照)。
【0042】
取水口12の形状は、羽根板上面の水を通水路10に排水することができる形状であれば特に限定されないが、例えば、羽根板上面の最下端部またはその近傍に設けられた羽根板3を貫通する孔、羽根板上面の最下端部またはその近傍に設置され羽根板上面に沿って流れた水を受けるための樋13を貫通して設けられた孔であっても良い。図7は、樋13を備える羽根板3の断面図を示す。羽根板3の上面を流れた水11は羽根板3の最下端部またはその近傍に設けられた樋13によって受け止められ、取水口12を介して通水路10へ排水される。
【0043】
羽根板3を貫通して設けられた、または樋13を貫通して設けられた取水口12は、下段に配置された羽根板上面の最上端部またはその近傍に向かって貫通していても、鉛直方向に貫通していても良い。
【0044】
通水路10は、通水可能であればどのような材料で構成されていても良く、例えば、毛細管現象により水を吸収し保持できる浸水材(紐等)であっても良いし、金属、樹脂等で構成されていても良い。
【0045】
本発明の緑化パネル構造物1は、含まれる羽根板3の傾斜角度および向き、羽根板3の形状、ならびに/あるいは取水口および通水路の配置をそれぞれ調整することによって、羽根板3上の植栽部2への灌水を効率的に行うことができる。
【0046】
植栽部への灌水の効率は、羽根板上面を移動する水の距離が最大となるように羽根板上面の形状、羽根板の傾斜の角度および向き、ならびに取水口および/または通水路の位置を設定することによって向上させることができる。すなわち、上段の羽根板より流下した水を受ける位置(最上端部またはその近傍)と、取水口および/または通水路の位置(最下端部またはその近傍)が最も離れるように、例えば植栽部が四角形であればその対角上に配置することによって、植栽部への灌水を効率的に行うことができる(図8および図9参照)。
【0047】
図8に示すように、各羽根板の傾斜の角度および向き、ならびに取水口および/または通水路の位置を設定する。すなわち、羽根板3が、水を受ける位置が最上端部またはその近傍となり、その対角に配置される通水路10が最下端部またはその近傍となるように連結部材4に固定される。上方より当該羽根板3の最上端部またはその近傍に流下した水11は、羽根板3の傾斜面に沿って対角の存在する最下端部またはその近傍に配置された通水路10に向かって流れ、通水路10より下段の羽根板3の最上端部またはその近傍に流下する。
【0048】
また、図9に示すように、植栽部2を有する羽根板3上面は、最上端部の対角の位置に底部を有する凹面を有していても良い。「底部」とは凹面において鉛直方向に最も低い位置(点)を指す。凹面の深さは、最上端部よりその底部に向かって水を流すことができれば特に限定されない。ここで「凹面の深さ」とは、最上端部と底部との高低差を意味する。底部には通水路10および/または取水口12が配置される。羽根板3上面が当該形状を有することによって、水11を、最上端部またはその近傍より植栽部2へ効率的に灌水を行いながら通水路10および/または取水口12に向かって流すことができる。凹面において最上端部またはその近傍より底部に流れた水は、通水路10および/または取水口12に沿って下段の羽根板3の最上端部またはその近傍に流下する。
【0049】
さらに、同様に羽根板の傾斜の角度および向き、ならびに通水路10および/または取水口12の位置を調整することによって、図10に示すように、並列に配置された複数の緑化パネル構造物の複数の羽根板3上の植栽部2に対して、効率的に灌水を行うことができる。図10に示される実施形態は、複数の緑化パネル構造物のなかの最上段に位置する羽根板の最上端部またはその近傍1箇所に注水された水11が、羽根板3の傾斜および向きならびに通水路10および/または取水口12の配置によって、複数の羽根板3の植栽部2に流れることを示す。
【0050】
別の実施形態において、本発明の緑化パネル構造物は、羽根板が、連結部材の軸方向に対して上向きに凹面または凸面を有し、凹面を有する羽根板と凸面を有する羽根板が連結部材の軸方向の上下に交互に配置され、連結部材を介して連結された構造を有する。最上段および/または最下段の羽根板を、凹面を有する羽根板とするか、または凸面を有する羽根板とするかは特に限定されない。
【0051】
凹面の上方より流下した水は、凹面の縁部より植栽部を通りその最下端部に向かって羽根板上面上を流れ、最下端部より、下段に配置された凸面の最上端部またはその近傍に向かって流下され、当該最上端部より縁部に向かって植栽部を通り羽根板上を流れ、下段に配置された凹面の縁部に向かって流下される。
【0052】
凹面の深さは、縁部よりその最下端部に向かって水を流すことができれば特に限定されない。ここで「凹面の深さ」とは、上に定義したとおりである。
【0053】
また、凸面の高さは、最上端部よりその縁部に向かって水を流すことができれば特に限定されない。ここで「凸面の高さ」とは、凸面の最上端部と縁部との高低差を意味する。
【0054】
凹面において縁部またはその近傍より最下端部またはその近傍に流れた水は、凹面の最下端部またはその近傍に設けられた少なくとも1つの上記通水路および/または取水口に沿って凸面の最上端またはその近傍に向かって流下させても良い。
【0055】
また凸面において最上端部またはその近傍より縁部(最下端部またはその近傍)に流れた水は、凸面の縁部(最下端部またはその近傍)に設けられた少なくとも1つの上記通水路および/または取水口に沿って凹面の縁部(最上端部)またはその近傍に向かって流下させても良い。
【0056】
連結部材が、凹面の最下端部またはその近傍を貫通し、かつ凸面の最上端部またはその近傍を貫通する場合、当該連結部材を通水路として用いても良い。この場合連結部材は、中空の形状を有し、凹面の最下端部またはその近傍の位置に流れた水を連結部材内へ導くための少なくとも1つの取水口と、凸面の最上端部またはその近傍の位置に連結部材内を通過した水を凸面の最上端部またはその近傍に排出するための排水口を備える。
【0057】
凹面を有する羽根板の幅は、上段に配置された凸面を有する羽根板の縁部より流下する水を効率的に受けることができるように調整することができる。すなわち、凹面を有する羽根板の縁部が、上段に配置された凸面を有する羽根板の縁部より外側に配置されていることが好ましい。
【0058】
図11に示されるように、凹面には、植栽部2を有する羽根板3の上面が少なくとも1つの谷折り面14を有する場合を含む。同じく図11に示されるように、凸面には、植栽部2を有する羽根板3の上面が少なくとも1つの山折り面15を有する場合を含む。さらに、谷折り面14および山折り面15には、谷折り面の谷線16または山折り面の稜線17を中心に湾曲した形状も含む。谷折り面の谷線16および山折り面の稜線17は、羽根板3の中心線でなくても良く、また羽根板3の重心を通過していなくても良い。図11に示されるように、羽根板上の凹面に流下した水11は縁部またはその近傍より谷折り面14に沿って植栽部2を通り、凹面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの取水口12より通水路10を通って、下段に配置された凸面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下させることができる。凸面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下した水11は山折り面15に沿って、植栽部2を通り縁部向かって流れ、凸面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの通水路10より、下に配置された凹面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下させることができる。
【0059】
図12に示されるように、凹面には、植栽部2を有する羽根板3の上面が少なくとも1つの底部18を有する場合を含む。同じく図12に示されるように、凸面には、植栽部2を有する羽根板の上面が少なくとも1つの頂部19を有する場合を含む。ここで「底部」とは上に定義したとおりである。一方、「頂部」とは羽根板3の上面において鉛直方向に最も高い位置(点)を指す。底部18および頂部19は、羽根板3の重心上になくても良いし、また羽根板3の中心線上になくても良い。この場合に、凸面および凹面の形状は錐形であっても、半球状であっても良い。図12に示されるように、羽根板上の凹面に流下した水11は縁部より植栽部2を通り底部18に向かって流れ、凹面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの通水路10より、下に配置された凸面を有する羽根板の頂部19またはその近傍に流下させることができる。凸面を有する羽根板の頂部19またはその近傍に流下した水11は植栽部2を通り縁部に向かって流れ、凸面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの通水路10より、下に配置された凹面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下させることができる。
【0060】
本発明の緑化パネル構造物は、耐火性を有する。本発明の緑化パネル構造物において、羽根板を連結材を介して上下に隙間をあけて配置したことにより、たとえ一の羽根板が燃焼したとしても、直ちに他の羽根板への燃え移りを防ぐことができる。
【0061】
さらに本発明の緑化パネル構造物は、構成部材である羽根板、連結部材、通水路等の原料に難燃剤を含めるか、または当該羽根板、連結部材、通水路等の一部または全体を難燃剤で被覆することができる。これにより当該緑化パネル構造物に耐火性を付与することができる。利用し得る難燃剤としては、特に限定されることなく当該分野で公知の一般的な難燃剤を利用することができ、例えば以下のものが挙げられる:
有機系難燃剤(臭素化合物であるペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン等、リン化合物である芳香族のリン酸エステル、赤リン、ハロゲンを含むリン酸エステル等、塩素化合物である塩素化パラフィン等);
無機系難燃剤(アンチモン化合物である臭素化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等、金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等);ならびに
その他(ポリホウ酸ナトリウム等の不燃剤)。
【0062】
上記難燃剤は、例えば、散布(スプレー等)、塗布(機械コーティング、はけ塗り)等の一般的な手法を用いて羽根板、連結部材、通水路等の一部または全体を被膜することができる。難燃剤により被膜する範囲は特に限定されない。例えば、図13(a)に示すように、羽根板3の上面および/または下面(好ましくは下面)に難燃剤20を格子状に塗布する。難燃剤20を格子状に塗布することによって、羽根板表面を区分化でき、例えば一区分が燃焼しても他の区分への延焼を効率的に防ぐことができる。また、図13(b)に示すように、羽根板3を挟んで連結部材4の上部および下部に難燃剤20を塗布する。このように難燃剤20を連結部材4に塗布することによって、例えば一枚の羽根板が燃焼しても、その上部または下部の他の羽根板への連結部材に沿った延焼を効率的に防ぐことができる。さらに、図13(c)に示すように、羽根板3の下面および連結部材4の羽根板3の下面直下部に難燃剤20を塗布する。このように難燃剤20を羽根板3および連結部材4に塗布することによって、例えば一枚の羽根板上で燃焼が生じても、上部羽根板3への延焼を効率的に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の緑化パネル構造物は、構造が単純であり設置が容易であること、植栽部への灌水が効率的に行えること、風圧や火災に強いこと、さらに意匠性が高いことから、様々な建築物または建築物壁面等の建築資材として利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1緑化パネル構造物
2植栽部
3羽根板
4連結部材
5支持土台
6羽根板貫通孔
7植物
8植栽基盤
9着色パネル
10通水路
11水
12取水口
13樋
14谷折り面
15山折り面
16谷折り面の谷線
17山折り面の稜線
18底部
19頂部
20難燃剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物が植栽された植栽部を備える羽根板を上下に隙間をあけて、連結部材を介して複数連結してなる緑化パネル構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の温度が局所的に高くなる「ヒートアイランド現象」は、一つの要因として都市部の建築物や構造物の壁面が太陽光などによって加熱・蓄熱されることによって生じると考えられている。このため近年ではこのヒートアイランド現象を緩和するために、日射熱の軽減や大気中の二酸化炭素量を削減することを目的として、建築物や構造物の壁面を植物によって緑化することが注目されている。
【0003】
建築物や構造物の壁面を緑化するために、今日様々な建築資材、例えば、緑化パネルが開発されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、従来の緑化を目的とした建築資材は、構造が複雑であり設置が容易でないこと、また植栽部への灌水が効率的に行えないこと、ならびに風圧に弱く破損しやすいこと、また火災などの燃焼に対して耐性を有さないこと等様々な構造的課題を有していた。さらに、建築資材という観点においては、緑化面の視認性が低く意匠性の乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-208537号公報
【特許文献2】特開2002-34347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、構造が単純であること、植栽部への灌水が効率的に行えること、風圧や火災に強いこと、さらに意匠性の高いことを特徴とする緑化パネル構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、植物が植栽された植栽部を備える複数の羽根板を一本の連結部材を介して上下に隙間をあけて連結して配置する単純な構造の緑化パネル構造物において、当該羽根板を連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 羽根板、および
該羽根板を複数配置し連結するための連結部材、
を備えた緑化パネル構造物であって、該羽根板が該羽根板の厚さ方向に直行する少なくとも一面側に植物が植栽された植栽部を備え、かつ該羽根板を貫通する該連結部材を介して上下に隙間をあけて連結されている、上記緑化パネル構造物。
【0009】
[2] 羽根板が、連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置され該連結部材を介して連結されている、[1]の緑化パネル構造物。
[3] 羽根板が、取水口および/または通水路を備え、該取水口および/または通水路を通って、該連結部材を介して連結されている上段の羽根板から下段の羽根板へと水が流下する、[1]または[2]の緑化パネル構造物。
【0010】
[4] 羽根板が、連結部材の軸方向に対して上向きに凹面または凸面を有し、凹面を有する羽根板と凸面を有する羽根板が連結部材の軸方向の上下に交互に配置され該連結部材を介して連結されている、[1]〜[3]のいずれかの緑化パネル構造物。
[5] 羽根板および/または連結部材の一部または全体が、難燃剤を含むか、または難燃材により被膜されている、[1]〜[4]のいずれかの緑化パネル構造物。
【0011】
[6] 植物が蘚苔類である、[1]〜[5]のいずれかの緑化パネル構造物。
[7] 植物が、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)である、[6]の緑化パネル構造物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の緑化パネル構造物は、植物が植栽された植栽部を備える複数の羽根板を一本の連結部材を介して上下に隙間をあけて連結して配置された単純な構造を有し、当該羽根板を連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置することによって、植栽部への灌水が調整でき、また通気を可能とすることによって緑化パネル構造物に対する風圧を減少させることができ、さらに緑化面の視認性を高め意匠性を向上させることができる。さらに羽根板を上下に隙間をあけて連結して配置したことにより火災による緑化パネル構造物の全焼を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図2】図2は、各羽根板上面の上下方向の辺(a)の長さの総和が連結部材の長さ(b)よりも大きくなっている緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図3】図3は、プレート状の羽根板(3’)およびトナー状の羽根板(3”)の断面図を示す。
【図4】図4は、着色パネルを有する羽根板を一部に有する緑化パネル構造物の正面図(A)および着色パネルを有する羽根板を一部に有する緑化パネル構造物を複数並列して用いた場合の正面図(B)を示す。
【図5】図5は、通水路を備える緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図6】図6は、通水路を備える緑化パネル構造物の側面図(A)および同正面図(B)を示す。
【図7】図7は、樋を備える取水口および通水路を有する羽根板の側断面図を示す。
【図8】図8は、最上端部および最下端部が対角にあるように調整した緑化パネル構造物の斜視図を示す。
【図9】図9は、最上端部の対角に最下端部を有する形状の羽根板を有する緑化パネル構造物の斜視図を示す。
【図10】図10は、通水路を備える緑化パネル構造物を複数並列して用いた場合の正面図を示す。
【図11】図11は、凹面を有する羽根板および凸面を有する羽根板を有する緑化パネル構造物の斜視図を示す。
【図12】図12は、凹面を有する羽根板および凸面を有する羽根板を有する緑化パネル構造物の側面図(a)ならびに凹面を有する羽根板の断面図(b)および凸面を有する羽根板の断面図(c)を示す。
【図13】図13は、難燃剤が塗布された羽根板の正面図(a)、難燃剤が塗布された連結部材を有する緑化パネル構造物の側面図(b)ならびに難燃剤が塗布された羽根板および連結部材有する緑化パネル構造物の側面図(c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。ただし、図に示された発明は本発明の一実施形態を示すものであり、本発明をこれらの発明に限定することを意図しない。
【0015】
図1に示すとおり、本発明の緑化パネル構造物1は、植栽部2を含む複数の羽根板3が、上下に隙間をあけて、連結部材4を介して連結して配置された建築資材である。ここで「複数」とは、2枚以上、3枚以上、4枚以上または5枚以上の羽根板を示し、その上限は本発明の緑化パネル構造物が設置される建築物または建築物壁面の大きさ、および本発明の緑化パネル構造物の使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0016】
本発明の緑化パネル構造物は、例えば建築物および建築物壁面等に取り付けることができる。ここで「建築物」とは、ビルや家屋等の建物、橋梁、道路・軌道壁等の建築物を指す。「壁面」とは、外壁も内壁も含む、建築物の壁面を指す。また、「壁面」は、垂直面であっても、傾斜面であっても良い。
【0017】
緑化パネル構造物1は、建築物または建築物壁面等に設けられた支持土台5に固定された連結部材4に、当該連結部材4を介して上下方向に所定の隙間を空けて複数の羽根板3を取り付けたものである。
【0018】
連結部材4は、建築物および建築物壁面等に鉛直方向に沿って、または鉛直方向に対して一定の角度で傾斜して支持土台5に固定する。連結部材4は、その上端および下端のいずれも、または上端もしくは下端のいずれかを支持土台5に固定する。連結部材4は、柱状または紐状(針金、紐、縄、鎖等を含む)の形状を有し、直線状または湾曲もしくは分岐を有する形状であっても良い。また、連結部材4は、中空または中実の形状を有し、その断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、丸、楕円、角形等、いかなる形状であっても良い。また連結部材4は、中空である場合に各羽根板3上の植栽部2に水を給排水するための通水路として機能しても良い。連結部材4は、羽根板3を複数連結して固定できる強度を有すればいかなる材料から形成されても良く、例えば、これらに限定されないが金属、樹脂、セラミック、木等から形成される。連結部材4は、羽根板3に羽根板3の厚さ方向に貫通して設けられた貫通孔6を貫通できる太さであれば良い。
【0019】
羽根板3は、羽根板3を貫通して設けられた貫通孔6を貫通する連結部材4を介して、当該連結部材4の軸方向に対して一定の角度で傾斜するとともに、上下に所定間隔離間して配置されている。このため連結部材4を羽根板3に貫通させるだけの簡便な構造で緑化パネルの角度を安定して固定できるとともに、上下に隣り合う羽根板3間からの採光、植栽部2への灌水、緑化パネル構造物1に対する風圧の緩和を可能とし、また一定の方向からの羽根板上面の全体またはその一部の視認性を高めることができるようになっている。羽根板3は、連結部材4を支持軸としてそれぞれが独立に可動式であっても良いし、それぞれ独立に一定の角度で傾斜して固定される固定式であっても良い。
【0020】
羽根板3は、連結部材4が貫通できる貫通孔6を少なくとも1個有する。貫通孔6は、羽根板3の厚さ方向に直行する面に垂直に、または当該面に対して一定の角度で傾斜して設けることができる。貫通孔6を複数個、例えば2個有する場合、一枚の羽根板3を2本の連結部材4が貫通する。好ましくは、貫通孔6は一枚の羽根板3に一つ存在する。貫通孔6の位置は、羽根板3の重心を通る位置にあっても良いし、重心を通らない位置にあっても良い。
【0021】
羽根板3は、植栽部2が配置された面を上側に連結部材4に連結されている。
羽根板3の形状は、特に限定されるものではなく、羽根板3の厚さ方向に直行する面の形状は、丸、楕円、三角、正方形、ひし形等、いかなる形状であっても良い。
【0022】
図2に示すように、各羽根板3上面の上下方向の辺(または直径)(a)の総和が連結部材4の長さ(b)よりも大きくなっても良い。このような形状を有する羽根板3を備える緑化パネル構造物は、羽根板上面の総面積を、緑化パネル構造物を設置する壁面の面積よりも大きくすることが可能であり、結果として緑化の総面積を大きくすることができる。
【0023】
図3は、羽根板3の断面図を示す。羽根板3の形状は、プレート状のもの(3’)が好ましく、また羽根板3の縁部の一部またはその全体が上方に立ち上がっているもの(3”)であっても良い。また、羽根板3の形状は、凹面または凸面を有するものであっても良い。
【0024】
羽根板3の側面、すなわち、厚さ方向に水平な面の形状はその目的に応じて任意に形成することができ、特に限定されない。
【0025】
羽根板3は、植栽部2を保持でき、かつ屋内外の設置に長期耐え得ることができる強度を有すればいかなる材料から形成されても良く、例えば、これらに限定されないが金属、樹脂、木、多孔質材料(セラミック、コンクリート等)から形成される。必要に応じて、水の流れを制御するために羽根板3はその全体または一部が防水シートによって覆われていても良い。
【0026】
植栽部2は、植物7が植え付けられた、または着生された植栽基盤8からなる。植栽基盤8は、植物7を担持することができるとともに、植物7が生育するのに必要な水分および/または養分を保持できる物質で構成され、例えば、土、軽石、木片、植物繊維、不織布、および多孔質材料(セラミック、コンクリート等)からなる群から選択される一つ以上の物質を用いることができるがこれらに限定されない。好ましくは不織布を用いる。さらに、植栽基盤8には、保水剤(架橋ポリアクリル酸ソーダゲルやPVA等)を含めても良い。植栽基盤8に植え付けられたまたは着生された植物7は当該植栽基盤8上で自生する。
【0027】
植栽基盤8に植えつけられるかまたは着生される植物7としては、植栽部2において生育し自生し得る植物であれば特に限定されず、例えば、芝、ツル性木本、リュウノヒゲ、ヤブラン、セダム類、蘚類、苔類、ツノゴケ類等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは蘚類、苔類、および/またはツノゴケ類を用いる。
【0028】
蘚類、苔類、ツノゴケ類は、肥料を混入した水(液肥)を与えて日光を当てるだけで生育可能であること、過剰に伸びたりしないために必要最小限のメンテナンスで済むこと、および乾燥条件に強いこと等の有利点を有する。
【0029】
蘚類としては、ミズゴケ類(ミズゴケ亜綱)、クロゴケ類(クロゴケ亜綱)、ナンジャモンジャゴケ類(ナンジャモンジャゴケ亜綱)およびマゴケ類(マゴケ亜綱)等が利用できる。
【0030】
苔類としては、ゼニゴケ類(ゼニゴケ亜綱)およびウロコゴケ類(ウロコゴケ亜綱)等が利用できる。
ツノゴケ類としては、ツノゴケ亜綱等を利用できる。
【0031】
好ましくは、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)、ハイゴケ(Hypnum plumaeforme)、ウマスギゴケ(Polytrichum commune Hedw.)、スギゴケ(Polytrichum juniperinum Willd. ex Hedw.)、ヤマトフデゴケ(Campylopus japonicus Broth.)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)、ヒノキゴケ(Pyrrhobryum dozyanum)、ホソバオキナゴケ(Leucobryum juniperoideum)、カモジゴケ(Dicranum scoparium)、ミノゴケ(Macromitrium japonicum Dozy et Molk.)、ナガバチヂレゴケ(Ptychomitrium linearifolium Reimers et Sakurai)、シナチヂレゴケ(Ptychomitrium gardneri)を利用できる。
【0032】
特に好ましくは、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)を利用する。エゾスナゴケは渇水などを含む環境変化に特に強いために、様々な環境(例えば、道路や線路脇・高層ビル群の谷間など風圧が強い場所等)において生育可能である。故に、エゾスナゴケを羽根板の植栽部に備えることによって、緑化パネル構造物の設置適用範囲を広げることができる。
【0033】
植栽部2は、羽根板3の厚さ方向に直行する少なくとも一面、好ましくは上側の面の全体に設けられていても良いし、当該面の一部に設けられていても良い。また植栽部2の形状は、羽根板3の厚さ方向に直行する面の形状および/または本発明の緑化パネル構造物の使用目的に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではなく、例えば、丸、楕円、三角、正方形、長方形、ひし形等、いかなる形状であっても良い。また、植栽部2は、羽根板3と共に連結部材4により貫通されていても良い。
【0034】
本発明の緑化パネル構造物1は、含まれる羽根板3の全てが植栽部2を有していなくても良い。例えば、羽根板3には植栽部2に代えて、着色パネル(例えば、緑色パネル)、看板、掲示板、照明器具等、本発明の緑化パネル構造物1の使用目的に応じて適当なものを含めることができる。図4は、植栽部2に代えて、着色パネル9を有する羽根板3を一部に有する緑化パネル構造物1を示す(図4(A))。着色パネル9を有する羽根板3が含まれることによって、緑化パネル構造物1の意匠性を高めることができる。また、複数の緑化パネル構造物1を並列し、着色パネル9を有する羽根板3の位置を適宜調整することによって、着色パネル9を有する羽根板3および/または植栽部2を有する羽根板3によって文字、図形などを構成することができる(図4(B))。
【0035】
本発明の緑化パネル構造物1は、羽根板3上の植栽部2への灌水を効率的に行うことができる。
【0036】
図5に示すとおり、最も単純には本発明の緑化パネル構造物1は、傾斜した羽根板3の上面の最下端部に少なくとも1つの通水路10を備える。通水路10の個数は、羽根板3および植栽部2の形状および大きさに応じて適宜決定することができる。
【0037】
羽根板3の上方より植栽部2を有する羽根板3の上面に流下した水(好ましくは液肥)11は、羽根板3上面の傾斜面に沿って流れ、この際に植栽部2に灌水しながら羽根板3の最下端部またはその近傍に向かって流れる。最下端部またはその近傍に到達した水11は、下段に配置された別の羽根板3の最上端部またはその近傍に通水路10を通って流下する。
【0038】
「最上端部」とは、連結部材4に傾斜して配置された羽根板3の植栽部2を有する上面において鉛直方向に最も高い位置を指す。「最上端部」は、羽根板の植栽部2を有する上面上にある点であっても良いし、羽根板の植栽部2を有する上面の一辺であっても良い。一方、「最下端部」とは連結部材4に傾斜して配置された羽根板3の植栽部2を有する上面において鉛直方向に最も低い位置を指す。「最下端部」は、羽根板の植栽部2を有する上面上にある点であっても良いし、羽根板の植栽部2を有する上面の一辺であっても良い。
【0039】
通水路10は下段に配置された別の羽根板の最上端部またはその近傍に直接接していても良いし(図6)、離れていても良い(図5)。
【0040】
通水路10は、通水可能であればどのような形状であっても良く、最も単純には羽根板3の最下端部またはその近傍に直接固定された中実のスティック状、プレート状の通水路10が挙げられる。これらの通水路10は、水の表面張力を利用して上段の羽根板3の最下端部またはその近傍の水を、下段に配置された別の羽根板の最上端部またはその近傍に通水する。
【0041】
別の実施形態において通水路10は、パイプ状の形状を有し羽根板3に設けられた取水口12に固定され、上段の羽根板3の最下端部またはその近傍の水が取水口12より通水路10のパイプ中を通過して、下段に配置された別の羽根板の最上端部またはその近傍に流下する(図7および図9参照)。
【0042】
取水口12の形状は、羽根板上面の水を通水路10に排水することができる形状であれば特に限定されないが、例えば、羽根板上面の最下端部またはその近傍に設けられた羽根板3を貫通する孔、羽根板上面の最下端部またはその近傍に設置され羽根板上面に沿って流れた水を受けるための樋13を貫通して設けられた孔であっても良い。図7は、樋13を備える羽根板3の断面図を示す。羽根板3の上面を流れた水11は羽根板3の最下端部またはその近傍に設けられた樋13によって受け止められ、取水口12を介して通水路10へ排水される。
【0043】
羽根板3を貫通して設けられた、または樋13を貫通して設けられた取水口12は、下段に配置された羽根板上面の最上端部またはその近傍に向かって貫通していても、鉛直方向に貫通していても良い。
【0044】
通水路10は、通水可能であればどのような材料で構成されていても良く、例えば、毛細管現象により水を吸収し保持できる浸水材(紐等)であっても良いし、金属、樹脂等で構成されていても良い。
【0045】
本発明の緑化パネル構造物1は、含まれる羽根板3の傾斜角度および向き、羽根板3の形状、ならびに/あるいは取水口および通水路の配置をそれぞれ調整することによって、羽根板3上の植栽部2への灌水を効率的に行うことができる。
【0046】
植栽部への灌水の効率は、羽根板上面を移動する水の距離が最大となるように羽根板上面の形状、羽根板の傾斜の角度および向き、ならびに取水口および/または通水路の位置を設定することによって向上させることができる。すなわち、上段の羽根板より流下した水を受ける位置(最上端部またはその近傍)と、取水口および/または通水路の位置(最下端部またはその近傍)が最も離れるように、例えば植栽部が四角形であればその対角上に配置することによって、植栽部への灌水を効率的に行うことができる(図8および図9参照)。
【0047】
図8に示すように、各羽根板の傾斜の角度および向き、ならびに取水口および/または通水路の位置を設定する。すなわち、羽根板3が、水を受ける位置が最上端部またはその近傍となり、その対角に配置される通水路10が最下端部またはその近傍となるように連結部材4に固定される。上方より当該羽根板3の最上端部またはその近傍に流下した水11は、羽根板3の傾斜面に沿って対角の存在する最下端部またはその近傍に配置された通水路10に向かって流れ、通水路10より下段の羽根板3の最上端部またはその近傍に流下する。
【0048】
また、図9に示すように、植栽部2を有する羽根板3上面は、最上端部の対角の位置に底部を有する凹面を有していても良い。「底部」とは凹面において鉛直方向に最も低い位置(点)を指す。凹面の深さは、最上端部よりその底部に向かって水を流すことができれば特に限定されない。ここで「凹面の深さ」とは、最上端部と底部との高低差を意味する。底部には通水路10および/または取水口12が配置される。羽根板3上面が当該形状を有することによって、水11を、最上端部またはその近傍より植栽部2へ効率的に灌水を行いながら通水路10および/または取水口12に向かって流すことができる。凹面において最上端部またはその近傍より底部に流れた水は、通水路10および/または取水口12に沿って下段の羽根板3の最上端部またはその近傍に流下する。
【0049】
さらに、同様に羽根板の傾斜の角度および向き、ならびに通水路10および/または取水口12の位置を調整することによって、図10に示すように、並列に配置された複数の緑化パネル構造物の複数の羽根板3上の植栽部2に対して、効率的に灌水を行うことができる。図10に示される実施形態は、複数の緑化パネル構造物のなかの最上段に位置する羽根板の最上端部またはその近傍1箇所に注水された水11が、羽根板3の傾斜および向きならびに通水路10および/または取水口12の配置によって、複数の羽根板3の植栽部2に流れることを示す。
【0050】
別の実施形態において、本発明の緑化パネル構造物は、羽根板が、連結部材の軸方向に対して上向きに凹面または凸面を有し、凹面を有する羽根板と凸面を有する羽根板が連結部材の軸方向の上下に交互に配置され、連結部材を介して連結された構造を有する。最上段および/または最下段の羽根板を、凹面を有する羽根板とするか、または凸面を有する羽根板とするかは特に限定されない。
【0051】
凹面の上方より流下した水は、凹面の縁部より植栽部を通りその最下端部に向かって羽根板上面上を流れ、最下端部より、下段に配置された凸面の最上端部またはその近傍に向かって流下され、当該最上端部より縁部に向かって植栽部を通り羽根板上を流れ、下段に配置された凹面の縁部に向かって流下される。
【0052】
凹面の深さは、縁部よりその最下端部に向かって水を流すことができれば特に限定されない。ここで「凹面の深さ」とは、上に定義したとおりである。
【0053】
また、凸面の高さは、最上端部よりその縁部に向かって水を流すことができれば特に限定されない。ここで「凸面の高さ」とは、凸面の最上端部と縁部との高低差を意味する。
【0054】
凹面において縁部またはその近傍より最下端部またはその近傍に流れた水は、凹面の最下端部またはその近傍に設けられた少なくとも1つの上記通水路および/または取水口に沿って凸面の最上端またはその近傍に向かって流下させても良い。
【0055】
また凸面において最上端部またはその近傍より縁部(最下端部またはその近傍)に流れた水は、凸面の縁部(最下端部またはその近傍)に設けられた少なくとも1つの上記通水路および/または取水口に沿って凹面の縁部(最上端部)またはその近傍に向かって流下させても良い。
【0056】
連結部材が、凹面の最下端部またはその近傍を貫通し、かつ凸面の最上端部またはその近傍を貫通する場合、当該連結部材を通水路として用いても良い。この場合連結部材は、中空の形状を有し、凹面の最下端部またはその近傍の位置に流れた水を連結部材内へ導くための少なくとも1つの取水口と、凸面の最上端部またはその近傍の位置に連結部材内を通過した水を凸面の最上端部またはその近傍に排出するための排水口を備える。
【0057】
凹面を有する羽根板の幅は、上段に配置された凸面を有する羽根板の縁部より流下する水を効率的に受けることができるように調整することができる。すなわち、凹面を有する羽根板の縁部が、上段に配置された凸面を有する羽根板の縁部より外側に配置されていることが好ましい。
【0058】
図11に示されるように、凹面には、植栽部2を有する羽根板3の上面が少なくとも1つの谷折り面14を有する場合を含む。同じく図11に示されるように、凸面には、植栽部2を有する羽根板3の上面が少なくとも1つの山折り面15を有する場合を含む。さらに、谷折り面14および山折り面15には、谷折り面の谷線16または山折り面の稜線17を中心に湾曲した形状も含む。谷折り面の谷線16および山折り面の稜線17は、羽根板3の中心線でなくても良く、また羽根板3の重心を通過していなくても良い。図11に示されるように、羽根板上の凹面に流下した水11は縁部またはその近傍より谷折り面14に沿って植栽部2を通り、凹面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの取水口12より通水路10を通って、下段に配置された凸面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下させることができる。凸面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下した水11は山折り面15に沿って、植栽部2を通り縁部向かって流れ、凸面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの通水路10より、下に配置された凹面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下させることができる。
【0059】
図12に示されるように、凹面には、植栽部2を有する羽根板3の上面が少なくとも1つの底部18を有する場合を含む。同じく図12に示されるように、凸面には、植栽部2を有する羽根板の上面が少なくとも1つの頂部19を有する場合を含む。ここで「底部」とは上に定義したとおりである。一方、「頂部」とは羽根板3の上面において鉛直方向に最も高い位置(点)を指す。底部18および頂部19は、羽根板3の重心上になくても良いし、また羽根板3の中心線上になくても良い。この場合に、凸面および凹面の形状は錐形であっても、半球状であっても良い。図12に示されるように、羽根板上の凹面に流下した水11は縁部より植栽部2を通り底部18に向かって流れ、凹面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの通水路10より、下に配置された凸面を有する羽根板の頂部19またはその近傍に流下させることができる。凸面を有する羽根板の頂部19またはその近傍に流下した水11は植栽部2を通り縁部に向かって流れ、凸面の最下端部またはその近傍に設置された少なくとも1つの通水路10より、下に配置された凹面を有する羽根板の最上端部またはその近傍に流下させることができる。
【0060】
本発明の緑化パネル構造物は、耐火性を有する。本発明の緑化パネル構造物において、羽根板を連結材を介して上下に隙間をあけて配置したことにより、たとえ一の羽根板が燃焼したとしても、直ちに他の羽根板への燃え移りを防ぐことができる。
【0061】
さらに本発明の緑化パネル構造物は、構成部材である羽根板、連結部材、通水路等の原料に難燃剤を含めるか、または当該羽根板、連結部材、通水路等の一部または全体を難燃剤で被覆することができる。これにより当該緑化パネル構造物に耐火性を付与することができる。利用し得る難燃剤としては、特に限定されることなく当該分野で公知の一般的な難燃剤を利用することができ、例えば以下のものが挙げられる:
有機系難燃剤(臭素化合物であるペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン等、リン化合物である芳香族のリン酸エステル、赤リン、ハロゲンを含むリン酸エステル等、塩素化合物である塩素化パラフィン等);
無機系難燃剤(アンチモン化合物である臭素化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等、金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等);ならびに
その他(ポリホウ酸ナトリウム等の不燃剤)。
【0062】
上記難燃剤は、例えば、散布(スプレー等)、塗布(機械コーティング、はけ塗り)等の一般的な手法を用いて羽根板、連結部材、通水路等の一部または全体を被膜することができる。難燃剤により被膜する範囲は特に限定されない。例えば、図13(a)に示すように、羽根板3の上面および/または下面(好ましくは下面)に難燃剤20を格子状に塗布する。難燃剤20を格子状に塗布することによって、羽根板表面を区分化でき、例えば一区分が燃焼しても他の区分への延焼を効率的に防ぐことができる。また、図13(b)に示すように、羽根板3を挟んで連結部材4の上部および下部に難燃剤20を塗布する。このように難燃剤20を連結部材4に塗布することによって、例えば一枚の羽根板が燃焼しても、その上部または下部の他の羽根板への連結部材に沿った延焼を効率的に防ぐことができる。さらに、図13(c)に示すように、羽根板3の下面および連結部材4の羽根板3の下面直下部に難燃剤20を塗布する。このように難燃剤20を羽根板3および連結部材4に塗布することによって、例えば一枚の羽根板上で燃焼が生じても、上部羽根板3への延焼を効率的に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の緑化パネル構造物は、構造が単純であり設置が容易であること、植栽部への灌水が効率的に行えること、風圧や火災に強いこと、さらに意匠性が高いことから、様々な建築物または建築物壁面等の建築資材として利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1緑化パネル構造物
2植栽部
3羽根板
4連結部材
5支持土台
6羽根板貫通孔
7植物
8植栽基盤
9着色パネル
10通水路
11水
12取水口
13樋
14谷折り面
15山折り面
16谷折り面の谷線
17山折り面の稜線
18底部
19頂部
20難燃剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根板、および
該羽根板を複数配置し連結するための連結部材、
を備えた緑化パネル構造物であって、該羽根板が該羽根板の厚さ方向に直行する少なくとも一面側に植物が植栽された植栽部を備え、かつ該羽根板を貫通する該連結部材を介して上下に隙間をあけて連結されている、上記緑化パネル構造物。
【請求項2】
羽根板が、連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置され該連結部材を介して連結されている、請求項1記載の緑化パネル構造物。
【請求項3】
羽根板が、取水口および/または通水路を備え、該取水口および/または通水路を通って、該連結部材を介して連結されている上段の羽根板から下段の羽根板へと水が流下する、請求項1または2記載の緑化パネル構造物。
【請求項4】
羽根板が、連結部材の軸方向に対して上向きに凹面または凸面を有し、凹面を有する羽根板と凸面を有する羽根板が連結部材の軸方向の上下に交互に配置され該連結部材を介して連結されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の緑化パネル構造物。
【請求項5】
羽根板および/または連結部材の一部または全体が、難燃剤を含むか、または難燃材により被膜されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の緑化パネル構造物。
【請求項6】
植物が蘚苔類である、請求項1〜5のいずれか1項記載の緑化パネル構造物。
【請求項7】
植物が、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)である、請求項6記載の緑化パネル構造物。
【請求項1】
羽根板、および
該羽根板を複数配置し連結するための連結部材、
を備えた緑化パネル構造物であって、該羽根板が該羽根板の厚さ方向に直行する少なくとも一面側に植物が植栽された植栽部を備え、かつ該羽根板を貫通する該連結部材を介して上下に隙間をあけて連結されている、上記緑化パネル構造物。
【請求項2】
羽根板が、連結部材の軸方向に対して一定の角度で傾斜して配置され該連結部材を介して連結されている、請求項1記載の緑化パネル構造物。
【請求項3】
羽根板が、取水口および/または通水路を備え、該取水口および/または通水路を通って、該連結部材を介して連結されている上段の羽根板から下段の羽根板へと水が流下する、請求項1または2記載の緑化パネル構造物。
【請求項4】
羽根板が、連結部材の軸方向に対して上向きに凹面または凸面を有し、凹面を有する羽根板と凸面を有する羽根板が連結部材の軸方向の上下に交互に配置され該連結部材を介して連結されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の緑化パネル構造物。
【請求項5】
羽根板および/または連結部材の一部または全体が、難燃剤を含むか、または難燃材により被膜されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の緑化パネル構造物。
【請求項6】
植物が蘚苔類である、請求項1〜5のいずれか1項記載の緑化パネル構造物。
【請求項7】
植物が、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)である、請求項6記載の緑化パネル構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−4660(P2011−4660A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151285(P2009−151285)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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