説明

羽根駆動装置及び光学機器

【課題】小型化された羽根駆動装置及び光学機器を提供することを課題とする。
【解決手段】羽根駆動装置1は、光路開口51を有した基板50と、協働で光路開口51を通過する光量を所定の光量に画定する羽根10、20とを備えている。羽根10は、開口15を有し、羽根20は、開口15と協働で光量を画定する切欠部21と、開口15と協働で光量を画定する切欠部23とを有している。切欠部21と開口15とで光量を画定する際に、切欠部23は、羽根10に重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の羽根によって、基板に形成された光路開口を通過する通過光量を調整する装置が知られている。このような装置は、主に光学機器に採用される(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−296637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置では、通過光量を絞る際には、2枚の羽根が光路開口を挟むように位置するものがある。2枚の羽根が光路開口を挟むように位置すると、互いに重なる部分の面積は小さいものとなる。複数の羽根の互いに重なる部分の面積が小さいと、羽根の装置全体に占めるスペースが大きくなる。このため、装置全体が大型化する恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、小型化された羽根駆動装置及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、光路開口を有した基板と、協働で前記光路開口を通過する光量を所定の光量に画定する第1、第2羽根とを備え、前記第1羽根は、第1開口を有し、前記第2羽根は、前記第1開口と協働で光量を画定する前記第1切欠部と、前記第1開口と協働で光量を画定する第2切欠部とを有し、前記第1切欠部と前記第1開口とで光量を画定する際に、前記第2切欠部は、前記第1羽根に重なっている、羽根駆動装置によって達成できる。
【0007】
これにより、光量を画定する際に、第1、第2羽根が互いに重なる部分の面積を大きくすることができる。よって、通過光量を画定する際において装置全体に占める第1、第2羽根のスペースを小さくすることができる。
【0008】
また、上記の羽根駆動装置を備えた光学機器も小型化される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化された羽根駆動装置及び光学機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、光学機器に採用される本実施例に係る羽根駆動装置の正面図である。羽根駆動装置1は、光学機器に搭載された撮像素子(不図示)への光量を調整する絞り装置として機能する。羽根駆動装置1は、羽根10、20、基板50、ステップモータ90を含む。羽根10は第1羽根に相当し、羽根20は、第2羽根に相当する。
【0011】
基板50の中央部には、被写体側からの光量が通過する光路開口51が形成されている。羽根10、20は、協働で光路開口51を通過する通過光量を調整する。詳細には、羽根10、20は、光路開口51を通過する通過光量を最大にする全開状態、通過光量を最小に絞る小絞り状態、又は通過光量を最大未満であって最小より大きくする中絞り状態に画定可能である。
【0012】
羽根10、20は、基板50の支軸58により、揺動可能に支持されている。羽根10、20は、基板50の正面側に配置されている。ステップモータ90は、基板50の背面側に配置されている。ステップモータ90は、羽根10、20の駆動源である。ステップモータ90は、不図示のロータを備えており、ロータの回転に応じて、駆動ピン99が所定の範囲を移動する。また、ロータは、所定の開動範囲の、一端、他端、及び一端と他端との間の途中位置で停止可能である。基板50には、駆動ピン99の軌跡に沿って円弧状の逃げ溝59が設けられている。駆動ピン99は、逃げ溝59内を移動する。羽根10、20には、それぞれカム溝19、29が形成されている。駆動ピン99とカム溝19、29とが係合している。駆動ピン99が移動することにより、駆動ピン99は、カム溝19、29内を移動し、これに伴い、羽根10、20が支軸58を支点として揺動する。羽根10は、羽根20と基板50とにより挟まれている。
【0013】
次に、羽根10、20について詳細に説明する。図2(A)は、羽根10の説明図であり、図2(B)は、羽根20の説明図である。羽根10は、開口15を有している。開口15は、支軸58と摺動する孔18を支点とする仮想円弧線上に延びている。また、開口15は第1開口に相当する。図2(A)において、開口15の上部には、第1縁部151、下部には第2縁部153、中央部には、第3縁部155が形成されている。第1縁部151の径は最も小さく、第3縁部155の径が最も大きい。開口15は、径の相違する3つの円形状の開口が連続したような形状である。
【0014】
羽根20は、切欠部21、23、開口25を有している。切欠部21は、第1切欠部に相当し、切欠部23は、第2切欠部に相当し、開口25は第2開口に相当する。切欠部21、23は、羽根20の互いに対向する2辺のそれぞれに形成されている。開口25は、切欠部21、23に挟まれる位置に形成されている。切欠部21、23、開口25は、孔28を支点とする仮想円弧線上に設けられている。切欠部21、23は、円弧状に形成されている。切欠部21の円弧径は切欠部23の円弧径よりも小さい。切欠部21の円弧径と、第1縁部151の円弧径とは略等しい。切欠部23の円弧径と、第2縁部153の円弧径とは略等しい。開口25の径は、切欠部21、23の円弧径よりも大きい。また、開口25の径は、第3縁部155の円弧径よりも小さい。
【0015】
まず、小絞り状態について説明する。
図1に示すように、切欠部21と第1縁部151とが協働して、光路開口51の径よりも小さい開口を画定する。これにより、光路開口51を通過する通過光量が最小となる。この小絞り状態において、切欠部21、23、開口25は羽根10と重なっている。尚、基板50には、小絞り状態での羽根10、20の位置を規定するストッパ56が設けられている。尚、小絞り状態においては、ステップモータ90のロータは開動範囲の一端で停止している。
【0016】
次に、全開状態について説明する。
小絞り状態から、駆動ピン99が移動範囲の略中央まで移動すると、羽根10、20は、反時計方向に揺動して、全開状態を画定する。図3は、全開状態での羽根駆動装置1の正面図である。図3に示すように、開口25と第3縁部155とが協働して全開状態を画定する。ここで、開口15の径は、光路開口51の径よりも大きく、かつ第3縁部155の円弧径は、開口15の径よりも大きいまた、開口25の径は、第3縁部155円弧径よりも小さいので、光路開口25の通過光量が最大となる。この全開状態において、切欠部21、23、開口25は羽根10と重なっている。尚、小絞り状態から全開状態の移行の際には、羽根10よりも羽根20の移動量が大きい。即ち、羽根10、20の双方が反時計方向に揺動するが、羽根20の移動量は羽根10よりもやや大きい。尚、全開状態においては、ステップモータ90のロータは開動範囲の途中位置で停止している。
【0017】
次に、中絞り状態について説明する。
全開状態から、駆動ピン99が更に反時計方向に移動すると、羽根10、20は、更に反時計方向に揺動して、中絞り状態を画定する。図4は、中絞り状態での羽根駆動装置1の正面図である。図4に示すように、切欠部23と第2縁部153とが協働して中絞り状態を画定する。この中絞り状態において、切欠部21、23、開口25は羽根10と重なっている。尚、全開状態から中絞り状態の移行の際にも、羽根20の移動量は羽根10よりもやや大きい。即ち、駆動ピン99の同一の移動量に対して、羽根20の移動量は羽根10よりも大きい。このように移動量が相違するように、カム溝19、29が形成されている。尚、基板50には、中絞り状態での羽根10、20の位置を規定するストッパ57が設けられている。また、中絞り状態においては、ステップモータ90のロータは開動範囲の他端で停止している。
【0018】
図1、3、4に示したように、羽根10、20は、略全ての状態で略重なっている。詳細には、小絞り状態、全開状態、中絞り状態の何れの状態においても、切欠部21、23、開口25は、羽根10と常に重なっている。
【0019】
このように、通過光量を画定する際に羽根10、20が常に重なっている。換言すれば、羽根10、20が重なっている面積が大きく、羽根10、20の大部分が常に重なっている。従って、羽根駆動装置1全体に占める羽根10、20のスペースをできる限り小さくすることができる。これにより、羽根駆動装置1の小型化が達成されている。
【0020】
また、上述したように、羽根10、20は、協働して3つの状態を画定する。このように、2枚の羽根で3つの状態を画定するためには、1枚の羽根に複数の開口や切欠を設ける必要があり、1枚の羽根の大きさが大型化する傾向にある。しかしながら、本実施例の羽根駆動装置1のように、3つの状態において羽根10、20は略重なっているので、羽根駆動装置1全体に占める羽根10、20のスペースが小さくなっている。従って、羽根駆動装置1は、小型化されており、かつ通過光量の画定パターンが多い。
【0021】
次に、羽根駆動装置の変形例について説明する。図5乃至図7は、第1変形例に係る羽根駆動装置1aの正面図であり、それぞれ、小絞り状態、全開状態、中絞り状態を示している。
【0022】
図5乃至図7に示すように、羽根20aの開口25を覆うようにNDフィルタ26aが貼り付けられている。図6に示すように、全開状態において、NDフィルタ26aを介した光が光路開口51を通過する。羽根20aは大型化されているので、NDフィルタ26aと羽根20aとの接着面積を大きくとることができる。これにより、NDフィルタ26aが剥がれることが防止される。また、NDフィルタ26aは羽根20aの切欠部21又は23に貼り付けられていても同様に、NDフィルタ26aと羽根20aとの接着面積を大きくとることができ、NDフィルタ26aが剥がれることを防止することができる。
【0023】
次に、第2変形例に係る羽根駆動装置1bについて説明する。図8乃至図10は、第2変形例に係る羽根駆動装置1bの正面図であり、それぞれ、小絞り状態、全開状態、中絞り状態を示している。
【0024】
図8乃至図10に示すように、羽根20bには、切欠部23、開口25を覆うように単一のNDフィルタ26bが貼り付けられている。これにより、図9、図10に示すように、全開状態、中絞り状態において、NDフィルタ26bを介した光が光路開口51を通過する。
【0025】
開口25を覆うNDフィルタと、切欠部23を覆うNDフィルタを別々に貼り付ける場合と比較し、一枚のNDフィルタ26bを貼り付ければよいので、作業が容易となる。また、羽根20bとNDフィルタ26bとの接着面積を大きくとることができ、NDフィルタ26bが剥がれることが防止される。
【0026】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0027】
本発明において、羽根20には、開口25が設けられていなくてもよい。すなわち、小絞り状態、全閉状態、中絞り状態を形成可能な羽根駆動装置及び光学機器であってもよい。
また、本発明の第2変形例において、切欠部21と開口25とを覆う単一のNDフィルタを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本実施例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【図2】図2(A)(B)は、羽根の説明図である。
【図3】図3は、全開状態での羽根駆動装置の正面図である。
【図4】図4は、中絞り状態での羽根駆動装置の正面図である。
【図5】図5は、小絞り状態での第1変形例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【図6】図6は、全開状態での第1変形例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【図7】図7は、中絞り状態での第1変形例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【図8】図8は、小絞り状態での第2変形例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【図9】図9は、全開状態での第2変形例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【図10】図10は、中絞り状態での第1変形例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1、1a、1b 羽根駆動装置
10、20、20a、20b 羽根(第1羽根、第2羽根)
15 開口(第1開口)
21、23 切欠部(第1切欠部、第2切欠部)
25 開口(第2開口)
26a、26b NDフィルタ
50 基板
90 ステップモータ
151 第1縁部
153 第2縁部
155 第3縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を有した基板と、
協働で前記光路開口を通過する光量を所定の光量に画定する第1、第2羽根とを備え、
前記第1羽根は、第1開口を有し、
前記第2羽根は、前記第1開口と協働で光量を画定する第1切欠部と、前記第1開口と協働で光量を画定する第2切欠部とを有し、
前記第1切欠部と前記第1開口とで光量を画定する際に、前記第2切欠部は、前記第1羽根に重なっている、羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第2切欠部と前記第1開口とで光量を画定する際に、前記第1切欠部は、前記第1羽根に重なっている、請求項1の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第1、第2切欠部は、前記第2羽根の互いに対向する2辺のそれぞれに形成されている、請求項1又は2の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第2羽根は、前記第1開口と協働で光量を画定する第2開口を有している、請求項1乃至3の何れかの羽根駆動装置。
【請求項5】
前記第1、第2開口とで光量を画定する際に、前記第1、第2切欠部は、前記第1羽根に重なっている、請求項4の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記第2開口は、前記第1、第2切欠部の間にある、請求項4又は5の羽根駆動装置。
【請求項7】
前記第1、第2羽根は、前記光路開口を全開状態及び絞り状態に画定する、請求項1乃至6の何れかの羽根駆動装置。
【請求項8】
前記第2羽根は、NDフィルタを備えている、請求項1乃至7の何れかの羽根駆動装置。
【請求項9】
前記NDフィルタは、前記第2開口を覆う、請求項4乃至6の何れかの羽根駆動装置。
【請求項10】
前記NDフィルタは、単一の部材であって、前記第1及び第2切欠部の少なくとも一方と、前記第2開口部とを覆う、請求項4乃至6の何れかの羽根駆動装置。
【請求項11】
前記第1、第2羽根は、同一方向に移動する、請求項1乃至10の何れかの羽根駆動装置。
【請求項12】
前記第1、第2羽根は、所定の位置を支点として揺動する、請求項1乃至12の何れかの羽根駆動装置。
【請求項13】
前記第1開口は、前記第1切欠部と協働で光量を画定する第1縁部、前記第2切欠部と協働で光量を画定する第2縁部、前記第2開口と協働で光量を画定する第3縁部を含む、請求項4乃至6の何れかの羽根駆動装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れかに記載の羽根駆動装置を備えた光学機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−96871(P2010−96871A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265792(P2008−265792)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】