説明

羽毛分離選別方法及び装置

【課題】羽毛を、撹拌し風送手段に乗せ、羽毛の種類に応じてダウン,スモール・ラージフェザー,玉ダウン等の複数種に一度の処理で選別分離することを可能とする。
【解決手段】羽毛吹出口を備えた第1チャンバー1に接し、該チャンバー1から次第に距離を置いて複数のチャンバー2,3,…を、羽毛送風路8で連通させて設け、前記第1チャンバー1内に吹き出した羽毛を攪拌し、第2チャンバー2以下の隣接する各チャンバー2,3,…に羽毛送風路8により風送し、羽毛の自由落下地点の違いにより、羽毛を各チャンバー2,3,…に分離選別する方法において、まず、第1,第2チャンバー1,2との間の羽毛送風路8に設けたシャッター14を密閉した状態で、羽毛を第1チャンバー1内おいて攪拌分離させ、次いで前記のシャッター14を開き、第1チャンバー1上部に滞留する羽毛を第2チャンバー2方向に吹き出させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具等の詰物,衣料等の中綿として使用される羽毛の分離方法及び分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛は詰物或いは中綿として寝具,被服等に用いられているが、羽毛製品はダウン,スモールフェザー,ラージフェザー等に分けられ、これらを混ぜて使われているのが通常である。
フェザーとは表面から裏面に向かって少しわん曲した羽軸をもち、その両側に柔らかい羽枝があり、さらにその左右に小羽枝がついている。ダウンは羽軸をもたない羽毛で、小さな元羽軸とその先端から派生した2本以上の羽枝がタンポポのわた毛のような形状をしたボール形状の水鳥羽毛で、幹羽軸が明瞭でないものである。ダウンは羽枝にある棘(節)のために、ダウンボールとダウンボールとはくっつき難く(相互排除性という)、極めて嵩高性に富んでいる。
一方、フェザーはわん曲した羽軸をもっているので、板ばねのような反発機能を有している。したがってダウンの中にフェザーを混ぜることで詰め物或いは中綿として、圧縮したときの反発力を有することになる。ふとんの場合、側地袋の中に詰めわたとして、ダウンとフェザーを混ぜて使われており、ダウンを50%以上混ぜたものが羽毛ふとん、フェザーを50%以上混ぜたものを羽根ふとんと定義されている。
寝具,クッション等として長期間使用した場合羽枝が損傷し、或いは切損し、或いはダウン同志が絡まり玉ダウンを構成したりしているが、ダウンボールに大きな力を加えると、ダウンボールの羽枝が他のダウンボールの羽枝の中に突き刺さり、羽枝にある棘と棘が引っかかり、嵩が回復し難くなり、嵩高性を減ずることになる。
毎日、ふとんの着用を繰り返す、ということは、ふとんに圧力を繰り返し加えていくと、ダウンボールとダウンボールとがくっつき、又はダウンボール数個が団子状に集合した塊となり、だんだん大きな塊となり、重くなり嵩高性も低い玉ダウンができることになる。また、ダウンボールの羽枝は頑強なものでもなく、細く繊細であり、圧力を繰り返し加えるうちに、棘と棘の引っかかりや、ダウンボールとダウンボールの摩擦などにより先端部分が破損脱落し、1〜2mm程度の短いファイバーが生じる。ファイバーに嵩性はほとんどない。それを羽毛の種類ごとに分離選別し、更には塵埃を取り除かなければならない。その装置として処理すべき羽毛を浮遊させ分離する浮遊室を複数併設した装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記浮遊分離室は、塔状体をなし、その下部にファンを有し、ファンに向けて処理すべき羽毛を供給してファンの回転により塔状体内に羽毛を上昇させるが、このとき軽い羽毛は塔上部まで上昇し、重い羽毛は下位に溜まっている。上記塔状体は、複数設けられ、各塔状体ごとに羽毛の選別は複数回繰り返されることになる。
そして、分離され各塔状体下部に集まった羽毛は、それぞれ収集ブロアーにより収集される。
この分離収集装置は、複数の塔状体がそれぞれ羽毛を分離選別しているので、分離しようとする集類の数に応じた数の塔状体が必要で、1つの塔状体は1度の操作で2種の羽毛を選別するのみであって、1度の操作で複数種への選別を行うことは出来なかった。
【特許文献1】特開昭62−137088号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みて新たな羽毛或いは使用した羽毛を、集合し、撹拌し、風送手段を採用するこで、羽毛の種類に応じてダウン,スモールフェザー,玉ダウン,ラージフェザー等の複数種に一度の処理で羽毛を痛めることなく選別分離することを可能とすることを目的としている。
本発明にあっては、上記の如く、羽毛を選別する前に、集合した羽毛から創傷した羽毛ファイバーその他塵埃等を分離除去することも可能としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の選別方法の発明にあっては、羽毛吹出口を備えた第1チャンバーに接し、第1チャンバーから次第に距離を有するよう隔壁により仕切られ列設した複数のチャンバーを、隔壁上部において互いに連通させ、該連通部を羽毛送風路とし、第1,第2チャンバー間の羽毛送風路にはシャッターを設けてなる一つの筐体の、前記第1チャンバー内に吹き出した羽毛を攪拌し、第2チャンバー以下の隣接する各チャンバーに羽毛送風路により風送し、羽毛の自由落下地点の違いにより、羽毛を各チャンバーに分離選別する方法において、まず、第1チャンバーと第2チャンバーとの間の隔壁に設けたシャッターを密閉した状態において羽毛を第1チャンバー内において攪拌させ、次いで第1,第2チャンバー間のシャッターを開き、第1チャンバー上部に滞留する羽毛を第2チャンバー方向に吹き出させ、第2チャンバー以下の複数のチャンバーのそれぞれに羽毛を分離堆積させるようにした。
請求項2記載の選別方法の発明にあっては、請求項1記載の分離選別方法において、第1,第2チャンバー間に設けた、羽毛送風路を遮断するシャッターを、適宜閉鎖し或は開口することにより、羽毛を、第1チャンバー内において撹拌し或いは第1チャンバーから第2チャンバーへ風送するようにした。
請求項3記載の分離選別装置の発明にあっては、請求項1記載の分離選別方法において、第1チャンバーを密閉状態にして羽毛を撹拌分離する際、第1チャンバー下部に設けた篩により損傷した羽毛ファイバー塵埃を分離するようにした。
請求項4記載の分離選別装置の発明にあっては、羽毛吹出口を備えた第1チャンバーに接し、第1チャンバーから次第に距離を有するよう隔壁により仕切られた複数のチャンバーを列設し、前記複数チャンバーの隔壁上部に隣接するチャンバーを互いに連通させて羽毛送風路を設けてなる一つの筐体の、第1,第2チャンバー間の隔壁にのみ前記送風路を適宜遮断開放可能としたシャッターを設け、各チャンバー下部には、各チャンバー内の処理羽毛をチャンバー外に取り外す排出手段を設けるようにした。
請求項5記載の発明にあっては、請求項4記載の発明において、第1チャンバー内下部に篩を設け、損傷した羽毛ファイバー塵埃を第1チャンバー下部に篩分けするようにした。
請求項6記載の発明にあっては、請求項4記載の発明において、羽毛送風路に向け空気を吹き出すことの可能な補助送風口を設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、羽毛吹出口を備えた第1チャンバーに接し、第1チャンバーから次第に距離を有するよう複数のチャンバーを上部において羽毛送風路を構成して連通させて設けてなる一つの筐体において、前記第1チャンバー内の羽毛吹出口から吹き出した羽毛を、第1チャンバーから第2チャンバー以下の隣接する各チャンバーにその上部から自由落下させているため、第1チャンバーからのただ一回の第2チャンバー以下のチャンバーへの吹き出しによって羽毛を複数種に分離集積することが出来、従来の手法の如き、同じ操作を何回も繰り返して分離集積するのに比較して極めて能率的であり、また処理により羽毛を痛める事も少なくてすむ。
【0007】
また、第1チャンバー内に封入された羽毛は第1チャンバー内に吹き込まれたエアによって撹拌される。従って、充分に解繊された状態となってから第1チャンバーから吹き出されるための、羽毛同志の絡み合い、その他塊状化を防止でき選別が正確に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の羽毛の分離選別装置100につき次に説明する。羽毛の分離選別装置100は、図示の例では5基の複数のチャンバー1,2,3,4,5を並列した筐体6よりなり隣接するチャンバーを区切る隔壁7は筐体6の底面から上方に延びてはいるが天井部までは達せず、隔壁7の頂部と天井との間に羽毛送風路8を構成している。
【0009】
第1チャンバー1は、第1チャンバー1内に処理すべき羽毛を風送する羽毛吹出口9を有している。羽毛吹出口9は前述の如く羽毛を吹き出すと共に図示しない切換弁を切換えることで圧気のみを吹き出すことが出来る。羽毛吹出口9は第1チャンバー1の下部に開口させれば第1チャンバー1内での羽毛の撹拌に有効で、吹出気流は第1チャンバー1内において、上昇方向に流れるようにするのが好ましい。また、第1チャンバー1の上部には羽毛送風路8に向けて圧空を噴出する補助送風口16を設けている。第1チャンバーの下部には篩10を設け、篩10の下部を集塵室11とし集塵室11には集積した羽毛ファイバー塵埃等を吸引排出する吸引手段13が設けられている。
第1チャンバー1と第2チャンバー2との間に位置する隔壁7の上部の羽毛流路8には開閉自在のシャッター14を設けてある。第1チャンバーの篩10の上位及び
第2チャンバー以下の各チャンバー2,3,4,5の下部はそれぞれ分離集積した羽毛Fの堆積場とし、それぞれ吸引管等適宜の排出手段15が設けられている。
【0010】
次に本発明方法につき説明する。
処理すべき羽毛の適量をは図示しない貯留庫から羽毛吹出口9を経て第1チャンバー1に吹き出す。所定量の羽毛が第1チャンバー1内に収容されると羽毛の放出は中止され、エアのみ吹出口9から吹き出され、羽毛はチャンバー1内で攪拌される。このとき、第1,第2チャンバー間のシャッター14は閉じられ第1,第2チャンバー間の羽毛送風路8は閉ざされている。羽毛吹出口9の羽毛吹出方向は上方を向いており、第1チャンバー1内に吹き出された羽毛は第1チャンバー内で撹拌分離され、軽量羽毛は第1チャンバー内の上位部に滞留する。
上記羽毛の撹拌中に分離した塵埃羽毛ファイバー等12は第1チャンバー1内を落下し篩10を通過し、集塵室11内に集められる。この処理により羽毛中の再度使用することの出来ない羽毛或は塵埃等が除かれるので残りの羽毛を適宜グループに分けることになる。
【0011】
次いで、シャッター14を開くことにより前記第1チャンバー内上部に滞留する羽毛を羽毛流路8を通って吹き出させる。開かれたシャッター14を通過し、羽毛流路8を、並列しているチャンバー2,3,4,5方向に飛行した羽毛は、重量の有るもの或いは送気流の影響を受けにくい形状のものなどが順次第1チャンバー1に近い第2チャンバー2,第3チャンバー3の順にその中に落下していき、選別された羽毛はそれぞれのチャンバーの底部に堆積する。チャンバー1に近い順に羽毛を5つに分けて示すと「ラージ玉ダウン+ラージフェザー」「玉ダウン+スモールフェザー」「ダウン+スモールフェザー」「ダウン」「良質ダウン」の如くなる。上記のグループ分けはチャンバーの数により適宜変更できる。そして所要量になったときに、各チャンバー底部の排出手段15から羽毛は排出される。
尚、前記羽毛送風路8に流通空気をスムースに通過させるために端部のチャンバー5に図示しない空気排出手段を適宜設ける。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は新しい羽毛或いは使用後の羽毛の再生のために用いて、羽毛を1回の処理で能率よく複数種に空気流に乗せて分けられることが可能であるが、羽毛以外の空気流で担送できる微細なシュレッダーダストの如き材料に対しても実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明装置の概略正面図。
【符号の説明】
【0014】
1,2,3,4,5 チャンバー
6 筐体
7 隔壁
8 羽毛送風路
9 羽毛吹出口
10 篩
11 集塵室
12 塵埃
13 吸引手段
14 シャッター
15 排出手段
16 補助送風口
100 羽毛の分離選別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽毛吹出口を備えた第1チャンバーに接し、第1チャンバーから次第に距離を有するよう隔壁により仕切られ列設した複数のチャンバーを、隔壁上部において互いに連通させ、該連通部を羽毛送風路とし、第1,第2チャンバー間の羽毛送風路にはシャッターを設けてなる一つの筐体の、前記第1チャンバー内に吹き出した羽毛を攪拌し、第2チャンバー以下の隣接する各チャンバーに羽毛送風路により風送し、羽毛の自由落下地点の違いにより、羽毛を各チャンバーに分離選別する方法において、まず、第1チャンバーと第2チャンバーとの間の隔壁に設けたシャッターを密閉した状態において羽毛を第1チャンバー内において攪拌させ、次いで第1,第2チャンバー間のシャッターを開き、第1チャンバー上部に滞留する羽毛を第2チャンバー方向に吹き出させ、第2チャンバー以下の複数のチャンバーのそれぞれに羽毛を分離堆積させることを特徴とする羽毛分離選別方法。
【請求項2】
第1,第2チャンバー間に設けた、羽毛送風路を遮断するシャッターを、適宜閉鎖し或は開口することにより、羽毛を、第1チャンバー内において撹拌し或いは第1チャンバーから第2チャンバーへ風送することを特徴とする請求項1記載の羽毛分離選別方法。
【請求項3】
第1チャンバーを密閉状態にして羽毛を撹拌分離する際、第1チャンバー下部に設けた篩により損傷した羽毛ファイバー塵埃を分離することを特徴とする請求項1記載の羽毛分離選別方法。
【請求項4】
羽毛吹出口を備えた第1チャンバーに接し、第1チャンバーから次第に距離を有するよう隔壁により仕切られた複数のチャンバーを列設し、前記複数チャンバーの隔壁上部に隣接するチャンバーを互いに連通させて羽毛送風路を設けてなる一つの筐体の、第1,第2チャンバー間の隔壁にのみ前記送風路を適宜遮断開放可能としたシャッターを設け、各チャンバー下部には、各チャンバー内の処理羽毛をチャンバー外に取り外す排出手段を設けてなる羽毛分離選別装置。
【請求項5】
第1チャンバー内下部に篩を設け、損傷した羽毛ファイバー塵埃を第1チャンバー下部に篩分けすることを可能にしたことを特徴とする請求項4記載の羽毛分離選別装置。
【請求項6】
羽毛送風路に向け空気を吹き出すことの可能な補助送風口を設けたことを特徴とする請求項4記載の羽毛分離選別装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−12421(P2010−12421A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175250(P2008−175250)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000196129)西川産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】