説明

老化防止剤リザーバを有するタイヤ

タイヤであって、取り付けリムに接触するようになった2つのビードと、ビードの半径方向外方の延長部として2つのサイドウォールと、2つの軸方向端相互間に軸方向に延びるクラウン補強材を有するクラウンとを有し、クラウンの上にはトレッドが載っており、2つのサイドウォールは、クラウンに合体し、タイヤは、2つのビード内に繋留された状態でサイドウォールを通ってクラウンまで延びるカーカス補強材を更に有し、クラウンは、カーカス補強材の半径方向内側に、高い老化防止剤含有量を有するゴムコンパウンドで作られた少なくとも1つのリザーバ層を有し、少なくとも1つのリザーバ層は、クラウン補強材の各軸方向端と半径方向に重なり合っており、少なくとも1つのリザーバ層は、5phr以上であるが10phrを超えない老化防止剤含有量を有し、少なくとも1つのリザーバ層は、酸素吸収剤を更に有することを特徴とするタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化防止剤リザーバを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの寿命を制限する場合のある要因のうちの1つは、タイヤの種々のコンポーネントの内部酸化であり、特に、タイヤをインフレートさせているガスに由来する酸素によって引き起こされる内部酸化である。
【0003】
これは、本質的に不飽和状態のジエンゴム加硫物(加硫ゴム)が、天然ゴム加硫物であるにせよ合成ゴム加硫物であるにせよいずれにせよ、これらの分子鎖中に二重結合が存在しているので酸素への長期間にわたる暴露後に比較的迅速に劣化しやすいからである。これら複雑な機構は、例えば、米国特許第6,344,506号明細書及び国際公開第99/06480号パンフレットに説明されている。これらの結果として、これら二重結合の破壊及び硫黄の橋の酸化後に、加硫物の剛化及び脆化が生じ、かかる劣化は、「熱酸化」を受けることにより付随的に生じる熱の作用又は「光酸化」を受けることによる光の作用により一段と加速される。
【0004】
タイヤを不活性ガス、例えば窒素でインフレートさせることによりタイヤインフレーションガスに由来する酸素に起因した酸化を制限することが提案された。しかしながら、この解決策は、これがもたらすコストが高いということ及び窒素を任意の場所で供給することが困難であるという問題に直面している。したがって、これら欠点を考慮して、従来通りタイヤを空気でインフレートさせ、タイヤ内部に酸素吸収剤を含むゴムコンパウンド(配合ゴム)部分を提供することが提案された。国際公開第2005/097522号パンフレットは、この解決策を具体化する種々の手法を記載している。
【0005】
種々の老化防止剤の開発及び市販により酸化現象を次第に阻止することが可能になっており、かかる老化防止剤としては、特に、p‐フェニレンジアミン誘導体(PPD又はPPDA)、例えばN‐イソプロピル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(I‐PPD)又はN‐1,3‐ジメチルブチル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(6‐PPD)及びキノリン誘導体(TMQ)が挙げられ、これら誘導体は両方とも、優れた老化防止剤であると共にオゾン劣化防止剤である(これについては、例えば、米国特許出願公開第2004/0129396号明細書及び国際公開第2005/063510号パンフレットを参照されたい)。現時点において、これら劣化防止剤は、ジエンゴムコンパウンド、特にタイヤ用のコンパウンド中に体系的に用いられてその老化を遅くするようになっている。
【0006】
これら劣化防止剤の周知の欠点は、ゴムコンパウンド中におけるこれらの濃度がこれらのまさに化学的機能により経時的に自然に減少するということにある。これら劣化防止剤は又、高い劣化防止剤濃度のゾーンから低い劣化防止剤濃度のゾーンに移動する高い自然的傾向を有する。したがって、タイヤ製造業者は、比較的高価であると共に多数の劣化防止剤、特にp‐フェニレンジアミン誘導体の高い着色力のために最終製品の外観を損なう比較的多量の生成物を用いることに関心を寄せている。
【0007】
上述の欠点を軽減し、かくしてタイヤの老化に対する保護/抵抗を高めるために、特に、これらタイヤに高い劣化防止剤含有量を有するゴムコンパウンドの追加の層を組み込むことが提案され、これら追加のゴムコンパウンド層は、隣接のゾーンの劣化の度合いに従って移動によって経時的に劣化防止剤を送り出すことができる劣化防止剤リザーバとして働く。
【0008】
米国特許第7,082,976号明細書は、互いに異なる劣化防止剤含有量を有する2つの層で構成されたトレッドを提供している。半径方向内側層は、高い劣化防止剤含有量を有し、それにより、この半径方向内側層が酸素の影響をより大きく受け、従って劣化防止剤が迅速に減少する傾向のある半径方向外側層中に劣化防止剤を送り出すことができる。それにもかかわらず、この解決策は、劣化防止剤を供給するのが本質的にトレッドの半径方向外側部分であり、これに対し、タイヤの他の重要なゾーン、例えばショルダにはほんの僅かな程度までしか供給されないという欠点がある。
【0009】
国際公開第2009/029114号パンフレットは又、標的にした仕方で劣化防止剤をタイヤの少なくとも一方のショルダ中に送り出すようトレッド内に1つ又は2つ以上の劣化防止剤リザーバ及び拡散バリヤを教示している。それにもかかわらず、この解決策では、トレッドの複雑な複合構造体が必要であり、コストが高くつく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,344,506号明細書
【特許文献2】国際公開第99/06480号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/097522号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0129396号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/063510号パンフレット
【特許文献6】米国特許第7,082,976号明細書
【特許文献7】国際公開第2009/029114号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的のうちの1つは、特にクラウン補強材の軸方向端を保護するよう位置決めされた劣化防止剤リザーバを有するタイヤを提供することにあり、なお、これら軸方向端は、劈開型亀裂発生現象を開始させる上での好発部位である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、タイヤであって、
取り付けリムに接触するようになった2つのビードを有し、
ビードの半径方向外方の延長部として2つのサイドウォールを有し、
2つの軸方向端相互間に軸方向に延びるクラウン補強材を有するクラウンを有し、クラウンの上にはトレッドが載っており、2つのサイドウォールは、クラウンに合体し、
2つのビード内に繋留された状態でサイドウォールを通ってクラウンまで延びるカーカス補強材を有し、
クラウンは、カーカス補強材の半径方向内側に、高い老化防止剤含有量を有するゴムコンパウンドで作られた少なくとも1つのリザーバ層を有し、少なくとも1つのリザーバ層は、クラウン補強材の各軸方向端と半径方向に重なり合っており、
少なくとも1つのリザーバ層は、5phr以上であるが10phrを超えない老化防止剤含有量を有し、
少なくとも1つのリザーバ層は、酸素吸収剤を更に有することを特徴とするタイヤによって達成される。
【0013】
クラウン補強材の内側のリザーバ層をクラウン補強材の各軸方向端と半径方向に重なり合って配置することにより、劣化防止剤の使用を最適化することができる。第1の場所では、劣化防止剤は、クラウン補強材の軸方向端に向かって拡散するが、有用性の低いトレッドの軸方向中間部に向かっては拡散しない。リザーバ層について選択された場所によっては、リザーバ層は、劣化防止剤の高い含有量を有することができる。というのは、これら層は、タイヤの作動において機械的役割を果たしていないからである。リザーバ層をカーカス補強材の半径方向外側、例えばトレッド内又はクラウン補強材の端の周りに配置した場合、タイヤのこれらゾーンに通常用いられるゴムコンパウンドの機械的役割を果たすことができるゴムコンパウンドを得るよう劣化防止剤含有量を制限することが必要である。
【0014】
リザーバ層の劣化防止剤含有量は、10phr以下である。というのは、含有量が高いと、タイヤの隣り合う部分の劣化防止剤含有量がこれらの機械的性質を損なう程度まで増大することがあるからである。
【0015】
リザーバ層が酸素吸収剤を有している場合、リザーバ層は、酸素の移動を遅らせることができると共にその有害な影響を減少させることができる物理的バリヤと化学的バリヤの両方を構成する。
【0016】
注目されるべきこととして、本発明の実施形態のタイヤは、劣化防止剤と酸素吸収剤の相乗作用から恩恵を受け、この相乗作用は、劣化防止剤だけが用いられている場合又は酸素吸収剤だけが用いられている場合には得ることができなかった作用であり、酸素吸収剤は、拡散中の酸素を捕捉し、劣化防止剤は、拡散中の酸素を害にならないようにする。リザーバ層が酸素吸収剤しか含んでいない場合、酸素が依然として局所的な作用効果を有し、リザーバ層が劣化防止剤しか含んでいない場合、酸素が劣化防止剤に遭遇しないまま酸素がゴムコンパウンドにその有害な影響をもたらすという多大な恐れが生じる。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つのリザーバ層の老化防止剤は、主として、N‐1,3‐ジメチルブチル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(6‐PPD)、N‐イソプロピル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(I‐PPD)及びこれらコンパウンドの混合物から成る群から選択されたコンパウンドから成る。というのは、これら劣化防止剤が特に有効だからである。
【0018】
リザーバ層の幾何学的形状に関し、リザーバ層の平均半径方向厚さが0.6mmを超え、好ましくは1mm以上であることが好ましい。特に、これにより、リザーバ層の位置決めが容易になる。というのは、平均半径方向厚さが小さいと、その結果として、未硬化状態における機械的強度が低く、しかもリザーバ層の位置決めが困難になるからである。
【0019】
好ましくは、リザーバ層の最大半径方向厚さは、5mmを超えず、好ましくは3mmを超えない。これは、半径方向厚さが大きい場合、リザーバ層がタイヤの作動に対して望ましくない影響を及ぼすことが判明したからである。具体的に言えば、リザーバが追加のエネルギー散逸源となることにより望ましくない熱的作用が観察される。その結果、タイヤの材料の追加の昇温により、これらの亀裂発生速度が増大する。
【0020】
好ましくは、リザーバ層の軸方向幅は、20mm以上であり、好ましくは30mm以上である。この軸方向幅により、リザーバ層は、これと関連したクラウン補強材の軸方向端が位置するゾーンへの供給を行うようになる。というのは、かかる幅により、リザーバ層の位置決めの際の不確実さを解決することができるからである。
【0021】
有利な実施形態によれば、リザーバ層は、クラウン補強材の一方の軸方向端からクラウン補強材の他方の軸方向端まで軸方向に延びる。かくして、リザーバ層は、クラウン補強材をその幅全体にわたって保護する。
【0022】
別の有利な実施形態によれば、タイヤは、少なくとも2つのリザーバ層を有し、リザーバ層のうちの少なくとも一方は、タイヤの中間平面の各側に配置される。この実施形態では、2つの軸方向端(これらは、クラウンの中央よりも極めて大きな応力を受ける機械的移行ゾーンである)は、一層効果的に保護され、他方、リザーバ層の体積が制限され、その結果、劣化防止剤の総量及びタイヤの製造費が制限される。
【0023】
したがって、リザーバ層の各々の軸方向幅が100mmを超えず、好ましくは60mmを超えないことが特に有利である。これは、層の体積と製造のしやすさの極めて良好な妥協点となる。
【0024】
理想的には、少なくとも2つのリザーバ層の各々は、クラウン補強材の軸方向端の各側で少なくとも15mmにわたって軸方向に延びる。かくして、クラウン補強材の軸方向端は、特に効果的に保護される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】先行技術のタイヤを概略的に示す図である。
【図2】先行技術のタイヤを概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態に従って構成されたタイヤに対する比較試験のために用いられた基準タイヤの一部分の概略半径方向断面図である。
【図4】本発明の実施形態に従って構成されたタイヤに対する比較試験のために用いられた基準タイヤの一部分の概略半径方向断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態としてのタイヤの一部分の概略半径方向断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態としてのタイヤの一部分の概略半径方向断面図である。
【図7】本発明の別の実施形態としてのタイヤの一部分の概略半径方向断面図である。
【図8】本発明の別の実施形態としてのタイヤの一部分の概略半径方向断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態としてのタイヤの一部分の概略半径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当業者であれば「半径方向」という用語の幾つかの異なる使い方を区別することが必要である。第1の場合、この表現は、タイヤの半径を意味している。この意味によれば、点P1は、これが点P2よりもタイヤの回転軸線の近くに位置する場合、点P2「の内側に半径方向に」(又は点P2「の半径方向内側」)に位置すると呼ばれる。これとは逆に、点P3は、これが点P4よりもタイヤの回転軸線から遠くに位置する場合、点P4「の外側に半径方向に」(又は点P4「の半径方向外側」)に位置すると呼ばれる。「半径方向内方(又は半径方向外方)」の運動は、小さい半径(又は大きい半径)の方向の運動を意味している。半径方向距離についていう場合にも、かかる用語のこの意味が当てはまる。
【0027】
タイヤの一要素が箇所P1と「半径方向に重なり合う」と呼ばれる場合、この箇所P1を通る半径方向がタイヤのこの要素と交差し、この交差部が箇所P1とタイヤの軸線との間に位置するものと理解されるべきである。
【0028】
他方、細線又は補強材は、細線又は補強材の補強要素が周方向と80°以上90°以下の角度をなす場合に「半径方向」と呼ばれる。指摘されるべきこととして、本明細書においては、「細線」という用語は、極めて一般的な意味で理解されなければならず、細線の構成材料又は細線をゴムに強固に結合するための表面処理剤がどのようなものであれ、細線は、モノフィラメント、マルチフィラメント、ケーブル、もろより糸又はこれらと同等の集成体の形態をした細線を含む。
【0029】
最後に、「半径方向部分」又は「半径方向断面という用語は、この場合、タイヤの回転軸線を含む平面内に位置する部分又は断面を意味している。
【0030】
「軸方向」は、タイヤの回転軸線に平行な方向である。点P5は、これが点P6よりもタイヤの中間平面の近くに位置する場合、点P6「の内側に軸方向に」(又は点P6「の軸方向内側」)に位置すると呼ばれる。これとは逆に、点P7は、これが点P8よりもタイヤの中間平面から遠くに位置する場合、点P8「の外側に軸方向に」(又は点P8「の軸方向外側」)に位置すると呼ばれる。タイヤの「中間平面」は、タイヤの回転軸線に垂直であり且つ各ビードの環状補強構造体から等距離のところに位置する平面である。
【0031】
「周方向」は、タイヤの半径と軸方向の両方に対して垂直な方向である。「周方向断面」は、タイヤの回転軸線に垂直な平面に関する断面である。
【0032】
「転動面」という用語は、本明細書においては、タイヤが転動しているとき、路面に接触する可能性があるタイヤのトレッドの箇所全てを意味している。
【0033】
「配合ゴム」という表現は、少なくともエラストマー及び充填剤を含むゴムコンパウンドを意味している。
【0034】
図1は、先行技術のタイヤ10を概略的に示している。タイヤ10は、取り付けリム(図示せず)に接触するよう構成された2つのビード50及びビード50の半径方向外方の延長部をなす2つのサイドウォール40を有し、2つのサイドウォール40は、クラウンに合体し、クラウンは、トレッド30を載せたクラウン補強部材(図1では見えず)を有する。
【0035】
図2は、先行技術のタイヤ10の部分斜視図であり、タイヤの種々のコンポーネントを示している。この場合も又、タイヤ10は、取り付けリム(図示せず)に接触するよう構成された2つのビード50及びビード50の半径方向外方の延長部をなす2つのサイドウォール40を有し、2つのサイドウォール40は、クラウンに合体し、クラウンは、トレッド30を載せたクラウン補強部材(図1では見えず)を有する。クラウン補強材は、この場合、2枚のプライ80,90を有する。プライ80,90の各々は、補強細線81,91により補強されており、これら補強細線は、各プライ中において互いに平行であると共に一方のプライから他方のプライにクロス掛けされ、周方向と10°〜70°の角度をなしている。
【0036】
タイヤ10は、配合ゴムで被覆された複数本の細線61から成るカーカス補強材60を更に有している。カーカス補強材60は、タイヤ10をリム(図示せず)上の定位置に保持する周方向補強材70(この場合、ビードワイヤ)に対してビード50の各々の中で繋留されている。
【0037】
タイヤ10は、クラウン補強材の半径方向外側に配置されたたが掛け補強材100を更に有し、このたが掛け補強材は、周方向に差し向けられると共に螺旋の状態に巻かれた補強要素101で構成されている。
【0038】
タイヤ10は、チューブレスタイヤであり、このタイヤは、インフレーションガスに対して不透過性であると共にタイヤの内面を覆うゴムコンパウンドで作られた内側ライナ110を有する。
【0039】
図3及び図4は、基準タイヤ10の一部分を半径方向断面で概略的に示している。
【0040】
図5は、本発明のタイヤ10の一部分を半径方向断面図で示している。タイヤ10は、取り付けリム(図示せず)に接触するようになった2つのビード50及びビード50の半径方向外方の延長部としての2つのサイドウォール40を有し、2つのサイドウォール40は、2枚の補強プライ又は層80,90で形成されたクラウン補強材を含むクラウンに合体している。クラウン補強材は、2つの軸方向端相互間で軸方向に延び、これら軸方向端のうちの1つだけが参照符号85が付与された状態で見える。タイヤ10は、2つのビード50内に繋留されると共にサイドウォール40を通ってクラウンまで延びるカーカス補強材60を更に有している。
【0041】
クラウンは、カーカス補強材60の半径方向内側に、高い劣化防止剤含有量を有するゴムコンパウンドで作られたリザーバ層200を有する。リザーバ層は、クラウン補強材の軸方向端85と半径方向に重なり合っている。このリザーバ層200は、劣化防止剤含有量が5phr以上のゴムコンパウンドで作られている。かかるゴムコンパウンドの一例が以下に与えられている。
【0042】
図6は、本発明の実施形態としての別のタイヤ10の一部分を半径方向断面で示している。この場合、リザーバ層200は、3mmに等しい平均半径方向厚さDAV及び3.5mmに等しい最大半径方向厚さDMAXを有している。リザーバ層200の軸方向幅WAは、35mmに等しい。
【0043】
図7は、本発明の実施形態としての別のタイヤ10の一部分を半径方向断面で示している。リザーバ層200は、図6のタイヤよりも薄いが、それ以上に延びている。リザーバ層200の平均半径方向厚さDAVは、1.7mmであり、最大半径方向厚さDMAXは、2.8mmであり、軸方向幅WAは、50mmに等しい。
【0044】
図8は、図5に示されたタイヤに類似した本発明の実施形態のタイヤ10の一部分を半径方向断面で示している。タイヤ10が2つのリザーバ層201,202を有し、タイヤの中間平面120の各側にリザーバ層が1つ配置されていることが理解できる。この場合、2つのリザーバ層は、同一の軸方向幅WA=WA1=WA2=30mmを有している。リザーバ層200の各々は、クラウン補強材の対応の軸方向端85又は86の各側で15mmだけ軸方向に延びている。したがって、リザーバ層200は、クラウン補強材の軸方向端に対して軸方向に心出しされている。
【0045】
図9は、本発明の実施形態としての別のタイヤ10の一部分を半径方向断面で示している。図8に示されているタイヤのリザーバ層200とは異なり、リザーバ層200は、この場合、クラウン補強材の一方の軸方向端85から、プライ80,90により形成されたクラウン補強材の他方の軸方向端86まで軸方向に延びている。軸方向幅WAは、135mmである。
【0046】
5phr以上であり且つ10phr以下の劣化防止剤含有量を有するゴムコンパウンドの調合及び製造は、当業者にとっては特に問題とはならない。表1は、使用することができるゴムコンパウンドの組成を一覧表示している。この組成は、phr(「ゴムの100部当たりの部」)で与えられ、即ち、エラストマーの100重量部当たりの重量部で記載されている。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の注記
[1] 天然ゴム
[2] N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン
[3] AcacFeIII
N‐t‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルホンアミド
[4] N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルホンアミド
【0049】
配合ゴムは、好ましくは、少なくとも、ジエンエラストマー、補強充填剤及び架橋系を主成分としている。
【0050】
「ジエン」エラストマー(又は均等表現としてゴム)という表現は、公知のように、少なくとも一部がジエンモノマー、即ち、2つの共役又は非共役炭素−炭素2重結合を有するモノマーから得られるエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味するものと理解されたい。用いられるジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン‐スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン‐ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン‐スチレンコポリマー(SIR)、ブタジエン‐スチレン‐イソプレンコポリマー(SBIR)及びこれらエラストマーの配合物から成る群から選択される。
【0051】
好ましい実施形態では、「イソプレン」エラストマー、即ち、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、換言すると、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの配合物から成る群から選択されたジエンエラストマーが用いられる。
【0052】
イソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴム又はシス−1,4系の合成ポリイソプレンである。これら合成ポリイソプレンのうち、好ましくは、シス−1,4結合の含有率(モル%)が90%以上、より好ましくは98%以上のポリイソプレンが用いられる。他の好ましい実施形態によれば、ジエンエラストマーは、その全体又は一部が、配合物として用いられ又は例えばBR系の別のエラストマーとは一緒には用いられない別の1つのジエンエラストマー、例えばSBR(E‐SBR又はS‐SBR)エラストマーで構成されるのがよい。
【0053】
「本発明の」ゴムコンパウンド(このことは、本発明の実施形態としてのタイヤのリザーバ層を形成するために用いることができるゴムコンパウンドであることを意味している)は、5phr以上の劣化防止剤含有量を有する。
【0054】
本発明の組成物で用いられる劣化防止剤は、酸素の作用の原因となるゴム加硫物の老化を阻止するのに有効であることが知られている任意の劣化防止剤である。
【0055】
特に、以下の老化防止剤、即ち、パラ‐フェニレンジアミン(これを略してPPD又はPPDA)又は置換パラ‐フェニレンジアミンと呼ばれているものとして知られている物質、例えばN‐1,3‐ジメチルブチル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(略して6‐PPDで知られている)、N‐イソプロピル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(略してI‐PPD)、フェニルクロロヘキシル‐p‐フェニレンジアミン、N,N′‐ジ(1,4‐ジメチルペンチル)‐p‐フェニレンジアミン、N,N′‐ジアリル‐p‐フェニレンジアミン(DTPD)、ジアリル‐p‐フェニレンジアミン(DAPD)、2,4,6‐トリス‐(N‐1,4‐ジメチルフェニル‐p‐フェニレンジアミノ)‐1,3,5‐トリアジン及びかかるジアミンの混合物の誘導体が用いられるのが良い。
【0056】
また、キノリン(TMQ)誘導体、例えば1,2‐ジヒドロ‐2,2,4‐トリメチルキノリン及び6‐エトキシ‐1,2‐ジヒドロ‐2,2,4‐トリメチル‐キノリンを用いることが可能である。
【0057】
また、例えば国際公開第2007/121936号パンフレット及び同第2008/055683号パンフレットに記載されている置換ジフェニルアミン及びトリフェニルアミン、特に4,4′‐ビス(イソプロピルアミノ)トリフェニルアミン、4,4′‐ビス(1,3‐ジメチルブチルアミノ)トリフェニルアミン及び4,4′‐ビス(1,4‐ジメチルペンチルアミノ)トリフェニルアミンを用いることが可能である。
【0058】
また、例えば特に国際公開第99/02590号パンフレットに記載されているジアルキルチオジプロピオネート又は特に2,2′‐メチレン‐ビス‐4‐(C1‐C10)アルキル‐6‐(C1‐C12)アルキルフェノールの系統のフェノール系劣化防止剤を用いることが可能である。
【0059】
当然のことながら、本明細書においては、「劣化防止剤」という用語は、単一の劣化防止剤化合物と数種類の劣化防止剤化合物の混合物の両方を指す場合がある。
【0060】
好ましくは、劣化防止剤は、置換p‐フェニレンジアミン、置換ジフェニルアミン、置換トリフェニルアミン、キノリン誘導体及びかかる化合物の混合物から成る群から選択される。より好ましくは、劣化防止剤は、置換p‐フェニレンジアミン及びかかるジアミンの混合物から成る群から選択される。
【0061】
リザーバ層は、酸素吸収剤、例えば金属塩を更に含む。この金属塩は、好ましくは、周期表の第1族、第2族又は第3族の遷移金属又はランタニドから選択される。
【0062】
金属は、例えば、マンガンII又はIII、鉄II又はIII、コバルトII又はIII、銅I又はII、ロジウムII、III又はIV及びルテニウムであるのが良い。金属の酸化状態は、これが導入されるとき、必ずしも、陽イオン活性形態の状態である必要はない。金属は、好ましくは、マンガン、ニッケル又は銅であり、より好ましくはコバルトであり、更により好ましくは鉄である。金属の対イオンは、特に、クロリド、アセテート、ステアレート、パルミテート、2‐エチルヘキサノエート、ネオデカノエート又はナフテネートである。
【0063】
好ましくは、組成物中の金属化合物の量は、0.01phr〜0.3phrまでの範囲、より好ましくは0.05phr〜0.15phrまでの範囲にある。
【0064】
ゴムコンパウンドは、タイヤの製造向きのゴムマトリックス中に通常用いられる標準の添加剤、例えば、補強充填剤、例えば上述のカーボンブラック以外のカーボンブラック又は無機充填剤、例えばシリカ、無機充填剤を結合する結合剤、老化防止剤、可塑化剤、又はエキステンダ油(エキステンダ油は、性質上芳香性又は非芳香性のものであり、特に、芳香性ではない或いはほんの僅かに芳香性の油、例えば、粘度の高い又は好ましくは低いナフテン系の油又はパラフィン系の油、MES又はTDAE油、30℃よりも高いTgの可塑化樹脂)、非硬化状態のコンパウンドを処理しやすくする作用剤、粘着性樹脂、硫黄又は硫黄ドナー及び/又は過酸化物、促進剤、加硫活性剤又は遅延剤、加硫戻り防止剤、メチレン受容体及び供与体、例えばHMT(ヘキサメチレンテトラミン)又はH3M(ヘキサメトキシメチルメラミン)、補強樹脂(例えばレソルチノール又はビスマレイミド)を主成分とする架橋系、金属塩系、例えばコバルト、ニッケル又はランタニド塩系の公知の密着性促進(定着)系のうちの幾つか又は全てを更に含むのがよい。
【0065】
コンパウンドを当業者には周知である2つの連続的な準備段階を用いて、即ち、最高110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃までの高い温度での第1の熱機械加工又は混練段階(「非生産的」段階と呼ばれている)を行い、次に、代表的には110℃以下の低い温度での第2の機械的加工段階(「生産的」段階と呼ばれている)を実施することにより適当な混合機で製造し、最終段階の際に架橋系を混入する。
【0066】
一例を挙げると、非生産的段階は、数分間(例えば、2〜10分間)の単一の熱機械的ステップで実施され、その間、架橋系又は加硫系とは別に必要な成分及び他の添加物を適当な混合機、例えば標準型密閉式混合機内に導入する。次に、このようにして得られた混合物の冷却後、加硫系を低い温度(例えば30℃〜100℃)に保たれた開放式混合機、例えば開放式ロール機中に投入する。次に、成分全てを数分間(例えば、5〜15分間)混合する(生産的段階)。
【0067】
次に、このようにして得られた最終コンパウンドを例えば特徴化のためのフィルム又はシートの形態に圧延し或いは押し出し、本発明の実施形態のタイヤで使用可能な外側トレッドを形成する。
【0068】
次に、加硫(又は硬化)を公知の仕方で、一般に130℃〜200℃の温度で、好ましくは圧力下で、特に硬化温度、用いられる架橋系及び問題のコンパウンドの加硫反応速度論に応じて、例えば5分から90分までの様々であって良い十分な期間にわたり実施する。
【0069】
本発明の実施形態としてのタイヤを5phr以上の劣化防止剤含有量を有するリザーバ層を備えていない基準タイヤと比較するため、耐久性試験を実施した。タイヤをホイールに取り付けてこれらの使用圧力までインフレートさせた。次に、障害物(バー及び突起)を備えた表面を有する転動ドラム上でこれらタイヤに荷重をかけた状態でタイヤを迅速に回転させた。タイヤクラウンの相当な変形が観察されるや否や試験を停止させた。次のキロメートル距離、即ち、24646km(基準タイヤ)及び32576km(ゴムコンパウンドM(表1参照)で作られたリザーバ層を有する図6に対応したタイヤ)が得られた。本発明の実施形態に従ってリザーバ層を有するタイヤについて得られた耐久性の向上は又、試験後にタイヤショルダに目で見えるようになった亀裂の劇的減少に反映されていた。したがって、リザーバ層により、耐久性の向上を達成することができ、ただし、リザーバ層は、クラウン補強材の端のところの動作温度の著しい上昇の原因となっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(10)であって、
取り付けリムに接触するようになった2つのビード(50)を有し、
前記ビードの半径方向外方の延長部として2つのサイドウォール(40)を有し、
2つの軸方向端(85,86)相互間に軸方向に延びるクラウン補強材(80,90)を有するクラウンを有し、前記クラウンの上にはトレッド(30)が載っており、前記2つのサイドウォールは、前記クラウンに合体し、
前記2つのビード内に繋留された状態で前記サイドウォールを通って前記クラウンまで延びるカーカス補強材(60)を有し、
前記クラウンは、前記カーカス補強材の半径方向内側に、高い老化防止剤含有量を有するゴムコンパウンドで作られた少なくとも1つのリザーバ層(200)を有し、前記少なくとも1つのリザーバ層は、前記クラウン補強材の各軸方向端と半径方向に重なり合っており、
前記少なくとも1つのリザーバ層は、5phr以上であるが10phrを超えない老化防止剤含有量を有し、
前記少なくとも1つのリザーバ層は、酸素吸収剤を更に有する、タイヤ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのリザーバ層(200)の前記老化防止剤は、主として、N‐1,3‐ジメチルブチル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(6‐PPD)、N‐イソプロピル‐N′‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(I‐PPD)及びこれらコンパウンドの混合物から成る群から選択されたコンパウンドから成る、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記リザーバ層(200)の平均半径方向厚さDAVは、0.6mm以上である、請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記リザーバ層(200)の最大半径方向厚さDMAXは、5mm以下である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのリザーバ層(200)の軸方向幅WAは、20mm以上である、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリザーバ層(200)は、前記クラウン補強材の一方の軸方向端から前記クラウン補強材の他方の軸方向端まで軸方向に延びている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤは、少なくとも2つのリザーバ層を有し、前記リザーバ層(200)のうちの少なくとも一方は、前記タイヤの中間平面の各側に配置されている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記少なくとも2つのリザーバ層(200)の各々の軸方向幅WAは、60mm以下である、請求項7記載のタイヤ。
【請求項9】
前記少なくとも2つのリザーバ層(200)の各々は、前記クラウン補強材の軸方向端の各側で少なくとも15mmにわたって軸方向に延びている、請求項7又は8記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−506724(P2013−506724A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531356(P2012−531356)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064350
【国際公開番号】WO2011/039178
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】