説明

耐はんだ侵食用部材

【課題】 鉛フリーはんだに対しても優れた耐食性を発揮し、高寿命を実現する耐はんだ侵食用部材を提供する。
【解決手段】 溶融はんだとの接触面、あるいは溶融はんだとの接触面の下地層として緻密なアモルファス金属(合金)皮膜を形成する。皮膜厚みは0.01mm以上であることが好適である。また、アモルファス金属(合金)は鉄基を30〜80原子%含むことが好適であり、特に金属ガラスであることが好適である。該皮膜は高速フレーム溶射によって形成することができる。部材の溶融はんだに接触する接触面に緻密な高耐食性アモルファス皮膜を形成されているため、鉛フリーはんだを使用した場合であっても、高温における侵食が非常に少なく、寿命を大幅にアップすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明ははんだごてチップ、はんだ浴槽など、はんだ付けに使用され且つ溶融はんだと接触する部材の耐食性の改善に関するものであり、特に溶融した鉛フリーはんだに対しても優れた耐食性を有し高寿命を実現する耐はんだ侵食用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の組立て現場においては、はんだごてを電子基板のランドやワークに接触させて高温にし、はんだを溶融させて接合部に拡散させた後、こて先(チップ)を離してはんだを凝固させる方式が広く採用されている。また、加熱溶融したはんだを収容したはんだ槽の上にプリント配線基板盤を流し、溶融はんだ(通常は槽内に設置されたフィンなどにより溶融はんだの噴流波が形成されている)と基板のはんだ付け部を接触させてはんだ付けを行う、いわゆるフロー式はんだ付け法も広く行われている。
【0003】
はんだ付けに用いられるはんだは主にSn−Pb系合金が用いられてきたが、はんだ成分の初期濡れ性、広がり性等のはんだ付け性を改善するために、フラックスが配合されており、フラックスに含有される塩素等の腐食性物質によって、はんだ付け用部材が侵食されるという問題がある。
【0004】
また、最近では鉛に起因する環境汚染が大きな問題となり、Sn−Pb系の共晶はんだに代えて、Pbを含有しないSn系はんだ、いわゆる鉛フリーはんだが採用される傾向にある。EUの廃電気・電子機器規制(WEEE)にかかわる有害物質規制(RoHS)において2006年7月以降の鉛等有害物質の使用中止が最終合意されたことにより、プリント基板実装を中心とした鉛フリーはんだへの切り替えが急務となっている。
【0005】
しかし、この鉛フリーはんだは、Sn−Pb系はんだに比べさらに侵食性も高く、また融点も高く、濡れ性も劣る。鉛フリーはんだ中では銅ならびに鉄の溶解が速く、他の金属、例えば従来のSn−Pb系はんだに対して耐食性が高いとされているステンレス鋼に対しても溶解損傷が報告されている。このため、はんだ槽やはんだごてチップなど従来のはんだ付け用部材をそのまま用いることはできなかった。
【0006】
はんだごて部材であるチップには熱伝導効率を考慮して銅系材料製のチップが用いられていたが、チップ寿命を改善すべく、銅系材料製のチップ本体の表面には鉄系金属材料、クロム、又は硬質クロムをメッキしたチップが用いられている。しかし、工業用ではその寿命は1週間程度である。このようなチップの劣化のため、現場では取替作業が実施されているが、例えば自動はんだ装置の場合、中心位置の設定等正確に位置決めを行なう必要があることから、チップの耐食性、耐久性を向上させ、この作業頻度を低減することが強く要望されている。
【0007】
一方、ディッピング用あるいははんだ供給用などのはんだ浴槽は、通常ステンレスで形成されているが、上記のように侵食性の強い鉛フリーはんだを収容すると、その表面が侵食され、寿命が著しく短くなるという問題点があった。特に、鉛フリーはんだを使用した場合、例えば、現在鉛フリーはんだで最も主流となっているSn−Ag−Cuはんだでは、使用温度(約250℃)と溶解温度(約220℃)との差が約30℃と、従来のSn−Pb系共晶はんだの温度差の57℃に比して半分程度となるため、はんだ成分の偏析によりはんだ品質が低下しやすい。このような品質低下を抑制するために、はんだ浴槽内で十分な加熱と攪拌が必要とされるため、表面の浸食がより進行しやすく、寿命が著しく短くなるという問題点もあった。
【0008】
こうした溶融はんだに対する耐食性を改善するために、従来より様々な耐食性部材が考えられてきた。
例えば、特許文献1〜2には、耐食性、耐久性に優れたはんだこて先として、先端にアモルファス金属のコーティング膜をスパッタ法により形成したはんだこて先、該アモルファス金属のコーティング膜の上にさらに鉄メッキを施したはんだこて先が開示されている。このはんだこて先によれば、鉄メッキが侵食された場合でも、下地層のアモルファス金属のコーティング膜により本体は確実に保護されるため、耐久性、耐食性が改善されるというものである。
【0009】
また、はんだ槽の耐食では、一方の表面にチタン層を有するクラッド材を使用してはんだ槽の内面をチタン層で構成する方法や、ステンレスで形成されたはんだ槽の内面にセラミックス層を形成する方法が知られている(特許文献3等)。また、はんだ槽の内面側を窒化処理により形成された硬化層でコーティングする方法も知られている(特許文献4)。
【0010】
【特許文献1】特開平1−309780号公報
【特許文献2】特開平07−112272号公報
【特許文献3】特開2002−28778号公報
【特許文献4】特開2004−141914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしこれらの方法では、効果が不十分である、高価である、あるいは加工が困難であるなどの問題点を有していた。
本発明はかかる状況においてなされたものであり、その目的は、はんだ、特に鉛フリーはんだに対しても優れた耐食性を発揮し、高寿命を実現する耐はんだ侵食用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を達成するために、本発明者らがはんだに対する耐エロージョン性能、耐高温性能、耐コロージョン性能、耐磨耗性能について鋭意検討した結果、アモルファス金属(合金)、特に金属ガラスからなる皮膜がはんだに対する耐食性に非常に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる耐はんだ侵食用部材は、溶融はんだとの接触面、あるいは溶融はんだとの接触面の下地層としてアモルファス金属(合金)皮膜が形成されていることを特徴とする。
本発明において、アモルファス金属(合金)皮膜中に存在する気孔の径が皮膜厚み以下であり、皮膜を貫通する連続気孔が存在しないことが好適である。
【0013】
また、アモルファス金属(合金)皮膜の厚みが0.01mm以上であることが好適である。
また、アモルファス金属(合金)が鉄基を30〜80原子%含むことが好適である。
また、アモルファス金属(合金)皮膜が高速フレーム溶射によって形成されたことが好適である。
また、アモルファス金属(合金)が金属ガラスであることが好適である。
また、はんだが鉛フリーはんだであることが好適である。
本発明にかかるはんだごてチップは、前記何れかに記載の耐はんだ侵食用部材からなる。
また、本発明にかかるはんだ槽は、前記何れかに記載の耐はんだ侵食用部材からなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐はんだ侵食用部材は、溶融はんだに接触する接触面に緻密な高耐食性皮膜が形成されているため、鉛フリーはんだを使用した場合であっても、高温における侵食が非常に少なく、寿命を大幅にアップすることができる。このような緻密な高耐食性皮膜は、例えば、金属ガラス粉末を高速フレーム溶射することにより容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
はんだごてチップ
図1には、本発明にかかる耐はんだ侵食用部材の一例として、はんだごてチップを示す。図1において、はんだごてチップ2は、無酸素銅よりなるこて先本体4の先端部分に、高耐食性金属ガラスよりなる下地層6と、はんだとの濡れ性の良い金属よりなる表面層8(例えば、純鉄メッキ)とが積層形成され、その他の表面部分ははんだとの濡れ性の低い材料、例えば硬質クロムメッキ10を施したものである。
このようなはんだごてチップ2は、先端部分がはんだとの濡れ性の良い金属の表面層8とされているため、はんだ付けの作業性が良好で、しかも、高耐食性金属ガラスの下地層6を有するため、表面層8が侵食されたとしても下地層6の金属ガラス皮膜は侵食されないので本体まで侵食されず、耐食性に著しく優れる。
一方、先端部分以外は、クロムメッキ12等のはんだとの濡れ性の良くない材料で形成されているため、はんだが登ることもない。
【0016】
なお、金属ガラス皮膜のみでも良好な作業性が得られる場合には、表面層8は特に要しない。
また、金属ガラス皮膜がはんだとのぬれ性が低いものである場合には、先端部分以外の表面部分の硬質クロムメッキ10の代わりに金属ガラス下地層6を連続して設けてもよい。あるいは、先端部分以外の表面部分は、金属ガラス下地層6に連続した金属ガラスの被覆層上に更にクロムメッキ等のはんだとのぬれ性の低い材料の被覆層を形成してもよい。
【0017】
さらに、金属ガラス下地層6と、表面層8との密着性を高めるために、これらの間に双方に密着性の良い材料よりなる中間層を設けることもできる。双方に密着性の良い材料としては、通常、表面層8を構成する金属と同種の金属を下地層6の形成と同一の手段、例えば溶射で形成したものが挙げられる。
金属ガラス皮膜は、薄過ぎると十分な耐食性が得られないので、10μm以上、さらには100μm以上とすることが好ましい。一方、厚過ぎるとコスト高騰の問題が生じるので、最大1mm程度の膜厚で十分である。
【0018】
はんだ槽
図2に、本発明にかかる耐はんだ侵食用部材の一例として、はんだ槽を示す。図2において、はんだ槽12を構成するステンレス鋼14は、少なくともその内側の表面が金属ガラス皮膜16によりコーティングされ、その上面は開放された箱型である。はんだ槽12内に噴流ノズルやフィン、ヒータなどが設置される場合には、これら部材の溶融はんだに接触する面にも金属ガラス皮膜でコーティングすることができる。
金属ガラス皮膜は、薄過ぎると十分な耐食性が得られないので、50μm以上、さらには100μm以上とすることが好ましい。一方、厚過ぎるとコスト高騰の問題が生じることから、最大1mm程度の膜厚で十分である。
【0019】
金属ガラス皮膜
このように、本発明によれば、はんだ付けに用いられる機器の各種部材において、溶融はんだに接触する面に金属ガラス皮膜を形成することにより、高侵食性の鉛フリーはんだに対しても長期にわたって侵食されることなく安全に使用することができる耐はんだ侵食用部材を提供することができる。
以下、このような金属ガラス皮膜について説明する。
【0020】
金属ガラス(ガラス合金ともいう)とは、アモルファス合金(アモルファス金属)の一種であるが、明瞭なガラス遷移と広い過冷却液体温度域を示す点で、従来のアモルファス合金とは区別されている。
すなわち、金属ガラスをDSC(示差走査熱量計)を用いてその熱的挙動を調べると、温度上昇にともない、ガラス転移温度(Tg)を開始点としてブロードな広い吸熱温度領域が現れ、結晶化開始温度(Tx)でシャープな発熱ピークに転ずる。そしてさらに加熱すると、融点(Tm)で吸熱ピークが現れる。金属ガラスの種類によって、各温度は異なる。TgとTxの間の温度領域△Tx=Tx−Tgが過冷却液体温度域であり、△Txが10〜130℃と非常に大きいことが金属ガラスの一つの特徴である。△Txが大きい程、結晶化に対する過冷却液体状態の安定性が高いことを意味する。従来のアモルファス合金では、このような熱的挙動は認められず、△Txはほぼ0である。
本発明においては、金属ガラスの過冷却液体温度域の幅が10℃以上、さらには30℃以上であることが好適である。このような金属ガラスを用いることにより、緻密なアモルファス相皮膜が得られる。
【0021】
金属ガラスを形成するための組成に関しては、(1)3成分以上の多元系であること、(2)主要3成分の原子径が互いに12%以上異なっていること、及び(3)主要3成分の混合熱が互いに負の値を有していること、が経験則として知られている(ガラス合金の発展経緯と合金系:機能材料、vol.22,No.6,p.5−9(2002))。
本発明においては、金属ガラスが複数の元素(3金属元素以上)から構成され、その主成分が少なくともFe基、Co基、Ni基、Ti基、Zr基、Mg基、Cu基、Pd基のいずれかひとつを30〜80原子%の範囲で含有することが好適である。さらに、VIa族元素(Cr,Mo,W)を10〜40原子%、IVb族元素(C,Si,Ge,Sn)を1〜10原子%の範囲で各グループから少なくとも1種類以上の金属原子を組み合わせてもよい。また、鉄族元素に、目的に応じて、Ca,B,Al,Nb,N,Hf,Ta,Pなどの元素が10原子%以内の範囲で添加されてよい。これらの条件により、高いガラス形成能を有することになる。
【0022】
また、特に、金属ガラスの成分が、少なくともFe基を含有することで耐食性は飛躍的に向上する。Fe基が30原子%より少ない場合では耐食性が十分に得られず、また、80原子%より多い場合では金属ガラスの形成は困難である。
好ましい組成として、例えば、Fe43Cr16Mo161510(以下、下付き数字は全てat%を示す)、Fe75Mo12Si、Fe52Co2020SiNb等の鉄基金属ガラスが挙げられる。
【0023】
金属ガラスは、通常のアモルファス合金よりも一般に耐食性や機械的強度が高いことが知られているが、金属ガラスを均一なアモルファス相の厚膜として形成することは困難であった。
本発明では、溶射により、金属ガラス粒子を過冷却状態で基材表面に衝突させることにより、金属ガラスの均一なアモルファス相の皮膜を得ることができる。
【0024】
アモルファス固体状態にある金属ガラスを加熱した場合、Tg以下の温度ではアモルファス固体状態のままであるが、Tg〜Txでは過冷却液体状態、Tx〜Tmでは結晶固体状態、Tm以上では液体となる。
過冷却液体状態では、金属ガラスは粘性流動を示し、粘性が低い。このため、過冷却液体状態にある金属ガラスが基材表面に衝突すると、瞬時に薄く潰れて基材表面に広がり、厚みが非常に薄い良好なスプラットを形成することができる。そして、このようなスプラットの堆積により、気孔が非常に少ない緻密な膜を形成することができる。
【0025】
また、スプラットは過冷却液体状態から冷却されるので、結晶相を生成せず、アモルファス相のみが得られる。すなわち、アモルファス固体状態と過冷却液体状態とは可逆的であるため、過冷却液体状態にある金属ガラスを冷却すれば、冷却速度によらずアモルファス固体状態の金属ガラスを得ることができる。これに対し、過冷却液体状態と結晶固体状態とは不可逆であるため、結晶固体状態の金属ガラスをそのまま室温まで冷却しても、結晶固体状態のままであり、Tm以上で融解して液体状態にある金属ガラスを冷却した場合には、冷却速度によっては結晶相が生成してしまう。
【0026】
さらに、大気中での溶射の場合、材料を溶融状態で衝突させる従来の溶射方法では、溶射材料の酸化物が皮膜中に含まれてしまい、皮膜の特性に悪影響を及ぼすが、本発明では過冷却液体状態で衝突させるので、大気中で溶射したとしても酸化の影響がほとんどない。
従って、本発明の方法によれば、均一な金属ガラスのアモルファス固体相からなり、且つ気孔がほとんどない緻密な金属皮膜を溶射により得ることができる。
本発明においては、金属ガラス皮膜中の気孔は非常に少ない(気孔率は好ましくは2%以下)。また、気孔径は皮膜の膜厚よりもごく小さく、皮膜を貫通するような連続気孔は存在しない。
【0027】
金属と基材との接合は圧接、溶接などの方法がとられ、界面における両者の組織の親和性が密着強度、はがれなどの耐久性に大きな影響を与える。また両者の間には材料特有の熱膨張係数が存在するため膨張係数のマッチングが重要である。金属ガラスは、その組織構造から金属に比べ熱膨張係数は低く、柔軟性に富み、界面形成能にも優れている。
【0028】
溶射は、めっきや蒸着などに比べて厚い皮膜(100μm以上)を得ることが可能であるが、一般に金属の溶射皮膜では気孔が多く、そのため基材の耐食性を高める目的で耐食性の金属を溶射したとしても、十分な耐食性が得られない。しかし、金属ガラスを原料とする溶射では、鉛フリーはんだ槽やはんだごて等の過酷な侵食環境での使用にも長期にわたって耐える緻密な高耐食性皮膜の形成が可能である。
【0029】
溶射方法としては、大気圧プラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、フレーム溶射、高速フレーム溶射(HVOF)、アーク溶射などがあるが、高速フレーム溶射が高密度膜を得る上で特に優れている。
図3は、高速フレーム溶射(HVOF)装置の一例の概略図である。同図に示すように、HVOF装置は溶射ガン30を備え、該溶射ガン30の基部(図中左方)から燃料パイプ32及び酸素パイプ34を介してそれぞれ燃料及び酸素が供給され、溶射ガン30のフレーム端(図中右方)には高速の燃焼炎(ガスフレーム)36が形成される。そして、この溶射ガン30のフレーム端に近接して溶射材料供給パイプ38が設けられ、該パイプ38から溶射材料粉末が搬送ガス(Nガスなど)により圧送供給される。
【0030】
そして、パイプ38により供給された溶射材料粉末粒子は、ガスフレーム36中で加熱及び加速される。この加速粒子(溶射粒子)40は高速で基材42の表面に衝突し、基材表面で冷却されて凝固し、偏平なスプラットを形成する。このようなスプラットの堆積により、溶射皮膜44が形成される。
燃料としては、灯油、アセチレン、水素、プロパン、プロピレン等を用いることができる。
溶射粉末の粒径は、特に問題のない限り制限されないが、最大粒子径が80μm以下、さらには50μm以下であることが好適である。平均粒子径としては5〜30μmが好適に使用できる。
【0031】
本発明においては、アモルファスの金属ガラス粒子を原料として使用する。原料は基本的に粒状あるいは粉体状が好ましいが、これに限定されるものではない。作成方法としてはアトマイズ法、ケミカルアロイング法、メカニカルアロイング法などがあるが、生産性を考慮すればアトマイズ法が好ましい。
【0032】
このような方法により金属、合金、セラミック、樹脂などの材料表面に金属ガラスを溶射し、耐食性皮膜を形成することができる。特に銅、ステンレスなどの耐熱性、熱容量、熱伝導の高い金属材料には好適に溶射できる。
金属ガラス皮膜形成は、例えば、はんだごてチップの表面や、はんだ槽の内面の他、フィン、シャフト、ヒータなど、溶融はんだと接触する各種部材の表面に直接行うことができる。あるいは、適当な基材表面に溶射を行って複合材料を製造し、これを加工成型して部材を作製することもできる。
金属ガラス皮膜は均一の膜厚に形成してもよいし、必要に応じて傾斜膜とすることもできる。
基材は、金属ガラス層との接合性を高めるために、通常はブラスト処理など公知の方法により基材表面の粗面化処理を施して使用することが好ましい。また、本発明の溶射皮膜はに貫通する空孔がないので、皮膜形成後に樹脂等を用いた封孔処理は特に不要であるが、目的に応じ、各種表面処理をしてもよい。
【実施例1】
【0033】
溶射試験
組成がFe43Cr16Mo161510である金属ガラスのアトマイズ粉(粒径25〜53μm、アモルファス)を高速フレーム溶射装置(日本ユテク社製 JP5000、バレル長さ 4インチ)を用いて溶射した。
なお、原料であるFe43Cr16Mo161510金属ガラス粉末をDSC(示差走査熱量計)で測定したところ、ガラス転移温度(Tg)は611.7℃、結晶化開始温度(Tx)は675.2℃、融点(Tm)は1094.8℃であった。試験条件は次の通り。
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基材 SUS304板(粗面化処理)
溶射原料 Fe43Cr16Mo161510ガスアトマイズ粉末
△Tx:約63℃
粒度:25〜53μm
溶射条件 粉末搬送ガス:N
燃料:灯油、6.0GPH
酸素:2000SCFH
溶射距離(溶射ガン先端から基材表面までの距離):380mm
溶射ガン移動速度:200mm/sec
基材表面温度:200℃
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【0034】
基材表面への溶射開始直後に遮断板により基材表面へのガスフレーム及び溶射粒子を遮断して、スプラット堆積前の個々のスプラットの形状を調べたところ、スプラットは飛び散ることなく極めて薄く扁平に潰れて広がっていた。
そして、遮断板を用いずに連続的に溶射を行った場合には、溶射密度に応じて基材表面に種々の膜厚の溶射皮膜を形成することができ、0.01mm以上から形成でき、0.1mm以上も、例えば2〜3mmの厚膜も形成可能であった。これら溶射皮膜は基材表面に強固に結合しており、また、溶射皮膜のX線回折により、完全なアモルファス相であることが確認された。また、その断面を電子顕微鏡にて観察したところ、溶射皮膜は非常に緻密で気孔はほとんどなく、連続気孔も認められなかった。また、酸化物層の形成も認められなかった。
これらの結果は、金属ガラスの溶射粒子が過冷却液体状態で基材表面に衝突したことによるものと考えられる。
【実施例2】
【0035】
金属ガラス皮膜の耐食性
実施例1で得られた溶射皮膜試験体より耐食性評価を行う試験片(約5×20×80mm)を得た。また、比較試験片として、SUS304板(約5×20×80mm)の表面をエメリー紙により研磨したものを準備した。
これら試験片の表面に、鉛フリーはんだ用フラックスを塗布した後、溶融した鉛フリーはんだSn−3Ag−0.5Cu(550℃)中に浸漬3秒、上昇2秒の流速付加条件で6時間、浸漬−上昇を繰り返した。浸漬は試験片の長径に対し片方の先端から約20mmとなるようにした。
試験終了後、試験片表面に付着している溶融はんだをふき取り、外観を観察したところ、比較試験片では著しい侵食(エロージョン)が認められたが、金属ガラス試験片では全く観察されなかった。
【0036】
表1は、試験前後で測定した試験片の質量変化を示したものである。比較試験片では試験後にエロージョンによる明らかな減量が認められたが、金属ガラス試験片では試験前後で質量変化はほとんどなかった。
(表1)
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試料 重量減
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金属ガラス試験片 なし
比較試験片(SUS304) あり(約6%減量)
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【0037】
図4の(a)はFe43Cr16Mo161510金属ガラス溶射皮膜、(b)は耐はんだ侵食用の特殊窒化表面処理板を、上記と同様のはんだ浸漬条件で96時間試験を行った後の表面写真である。特殊窒化処理の場合(b)では、浸漬部分に著しいエロージョンが認められたのに対し、本発明の積層体(a)では試験前後で表面に変化はなく、エロージョンは発生していないことがわかる。
以上のように、金属ガラス皮膜ははんだ、特に鉛フリーはんだに対しても耐食性に優れるので、はんだ付けに用いられる機器の各種部材において、このような金属ガラス皮膜を溶融はんだとの接触面に形成することにより、その耐食性を格段に向上することができ、高寿命化を図ることができる。
【実施例3】
【0038】
はんだ溶出試験
600℃に加熱・保持した陶器製るつぼ中のSn―3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだ溶湯に試験材を48時間浸漬後、るつぼごと試験材を冷却した。光学顕微鏡にて、はんだ−試験片境界面の断面の観察を行った。試験材としては、(a)Fe43Cr16Mo161510金属ガラスの他、比較材として、(b)普通鋼(SS400)、(c)ステンレス(SUS304)、(d)純チタン、(e)特殊窒化処理、(f)鋳鉄新生面(FC20)、(g)鋳鉄鋳肌面(FC20)を用いた。
断面観察の結果、金属ガラス溶射皮膜は全く損傷がなかったのに対し、比較試験材は鉛フリーはんだによる侵食が確認された(図5)。
【実施例4】
【0039】
はんだ用部品への溶射
はんだ溶解実験用のお椀型ステンレス製容器(SUS304、直径Φ100mm、板厚0.5mm)の内面に、Fe43Cr16Mo161510金属ガラスを膜厚50μm以上目標で溶射した。
はんだ溶解実験では、500℃以上の温度で回転子による強い攪拌を7.5時間連続で行うため、ステンレス製容器へのダメージが大きく、3回の実験で内面に損傷が発生し、廃却していた。これに対し、金属ガラス溶射品では、のべ40時間使用時点で全く損傷していなかった。
【0040】
また、市販のはんだ製造装置部品であるステンレス製はんだ容器、熱電対保護管等にFe43Cr16Mo161510金属ガラス溶射を行い、実機実証試験を実施した。
(1)小口ではんだ溶解に用いているお椀型のステンレス製はんだ溶解容器(SUS304、直径Φ380mmおよびΦ500mmの2種類、板厚0.5mm)の内面に、Fe43Cr16Mo161510金属ガラスを膜厚100〜150μmで溶射した。
通常、この容器は鉛フリーはんだによる浸食で2ヶ月程度で穴が開いていたが、金属ガラス溶射品は4ヶ月使用時点では全く損傷していなかった。
(2)はんだ溶解容器内の溶湯温度を測定する熱電対のステンレス製保護管(SUS304、直径Φ22mm、長さ1500mm)の外面に、Fe43Cr16Mo161510金属ガラスを膜厚100〜150μmで溶射した。4ヶ月使用時点でも全く問題がなかった。
(3)はんだ連続鋳造機(山口製作所製SCC−3)の上釜内面にもFe43Cr16Mo161510金属ガラスを膜厚100〜150μmで溶射した。2ヶ月経過時点でも全く問題はなかった。
【実施例5】
【0041】
さらに、溶射皮膜について検討を行った。
試験例1
溶射材料として、耐食性に優れる金属ガラスとして知られているFe43Cr16Mo161510のガスアトマイズ粉末を用いて溶射試験を行った。DSC分析を行ったところ、該金属ガラス粉末のガラス転移温度(Tg)は611.7℃、結晶化開始温度(Tx)は675.2℃であり、△Txは63.5℃であった。また、融点(Tm)は1094.8℃であった。また、X線回折によりアモルファス相であることを確認した。溶射条件は次の通り。
【0042】
(表2)
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基材 SUS304L板
溶射装置 日本ユテク社製JP−5000
溶射原料 Fe43Cr16Mo161510ガスアトマイズ粉末
△Tx:約63℃
粒度:53μmの篩下のもの(最大粒径53μm)
溶射条件 粉末搬送ガス:N
燃料:灯油、6.0GPH
酸素:2000SCFH
溶射距離(溶射ガン先端から基材表面までの距離):380mm
溶射ガン移動速度:200mm/sec
基材表面温度:200℃(ホットプレートで加温)
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【0043】
上記表2の条件で膜厚約1mmの溶射被膜を形成した。溶射被膜のX線回折でアモルファス相に特有の良好なハローパターンが認められ、均一なアモルファス相であることが確認された(図6)。
また、図7に示す断面写真のように、この溶射被膜を貫通する連続空孔は認められず、その気孔率は1.2%であった。なお、気孔率については、溶射被膜の任意の断面(n=10)について2次元画像解析し、得られた気孔の面積率の最大値を気孔率として採用した。
この溶射被膜は、鉛フリーはんだによる侵食は全く認められず、非常に高い耐食性を示した。
【0044】
試験例2 気孔率の影響
下記のように燃料と酸素の供給量を変えて、試験例1と同様に溶射した(溶射被膜約200μm)。
(表3)
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試験 燃料 酸素 気孔率 耐食性
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2−1 6.0GPH 2000SCFH 約1% ○
2−2 3.5GPH 1250SCFH 約5% ×
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【0045】
上記表3の試験例2−1のように、気孔率が2%以下の場合には、試験例1と同様の高い耐食性を示したが、試験例2−2のように気孔率が2%を超えると、溶融はんだに対する耐食性が低下した。
【0046】
試験例3 △Txの影響
過冷却液体温度領域△Txの異なるアモルファス金属ガラス粉末を用いて、試験例1と同様にして溶射した(溶射被膜約200μm)。溶射被膜のアモルファス相形成については、下記の基準により評価した。
(アモルファス相の形成)
○:X線回折で良好なハローパターンが認められる(アモルファス単一相)
△:X線回折でハローパターンと結晶性ピークの両方が認められる(一部結晶相)
×:X線回折でハローパターンが全く認められない(結晶相)
【0047】
(表4)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験 金属ガラス △Tx アモルファス相形成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3−1 Fe43Cr16Mo161510 約63℃ ○
3−2 Fe52Co2020SiNb 約31℃ ○
3−3 Fe78Si1012 約 0℃ ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0048】
上記表4の試験例3−1〜3−2のように、過冷却液体温度領域△Txが30℃以上の金属ガラスを用いた場合には、アモルファス単一相からなる溶射被膜を形成することができるが、△Txが30℃を下回ると結晶相の形成が認められ、アモルファス相からなる溶射被膜を形成することは困難であった。試験例3−3の溶射被膜のX線回折図は図8に示すとおりである。
結晶相の形成は、耐食性に悪影響を及ぼすので、望ましくない。また、△Txが30℃を下回ると気孔率も高くなる。よって、金属ガラスとしては、△Txが30℃以上のものが好適である。
【0049】
試験例4 溶射粒子捕集試験(1)
溶射粒子が基材表面に衝突した際の状態を調べるために、溶射粒子捕集試験を行った。この試験は、基材表面への溶射開始直後に遮断板により基材表面へのガスフレーム及び溶射粒子を遮断して、スプラットが堆積する前の個々のスプラットの形状や、基材表面の様子を調べるものである。
燃料と酸素の供給速度を下記表5のように変えた以外は、前記試験例1と同じ条件で試験を行った。
【0050】
(表5)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験 燃料 酸素 基材写真
No. (GPH) (SCFH) SUS304L 寒天ゲル
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
4−1 6.0 2000 図9 図12
4−2 5.5 2000 図10 図13
4−3 4.0 1500 図11 図14
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0051】
図9〜11は、SUS304L板を基材として、試験4−1〜4−3の条件で溶射したときの基材表面写真である。
試験4−1(燃料6.0GPH/酸素2000SCFH)及び試験4−2(燃料5.5GPH/酸素2000SCFH)では、溶射粒子のスプラットの形状は、円形あるいは楕円形に薄くつぶれたものか、又は中央部に円形あるいは楕円形に薄くつぶれたコアとその周囲に薄く広がるスプラッシュ様の部分とからなるものであった。そして、これらの条件で溶射を行ったところ、このようなスプラットの積層により、緻密で均一なアモルファス金属ガラス溶射被膜が得られた。
【0052】
一方、試験4−3(燃料4.0GPH/酸素1500SCFH)では、図11からわかるように、薄く広がらずに球状に近い厚みのある形状のスプラットが多く見られ、図9〜10のようなスプラットは少なかった。また、スプラッシュ部の発生も抑制されていた。これは、フレーム温度が低かったためと考えられる。このようなスプラットの積層では、緻密性の高い溶射被膜を得ることはできなかった。
【0053】
図12〜14は、寒天ゲル(寒天濃度 7重量%)を基材(ターゲット)として、試験4−1〜4−3の条件で溶射したときのゲルの断面写真である。このような硬い寒天ゲルに溶射すると、溶融状態あるいは過冷却液体状態の溶射粒子はゲル内部には侵入できずにゲル表面で捕集され、凝固状態にある溶射粒子はゲル内部に侵入してゲル内部で捕集される。よって、このようなゲルターゲット試験により、溶射粒子の基材表面における状態を推定できる。
【0054】
試験4−1〜4−2(図12〜13)では溶射粒子はほとんどゲル内部に侵入せず、大部分がゲル表面で捕集されている(ゲル表面の黒く見える部分)。
これに対して、試験4−3(図14)では溶射粒子の大部分がゲル内部に侵入し、ゲル表面ではほとんど捕集されていない(ゲル表面に黒く見える部分はほとんど認められない)。
従って、試験4−1〜4−2では、ほとんどの溶射粒子が溶融状態あるいは過冷却液体状態で衝突しているのに対し、試験4−3では、ほとんどの溶射粒子が凝固状態で基材表面に衝突しているものと考えられる。
【0055】
さらに、溶射粒子の状態を調べるために、(a)試験例1のアモルファス金属ガラス粉末をHVOF溶射した場合と、(b)試験例1のアモルファス金属ガラス粉末を900℃で1時間熱処理して結晶質粉末としたものをHVOF溶射した場合について、それぞれ得られた溶射皮膜のX線回折測定を行った(図15)。基材はCu板を用い、燃料5〜7GPH、酸素1450〜2000SCFHの範囲で溶射した。
何れの場合においても、図15のように、(a)アモルファス金属ガラス粉末を溶射した場合には完全なアモルファス相の溶射皮膜が得られたのに対し、(b)同じ組成の結晶質粉末を溶射した場合には得られた溶射皮膜は結晶質であった。結晶質皮膜では、アモルファス金属ガラス皮膜のような優れた耐食性は得られない。
このように、本発明の溶射皮膜は、溶射原料粉末が溶融せずに過冷却液体状態で基材に衝突し凝固・積層したものである。
【0056】
試験例5 溶射粒子捕集試験(2)
さらに、基材表面温度及び溶射粒子の粒度を変えて溶射粒子捕集試験を行った。試験条件は、次の通り。
(表6)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験No. 粒度 基材表面温度 基材表面写真
――――――――――――――――――――――――――――――――――
5−1 120μm以下 常温(加温なし) 図16
5−2 120μm以下 200℃ 図17
5−3 45μm以下 常温(加温なし) 図18
5−4 45μm以下 200℃ 図19
――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験条件は試験例1と同じ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0057】
図16〜17から、粒度120μm以下(120μm篩下)の場合には、何れの基材表面温度でも溶射粒子のスプラットがほとんど広がっておらず、球状に近い厚みのある形状であることがわかる。また、基材表面に溶射粒子の衝突によると考えられる窪みが認められる。これらの条件では、粒径が大きく、高速であったために、溶射粒子が溶融あるいは過冷却液体状態にまで到達せずに、凝固状態で基材表面に衝突したものと考えられる。
【0058】
一方、粒度45μm以下(45μm篩下)の場合、基材表面温度が常温では図18のように広がりの悪いスプラットがやや散見されたものの、薄く潰れて広がった良好なスプラットが多く見られた。そして、基材表面温度が200℃の場合には、図19のようにほとんどのスプラットは極めて薄く潰れて円形あるいは楕円形に広がっており、非常に良好なものであった。
これは、粒径が小さかったために、ガスフレームで溶射粒子が過冷却液体状態で基材表面に衝突したためと考えられる。
スプラットが薄く広がれば、溶射被膜の緻密性に有利である。また、スプラットが薄く広がればスプラット全体が速やかに冷却されて凝固するので、均一なアモルファス溶射被膜の形成にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例にかかるはんだごてチップの断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるはんだ槽の断面図である。
【図3】高速フレーム(HVOF)装置の一例の概略図である。
【図4】(a)は金属ガラス溶射品、(b)は耐はんだ侵食用特殊窒化表面処理板(比較例)を、溶融した鉛フリーはんだSn−3Ag−0.5Cu(550℃)中に96時浸漬した後の表面写真である。
【図5】溶融した鉛フリーはんだ(600℃)中に48時間浸漬後の、(a)Fe43Cr16Mo161510金属ガラス溶射品、(b)普通鋼(SS400)、(c)ステンレス(SUS304)、(d)純チタン、(e)特殊窒化処理、(f)鋳鉄新生面(FC20)、(g)鋳鉄鋳肌面(FC20)のはんだ−試験片境界面断面の光学顕微鏡写真である。
【0060】
【図6】Fe43Cr16Mo161510金属ガラス溶射皮膜(試験例1)のX線回折図である。
【図7】Fe43Cr16Mo161510金属ガラス溶射品(試験例1)の断面写真である。
【図8】△Tx=0のアモルファス金属ガラス粒子から製造した溶射皮膜(試験例3−3)のX線回折図である。
【図9】燃料6.0GPH、酸素2000SCFHの条件での溶射粒子捕集試験(試験4−1)のSUS304L基材表面の電子顕微鏡写真である。
【図10】燃料5.5GPH、酸素2000SCFHの条件での溶射粒子捕集試験(試験4−2)のSUS304L基材表面の電子顕微鏡写真である。
【0061】
【図11】燃料4.0GPH、酸素1500SCFHの条件での溶射粒子捕集試験(試験4−3)のSUS304L基材表面の電子顕微鏡写真である。
【図12】燃料6.0GPH、酸素2000SCFHの条件での溶射粒子捕集試験(試験4−1)の寒天ゲルターゲット断面の電子顕微鏡写真である。
【図13】燃料5.5GPH、酸素2000SCFHの条件での溶射粒子捕集試験(試験4−2)の寒天ゲルターゲット断面の電子顕微鏡写真である。
【図14】燃料4.0GPH、酸素1500SCFHの条件での溶射粒子捕集試験(試験4−3)の寒天ゲルターゲット断面の電子顕微鏡写真である。
【図15】(a)Fe43Cr16Mo161510アモルファス金属ガラス粉末をHVOF溶射した場合と、(b)Fe43Cr16Mo161510アモルファス金属ガラス粉末を900℃で1時間熱処理して結晶質粉末としたものをHVOF溶射した場合の、溶射皮膜のX線回折図である。
【0062】
【図16】溶射粉末の粒度120μm以下、基材温度常温の条件で溶射粒子捕集試験を行った基材表面(試験No.5−1)の電子顕微鏡写真である。
【図17】溶射粉末の粒度120μm以下、基材温度200℃の条件で溶射粒子捕集試験を行った基材表面(試験No.5−2)の電子顕微鏡写真である。
【図18】溶射粉末の粒度45μm以下、基材温度常温の条件で溶射粒子捕集試験を行った基材表面(試験No.5−3)の電子顕微鏡写真である。
【図19】溶射粉末の粒度45μm以下、基材温度200℃の条件で溶射粒子捕集試験を行った基材表面(試験No.5−4)の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0063】
2 はんだごてチップ
4 こて先本体
6 下地層(金属ガラス皮膜)
8 表面層
10 クロムメッキ
12 はんだ槽
14 ステンレス鋼
16 金属ガラス皮膜
18 溶融はんだ
30 溶射ガン
32 燃料パイプ
34 酸素パイプ
36 ガスフレーム
38 溶射材料供給パイプ
40 溶射粒子
42 基材
44 溶射皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだとの接触面、あるいは溶融はんだとの接触面の下地層としてアモルファス金属(合金)皮膜が形成されていることを特徴とする耐はんだ侵食用部材。
【請求項2】
請求項1記載の部材において、アモルファス金属(合金)皮膜中に存在する気孔の径が皮膜厚み以下であり、皮膜を貫通する連続気孔が存在しないことを特徴とする耐はんだ侵食部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の部材において、アモルファス金属(合金)皮膜の厚みが0.01mm以上であることを特徴とする耐はんだ侵食用部材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の部材において、アモルファス金属(合金)が鉄基を30〜80原子%含むことを特徴とする耐はんだ侵食用部材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の部材において、アモルファス金属(合金)皮膜が高速フレーム溶射によって形成されたことを特徴とする耐はんだ侵食用部材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の部材において、アモルファス金属(合金)が金属ガラスであることを特徴とする耐はんだ侵食用部材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の部材において、はんだが鉛フリーはんだであることを特徴とする耐はんだ侵食用部材。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の耐はんだ侵食用部材からなる、はんだごてチップ。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の耐はんだ侵食用部材からなる、はんだ槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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