説明

耐スミア性インクジェットインク

本発明は、ポリウレタン分散と自己分散型顔料とを含むインクジェットインク、詳細には耐スミア性インクジェットインクそしてさらに詳細には耐スミア性顔料水性インクジェットインクに関する。ポリウレタン分散は、−30℃超〜約35℃未満のガラス転移温度Tgを有し、かつ1.7〜5×10パスカルの損失弾性率E’’および/またはピーク損失正接が0.23〜0.65である、という熱特性のうちの少なくとも1つを有し、ここで、ガラス転移温度、ピーク損失正接および損失弾性率は、ポリウレタン分散から調製された膜についての動的機械分析によって測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、−30℃超〜35℃未満のガラス転移温度Tgを有し、かつ、1)1.7〜5×10パスカルの損失弾性率E’’および、2)ピーク損失正接が0.23〜0.65である、という熱特性のうちの少なくとも1つを有するポリウレタン分散を含むインクジェットインク、詳細には耐スミア性インクジェットインクそしてさらに詳細には耐スミア性顔料水性インクジェットインクに関する。使用されている顔料は、自己分散型顔料である。
【背景技術】
【0002】
染料および顔料の両方共インクジェットインク用の着色剤として使用されてきた。染料は典型的には、顔料と比べて優れた色特性を提供するが、急速に退色し、より擦り消され易い。水性媒質中に分散した顔料を含むインクは、有利にも、印刷画像の水堅牢度および日光堅牢度に関して水溶性染料を用いるインクよりも優れている。
【0003】
水性インクジェットインクに適した顔料は一般に当該技術分野において周知である。従来、顔料は、ビヒクル中に顔料の安定した分散を生成するように、分散剤例えばポリマー分散剤または界面活性剤によって安定化されていた。しかしながら、さらに最近では、いわゆる「自己分散可能」または「自己分散型」顔料(以下「SDP」と呼ぶ)が開発されてきた。名前が意味する通り、SDPは、分散剤無しで水中に分散可能である。
【0004】
SDPは多くの場合、同じ顔料においてより大きな安定性とより低い粘度を与えるという点から見て、従来の分散剤で安定化された顔料に比べ有利である。
【0005】
一部の点では有利であるものの、浸透性の顔料ベースのインク組成物は、インクを普通紙上に印刷した場合の発色を幾分か低下させるかもしれない。顔料の含有量を増大させると、発色は改善されるかもしれないが、一般にインクの粘度は増大し、したがって、インクの駆出安定性にとっては不利であることが多い。しかしながら、SDPが有益な特性を有することから、粘度に対する影響を削減しながらこれらの顔料をより高レベルまで投入することが可能になる。こうして、SDPを使用することによって優れた発色を有する浸透性インクがなおも可能である。
【0006】
SDPの使用がもたらすこれらの潜在的利点にも関わらず、SDPを用いて調合されたインクは、記録媒体、詳細には普通紙上において幾分か定着不良の傾向をもつ。定着不良の一例は、インクジェット印刷された画像上で蛍光ペンを使用した場合にインクが汚される場合である。
【発明の概要】
【0007】
それでもなお、普通紙上に優れた色で印刷できしかも耐スミア性のあるSDPを含む分散安定性と駆出安定性の有するインクジェットインクに対するニーズが存在している。
【0008】
一実施形態は、優れた安定性および噴出特性も提供しながら、優れたスミア堅牢度、水堅牢度および高い光学密度(OD)を有する水性インクジェットインクを提供している。
【0009】
別の実施形態は、SDP、ポリウレタン分散および水を含む水性インクジェットインクにおいて、ポリウレタンが動的機械分析によって測定された場合に或る種の熱特性を有する水性インクジェットインクを提供している。
【0010】
したがって、水性インクジェットインク組成物は、約1重量%〜約20重量%の自己分散型顔料と約1重量%〜約10重量%のポリウレタン分散とを含み、ポリウレタン分散は、−30℃超〜35℃未満のガラス転移温度Tgを有し、
a. 1.7〜5×10パスカルの損失弾性率E’’、
b. ピーク損失正接が0.23〜0.65である、
という熱特性のうちの少なくとも1つを有し、ここで、ガラス転移温度、ピーク損失正接および損失弾性率は、ポリウレタン分散から調製された膜についての動的機械分析によって測定される。
【0011】
さらに別の実施形態は、水性媒質中に分散された自己分散型顔料を含む水性インクジェットインクにおいて、ポリウレタン分散をさらに含み、ここでポリウレタンが上述の熱特性を有している水性インクジェットインクを提供している。
【0012】
自己分散型顔料は任意にはアニオン親水性化学基を含み、任意には化学基はカルボキシル基を含む。これらのアニオン親水性基は、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシルおよびスルホンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を顔料の表面上に結合させるように、次亜塩素酸、スルホン酸またはオゾンで表面を酸化的に処理することによって得られるかもしれない。酸化剤はオゾンであってよい。オゾンは、カーボンブラックから自己分散型炭素顔料を製造するために有用である。酸化顔料は、3μモル/M未満の酸価を有していてよい。
【0013】
別の実施形態は、上述の水性インクジェットインクを用いてインクジェット印刷する方法を提供する。
【0014】
別の実施形態は、SDPと上述の熱特性を有するポリウレタンを含む水性インクジェットインクに加えて少なくとも1つの他のカラーインクジェットインクを含むインクセットを提供する。
【0015】
一実施形態は、インクが普通紙上で印刷するために特に有利であると規定している。
【0016】
当業者は、以下の詳細な説明を読むことによって本発明のこれらのおよび他の特徴および利点をさらに容易に理解するものである。当業者であれば、以上および以下で明確化を期して別個の実施形態に関連して説明されている本発明のいくつかの特徴を、単一の実施形態に組合せた形で提供してよいということを認識することができる。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連して記述されている本発明のさまざまな特徴を、別個にまたは任意の下位組合せで提供してもよい。さらに、単数での言及には、前後関係による別段の指定のないかぎり、複数も含まれるかもしれない(例えば「a」および「an」は1つまたは1つ以上を意味するかもしれない)。さらに、範囲として明記されている値に対する言及は、その範囲内のありとあらゆる値を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
別段の指定または定義のないかぎり、本明細書中で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が関連する技術分野の当業者により一般的に理解される意味を有する。
【0018】
別段の指定のないかぎり、全ての百分率、部分、比率などは重量による。量、濃度または他の値またはパラメータが範囲、好ましい範囲または、好ましい上限値と好ましい下限値のリストのいずれかとして示されている場合、これは、範囲が別途開示されているか否かとは無関係に、あらゆる範囲上限または好適値とあらゆる範囲下限または好適値のあらゆる対で形成された全ての範囲を具体的に開示しているものとして理解すべきである。数値範囲が本明細書中に列挙されている場合には、別段の指定のないかぎり、その範囲は、その端点および範囲内の全ての整数および分数を含むように意図される。
【0019】
「約」という用語が1つの値または一範囲の一端点を記述する上で使用されている場合、その開示は、言及された具体的値または端点を含むものと理解されるべきである。
【0020】
本明細書中で使用される「分散」という用語は、1相がバルク物質全体にわたり分布した細分割された粒子(多くの場合コロイドサイズ範囲に入るもの)で構成され、この粒子が分散相または内部相でありバルク物質が連続相または外部相である2相系を意味する。バルク系は、水性系であることが多い。
【0021】
本明細書中で使用される「顔料」という用語は、別の物質または混合物に色を付与する通常は粉末形態であるあらゆる物質を意味する。さらに、この定義には、分散染料、白色および黒色顔料も含まれる。
【0022】
本明細書中で使用される「HSD」という用語は、高速分散性を意味する。
【0023】
本明細書で使用される増強または改良された「印刷品質」に対する言及は、印刷画像の光学密度、光沢および画像弁別性(DOI)ならびに、例えば摩擦堅牢度(指摩擦)、水堅牢度(水滴)およびスミア堅牢度(蛍光ペンストローク)などを含めた、堅牢度(印刷画像からのインク除去に対する耐性)のうちの一部の面が改善されていることを意味する。
【0024】
本明細書で使用される「OD」という用語は光学密度を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「SDP」という用語は、「自己分散可能」または「自己分散性」顔料を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「水性ビヒクル」という用語は、水または水と少なくとも1つの水溶性有機溶媒(共溶媒)の混合物を意味する。
【0027】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、相当程度、ほぼ全てを意味する。
【0028】
本明細書で使用される「Mn」という用語は、サイズ排除クロマトグラフィによって測定される数平均分子量を意味する。
【0029】
本明細書で使用される「Mw」という用語は、サイズ排除クロマトグラフィで測定される重量平均分子量を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「Pd」という用語は、重量平均分子量を数平均分子量で除したものである多分散性を意味する。
【0031】
本明細書で使用される「d50」という用語は、粒子の50%がより小さいものである粒径を意味し;「d95」は、粒子の95%がより小さいものである粒径を意味する。
【0032】
本明細書で使用される「cP」という用語は、粘度の単位であるセンチポイズを意味する。
【0033】
本明細書で使用される「プレポリマー」という用語は、重合プロセスにおける中間体であり、同様にポリマーとみなすことのできるポリマーを意味する。
【0034】
本明細書で使用される「AN」という用語は、酸価つまり固体ポリマー1グラムあたりのKOHmg数を意味する。
【0035】
本明細書で使用される「中和剤」という用語は、イオン性基をより親水性の高いイオン(塩)基へと転換するために有用である全てのタイプの作用物質を包含することを意味する。
【0036】
本明細書で使用される「PUD」という用語は、本明細書中で記述されているポリウレタン分散を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「DMIPA」という用語は、ジメチルイソプロピルアミンを意味する。
【0038】
本明細書で使用される「DMPA」という用語は、ジメチロールプロピオン酸を意味する。
【0039】
本明細書で使用される「TEA」という用語は、トリエチルアミンを意味する。
【0040】
本明細書で使用される「IPDI」という用語は、イソホロンジイソシアネートを意味する。
【0041】
本明細書で使用される「NCOプレポリマー」という用語は、ポリウレタンの特徴を有するポリマー、ただし、より高分子量のポリマーを調製するためのイソシアネートまたはイソシアネート反応基とのさらなる反応を意味する。
【0042】
30℃超〜35℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリウレタン分散は、優れた耐スミア性を提供する。さらに上述のガラス転移温度を有し、かつ
a. 1.7〜5×10パスカルの損失弾性率E’’、
b. ピーク損失正接が0.23〜0.65である、
という熱特性のうちの少なくとも1つを有し、ここで、ガラス転移温度Tg、ピーク損失正接および損失弾性率が、ポリウレタン分散から調製された膜についての動的機械分析によって測定されるポリウレタンは、改善された耐スミア性を有する。
【0043】
耐スミア性は、普通紙上に印刷し、印刷後のさまざまな時点で印刷画像上を横断して黄色蛍光ペンを使用することによって測定される。スミアの量は、試験された異なるポリウレタンの間で比較される。以上で示したTgおよび損失弾性率および/またはピーク損失正接を有していたものは、耐スミア性について優れていた。別の実施形態は、上記範囲内の損失弾性率E’’とピーク損失正接の両方を有するポリウレタン分散を提供する。
【0044】
別の実施形態では、2.4〜4.5×10パスカルの損失弾性率E’’と共に−30℃超〜35℃未満のガラス転移温度Tgを有するポリウレタン分散を使用してよい。別の実施形態では、ピーク損失正接と共に−30℃超〜35℃未満のガラス転移温度Tgを有するポリウレタン分散は、0.24〜0.45であってよい。さらに別の実施形態では、ポリウレタン分散は、2.4〜4.5×10パスカルの損失弾性率E’’と0.24〜0.45のピーク損失正接の両方を有する。
【0045】
一部のポリウレタン分散添加剤が、特に自己分散型顔料用のインクジェットインクの耐スミア性を改善することは公知である。ポリウレタン分散は、印刷された時点で膜を形成し、基材の上面にある確率が最も高い自己分散型顔料を保護する可能性が高い。したがって、理論により束縛はされないものの、基材に対するより優れた接着力を有するものの脆性をもたない膜が求められた。これらの特性のため、米国特許第7,176,248号明細書中にすでに記載されているものよりも高いガラス転移温度Tgを有するポリウレタンを発見するために上述の動的機械熱試験が実施されることになった。過度に高いTgを有する膜は脆性が高く基材上のSDPおよび/または基材から「離脱し」、耐スミア性が改善された結果を全くもたらさないことがわかった。しかしながら、ポリウレタンが−30〜35℃のTgを有することは、ポリウレタンを充分に説明するものではなく、ポリウレタンは同様に、損失弾性率および/またはピーク損失正接により特徴づけされる他の特性も有していなければならなかった。理論により束縛されないものの、これらの熱特性から、ポリウレタン膜が、基材の表面上のSDP粒子との「会合」を保持しながらスミア試験の応力下で変形し得るように充分柔軟であるか否かを予測することが可能になる。
【0046】
動的機械分析の使用は、その粘弾性の研究を通してポリマーを特徴づけするために周知のことである。これらの試験から得られる2つのパラメータは、加わったひずみに対する同相応力の比であるE’と、ひずみに対する異相応力の比であるE’’である。E’は1サイクルあたりの蓄積された機械エネルギーに関係づけられ、E’’は粘性分散を通して熱に転換されたエネルギーに関係づけされる。E’は貯蔵弾性率と呼ばれ、E’’は損失弾性率と呼ばれる。材料損失係数または損失正接は、一変形サイクルあたりに蓄積されたエネルギーに対する散逸エネルギーの比を表わすtanδ=E’’/E’である。物理的意味では、貯蔵弾性率は材料の剛性に関係づけされ、損失弾性率は材料の減衰能の中に反映される。ピークtanδ値において、粘性力と弾性力は平衡化されている。弾性力は、試験中に蛍光ペンにより誘発された印刷画像の変形を補償する傾向をもつ。損失正接は、粘性力対弾性力の比である。ピーク損失正接値において、粘性力と弾性力は平衡がとれている。弾性力は試験中に蛍光ペンにより誘発された画像の変形を補償する傾向をもつ。損失正接がピーク値よりも有意に高いかまたは低い場合には、画像は過度に脆いかまたは柔くなり、スミアが発生する。
【0047】
動的機械分析の一般的論述は、Encyclopedia of Polymer Science and Technologyのポリマー熱分析の節に見出されるかもしれない。
【0048】
ポリウレタン分散(PUD)
本発明によると、「ポリウレタン分散」という用語は、当業者がこの用語を理解する通り、ウレタン基そして任意には尿素基を含むポリマーの水性分散を意味する。これらのポリマーは同様に、水中のポリマーの安定した分散を維持するために必要とされる程度に親水性官能基を取込んでいる。
【0049】
ポリウレタンは、上述の熱特性の評価に基づいて選択される。類似の合成スキームを有する任意の所与のポリウレタンセット中において、一見類似の要領で調製されたポリウレタンについて上述した熱特性を有するものはわずか1つしかないかもしれない。ポリウレタンの調製については、以下で説明する。
【0050】
ポリウレタン分散は、取込まれたイオン官能基、特にアニオン官能基例えば中和された酸性基を通して分散中でポリマーが優先的に安定化されているポリウレタン分散である。これらのポリウレタンはアニオン安定化ポリウレタン分散と呼ばれる。さらなる詳細は、以下で提供されている。
【0051】
このような水性ポリウレタン分散は、最初にイソシアネート富有(N=C=O、NCO)プレポリマーを形成し、その後任意には多機能基鎖延長剤の存在下で水相中で鎖を延長させる多段階プロセスによって調製されてよい。余剰のイソシアネート反応基を有するポリウレタンも使用されてよい。
【0052】
典型的には、ポリウレタン形成において、1つ以上のイソシアネート反応基を含む化合物ならびに、1つの酸性基または酸性塩基を含むイソシアネート基またはイソシアネート反応基を伴う少なくとも1つの化合物とジイソシアネートとを反応させて、中間生成物を形成する。イソシアネート基とイソシアネート反応基のモル比は、1.0:1.5から1.0:0.67まで変動してよい。
【0053】
イオン基(または、例えば中和を介してイオン性が付与されるかもしれない基)を含むイソシアネート反応性化合物と反応させるのに適したジイソシアネートは、芳香族、脂環式または脂肪族結合イソシアネート基のいずれかを含むものである。より適切なジイソシアネートとしては、ポリエーテルグリコール、ジイソシアネートおよびジオールからポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素を調製するのに有用なあらゆるジイソシアネートが含まれ、あるいはアミンを使用してもよい。適切なポリイソシアネートは、イソシアネート基に結合した芳香族、脂環式または脂肪族基のいずれかを含むものである。これらの化合物の混合物を使用してもよい。適切な化合物は、脂環式または脂肪族部分に結合されたイソシアネートを伴う化合物である。芳香族イソシアネートが使用される場合、脂環式または脂肪族イソシアネートも同様に存在することが適切である。Rを脂肪族基と置換してもよい。
【0054】
適切なジイソシアネートの例としては、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI);2,6−トルエンジイソシアネート;トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI);3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート(TODI);ドデカンジイソシアネート(C12DI);m−テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI);1,4−ベンゼンジイソシアネート;トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI);1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);4,6−キシリエンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI);およびそれらの組合せが含まれるが、これに限定されない。IPDIおよびTMXDIが最も適切である。
【0055】
ジイソシアネートとの混合物中には、ジイソシアネートの重量に基づいて約3重量%未満の少量のモノイソシアネートまたはポリイソシアネートを使用してよい。有用なモノイソシアネートの例としては、オクタデシルイソシアネートなどのアルキルイソシアネートおよびフェニルイソシアネートなどのアリールイソシアネートが含まれる。ポリイソシアネートの例は、トリイソシアナトトルエンHDIトリマー(Desmodur3300)、およびポリマーMDI(Mondur MRおよびMRS)である。
【0056】
酸性基すなわちカルボン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基、ホスホン酸基およびホスホネート基を含むイソシアネート反応性化合物は、ポリウレタン中に化学的に取込まれて、親水性を提供し、ポリウレタンが水性媒質内に安定した形で分散できるようにする。酸性塩は、NCOプレポリマーの形成前、その間またはその後のいずれか、適切にはNCOプレポリマーの形成後に、対応する酸性基を中和することにより形成される。スルホン酸基を含むイソシアネート反応性化合物を使用してもよい。
【0057】
スルホン酸の例には、スルホン酸置換基を伴うジオールが含まれる。その例は、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタン−スルホン酸である。
【0058】
カルボキシル基を取込むための適切な化合物は、米国特許第3479310号明細書、米国特許第4108814号明細書および米国特許第4408008号明細書中に記載されている。カルボン酸基をカルボキシレート塩基に転換するための中和剤について以下で記述する。
【0059】
カルボキシル基含有化合物には、(HO)Q(COOH)という式に対応するヒドロキシル−カルボン酸が含まれ、ここでQは1〜12個の炭素原子を含む線状または分岐炭化水素ラジカルを表わし、xは1または2、適切には2であり;yは1〜3、より適切には1または2、最も適切には1である。
【0060】
これらのヒドロキシ−カルボン酸の例としては、クエン酸、酒石酸およびヒドロキシピバリン酸が含まれる。
【0061】
特に適切な酸は、x=2、y=1である上述の構造式の酸である。これらのジヒドロキシアルカン酸については、米国特許第3412054号明細書中に記載されている。特に適切なジヒドロキシアルカン酸は、
【0062】
【化1】

【0063】
という構造式Iにより表わされるアルファ,アルファ−ジメチロールアルカン酸であり、式中Q’は、水素または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基である。最も適切な化合物はアルファ,アルファ−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、すなわちここで上述の構造式I中Q’はメチルである。
【0064】
酸性基は、ポリウレタン樹脂固形分1グラムあたり少なくとも約10、より適切には少なくとも約18ミリグラムのKOHというイオン基含有量を提供するのに充分な量で取込まれる。酸性基含有量の上限は、ポリウレタン樹脂固形分1グラムあたり約100、より好ましくは約70そして最も好ましくは約60ミリグラムである。
【0065】
適切なより高分子量のイソシアネート反応基は、少なくとも2個のヒドロキン基を含むポリオールであるかもしれない。これらをプレアダクツと反応させてNCOプレポリマーを調製してよく、これらは約400〜約6000、適切には約800〜約3000そしてより適切には約1000〜約2500の分子量を有するものである。分子量は、数平均分子量(Mn)であり、末端基分析(OH数、ヒドロキシル分析)により決定される。これらの高分子量化合物には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシポリカーボネート、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリエステルアミドおよびポリヒドロキシポリチオエーテルが含まれる。ポリオールの組合せをポリウレタン内で使用してもよい。ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリヒドロキシポリカーボネートが最も適切である。
【0066】
ヒドロキシル基を含むポリ(メト)アクリレートには、カチオン、アニオンおよびラジカル重合などの付加重合技術において一般的なものが含まれる。最も適切であるのは、アルファ−オメガジオールである。これらのタイプのジオールの一例は、ポリマーの末端またはその近くにおける1つのヒドロキンルの配置を可能にする「リビング」または「制御」または連鎖移動重合プロセスにより調製されるものである。
【0067】
NCOプレポリマーまたはポリウレタンのわずかな分岐が望まれる特殊な場合においては、イソシアネート重付加反応で適切には二官能性である上述の構成成分に加えて、トリメチロールプロパンまたは4−イソシアナントメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートなどのポリウレタン化学において一般に公知である多官能性およびごく一部の三官能性以上の官能性構成成分を使用してもよい。ただし、NCOプレポリマーは実質的に線状でなくてはならず、これは、プレポリマー出発構成成分の平均官能性を2:1以下に維持することで達成されてよい。
【0068】
他の任意の化合物としては、側方または末端の親水性酸化エチレンまたはプロピレン単位を含むイソシアネート反応性化合物が含まれる。側方または末端の親水性酸化エチレン単位を取込むためのイソシアネート−反応性化合物は、1つまたは2つのイソシアネート反応基、適切にはヒドロキシ基を含んでいてよい。他の任意の化合物には、自己縮合性部分を含むイソシアネート反応性化合物が含まれる。これらの化合物の含有量は、所望の樹脂特性を提供するのに必要な所望の自己縮合レベルによって左右される。3−アミノ−1−トリエトキシシリル−プロパンが、アミノ基を通してイソシアネートと反応しなおかつ水に逆転された場合にシリル基を通して自己縮合する化合物の一例である。
【0069】
NCOを富有するポリウレタンは、典型的にNCOプレポリマーを鎖延長することによって調製される。適切な鎖延長剤は、任意には部分的または全面的にブロックされているかもしれないポリアミン鎖延長剤である。少なくとも部分的にブロックされたジアミンまたはヒドラジン鎖延長剤とNCOプレポリマーを水の無い状態で混合し、次にこの混合物を水に添加することによる水性ポリウレタン分散の調製。水と接触した時点で、ブロッキング剤が放出され、結果として得られるブロックされていないポリアミンはNCOプレポリマーと反応してポリウレタンを形成する。
【0070】
任意には、ポリウレタン分散のポリウレタンは、鎖延長されたイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーに基づくものであり、ここで、このイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーは、イソシアネート官能基の当量がイソシアネート反応性官能基の当量よりも大きい酸性基または酸性塩基を伴う少なくとも1つ以上のイソシアネート反応基および1つ以上のイソシアネート反応基を含む少なくとも1つの化合物とジイソシアネートとを反応させることによって調製されたプレポリマーを含む。
【0071】
適切なブロックされたアミンおよびヒドラジンとしては、ケチミンおよびアルジミンを形成するためのポリアミンとケトンおよびアルデヒドとの反応生成物、ならびに、ケタジンおよびアルダジン、ケトンヒドラゾンおよびアルデヒドヒドラゾンを形成するためのヒドラジンとケトンおよびアルデヒドとの反応が含まれる。少なくとも部分的にブロックされたポリアミンは多くとも1つの第1級または第2級アミノ基および、水の存在下で遊離第1級または第2級アミノ基を放出する少なくとも1つのブロックされた第1級または第2級アミノ基を含む。
【0072】
少なくとも部分的にブロックされたポリアミンを調製するための適切なポリアミンは、2対6、適切には2対4そしてより適切には2対3の平均官能性すなわち1分子あたりのアミン窒素数を有する。所望の官能基は、第1級または第2級アミノ基を含むポリアミンの混合物を用いることによって得られるかもしれない。ポリアミンは一般に芳香族、脂肪族または脂環式アミンであり、1〜30、適切には2〜15そしてより適切には2〜10個の炭素原子を含む。これらのポリアミンは、それらが第1級または第2級アミンほどイソシアネート基との反応性を有していないことを条件として、追加の置換基を含んでいてよい。これらの同じポリアミンは、部分的または全体的にブロックされたポリアミンであってよい。
【0073】
適切なポリアミンとしては、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミンまたはIPDA)、ビス−(4−アミノ−シクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、1,6−ジアミノヘキサン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびペンタエチレンヘキサミンが含まれる。ヒドラジンも同様に適切である。
【0074】
ポリウレタンがNCOを富有する場合の鎖延長剤の量は、プレポリマー中の末端イソシアネート基の数によって左右される。プレポリマーの末端イソシアネート基と鎖延長剤のイソシアネート反応基の比は、当量ベースで約1.0:0.6〜約1.0:1.1の間、より適切には約1.0:0.8〜約1.0:0.98の間である。アミンで鎖延長されていないあらゆるイソシアネート基が、ジアミン鎖延長剤として機能する水と反応する。
【0075】
鎖延長は、プロセス内で水を添加する前に発生してよいが、典型的には、撹拌しながらNCOプレポリマー、鎖延長剤、水および他の任意の構成成分を組合せることによって発生する。
【0076】
ポリウレタン合成に化学的に参与しない他のモノマーおよび/またはオリゴマーを添加してもよい。ポリウレタン合成に全く干渉しないかぎり、合成サイクル中のどの時点で添加を行なってもよい。相容性あるオリゴマー/モノマーの具体例としては、SAAと略されるスチレンアリルアルコールがある。
【0077】
分子量も同様に、ポリウレタンを定義するのに使用してよいポリウレタンの特性である。分子量は、通常、重量平均分子量Mwとして報告される。適切な分子量はMwとして14,000超である。ポリウレタン結合剤は、分子量ガウス分布に限定されず、二峰性分布などの他の分布を有していてよい。
【0078】
ポリウレタン分散の粒径は典型的には約30〜約100,000nmの範囲内にある。インクジェットインクのポリウレタン結合剤の適切な範囲は約30〜約350nmである。
【0079】
安定した分散を得るためには、任意の親水性酸化エチレン単位と組合された時点で、結果として得られるポリウレタンが水性媒質中に安定した形で分散した状態にとどまるように、充分な量の酸性基を中和しなければならない。一般的には、少なくとも約75%、より適切には少なくとも約90%の酸性基が、対応するカルボキシレート塩基に中和される。
【0080】
NCOプレポリマーへの取込みの前、その間またはその後のいずれかで酸性基を塩基に転換するための適切な中和剤としては第3アミン、アルカリ金属カチオンおよびアンモニアが含まれる。適切なトリアルキル置換第3アミン、例えばトリメチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンおよびジメチルエチルアミンを使用してよい。
【0081】
中和は、プロセス内のどの時点でも発生してよい。典型的手順は、プレポリマーの少なくとも一部の中和を含み、次にこれは、追加の中和剤の存在下で水の中で鎖延長される。
【0082】
最終生成物は、最高約60重量%、適切には約15〜約60重量%そしてより適切には約30〜約45重量%の固形分含有量を有するポリウレタン粒子の安定した水性分散である。しかしながら、所望される任意の最低固形分含有量まで分散を希釈することも常に可能である。任意の適切な添加順で、ポリウレタン粒子、インクビヒクル、自己分散型顔料および他のインク構成成分の安定した水性分散は組合わされる。
【0083】
自己分散型顔料(SDP)
前に指摘された通り、SDPは一般的な意味で、当業者には周知である。
【0084】
典型的には、SDPは、別個の分散剤が不要であるように水中での自己分散性を与えるように表面処理された顔料である。顔料はカーボンブラックのように黒色であってよく、あるいは、PB15:3および15:4シアン、PR122および123マゼンタおよびPY128および74イエローなどの有色顔料であってよい。
【0085】
顔料は、その表面上にカルボニル、カルボキシル、ヒドロキシルおよびスルホン基またはそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を結合させるように、表面が処理されていてよい。この表面処理された顔料は、官能基または官能基を含む分子を顔料の表面上にグラフトすることによってか、または物理的処理(例えば真空プラズマ)または化学的処理(例えば次亜塩素酸、スルホン酸などを用いた酸化)によって調製されてよい。一タイプのまたは複数のタイプの官能基を顔料粒子上にグラフトしてよい。1つまたは複数の官能基のタイプおよびグラフティング度は、インク中の分散安定性、色密度およびインクジェットヘッドの前端部での乾燥特性などを考慮に入れることにより、適切に決定されるかもしれない。
【0086】
本発明で使用可能な黒色顔料は、例えば、米国特許第6,852,156号明細書中に記載されている方法により生産されてよい。この公報中に記載されている方法によって処理されたカーボンブラックは、水中で非常に安定した分散を提供するべく塩基で中和される表面活性水素含有量を有する。有色顔料に対してこの方法を応用することも可能である。特にカーボンブラックのために適切な酸化剤はオゾンである。適切な酸化顔料は、3μモル/M未満の酸価を有する。
【0087】
市販のSDP製品を使用してもよい。例としては、オリエント化学工業株式会社製のMicrojet CW1およびCabot Corporation製のCab−O−Jet200および300が含まれる。
【0088】
インクジェットに適したものとして、当該技術分野では、単独のまたは組合わされた形での多様な有機および無機顔料が公知である。あらゆる顔料インクジェットインクがそうであるように、インクを発射するのに使用されるノズルのオリフィスの詰まりや閉塞を回避するため、顔料粒子が充分小さいものとなるよう注意しなければならない。小さい顔料粒子は同様に、顔料分散の安定性にも影響を及ぼし、これは、インクの耐用期間全体にわたりきわめて重要である。
【0089】
有用な粒径は、典型的には約0.005ミクロン〜約15ミクロンの範囲内にある。顔料粒径は約0.005〜約5ミクロン、より適切には約0.005〜約1ミクロンそして最も適切には約0.005〜約0.3ミクロンの範囲内でなくてはならない。
【0090】
主成分の割合
このインク中で用いられる顔料レベルは、印刷画像に所望の色密度を付与するのに典型的に必要とされるレベルである。典型的には、顔料レベルはインクの約0.01重量%〜約20重量%である。
【0091】
ポリウレタン分散は、以上で記述した熱パラメータに基づいて選択され、インク中で使用される量は、求められる定着度および許容可能なインク特性の範囲により影響される。典型的には、ポリウレタン分散レベルはインクの最高約10重量%、適切には約0.1重量%〜約10重量%、より適切には約0.2〜約4重量%の範囲内となる。多くの場合、非常に低いポリウレタン分散レベルでさえ或る程度の改善されたインク定着が得られるかもしれない。より高いレベルではより良好な定着が得られるが、一般に、或る点で、粘度は過度に増加し、噴出性能は許容できないものとなる。特性の正しい平衡を各々の状況について決定しなければならず、この決定は一般に、当業者の技能範囲内に充分入る日常的実験により行なわれてよい。
【0092】
2つ以上のポリウレタン分散の組合せも利用してよい。ポリウレタン分散を、ポリアクリレート/ポリメタクリレートなどの他の結合剤と組合せて使用してもよい。
他の成分
インクジェットインクは当該技術分野において周知の他の成分を含んでいてよい。例えばアニオン性、非イオン性、カチオン性または両性界面活性剤を使用してよい。水性インク中、界面活性剤は典型的に、インクの合計重量に基づいて約0.01〜約5%、適切には約0.2〜約2%の量で存在する。
【0093】
インク組成物の閉塞阻害特性を改善するために共溶媒を含み入れてよい。この「閉塞(pluggage)」の特徴は、結果として印刷画像の低下をもたらす閉塞したノズルを観察することにより明らかになる。
【0094】
微生物の成長を阻止するために殺生物剤を使用してよい。
【0095】
重金属不純物の有害効果を無くするために、EDTAなどの金属イオン封鎖剤も含み入れてよい。
【0096】
インク組成物のさまざまな特性を所望の通りに改善するために、他の公知の添加剤も添加してよい。例えば、グリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールなどの浸透剤を調合に加えてもよい。
【0097】
グリコールエーテルには、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソ−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソ−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−イソ−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−イソ−プロピルエーテルが含まれる。
【0098】
適切な1,2−アルカンジオールは、1,2−C1−6アルカンジオール、より適切には1,2−ヘキサンジオールである。
【0099】
添加される1つまたは複数のグリコールエーテルおよび1つまたは複数のアルカンジオールの量は、適切に決定されなくてはならないが、典型的には、インクの合計重量に基づいて約1〜約5重量%そしてより典型的には約2〜約10重量%である。
【0100】
ポリウレタン分散の熱特性
ポリウレタンの熱特性は、ポリウレタンの膜を調製することにより試験された。濃縮ポリマー溶液(約40%)を合計固形物が18%になるまで水で希釈した。さらに、最高1%のブチルセロソルブを試料に添加した。試料をバイアル内に入れ、このバイアル自体を3時間真空チャンバ内で脱気した。気泡の無いポリマー溶液を50mm入りPTFE皿に穏やかに注ぎ込み、オーブン内において70℃で一晩乾燥した。その後、皿から試料を取り出し、逆転させてPE膜上に置き、さらに底側を乾燥させた。膜に気泡が無いようにすることが重要であった。
【0101】
膜を約3cm×1cmの矩形に切断し、SEIKOP DMS210 Tensile Mode Analyzerの試料ホルダー上に挟持した。チャンバ内の温度を−150Cから100Cまで変動させ、その間試料を線形粘弾性領域内で変形させた。変形振幅は10ミクロンより小さく、周波数は1Hzであった。張力データから、貯蔵(弾性)および損失(粘性)弾性率を決定し、自動でプロットした。ガラス転移温度を、損失弾性率曲線のピークから決定した。
【0102】
使用された試験設備:セイコーインスツルメント株式会社製のSDM5600コントローラ付きDMS210(引張り構成用)分析装置:温度範囲;−150−500C;RT Instruments;Woodland、CAより入手可能。
【0103】
インク特性
噴出速度、液滴分離長、滴下サイズおよび流れ安定性は、インクの表面張力および粘度により大きく影響を受ける。インクジェット印刷システムと共に使用するのに適した顔料インクジェットインクは、25℃で約20mN/m(ダイン/cm)〜約70mN/m(ダイン/cm)、より適切には約25〜約40mN/m(ダイン/cm)の範囲内の表面張力を有していなくてはならない。粘度は、25℃で約1mPa・s(cP)〜約30mPa・s(cP)の範囲内、より適切には約2〜約20mPa・s(cP)の範囲内にある。インクは、ペンの駆動周波数およびノズルの形状およびサイズなど、広範囲の駆出条件と相容性ある物理的特性を有する。インクは、長期間にわたり優れた貯蔵安定性を有していなくてはならない。さらに、インクは、それと接触するインクジェット印刷デバイスの部品を腐食してはならず、本質的に無臭かつ無毒性でなくてはならない。適切なインクジェット印刷ヘッドとしては、圧電および熱液滴発生器を伴うものが含まれる(ただしこれに限定されない)。
【0104】
ポリウレタン分散を伴うインクジェットインクの評価
ポリウレタン分散を伴う水性インクジェットインクは、任意の適切な順序でポリウレタン分散、自己分散型顔料、水、および以上に列挙された他のインク成分を添加することにより調製された。
【0105】
試験されたインクは、例えば米国特許第6,852,156号明細書中の発明による実施例1〜7のいずれか1つにより調製された黒色SDPを用いていた。
【0106】
プリンタドライバを720dpi;色調整無し;精細度最高;高速用に設定したエプソンスタイラスカラー980などのインクジェットプリンタを用いてHammermill Copy PlusおよびXerox4024などの普通紙に印刷することによって、インクの評価を行ってよい。
【0107】
光学密度および色(LabCh)測定は、光学密度測定用に「Status 1」(狭帯域)および「absolute」に設定したGreytag spectro−densiometerを用いて行なわれる。
【0108】
印刷品質は、テストパターンを印刷しこのように印刷されたテストパターンを観察することによって決定される。パターンを構成する正方形(10mm×10mm)を、Hammermill Copy PlusまたはXerox4200用紙のいずれかの上に720dpiで印刷する。印刷された正方形に「白色ライン」が無いか拡大鏡を用いて検査する。典型的には、白色ラインの存在は、ノズルの詰まりおよび/または不整合を示唆している。試料は以下のように評定される。「P」(不可)または0〜1:多数の「白色ライン」が存在;「F」(可)または2〜3:わずかな「白色ライン」が存在;「G」または4〜5:「白色ライン」は皆無。不合格の評定は、不可とほぼ同じであり、OK(合格)の評定は、良と等価である。使用されたプリンタが720dpiの設定を有していない場合、「高品質」設定が用いられる。
【0109】
結合剤無しのインクについては、水堅牢度は、異なる普通紙銘柄の間で幾分か可変的である傾向をもつ。本発明のポリウレタン結合剤は、あらゆる水堅牢度欠如を補償し、こうして本発明によるインクは、使用される用紙の如何に関わらず日常的に優れた水堅牢度を提供する。
【0110】
本発明のインクは、例えば約5mPa・s未満(20℃でLVTアダブタを伴うブルックフィールド粘度計)の比較的低い粘度の調合物中で、高いOD、耐水性および耐スミア性という有益な画像特性を達成してよりが、粘度に対する特定の制限は示されていない。
【0111】
スミアを判定するために、印刷がテストされ、1、2、3または4のスミア評点が割当てられた。プリンタ上で720dpiの設定を用いて、約7mm離隔した幅4mmの5本の平行な縞から成るパターンを印刷した。印刷された5本のライン上を横断して、蛍光マーカーにより1回および2回の互いに重なり合ったストロークを描いた。例えば、Avery Dennison Corp製のHi−Liter(登録商標)、ゼブラ株式会社製のゼブラ(登録商標)、株式会社パイロットコーポーレーション製のパイロット、Sanford Company製の蛍光マーカーおよび三菱鉛筆株式会社製のエコライターなど、適切な蛍光ペンが入手可能である。試験で使用する蛍光マーカーはAvery DennisonおよびSanford製である。これらのペンはアルカリ性と酸性の両方であり、可変的摩損度を有する。このプロセスは、テストパターンを印刷してから例えば1分、10分および1時間後など、さまざまな時間的間隔をおいてテストパターンの異なる部分について実施された。縞は検査され、スミア堅牢度について評定された。各縞からの評点を加算し、平均を計算した。三つの異なる印刷ページについてこのプロセスを反復した。P’’(不可)または1−印刷画像のひずみを含めた有意なスミアの強い証拠;「F」(可)または2、スミアの実質的な証拠、ただし印刷画像のひずみはほとんどなく、蛍光マーカーに実質的なインクが移行した;G(良)または3、この場合インクの幾分かのスミア化が観察され、蛍光マーカーに移行したインクはほとんどない;そしてE(優)または4、この場合、インクのスミア化は全く観察されず、インクは蛍光マーカーに一切移行していない。
【0112】
ポリウレタン分散の分子量はサイズ排除クロマトグラフィにより測定される。テトラヒドロフラン(THF)中のポリマーの溶液を、一定の細孔サイズの多孔質材料のパッキングを含む一連のカラム内に注入する。溶質と溶媒分子は細孔を通って拡散し、この細孔においてポリマーは分子サイズに基づいて分画される。結果として得たデータは、次に公知の分子量のポリスチレン標準と比較され、溶出体積情報を用いて計算される。
【0113】
顔料とポリウレタン分散の両方についての粒径は、動的光散乱によって決定される。実施例のためには、Honeywell製のMicrotrac UPA 150分析装置が用いられた。この技術は、粒子の速度分布と粒径の関係に基づくものである。各粒子からレーザーにより発生した光が散乱させられ、粒子のブラウン運動によりドップラー偏移させられる。偏移した光と偏移していない光の間の周波数差を増幅させ、デジタル化し、分析して粒径分布を回復させる。
【0114】
本発明のインクは一般に貯蔵安定性を示す。したがって、このインクは、粘度または粒径の実質的な増加無く、長期間にわたり閉鎖容器内で高温に耐えるかもしれない(例えば7日間70℃)。
【0115】
本発明の利点は、印刷後いかなる特殊な後処理も無く実現される。熱またはUV硬化または反応溶液での処理などの「定着」ステップは全く必要とされないが、このような作業は他の理由で有用であるかもしれず、特定の制限が暗示されるわけでは全くない。
【実施例】
【0116】
これらの実施例においては、以下の構成成分が利用された。
【0117】
【表1】

【0118】
他の一般的化学薬品はAldrichまたは同等の化学薬品供給源から得た。
【0119】
ポリウレタンを一般に公知の合成方法で製造する。一般に、ポリウレタン構成成分は任意の適切な順序で一緒に添加する。化学的構成成分は、イソシアネート反応基化合物、イソシアネート化合物および、ポリウレタン分散を安定化するイオン置換基を伴うイソシアネート反応性またはイソシアネート化合物である。初期反応のために有機溶媒が使用されることが多く、それに続いて水を添加して分散を得る。水の添加に先立ってまたは添加時点でイオン置換基を中和する。
【0120】
ポリウレタン分散の合成
表1は、試験されるポリウレタンについてのさまざまな合成パラメータを列挙している。表1に列挙されている合成パラメータは、以下の通りである:
1. ジオールはイソシアネート反応基であり、以下のものである;
a.PCDポリカーボネートジオール
b.PCD/ポリエステルジオール、(ポリカーボネートジオールとポリエステルジオールの混合物)
c.ポリエステルジオール
d.ポリエーテルジオール
2. ジオールMW
3. 活性ポリウレタン構成成分のジオールwt%
4. 活性ポリウレタン構成成分のイソシアネートwt%。指摘のある場合を除いて、イソホロンジイソシアネートを使用した。
5. イオン置換基を伴う化合物中の酸のタイプ:すなわち「C」はカルボン酸タイプ、そして具体的にはジメチロールプロピオン酸に対応し、「S」はスルホン酸そして具体的にはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタン−スルホン酸に対応する。
6. 中和剤
7. 中和により中和されたイオン基の%
8. プロセス修正は、イオン基化合物が他のジオールの前に添加されるか後に添加されるかを指摘する。PMPは、溶媒、ジオール、イソシアネート、酸含有構成成分が全て一緒に添加されるプレポリマー混合プロセスに対応する。acid 1stは、酸含有構成成分が溶媒に添加され、それに続いてイソシアネートが添加され、その後ジオールが添加されることを意味している。acid 2ndは、ジオールとイソシアネート反応物質を溶媒に添加し;ジオールが全て反応してしまうまで反応させること;そしてその後に酸構成成分を添加することに対応する。
9. 反応溶媒:アセトン(本明細書ではAceと表現される)、N−メチルピロリジノン(本明細書ではNMPと記される)
10. サイズ排除クロマトグラフィにより測定される、PUDのMおよび最終的ポリウレタンのM
【0121】
ポリウレタン分散17;調製例
添加用漏斗、凝縮器、機械式撹拌器および窒素ガスラインが備わったアルカリおよび酸を含まない乾燥したフラスコに対して、177.5gのNMP、56.2gのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタン−スルホン酸を添加した。内容物を60℃まで加熱し、充分混合した。フラスコに対して、ショットとして0.62gのDBTLを添加し、添加用漏斗を介してフラスコに171.1gのIPDIを15分間にわたり補給した。残留IPDIは全て、20.4gのNMPを用いて、添加用漏斗から洗い出してフラスコ内に流し込んだ。
【0122】
フラスコ温度を65℃まで上昇させ、次に全ての固体材料が反応し溶解してしまうまで415分間保持した。発熱を制御するため70〜80gの増分で反応フラスコに366.2gのポリエステルジオール(アジピン酸/1,6ヘキサンジオール/イソフタル酸)を添加した。反応混合物を65℃で75分間、NCO含有量が1.64%(重量%)未満になるまで65℃で反応させた。混合物を35℃まで冷却し、59.5グラムのNMPを添加して粘度を低下させた。
【0123】
3分間にわたり35℃の温度で528gの2%NaOH溶液を、その後10分間にわたり560.1gの脱イオン水、その後5分間にわたり水中の6.25%のエチレンジアミン(本明細書でEDAと記される)を、別個の添加用漏斗を介して加え、この漏斗を次に200.0gの水で洗い流した。混合物を1時間室温で撹拌し、次に2時間45℃に保持した。
【0124】
最終的ポリウレタン分散は、26.4%(重量%)の固形分含有量、18nmの平均粒径(d50)おびよ60cPsのブルックフィールド粘度(5rpm)を有している。
【0125】
比較用ポリウレタン分散2の調製例
添加用漏斗、凝縮器、撹拌器および窒素ガスラインが備わったアルカリおよび酸を含まない乾燥したフラスコに対して385gのDesmophene C1200(Bayerから市販されているポリエステルカーボネートジオール)、3.0gのZonyl(登録商標)TL(DuPontから市販されているフルオロ界面活性剤)、および120gのアセトンと0.04gのDBTLを添加した。内容物を40℃まで加熱し、充分混合した。次に122.7gのIPDIを、60分間40℃で添加用漏斗を介してフラスコに添加し、残留IPDIは全て15.5gのアセトンを用いて添加用漏斗からフラスコ内に洗い流した。
【0126】
フラスコ温度を50℃まで上昇させ、次に30分間保持した。32.3gのDMPAとそれに続いて21.9gのTEAを、添加用漏斗を介してフラスコに添加し、この漏斗を次に15.5gのアセトンで洗い流した。フラスコ温度をその後再び50℃まで上昇させ、NCO%が1.45%未満になるまで50℃に保持した。
【0127】
50℃の温度で、10分間にわたり705gの脱イオン(DI)水を、次に5分間にわたり71gのEDA(水中の6.25%溶液として)を、添加用漏斗を介して加え、この漏斗を次に20.0gの水で洗い流した。混合物を1時間50℃で保持し、その後室温まで冷却した。
【0128】
アセトン(−150.0g)を真空下で除去し、約35.0重量%の固形分および37nmの平均粒径を有する最終的ポリウレタン分散を残した。
【0129】
本発明による実施例1〜21;ポリウレタン分散
【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
使用したジオール:
PUD1、Eternacol UH−50;UBE Chemical製の1,6−ヘキサンジオールベースのポリカーボネートジオール
PUD2、11、13および14、Desmophene;Bayerから市販されているヘキサンジオールベースのカーボネートコ−カプロラクトンジオール
PUD3、Stepanpol PD56;Stepanから市販されているオルトフタレート−ジエチレングリコールベースの芳香族ポリエステル
PUD4、16、17、18および19、アジピン酸/1,6ヘキサンジオール/イソフタル酸
PUD5、7、9および10、ポリテトラメチレングリコール、TERATHANE650
PUD6および8;Stepan PD200LV;Stepanから市販されているオルトフタレート−ジエチレングリコールベースの芳香族ポリエステル
PUD12、ポリテトラメチレングリコール、TERATHANE1000
PUD19および20、1,6−ヘキサンジオールベースのポリカーボネートジオール;UBE Chemicalから市販されているEternacolUH−200
選択されるポリウレタンについての測定された酸価
PUD5、90
PUD6、30.6
PUD17、25
PUD19、30.6
PUD9およびPUD10は合成の複製である。
PUD20およびPUD21は合成の複製である。
【0133】
比較例1〜9;ポリウレタン分散
【0134】
【表4】

【0135】
組成物註:比較用PUD1は、Mace Adhesives and Coatings、Dudley Massachusettsから市販されているポリウレタン分散であるMace85−302である。
【0136】
使用されたジオール 比較用PUD2、3、5、7および8、Bayerから市販されているヘキサンジオールベースのカーボネートコーカプロラクトンジオールであるDesmophene
比較用PUD4、ポリテトラメチレングリコール、TERATHANE1400
比較用PUD5、Priplast3192;Unichemaから市販されているダイマー酸(C36)ベースのポリエステルジオール
【0137】
インクの調製および試験
インクは全て黒色SDPを用いて調製した。脱イオン水中の黒色SDPのスラリーに対して、順番にポリウレタン分散結合剤、グリセロール、エチレングリコールおよびSurfynol 465界面活性剤を添加した。10〜20分間混合した後、トリエタノールアミンでpHを8という最終値まで調整した。次に、5ミクロンのフィルターを通してインクをろ過し、脱ガスした。
【0138】
【表5】

【0139】
プリンタドライバを720dpi;色調整無し;精細度最高;高速用に設定したエプソンスタイラスカラー980を用いて、普通紙に印刷することにより、インクを評価した。これらの試料についてスミア試験を行なった。光学密度を、比較用PUD1からの印刷物についての結果と比較し、「+」の表記は、印刷物のODが比較例より優れていたことを意味し、「=」はODが比較例と等しかったことを意味し、「−」はODが比較例より低いことを意味していた。
【0140】
表4は、本発明による実施例1−21についての結果を示す。表は、ポリウレタン分散についてのスミア評定、光学密度および3つの熱パラメータ試験の結果を示している。
【0141】
【表6】

【0142】
【表7】

【0143】
【表8】

【0144】
熱パラメータについて試験した場合に、ポリウレタンを選択するための損失弾性率およびピーク損失正接基準の両方を満たしたポリウレタン分散は、4、6、8、11、17、20および21である。
【0145】
本発明によるインクと類似の要領で、比較用ポリウレタンをインクの形に調合し、テストした。結果は表5に報告されている。
【0146】
【表9】

【0147】
比較用ポリウレタン分散は、本発明によるポリウレタン分散よりも低いスミア性能をもたらす結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1重量%〜約20重量%の自己分散型顔料と約1重量%〜約10重量%のポリウレタン分散物とを含む水性インクジェットインク組成物において、前記ポリウレタン分散物が−30℃超〜35℃未満のガラス転移温度Tgを有し、
a. 1.7〜5×10パスカルの損失弾性率E’’、
b. ピーク損失正接が0.23〜0.65である、
という熱特性のうちの少なくとも1つを有し、ここで、前記ガラス転移温度Tg、ピーク損失正接および前記損失弾性率が、ポリウレタン分散物から調製された膜についての動的機械分析によって測定される、水性インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン分散物が1.7〜5×10パスカルの損失弾性率E’’を有し、前記ピーク損失正接が0.23〜0.65であり、ここで、ピーク損失正接および前記損失弾性率が、ポリウレタン分散物から調製された膜についての動的機械分析によって測定される、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン分散物が、2.4〜4.5×10パスカルの損失弾性率E’’を有し、ここで前記損失弾性率が、前記ポリウレタン分散物から調製された膜についての動的機械分析によって測定されている、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタン分散物が0.24〜0.45のピーク損失正接を有し、ここで前記ピーク損失正接が、前記ポリウレタン分散から調製された膜についての動的機械分析によって測定されている、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記自己分散型顔料が、アニオン親水性化学基を含む自己分散型カーボンブラック顔料である、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記自己分散型カーボンブラック顔料上のアニオン親水性化学基がカルボキシル基を含む、請求項5に記載のインク。
【請求項7】
前記自己分散型顔料は、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシルおよびスルホンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を顔料の表面上に結合させるように、次亜塩素酸、スルホン酸またはオゾンで表面が酸化的に処理された顔料を含んでいる、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記自己分散型顔料が、オゾンで表面が酸化的に処理された顔料を含む、請求項1に記載の水性インクジェットインク。
【請求項9】
前記ポリウレタン分散物がアニオン安定化されたポリウレタン分散物である、請求項1に記載の水性インクジェットインク。
【請求項10】
前記ポリウレタン分散物の前記ポリウレタンが、前記ポリウレタン分散物中のポリウレタンについて測定された10〜100mgKOH/グラムの酸価を有する、請求項1に記載の水性インクジェットインク。
【請求項11】
前記ポリウレタン分散物の前記ポリウレタンが、約14,000超の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の水性インクジェットインク。
【請求項12】
前記ポリウレタン分散物の前記ポリウレタンがスルホネートイオン基で置換されている、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項13】
2つ以上のポリウレタン分散物の組合せが使用される、請求項1に記載の水性インクジェットインク。
【請求項14】
前記インクが、25℃で約20mN/m〜約70mN/mの範囲内の表面張力と、25℃で約1mPa・s〜約30mPa・sの範囲内の粘度とを有する、請求項1に記載の水性インクジェットインク。
【請求項15】
基材上にインクを噴出するステップを含むインクジェット印刷方法において、前記インクが、約1重量%〜約20重量%の自己分散型顔料と約1重量%〜約10重量%のポリウレタン分散とを含む水性インクジェットインクであり、前記ポリウレタン分散が−30℃超〜35℃未満のガラス転移温度Tgを有し、
a. 1.7〜5×10パスカルの損失弾性率E’’、
b. ピーク損失正接が0.23〜0.65である、
という熱特性のうちの少なくとも1つを有し、ここで、前記ガラス転移温度Tg、ピーク損失正接および前記損失弾性率が、ポリウレタン分散物から調製された膜についての動的機械分析によって測定される、方法。
【請求項16】
前記基材が普通紙である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記自己分散型顔料が自己分散型カーボンブラックである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリウレタン分散が、アニオン安定化ポリウレタン分散物である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記インクが、前記インクの重量に基づいて約0.01〜約10重量%の顔料と0.1〜約10重量%のポリウレタンとを含む、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2013−510929(P2013−510929A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538922(P2012−538922)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056110
【国際公開番号】WO2011/059998
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】