説明

耐候性粘着シート

【課題】本発明は、引張り強度に優れ、屋外に使用するときも、劣化が少なく耐久性を有し、かつ、展開力が小さく、作業性に優れた耐候性粘着シートの提供
【解決手段】一軸延伸された熱可塑性樹脂のフラットヤーンからなる布状体の片面に、光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層と、第一の熱可塑性樹脂層の上に光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を積層し、布状体の他の面に粘着剤層を形成した耐候性粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性粘着シート、さらに詳しくは、耐候性に優れ、屋外装置に使用した場合にも劣化が少なく、また、ロール巻きしたときも粘着シート間のブロッキングが小さく、軽く引き出すことができ、作業性に優れた耐候性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル等の熱可塑性樹脂からなるシートは、柔軟で、弾力性があり、透明性、耐水性に優れていることから、農業用フィルム等として屋外装置品にも広く使用されている。
【0003】
これらの熱可塑性樹脂のシートは、柔軟であることから引張り強度が低く、引張り力が作用すると容易に伸長し、たるみが生じることから、熱可塑性樹脂製のシートを取付けるとき、あるいは、破れを補修するときは、広い面で接着して固定することが必要となり、一般に、テープ状基材に粘着剤を塗布した粘着テープを用いてテープ止めすることが行なわれている。
【0004】
かかる粘着テープ21は、図7に示すように、熱可塑性樹脂の一軸延伸フラットヤーン22a、22bを織成した布状体23の片面又は両面に熱可塑性樹脂製のフィルム24を積層した基材26に粘着剤27を塗着することによって形成されている。一軸延伸フラットヤーン22の布状体23に熱可塑性樹脂製のフィルム24を積層した基材を用いた粘着テープは、引張力に対して強く、また、手切れ性に優れたものとなる。
【0005】
しかし、熱可塑性樹脂単味の粘着テープ21を農業用フィルム等の屋外装置品の連結、取付けに使用すると、太陽光の照射を受けるために劣化が速く、長期の使用には耐えない問題あり、屋外装置に使用される熱可塑性樹脂には、耐久性を改良するために光安定剤を添加することが必要となる。
【0006】
しかるに、本発明者等が検討した結果、光安定剤を添加した熱可塑性樹脂を用いた基材シートに粘着剤を塗布した粘着テープは、ロール巻きすると粘着テープ間のブロッキングが強くなり、使用の際に粘着テープを引き出そうとすると大きな展開力(巻き戻す時の力)が必要となり、作業性が著しく低下する問題があることが判明した。
【0007】
その理由は明らかではないが、ロール状に巻き取ることによって、粘着剤が基材シートの反対側の面と密着され、その反対側の層に含まれる光安定剤が粘着剤に何らかの作用をし、反対側の層に対する粘着剤の粘着力が強くなり、その結果、展開力が大きくなるものと推定される。
【0008】
このため、屋外に使用するときも、劣化が少なく耐久性に優れると同時に展開力が小さく、作業性に優れた粘着テープの開発が必要とされた。
【特許文献1】特開平07−188471
【特許文献2】特開平11−318237
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、引張り強度に優れ、屋外に使用するときも劣化が少なく、耐久性を有すると共に、展開力が小さく、作業性に優れた耐候性粘着シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果なされたもので、具体的には、一軸延伸された熱可塑性樹脂のフラットヤーンからなる布状体の片面に、光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層と、第一の熱可塑性樹脂層の上に光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を積層し、布状体の他の面に、粘着剤層を形成してなることを特徴とする耐候性粘着シートを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、一軸延伸された熱可塑性樹脂のフラットヤーンからなる布状体の片面に、光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層と、第一の熱可塑性樹脂層の上に光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を積層し、布状体の他の面に光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層及び/又は光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を積層した後、粘着剤層を形成してなることを特徴とする耐候性粘着シート、布状体、第一の熱可塑性樹脂層、及び、第二の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、いずれもオレフィン系重合体である上記の耐候性粘着シート、布状体が高密度ポリエチレンであり、第一の熱可塑性樹脂層及び第二の熱可塑性樹脂層が高圧法低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンである上記の耐候性粘着シート、及び、布状体がフラットヤーンを下記式(1)で示される空隙率が5〜90%となるように交差して配設し、その交点が熱融着されてなる上記の耐候性粘着シートを提供するものである。
【0012】
【数2】

【0013】
さらに、本発明は、布状体が、経糸を構成するフラットヤーンの少なくとも一部が複数のフラットヤーンを重ね合わせた状態に織成されてなる上記の耐候性粘着シート、布状体が、経糸を構成するフラットヤーンの少なくとも一部が複数層を形成するように重なりをもつように織成されてなる上記の耐候性粘着シート、及び、光透過率が85%以上とされてなる上記の耐候性粘着シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明耐候性粘着シートは、機械的強度に優れ、屋外に使用するときも劣化が少なく、耐久性に優れ、かつ、粘着シート間のブロッキングが小さく、軽く引き出すことができ、作業性に優れた耐候性粘着シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の屋外用耐候性粘着シート1は、図1、図2に示すように、熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られたフラットヤーン2a、2bを交差せしめて形成した布状体3の片面に、光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層4を積層し、その上に光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層5を積層し、布状体3の他の面に、粘着剤を塗着して粘着剤層7を形成することによって構成される。
【0016】
また、粘着剤層7は、必要に応じて光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層及び/又は光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を介装することができ、図2は布状体3の他の面に光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂製のフィルム4を設けその上に粘着剤層7を形成した場合を示し、目的に応じて光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層5に代え、あるいは、両者を併用することもできる。
【0017】
本発明において布状体3とは、フラットヤーン2を用いて形成した可撓性のシート状体を総称するものとし、熱可塑性樹脂製の一軸延伸されたフラットヤーン2を、織布又は編布とし、又は、交差結合布(ソフ)として使用することができる。
【0018】
フラットヤーン2としては、扁平な一軸延伸糸が使用され、ヤーン、あるいは、ヤーンに縦方向の切り込みを多数形成したスプリットヤーンが用いられる。
【0019】
フラットヤーン2としては、図6(A)に示すように、基層11のみの単層体であってもよく、また、図6(B)に示すように、基層11の片面に接合層12が積層されたものとすることができ、また、図6(C)に示すように、接合層12が基層11の両面に積層されたものとすることもできる。さらに、図6(D)に示すように、シースコアー構造、図6(E)に示すように、サイドバイサイド構造とすることも可能である。
【0020】
フラットヤーン2の単層体、あるいは積層体の基層11を構成する熱可塑性樹脂としては、延伸効果の大きい樹脂、一般には結晶性樹脂が使用され、具体的には、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリアクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等を用いることができる。
【0021】
中でも加工性と経済性から高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体が望ましい。特に、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンが望ましく、高密度ポリエチレンとしては、密度が0.930〜0.970g/cm、好ましくは0.940〜0.960g/cmのものが使用される。
【0022】
接合層12は、フラットヤーン2が織成された後、フラットヤーン2間を接合し、あるいは、布状体3と第一の熱可塑性樹脂層4間を接合するもので、基層11を構成する熱可塑性樹脂より融点が低く熱融着性の優れた熱可塑性樹脂が用いられる。
【0023】
具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等を用いることができ、基層の熱可塑性樹脂との関係で基層より低融点の熱可塑性樹脂が選択される。特に、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体が望ましい。
【0024】
上記の熱可塑性樹脂には、オレフィン系重合体にビニルモノマーを含浸し、重合条件に附すことによって得られた複合樹脂を添加することによって手切れ性を改良することができる。
【0025】
オレフィン系重合体としては、フラットヤーン2を形成するオレフィン系重合体と同様のオレフィン系重合体を用いることができ、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のオレフィン系重合体を用いることができる。
【0026】
ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のアクリル系単量体を使用することができる。アクリル酸エステル系単量体におけるアルコール残基としては炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。
【0027】
ビニル単量体の含浸量は、オレフィン系重合体100重量部に対してビニル単量体10〜80重量部、好ましくは20〜80重量部の範囲が好ましい。ビニル単量体の含浸量が10重量部より少ないときは、複合樹脂が過度に微粒子となって分散するために手切れ性の改良効果が得られなくなる。また、ビニル単量体の含浸量が80重量部より多いと複合樹脂の分散粒子が粗大となり、フラットヤーン2の引張り強度が低下することになる。
【0028】
ビニル単量体を含浸重合した複合樹脂の添加量は、フラットヤーン2を構成する熱可塑性樹脂に対して10〜70重量%、好ましくは30〜50重量%が望ましい。ビニル単量体を含浸した複合樹脂が10重量%未満では手切れ性の改良効果が少なく、また、70重量%を越えるとフラットヤーン2の引張り強度が低下する。
【0029】
さらに、布状体3を形成する熱可塑性樹脂には、無機充填材を添加することができる。無機充填材の種類としては、熱可塑性樹脂添加材として自体公知の無機充填材を使用することができ、例えば、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ウオラストナイト、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等を使用することができる。無機充填材を配合することによって難燃性と手切れ性を向上することができ、無機充填材の配合量は、1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%である。
【0030】
基層11あるいは接合層12として用いられる熱可塑性樹脂には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。
【0031】
具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;含臭素有機系、メラミン系、リン酸系、燐酸エステル系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0032】
上記の複合樹脂、充填剤あるいは添加剤は、適宜組み合わせて、基層11や接合層12の材料組成物を製造するいずれかの工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0033】
フラットヤーン2として積層体が使用される場合、その成形材料となる積層フィルムを成形する手段としては、予め基層11となるフィルムと接合層12となるフィルムを形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段や、基層11となるフィルムの表面に接合層12となる熱可塑性樹脂をコーティングする方法、予め形成した基層11となるフィルムに接合層12を押出ラミネートする方法、あるいは、多層共押出法によって積層フィルムとして押出成形するなどの公知の手段から適宜選択して用いればよいが、成形の容易さやコスト面、並びに、製品の各層間の接着性及び光透過性の点では、多層共押出法によって基層11と接合層12の積層体を一段で得る方法が望ましい。
【0034】
また、延伸してフラットヤーン2とする手段としては、基層11となるフィルムを一軸方向に延伸した後、接合層12となる熱可塑性樹脂を積層し、これをテープ状にスリットしてもよく、あるいは、基層11と接合層12とが積層された積層フィルムをスリットする前、又は、スリットした後、一軸方向に延伸することによって得ることもできる。
【0035】
延伸方法としては、熱ロールによる延伸、熱板による延伸、熱風炉内でロールによって延伸する方法等によって行なうことができる。延伸倍率は、3〜12倍、好ましくは5〜10倍程度が適当である。
【0036】
フラットヤーン2の形状は目的に応じて任意に選定することができるが、一般的には、50〜3500デシテックス、好ましくは50〜2000デシテックス、糸幅が0.2〜5.0mm、好ましくは0.2〜3.0mmの範囲が望ましい。特に、経糸として繊度が100〜1500デシテックス、好ましくは200〜1000デシテックス、糸幅が0.2mm〜3.0mm、好ましくは0.3〜2.0mmの範囲が適する。また、緯糸としては、繊度が100〜3000デシテックス、好ましくは250〜1500デシテックスが適当であり、糸幅が0.2mm〜3.0mm、好ましくは0.3〜2.0mmが望ましい。
【0037】
得られたテープ状のフラットヤーン2は、図3に示すように、平織とし、又は、綾織、斜文織、畦織、二重織等に織製し、必要に応じてその交点を熱融着することによって得ることができる。あるいは、図4に示すように、多数のフラットヤーン2aを並列し、その上に交差するようにフラットヤーン2bを並列して交点を結合して交差結合布とした布状体3を用いることができる。
【0038】
フラットヤーン2の打込み密度は、目的に応じて任意に設定することができ、本発明を限定するものではないが、下記の式(1)で示される空隙率は、5〜90%、好ましくは10〜85%程度とされる。
【0039】
【数3】

【0040】
この場合、図5(A)に示すように、経糸として肉薄のフラットヤーン2a、2aを用いて、複数本を重ね合わせて織成することによって、柔軟で手切れ性のよい耐候性粘着シート1を得ることができ、また、図5(B)に示すように、経糸となるフラットヤーン2a、2aの少なくとも一部が重なり合った複層となるように織成することによって手切れ性を改良することもできる。
【0041】
布状体3の糸密度は、経糸が4〜25本/25.4mm、好ましくは5〜20本/25.4mmが適当であり、緯糸が3〜25本/25.4mm、好ましくは4〜20本/25.4mmとされ、経糸の繊度が緯糸の繊度より低く、経糸の打ち込み本数が緯糸の打ち込み本数より多くなるように形成されることが好ましい。一般に、布状体3のフラットヤーン2の繊度を、経糸:緯糸で1:1.1〜2.0の範囲とすることが望ましい。
なお、フラットヤーン2は、モノフィラメント、スパン糸等と組み合わせて使用することができるが、経糸はテープ状フラットヤーン単独であることが望ましい。
【0042】
布状体3の片面、具体的には、粘着剤層7が形成それる側の反対側面に、光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂性フィルム4が積層される。第一の熱可塑性樹脂層4を形成する樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等を用いることができる。中でも、オレフィン系重合体が望ましく、特にメタロセン触媒を用いて重合されたオレフィン系重合体、好ましくはメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、線状低密度ポリチレンを使用することが望ましい。
【0043】
第一の熱可塑性樹脂層4に添加される光安定剤としては、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系等を用いることができる。
【0044】
ヒンダードアミン系としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリディニル)エステル、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)が挙げられ、ベンゾエート系としては、2,4−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートが挙げられ、その他メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体を挙げることができる。特に、ブリーディングによる消失を防止するために、光安定化作用を有する化合物を高分子量化したものが好ましく、例えば、ヒンダードアミン、あるいは、ベンゾエートを側鎖に有するエチレン系共重合体が望ましい。
【0045】
上記の光安定剤は、熱可塑性樹脂に対して、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.03〜0.5重量%の割合で用いられる。
【0046】
これら、熱可塑性樹脂には、目的に応じて他の添加剤を添加することができ、具体的には、前述した酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤、難燃剤、無機充填材、充填材、顔料、抗菌剤等が挙げられる。
【0047】
布状体3に積層される第一の熱可塑性樹脂層4の少なくとも一層は、布状体3を構成する樹脂の融点より130〜220℃高い温度で積層することが好ましい。ラミネートを高温で行なうことによって、布状体3に熱可塑性樹脂が浸入して布状体組織を固定化する結果、手切れ性を向上することができる。布状体3に積層される第一の熱可塑性樹脂層4の厚みは、10〜100μm、好ましくは15〜70μmが適当である。
【0048】
本発明においては、光安定剤を含有する第一の熱可塑性樹脂層4の上には光安定剤を添加しないか添加量を少なくした第二の熱可塑性樹脂層5が積層されて基材6とされる。
【0049】
第二の熱可塑性樹脂層5を形成する熱可塑性樹脂は、第一の熱可塑性樹脂層4と同様の熱可塑性樹脂を使用することができ、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等を用いることができる。中でも、オレフィン系重合体が望ましく、特にメタロセン触媒を用いて重合されたオレフィン系重合体、好ましくはメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、線状ポリエチレンを使用することが望ましい。メタロセン触媒は、成形性、接着性に優れたオレフィン系重合体の製造が容易となる。
【0050】
第二の熱可塑性樹脂層5は、光安定剤を添加しないか又は僅かな量とされ、添加量は0.01重量部未満とされる。第二の熱可塑性樹脂層5は、光安定剤を添加しない場合においても、第一の熱可塑性樹脂層4に含有される光安定剤のブリーディング作用によって光安定性を得ることができる。本発明においては、第二の熱可塑性樹脂層5に第一の熱可塑性樹脂層4に含有される光安定剤が移行する場合があり、かかる場合においても、出発材料として光安定剤含有量が少ない熱可塑性樹脂を用いた場合には効果を得ることができ、本発明に含まれるものである。
【0051】
なお、本発明においては、布状体3、第一の熱可塑性樹脂層4、第二の熱可塑性樹脂層5等の耐候性粘着シート1を構成する材料として、全てをオレフィン系重合体で形成することが望ましい。同種の樹脂を用いることによって廃品の回収、再生を容易にすることができる。
【0052】
また、布状体3の他の面には、図1に示すように、粘着剤が塗着され、粘着剤層7が形成される。この場合、図2に示すように、第一の熱可塑性樹脂層4と第二の熱可塑性樹脂層5のいずれか一方又は両者を積層して、粘着剤層7を、第一の熱可塑性樹脂層4と第二の熱可塑性樹脂層5のいずれか一方又は両者を介装した状態に形成することができる。両者を積層するときは、布状体3側に第一の熱可塑性樹脂層4を形成し、その上に第二の熱可塑性樹脂層5を積層するのが一般的である。
【0053】
基材6の粘着剤層7を塗布する面には、必要に応じて、粘着剤との密着力を高めるため、その表面にサンドブラスト処理や火炎処理等の物理的処理またはコロナ処理やプラズマ処理等の化学的処理、あるいは、プライマー処理等を施すことが好ましい。
【0054】
本発明の粘着剤層7に用いられる粘着剤としては、粘着テープ用の粘着剤として一般的に用いられるものでよく、例えば、アクリル樹脂系粘着剤、天然ゴムや合成ゴム等のゴム系粘着剤、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体並びにこれらの水素添加物等のブロック共重合体系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等が挙げられるが、なかでも耐久性や耐候性に優れ、取り扱い時の汚れも少ないアクリル樹脂系粘着剤が好適に用いられる。これらの粘着剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0055】
これらの粘着剤の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、溶液型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、ホットメルト型粘着剤、反応型粘着剤、光重合可能なモノマー型粘着剤等のいずれの形態であってもよい。
【0056】
また、これらの粘着剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、ポリイソシアネート系化合物やアジリジン系化合物、金属キレート系化合物等の架橋剤や、粘着性付与剤、カップリング剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、難燃剤、帯電防止剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が添加されていてもよい。
【0057】
また、基材6上に形成される粘着剤層7は、特に限定されるものではないが、その厚みが10μm〜0.5mmであることが好ましい。粘着剤層7の厚みが10μm未満であると、粘着テープ1の粗面接着性や凹凸追従性が不十分となることがあり、逆に粘着剤層7の厚みが0.5mmを超えると、粘着性や接着力はもはやそれ以上向上しないにもかかわらず、コスト高となることがある。
【0058】
アクリル樹脂系粘着剤についてさらに詳細に述べれば、アクリル樹脂系粘着剤としては、カルボキシル基含有単量体、あるいは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を重合させて得られるアクリル系ポリマーが用いられる。
【0059】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は炭素数が4〜12程度が望ましく、具体的には、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に、n−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートが好適である。
【0060】
カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等のモノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸やこれらのモノエステル等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。カルボキシル基含有重合性単量体は、単量体全体の1〜20重量%程度が望ましい。
【0061】
本発明で使用されるアクリル樹脂系粘着剤には、ガラス転移温度や極性等を調整する目的で少量の改質成分単量体が共重合されていてもよい。このような単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、ビニルピロリドン等が例示できる。
【0062】
アクリル系ポリマーには、分子内にカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する多官能性化合物、または多官能性化合物及び分子内に前記官能基を1個有する単官能性化合物を配合することができる。この種の官能基含有化合物としては、例えば、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基(或いはグリシジル基)含有化合物、アジリジニル基含有化合物、金属錯体、メラミン系化合物等が例示できる。
【0063】
また、粘着剤組成中に少量の可塑剤を配合することで特に有効である。配合される可塑剤の種類は限定されるものではなく、例えば、脂肪族多価カルボン酸のエステル、芳香族多価カルボン酸のエステル、リン酸エステル等の低分子可塑剤やポリエステルのような高分子可塑剤等が例示できるが、脂肪族2塩基酸のエステルが特に有効であり、中でもアジピン酸ジエステルが最も好適である。その配合量は0.05〜4重量%が好ましい。
【0064】
粘着剤中にはベンゾトリアゾール系化合物を添加することが望ましい。ベンゾトリアゾール系化合物は、金属腐蝕を防止する作用が知られており、これを配合することで金属腐蝕による変色をより効果的に防止することが可能となる。ベンゾトリアゾール系化合物は有効量が添加されればよく、およそ0.01〜5重量%程度が有効量である。
【0065】
粘着剤は、通常、適宜の有機溶剤に溶解された上で、基材6上に塗工した後乾燥され、或いは、離型処理が施された工程紙上に塗工後乾燥されたものが支持体上に転写されて、積層シート6と粘着剤層4が積層された耐候性粘着シート1とされる。塗工手段や乾燥方法に制限はなく、公知のものが採用できる。
【0066】
また、基材6の背面、即ち、粘着剤層7が積層される面の反対面であって、ロール状に巻き取ったときの粘着剤層表面が接触する面には、巻き戻す際の剥離力(展開力ともいう)を軽くするために、離型処理を施すことができる。また、離型処理を施した離型紙を貼付することができる。離型処理としては、必要により硬化反応を伴うシリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキルグラフトポリマー系離型剤の塗布等を挙げることができる。
【0067】
なお、本発明耐候性粘着シート1は、光の取り入れをよくし、あるいは、貼付を目立たなくするために、光透過率を85%以上、好ましくは90%以上とすることも望ましい態様である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の手切れ性を改良した耐候性粘着シート1は、梱包の封止、機器の保護、建造物の仕切り、工事現場の閉鎖等のためのシートをテープ止めする等、広く使用することができる。
【実施例】
【0069】
(測定法)
作成したサンプルの初期性能、耐候促進後の性能を下記の方法で測定した。
【0070】
a.粘着性
粘着シートを幅25mm,長さ200mmに裁断し、これをSUS304研磨板に貼り付け、2Kgのロールを1往復させて圧着し、20分放置後引張試験機、島津オートグラフAG500にて180°方向へ300mm/minの速度で引き剥がしその抗力を測定した。
【0071】
b.引張り強度
引張試験機オートグラフAG500を用い、JIS L1096一般織物試験法6,12、A法に規定されるカットストリップ法にて、試料巾50mm、試料長(ツカミ)200mmに速度300mm/minの速さで引き、破断点における抗張力を求めた。
【0072】
c.低速巻戻し力(展開力)
オートグラフAG500を用い、測定治具に装着したテープロールを、300mm/minの速度で下方向へ引き出し、その抵抗値を測定した。
【0073】
(実施例1)
布状体の製造
インフレーション成形法によって、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製HY−333、密度0.956g/cm、MFR0.55)の両面に低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製X419、密度0.925g/cm、MFR4.0)を積層した3層フィルムとし、得られたフィルムをレザーによってスリットした。次いで、温度110〜120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度120℃の熱風循環式オーブン内で6%の弛緩熱処理を行ない、糸幅0.7mm、繊度610デシテックスの経糸と、糸幅0.8mm、繊度670デシテックスの緯糸を製造した。
【0074】
得られた経緯糸をスルーザー織機に用いて、経糸5本/25.4mm、緯糸5本/25.4mm、目付け量40g/mの平織織布とした。
【0075】
織布の片面に、第一の熱可塑性樹脂層として、ヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体(コーカノックス(商品名))を光安定剤として6重量%含有する低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製LC−720)を押出しラミネートし(ラミネート層厚み60μm)、その上に第二の熱可塑性樹脂層として光安定剤を含まない低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製LC−720)を押出しラミネート(ラミネート層厚み15μm)し、その反対の面にコロナ放電処理を行なってぬれ張力を420μN/cmとした。
【0076】
粘着剤層の形成
上記の基材のコロナ放電処理面に、アクリル酸−n−ブチルとアクリル酸−2−エチルヘキシルを主成分とする共重合体(日本合成化学社製コーポニールN−3407)100重量部に架橋剤として金属キレート系硬化剤、アルミニウムアセチルアセトネートのトルエン溶液(日本合成化学社製コーポニール5792)を固形分基準で0.5重量部配合したアクリル系粘着剤を塗布厚み(固形分基準)50g/mとなるように塗布した。得られた耐候性粘着シートを評価した結果は表1の通りであった。
【0077】
(比較例1)
実施例1において、第二の熱可塑性樹脂層の積層を省略した他は実施例1と同様の実験をした。その結果は表1の通りであった。
【0078】
(比較例2)
実施例1において、第一の熱可塑性樹脂層に光安定剤を含有させず、かつ、第二の熱可塑性樹脂層の積層を省略した他は実施例1と同様の実験をした。その結果は表1の通りであった。
【0079】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明耐候性粘着シートの例を示す縦断面
【図2】本発明耐候性粘着シートの他の例を示す縦断面
【図3】本発明耐候性粘着シートに使用される布状体の(A)は平面図、(B)は縦断面図
【図4】本発明に使用される布状体の他の例を示す縦断面図
【図5】本発明に使用される布状体のさらに他の例を示す縦断面図
【図6】フラットヤーンの例を示す縦断面図
【図7】従来の粘着シートを示す縦断面
【符号の説明】
【0081】
1.耐候性粘着シート
2.フラットヤーン
3.布状体
4.第一の熱可塑性樹脂層
5.第二の熱可塑性樹脂層
6.基材
7.粘着剤層
11.基層
12.接合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸延伸された熱可塑性樹脂のフラットヤーンからなる布状体の片面に、光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層と、第一の熱可塑性樹脂層の上に光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を積層し、布状体の他の面に粘着剤層を形成してなることを特徴とする耐候性粘着シート。
【請求項2】
一軸延伸された熱可塑性樹脂のフラットヤーンからなる布状体の片面に、光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層と、第一の熱可塑性樹脂層の上に光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を積層し、布状体の他の面に光安定剤を添加した第一の熱可塑性樹脂層及び/又は光安定剤を含まないか添加量の少ない第二の熱可塑性樹脂層を積層した後、粘着剤層を形成してなることを特徴とする耐候性粘着シート。
【請求項3】
布状体、第一の熱可塑性樹脂層、及び、第二の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、いずれもオレフィン系重合体である請求項1又は2に記載の耐候性粘着シート。
【請求項4】
布状体が高密度ポリエチレンであり、第一の熱可塑性樹脂層及び第二の熱可塑性樹脂層が高圧法低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンである請求項3に記載の耐候性粘着シート。
【請求項5】
布状体が、フラットヤーンを下記式(1)で示される空隙率が5〜90%となるように交差して配設し、その交点が熱融着されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の耐候性粘着シート。
【数1】

【請求項6】
布状体が、経糸を構成するフラットヤーンの少なくとも一部が複数のフラットヤーンを重ね合わせた状態に織成されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の耐候性粘着シート。
【請求項7】
布状体が、経糸を構成するフラットヤーンの少なくとも一部が複数層を形成するように重なりをもつように織成されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の耐候性粘着シート。
【請求項8】
光透過率が85%以上とされてなる請求項1〜5のいずれかに記載の耐候性粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−137899(P2006−137899A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330354(P2004−330354)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(390019264)ダイヤテックス株式会社 (53)
【Fターム(参考)】