説明

耐摩耗性に優れた編物

【課題】衣料、特にスポーツウエア、アウトドアウエアとして用いた時に生じる、衣料同士や、他の物体とのさまざまな摩擦に対して毛羽立ちや破れが起こりにくく、風合に優れた、ポリエステル繊維が含有された編物の提供。
【解決手段】エチレンテレフタレートを95モル%以上繰り返し単位とするポリエステル繊維が含有された耐摩耗性に優れた編物であって、以下の要件(1)及び(2):
(1)編物を構成する少なくとも片表面側に含有されるポリエステル繊維の繊度が8〜200dtexである、
(2)編物を構成する少なくとも片表面側に含有されるポリエステル繊維の糸摩耗強度が0.5回/dtex以上である、
を満たすことを特徴とする前記編物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性の良好なポリエステル繊維を含む編物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す。)に代表されるポリエステル繊維は、力学的特性及び取扱い性に優れることから、衣料・資材を問わず幅広い用途で用いられており、故に、各種用途に応じた要求特性を満足する繊維及び製品の開発が多数検討されている。
【0003】
ポリエステル繊維が含有された織編物から構成された衣料や資材において、耐摩耗性は重要な要求特性の1つであり、耐摩耗性に優れた編物が求められている。
ポリエステル繊維が主に編物の形状で衣料、特にゲームシャツやパンツなどのスポーツウエアやアウトドアウエア(登山用、キャンプ用などの屋外活動用ウエア)に用いられる場合には、衣料同士や、他の物体との激しい摩擦が起こり(例えば、競技者同士や競技用品との接触、ザックやロープなどとの摩擦、あるいは地面や崖、草木との擦れなど)毛羽立ちが生じたり、破れたりすることがある。
【0004】
一般に摩耗という観点では、ポリエステル繊維はナイロン66などのポリアミド繊維に比べやや劣ることが知られているが、ポリアミド繊維は光劣化や黄変を起こしやすく、屋外で過酷に使用される用途には不向きである。そこで、ポリエステル繊維において耐摩耗性を改善する種々の検討が進められている。
【0005】
従来より、延伸倍率を上げ、高強力ポリエステルを得る方法が知られている。また、以下の特許文献1には、ポリエステル繊維を製造する際の延伸方法を工夫し、高強力なポリエステル繊維を得る方法が開示されている。これらの製法で得られた糸は繊維軸方向の強度は高いものの、繊維軸と直交する方向など他の方向からの外力には弱く、衣料用素材の摩耗など全方向から摩耗が生じる場合には十分な耐摩耗性を得ることができない。
【0006】
以下の特許文献2には、固有粘度と強度を高めた扁平断面を有する衣料用の耐摩耗性に優れた捲縮糸が提案されている。この捲縮糸は衣料用として考慮されているが強度や配向を高めた構造となっており、やはり繊維軸以外の方向にはもろく、全方向から生じる摩耗に対する耐久性は十分ではない。
【0007】
ポリマーに添加物等を加え、耐摩耗性を向上させる方法も種々考案されている。例えば、以下の特許文献3には、特殊な酸化ケイ素粒子を含有し、特定の結晶構造で配向を高めた繊維が提案されている。
しかしながら、粒子を含有させると一般的には糸の強度は下がってしまう。また、配向を高めた構造ゆえ、やはり繊維軸以外の方向にはもろく、マーチンデール摩耗のような全方向での摩耗性は十分ではない。
【0008】
以下の特許文献4には、織物経糸に用いられるインターレース糸の、糸同志並びに織機金属部分との摩擦による単糸切れ、毛羽の発生を抑制するために、ポリエステル未延伸糸を延伸した後、0.2〜5%のリラックス熱処理と流体交絡処理を施すことにより、摩耗性を改善する方法が提案されている。
しかしながら、この方法では織物製造時の糸や織機部品との摩擦による単糸切れや毛羽の発生をある程度抑制することはできるが、衣料、特にウインドブレーカー、ダウンジャケットなどの外衣、ゲームシャツやパンツなどのスポーツウエアやアウトドアウエア(登山用、キャンプ用などの屋外活動用ウエア)等における、衣料同士や、他の物体との激しい摩擦による破れを防止することは困難であった。
【0009】
特に近年、「布帛の軽さ」(布帛の単位面積当たりの重量が小さいこと)に由来する着心地の良さ等の観点から、編物の薄地化ニーズが高まっている。編物を薄地にするためには、細繊度の繊維を用いればよいが、用いる繊維の繊度を細くすればするほど、編物の耐摩耗性は低下する傾向にある。従って、近年、細繊度の繊維における耐摩耗性向上の要求が、より一層高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−245918号公報
【特許文献2】特開昭63−309638号公報
【特許文献3】特許第3277703号公報
【特許文献4】特開昭58−18431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、衣料、特にスポーツウエア、アウトドアウエアとして用いた時に生じる、衣料同士や、他の物体とのさまざまな摩擦に対して毛羽立ちや破れが起こりにくく、風合に優れた、ポリエステル繊維が含有された編物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、ポリエステル繊維において、延伸処理後、特定範囲の弛緩熱処理をおこなうことで、耐摩耗性が改善されたポリエステル繊維が含有された編物が、特に他の物体との激しい接触による破れ防止に有効であることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]エチレンテレフタレートを95モル%以上繰り返し単位とするポリエステル繊維が含有された耐摩耗性に優れた編物であって、以下の要件(1)及び(2):
(1)編物を構成する少なくとも片表面側に含有されるポリエステル繊維の繊度が8〜200dtexである、
(2)編物を構成する少なくとも片表面側に含有されるポリエステル繊維の糸摩耗強度が0.5回/dtex以上である、
を満たすことを特徴とする前記編物。
【0014】
[2]以下の要件(3):
(3)編物を構成する少なくとも片表面側のポリエステル繊維の結晶化度が60〜90%であり、かつ、配向度が0.70〜0.92である、
をさらに満たす、前記[1]に記載の編物。
【0015】
[3]以下の要件(4):
(4)編物を構成する少なくとも片表面側のポリエステル繊維の単糸繊度が1dtex以上4dtex以下である、
をさらに満たす、前記[1]又は[2]に記載の編物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐摩耗性が良好であり、特に薄地編物に好適なポリエステル繊維を得ることができ、該ポリエステル繊維を編物に使用すればスポーツ用ゲームシャツやゲームパンツ、ジャージなどのスポーツウエアやアウトドアウエア(登山用、キャンプ用などの屋外活動用ウエア)等の着用時に生じる、脇部や太腿部の擦れに起因する毛羽立ちが生じにくく、また衣料同士や、他の物体との激しい摩擦(例えば、競技者同士や競技用品との接触、ザックやロープなどとの摩擦、あるいは地面や崖、草木との擦れなど)に対して毛羽立ちにくく破れにくいウエアを提供することができ、さらにスナッギングを抑える効果にも優れる編物を提供することができる。また、これらの耐摩耗性を要求される衣料の軽量薄地化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るポリエステル糸の応力−歪曲線である。
【図2】本発明に係るポリエステル糸の微分ヤング率−歪曲線である。
【図3】本発明以外に係るポリエステル糸の応力−歪曲線である。
【図4】本発明以外に係るポリエステル糸の微分ヤング率−歪曲線である。
【図5】本発明以外に係るポリエステル糸の応力−歪曲線である。
【図6】本発明以外に係るポリエステル糸の微分ヤング率−歪曲線である。
【図7】本発明に係るポリエステル繊維の延伸糸を得るための紡糸延伸熱処理設備の一例を示す概略図である。
【図8】本発明に係るポリエステル繊維の延伸糸を弛緩熱処理する際使用する設備の一例を示す概略図である。
【図9】本発明に係るポリエステル繊維の直接紡糸延伸熱処理設備の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の評価に用いられる糸摩耗試験機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、耐摩耗性とは、繊維表面が、他の物体面で擦られた際の摩擦力(剪断力)に抗する性能を意味する。一般に、繊維は擦られることによって、単糸中のフィブリルが単糸表面に毛羽のように現れる現象(フィブリル化)が引き起こされる。一般的に、フィブリル化が起こると、布帛表面の、例えば意匠性、耐久性などが低下するため、フィブリル化は好ましくない現象である。よって、耐摩耗性を向上させるには、如何にしてフィブリル化を防ぐかがポイントとなる。
【0019】
通常条件で延伸されたポリエステル繊維は、結晶化度が高く、かつ分子が繊維長さ方向に高い配向状態を示す。一方、本発明のポリエステル繊維において、例えば、延伸処理後、特定範囲の弛緩熱処理をおこなうことで、繊維中のポリエステル分子の向きが乱されることによって配向度を低下させ(配向緩和)、ポリエステル繊維の物性、特に、強度、伸度、および、応力―歪曲線(S−Sカーブ)における微分ヤング率を特定範囲にすることができる。
【0020】
図1に、本発明に係るポリエステル繊維の代表的な応力−歪曲線(S−Sカーブ)を示す。図1に示すように、本発明のポリエステル繊維は、低伸度領域においてフラットな部分を有し、その後ヤング率が高くなるという特徴的な曲線を有する。
図2に、図1を伸度について微分したグラフである微分ヤング率−歪曲線を示す。図2に示すとおり、本発明の編物に用いられるポリエステル繊維は、伸度が2〜5%の範囲で極小値を有し、伸度が10〜15%の範囲で極大値を有する。具体的には、本発明で得られる糸の伸度2%以上5%以下の微分ヤング率の極小値は、図2で示されるように20cN/dtex以下となり、伸度が10〜15%の範囲で極大値として23cN/dtex以上となる。
配向緩和によってこのような微分ヤング率挙動を有する本発明のポリエステル繊維は、繊維表面に摩擦力(剪断力)が加わった際に、摩擦力(剪断力)によるエネルギーがポリエステル分子の配向増加に多く消費されるため、フィブリル化が起こりにくくなるものと考えられる。
【0021】
本発明に係るポリエステル繊維に用いられるポリエステルは、主たる繰り返し単位としてエチレンテレフタレートを含み、95モル%以上、好ましくは97モル%以上、より好ましくは99モル%以上でエチレンテレフタレートを繰り返し単位として含む。エチレンテレフタレートは100モル%で繰り返し単位であってもよく、5モル%未満がその他のエステルの繰り返し単位からなるものでもよい。すなわち、本発明のポリエステル繊維に用いられるポリマーは、PET単一構造でもよく、5モル%未満がその他のエステルの繰り返し単位である共重合PETであってもよい。
【0022】
共重合成分の代表例としては、以下のものが挙げられる。
酸性分としては、イソフタル酸や5−ナトリウムスルホイソフタル酸に代表される芳香族ジカルボン酸、アジピン酸やイタコン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸などである。グリコール成分としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどである。
また、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸も挙げられる。これらの複数が共重合されていてもよい。
【0023】
さらに、本発明に係るポリエステル繊維には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化チタン等の艶消剤、熱安定剤、酸化防止剤、制電剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、種々の顔料などの添加剤を含有してもよく、あるいはこれらの成分を共重合により含有してもよい。
【0024】
本発明に係るポリエステル繊維の繊度は、8dtex〜200dtexである。好ましい範囲は20dtex〜175dtexであり、より好ましい範囲は30〜167dtexである。8dtex未満であると繊度が細すぎるため、編成時に糸切れが発生しやすく耐摩耗性に劣り、一方、200dtexを超えると、糸が硬くなり、編物の風合いが良好でない。本発明のポリエステル繊維の奏する耐摩耗性効果は、細い繊度に対しても有効であり、特に30〜84dtexの細番手においても、優れた耐摩耗性が奏される。その結果、これらの糸を用いた、軽量、薄地の編物、例えば、目付け120g/m2以下の編物であっても優れた耐摩耗性を有する。
【0025】
本発明に係るポリエステル繊維の単糸繊度は1dtex以上4dtex以下であり、好ましくは1dtex以上3.1dtex以下である。単糸繊度が1dtex未満の場合は、耐摩耗性が良好でなく、一方、単糸繊度が4dtexを超えると耐摩耗性は良好となるものの、繊維が硬くなるため、編物の風合いが良好でなく、皮膚刺激も生じやすい。
【0026】
本発明に係るポリエステル繊維の破断強度は、好ましくは3.5cN/dtex以上であり、より好ましくは4cN/dtex以上、さらに好ましくは4.5cN/dtex以上である。破断強度が3.5cN/dtex未満であると、耐摩耗性が良好でない。破断強度は大きいほど摩耗性向上には好ましい特性値であるが、6cN/dtex以上では繊維が硬くなるため耐摩耗性の面では好ましくない。
【0027】
本発明に係るポリエステル繊維の破断伸度は、好ましくは20%以上50%以下であり、より好ましくは30%以上45%以下の範囲である。破断伸度が20%未満であると、繊維中のポリエステル分子の配向度が増加するため、フィブリル化が起こりやすく、良好な耐摩耗性は得られず、一方、破断伸度が50%を超えると、破断強度が3.5cN/dtex以上とすることが困難であるため本発明の目的を達成できない。
【0028】
本発明に係るポリエステル繊維においては、繊維の応力−歪曲線における、伸度2%以上5%以下の領域の最小微分ヤング率は、20cN/dtex以下が好ましい。より好ましくは2〜15cN/dtex、さらに好ましくは4〜10cN/dtexである。20cN/dtexを超えると、弛緩熱処理による繊維中のポリエステル分子の配向緩和が十分でなく、摩擦力(剪断力)によりフィブリル化が起こるため、耐摩耗性が良好でない。
【0029】
本発明は、編物を構成する少なくとも片表面側に、糸摩耗試験による糸摩耗強度が0.5回/dtex以上であるポリエステル繊維が含有されていることを特徴とする。好ましくは糸摩耗強度が0.7〜2.0回/dtexである。糸摩耗強度は、図10に示す糸摩耗試験機を用いて評価することができる。糸は20cm切り出し、総繊度が167dtex程度になるよう数本引き揃え、10回/m程度の撚りを入れる。#800の研磨紙を張り付けた直径1cmの金属棒に0.14g/dtexの加重をかけ糸を接触させる。0.6回/秒の速さで3cmの振幅で糸を摩擦させ、糸が切れるまでの回数(1往復を1回とする)を糸摩耗回数とする。研磨紙の状態が変わらないよう、10回ごとに研磨紙をずらして研磨紙が新しい状態で摩擦する。糸摩耗強度は下記式(3):
糸摩耗強度=糸摩耗回数/試験に用いた繊維の総繊度 (3)
で算出される。
【0030】
本発明の編物に含有されるポリエステル繊維は、無撚のままでもよく、又は収束性を高める目的で、交絡若しくは撚りを付与してもよい。
【0031】
次に、本発明のポリエステル繊維の製造方法について述べる。
本発明に用いるポリエステル繊維の極限粘度は特に限定されないが0.70dl/g以上1.30dl/g以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.75dl/g以上1.10dl/g以下の範囲である。極限粘度が0.70dl/g以上であると、良好な耐摩耗性を得やすい。また、極限粘度が1.30dl/gを超えると、耐摩耗性は良好となるものの、風合いが硬く、衣料用編物に用いられる繊維として好ましくない。
【0032】
本発明のポリエステル繊維の製造においては、未延伸糸を、限界延伸倍率の65%以上85%以下、好ましくは70%以上80%以下で延伸した後、弛緩熱処理することが好ましい。未延伸糸の限界延伸倍率(MD)は、未延伸糸の破断伸度を(E)とした場合に、MD=(E+100)/100で示される。限界延伸倍率の65%未満で延伸した場合は、破断強度が3.5cN/dtex以下となる可能性がある。限界延伸倍率の85%を越えて延伸した場合には、弛緩熱処理の際に糸切れが多発する恐れがある。
【0033】
本発明においては紡糸時、紡糸後、編物の加工時等、繊維及び編物製造工程のいずれかで弛緩熱処理を実施することを特徴としている。弛緩熱処理により、結晶化度を高め、配向度を抑えることが可能になる。繊維の紡糸時、もしくは紡糸後に糸の状態で弛緩熱処理を行う場合には、熱処理温度は、120℃以上220℃以下の温度範囲であることが好ましく、より好ましくは150℃以上200℃以下である。温度が120℃未満であると、ポリエステル自体の配向効果が低く、そのため、弛緩熱処理を組み合わせても、繊維中のポリエステル分子の配向緩和効果が十分でなく、良好な耐摩耗性が得られず、一方、220℃を超えると、ポリエステルの融点に近くなるため熱処理により毛羽や糸切れが発生しやすい。
【0034】
本発明における糸の状態での弛緩熱処理の際のリラックス率は、5%以上15%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以上12%以下である。リラックス率は、図8中の供給ロール14の速度(Vk)とリラックスロール16の速度(Vr)、又は図9中の第2ロール11の速度(V2)と第3ロール20の速度(V3)を用いて、リラックス率=((Vk−Vr)/Vk)×100、又は((V2−V3)/V2)×100の式により求められる。図8又は図9以外の装置による弛緩熱処理であっても、リラックス率は、同様に熱処理前後の糸速度(通常ロール速度で表される)の比率によって求められる。
【0035】
リラックス率が5%未満であると、繊維中のポリエステル分子の配向緩和効果が充分でなく、良好な耐摩耗性が得られず、一方、リラックス率が15%を超えると、弛緩熱処理の際の工程張力が低下し、紡糸性が良好でない。
このように、延伸後、繊維中のポリエステル分子の熱収縮及び配向を緩和する目的で、弛緩熱処理を行うことにより、伸度2%以上5%以下の領域における最小微分ヤング率が20cN/dtex以下となり、耐摩耗性が向上された繊維を得ることができる。弛緩熱処理は、図7に示す紡糸装置により延伸して一旦巻き取った繊維を、図8に示す装置によって行ってもよく、又は図9に示すように、延伸に引き続き、一旦巻き取ることなく熱処理してもよい。弛緩熱処理時は糸張力が下がるが、低張力で安定した弛緩熱処理を行うという観点から、延伸して一旦巻き取った後、図8に示すように、糸が重力に従って上から下に走行するように引き取ることが好ましい。
【0036】
また、編物が製造された後の染色や熱セット工程において編物の寸法が小さくなるような条件を選択することによって、編物中の繊維の弛緩熱処理とすることもできる。
【0037】
弛緩熱処理を編物の加工時に行う場合には、編物の加工工程は通常、精錬後、中間セットが行われ、その後、染色工程を経て、ファイナルセットが行われるが、そのセット時、特に中間セット時に170℃〜210℃の比較的高温で幅入れや追い込み処理により弛緩させることが特に有効である。幅入れとは編物幅方向の寸法を縮める処理、追い込みとは編物経方向の寸法を縮める処理である。幅入れ、追い込みによる寸法低下率の積算値は処理前の寸法に対して2〜15%であることが好ましく、より好ましくは5〜12%である。一例として、幅入れ率5%、追い込み率3%で弛緩熱処理する場合、処理前の寸法の積算値1に対して、処理後の寸法積算値は(1−0.05)×(1−0.03)=0.9215であり、寸法低下率の積算値は7.85%となる。この範囲であれば、編物中のポリエステル繊維を、糸状態でのリラックス率5〜15%相当の弛緩処理と同様の処理を行うことができる。熱処理温度は15秒〜120秒が望ましく、30秒〜100秒が特に望ましい。また、ファイナルセット時にもできるだけ、緊張させず、しわを伸ばす程度に設定することが望ましい。前述の糸状態で弛緩熱処理を行った場合にも、編物加工時には弛緩熱処理温度以上の温度で緊張状態で熱をかけないようにすることが大切である。これらの糸又は編物での熱弛緩処理により、ポリエステル系繊維の結晶化度を上げながら、配向を下げることが可能となり、耐摩耗性に非常に優れた編物を得ることができる。
【0038】
本発明の編物に含有されるポリエステル繊維は、結晶化度が60%〜90%、かつ配向度が0.70〜0.92であることが好ましい。
本発明でいう結晶化度とはポリエステル系繊維の広角X線測定を行い、5°≦2θ≦40°の散乱強度グラフにおいて、2θ=5°と40°でベースラインを引き、非晶部のピーク値としてθ=19.5°の強度をAとし、結晶部のピーク値としてθ=25.5の強度をBとした時に、下記(1)式:
B/(A+B)×100 (1)
により算出した値(%)をいう。
【0039】
また、本発明でいう配向度とは、ポリエステル繊維の透過型広角X線測定を行い、ポリエステルの(100)面由来の回折強度の方位角依存性I(φ)に対して、ピーク強度とバックグラウンドレベルを求め、I(φ)の強度が(ピーク強度―バックグラウンド)/2+バックグラウンドとなる位置におけるピーク幅(ピークの半価全幅)を求め、下記式(2):
f=1−△/360 (2)
{式中、△:I(φ)に見られるピークの半価全幅(FWHM)の合計(deg)}により算出した値をいう。尚、I(φ)を求める際には24<2θ<28°において回折強度の積算を行い、空セル補正等必要な補正を施すことが必要である。上記式(2)から明らかなように、結晶が完全配向している場合にはf=1となり、無配向の場合にはf=0となる。
【0040】
結晶化度が60%未満の場合には結晶化が十分進んでおらず、摩耗強度が低くなる。また、90%を超える場合には風合いが硬くなり好ましくない。
配向度が0.70以上であれば優れた耐摩耗性を発現できるが、配向度が0.92を超えると配向が強いため、繊維軸方向には強く、繊維の強度アップには有効であるが繊維軸以外の方向は逆に弱くなり、本発明でいう耐摩耗性に関しては好ましくない。本発明における耐摩耗性とは、衣類着用時などに起こる、あらゆる方向からの摩擦への耐性に優れることであるから、あらゆる方向での耐摩耗性が求められる。弱い方向があればそこから摩耗が始まってしまい好ましくない。
結晶化度と配向度の特に好ましい範囲は、仮撚加工の有無によって異なる。仮撚加工されないポリエステル繊維であれば、結晶化度65〜80%、配向度0.70〜0.88が特に好ましく、仮撚加工された繊維であれば、結晶化度60〜90%、配向度0.85〜0.92が特に好ましい。
【0041】
弛緩熱処理されたポリエステル繊維を仮撚加工する場合には、180〜200℃の低温で仮撚し、仮撚温度以上の温度で弛緩熱処理されていることが好ましい。また、仮撚加工されたポリエステル繊維が含有された編物に弛緩熱処理する場合も同様に、180℃〜200℃の低温で仮撚することが好ましい。仮撚時には通常200℃〜210℃の熱をかけ、糸が緊張状態で処理される。この場合には、通常、後加工でのセット温度は仮撚温度に対し低いため、セット時の弛緩効果が十分に発揮されにくい。180〜200℃の比較的低温で仮撚を行い、仮撚温度以上の温度で弛緩熱処理することで結晶化度を高め、配向を抑えることができ、耐摩耗性に優れた編物となる。仮撚は1ヒーター(1H)、2ヒーター(2H)いずれの工程でもよく、仮撚りの前または後にインターレース加工を施してもよい。2H仮撚の場合は温度が高いほうのヒーター温度が上記条件を満たせばよい。仮撚り加工では一般には非常に高温で張力がかかるため、結晶化が進み、配向高くなるが、本発明では仮撚りと後加工の温度と弛緩率をコントロールすることにより、仮撚り糸使いの編物の場合でも結晶化度が60〜90%、配向度が0.85〜0.92とすることが可能となる。
【0042】
本発明に係るポリエステル繊維の単糸断面形状は、丸、Y、W字状等の異型断面、中空断面などであってもよく、特に限定されない。
本発明に係るポリエステル繊維は、単独で使用してもよく、又は他の繊維と複合して使用してもよい。複合する他の繊維としては、例えば、他のポリエステル繊維、ナイロン、アクリル、キュプラ、レーヨン、ポリウレタン弾性繊維などが選ばれるが、これらに限られるものではない。本発明のポリエステル繊維のみからなる編物であってもよいが、少なくとも片側表面に配される繊維の一部または全部、好ましくは50%以上が本発明に係るポリエステル繊維であればよい。
【0043】
本発明の編物は常法によって精錬、染色、仕上げ加工を行うことができ、仕上剤の種類は、使用されるポリエステル繊維の用途によって適宜選択される。但し、前述のように緊張状態で熱弛緩工程での処理温度以上の温度で処理することは熱弛緩効果を損なうため好ましくない
【0044】
本発明のポリエステル繊維が含有された編物の編組織としては、丸編み、経編みのいずれでもよい。特にスナッギングの起こりやすい四段スムースなどの編み組織ではスナッグ改善効果も見られ、好適に使用することができる。
【0045】
本発明の編物は、ART摩耗試験による磨耗摩耗性がN(NONE)またはL(LOW)であることが好ましい。衣料用編物の実着用における摩耗状況はART摩耗試験で評価でき、着用時の耐摩耗性を高めるにはART摩耗試験での摩耗性を向上することが有効である。
【0046】
本発明の編物は風合および耐摩耗性に優れており、様々な衣料用分野に適用することができる。特に着用時に衣料同士が擦れることが多い、ウインドブレーカー、ダウンジャケット、スポーツウエア、アウトドアウエア等の外衣に好適である。なかでも過酷な環境下で着用され、他者と接触摩擦することが多い、スポーツウエアやアウトドアウエアに好適である。
本発明の編物は、目付が80〜350g/m2であることが好ましい。目付がこの範囲であれば、衣料用途に求められる編物性能を保持した上で耐摩耗性に優れる編物を得ることができる。本発明においては、特に30〜84dtexの細繊度ポリエステル繊維を用いた編物においても、優れた耐摩耗性を有する。その結果、これらの糸を用いた、軽量、薄地の編物、例えば目付120g/m2以下の編物においても優れた耐摩耗性を有するため、薄地化・軽量化と耐摩耗性向上を両立することができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
なお、使用した測定方法及び評価方法は以下の通りのものである。
【0048】
(1)繊度、破断強度、破断伸度
JIS−L−1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に基づいて下記の条件で測定した。単糸繊度は、糸の繊度をフィラメント数で除して算出した。
試験片長さ :200mm
引張速度 :200mm/min
測定数 :5回/サンプル
【0049】
(2)最小微分ヤング率
上記(1)と同様に破断強度測定を行った。0.25sec毎の応力−伸度測定値を用いて、各点での応力を伸度で微分して求め、得られた微分ヤング率曲線より、伸度2%以上5%以下の領域の微分ヤング率の最小値を最小微分ヤング率とした。
【0050】
(3)極限粘度
オルソクロロフェノール(以下、OCPと略記する。)に試料ポリマーを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて複数点の相対粘度ηrを求め、それを無限希釈度に外挿して求めた。
【0051】
(4)限界延伸倍率
図7又は図9中の第1ロール(10)直前において未延伸糸を採取し、JIS−L−1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に基づいて限界延伸倍率を算出した。未延伸糸の限界延伸倍率(MD)は、未延伸糸の破断伸度を(E)とした場合に、MD=(E+100)/100で表される。
【0052】
(5)糸摩耗性
図10に示す糸摩耗試験機を用いて評価した。糸は20cm切り出し、総繊度が167dtex程度になるよう数本引き揃え、10回/m程度の撚りを入れる。#800の研磨紙を張り付けた直径1cmの金属棒に0.14g/dTexの加重をかけ糸を接触させる。0.6回/秒の速さで3cmの振幅で糸を摩擦させ、糸が切れるまでの回数(1往復を1回とする)を糸摩耗回数とする。研磨紙の状態が変わらないよう、10回ごとに研磨紙をずらして研磨紙が新しい状態で摩擦する。糸摩耗強度は下記式(3)で算出される。
糸摩耗強度=糸摩耗回数/試験に用いた繊維の総繊度 (3)
【0053】
(6)ART摩耗性
編物についてはJIS L1076(ART法)に基づき、摩耗試験を行った。摩耗回数は60回とし、N(NONE)、L(LOW)、M(MEDIUM)、H(HIGH)で評価した。
【0054】
(7)風合い
風合いにおいては、熟練した検査人10人のうち、9人以上が良好と判断した場合を「○」、それ以外を「×」として評価した。10人全員が、特に柔らかく優れた風合いであると判断したものに関しては「◎」で評価した。
【0055】
[製造例1]
以下は実施例5の表側に用いた糸の製法である。
図7のような紡糸機を用いて、第1ロールと第2ロール間で延伸、一旦巻き取った後に、図8に示す装置を用いて、供給ロールとリラックスロール間で弛緩熱処理することで、本発明に係る84dtex/24フィラメントの繊維を製造した。使用した製造条件は下記に示すとおりである。
【0056】
(紡糸条件)
ペレット乾燥温度及び到達水分率:155℃、10ppm
押出機温度:295℃
スピンヘッド温度:300℃
紡糸口金:孔径0.25mmΦの孔が口金当たり24個を有する口金
ホットディスタンス:135mm
冷却風条件:温度;22℃、相対湿度;90%、速度;0.4m/sec
仕上げ剤:ポリエーテルエステルを主成分とする水系エマルジョン(濃度15wt%)
仕上げ剤付与率:0.75%
紡糸口金から仕上げ剤付与ノズルまでの距離:100cm
【0057】
(巻取条件)
第1ロール:速度;1500m/分、温度;90℃
第2ロール:速度;3975m/分、温度;130℃
巻取機:SA−608機(旭エンジニアリング(株)社製)
綾角:5.8度
【0058】
(弛緩熱処理)
供給ロール:速度;555m/分、温度;85℃
ホットプレート温度:160℃
リラックスロール:速度;500m/分、温度;非加熱(室温)
リラックス張力:0.25cN/dtex
リラックス率:10%
巻量:1kg/1パーン
【0059】
[実施例1]
製造例1の製造条件に準じ、弛緩熱処理を行わずに製造された、極限粘度[η]が0.75で166デシテックス48フィラメントの丸断面のポリエステルフィラメントを、1H仮撚機を用いて、糸速度577m/min、ドラフト1.75で190℃の条件で仮撚りを行った。その後、ダブル編機で四段スムース組織の編地を作製した。得られた編物を、精練の後、200℃で30秒間、幅入れ率10%でプレセットした後、常法を用いて液流染色機にて染色、乾燥した。その後、170℃で20秒間、しわを伸ばす程度の幅設定でファイナルセットを行った。
得られた編物の特性は以下の表1に示す通り、耐摩耗性に優れており、風合いも良好であった。
【0060】
[実施例2]
極限粘度[η]が0.85の34デシテックス12フィラメントの丸断面のポリエステルフィラメントを用いた他は、実施例1と同様の方法で製編、加工を行った。
得られた編物の特性は表1に示す通り、耐摩耗性に優れており、風合いも良好であった。
【0061】
[実施例3]
極限粘度[η]が0.70で84デシテックス24フィラメントのポリエステルフィラメントを表側に、極限粘度[η]が0.56で84デシテックス72フィラメントのポリエステル加工糸(210℃で仮撚加工)を裏側に用い、メッシュ編地を作製した。得られた編物を、精練のあと、200℃で30秒間、幅入れ率10%でプレセットした後、常法を用いて液流染色機にて染色、乾燥した。その後、170℃で20秒間、しわを伸ばす程度の幅設定でファイナルセットを行った。得られた編物の特性は以下の表1に示す通り、耐摩耗性に優れており、風合いも良好であった。
【0062】
[実施例4]
28GGのトリコット編み機を用いて、フロントに極限粘度[η]が0.75で、ポリエステルW型断面加工糸56dtex/30fを、ミドルに固有粘度[η]が0.68でポリエステル丸型断面加工糸56dtex/24fを、バックにポリウレタン繊維44dtexとして、トリコットハーフの組織にて編み立てた。実施例1と同様の加工処理をして、目付255g/m2の編地を得た。フロント筬から供給された糸が構成する面を表面として測定した、得られた編物の特性は以下の表1に示す通り、耐摩耗性に優れており、風合いも良好であった。
【0063】
[実施例5]
製造例1で得られた極限粘度が0.85で丸断面の84デシテックス24フィラメントのポリエステルフィラメントを、1H仮撚機を用いて、糸速度577m/min、ドラフト1.75で190℃の条件で仮撚りを行った。その後、ダブル編機で四段スムース組織の編地を作製した。得られた編物を、精練のあと、200℃で30秒間、幅入れ率10%でプレセットした後、常法を用いて液流染色機にて染色、乾燥した。その後、170℃で20秒間、しわを伸ばす程度の幅設定でファイナルセットを行った。得られた編物の特性は以下の表1に示すとおり、耐摩耗性に優れており、風合いも良好であった。
【0064】
[比較例1]
ポリエステル繊維の仮撚を、2Hで温度を210℃/150℃とした他は実施例1と同様に加工を行った。得られた編物の特性は以下の表1に示す通り、耐摩耗性に劣っていた。
【0065】
[比較例2]
極限粘度[η]0.56の17デシテックス12フィラメントのポリエステルフィラメントを用いた他は実施例1と同様の編物を製編し、加工を行った。得られた編物の特性は以下の表1に示す通り、耐摩耗性に劣っていた。
【0066】
[比較例3]
極限粘度[η]0.75の84デシテックス144フィラメントのポリエステルフィラメントを用いた他は実施例1と同様の編物を製編し、加工を行った。
得られた編物の特性は以下の表1に示す通り、耐摩耗性に劣っていた。
【0067】
[比較例4]
実施例3のプレセットを190℃で20%の巾だし処理を行った他は実施例3と同様の編物を製編し、加工を行った。
得られた編物の特性は以下の表1に示す通り、耐摩耗性に劣っていた。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、耐摩耗性が良好なポリエステル繊維が含有された編物を得ることができため、かかる繊維を用いた編物は、衣料、特にスポーツウエア、アウトドアウエア着用時に生じる、衣料同士や、他の物体との激しい接触摩擦に強く、風合に優れた衣料となる。また、これらの耐摩耗性を要求される衣料の軽量薄地化を達成することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ポリマー乾燥機
2 押出機
3 ベンド
4 スピンヘッド
5 スピンパック
6 紡糸口金
7 非送風領域
8 冷却風
9 仕上げ剤付与ノズル
10 第1ロール
11 第2ロール
12 繊維チーズ
13 繊維チーズ
14 供給ロール
15 ホットプレート
16 リラックスロール
17 ガイド
18 トラベラーガイド
19 繊維パーン
20 第3ロール
21 可動アーム
22 モーター
23 支柱
24 摩耗紙
25 試料
26 荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを95モル%以上繰り返し単位とするポリエステル繊維が含有された耐摩耗性に優れた編物であって、以下の要件(1)及び(2):
(1)編物を構成する少なくとも片表面側に含有されるポリエステル繊維の繊度が8〜200dtexである、
(2)編物を構成する少なくとも片表面側に含有されるポリエステル繊維の糸摩耗強度が0.5回/dtex以上である、
を満たすことを特徴とする前記編物。
【請求項2】
以下の要件(3):
(3)編物を構成する少なくとも片表面側のポリエステル繊維の結晶化度が60〜90%であり、かつ、配向度が0.70〜0.92である、
をさらに満たす、請求項1に記載の編物。
【請求項3】
以下の要件(4):
(4)編物を構成する少なくとも片表面側のポリエステル繊維の単糸繊度が1dtex以上4dtex以下である、
をさらに満たす、請求項1又は2に記載の編物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−31528(P2012−31528A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169528(P2010−169528)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】