説明

耐摩耗性発泡体用組成物および該組成物を製造するための方法

本発明は少なくとも以下の成分を含む組成物を提供する:A)オレフィン系ポリマー、B)官能化ポリジメチルシロキサン、およびC)少なくとも1つの有機化合物を含む発泡剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は2008年10月3日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/102,507号の利益を主張する。
【0002】
本発明は改善された耐摩耗性を有する発泡体のための組成物および該組成物を製造するための方法に関する。このような発泡体は特に履物部品に適している。
【背景技術】
【0003】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)はプラスチック物品の耐摩耗性を改善するために用いられ得ることが知られている。たとえばUS6767931、US5902854およびWO2004087804A1を参照されたい。
【0004】
米国特許第6,767,931号には、以下を含む発泡性ポリマー組成物が開示されている:a1)以下から製造される実質的にランダムなインターポリマー:i)1以上のα−オレフィンモノマー;およびii)1以上のビニルまたはビニリデン芳香族モノマーおよび/または1以上の立体障害のある脂肪族または環状脂肪族ビニルもしくはビニリデンモノマー;および任意にiii)他の重合性エチレン性不飽和モノマー(単数または複数);またはa2)エチレンおよび酢酸ビニルの重合単位を含むインターポリマー;またはa3)ポリマーa1)およびa2)の組合せ;およびb)25℃における粘度が少なくとも百万センチストークスであるポリジオルガノシロキサン;およびc)発泡剤。ポリジオルガノシロキサンは、実質的にランダムなインターポリマーa1)および/またはエチレン/酢酸ビニルインターポリマーa2)を含む発泡体の耐摩耗性を改善するために有用である。
【0005】
しかし、耐摩耗性が改善された極超低密度の発泡体配合物に対するニーズが残っている。このニーズは、靴の中底および靴の外底、特に靴の外底等の履物部品の製造に、特に要求されている。
【0006】
このように、改善された(より低い)発泡密度に対するニーズ、言い換えれば業界にとってはコスト低減の可能性、消費者にとっては快適な発泡体へのニーズがある。さらに、既存の業界標準の靴底用発泡体と等価な優れた耐摩耗性をもたらす発泡体へのニーズがある。
【0007】
本発明は、比重または密度が0.25g/cm以下、および0.19g/cmというオレフィン系ポリマー発泡体を可能にするものである。これは、典型的な耐摩耗性(Akron摩耗性、負荷6ポンド、3000サイクル)の要求が0.25cm以下の材料損失である履物外底での使用に対する業界の典型的な発泡体と比べて30%を超える発泡体密度の低減である。世界的な運動用履物ブランドが用いている最新技術では、約0.28g/cmもの密度の発泡体が製造されているが、一方従来の外底発泡体の密度は0.32〜0.38g/cm程度である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は少なくとも以下の成分を含む組成物を提供する:
A)オレフィン系ポリマー、
B)官能化ポリジメチルシロキサン、および
C)少なくとも1つの有機化合物を含む発泡剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上で論じたように、本発明は少なくとも以下の成分を含む組成物を提供する:
A)オレフィン系ポリマー、
B)官能化ポリジメチルシロキサン、および
C)少なくとも1つの有機化合物を含む発泡剤。
【0010】
好ましい実施形態においては、発泡剤の分解温度は130℃〜160℃である。
【0011】
一つの実施形態においては、官能化ポリジメチルシロキサンはヒドロキシル官能化ポリジメチルシロキサンである。さらなる実施形態においては、ヒドロキシル官能化ポリジメチルシロキサンはヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0012】
一つの実施形態においては、ポリジメチルシロキサンの粘度は25℃において少なくとも百万センチストークスである。
【0013】
一つの実施形態においては、発泡剤の分解温度は130℃〜150℃である。
【0014】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの有機化合物は少なくとも1つの炭素−窒素結合を有する。
【0015】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの有機化合物は少なくとも2つの炭素−窒素結合を有する。
【0016】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの有機化合物は少なくとも3つの炭素−窒素結合を有する。
【0017】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの有機化合物は少なくとも4つの炭素−窒素結合を有する。
【0018】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの有機化合物の分子量は100g/モル以上、好ましくは110g/モル以上である。
【0019】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの有機化合物はホルムアミドである。
【0020】
一つの実施形態においては、少なくとも1つの有機化合物はアゾビスホルムアミドである。
【0021】
一つの実施形態においては、発泡剤はヒドロキシル改質アゾビスホルムアミドである。
【0022】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物のポリマー成分の全重量に対して10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上の量で存在する。
【0023】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物の全重量に対して10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上の量で存在する。
【0024】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物のポリマー成分の全重量に対して60重量%以上の量で存在する。
【0025】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物の全重量に対して60重量%以上の量で存在する。
【0026】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物のポリマー成分の全重量に対して70重量%以上の量で存在する。
【0027】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物の全重量に対して70重量%以上の量で存在する。
【0028】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物のポリマー成分の全重量に対して80重量%以上の量で存在する。
【0029】
一つの実施形態においては、成分Aは組成物の全重量に対して80重量%以上の量で存在する。
【0030】
一つの実施形態においては、成分Bは組成物の重量に対して2〜5重量%の量で存在する。
【0031】
一つの実施形態においては、成分Cは組成物の重量に対して1〜3重量%の量で存在する。
【0032】
一つの実施形態においては、成分Aのオレフィン系ポリマーはエチレン系ポリマーである。
【0033】
一つの実施形態においては、エチレン系ポリマーはエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。さらなる実施形態においては、α−オレフィンはC3〜C10α−オレフィンである。さらなる実施形態においては、α−オレフィンはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンである。
【0034】
一つの実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、均一に分岐した直鎖状エチレン/α−オレフィンインターポリマーまたは均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。
【0035】
一つの実施形態においては、エチレン系ポリマーの密度は0.86g/cc〜0.91g/ccである(1cc=1cm)。
【0036】
一つの実施形態においては、エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I2)は0.2〜30g/10分である。
【0037】
一つの実施形態においては、オレフィン系ポリマーはオレフィンマルチブロックインターポリマーである。さらなる実施形態においては、オレフィンマルチブロックインターポリマーはエチレンマルチブロックインターポリマーである。
【0038】
一つの実施形態においては、オレフィンマルチブロックインターポリマーの密度は0.86g/cc〜0.91g/ccである。
【0039】
一つの実施形態においては、オレフィンマルチブロックインターポリマーのメルトインデックス(I2)は0.2〜15g/10分である。
【0040】
一つの実施形態においては、オレフィン系ポリマーはプロピレン系ポリマーである。さらなる実施形態においては、プロピレン系ポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。
【0041】
一つの実施形態においては、プロピレン系ポリマーの密度は0.85g/cc〜0.91g/ccである。
【0042】
一つの実施形態においては、プロピレン系ポリマーのメルトフローレート(230℃におけるMFR)は2〜25g/10分である。
【0043】
一つの実施形態においては、本発明の組成物はエチレン酢酸ビニルコポリマーをさらに含む。
【0044】
一つの実施形態においては、本発明の組成物は少なくとも1つの添加物をさらに含む。
【0045】
一つの実施形態においては、本発明の組成物は以下から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む:発泡反応促進剤、架橋剤、加工助剤、フィラー、またはそれらの組合せ。
【0046】
一つの実施形態においては、本発明の組成物は以下から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む:発泡反応促進剤、化学発泡剤、架橋剤、加工助剤、フィラー、またはそれらの組合せ。
【0047】
一つの実施形態においては、本発明の組成物は以下から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む:酸化亜鉛、ジクミルペルオキシド、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、またはそれらの組合せ。
【0048】
一つの実施形態においては、本発明の組成物は以下から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む:アゾビスホルムアミド、酸化亜鉛、ジクミルペルオキシド、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、またはそれらの組合せ。
【0049】
一つの実施形態においては、組成物は少なくとも以下の成分をさらに含む:
a)0〜100部、好ましくは55〜100部のオレフィン系ポリマー、好ましくはエチレン系ポリマー、より好ましくはエチレン/α−オレフィンインターポリマー、
b)100〜0部、好ましくは45〜0部のエチレン酢酸ビニル、
c)0.5〜1.5部の酸化亜鉛、
d)0.5〜1部のステアリン酸、
e)0.8〜1.2部のジクミルペルオキシド、
f)0〜0.5部の硬化助剤、
g)1〜4部の化学発泡剤、および
h)0.5部を超え、好ましくは1.5〜1.75部のヒドロキシル末端PDMS。
【0050】
本発明の組成物は本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを含んでもよい。
【0051】
オレフィン系ポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを含んでもよい。
【0052】
エチレン系ポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを含んでもよい。
【0053】
オレフィンマルチブロックインターポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを含んでもよい。
【0054】
プロピレン系ポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを含んでもよい。
【0055】
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品を提供する。
【0056】
一つの実施形態においては、物品は発泡体である。さらなる実施形態においては、発泡体の密度は0.10g/cc〜0.75g/cc、好ましくは0.20g/cc〜0.40g/ccである。
【0057】
一つの実施形態においては、発泡体の比重は0.25以下、好ましくは0.23以下、より好ましくは0.21以下である。
【0058】
一つの実施形態においては、発泡体のAkron耐摩耗性は損失0.50以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25cm以下(BS 903:負荷6ポンド、3000サイクル)である。
【0059】
一つの実施形態においては、発泡体のDIN耐摩耗性は損失200以下、好ましくは150以下、より好ましくは0.40mm以下(BS EN 12770:2000)である。
【0060】
一つの実施形態においては、物品は履物部品である。さらなる実施形態においては、履物部品は靴の外底である。
【0061】
本発明の発泡体は本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを含んでもよい。
【0062】
本発明の物品は本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを含んでもよい。
【0063】
オレフィン系ポリマー
適当なオレフィン系ポリマーとしては、これだけに限らないが、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンインターポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレンホモポリマー等のエチレン系ポリマー;およびプロピレンホモポリマー、プロピレンインターポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー等のプロピレン系ポリマー;オレフィンマルチブロックインターポリマー(たとえばエチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマー);天然ゴム;ポリブタジエンゴム;ブチルゴム;およびそれらのブレンドが挙げられる。
【0064】
エチレン系ポリマー
適当なエチレン系ポリマーとしては、これだけに限らないが、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンインターポリマー、エチレン/プロピレンポリマー、およびエチレンホモポリマーが挙げられる。
【0065】
適当なエチレン系ポリマーは4つの主な分類に分けられる:(1)高度分岐;(2)不均一直鎖状;(3)均一に分岐した直鎖状;および(4)均一に分岐した実質的に直鎖状の。各々のポリマーはZiegler−Natta触媒、メタロセンもしくはバナジウム系シングルサイト触媒、または束縛構造のシングルサイト触媒を用いて調製することができる。
【0066】
高度分岐エチレンポリマーには低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれる。これらのポリマーはフリーラジカル開始剤を用いて高温高圧で調製することができる。或いは、これらは配位触媒を用いて高温で比較的低圧で調製することができる。これらのポリマーの密度は典型的にはASTM D−792−00で測定して約0.910g/cc〜約0.940g/ccである。
【0067】
不均一直鎖状エチレンポリマーには直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極超低密度(ultra-low density)ポリエチレン(ULDPE)、超低密度(very low density)ポリエチレン(VLDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。直鎖状低密度エチレンポリマーの密度は典型的には約0.880g/cc〜約0.940g/ccである。好ましくは、LLDPEはエチレンと3〜18の炭素原子、より好ましくは3〜8の炭素原子を有する1以上の他のα−オレフィンとのインターポリマーである。好ましいα−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテン、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテン、より好ましくは1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる。
【0068】
極超低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンはほとんど同じ意味で知られている。これらのポリマーの密度は典型的には約0.870g/cc〜約0.910g/ccである。高密度エチレンポリマーは一般に典型的には密度が0.955g/cc〜約0.970g/ccのホモポリマーである。
【0069】
「均一」および「均一に分岐した」という用語は、α−オレフィンコモノマーが所与のポリマー分子中にランダムに分布していて、全てのポリマー分子のコモノマー(単数または複数)/エチレン比が同一または実質的に同一であるエチレン/α−オレフィンインターポリマーに関して用いられる。本発明の実施において用いることができる均一に分岐したエチレンインターポリマーとしては、均一に分岐した直鎖状エチレンインターポリマー、および均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーが挙げられる。
【0070】
均一に分岐した直鎖状エチレンインターポリマーに含まれるものは、長鎖分岐(または測定可能量の長鎖分岐)を有しないが、インターポリマー中に重合されたコモノマーから誘導され、同一ポリマー鎖中および異なるポリマー鎖間の両方に均一に分布した短鎖分岐を有するエチレンポリマーである。即ち、均一に分岐した直鎖状エチレンインターポリマーは直鎖状低密度ポリエチレンポリマーまたは直鎖状高密度ポリエチレンポリマーの場合とちょうど同様に長鎖分岐を持たず、たとえばElstonが米国特許第3,645,992号に記載したような均一に分岐した分布重合プロセスを用いて製造することができる。均一に分岐した直鎖状エチレン/α−オレフィンインターポリマーの市販の例としては、Mitsui Chemical社から供給されるTAFMERポリマーおよびExxonMobil Chemical社から供給されるEXACTポリマーが挙げられる。
【0071】
上で論じたように、均一に分岐した直鎖状ポリマーはたとえばElstonによって米国特許第3,645,992号に開示されており、メタロセン触媒を用いてそのようなポリマーを製造するため後続処理は、たとえばEP0129368、EP0260999、米国特許第4,701,432号、米国特許第4,937,301号、米国特許第4,935,397号、米国特許第5,055,438号およびWO90/07526に示されるように開発されてきた。これらはそれぞれ参照により本明細書に完全に組み込まれる。ポリマーは従来の重合プロセス(たとえば気相、スラリー、溶液、および高圧)によって製造することができる。
【0072】
本発明において用いられる均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは米国特許第5,272,236号、第5,278,272号、第6,054,544号、第6,335,410号および第6,723,810号に記載されている。これらはそれぞれ参照により本明細書に完全に組み込まれる。実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーはコモノマーが所与のインターポリマー分子中にランダムに分布しており、全てのインターポリマー分子のコモノマー(単数または複数)/エチレン比が同一または実質的に同一のものである。さらに、実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは、長鎖分岐(鎖分岐がポリマー主鎖への1つのコモノマーの組み込みによって形成される分岐よりも多くの炭素原子を有する)を有する均一に分岐したエチレンインターポリマーである。長鎖分岐はポリマー主鎖と同一のコモノマー分布を有し、ポリマー主鎖の長さとほぼ同一の長さを有し得る。「実質的に直鎖状の」は典型的には平均で炭素1000個当たり0.01個の長鎖分岐〜炭素1000個当たり3個の長鎖分岐で置換されたポリマーに関する。
【0073】
いくつかのポリマーは炭素1000個当たり0.01個の長鎖分岐〜炭素1000個当たり1個の長鎖分岐、または炭素1000個当たり0.05個の長鎖分岐〜炭素1000個当たり1個の長鎖分岐、または炭素1000個当たり0.3個の長鎖分岐〜炭素1000個当たり1個の長鎖分岐で置換されてもよい。実質的に直鎖状のポリマーの市販の例としては、ENGAGE Polyolefin ElastomersおよびAFFINITY Polyolefin Plastomers(いずれもDow Chemical社より入手可能)が挙げられる。
【0074】
実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは均一に分岐したエチレンポリマーの独特の種類を形成する。これらはElstonによって米国特許第3,645,992号に記載された従来の均一に分岐した直鎖状エチレンインターポリマーのよく知られた種類とは実質的に異なり、さらに従来の不均一な「Ziegler−Natta触媒重合」直鎖状エチレンポリマー(たとえばAndersonらによって米国特許第4,076,698号に開示された方法を用いて製造された、たとえば極超低密度ポリエチレン(ULDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE))とは同じ種類に属さず、またたとえば低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマーおよびエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー等の高圧フリーラジカル開始高度分岐ポリエチレンとは同じ種類に属しない。
【0075】
本発明において有用な均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは、その分子量分布が比較的狭いにも関わらず、優れた加工性を有している。驚くべきことに、実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーのASTM D1238−04によるメルトフロー比(I10/I)は広範囲に、かつ分子量分布(M/MまたはMWD)とは本質的に独立に変化させることができる。この驚くべき挙動は、たとえばElstonによってUS3,645,992に記載されたもの等の従来の均一に分岐した直鎖状エチレンインターポリマーおよびたとえばAndersonらによってUS4,076,698に記載されたもの等の不均一分岐「従来のZiegler−Natta重合された」直鎖状ポリエチレンインターポリマーとは完全に反するものである。実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーと異なり、直鎖状エチレンインターポリマーは(均一または不均一分岐であろうとなかろうと)、分子量分布が増大するにつれてI10/I値も増大するというレオロジー的性質を有している。
【0076】
「長鎖分岐(LCB)」は、たとえばRandallの方法(Rev.Micromole.Chem.Phys.、1989、C29(2&3)、285〜297頁)を用いる13C核磁気共鳴(13C NMR)分光法等の業界で知られた従来の方法によって決定することができる。他の2つの方法として、小角レーザー光散乱検出器と組み合わせたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−LALLS)および示差粘度検出器と組み合わせたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−DV)がある。長鎖分岐の検出のためのこれらの方法の使用および基礎理論は文献によく記載されている。たとえばZimm,B.H.、Stockmayer,W.H.、J.Chem.Phys.、17、1301頁(1949)およびRudin,A.、Modern Methods of Polymer Characterization、John Wiley & Sons、New York(1991)、103〜112頁を参照されたい。
【0077】
均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレンポリマーとしては、エチレンと少なくとも1つのC3〜C20α−オレフィンとのインターポリマーが挙げられる。ジエンまたはトリエン等の他のポリエンモノマーが含まれていてもよい。これらのポリマーの密度は一般に約0.85g/cc〜約0.96g/ccである。好ましくは密度は0.855g/cc〜0.95g/cc、より好ましくは0.86g/cc〜0.93g/ccである。
【0078】
「均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレンポリマー」とは対照的に、「均一に分岐した直鎖状エチレンポリマー」という用語は、ポリマーが測定可能なまたは実証可能な長鎖分岐を有しないこと、即ちポリマーの炭素1000個当たりの長鎖分岐による置換が平均0.01個未満であることを意味する。
【0079】
本発明において有用な均一に分岐したエチレンポリマーは、不均一に分岐したポリマーの幅広い分岐分布のために2つ以上の溶融ピークを有する不均一分岐直鎖状エチレンポリマーとは対照的に、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定すると好ましくは単一の溶融ピークを有することになる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態においては、エチレン系インターポリマーは少なくとも1つのα−オレフィンを含むエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。別の実施形態においては、インターポリマーは少なくとも1つのジエンまたはトリエンをさらに含む。好ましいα−オレフィンは3〜20個の炭素原子、より好ましくは3〜10個の炭素原子を含み、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテンまたは1−オクテンであり、より好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンであり、さらにより好ましくは1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンである。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0081】
一つの実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの分子量分布(M/M)は5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの分子量分布(M/M)は1.1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0082】
別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンポリマーの分子量分布は1.1〜5、好ましくは1.2〜4、より好ましくは1.5〜3である。全ての個別の値および1.1〜5の部分的範囲は本明細書に含まれ、本明細書に開示されている。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0083】
別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス(I)は1000g/10分以下、好ましくは500g/10分以下、より好ましくは100g/10分以下である。別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス(I)は0.01g/10分以上、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上である。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0084】
別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス(I)はASTM D−1238−04(190℃、負荷2.16kg)を用いて測定して、0.05g/10分〜100g/10分、好ましくは0.1g/10分〜50g/10分、より好ましくは0.2g/10分〜30g/10分、さらにより好ましくは0.5g/10分〜20g/10分である。全ての個別の値および0.05g/10分〜300g/10分の部分的範囲は本明細書に含まれ、本明細書に開示されている。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0085】
別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス(I)は6g/10分以下、好ましくは5g/10分以下、より好ましくは4g/10分以下である。別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス(I)は0.01g/10分以上、好ましくは0.05g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上である。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0086】
別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス(I)はASTM D−1238−04(190℃、負荷2.16kg)を用いて測定して、0.01g/10分〜4g/10分、好ましくは0.05g/10分〜3g/10分、より好ましくは0.1g/10分〜2g/10分である。全ての個別の値および0.01g/10分〜4g/10分の部分的範囲は本明細書に含まれ、本明細書に開示されている。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0087】
別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの密度は0.93g/cm以下、好ましくは0.92g/cm以下、より好ましくは0.91g/cm以下である。別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの密度は0.85g/cm以上、好ましくは0.86g/cm以上、より好ましくは0.87g/cm以上である。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0088】
別の実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの密度は0.85g/cm〜0.93g/cm、好ましくは0.86g/cm〜0.91g/cm、より好ましくは0.88g/cm〜0.91g/cmである。全ての個別の値および0.85g/cm〜0.93g/cmの部分的範囲は本明細書に含まれ、本明細書に開示されている。さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。
【0089】
エチレン系ポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0090】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0091】
エチレン/α−オレフィンコポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0092】
オレフィンマルチブロックインターポリマー
オレフィンマルチブロックインターポリマーならびにその調製および使用については、WO2005/090427、US2006/0199931、US2006/0199930、US2006/0199914、US2006/0199912、US2006/0199911、US2006/0199910、US2006/0199908、US2006/0199907、US2006/0199906、US2006/0199905、US2006/0199897、US2006/0199896、US2006/0199887、US2006/0199884、US2006/0199872、US2006/0199744、US2006/0199030、US2006/0199006およびUS2006/0199983に記載されている。これらはそれぞれ参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0093】
オレフィンマルチブロックインターポリマーは2つの触媒を用いて種々の量のコモノマーと鎖シャトリング剤(chain shuttling agent)を組み込んで製造することができる。好ましいオレフィンマルチブロックインターポリマーはエチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーである。エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーまたはエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、以下の特徴の1つまたは複数を有する:
(1)0より大きく約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn;または
(2)TREFを用いて分別した際に40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、分画のブロックインデックスが少なくとも0.5から約1までであることを特徴とする分子分画;または
(3)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cc)、ここでTとdの数値は関係式:
>−6553.3+13735(d)−7051.7(d)
に対応する;または
(4)約1.7〜約3.5のMw/Mn、融解熱ΔH(J/g)および最大のDSCピークと最大のCRYSTAFピークとの間の温度差と定義されるデルタ量ΔT(℃)で特徴付けられ、ここでΔTとΔHの数値は以下の関係を有する:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81(ΔHが0より大きく130J/gまでの場合)
ΔT≧48℃(ΔHが130J/gより大きい場合)、
ここでCRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、ポリマーの5%未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である;または
(5)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形被覆基材を用いて歪み300%および1サイクルにおいて測定した弾性回復Re(%)および密度(グラム/立方センチメートル)を有し、ここでエチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に有しない場合、Reおよびdの数値は以下の関係を満足する:Re>1481−1629(d);または
(6)TREFを用いて分別した際に40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、分画のモルコモノマー含量が同じ温度の間で溶出する対応するランダムエチレンインターポリマー分画のモルコモノマー含量よりも少なくとも5%大きいことを特徴とする分子分画。ここで前記対応するランダムエチレンインターポリマーは同じコモノマー(単数または複数)を有し、そのメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量(全ポリマーに対して)はエチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量の10%以内である;または
(7)25℃における貯蔵モジュラスG'(25℃)および100℃における貯蔵モジュラスG'(100℃)、ここでG'(25℃)のG'(100℃)に対する比は約1:1〜約9:1の範囲である。
【0094】
さらなる実施形態においては、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは連続溶液重合反応器で製造されたエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーで、ブロック長の最も可能な分布を有している。一つの実施形態においては、コポリマーは末端ブロックを含む4個以上のブロックまたはセグメントを含む。
【0095】
エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーは典型的には重合形態の中にエチレンおよび1以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合したモノマー単位のマルチプルブロックまたはセグメントによって特徴付けられる。即ち、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはブロックインターポリマー、好ましくはマルチブロックインターポリマーまたはコポリマーである。いくつかの実施形態においては、マルチブロックコポリマーは以下の式:
(AB)
によって表される。
ここでnは少なくとも1、好ましくは1より大きな整数であり、2,3,4,5,10,15,20,30,40,50,60,70,80,90,100またはそれ以上等である。「A」はハードブロックまたはセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは実質的に直鎖状の様式で連結されており、実質的分岐状または実質的星状の様式とは対照的である。他の実施形態においては、AブロックおよびBブロックはポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。換言すれば、ブロックコポリマーは通常以下の構造を有しない。
AAA−AA-BBB−BB
【0096】
さらに他の実施形態においては、ブロックコポリマーは通常、異なったコモノマー(単数または複数)を含む第3の型のブロックを有しない。さらに他の実施形態においては、ブロックAおよびブロックBの各々はブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。換言すれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りの部分と実質的に異なった組成を有するチップセグメント等の異なった組成の2つ以上のサブセグメント(またはサブブロック)を含まない。
【0097】
エチレンマルチブロックインターポリマーは典型的には種々の量の「ハード」および「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントはエチレンがポリマーの重量に対して約95重量%を超え、好ましくは約98重量%を超える量で存在する重合した単位のブロックを指す。換言すれば、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)はポリマーの重量に対して約5重量%未満、好ましくは約2重量%未満である。いくつかの実施形態においては、ハードセグメントはエチレンの全部または実質的に全部を含む。一方「ソフト」セグメントはコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)がポリマーの重量に対して約5重量%を超え、好ましくは約8重量%を超え、約10重量%を超え、または約15重量%を超える重合した単位のブロックを指す。いくつかの実施形態においては、ソフトセグメント中のコモノマー含量は約20重量%を超え、約25重量%を超え、約30重量%を超え、約35重量%を超え、約40重量%を超え、約45重量%を超え、約50重量%を超え、または約60重量%を超えてもよい。
【0098】
ソフトセグメントは多くの場合、ブロックインターポリマーの全重量の約1重量%〜約99重量%、好ましくはブロックインターポリマーの全重量の約5重量%〜約95重量%、約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約85重量%、約20重量%〜約80重量%、約25重量%〜約75重量%、約30重量%〜約70重量%、約35重量%〜約65重量%、約40重量%〜約60重量%、または約45重量%〜約55重量%、ブロックインターポリマー中に存在してよい。逆に、ハードセグメントは同様の範囲に存在してよい。ソフトセグメントの重量百分率とハードセグメントの重量百分率は、DSCまたはNMRから得られたデータに基づいて計算することができる。そのような方法および計算は同時に出願した米国特許出願第11/376,835号(公知になれば挿入)、(代理人書類番号385063−999558、発明の名称「エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー(Ethylene/α−Olefin Block Interpolymers)」、2006年3月15日出願、発明者:Colin L.P.Shan、Lonnie Hazlittら、譲受人:Dow Global Technologies Inc.)に開示されており、その開示は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0099】
「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、好ましくは直線的様式で結合した2つ以上の化学的に異なった領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、即ち重合したエチレン性官能基に関してペンダントまたはグラフト様式ではなく末端−末端で結合した化学的に相違した単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態においては、ブロックはその中に組み込まれたコモノマーの量または種類、密度、結晶性の程度、当該組成のポリマーに起因する結晶のサイズ、タクティシティの種類または程度(アイソタクティックまたはシンジオタクティック)、部位規則性または部位不規則性、長鎖分岐または超分岐を含む分岐の程度、均一性、または任意の他の化学的または物理的特性において異なる。マルチブロックコポリマーは、コポリマーを製造する独特のプロセスによる両方の多分散インデックス(PDIまたはM/M)の独特の分布、ブロック長の分布、および/またはブロック数の分布によって特徴付けられる。より具体的には、連続プロセスで製造する場合には、ポリマーのPDIは望ましくは1.7〜2.9、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.8〜2.2、最も好ましくは1.8〜2.1である。バッチまたはセミバッチプロセスで製造する場合には、ポリマーのPDIは1.0〜2.9、好ましくは1.3〜2.5、より好ましくは1.4〜2.0、最も好ましくは1.4〜1.8である。
【0100】
オレフィンマルチブロックインターポリマーは、本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0101】
エチレンマルチブロックインターポリマーは、本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0102】
オレフィンマルチブロックコポリマーは、本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0103】
エチレンマルチブロックコポリマーは、本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0104】
プロピレン系ポリマー
適当なプロピレン系ポリマーとしては、プロピレンホモポリマーおよびプロピレンインターポリマーが挙げられる。プロピレンと重合するための適当なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドセセン、ならびに4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、およびスチレンが挙げられる。好ましいコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテン、より好ましくはエチレンが挙げられる。
【0105】
プロピレン系ポリマーは少なくとも2つの二重結合を有するモノマーを含んでもよく、それらは好ましくはジエンまたはトリエンである。適当なジエンおよびトリエンコモノマーとしては、7−メチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7,11−トリメチル−1,6,10−オクタトリエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,3−ブタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはそれらの混合物、好ましくはブタジエン、ヘキサジエン、およびオクタジエン、最も好ましくは1,4−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、および5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が挙げられる。
【0106】
追加的な不飽和コモノマーとしては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、およびジシクロペンタジエン;スチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等のC8〜40ビニル芳香族化合物;ならびにクロロスチレンおよびフルオロスチレン等のハロゲン置換C8〜40ビニル芳香族化合物が挙げられる。
【0107】
特に興味が持たれるプロピレン系インターポリマーとしては、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン、プロピレン/1−オクテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/ENB、プロピレン/エチレン/1−ヘキセン、プロピレン/エチレン/1−オクテン、プロピレン/スチレン、およびプロピレン/エチレン/スチレン、好ましくはプロピレン/エチレンインターポリマーが挙げられる。
【0108】
適当なプロピレン系ポリマーは、当業者が有する手段、たとえばシングルサイト触媒(メタロセンまたは束縛構造)またはZiegler Natta触媒を用いて形成される。プロピレンおよびエチレンまたはα−オレフィンモノマー等の任意選択のコモノマーは、当業者が有する条件、たとえばGalliら、Angew.Macromol.Chem.120巻、73頁(1984)、またはE.P.MooreらによってPolypropylene Handbook、Hanser Publishers、New York、1996、特に11〜98頁に開示された条件下で重合される。プロピレン系ポリマーとしては、Shell社のKF6100ホモポリマーポリプロピレン、Solvay社のKS4005ポリプロピレンコポリマー、Solvay社のKS300ポリプロピレンターポリマー、およびDow Chemical社から入手可能なINSPIRE Performance Polymersが挙げられる。追加的なプロピレン系インターポリマーとしては、米国仮出願第60/988,999号(2007年11月19日出願)に記載されたものが挙げられ、該出願は本明細書に完全に組み込まれる。
【0109】
大部分の重量%(インターポリマーの重量に対して)の重合プロピレンを含むプロピレン/α−オレフィンインターポリマーは、本発明に含まれる。適当なポリプロピレン系ポリマーとしては、VERSIFY PlastomersおよびVERSIFY Elastomers(Dow Chemical社)ならびにVISTAMAXXポリマー(ExxonMobil Chemical社)、LICOCENEポリマー(Clariant社)、EASTOFLEXポリマー(Eastman Chemical社)、REXTACポリマー(Hunstman社)、VESTOPLASTポリマー(Degussa社)、PROFAX PF−611およびPROFAX PF−814(Montell社)が挙げられる。
【0110】
一つの実施形態においては、プロピレン系ポリマーはプロピレンおよび典型的にはエチレンおよび/または1つもしくは複数の不飽和コモノマーを含み、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を有することを特徴とする:(i)部位誤差に対応する約14.6および約15.7ppmの13C NMRピークであって、ほぼ等しい強度のピーク、(ii)約−1.20を超える歪み指数Six、(iii)インターポリマー中のコモノマー(即ちエチレンおよび/または不飽和コモノマー(単数または複数)から誘導される単位)の量が増大するとともに基本的に一定のままであるTmeおよび減少するTMaxを有するDSC曲線、および(iv)Ziegler−Natta触媒を用いて調製した比較し得るインターポリマーよりもγ形結晶が多いことを示すX線回折パターン。好ましくは、プロピレン系インターポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。特に好ましいプロピレン系ポリマーは、Dow Chemical社から入手可能なVERSIFY PlastomersおよびVERSIFY Elastomersである。特性(i)において2つの13C NMRピークの間隔は約1.1ppmであることが注目される。これらのプロピレン系インターポリマーは、非メタロセンの金属を中心に有するヘテロアリールリガンド触媒を用いて製造される(米国特許第6,919,407号参照)。そのようなインターポリマーは、これらの特性の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは4つ全部によって特徴付けられる。
【0111】
上の副段落(iv)のX線特性に関して、「比較し得る」インターポリマーは、10重量%以内の同一のモノマー組成および10重量%以内の同一のM(重量平均分子量)を有するものである。たとえば、本発明のプロピレン/エチレン/1−ヘキセンインターポリマーがエチレン9重量%と1−ヘキセン1重量%、M250,000であれば、比較し得るポリマーはエチレン8.1〜9.9重量%、1−ヘキセン0.9〜1.1重量%で、M225,000〜275,000を有し、Ziegler−Natta触媒で調製されることになる。
【0112】
一つの実施形態においては、プロピレン系インターポリマーのメルトフローレート(MFR)は0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは2g/10分以上である。別の実施形態においては、プロピレン系インターポリマーのメルトフローレート(MFR)は100以下、好ましくは50以下、より好ましくは25g/10分以下である。MFRはASTM D−1238(2.16kg、230℃)に従って測定される。好ましい実施形態においては、プロピレン系インターポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。
【0113】
一つの実施形態においては、プロピレン系インターポリマーのメルトフローレート(MFR)は0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、より好ましくは2〜25g/10分である。全ての個別の値および0.1〜100g/10分の部分的範囲は本明細書に含まれ、本明細書に開示されている。MFRはASTM D−1238(2.16kg、230℃)に従って測定される。好ましい実施形態においては、プロピレン系インターポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。
【0114】
一つの実施形態においては、プロピレン系インターポリマーの密度は0.92g/cm以下、好ましくは0.91g/cm以下、より好ましくは0.90g/cm以下である。別の実施形態においては、プロピレン系インターポリマーの密度は0.83g/cm以上、好ましくは0.84g/cm以上、より好ましくは0.85g/cm以上である。好ましい実施形態においては、プロピレン系インターポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。
【0115】
一つの実施形態においては、プロピレン系インターポリマーの密度は0.83g/cm〜0.92g/cm、好ましくは0.84g/cm〜0.91g/cm、より好ましくは0.85g/cm〜0.91g/cmである0.83g/cm〜0.92g/cmの。全ての個別の値および部分的範囲は本明細書に含まれ、本明細書に開示されている。好ましい実施形態においては、プロピレン系インターポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。
【0116】
一つの実施形態においては、プロピレン系インターポリマーの分子量分布(M/M)は6以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下である。別の実施形態においては、分子量分布は1.5以上、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上である。好ましい実施形態においては、プロピレン系インターポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。
【0117】
一つの実施形態においては、プロピレン系インターポリマーの分子量分布は1.5〜6、より好ましくは2〜5.5、より好ましくは2.5〜5である。全ての個別の値および1.5〜6の部分的範囲は本明細書に含まれ、本明細書に開示されている。好ましい実施形態においては、プロピレン系インターポリマーはプロピレン/エチレンインターポリマーである。
【0118】
一つの実施形態においては、プロピレン系ポリマーは少なくとも50重量%の重合したプロピレン(ポリマーの重量に対し)および少なくとも5重量%の重合したエチレン(ポリマーの重量に対し)を含み、部位誤差に対応する約14.6および15.7ppmの13C NMRピークを有し、ピーク強度はほぼ等しい(たとえば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,919,407号、12欄64行〜15欄51行参照)。
【0119】
プロピレン系ポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0120】
プロピレン/α−オレフィンインターポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0121】
プロピレン/エチレンインターポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0122】
プロピレン/エチレンコポリマーは本明細書に記載した2つ以上の実施形態の組合せを有してもよい。
【0123】
本発明の組成物に用いることができる他のポリマーとしては、これだけに限らないが、EEA(たとえばDow Chemical社から入手可能なAMPLIFY EA101 Functional Polymer)、Dow Chemical社のNORDEL IP Hydrocarbon Rubbers等のEPDM(エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー)、DuPont社のELVAX製品群等のEVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)、DuPont社のELVALOY製品群等のEMA(エチレンメタクリレート)、KRATON Polymers社のKRATON G製品群等のSEBS、KRATON Polymers社のKRATON D製品群等のSBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)、およびDuPont社のSURLYN製品群等のアイオノマーが挙げられる。
【0124】
一つの実施形態においては、本発明の組成物は以下を含む:(a)それぞれ密度が0.851g/cc〜0.959g/cc(1cc=1cm)で、190℃、重量2kgでのメルトインデックスが0.01〜2000dg/分のエチレン/α−オレフィンインターポリマーまたはオレフィンマルチブロックインターポリマー(たとえばエチレンマルチブロックインターポリマー)、(b)ヒドロキシル官能化PDMS(たとえばヒドロキシル末端PDMS)、および(c)無水マレイン酸グラフト化エチレン/α−オレフィンインターポリマー、アクリル酸グラフト化エチレン/α−オレフィンコポリマー、イミダゾールグラフト化エチレン/α−オレフィンコポリマー、無水マレイン酸グラフト化オレフィンマルチブロックインターポリマー、アクリル酸グラフト化オレフィンマルチブロックインターポリマー、および/またはイミダゾールグラフト化オレフィンマルチブロックインターポリマー。さらなる実施形態においては、組成物のブレンド比(組成物の重量に対する)は、成分(a)50〜99%、成分(b)0.5〜49.5重量%、および成分(c)0.001〜1重量%となろう。さらなる実施形態においては、上の組成物(ブレンドA)はポリプロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、高密度ポリエチレン、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸エチル等の他のポリマーとさらにブレンドすることができる。さらなる実施形態においては、ブレンド比はブレンドA0.5〜99.5重量%と1以上のこれらの他のポリマー99.5〜0.5重量%であってよい。
【0125】
一つの実施形態においては、本発明は以下を含む硬いTPO組成物を提供する:(a)それぞれ230℃、重量2kgにおけるメルトフローレートが0.1〜2000dg/分であるプロピレン/α−オレフィンインターポリマー、プロピレン/エチレンインターポリマー、またはポリプロピレンホモポリマー、(b)それぞれ密度が0.851g/cc〜0.959g/cc(1cc=1cm)であるエチレン/α−オレフィンインターポリマーまたはオレフィンマルチブロックインターポリマー(たとえばエチレンマルチブロックインターポリマー)、(c)ヒドロキシル官能化PDMS(たとえばヒドロキシル末端PDMS)および(d)無水マレイン酸グラフト化エチレン/α−オレフィンインターポリマー、アクリル酸グラフト化エチレン/α−オレフィンコポリマー、イミダゾールグラフト化エチレン/α−オレフィンコポリマー、無水マレイン酸グラフト化オレフィンマルチブロックインターポリマー、アクリル酸グラフト化オレフィンマルチブロックインターポリマー、および/またはイミダゾールグラフト化オレフィンマルチブロックインターポリマー。
【0126】
一つの実施形態においては、組成物はランダムまたはホモポリマーポリプロピレン50〜99重量%とランダムまたはブロックポリマー1〜50重量%とを含む。一つの実施形態においては、ポリプロピレン組成物は0〜49.5重量%のグラフト化ポリプロピレンランダムまたはホモポリマーを含むことになる(グラフト化官能基には無水マレイン酸、アクリル酸、およびイミダゾールが含まれる)。一つの実施形態においては、組成物はエチレン/α−オレフィンインターポリマーまたはオレフィンマルチブロックインターポリマー、0〜49.5重量%のグラフト化エチレン/α−オレフィンインターポリマーまたはオレフィンマルチブロックインターポリマーを含む(グラフト化官能基には無水マレイン酸、アクリル酸、およびイミダゾールが含まれる)。さらなる実施形態においては、組成物は0.001〜1重量%のヒドロキシル官能化PDMSを含むことになる。
【0127】
ポリオレフィンブレンド
本発明の一つの実施形態においては、本発明の組成物において2つ以上のオレフィン系ポリマーのブレンドを用いることができる。たとえば、上で論じた2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド、上で論じた2つ以上のプロピレン系ポリマーのブレンド、上で論じた少なくとも1つのエチレン系ポリマーのブレンド、および上で論じた少なくとも1つのプロピレン系ポリマー、またはそれらの組合せ。追加的なブレンドとしては、上で論じた2つ以上のオレフィンマルチブロックインターポリマーのブレンド、上で論じた少なくとも1つのエチレン系ポリマーのブレンド、および上で論じた少なくとも1つのオレフィンマルチブロックインターポリマー、上で論じた少なくとも1つのプロピレン系ポリマーのブレンド、および上で論じた少なくとも1つのオレフィンマルチブロックインターポリマー、上で論じた少なくとも1つのエチレン系ポリマーのブレンド、上で論じた少なくとも1つのプロピレン系ポリマー、および上で論じた少なくとも1つのオレフィンマルチブロックインターポリマー、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0128】
発泡剤
発泡剤は化学的または物理的発泡剤であってよい。好ましくは、発泡剤は化学的発泡剤である。化学的発泡剤の例としては、これだけに限らないが、アゾジカルボンアミドおよびアゾビスホルムアミドが挙げられる。より好ましくは、発泡剤は公称架橋温度プロファイルの中にその活性化温度を有する化学的発泡剤ということになる。
【0129】
一つの実施形態においては、発泡剤が化学的発泡剤である場合、これはオレフィン系ポリマーの量に対して約0.05〜約10.0phrの間の量で存在する。より好ましくは、これは約0.5〜約5.0phrの間、さらにより好ましくは約1.5〜約4.0phrの間で存在する。
【0130】
好ましい実施形態においては、発泡剤は少なくとも2つの有機化合物を含む。
【0131】
一つの実施形態においては、化学的発泡剤はアゾビスホルムアミドを含む。さらなる実施形態においては、発泡剤の分解温度は130℃〜160℃、好ましくは130℃〜150℃である。
【0132】
発泡体を製造するための全ての実用的に有用なポリマー(POE、EVA等)には90〜125℃程度の加工温度が必要である。これは、発泡剤の分解温度が少なくとも130℃を超えるべきであることを意味する。通常の無機発泡剤は最適分解温度が160℃を超える重炭酸ナトリウムであるが、分解は100℃という低い温度で開始し、そのため本発明において使用することはできない。
【0133】
分解温度はDSC(示差走査熱量測定法)、TGA(熱重量解析)、DTA(示差熱解析)、またはDSC−TGAによって測定することができる。適当な方法としてはASTM D1715およびASTM E1641−07が挙げられる。一つの実施形態においては、ASTM D1715が分解温度を測定するために用いられる。
【0134】
添加物
本発明の組成物は1以上の添加物を含んでよい。本発明の組成物とともに用いて有用な添加物としては、これだけに限らないが、硬化助剤、焼け焦げ防止剤、抗酸化剤、フィラー、粘土、加工助剤、カーボンブラック、難燃剤、過酸化物、分散助剤、ワックス、カップリング剤、離型剤、光安定剤、金属不活化剤、可塑剤、帯電防止剤、白色化剤、核形成剤、他のポリマー、および着色剤が挙げられる。架橋性、可拡張性のポリマー組成物には高度に充填することができる。
【0135】
適当な非ハロゲン化難燃性添加物としては、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、赤リン、シリカ、アルミナ、酸化チタン、メラミン、ヘキサホウ酸カルシウム、アルミナ、カーボンナノチューブ、ウォラストナイト、マイカ、シリコーンポリマー、リン酸エステル、ヒンダードアミン安定剤、オクタモリブデン酸アンモニウム、膨張性化合物、オクタモリブデン酸メラミン、フリット、中空ガラスマイクロスフェア、タルク、粘土、有機改質粘土、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、および膨張性黒鉛が挙げられる。適当なハロゲン化難燃性添加物には、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、およびデクロランプラス(dechlorane plus)が含まれる。
【0136】
典型的には、本発明において用いられるポリマーおよびレジンは、1以上の安定剤、たとえば両方ともCiba Specialty Chemicals社から供給されるIRGANOX 1010およびIRGAFOS 168等の抗酸化剤で処理される。ポリマーは典型的には押出しまたは他の溶融プロセスの前に1以上の安定剤で処理される。他のポリマー性添加物としては、これだけに限らないが、紫外光吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核形成剤、フィラー、滑剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、煙防止剤、粘度制御剤、およびブロッキング防止剤が挙げられる。
【0137】
適用
本発明の組成物は履物、自動車、家具、カーペットおよび建設用途において特に有用である。製造される物品としては、これだけに限らないが、靴底、多成分靴底(種々の密度および種類のポリマーを含む)、間隙充填材、ガスケット、プロファイル、耐久消費財、ランフラットタイヤインサート、建設用パネル、レジャーおよびスポーツ用装備の発泡体、エネルギー管理用発泡体、音響管理用発泡体、絶縁用発泡体、およびその他の発泡体が挙げられる。
【0138】
本発明の物品を形成するために種々のプロセスを用いることができる。有用なプロセスとしては、これだけに限らないが、射出成形、押出し、圧縮成形、回転成形、熱成形、ブロー成形、粉末コーティング、紡糸、およびカレンダー成形が挙げられる。ポリマー組成物は、これだけに限らないが、バッチミキサー、Brabenderミキサー、Buschミキサー、Farrelミキサー、または押出し機等の種々の装置で混合することができる。
【0139】
本発明の発泡体は以下の用途に用いることができる:(a)履物業界で現在用いられている標準的ポリウレタン接着システムによって組み立てられる外底、中底および補強材、(b)履物業界で現在用いられているポリウレタン塗料による底および中底の塗装、(c)多層底および中底のためのポリオレフィンおよび2成分ポリウレタンのオーバーモールディング。さらに、ポリオレフィン/ポリウレタンのブレンドは、自動車用途および建設用途等の他の用途に用いることができる。自動車用途としては、これだけに限らないが、バンパーパネル、垂直パネル、柔軟なTPOスキン、内装トリムの製造が挙げられる。建設用途としては、これだけに限らないが、家具および玩具の製造が挙げられる。
【0140】
定義
本明細書で列挙するいずれの数値範囲も、任意の低い値と任意の高い値との間に少なくとも2単位の分離がある限り、低い値から高い値までの1単位ずつの全ての値を含む。例として、たとえば分子量、粘度、メルトインデックス等の組成的、物理的または機械的特性が100から1,000までであると述べられていれば、100、101、102等の全ての個別の値および100〜144、155〜170、197〜200等の部分的範囲が本明細書において明示的に列挙されていることが意図されている。1未満の値を含む範囲、または1より大きな分数を含む範囲(たとえば1.1、1.5等)については、1単位は必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。10未満の数を含む範囲(たとえば1〜5)については、1単位は典型的には0.1とみなされる。これらは具体的に意図されているものの例に過ぎず、列挙された最小値および最大値の間の数値の全ての可能な組合せは本出願において明示的に述べられているとみなすべきである。本明細書で論じるように、数値範囲はメルトインデックス、メルトフローレート、分子量分布、密度、および他の特性に関して列挙されている。
【0141】
本明細書において「組成物」という用語には、組成物ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む材料の混合物が含まれる。
【0142】
本明細書において「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーのブレンドを意味する。そのようなブレンドは混和性であってもなくてもよい(分子レベルでは相分離しない)。そのようなブレンドは相分離してもしなくてもよい。そのようなブレンドは、透過型電子顕微鏡法、光散乱、X線散乱、および当技術分野で知られた他の方法から決定される1以上のドメイン配置を含んでも含まなくてもよい。
【0143】
本明細書において「ポリマー」という用語は、同一のまたは異なった種類のモノマーを重合することによって調製されるポリマー性化合物を指す。したがって一般名ポリマーは、ただ1種のモノマーから調製されたポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語および以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。「エチレン/α−オレフィンポリマー」および「プロピレン/α−オレフィンポリマー」という用語は、以下に記載するインターポリマーを示している。当技術分野で知られているように、モノマーはポリマー中に重合した形態で存在している。
【0144】
本明細書において「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なった種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって一般名インターポリマーには、コポリマー(2つの異なったモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)および3つ以上の異なった種類のモノマーから調製されたポリマーが含まれる。
【0145】
本明細書において「オレフィン系ポリマー」という用語は、ポリマーの重量に対して大部分の重量%の、エチレンまたはプロピレン等の重合したオレフィンを含むポリマーを指す。
【0146】
本明細書において「エチレン系ポリマー」という用語は、(ポリマーの重量に対して)大部分の重量%の重合したエチレンモノマーを含み、任意に少なくとも1つのコモノマーを含んでもよいポリマーを指す。
【0147】
本明細書において「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」という用語は、(インターポリマーの重量に対して)大部分の重量%の重合したエチレンモノマーおよび少なくとも1つのα−オレフィンを含むインターポリマーを指す。本開示の文脈において用いる場合には、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはエチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーを含まない。
【0148】
本明細書において「エチレン/α−オレフィンコポリマー」という用語は、(コポリマーの重量に対して)大部分の重量%のエチレンとα−オレフィンがその中に重合されたコポリマーを指す。本開示の文脈において用いる場合には、エチレン/α−オレフィンコポリマーはエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーを含まない。
【0149】
本明細書において「プロピレン系ポリマー」という用語は、(ポリマーの重量に対して)大部分の重量%の重合したプロピレンモノマーを含み、任意に少なくとも1つのコモノマーを含んでもよいポリマーを指す。
【0150】
本明細書において「プロピレン/α−オレフィンインターポリマー」という用語は、(インターポリマーの重量に対して)大部分の重量%の重合したプロピレンモノマーおよび少なくとも1つのα−オレフィンを含むインターポリマーを指す。本開示の文脈において用いる場合には、プロピレン/α−オレフィンインターポリマーはプロピレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーを含まない。
【0151】
本明細書において「プロピレン/エチレンインターポリマー」という用語は、(インターポリマーの重量に対して)大部分の重量%の重合したプロピレンモノマー、エチレンを有し、および任意に少なくとも1つのコモノマーを含んでいてもよいインターポリマーを指す。本開示の文脈において用いる場合には、プロピレン/エチレンインターポリマーはプロピレン/エチレンマルチブロックインターポリマーを含まない。
【0152】
本明細書において「プロピレン/エチレンコポリマー」という用語は、(コポリマーの重量に対して)大部分の重量%のプロピレンおよびエチレンがその中に重合されたコポリマーを指す。本開示の文脈において用いる場合には、プロピレン/エチレンコポリマーはプロピレン/エチレンマルチブロックコポリマーを含まない。
【0153】
本明細書において官能化ポリジメチルシロキサンという用語は、たとえばヒドロキシル、カルボキシル、アミン、および/または同様のもの等の少なくとも1つの極性部分が化学結合したポリイメチルシロキサンを指す。好ましい極性部分としてはヒドロキシル、カルボキシルおよびアミン、より好ましくはヒドロキシルが挙げられる。
【0154】
本明細書において「架橋発泡体」という用語は、部分的に架橋した発泡体(ゲル含量が50重量%未満)または完全に架橋した発泡体(ゲル含量が50重量%以上)を指す。ゲル含量はASTM D−2765−01,Procedure Aに従って測定される。本発明の発泡体におけるゲル含量は、典型的には発泡体の全重量に対して60重量%より大きい。
【0155】
本明細書において「熱処理」および「熱処理した」という用語および同様の用語は、材料または組成物の温度を上昇させるプロセスを指す。温度を上昇させるための適当な手段としては、これだけに限らないが、電気的熱源を用いて熱を加えること、または照射の形態を用いて熱を加えることが挙げられる。
【0156】
測定
用語「MI」はg/10分単位のメルトインデックスIを意味し、これはエチレン系ポリマーについてASTM D−1238−04を用いて条件190℃/2.16kgで測定される。プロピレン系ポリマーについては条件230℃/2.16kgが用いられ、MFR(メルトフローレート)と示される。
【0157】
報告されたポリマー密度はASTM D−792−00に従って測定した。
【0158】
発泡体試料の密度は、ASTM D−297−93に従って測定した。発泡体を調製した後、いずれの試験も実施する前に、試料を少なくとも24時間室温で放冷した。寸法がほぼ「1cm×1cm」の発泡体片を切取り、分析用天秤で秤量した。次いで発泡体試料をアルコールに浸漬し、拭い取って乾燥した。これは引き続いて水に浸漬する際に気泡を除去することの助けとなる方法である。最後に試料をビーカー中の水に浸漬し、金属製の錘とともに水中に保存し、秤量した。水の入ったビーカーおよび金属製の錘の重量を測定した。密度は以下の式によって計算した:
25℃における密度(Mg/m)=0.9971×A/(A−(B−C))
ここで
A=試料質量(g)
B=水および金属製の錘の入ったビーカー中の試料質量
C=水および金属製の錘の入ったビーカーの質量
【0159】
硬さ(Asker C)はASTM D−2240−05に従い、Teclock GS−701N試験装置を用いて測定した。各試料は製造後、試験前に最低12時間、好ましくは7日以上、コンディショニングした。コンディショニングは23±2℃、湿度50±1%で行なった。各測定について試験試料の最小厚みは6mm、表面積は「5cm×5cm」であった。試験はコンディショニングした条件で、試料のいずれの縁部からも最小12mmで実施した。試料の表層を剥離し、プレートの上に中心合わせをした表層について測定を行なった。圧力を加えて約10秒後に硬さスケールを測定した。各測定部位の間の距離を少なくとも6mmとして試料上の種々の位置で5点の測定を行ない、5つの測定の平均を記録した。
【0160】
BS EN 12770:2000の方法に従い、DIN耐摩耗性を測定した。試験を実施するために用いた試験装置はGT−7012−Dユニットであった。これは試験方法に記載した装置に適合し、履物およびゴム材料の試験のための台湾の有名な装置供給業者であるGOTECH社から入手可能である。試験試料は、次節に記載したようにして製造した発泡体試料(およその寸法は220mm×220mm×12mm)の中央部から穿孔した。穿孔した試料は直径16mmの円筒形状をしており、もとの発泡体スラブと同じ約12mmの厚みであった。試験装置に取り付ける前に発泡円筒の重量を測定した。摩耗させた表面に対する接触角を90°として試料上に10Nの負荷がかかるように装置をセットした。次いで試験装置を始動し、円筒形試料を全部で40mの距離になるよう摩耗させた表面を横切って前後に走行させた。次いで試料を取り出し、試料の重量を測定した。摩耗による材料の体積損失を下式によって計算した:
体積損失(mm)=(試験前重量−試験後重量)×公称摩耗力/(試料密度×平均摩耗力)
試料の密度はASTM D297−93により、もとの150mm×150mm×15mmの試料スラブについて別に測定した。公称摩耗力は200mgの定数であり、平均摩耗力は標準品(GOTECH社が供給)から決定し、発泡体試料の試験に先立って実施した。標準品では典型的には200mgに近い摩耗損失、典型的には190〜210前後(平均摩耗力)が得られ、これは試験装置の条件の目安を提供することを意図している。
【実施例】
【0161】
実験
以下の実施例は本発明を例示しているが、明示的にも暗示的にも本発明を限定するものではない。
【0162】
材料
本研究において用いた材料は以下の通りである。
【0163】
EO56は、以下の特徴を有する均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン−ブテンコポリマー(Dow Chemical社製)である:メルトインデックス(190℃、負荷2.16kg)1.5〜2.5g/10分、密度0.882〜0.888g/cc(cc=cm)。
【0164】
EO86は、以下の特徴を有する均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン−ブテンコポリマー(Dow Chemical社製)である:メルトインデックス(190℃、負荷2.16kg)<0.5g/10分、密度0.898〜0.904g/cc。
【0165】
ENGAGE 8840 Polyolefin Elastomerは、以下の特徴を有するエチレン−オクテンコポリマー(Dow Chemical社製)である:メルトインデックス(190℃、負荷2.16kg)1.2〜2g/10分、密度0.895〜0.898g/cc。
【0166】
ENGAGE 7447 Polyolefin Elastomerは、以下の特徴を有するエチレン−ブテンコポリマー(Dow Chemical社製)である:メルトインデックス(190℃、負荷2.16kg)4〜6g/10分、密度0.862〜0.868g/cc。
【0167】
ENGAGE 8407 Polyolefin Elastomerは、以下の特徴を有するエチレン−オクテンコポリマー(Dow Chemical社製)である:メルトインデックス(190℃、負荷2.16kg)22.5〜37.5g/10分、密度0.867〜0.873g/cc。
【0168】
AMPLFY EA 101 Functional Polymerは、以下の特徴を有するエチレン−アクリル酸エチルコポリマー(Dow Chemical社製)である:メルトインデックス(190℃、負荷2.16kg)5〜7g/10分、密度0.929〜0.933g/cc。
【0169】
ELVAX 462は、以下の特徴を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー(DuPont de Nemoir社製)である:酢酸ビニル含量21%、190℃、負荷2.16kgにおけるメルトフローインデックス1.5g/10分、密度0.941g/cc。
【0170】
発泡体試料用のコンパウンドは一般的には当業者に知られたニーダーまたはロールミルで調製される。本研究においては、直径8インチのロールを備えたロールミルで各発泡体配合物の成分をコンパウンド化した。コンパウンドはロールミルで約8〜10分、温度約100℃〜110℃で加工した。配合物を寸法「140mm×140mm×8mm」の緊密な金型中、170℃で約8分間、周囲圧力下で硬化することによってコンパウンドを発泡させた。
【0171】
本発明の配合物は、履物業界において既存の従来の配合物を加工するのと同じ方法で加工することができる。
【0172】
表1に示すように、架橋発泡体の耐摩耗性の改善において、実施例はヒドロキシル末端PDMSがビニリデン末端PDMSと比較して優れた有効性を有することを示している。表1のデータは、ヒドロキシル末端PDMSを含む実施例2が摩耗試験において密度0.36〜0.37g/cmの発泡体の中で最小の重量損失(したがって最良の耐摩耗性)を可能にすることを示している。
【0173】
【表1】

【0174】
表2に示すように、実施例はエチレン/α−オレフィンコポリマーまたはエチレン酢酸ビニルから調製した発泡体における種々の発泡剤と組み合わせたPDMSの有効性を示している。
【0175】
【表2】

【0176】
表2のデータは、いずれもヒドロキシル末端PDMS材料を含む実施例5および6が用いた化学発泡剤に依存して異なった耐摩耗性を示すことを示している。しかし、ヒドロキシル末端PDMSを含む両方の系は実施例4よりも耐摩耗性が大きかった。
【0177】
分解温度がより低いアゾビスホルムアミド発泡剤(FA4)を用いた場合には、より低い摩耗重量損失が観察された(実施例6対実施例5)。特に、発明例6のAkron摩耗試験性能は、既存の材料よりも少なくとも30%低い密度で製造されていてさえも、典型的な発泡外底の規格(典型的には負荷6ポンド、摩耗3000サイクル後で材料摩耗損失0.25cm(250mm))に勝っていた。また、実施例6の超低密度は、履物用途で用いられる既存の発泡体よりも顕著に低い。
【0178】
実施例7および8に示す純粋なEVA発泡体のデータは、ヒドロキシル末端PDMSがEVA系にも効果的であることを示している。ヒドロキシル末端PDMSの同様のレベルにおいて、エチレン/α−オレフィンコポリマーはEVAよりも良好な耐摩耗性を示した(実施例6と8とを比較されたい)。したがって、POEおよびEVAを含むブレンドは、EVA単独よりも良好な耐摩耗性を示すことが期待され、また発泡体の耐摩耗性を改善するためには、EVAよりもPOEを用いることの方が好ましい。
【0179】
表3に示すように、実施例は耐摩耗剤としてのシリカの使用を伴っても伴わなくても、POE/EVAブレンドにおけるヒドロキシル末端PDMSの有効性を示している。
【0180】
【表3】

【0181】
表3に示すように、ヒドロキシル末端PDMSは、以下の実施例「13対9」、「14対10」、「15対11」、および「16対12」の対の比較によって示されるように、POE/EVAブレンドから製造された発泡体の形成にも有効である。本発明の発泡体は全て、同程度のまたはより低い密度においてDINおよびAkron耐摩耗性試験で顕著な改善を示した。また、履物業界において架橋発泡体のための「耐摩耗性改良剤」として一般に用いられている材料であるシリカは、実施例9または10と比べて実施例11および12において耐摩耗性向上効果を示さない。実施例13と比べて改善された実施例14の耐摩耗性において見られるように、発泡剤としてのFA4(FA3と比べて)を含む組成物の優れた耐摩耗性はここでも示されている。
【0182】
予期しないことに、耐摩耗性の向上は発泡剤とヒドロキシル末端PDMSとの相乗作用の機能であって、発泡剤単独の機能ではないように思われる。PDMSが存在しない場合(実施例9および10)には、耐摩耗性試験はFA3およびFA4を用いて製造した発泡体の結果と同じ結果となった。
【0183】
表4は、エチレン/α−オレフィンコポリマーおよびエチレンアクリル酸エチルコポリマーのブレンドを含む、より高い密度での発泡体の形成におけるヒドロキシル末端PMDSの有効性を示す。
【0184】
【表4】

【0185】
表4に示すように、たとえば実施例19に対する実施例20(密度約0.5g/cmの発泡体)における耐摩耗性の改善で説明されるように、ヒドロキシル末端PDMSはより高密度の発泡体においても耐摩耗性の改善に効果的である。
【0186】
ヒドロキシル末端を含まない非官能化PDMSはヒドロキシル末端PDMSより効果が低い。これは実施例20および21の耐摩耗性の差で示される。非官能化PDMSを含む実施例21のAkron耐摩耗性は外底用発泡体に典型的に要求される耐摩耗性の要件に合致しないことにも注意されたい。というのは、Akron摩耗は要件(6ポンドの負荷の下、摩耗3000サイクルの後の材料損失<0.25cm)よりはるかに大きいからである。
【0187】
実施例20に対する実施例22の耐摩耗性の改善において示されるように、これらの実施例においてFA3の効果に比べてPDMSと発泡剤FA4の追加的な相乗効果を観察することができる。
【0188】
実施例23および24は、ヒドロキシル末端PDMSがPOE/EEAブレンドから製造された発泡体の耐摩耗性の改善にも有効であることを示している。
【0189】
予期しないことに、ヒドロキシル末端PDMSを含む組成物が非官能化PDMSを含む組成物に比べて、(靴底用途に特に適している)架橋発泡体に顕著に良好な耐摩耗性をもたらしていることが発見された。
【0190】
また、アゾビスホルムアミド(FA3)と、分解温度がより低いアゾビスホルムアミド(FA4)を種々の配合で試験した際に、その結果はFA4から製造された発泡体がFA3から製造された発泡体よりも予期しないほど顕著に良好な耐摩耗性を有していることを示した。
【0191】
さらに、ポリエチレン/α−オレフィンエラストマー(POE)とポリエチレン酢酸ビニル(EVA)のブレンドに対して、ヒドロキシル末端PDMSおよびアゾビスホルムアミドを用いて比重が0.25と低く、Asker C硬さが66で、Akron摩耗(負荷6ポンド、3000サイクル)の材料損失が0.25cmの発泡体を製造した。さらに、密度約0.9g/cmのエチレン/オクテンコポリマーから密度0.19g/cmのさらにより軽い発泡体を製造した。この発泡体のAkron摩耗(負荷6ポンド、3000サイクル)の材料損失は0.22cmであり、一方PDMSを含まない参照発泡体は同じ試験条件下で0.93cmの材料損失を示した。これらの発泡体の密度は業界において典型的に用いられているものより少なくとも30%軽く、一方業界で設定されている耐摩耗性を維持、またはこれを超えていた。
【0192】
好ましくは「分解温度がより低い」アゾビスホルムアミドと組み合わせたヒドロキシル末端PDMSは、発泡外底に対して少なくとも30%の軽量化を可能にし、今日の履物業界によって実用されていない発泡密度を達成した。さらに、EVAをエチレン/α−オレフィンポリマーで置換することによって耐摩耗性が改善され、さらに靴底に用いられている現行の材料よりも優れた特性を得ることができた。
【0193】
このように、ヒドロキシル末端PDMSと分解温度が低い好ましいアゾビスホルムアミドによって、今日の業界で実用されていない外底用途の0.25g/cm未満と超低比重のPOEまたはEVA組成物のペルオキシド架橋発泡体が製造された。
【0194】
ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンは架橋ポリオレフィン発泡体において耐摩耗性を改善するために、非官能化ポリジメチルシロキサンよりも好ましいことが発見された。最適分解温度がより低い様々な種類のアゾビスホルムアミド等の様々な発泡剤をポリジメチルシロキサンの存在と組み合わせて用いることによって、顕著に良好な耐摩耗性を有する発泡体が製造されることも発見された。これらの結果を組み合わせることによって、履物外底の業界において現在達成されていない極超低密度の新規な発泡体が可能になる。
【0195】
本発明の組成物は、これだけに限らないが、医療用および人間工学用発泡体、ウマおよび家畜の保護用発泡体、グリップおよびハンドル等の、高い耐摩耗性と低い発泡密度が要求される他の発泡用途に応用することができる。ヒドロキシル末端PDMSは他の非発泡ポリオレフィン用途における耐摩耗性増強剤としても有効であろう。
【0196】
限られた数の実施形態について本発明を記述したが、別に記述され、本明細書で主張するように、これらの実施形態は本発明の範囲を限定することを意図したものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分を含む組成物:
A)オレフィン系ポリマー、
B)官能化ポリジメチルシロキサン、および
C)少なくとも1つの有機化合物を含む発泡剤。
【請求項2】
前記発泡剤の分解温度が130℃〜160℃である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記官能化ポリジメチルシロキサンがヒドロキシル官能化ポリジメチルシロキサンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシル官能化ポリジメチルシロキサンがヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有機化合物が少なくとも1つの炭素−窒素結合を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの有機化合物が、100g/モル以上の分子量を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
成分Bが前記組成物の重量に対して2〜5重量%の量で存在する、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記オレフィン系ポリマーがエチレン/α−オレフィンインターポリマーである、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記インターポリマーが0.86g/cc〜0.91g/ccの密度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記インターポリマーが、0.2〜30g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
エチレン酢酸ビニルコポリマーをさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品。
【請求項13】
前記物品が発泡体である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記発泡体が、0.25以下の比重を有する、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記発泡体が、損失0.50cm以下のAkron耐摩耗性を有する、請求項13または14に記載の物品。

【公表番号】特表2012−504694(P2012−504694A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530259(P2011−530259)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059315
【国際公開番号】WO2010/040019
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】