説明

耐火スクリーンシャッター、及び耐火スクリーンシャッターの避難口の段差を緩和する方法

【課題】座板の形状を変更することなく、幕体を巻き上げる際に座板を天井の収納部に収納することが妨げられないようにしたうえで、車椅子による座板の乗り越えを容易にする。
【解決手段】天井裏から降下して屋内空間を仕切り、上昇して天井裏に収納されるように設置され、避難扉を有する耐火性のスクリーン12と、スクリーン12の下端部に、スクリーン12Bが降下すると着床し、スクリーン12が上昇すると天井に設置された収納部に収納されるように設けられ、避難扉16の下側の段差部である座板段差部50を有する座板20と、座板段差部50に揺動可能に支持され、座板段差部50が床から離れた状態では、自重で下がり、少なくとも一部が座板段差部50の底部から下側に突出し、座板段差部50が着床した状態では、着床した座板段差部50と床面3との間に、座板段差部50の段差を緩和する段差を形成する段差形成部材62Bと、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火スクリーンシャッター、及び耐火スクリーンシャッターの避難口の段差を緩和する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災時に火災や煙を遮断する耐火スクリーンシャッターが知られている(例えば、特許文献1参照)。この耐火スクリーンシャッターでは、耐火性の幕体が、通常時は天井に設置された巻取シャフトに巻き取られて天井裏に収納され、火災時に巻取シャフトから巻き出されて降下し建物の室内空間を仕切る。また、幕体には避難する者が押し開ける避難扉と、幕体の浮上りを防止するための座板とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002―357065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、座板は、幕体の下端に設けられており、遮炎・遮煙性能を確保するために一定の厚みを有する。また、座板は、避難扉により開閉される避難口の下部にも位置する。このため、車椅子で避難口を通過する場合には、一定の厚みを有する座板を乗り越える必要がある。
【0005】
ここで、座板を薄くすれば車椅子での座板の乗り越えが容易になるが、座板による遮炎・遮煙性能の確保や、座板の設計変更によるコスト増の抑制等を目的として、座板の形状を変更することなく、車椅子による座板の乗り越えを容易にすることが望まれる場合がある。また、幕体を巻き上げた状態では、座板は、天井に設置された収納部に収納されるところ、座板に部品を付加する場合には、付加する部品が、座板を収納部に収納することの妨げにならないように構成する必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、座板の形状を変更することなく、また、幕体を巻き上げる際に座板を天井の収納部に収納することが妨げられないようにしたうえで、車椅子による座板の乗り越えを容易にすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、耐火スクリーンシャッターは、天井裏から降下して屋内空間を仕切り、上昇して天井に設置された収納部に収納されるように設置され、避難扉を有する耐火性の幕体と、前記幕体の下端部に、前記幕体が降下すると着床し、前記幕体が上昇すると天井裏に収納されるように設けられ、前記避難扉の下側の段差部である座板段差部を有する座板と、前記座板段差部に揺動可能に支持され、前記座板段差部が床から離れた状態では、自重で下がり、少なくとも一部が前記座板段差部の底部から下側に突出し、前記座板段差部が着床した状態では、着床した前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部の段差を緩和する段差又はスロープを形成する段差緩和部材と、を備える。
【0008】
前記耐火スクリーンシャッターにおいて、前記段差緩和部材は、前記座板段差部に吊材により支持された部材であり、前記座板段差部が着床した状態では、前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部より低い前記段差を形成する段差形成部材であってもよい。
【0009】
前記耐火スクリーンシャッターにおいて、前記段差緩和部材は、前記座板段差部にヒンジにより支持された板材であり、前記座板段差部が着床した状態では、前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部より勾配が緩い前記スロープを形成するスロープ形成部材であってもよい。
【0010】
また、耐火スクリーンシャッターの避難口の段差を緩和する方法は、天井裏から降下して屋内空間を仕切り、上昇して天井裏に格納されるように設置され、避難扉が設けられた耐火性の幕体と、前記幕体の下端部に、前記幕体が降下すると着床し、前記幕体が上昇すると天井に設置された収納部に収納されるように設けられ、前記避難扉の下側の段差部である座板段差部を有する座板と、を備える耐火スクリーンシャッターの避難口の段差を緩和する方法であって、段差緩和部材を前記座板段差部に揺動可能に支持し、前記座板段差部が床から離れた状態では、前記段差緩和部材を、自重で下がらせ、その少なくとも一部を前記座板段差部の底部から下側に突出させた状態にし、この状態で前記幕体を降下させて前記一部を床に当てることにより、前記段差緩和部材を、前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部の段差を緩和する段差又はスロープを形成する状態に変化させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、座板の形状を変更することなく、また、幕体を巻き上げる際に座板を天井の収納部に収納することが妨げられないようにしたうえで、車椅子による座板の乗り越えを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る耐火スクリーンシャッターを示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る耐火スクリーンシャッターを示す斜視図である。
【図3】一実施形態に係る耐火スクリーンシャッターを示す斜視図である。
【図4】耐火スクリーンシャッターをスクリーンにより囲われた区画側から示す斜視図である。
【図5】段差緩和機構を示す斜視図である。
【図6】スクリーンを巻き上げた状態での座板収納部を示す側断面図である。
【図7】スクリーンが降下する際の段差緩和機構の作用を示す側断面図である。
【図8】スクリーンが降下する際の段差緩和機構の作用を示す側断面図である。
【図9】他の実施形態に係る段差緩和機構を示す斜視図である。
【図10】他の実施形態に係る段差緩和機構を示す斜視図である。
【図11】スクリーンを巻き上げた状態での座板収納部を示す側断面図である。
【図12】スクリーンが降下する際の段差緩和機構の作用を示す側断面図である。
【図13】スクリーンが降下する際の段差緩和機構の作用を示す側断面図である。
【図14】他の実施形態に係る段差緩和機構を示す側断面図である。
【図15】参考例に係る段差緩和機構を示す側断面図である。
【図16】参考例に係る段差緩和機構を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図3は、一実施形態に係る耐火スクリーンシャッター10を示す斜視図である。これらの図に示すように、耐火スクリーンシャッター10は、建物内の居室や通路等の区画Aの出入り口に昇降可能に設置され、通常時には天井2の裏に収納され(図1参照)、火災時に床面3まで降下して区画Aと、その外側とを仕切る(図2、3参照)。
【0014】
耐火スクリーンシャッター10は、スクリーン12と、スクリーン12の下端部に取付けられた座板20とを備える。スクリーン12は、シリカクロス等の耐炎性・耐煙性に優れたシート材により形成された耐火性の幕体である。
【0015】
また、スクリーン12には、スクリーン12により仕切られた区画Aからその外側へ避難する者が、押し開ける避難扉16が設けられている。避難扉16は、スクリーン12の中央下部を座板20に対して非固定とし、当該中央下部の一端から真上に切り込み15を入れることで形成された扉である。図3に示すように、避難扉16により開閉される避難口18は、開閉状態で三角形状になる。
【0016】
図4は、耐火スクリーンシャッター10をスクリーン12により仕切られた区画A側から示す斜視図である。この図に示すように、耐火スクリーンシャッター10は、天井2の裏に設置された巻上げ機構30と、天井2に設置された座板収納部40と、座板20の避難口18の下縁を構成する部分(以下、座板段差部という)50に取付けられた段差緩和機構60とを備えている。
【0017】
巻上げ機構30は、スクリーン12の幕面と平行に配された巻取シャフト32を備えている。巻取シャフト32は、座板収納部40の上方に配され、不図示の軸受により回転可能に支持されている。
【0018】
また、巻取シャフト32は、不図示のモーターにより回転される。これにより、モーターが巻き上げ方向に回転すると、スクリーン12が巻取シャフト32に巻き取られ、モーターが巻き出し方向に回転すると、スクリーン12が巻取シャフト32から巻き出されて降下する。
【0019】
天井2を構成する天井ボード(図6参照)には、スクリーン12が挿通されるスリット(図6参照)が形成されており、このスリットには、座板収納部40が取付けられている。座板収納部40は、枠部材であり、スクリーン12が挿通される開口41が形成されている。また、座板収納部40には、スクリーン12が巻き上げられた際に座板20を収容する収納部42が形成されている。
【0020】
座板段差部50は、座板20の一部を構成している。座板20における座板段差部50以外の部分は、区画A側及びその反対側の側部が階段状に形成されているのに対し、座板段差部50は、区画A側の側部が坂状に形成されており、当該側部に斜面52が形成されている。なお、斜面52の傾斜角度は約45°である。
【0021】
段差緩和機構60は、座板段差部50の区画A側の側部に取付けられている。この段差緩和機構60は区画A側に進退可能に構成されており、スクリーン20が巻き上げられた際には、後退した状態で座板20と共に座板収納部40の幅内に収まり、スクリーン20が降下して座板20が着床する際に、区画A側に前進する。
【0022】
図5は、段差緩和機構60を示す斜視図である。この図に示すように、段差緩和機構60は、左右一対の段差形成部62と、左右一対の段差形成部62を座板段差部50の斜面52に固定する板材64とを備えている。段差形成部62は、シリカクロス等の耐炎性・耐煙性に優れ可撓性を有する矩形状のシート材を二つ折りにした構成の吊材62Aと、吊材62Aの内部に配されたアルミやステンレス等の金属製のパイプ材である段差形成部材62Bとを備えている。
【0023】
吊材62Aは、シート材の一組の対辺を重ね合わせると共に、この一組の対辺の間の中央部を湾曲させ、且つ、重ね合わされた部分(以下、重合部という)を縫合することにより、筒状部62Cが形成されており、この筒状部62Cに段差形成部材62Bが挿入されている。また、板材64は、吊材62Aの重合部を、座板段差部50の斜面52との間に挟んだ状態で、斜面52にボルトで固定される。
【0024】
段差形成部材62Bは、座板段差部50の長手方向と平行になるように配されている。また、段差形成部材62Bの直径は、座板段差部50の厚さ寸法よりも小さく設定され、長さ寸法は車椅子の車輪の幅寸法よりも大きく設定されている。また、左右一対の段差形成部62は、座板段差部50の長手方向に離して配されており、その間隔は、車椅子の左右の車輪の間隔と同程度に設定されている。
【0025】
この図に示すように、段差形成部62は、区画A側に前進した状態では、座板段差部50の斜面52下端の角部の近傍において着床し、床面3と斜面52との間に段差部を形成する。
【0026】
図6は、スクリーン12を巻き上げた状態での座板収納部40を示す側断面図である。この図に示すように、座板収納部40は、天井ボード4のスリット5に嵌め込まれた断面逆U字状の収納部40Bを備える。この収納部40Bの上部には、スクリーン12が挿通される開口40Aが形成されており、スクリーン12が開口40Aを通して巻き上げられると、座板20及び座板段差部50が座板収納部40の収納部40Bに収納される。
【0027】
ここで、座板20及び座板段差部50の幅は、収納部40Bの幅と比して狭く設定されているものの、座板20及び座板段差部50と収納部40Bの側壁との間隔は、1cm未満である。このため、段差緩和機構60は、座板段差部50からその幅方向に大きく突出すると収納部40Bと干渉する。しかし、本実施形態では、段差緩和機構60の段差形成部62は、斜面52下端の角部から垂下した状態となり、これにより、座板段差部50からその幅方向への突出が抑えられ、収納部40Bと干渉することなく、収納部40Bの幅内に収納される。
【0028】
図7及び図8は、スクリーン12が降下する際の段差緩和機構60の作用を示す側断面図である。スクリーン12が降下する際、段差形成部62は、座板段差部50から垂下した状態で降下する。そして、図7に示すように、座板段差部50が着床する寸前に、段差形成部62の筒状部62Cが床に当たり、筒状部62C及びその内部のパイプ材62Bは、座板段差部50に対して相対的に上昇し、区画A側へ変位する。そして、図8に示すように、座板段差部50が着床した状態では、筒状部62C及びパイプ材62Bが、斜面52下端の角部の近傍において、床面と斜面52との間に段差部を形成する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る耐火スクリーンシャッター10では、座板段差部50に、座板段差部50より低い段差を形成する段差形成部材62Bを付加した。また、段差形成部材62Bを、吊材62Aにより座板段差部50に揺動可能に支持し、座板段差部50が床から離れた状態では、自重で下がって座板段差部50の底部から下側に突出するように構成し、スクリーン12を巻き上げる際に、座板段差部50と共に収納部40の幅内に収まるように構成した。
【0030】
従って、座板段差部50の形状を変更することなく、また、スクリーン12を巻き上げる際に座板20を天井2の座板収納部40に収納することが妨げられないようにしたうえで、座板段差部50の段差を緩和して、車椅子による座板段差部50の乗り越えを容易にすることができる。
【0031】
また、段差形成部材62Bを、座板段差部50が床から離れた状態では自重で下がり、座板段差部50が着床する際に床から押されて段差を形成する位置に変位するように構成したことにより、段差形成部材62を変位させる機構を別個設ける必要がない。これにより、部品点数の増加を抑制して製造コストを低減できる。
【0032】
ところで、本実施形態に係る段差緩和機構60では、座板段差部50と床との間にスロープではなく、座板段差部50より低い段差を形成している。ここで、座板段差部50の斜面52よりも勾配が緩やかであるスロープを形成する場合でも、座板段差部50の段差が緩和されるという効果は得られるが、この場合には、斜面52の頂上まで車輪を回し続けなければならない。これに対して、段差形成部材62Bにより座板段差部50より低い段差を形成する場合には、車輪を一段目の段差(段差形成部材62B)に乗り上げさせた後、一旦車輪を回すことを休んでから、車輪を二段目の段差(座板段差部50)に乗り上げさせることができる。また、一段目の段差と二段目の段差とは、座板段差部50と床面との段差と比して半分程度に抑えられている。従って、段差形成部材62Bにより座板段差部50より低い段差を形成することにより、車椅子による座板段差部50の乗り越えを容易にすることができる。
【0033】
図9及び図10は、他の実施形態に係る段差緩和機構160を示す斜視図である。これらの図に示すように、段差緩和機構160は、左右一対のスロープ形成部162を備えている。スロープ形成部162は、座板段差部50の上面54に固定された平板部162Bと、ヒンジ部162Cを介して平板部162Bと連結された平板であるスロープ形成部材162Aとを備えている。
【0034】
スロープ形成部材162Aは、ヒンジ部462Cを支点として回動可能に、斜面52の頂部に取付けられており、図9に示すように、展開された状態で、床面と座板段差部50の上面54との間にスロープを形成したり、図10に示すように、座板段差部50の上面54から自重で下がった姿勢を取ったりする。
【0035】
図11は、シャッター幕12を巻き上げた状態での座板収納部40を示す側断面図である。この図に示すように、シャッター幕12が開口40Aを通して巻き上げられると、座板20及び座板段差部50が座板収納部40の収納部40Bに収納される。ここで、段差緩和機構160のスロープ形成部材162Aは、斜面52に被さり、下端を斜面52下端の角部から斜め下方に僅かに突出させた状態となり、これにより、座板段差部50からその幅方向への突出が抑えられ、収納部40Bと干渉することなく、収納部40Bの幅内に収納される。
【0036】
図12及び図13は、スクリーン12が降下する際の段差緩和機構160の作用を示す側断面図である。図12に示すように、スクリーン12が降下する際、段差形成部162のスロープ形成部材162Aは、座板段差部50の上面54から自重で下がった状態で降下する。この状態で、スロープ形成部材162Aは、座板段差部50の斜め下方へ突出する。
【0037】
そして、座板段差部50が着床する寸前に、スロープ形成部材162Aが着床する。この状態からさらに座板段差部50が降下すると、スロープ形成部材162Aは、ヒンジ部162Cを支点として、斜面52から離間するように回動する。
【0038】
そして、図13に示すように、座板段差部50が着床すると、スロープ形成部材162Aが、斜面52下端の角部の近傍において、床面3と座板段差部50の上面54との間にスロープを形成する。ここで、スロープ形成部材162Aの勾配は、座板段差部50の斜面52の勾配よりも緩く設定されている。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る段差緩和機構160では、座板段差部50に、座板段差部50の斜面52より勾配が緩やかなスロープを形成するスロープ形成部材162Aを付加した。また、スロープ形成部材162Aを、ヒンジ部162Cにより座板段差部50に揺動可能に支持し、座板段差部50が床から離れた状態では、自重で下がって座板段差部50の底角部から下側に突出するように構成し、スクリーン12を巻き上げる際に、座板段差部50と共に収納部40の幅内に収まるように構成した。
【0040】
従って、座板段差部50の形状を変更することなく、また、スクリーン12を巻き上げる際に座板20を天井2の座板収納部40に収納することが妨げられないようにしたうえで、座板段差部50の段差を緩和して、車椅子による座板段差部50の乗り越えを容易にすることができる。
【0041】
図14は、他の実施形態に係る段差緩和機構460を示す側断面図である。この図に示すように、段差緩和機構460は、左右一対のスロープ形成部462を備えている。スロープ形成部462は、座板段差部50の斜面52に固定された平板部462Bと、ヒンジ部462Cを介して平板部462Bと連結された平板であるスロープ形成部材462Aとを備えている。
【0042】
スロープ形成部材462Aは、ヒンジ部462Cを支点として回動可能に、斜面52の中間部に取付けられており、床面3と座板段差部50の斜面52との間にスロープを形成したり、座板段差部50の斜面52から自重で下がった姿勢を取ったりする。ここで、スロープ形成部材462Aの勾配は、座板段差部50の斜面52の勾配よりも緩く設定されている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る段差緩和機構460によれば、上述の段差緩和機構160と同様の効果が得られる。
【0044】
図15は、参考例に係る段差緩和機構260を示す側断面図である。この図に示すように、段差緩和機構260は、座板段差部50の斜面に固定された左右一対の段差形成部材262を備えている。各段差形成部材262は、長方形状の板材をその幅方向中央部を境に鈍角(本実施形態では約140°)に折り曲げることにより形成されている。この段差形成部材262の一方の平板部262Aが斜面52に固定され、他方の平板部262Bが斜面52の中間部から区画A側へ水平に突出している。即ち、段差形成部材262は、床面と斜面52との間に段差を形成している。
【0045】
ここで、段差形成部材262の平板部262Bの座板段差部50からの区画A側への突出量は、スクリーン12が巻き上げられた際に、座板収納部40の収納部40Bと干渉しないように設定されている。
【0046】
以上説明したように、本参考例に係る段差緩和機構260では、座板段差部50に、座板段差部50より低い段差を形成する段差形成部材262を付加した。また、段差形成部材262を、スクリーン12を巻き上げる際に、座板段差部50と共に収納部40に収納されるように構成した。従って、座板段差部50の形状を変更することなく、また、スクリーン12を巻き上げる際に座板20を天井2の座板収納部40に収納することが妨げられないようにしたうえで、座板段差部50の段差を緩和して、車椅子による座板段差部50の乗り越えを容易にすることができる。
【0047】
図16は、参考例に係る段差緩和機構360を示す側断面図である。この図に示すように、段差緩和機構360は、座板段差部50の斜面52に取付けられた左右一対の段差形成部材362を備えている。各段差形成部材362は、長方形状の板材をその幅方向中央部を境に鈍角(本実施形態では約140°)に折り曲げることにより形成されている。この段差形成部材362の折り曲げ部にはヒンジ部362Cが設けられており、このヒンジ部362Cが斜面52の中間部に固定されている。ヒンジ部362Cは、座板段差部50の長手方向と平行に配されており、これにより、段差形成部材362は、座板段差部50の長手方向と平行なヒンジ軸の周りに回動可能に、斜面52に取付けられている。
【0048】
図中実線で示すように、段差形成部材362の一方の平板部362Bが斜面52に当接した状態では、他方の平板部362Aが、斜面52の中間部から区画A側へ水平に突出する。一方、図中破線で示すように、段差形成部材362の一方の平板部362Aが斜面52に当接した状態では、他方の平板部362Bが、斜面52の中間部から上方へ突出する。
【0049】
ここで、ヒンジ部362には不図示の捩じりコイルバネが配されており、段差形成部材362を平板部362Aが斜面52に接近する回動方向(図中時計回り方向)へ付勢している。
【0050】
以上説明したように、本参考例に係る段差緩和機構360では、ヒンジ部362の捩じりコイルバネの付勢力が、車椅子による座板段差部50の乗り越えをより一層容易にするという効果を得ることができる。即ち、車輪を一段目の段差(平板部362A)に乗り上げさせる際に、平板部362Aが、車輪の重量で捩じりコイルバネの付勢力に抗して下がった後、捩じりコイルバネの付勢力で起き上がろうとすることから、車輪が平板部362Aから上側に押され、車輪を座板段差部50に乗り上げさせるのに要する力が軽減される。
【0051】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、座板段差部50と比して短い左右一対の段差形成部材62B、スロープ形成部材162Aを、車椅子の左右の車輪の間隔に合わせて配置したが、座板段差部50と同程度の長さであり車椅子の左右の車輪の間隔よりも長い一個の段差形成部材、スロープ形成部材を用いてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、段差形成部材62Bを座板段差部50に揺動可能に支持する吊材を、シート材で形成したが、紐材で形成してもよい。さらに、上述の実施形態では、座板段差部50より低い段差部を管材で形成したが、板材や角材で形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
2 天井、3 床、4 天井ボード、5 スリット、6 拘束ピン受部、10 耐火スクリーンシャッター、12 スクリーン(幕体)、16 避難扉、18 避難口、20 座板、30 巻上げ機構、32 巻取シャフト、34 コーナーブラケット、40 座板収納部(収納部)、41 開口、42 収納部、50 座板段差部、60 段差緩和機構、62 段差形成部、62A 吊材、62B 段差形成部材(段差緩和部材)、62C 筒状部、64 板材、70 ファスナー、72 スライダー、160 段差緩和機構、162 スロープ形成部、162A スロープ形成部材(段差緩和部材)、162B 平板部、162C ヒンジ部、260 段差緩和機構、262 段差形成部材、262A、262B 平板部、360 段差緩和機構、362 段差形成部材、362A、362B 平板部、362C ヒンジ部、460 段差緩和機構、462 スロープ形成部、462A スロープ形成部材、462B 平板部、462C ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井裏から降下して屋内空間を仕切り、上昇して天井裏に収納されるように設置され、避難扉を有する耐火性の幕体と、
前記幕体の下端部に、前記幕体が降下すると着床し、前記幕体が上昇すると天井に設置された収納部に収納されるように設けられ、前記避難扉の下側の段差部である座板段差部を有する座板と、
前記座板段差部に揺動可能に支持され、前記座板段差部が床から離れた状態では、自重で下がり、少なくとも一部が前記座板段差部の底部から下側に突出し、前記座板段差部が着床した状態では、着床した前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部の段差を緩和する段差又はスロープを形成する段差緩和部材と、
を備える耐火スクリーンシャッター。
【請求項2】
前記段差緩和部材は、前記座板段差部に吊材により支持された部材であり、前記座板段差部が着床した状態では、前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部より低い前記段差を形成する段差形成部材である請求項1に記載の耐火スクリーンシャッター。
【請求項3】
前記段差緩和部材は、前記座板段差部にヒンジにより支持された板材であり、前記座板段差部が着床した状態では、前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部より勾配が緩い前記スロープを形成するスロープ形成部材である請求項1に記載の耐火スクリーンシャッター。
【請求項4】
天井裏から降下して屋内空間を仕切り、上昇して天井裏に格納されるように設置され、避難扉が設けられた耐火性の幕体と、
前記幕体の下端部に、前記幕体が降下すると着床し、前記幕体が上昇すると天井に設置された収納部に収納されるように設けられ、前記避難扉の下側の段差部である座板段差部を有する座板と、
を備える耐火スクリーンシャッターの避難口の段差を緩和する方法であって、
段差緩和部材を前記座板段差部に揺動可能に支持し、
前記座板段差部が床から離れた状態では、前記段差緩和部材を、自重で下がらせ、その少なくとも一部を前記座板段差部の底部から下側に突出させた状態にし、この状態で前記幕体を降下させて前記一部を床に当てることにより、前記段差緩和部材を、前記座板段差部と床との間に、前記座板段差部の段差を緩和する段差又はスロープを形成する状態に変化させる
耐火スクリーンシャッターの避難口の段差を緩和する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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