説明

耐火処理具及び耐火処理構造

【課題】貫通孔が防火区画体の際に形成されていても、防火区画体際の構造物との間に隙間を形成することなく耐火処理構造を形成することができる耐火処理具及び該耐火処理具を用いた耐火処理構造を提供する。
【解決手段】耐火処理具11の基板12には電線管Dを挿通させる挿通孔16が形成されるとともに、基板12の壁W側となる裏面の挿通孔16を取り囲む位置には第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が配設されている。基板12は、基板12の上端縁に予め形成される挟持部13fを備える。また、耐火処理具11は、挟持部13fを越える位置まで第1熱膨張性耐火シート15が延びてなる延出部15aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線・配管材を防火区画体の表側へ引き出すために防火区画体に形成された貫通孔に耐火処理を施すために使用される耐火処理具及び該耐火処理具を用いた耐火処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物における防火区画体として、例えば床に形成された貫通孔に配線・配管材を貫通させた状態で配設する場合、この床における貫通孔には耐火処理構造が設けられる(例えば、特許文献1参照)。図10に示すように、特許文献1の耐火処理構造(防火区画構造)において、床100に穿設された貫通孔100a内には貫通部形成体101が配設されている。この貫通部形成体101は、略半円筒状をなす分割体102を2つ組付けて形成されている。また、貫通部形成体101の外周面には鍔部106が形成されている。
【0003】
そして、鍔部106を床100の上面に係止させて、貫通部形成体101が床100に支持されている。貫通部形成体101内には複数のケーブル104が挿通配線されている。また、貫通孔100a内において、ケーブル104と貫通部形成体101の内周面との間には耐火材105が充填されている。
【0004】
この耐火処理構造において、床100の下側で火災等が発生したとき、貫通部形成体101の内外両側が下側から火災熱によって加熱される。このとき、貫通孔100aの床100上面における開口は鍔部106によって閉塞されているため、火災熱や煙が貫通孔100aから床100上へ噴出することが防止される。さらに、ケーブル104の延焼熱と、火災熱とにより、貫通部形成体101の上部において耐火材105が加熱されて熱発泡膨張する。すると、貫通部形成体101の上端側の開口が熱発泡膨張した耐火材105によって完全に閉塞されることとなり、ケーブル104の延焼が防止されるとともに、火災熱及び煙が貫通部形成体101内から床100上に及ぶことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−226725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の耐火処理構造において、火災等が発生していないときは、貫通部形成体101内が空気の流通路とならないように、貫通部形成体101の開口が耐火材105で閉鎖されるとともに、貫通孔100a内周面と貫通部形成体101外周面との間の隙間は鍔部106によって閉鎖されている。ここで、貫通孔100aが、床100における壁際(防火区画体の際)に形成されていると、鍔部106が壁に当たってしまい、貫通部形成体101を貫通孔100a内に挿通した状態で床100に支持させることができない場合がある。このため、貫通孔100aが壁際に形成されていても貫通部形成体101を配設できるように、鍔部106が形成されていない貫通部形成体101を用意する必要が生じる。すなわち、特許文献1では、壁際や天井際のように防火区画体の際に形成された貫通孔100aに耐火処理構造を設けるために、専用の貫通部形成体101を必要とする。
【0007】
また、壁際に形成された貫通孔100aに耐火処理構造を設けるために、鍔部106の一部縁を直線状に形成することも考えられる。しかし、この場合、鍔部106の縁を壁や床に沿わせたとき、壁が凹凸状をなしていると、鍔部106の縁と壁との間に隙間が形成されてしまい、その隙間が空気の流通路となってしまう。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、貫通孔が防火区画体の際に形成されていても、防火区画体際の構造物との間に隙間を形成することなく耐火処理構造を形成することができる耐火処理具及び該耐火処理具を用いた耐火処理構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、配線・配管材を防火区画体の表側へ引き出すために前記防火区画体に形成された貫通孔に耐火処理を施すために用いられる耐火処理具であって、前記貫通孔の全体を閉鎖する大きさに形成される不燃材製の基板を備え、該基板に配線・配管材を挿通させる挿通孔が形成されるとともに、前記基板の前記防火区画体側となる一面の前記挿通孔を取り囲む位置に熱膨張性耐火材を備え、前記基板に、該基板の一端縁に予め形成、基板の一部を除去することにより形成、又は基板を折り曲げることにより形成される挟持部を備えるとともに、前記挟持部を越える位置まで前記熱膨張性耐火材が延びてなる延出部を備え、前記挟持部と、前記防火区画体に直交する構築物とで前記延出部を挟持可能にしたことを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の耐火処理具において、前記熱膨張性耐火材は、シート状に成形されるとともに粘着性を有し、前記基板の一面に貼着されるとともに、前記シート状の熱膨張性耐火材の一部により前記延出部が形成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の耐火処理具において、前記熱膨張性耐火材は、前記基板の一面の全面に亘って設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、防火区画体に対し構築物が直交するように設けられるとともに、前記防火区画体において前記構築物に近い防火区画体の際に貫通孔が形成され、該貫通孔から前記防火区画体の表側へ配線・配管材を引き出すために前記貫通孔に設けられる耐火処理構造であって、前記防火区画体には耐火処理具が固定されるとともに、該耐火処理具が備える不燃材製の基板により前記貫通孔全体が閉鎖され、前記基板に形成された挿通孔からは前記配線・配管材が前記防火区画体の表側へ引き出され、前記基板の前記防火区画体側となる一面に前記貫通孔の全体を閉鎖するように熱膨張性耐火材が設けられ、前記基板の一端縁に予め形成、基板の一部を除去することにより形成、又は基板を折り曲げることにより形成される挟持部を前記構築物に沿わせるとともに、前記挟持部を越える位置まで前記熱膨張性耐火材が延びてなる延出部を前記防火区画体から前記構築物に跨るように配設し、該延出部が前記挟持部により前記構築物との間に挟まれていることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の耐火処理構造において、前記挿通孔と前記配線・配管材との間の隙間を塞ぐべく、前記基板の他面側には耐火性を有する隙間閉塞部材が前記配線・配管材を取り囲むように設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貫通孔が防火区画体の際に形成されていても、防火区画体際の構造物との間に隙間を形成することなく耐火処理構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の耐火処理構造を示す側断面図。
【図2】実施形態の耐火処理構造を示す斜視図。
【図3】(a)は耐火処理具を示す斜視図、(b)は耐火処理具を示す正面図、(c)は耐火処理具を示す側面図。
【図4】貫通孔から電線管が引き出された状態を示す正面図。
【図5】第2基板を壁に固定した状態を示す正面図。
【図6】第1基板を壁に固定した状態を示す正面図。
【図7】電線管と熱膨張性耐火シートを示す図。
【図8】耐火処理構造を示す断面図。
【図9】耐火処理構造の別例を示す断面図。
【図10】背景技術を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8にしたがって説明する。
図1に示すように、防火区画体としての壁Wは、図示しない複数の形鋼材を挟むように一対の壁材Waを立設することによって形成された中空壁である。形鋼材の側面には配線ボックスBが固設されるとともに、この配線ボックスBは一対の壁材Waの間に配設されている。配線ボックスBの上面には接続具Sを介して3本の電線管Dの一端が接続されるとともに、各電線管D内にはケーブル(図示せず)が挿通されている。なお、3本の電線管Dは、配線ボックスB上面の中央に接続された電線管Dが残りの2本の電線管Dより太くなっている。
【0016】
また、一方(図1では左方)の壁材Waには横長四角形状の貫通孔Wbが壁材Waを厚み方向に貫通するように形成されている。そして、図4に示すように、3本の電線管Dは、貫通孔Wbの長辺方向(横方向)へ並んだ状態で貫通孔Wbから壁Wの表側へ引き出されている。よって、本実施形態では、電線管Dが配線・配管材となっている。また、壁Wの上方には、構造物としての天井Tが壁Wに対し直交するように延びている。そして、貫通孔Wbは、壁Wの際に形成されて天井Tの直近に形成されている。すなわち、貫通孔Wbは、その上端縁が天井Tの下面から僅かに下方へ離間する位置に形成されている。
【0017】
図2に示すように、貫通孔Wbに耐火処理構造を形成するため、壁W(壁材Wa)の表面には、貫通孔Wbを閉鎖するように耐火処理具11が固定される。図3(a)及び図3(b)に示すように、耐火処理具11は、矩形状の金属板(不燃材)よりなる基板12を備えている。基板12は貫通孔Wb全体を閉鎖できる大きさに形成されている。また、基板12は、細長矩形状をなす第1基板形成部材13と、細長矩形状をなす第2基板形成部材14とが、一枚の矩形板状をなすように一体化されて形成されている。第1基板形成部材13と第2基板形成部材14とは、長辺方向への長さが同じに形成されるとともに、短辺方向への長さが、第1基板形成部材13より第2基板形成部材14の方が長くなるように形成されている。そして、第1基板形成部材13と第2基板形成部材14とは、一長辺同士が合致するように一体化されている。また、基板12において、第1基板形成部材13の一長辺の端縁(第1基板形成部材13の上端縁)によって、基板12に直線状に延びる挟持部13fが形成されている。
【0018】
図3(a)に示すように、基板12には、電線管Dの挿通孔16が3つ形成されている。3つの挿通孔16のうち、基板12の長辺方向の中央に位置する挿通孔16は、残りの2つの挿通孔16より大径に形成されている。また、各挿通孔16は、第1基板形成部材13と第2基板形成部材14に跨るように形成されている。挿通孔16は、第1基板形成部材13と第2基板形成部材14との分割ラインが、各挿通孔16の中心点を通過する位置に形成されている。また、図3(b)に示すように、各挿通孔16は、閉鎖部材としての閉鎖板16aによって閉鎖されている。この閉鎖板16aは、基板12を形成する金属板を、挿通孔16の周方向一部が金属板に残るように打ち抜いて挿通孔16を形成した後、打ち抜いた金属板を挿通孔16に嵌め込む(押し戻す)ことで形成されている。そして、閉鎖板16aは、一部が基板12に連結されており、挿通孔16に電線管Dが挿通される場合には基板12から除去されるようになっている。
【0019】
第1基板形成部材13及び第2基板形成部材14の長辺方向の両端側には、耐火処理具11を壁材Waに固定するためのビス17が挿通可能な固定孔13a,14aが形成されている。また、第1基板形成部材13及び第2基板形成部材14において、3つの挿通孔16を基板12の長辺方向で挟む位置には、第1位置合わせ線13b,14bが第1基板形成部材13及び第2基板形成部材14の短辺方向へ直線状に延びるように形成されている。そして、第1基板形成部材13及び第2基板形成部材14の長辺方向に沿った第1位置合わせ線13b,14b間の長さは、貫通孔Wbの長辺方向への長さと同じになっている。また、第2基板形成部材14には、第2位置合わせ線14cが、挿通孔16に交差しないように第2基板形成部材14の長辺方向へ直線状に延びるように形成されている。そして、基板12の短辺方向に沿った挟持部13f(上端縁)から第2位置合わせ線14cまでの長さは、貫通孔Wbの短辺方向への長さと同じになっている。本実施形態では、基板12の挟持部13fと、第1位置合わせ線13b,14bと、第2位置合わせ線14cによって囲まれる四角形の大きさが、貫通孔Wbの大きさと同じになっている。
【0020】
第1基板形成部材13の一対の長辺のうち、他方(下方)の長辺側には第1孔形成部13dが半円状に切り欠き形成されている。また、第2基板形成部材14の一対の長辺のうち、一方(上方)の長辺側には第2孔形成部14dが半円状に切り欠き形成されている。そして、挿通孔16は、第1孔形成部13dと第2孔形成部14dとが組み合わされて円孔状に形成されている。
【0021】
図3(a)に示すように、第1基板形成部材13の一面(裏面)には、熱膨張性耐火材としての第1熱膨張性耐火シート15が貼着されるとともに、第2基板形成部材14の一面(裏面)には熱膨張性耐火材としての第2熱膨張性耐火シート19が貼着されている。第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は、粘着性を有し、その粘着力により第1及び第2基板形成部材13,14の一面(裏面)それぞれに貼着されている。そして、基板12における壁W側の面となる裏面に第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が貼着されている。また、第1熱膨張性耐火シート15と第2熱膨張性耐火シート19とが1枚の剥離紙18によって一体化されることにより第1基板形成部材13と第2基板形成部材14が一体化されて基板12が形成されている。第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は、熱膨張性耐火材を矩形シート状に成形してなるものである。第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は、300℃以上の熱を受けると体積が加熱前の2倍以上に膨張する性質を有する。そして、第1熱膨張性耐火シート15及び第2熱膨張性耐火シート19により、基板12の裏面全面が覆れている。すなわち、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19の一部は、閉鎖板16aの裏面にも貼着されるとともに、挿通孔16同士の間に位置する基板12の裏面にも貼着されている。また、図3(c)に示すように、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19の厚みは、基板12(第1基板形成部材13及び第2基板形成部材14)の厚みより厚くなっている。
【0022】
第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19の裏面全面には剥離紙18が貼着されるとともに、基板12の上端縁からはみ出した第1熱膨張性耐火シート15の表面にも剥離紙18が貼着されている。そして、耐火処理具11を使用する際に、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19から剥離紙18が剥離されるようになっている。
【0023】
また、第1熱膨張性耐火シート15において、第1基板形成部材13の挟持部13fよりも上方へ越えた部位により延出部15aが形成されている。延出部15aは、細長矩形状に形成されている。また、延出部15aの短辺方向に沿った長さ、すなわち、挟持部13fから延出部15aの上端縁までの長さは、貫通孔Wbの上端縁から天井Tの下面までの長さより長くなっている。
【0024】
次に、耐火処理具11を用いて耐火処理構造を形成する方法について説明する。
まず、図4に示すように、貫通孔Wbから3本の電線管Dが引き出された状態において、貫通孔Wbの上下両長辺の延長線に沿って直線状に延びる第1罫書線21aと、貫通孔Wbの両短辺の延長線に沿って直線状に延びる第2罫書線21bを壁材Waに記入する。次に、剥離紙18を第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19から剥離し、耐火処理具11を第1基板形成部材13及び第1熱膨張性耐火シート15と、第2基板形成部材14及び第2熱膨張性耐火シート19とに分割する。また、閉鎖板16aを基板12から除去するとともに、その閉鎖板16a裏面に貼着された第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19の一部を基板12から除去する。
【0025】
続いて、図5に示すように、上下の第1罫書線21aのうち他方(下方)の第1罫書線21a上に、第2基板形成部材14の第2位置合わせ線14cを合致させる。また、左右の第2罫書線21b上に、第2基板形成部材14の両第1位置合わせ線14bを合致させる。そして、その合致させた位置で固定孔14aから壁材Waにビス17を強制螺入することにより、第2基板形成部材14が壁材Waに固定される。第2基板形成部材14が壁材Waに固定された状態では、第2孔形成部14d上に電線管Dが支持される。
【0026】
次に、図6に示すように、電線管Dを、第2基板形成部材14の第2孔形成部14dと、第1基板形成部材13の第1孔形成部13dとで挟み込むように第1基板形成部材13を配設する。このとき、挟持部13fから延出部15aの上端縁までの長さは、貫通孔Wbの上端縁から天井Tの下面までの長さより長くなっている。そして、延出部15aの上端縁が壁Wの表面から離間するように、延出部15aを基端側(挟持部13f側)から折り曲げる。さらに、上下の第1罫書線21aのうち一方(上方)の第1罫書線21a上に、第1基板形成部材13の上端縁を合致させるとともに、左右の第2罫書線21b上に、第1基板形成部材13の両第1位置合わせ線13bを合致させる。そして、その合致させた位置で固定孔13aから壁材Waにビス17を強制螺入することにより、第1基板形成部材13が壁材Waに固定される。
【0027】
図8に示すように、第1基板形成部材13が壁材Waに固定された状態では、延出部15aが、挟持部13fと天井Tの下面との間に挟持されるとともに、挟持部13fにより延出部15aが天井Tに押し付けられ、延出部15aは厚み方向へ圧縮され、延出部15aが天井Tの下面に圧着される。また、延出部15aの裏面が、壁Wの表面と天井Tの下面の2面に跨って貼着される。
【0028】
そして、基板12が貫通孔Wbに合致する位置に配設されるとともに、基板12により貫通孔Wbが閉鎖され、耐火処理具11が壁材Waに固定される。また、ビス17の螺入により基板12を壁材Waに押し付けることにより第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が厚み方向へ圧縮されるとともに、壁材Waの表面に圧着する。よって、粘着性を有する第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19により、耐火処理具11が壁材Waに貼着されるとともに、ビス17によって耐火処理具11が壁材Waに強固に固定される。また、図7に示すように、各ビス17は、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19を貫通して壁材Waに固定されるため、各ビス17の軸部は熱膨張性耐火材によって取り囲まれている。
【0029】
耐火処理具11が壁材Waに固定されることにより、貫通孔Wbが基板12、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19によって閉鎖され、貫通孔Wbに耐火処理構造が形成される。この耐火処理構造において、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は貫通孔Wb全体を取り囲むように貫通孔Wbの開口縁を越える位置まで延びている。また、耐火処理構造において、3つの挿通孔16によって電線管Dが貫通孔Wbの長辺方向へ並設されている。また、挿通孔16によって、貫通孔Wbの長辺方向に隣り合う電線管Dの間に一定の隙間が維持され、電線管Dが互いに接近したり離間したりしないようなっている。電線管D同士の隙間を形成する基板12(第1及び第2基板形成部材13,14)の裏面には第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19の一部により熱膨張性耐火材が配設されている。
【0030】
図8に示すように、壁Wに耐火処理構造が形成された建築物において、貫通孔Wbより上方の壁Wの表面に貼着された延出部15aが、折り曲げられることにより天井Tの下面にも貼着されるとともに圧接している。このため、延出部15aにより、天井Tの下面と挟持部13fとの隙間が空気の流通路になることが防止されている。
【0031】
そして、貫通孔Wbが形成された壁材Wa側で火災等が発生し、電線管Dが燃えたとする。すると、火災等により発生した熱により、耐火処理具11が表面側から加熱されるとともに、基板12、さらには第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が加熱される。また、電線管Dが燃え進むに連れて第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が挿通孔16の内面側から加熱される。すると、図8の2点鎖線に示すように、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が貫通孔Wb内に向けて膨張するとともに、電線管Dの中心軸に向けて膨張する。また、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が基板12の四側周縁から壁Wの表側及び基板12の外方へ向けて膨張する。すると、膨張した第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19により電線管Dが押し潰されるとともに、貫通孔Wbが閉鎖される。その結果、貫通孔Wbが熱、煙の経路となり、壁Wの他方の壁材Wa側へ熱、煙が伝わる不都合がなくなる。
【0032】
また、延出部15aは、壁W表側へ膨張して天井Tの下面と、基板12の挟持部13fとの間の隙間を閉鎖する。このため、天井Tの下面と、挟持部13fとの間が熱、煙等の経路になることがなくなる。
【0033】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)耐火処理具11の基板12は、直線状に延びる挟持部13fを備えるとともに、この挟持部13fを越える位置まで延びる延出部15aを備えている。この延出部15aは第1熱膨張性耐火シート15の一部によって形成されている。そして、貫通孔Wbが壁Wの際、すなわち天井Tの直近に形成されている場合でも、挟持部13fを貫通孔Wbの上端縁に合致させた状態では、延出部15aを挟持部13fと天井Tとの間で挟持し、延出部15aを天井Tの下面に圧着させることができる。したがって、天井Tの下面が凹凸状をなしていても、その凹凸を延出部15aが吸収して、挟持部13fと天井T下面との間に隙間が形成されることを防止することができるとともに、空気の流通路が形成されることを防止することができる。
【0034】
(2)耐火処理具11において、基板12は貫通孔Wbを閉鎖する大きさに形成されるとともに、その基板12の上端縁に挟持部13fが設けられている。このため、貫通孔Wbが壁Wの際に形成され、貫通孔Wbの上端縁が天井Tの直近に位置していても挟持部13fを天井Tの下面に沿わせることで耐火処理具11を壁Wに固定することが可能となる。したがって、背景技術のように貫通部形成体に円板状の鍔部が形成されている場合のように、鍔部が耐火処理具11固定の障害となることがなくなる。さらに、挟持部13fを天井Tの下面に沿わせながら貫通孔Wbの上端縁に沿わせることで耐火処理具11の壁Wへの固定と同時に貫通孔Wbを基板12で閉鎖することができる。
【0035】
(3)貫通孔Wbが天井Tの直近ではない位置に形成されている場合は、延出部15aを折り曲げることなく延出部15aの裏面を壁Wの表面に貼着することで、貫通孔Wbを基板12、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19で閉鎖することができる。したがって、耐火処理具11は、貫通孔Wbが壁Wの際に形成されている場合であっても、壁Wの際に形成されていない場合であっても、貫通孔Wbを閉鎖することができ、両方の場合に対応することができる。よって、壁Wの際の貫通孔Wbを閉鎖するための耐火処理具と、それ以外の耐火処理具とを別々に設ける必要がなくなる。
【0036】
(4)耐火処理具11において、基板12に挟持部13fを形成するとともに、第1熱膨張性耐火シート15の一部を挟持部13fを越える位置まで延ばして延出部15aを形成した。そして、基板12で貫通孔Wbを閉鎖すると、延出部15aは貫通孔Wbの上方に配設される。よって、火災等の発生時には、貫通孔Wbを閉鎖した基板12に加え、貫通孔Wbの周囲一部に配設された延出部15aによって貫通孔Wbを確実に閉鎖することができる。
【0037】
(5)基板12には複数の挿通孔16が互いに離間して形成されるとともに、基板12の裏面において各挿通孔16を取り囲む位置には第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19によって熱膨張性耐火材が一体に配設されている。また、基板12は、貫通孔Wbを閉鎖可能な大きさに形成されている。そして、耐火処理具11を壁Wに固定するだけで基板12により貫通孔Wbを閉鎖することができるとともに、各電線管Dを熱膨張性耐火材で取り囲むことができる。したがって、例えば、複数本の電線管が束になって貫通孔内で密集している場合のように、熱膨張性耐火材で束全体を外側から圧縮させて電線管の周りに熱膨張性耐火材を設ける必要がない。その結果として、各電線管Dの周りに個別に熱膨張性耐火材を設ければよく、多量の熱膨張性耐火材を必要としなくて済む。また、電線管D同士の間に熱膨張性耐火材を充填する必要もないため、耐火処理構造を簡単に形成することができる。
【0038】
(6)基板12によって貫通孔Wbが閉鎖されるため、貫通孔Wbが空気の流通路とならないようにするため、貫通孔Wbに熱膨張性耐火材を充填する必要がない。さらには、基板12の裏面に第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が一体化されているため、隣り合う電線管D同士の間から熱膨張性耐火材が落下しないように貫通孔Wb内や電線管D同士の間に多量の熱膨張性耐火材を詰め込む必要がない。よって、耐火処理具11によれば、多量の熱膨張性耐火材を要することなく貫通孔Wbを簡単に閉鎖することができ、しかも隣り合う電線管Dの間からの熱膨張性耐火材の落下を無くすことができる。
【0039】
(7)耐火処理具11において、基板12の裏面全面に亘って第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が貼着されている。基板12は貫通孔Wbを閉鎖可能な大きさに形成されているため、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19により貫通孔Wbが閉鎖される。さらには、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は、貫通孔Wbを取り囲むように貫通孔Wbの開口縁を越える位置まで延びている。このため、火災等の発生時は、膨張した第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19によって電線管Dの周りだけでなく貫通孔Wb全体を確実に閉鎖することができる。
【0040】
(8)第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は粘着性を有するシート状に形成されている。このため、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19を基板12の裏面に貼着するだけで基板12と第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19を一体に設けることができるとともに、挟持部13fを越える位置まで延びる延出部15aを形成することができる。
【0041】
(9)耐火処理具11において、複数の挿通孔16は互いに離間して形成されるとともに、基板12の裏面において挿通孔16同士の間には第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19により熱膨張性耐火材が配設されている。このため、挿通孔16から電線管Dを引き出すだけで、隣り合う電線管D同士の間に熱膨張性耐火材を配設することができる。したがって、電線管D同士が密接してしまい、電線管D同士の間に熱膨張性耐火材を充填できなくなるという不都合が無くなる。
【0042】
(10)耐火処理具11は、固定孔13a,14aからビス17を壁Wに強制螺入することで壁Wに固定される。このため、火災等の発生時に、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が膨張しても、基板12が壁Wの表面から離れる方向へ移動して貫通孔Wbが開放されてしまうことを防止することができる。
【0043】
(11)3つの挿通孔16のうち、中央の挿通孔16は残りの2つの挿通孔16より小さく形成されている。よって、1つの耐火処理具11により、2種類の管径の電線管Dが引き出された貫通孔Wbに耐火処理構造を設けることができる。
【0044】
(12)閉鎖板16aは、挿通孔16を形成するために基板12を打ち抜いたときに形成される金属板によって形成されるとともに、この閉鎖板16aは、挿通孔16に嵌め込まれて挿通孔16を閉鎖している。このため、閉鎖板16aの周縁と挿通孔16との間にはほとんど隙間ができず、耐火処理具11が壁Wに固定された状態では、挿通孔16が空気の流通路になることを防止することができる。
【0045】
(13)基板12には、第1位置合わせ線13b,14bと第2位置合わせ線14cが設けられている。そして、第1位置合わせ線13b,14bを貫通孔Wbの短辺の延長線上に合致させるとともに、基板12の挟持部13fを貫通孔Wbの上端縁上に、第2位置合わせ線14cを貫通孔Wbの下端縁の延長線上に合致させることで、基板12の四側周縁と貫通孔Wbの四側周縁とを合致させることができる。したがって、耐火処理具11が壁Wの表側に配設されることで耐火処理具11によって貫通孔Wbが覆われて視認できなくなっても、基板12を貫通孔Wbを閉鎖する位置に配設することができる。
【0046】
(14)第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は、貫通孔Wbを取り囲むように貫通孔Wbの開口縁を越える位置まで延びている。このため、火災等の発生時は、膨張した第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19によって貫通孔Wb周りが保護され、壁材Waの崩落を防止することができる。
【0047】
(15)ビス17は第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19によって取り囲まれている。このため、火災等の発生時、膨張した第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19によって壁材Waの崩落が防止され、さらに、ビス17の壁材Waからの脱落も防止することができる。
【0048】
(16)ビス17により基板12が壁材Waに固定されることにより、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は、壁材Waの表面に押圧されている。このため、壁材Waの表面に凹凸が存在しても、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が凹凸を吸収して、壁材Wa表面と、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19の間に隙間ができることを防止することができる。
【0049】
(17)耐火処理具11は、第1基板形成部材13及び第1熱膨張性耐火シート15と、第2基板形成部材14及び第2熱膨張性耐火シート19とを、剥離紙18で一体化して形成されている。そして、耐火処理構造を形成する場合、第1基板形成部材13と第2基板形成部材14で電線管Dを挟み込むように配置することができ、挿通孔16への電線管Dの配置を容易に行うことができる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図9に示すように、挿通孔16の孔径より電線管Dの外径が小さかったり、電線管Dが波付管であったりして、挿通孔16と電線管Dとの間に隙間Kが形成される場合には、その隙間Kを塞ぐべく、基板12の表面(他面)側に耐火性を有する隙間閉塞部材30を、電線管Dを取り囲むように設けてもよい。隙間閉塞部材30は、粘性があり、自身で形状を維持可能な性質を有し、さらに、接着性があるものが好ましく、熱発泡性があるとより好ましい。このように構成した場合、火災等が壁Wの表側で発生した場合、隙間閉塞部材30が隙間Kを閉鎖しているため、隙間Kが火炎、煙等の通路になることが防止される。そして、基板12の表側に隙間閉塞部材30が設けられ、裏側に第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が設けられることにより、隙間閉塞部材30は隙間Kを塞ぐ機能を担い、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は貫通孔Wbを塞ぐ機能を担う。よって、基板12の表側と裏側で別の材料を用いることができる。なお、隙間閉塞部材30は、粘性が低くてもよく、アルミ箔等の金属シートで隙間Kを閉鎖し、落下しないように設ければよい。
【0051】
○ 貫通孔Wbが第2基板形成部材14と同じ大きさである場合は、第1基板形成部材13を第1熱膨張性耐火シート15から剥離し、第2基板形成部材14の上端縁によって挟持部を形成するようにしてもよい。すなわち、基板12の一部を除去することで挟持部を形成するようにしてもよい。このように構成した場合、1つの耐火処理具11により、基板12そのもので閉鎖できる貫通孔Wbと、第2基板形成部材14で閉鎖できる貫通孔の2通りの貫通孔に耐火処理構造を設けることができる。
【0052】
○ 実施形態では、基板12を第1基板形成部材13と第2基板形成部材14を一体化して形成したが、基板を一枚の矩形板状の金属板で形成してもよい。この場合、貫通孔Wbが基板の短辺方向への長さより短い場合は、基板の長辺方向に折り曲げ部が延びるように基板を折り曲げ、その折り曲げ部により挟持部を形成してもよい。このように構成した場合、1つの耐火処理具11により、基板12そのもので閉鎖できる貫通孔Wbと、基板12を折り曲げて閉鎖できる貫通孔の2通りの貫通孔に耐火処理構造を設けることができる。
【0053】
○ 実施形態では、シート状の第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19を基板12の裏面に貼着して一体化したが、第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19は粘着性の無いものでもよく、この場合は、接着剤等により第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19を基板12に貼着して一体化してもよい。
【0054】
○ 実施形態では、耐火処理具11を第1基板形成部材13及び第1熱膨張性耐火シート15と、第2基板形成部材14及び第2熱膨張性耐火シート19とに分割し、電線管Dを挟み込むようにして耐火処理具11を壁材Waに固定したが、以下のように変更してもよい。耐火処理具11を分割せず、基板12から閉鎖板16aを除去し、開放された挿通孔16に電線管Dを挿通するようにして耐火処理具11を壁材Waに固定してもよい。
【0055】
○ 実施形態では、基板12の裏面全面に亘って第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19を貼着したが、挿通孔16と対向する位置は第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19を設けなくてもよい。
【0056】
○ 実施形態では、貫通孔Wbが壁Wの際であり、天井Tの下面から僅かに離間した位置に上端縁が位置するように形成されていたが、貫通孔Wbが壁Wの直下に形成されていてもよい。この場合、延出部15aを挟持部13fと天井Tの下面との間に挟持した場合、延出部15aの厚み分だけ、第2基板形成部材14の第2位置合わせ線14cが貫通孔Wbの下端縁より下方へずれるが、第2基板形成部材14は、第2位置合わせ線14cより下方まで金属板が延びているため、基板12によって貫通孔Wbを閉鎖することができる。
【0057】
○ 第1熱膨張性耐火シート15は、延出部15aが基板12の挟持部13f(上端縁)を越える位置まで延びる大きさに形成したが、基板12の四側周縁全てに延出部15aが形成される大きさであってもよい。
【0058】
○ 熱膨張性耐火材として、パテ状のものを基板12の裏面における挿通孔16を取り囲む位置のみに塗布して基板12と熱膨張性耐火材を一体化するとともに、挟持部13fを越える位置に延出部15aが形成されるように第1熱膨張性耐火シート15を基板12の裏面の上部に貼着してもよい。すなわち、挿通孔16を取り囲む熱膨張性耐火材と、延出部15aを形成する第1熱膨張性耐火シート15とは連続して設けられていなくてもよい。
【0059】
○ 実施形態では、挟持部13fを直線状に延びるように形成したが、挟持部13fは、延出部15aを圧縮し、延出部15aと天井Tの下面との間に隙間ができなければ凹凸状や非直線状に形成されていていもよい。
【0060】
○ 挿通孔16の大きさは3つ全て同じであってもよいし、3つ全て異なる大きさであってもよい。また、挿通孔16は基板12に1つだけ形成されていてもよい。
○ 挿通孔16の閉鎖板16aを削除するとともに、挿通孔16を第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19によって閉鎖してもよく、この場合、挿通孔16に対向する位置にある第1及び第2熱膨張性耐火シート15,19が閉鎖部材となる。
【0061】
○ 基板12に形成される挿通孔16は2つ又は4つ以上であってもよい。
○ 壁Wに形成される貫通孔Wbの大きさに合わせて基板12の大きさ、第1位置合わせ線13b,14b及び第2位置合わせ線14cの位置を変更してもよい。また、第1位置合わせ線13b,14b及び第2位置合わせ線14cと貫通孔Wbとは合致しなくてもよい。
【0062】
○ 壁Wの表側に引き出される配線・配管材の数は挿通孔16の数に合致しなくてもよい。すなわち、未使用な挿通孔16があってもよく、この場合は、例えば、耐火処理具11の固定位置を調節して、未使用な挿通孔16が壁材Waの表面と対向するようにしてもよい。
【0063】
○ 閉鎖板16aは、基板12の金属板を完全に打ち抜いたものを挿通孔16に嵌め込んでもよい。
○ 三つの挿通孔16は、一つ又は二つが閉鎖板16aにより閉鎖されていてもよい。
【0064】
○ 固定孔13a,14aは無くてもよく、この場合は、基板12の表面から壁Wにかけて難燃性のパテを塗りつけて耐火処理具11を壁Wに固定してもよいし、壁Wに耐火接着剤により固定してもよい。
【0065】
○ 挿通孔16に挿通されるのは、配線としてのケーブルや配管材としてのダクト等であってもよい。
○ 基板12は、貫通孔Wbの形状に合わせて任意に変更してもよい。
【0066】
○ 防火区画体として、コンクリート壁のような中実壁や床、天井の貫通孔に耐火処理具11を用いて耐火処理構造を設けてもよい。防火区画体が床又は天井の場合、床又は天井に直交する構築物は壁になる。
【0067】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記基板は第1基板形成部材と第2基板形成部材を一体化して形成されるとともに、前記第2基板形成部材の一端縁により前記挟持部が形成される請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の耐火処理具。
【符号の説明】
【0068】
D…配線・配管材としての電線管、K…隙間、T…構築物としての天井、W…防火区画体としての壁、Wb…貫通孔、11…耐火処理具、12…基板、13f…挟持部、15…熱膨張性耐火材としての熱膨張性耐火シート、15a…延出部、16…挿通孔、30…隙間閉塞部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線・配管材を防火区画体の表側へ引き出すために前記防火区画体に形成された貫通孔に耐火処理を施すために用いられる耐火処理具であって、
前記貫通孔の全体を閉鎖する大きさに形成される不燃材製の基板を備え、該基板に配線・配管材を挿通させる挿通孔が形成されるとともに、前記基板の前記防火区画体側となる一面の前記挿通孔を取り囲む位置に熱膨張性耐火材を備え、
前記基板に、該基板の一端縁に予め形成、基板の一部を除去することにより形成、又は基板を折り曲げることにより形成される挟持部を備えるとともに、
前記挟持部を越える位置まで前記熱膨張性耐火材が延びてなる延出部を備え、
前記挟持部と、前記防火区画体に直交する構築物とで前記延出部を挟持可能にした耐火処理具。
【請求項2】
前記熱膨張性耐火材は、シート状に成形されるとともに粘着性を有し、前記基板の一面に貼着されるとともに、前記シート状の熱膨張性耐火材の一部により前記延出部が形成されている請求項1に記載の耐火処理具。
【請求項3】
前記熱膨張性耐火材は、前記基板の一面の全面に亘って設けられている請求項1又は請求項2に記載の耐火処理具。
【請求項4】
防火区画体に対し構築物が直交するように設けられるとともに、前記防火区画体において前記構築物に近い防火区画体の際に貫通孔が形成され、該貫通孔から前記防火区画体の表側へ配線・配管材を引き出すために前記貫通孔に設けられる耐火処理構造であって、
前記防火区画体には耐火処理具が固定されるとともに、該耐火処理具が備える不燃材製の基板により前記貫通孔全体が閉鎖され、
前記基板に形成された挿通孔からは前記配線・配管材が前記防火区画体の表側へ引き出され、
前記基板の前記防火区画体側となる一面に前記貫通孔の全体を閉鎖するように熱膨張性耐火材が設けられ、
前記基板の一端縁に予め形成、基板の一部を除去することにより形成、又は基板を折り曲げることにより形成される挟持部を前記構築物に沿わせるとともに、前記挟持部を越える位置まで前記熱膨張性耐火材が延びてなる延出部を前記防火区画体から前記構築物に跨るように配設し、該延出部が前記挟持部により前記構築物との間に挟まれていることを特徴とする耐火処理構造。
【請求項5】
前記挿通孔と前記配線・配管材との間の隙間を塞ぐべく、前記基板の他面側には耐火性を有する隙間閉塞部材が前記配線・配管材を取り囲むように設けられている請求項4に記載の耐火処理構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−158014(P2011−158014A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19202(P2010−19202)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】