説明

耐火物、その耐火物を使用した連続鋳造用ノズル及びその連続鋳造用ノズルの製造方法、並びにその連続鋳造用ノズルを使用した連続鋳造方法

【課題】とくにアルミキルド鋼などノズル閉塞現象が起こりやすい鋼種での連続鋳造操業において、使用するノズル内のAl介在物等の付着ないし閉塞を防止すること。
【解決手段】CaO成分を0.5質量%以上、B及びRO(RはNa、K、Liのいずれか)のいずれか又は両方の合量を0.5質量%以上、Alを50質量%以上、フリーの炭素を8.0質量%以上34.5質量%以下含有し、かつCaO、B及びROの合計が1.0質量%以上15.0質量%以下であり、質量比CaO/(B+RO)が、0.1以上3.0以下の範囲にある耐火物10を、連続鋳造用ノズルの溶鋼と接する面の一部又は全部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼からの介在物の付着を抑制ないし防止(「抑制ないし防止」を以下単に「防止」という。)する耐火物、その耐火物を使用した連続鋳造用ノズル及びその連続鋳造用ノズルの製造方法、並びにその連続鋳造用ノズルを使用した連続鋳造方法に関する。
【0002】
本発明が対象とする連続鋳造用ノズルは、溶鋼の連続鋳造に使用するノズル全般であり、とくに浸漬ノズルを対象とする。その典型は、溶鋼が通過する内孔を軸方向に有する管状の耐火物構造体があるが、その他異形状も対象となる。
【0003】
なお、本発明において「軸方向」とは連続鋳造用ノズルの長尺方向を指し、「管状」とは、内孔を軸方向に有するすべての形状を指し、その軸方向と直交する方向の断面形状は問わないものとする。すなわち、軸方向と直交する方向の断面形状は円形に限らず、楕円形状、矩形、多角形等であってもよい。
【背景技術】
【0004】
近年、鋼の高級化等に伴うAl等の溶鋼中の非金属介在物(本発明では、非金属介在物、Al介在物、介在物をほぼ同義とする。)の増加等もあって、連続鋳造用ノズルの内孔面におけるAlを中心とする介在物の付着ないし内孔の閉塞等も、連続鋳造用ノズルの寿命を決定する大きな要素の一つとなっている。
【0005】
このような状況の中、内孔面への非金属介在物等の付着ないし閉塞の防止による連続鋳造用ノズルの高耐用化の要求はますます高まっている。そこで、溶鋼中からのAl等の介在物成分の内孔面への付着等を防止するために、連続鋳造用ノズルの内孔面側の耐火物層に関して、さまざま提案がなされている。
【0006】
例えば特許文献1には、少なくともノズルの内孔部及び/または溶鋼に接する部分が、炭素成分を含まず、SiOが5〜10重量%、Alが90〜95重量%の化学組成を有し、主要鉱物相がムライト及びコランダム及び/またはβ−AlであるAl−SiO系耐火材料から構成された連続鋳造用ノズルが示されている。
【0007】
しかし、このような炭素成分を含まない耐火材料は熱衝撃に対する抵抗性が極めて小さく、とくに溶鋼注入開始時等の熱衝撃によって破壊する危険性が大きい。また、炭素成分を含まないようにしても、このようなAl−SiO系耐火材料ではAlを中心とする介在物の付着ないし内孔の閉塞等を十分に防止することはできない。
【0008】
そこで、内孔面側の耐火物層の材質に、Alを中心とする介在物と反応して低融物を生成しやすいCaO成分を多量に含ませて、介在物等の付着ないし内孔の閉塞等を防止しようとする提案が多くなされている。
【0009】
例えば特許文献2には、40〜90重量%のCaO、0〜50重量%のMgO及び0〜20重量%のCを含む組成物のライニング層をノズルの内孔に配置することが示されている。しかし、このようなライニング層において、とくにCaO含有量が多い場合、CaOは極めて水和しやすいフリーのライムとして存在することから、その消化によるノズルの破壊等を惹き起こして実用化は困難である。また、このようなCaO等の組成物は熱膨脹性が極めて大きく、この組成物によるライニング層の熱膨張によりその外側の本体層、すなわち連続鋳造用ノズル自体を破壊する。
【0010】
このようなCaOの問題点に対し、例えば特許文献3にはCaOを16〜35重量%含み、CaZrOを主成分とするカルシウムジルコネート系クリンカー20〜95重量%、黒鉛5〜50重量%等からなるZrO−CaO含有の連続鋳造用ノズルが示されており、特許文献4には、CaOを3〜35重量%含有するジルコニアクリンカー(鉱物組成としてCubicZrO、CaZrO含有)40〜85重量%、黒鉛10〜30重量%、シリカ1〜15重量%及びマグネシア1〜15重量%の1種又は2種を加えたはい土から製造された付着防止層を内孔表層部に配置した連続鋳造用ノズルが示されている。これらの材料では、CaOをフリーのライムとして存在させないために、ZrO等との結晶構造を有する鉱物として存在させている。
【0011】
しかし、このような成分からなる耐火物では、実際の連続鋳造の操業においてAl等の介在物成分の内孔面への付着等を防止する効果が小さく、十分な連続鋳造用ノズルの耐用時間を確保すること等ができない。また、消化の問題は解消できるものの、熱膨張性をその内孔側層の外側に位置する一般的な連続鋳造用ノズルの本体部のAl−黒鉛質耐火物と同等レベルまで低下させることはできず、これらを一体的に設置した構造等では、連続鋳造用ノズルの熱衝撃による破壊を十分に防止することはできない。
【0012】
このような内孔側に熱膨張性の大きい層を設置するには、連続鋳造用ノズルの構造面で熱衝撃抵抗性を高めることが必要である。例えば特許文献5には、CaO70重量%以上で見掛け気孔率が50%以下である耐火物からなるCaOノズルの外側に母材ノズルを外装し、内孔側のCaOノズルとその外側の母材ノズル間にCaOノズルの熱膨張代に相当する間隙を設けた鋳造用ノズルが示されている。
【0013】
しかし、このように内孔側層と外周側層の間に間隙を設ける等の特殊な構造にすると、通常の一体的な成形体として連続鋳造操業に供することが困難となる等の問題がある。また、内孔側層のズレや剥離ないしは連続鋳造用ノズルの損傷や破壊を惹き起こす危険性が高くなる等の問題も生じる。
【0014】
さらに引用文献6には、非金属介在物のノズルへの付着量を低減させ、詰まりの防止を可能とするための連続鋳造用ノズルにおいて、安価に製作が可能なものとして、組成がAl;20〜80重量%、黒鉛;10〜45重量%、SiO;1〜20重量%、及び、CaO;0.1〜3重量%未満又はCa以外のIIa族元素の酸化物;0.1〜5重量%である耐火物を全体あるいは部分的に使用した連続鋳造用ノズルが示されている。
【0015】
しかしながら、この組成の耐火物は、単にAl、SiO及びCaOの反応による低融物を、これら成分を含む耐火物全体において生成するに過ぎない。すなわち、SiOは揮発して移動するものの、CaOやAlは最初に存在していた位置から移動することはなく組織中でAl−CaO系の融液を形成し、組織に分散しているSiO成分もその融液に吸収されてさらに液相化が進行し、CaO−Al−SiOとして組織中で安定化するため、稼働面側での被覆率の高い皮膜形成が困難となる。さらに、鋳造開始後、時間の経過と共にAl、SiO骨材から融液側へそれらの耐火性成分が供給され低融物の生成量も増加し、熱間強度や耐食性の点で問題となる。
【0016】
すなわち、この組成では稼働面に接触するAl介在物との間で十分な低融物を生成できずに、Al介在物の付着防止効果は極めて限定的とならざるを得ない。このため、時間の経過と共に、比較的短時間のうちにAl介在物が付着しやすくなる。また、稼働面から放出されるSiO(gas)により溶鋼中のAlが酸化して、Alの生成と付着を促進する傾向ともなる。このため当該組成のAl−SiO−CaO系材質は難付着材質としては普及していない。
【0017】
このようにCaO系の耐火物を内孔側に配置する場合には、構造、製造、取り扱い、性能等々に多くの困難な問題を有していることが多く、その克服には多大な労力やコストを要すること等、産業上多くの未解決の課題が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平10−128507号公報
【特許文献2】特開平01−289549号公報
【特許文献3】特公平02−023494号公報
【特許文献4】特公平03−014540号公報
【特許文献5】特開平07−232249号公報
【特許文献6】特開2001−179406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、とくにアルミキルド鋼などノズル閉塞現象が起こりやすい鋼種での連続鋳造操業において、使用するノズル内のAl介在物等の付着ないし閉塞を防止することにある。また、Al介在物等の付着等防止を目的として従来技術で提案されているようなCaO含有耐火物固有の高膨張に起因する割れの発生等の問題を解消し、さらには従来のCaO含有耐火物よりも安価かつ容易に製造することができ、操業においても分割構造(例えば内孔体と本体とが別々の部品からなる構造)よりも安定した構造のノズルを得ることを可能とする耐火物、その耐火物を使用した連続鋳造用ノズル及びその連続鋳造用ノズルの製造方法、並びにその連続鋳造用ノズルを使用した鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、次のとおりである。
[請求項1]
CaO成分を0.5質量%以上、B及びRO(RはNa、K、Liのいずれか)のいずれか又は両方の合量を0.5質量%以上、Alを50質量%以上、フリーの炭素を8.0質量%以上34.5質量%以下含有し、かつCaO、B及びROの合計が1.0質量%以上15.0質量%以下であり、質量比CaO/(B+RO)が、0.1以上3.0以下の範囲にある耐火物。
[請求項2]
1000℃非酸化雰囲気下での焼成後の常温での通気率が0.4×10−3ないし4.0×10−3cm/(cmHO・sec)の範囲にある請求項1に記載の耐火物。
[請求項3]
ZrO含有量が6質量%以下(ゼロを含む)である請求項1又は請求項2に記載の耐火物。
[請求項4]
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物を、溶鋼と接する面の一部又は全部に配置した連続鋳造用ノズル。
[請求項5]
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物が溶鋼と接する面の一部又は全部に配置された層が、当該層と隣接する、前記耐火物以外からなる層と直接接合された一体的構造である請求項4に記載の連続鋳造用ノズル。
[請求項6]
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物を、溶鋼と接する面の一部又は全部に配設した連続鋳造用ノズルの製造方法であって、
連続鋳造用ノズル内の請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物からなる層の一部又は全部を、その成形に供するはい土と、当該層と隣接する前記耐火物以外からなる層の成形に供するはい土とを隣接させて同時に加圧して、一体的構造の成形体とする工程を含む連続鋳造用ノズルの製造方法。
[請求項7]
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物を、溶鋼と接する面の一部又は全部に配設した連続鋳造用ノズルを使用して、連続鋳造用ノズル壁面へのAl介在物等の介在物の付着を防止する連続鋳造方法。
【0021】
本発明において「RO」の「R」は、前記のとおり、Na、K、Liのいずれかであるから、「RO」は、NaO、KO、LiOのいずれかである。ただし、「RO」としてはNaO、KO、LiOのいずれか1種に限らず複数が併存してもよく、複数併存の場合はそれら全部を一体的に取り扱えばよい。
【0022】
本発明において化学成分値は、1000℃非酸化雰囲気中における熱処理後の試料の測定値を基準とする。
【0023】
以下詳細に説明する。
【0024】
本発明は、前記課題に対し、溶鋼と接触する耐火物の稼働面で、緻密で粘稠な皮膜を形成し、またその皮膜を連続的に形成して維持することでAl介在物の付着を防止することを基本とする。
【0025】
緻密で粘稠な皮膜とは、溶融スラグ層を含む被覆層であって、耐火物表面のこの被膜層を、本発明では「半溶融状態のスラグ被覆層」又は単に「スラグ被覆層」ともいう。
【0026】
本発明での半溶融状態のスラグ被覆層は、Al介在物除去のメカニズムにおいて、緻密で粘稠な液相であることが重要である。
【0027】
緻密で粘稠な液相を有するスラグ被覆層とは、スラグ相であって、耐火物の稼働表面すなわち溶鋼と耐火物との間に存在する被膜状の層であって、そのスラグ相内部でCaO、Al等の成分が移動することが可能な程度の溶融状態の部分を含み、かつ、そのスラグ被膜層が溶鋼流により容易に流出しない程度の粘性を維持している状態をいう。また、本発明でスラグ相とは溶融状態にある耐火物部分を含む組織をいい、この溶融状態部分にはガラス相を含んでいてもガラス相以外の溶融物を含んでいてもよく、またガラスを構成しないか溶融状態にない結晶粒等が併存した状態をも含む。
【0028】
本発明の耐火物は炭素含有耐火物であって、この耐火物組織内は還元雰囲気となる。この耐火物中にCaOと、低融物の構成成分であってとくに還元雰囲気下で揮発性を増す酸化物すなわちB及びROのいずれか又は両方を所定量分散して存在させる。これらを溶鋼温度レベルでAlを主体とする耐火物骨材と反応させることで粘稠な溶融スラグ相を形成させて耐火物表面にスラグ被覆層を形成させ、Al等介在物の付着を防止する。
【0029】
前記スラグ被覆層により、Al介在物と耐火物表面とが直接的に接触することを防止し、耐火物表面の凹凸を平滑化し、耐火物のごく表面付近における溶鋼のミクロ的な乱流(溶鋼渦)を抑制する作用効果が得られる。耐火物のごく表面付近でのミクロ的な溶鋼渦の抑制は、溶鋼中に懸濁するAl等の非金属介在物の耐火物表面への溶鋼渦の慣性力による衝突を抑制することになる。その結果、Al介在物の付着を抑制する。
【0030】
さらに、耐火物稼働面での緻密で粘稠なスラグ被覆層は、耐火物表面の被覆率が高いことや被覆層自体に開放気孔がほとんど無いこと等もあって、CやSi等の耐火物成分の溶鋼中への溶解を抑制することになり、Al等介在物の付着現象を防止することが可能となる。これは、次のようなメカニズムによる。耐火物が直接溶鋼と接触して耐火物成分であるCやSi等が溶鋼中へ溶解すると、耐火物のごく表面付近の溶鋼中でこれら溶質濃度勾配に伴う溶鋼の表面張力勾配(耐火物近傍での溶鋼中の表面張力が小さくなる)を生じる。一方、Al等の溶鋼内介在物は溶鋼の表面張力が低い方に移動する傾向があるので、耐火物のごく表面付近でのAl付着現象が促進される。
【0031】
さらに、溶鋼/耐火物の稼働界面でのCaO系溶融スラグ被覆層の存在は、CaOによる溶鋼中の脱硫反応を生じる効果もあり、耐火物表面付近(耐火物−溶鋼界面)で硫黄の溶質濃度が低下するに伴い、耐火物表面近傍での溶鋼表面張力が増大する傾向となるためAl付着を抑制する効果がある。
【0032】
耐火物と溶鋼との界面にこのような緻密で粘稠なスラグ被覆層を形成させるためには、耐火物組織中での、そのスラグ相を構成する成分(以下、「スラグ化成分」ともいう。)とその成分を除く耐火物構成物との反応を抑制しつつ、一方で耐火物の稼働面(溶鋼との界面と同義)ではスラグ被覆層の形成を確実にする必要がある。
【0033】
本発明者らは、これらのスラグ化成分が、溶鋼流速下でのAl付着現象にどのような影響を及ぼすかを溶鋼中回転試験法により調査し、以下の知見を得た。
1.耐火物を溶鋼中回転試験法において試験した場合に、その耐火物表面に被覆率50%以上かつ厚さが0.1mm以上の半溶融状態のスラグ被覆層を形成するときに、鋼の連続鋳造において顕著にAl付着現象を抑制することが可能であること。
2.前記の溶鋼中回転試験法におけるスラグ被覆層を得るための耐火物は、CaO成分を0.5質量%以上、B及びRO(RはNa、K、Liのいずれか)のいずれか又は両方の合量を0.5質量%以上、Alを50質量%以上、フリーの炭素を8.0質量%以上34.5質量%以下含有し、かつCaO、B及びROの合計が1.0質量%以上15.0質量%以下であり、質量比CaO/(B+RO)が、0.1以上3.0以下の範囲にあること。
【0034】
多くの従来技術では鋳造時間の経過に伴ってAl等介在物の付着防止効果は減少していた。その原因は、従来技術の耐火物組成では、耐火物の溶鋼と接触する面のごく近傍の組成のみによってAlとの反応ないし低融化を図り、その溶鋼流による流失を主たる作用としていることによる。すなわち、耐火物表面付近において溶鋼中のAl介在物と反応する成分(CaO等)が時間の経過と共に消費され、又は表面に固体状の反応層を形成して、その固体相の形成以後の溶鋼中のAl介在物との反応が著しく減少若しくは無くなることによる。このような従来技術において安定的又は長時間に亘ってAl付着防止効果を得るためには、比較的多量にCaO等の反応性成分を添加する必要があるが、その場合はAl骨材など併存する他の耐火性成分との反応により熱間での強度低下や耐熱衝撃性の低下、また耐食性の低下などの問題があった。
【0035】
本発明ではAl介在物の付着防止効果を、鋳造開始時及び鋳造から短時間の間に止まらず、さらにほとんど減少させることなく長時間に亘って持続させることを可能にした。すなわち本発明は、溶鋼温度レベルの還元雰囲気下での揮発性酸化物(B及びRO)の溶鋼稼働界面での濃化現象を利用して、この揮発性酸化物と主骨材であるAl成分とを反応させることにより、溶鋼と耐火物の界面に溶融状態のスラグ相を含む緻密で粘稠なスラグ被覆層を連続的に形成させ、鋼中介在物によるノズル閉塞現象を防止することを特徴としている。
【0036】
これを詳述する。
【0037】
連続鋳造用ノズルのように溶鋼が速い速度で通過する部位に配置された炭素含有耐火物は、鋳造中、溶鋼と接する耐火物のごく表面(内壁面)はほぼ常に負圧に曝されている。このような環境下で、SiO成分より揮発性(ガス化)が高い成分として知られるB及びRO成分が炭素含有耐火物組織内に存在する場合に揮発性酸化物は負圧側である溶鋼/耐火物界面へ素早く移動する。(SiO成分はこれらの成分に比べて揮発能は低いが、共存させることにより皮膜形成を促進する能力がある。しかし、SiO成分は組織内での低融化を抑制するために、0.21mm以上での粒度で使用するのが好ましい。)揮発性成分の溶鋼/耐火物界面での濃化の結果、溶融スラグ相が溶鋼/耐火物界面に形成される。
【0038】
溶融スラグ相は、マトリクス中に分散させている塩基性成分であるCaO成分や揮発して稼働面に濃化したB成分及びRO成分を優先的に取り込み、CaOリッチなCaO−B系若しくはCaO−RO系又はCaO−B−RO系の溶融スラグ相を連続的に形成する。
【0039】
この溶融スラグ相の一部は、稼働界面のAl骨材と反応し、緻密で粘稠な溶融スラグ相を含む皮膜状の層、すなわちスラグ被覆層を溶鋼と耐火物との間に連続的に形成する。
【0040】
溶鋼温度付近において適度な粘性を維持しつつ稼働面に生成した溶融相を含むスラグ相である皮膜状のスラグ被覆層は、その耐火物稼働面の平滑作用及び保護膜的作用により溶鋼中からのAl等の介在物粒子を耐火物に固着させることなく溶鋼中に流出させる。しかも本発明においては、前記揮発性成分の移動ないし稼働面側での濃化現象、及びスラグ被覆層の形成は、鋳造(操業)が継続する間、連続的に生じる。この連続的なスラグ被覆層の形成等により、従来技術と異なって、本発明の耐火物がAl介在物の付着防止効果を長時間に亘って持続させることを可能にする。
【0041】
以下、各成分、各要素につき説明する。
【0042】
CaOは、溶鋼と接触する耐火物表面のスラグ被膜層内で、溶鋼由来の硫黄成分と反応して、稼働界面で溶鋼中のフリーの硫黄濃度を低下させる効果がある。溶鋼中のフリーの硫黄濃度が低下すると溶鋼の表面張力は増大する傾向を示す。このような反応によって、本発明の耐火物表面近傍での溶鋼中の表面張力が増大する。Al等の非金属介在物は前述のように溶鋼の表面張力が小さい方に移動するので、この硫黄濃度の変化に起因する耐火物表面近傍での溶鋼の表面張力の増大により、Al等の非金属介在物が耐火物表面に接触する頻度を低下させることができる。またCaOは、Alとの反応によって低融物を生成して、溶鋼中に流下させる機能をも有する。CaOはスラグ相の粘性を低下させる成分でもあって、とくに溶鋼温度でAl骨材との反応性を増大させる作用があり、粘稠なスラグ相を形成する機能をも果たす。このような作用のために、CaO量は耐火物中に0.5質量%以上であることが必要である。
【0043】
CaOは還元雰囲気下でも安定であり、BやRO等の揮発性成分のように耐火物組織内を気化して溶鋼と接触する耐火物表面に移動することはない。しかし、稼働面の半溶融状態のスラグ相中では、Al付着を効果的に抑制することが可能となる。すなわちCaOは、半溶融状態のスラグ相中であれば移動することが可能となり、そのスラグ相中で溶鋼由来のAl,S(硫黄)等の介在物と反応し、またその反応性を高めることに寄与することができる。CaO成分が0.5質量%未満であると前述の各機能が十分に得られない。
【0044】
及びROはスラグ相を構成する成分(スラグ化成分)であって、これらのいずれか又は両方が併存することで、稼働界面での粘稠な半溶融状態のスラグ相による被覆層を生成する。これら成分は、他の成分よりも低温度から溶融状態になるので、耐火物表面が溶鋼に接触する直後に被膜することに寄与する。前記のCaO量においてこれら成分を含まない他の成分によってスラグ化を図っても、鋳造初期にAl等の介在物の付着を抑制するのに十分な被膜を維持することは困難である。さらにB及びROは溶鋼温度レベルでも蒸気圧がSiO成分より非常に高く、とくに還元雰囲気下では揮発しやすく、揮発により耐火物組織内を容易に移動することができる。
【0045】
一方、耐火物稼働面(溶鋼との接触面。以下同じ。)では半溶融状態のスラグ被覆層は溶鋼からのAl等の介在物との反応に加えて溶鋼流による機械的な摩耗等により、徐々に消失する。揮発性のB及びRO成分は、鋳造(操業)中それらが減少する耐火物稼働面に向かって連続的に移動する。
【0046】
耐火物稼働面側に移動したB及びRO成分は、耐火物稼働界面(溶鋼との界面。以下単に「稼働界面」ともいう。)で濃縮され、組織中のCaOと反応し、スラグ相化する。稼働界面で生成したスラグ相は周辺の耐火性骨材(主としてAl)との反応性を増大させて、粘稠で耐火性のあるスラグ層を形成する。
【0047】
このように、B及びRO成分は揮発による連続的な耐火物稼働面への移動によって、耐火物稼働面に粘稠なスラグ相の皮膜を形成し続けることを可能とする役割を担っている。
【0048】
これらの半溶融状態のスラグ被覆層の、鋳造初期及び鋳造(操業)が継続する間の連続的な形成のためのB及びROのいずれかの量又は両方の合量は、前述の量のCaOの存在を前提として、0.5質量%以上必要である。このB及びROのいずれかの量又は両方の合量が0.5質量%未満であると、他の耐火骨材に対して相対的に量が少なすぎて、半溶融状態の皮膜層としてのスラグ相の形成には至らない。またこれらの均一な分散及び連続的な移動も困難となる。なお、CaO、B及びRO量の最適値は、個別の操業条件に応じて溶鋼中回転試験法により決定すればよい。
【0049】
前述の各成分の必要量の理由から、CaO、並びにB及びROのいずれか又は両方の合計量(CaOとBの合計量若しくはCaOとROの合計量又はCaO、B、ROの合計量)は、1.0質量%以上必要であって、またこれらの上限は15.0質量%以下であることが必要である。CaO、並びにB及びROのいずれか又は両方の合計量が15.0質量%を超えると、溶鋼温度レベルの温度域での耐火物組織中の溶融スラグ化の進行が大きくなるため、耐火度の低下、溶損の増大、強度低下等の問題が生じやすくなる。
【0050】
さらに、耐火物稼働面に緻密で粘稠なスラグ被膜層を形成するために、CaO、並びにB及びROのいずれか又は両方の合計量が1.0質量%以上15.0質量%以下であることに加え、質量比CaO/(B+RO)が、0.1以上3.0以下の範囲にあることが必要である。
【0051】
言い換えると、この質量比は本発明のスラグ相を構成する成分(スラグ化成分)に関し、非揮発性成分/揮発性成分ということである。本発明においては、前述したとおり、粘稠なスラグ相を形成し維持するためには、揮発性成分の連続的な稼働面への供給が重要な要素である。そのため、非揮発性成分/揮発性成分のバランスを最適化することが、本発明の効果をより確実にし、高めることに有効である。前記質量比が0.1未満の場合は、還元雰囲気下で安定なCaO成分が相対的に少なくなるため、稼働面で濃化した相の化学成分が揮発性の酸化物が主体となるため、低粘性でありスラグ相が高温下で安定的に存在できない。このため稼働面での被覆率の高いスラグ被覆層を形成することが困難となり、Al介在物の付着抑制効果に劣る結果となる。一方、前記質量比が3.0を超える場合は、還元雰囲気下で安定なCaO成分は相対的に多くなるものの、濃化生成したスラグ相は低粘性のスラグ被覆層となるため、溶鋼流速により容易に流下するスラグ相が多くなるため連続的なスラグ被覆層が長時間に亘って形成し難くなる。このためAl介在物の付着抑制効果に劣る結果となる。
【0052】
及びROを耐火物の稼働面に供給し続けて、緻密で粘稠なスラグ相ないしは半溶融状態のスラグ被覆層を連続的かつ効果的に形成するためには、揮発性成分としてのB、RO成分は耐火物のマトリクス中に分散されていることが好ましい。これらの揮発性成分をマトリクスに含む場合は揮発性成分である前記酸化物の揮発が容易になり、組織内での成分移動が起きやすくなる。
【0053】
本発明でマトリクスとは、耐火物組織中の結合材としての炭素を主体とする炭素、及び概ね0.21mm以下の粒径の耐火材料を主体とする組織、並びに、粒径にかかわらず前記の揮発性成分やCaO等が融着ないし一体化又は団粒化した組織(以下単に「融着等組織」という。)を生じている場合はその融着等組織も含む組織部分であって、概ね0.21mmを超える粒径の耐火骨材(以下単に「粗粒」という。)間に存在する耐火物組織部分を指す。
【0054】
マトリクスに分散した状態とは、マトリクス中の場所如何に拘わらず(どの位置でも)ほぼ同様な確率で存在すること、すなわち粗粒自体の中に化合物や機械的に拘束された状態で存在するのではなく、粗粒を除く耐火物組織の中にほぼ均一に(概ね百分率で表した含有量の差が30%以内程度)存在する状態をいう。
【0055】
耐火物組織内を還元雰囲気下にするために、耐火物にはフリーの炭素を含むことが必要である。ここでフリーの炭素とは、炭素以外の成分との化合物として存在するものを除き、非晶質か結晶質かを問わず、また粒子や連続構造体の中に不純物が非化合物として混入しているか否かにかかわらず、炭素単体として存在するものをいう。具体的には、樹脂やピッチ等由来の結合材、黒鉛、カーボンブラック等をいう。
【0056】
本発明の耐火物は、高熱膨張性のペリクレースやジルコネート等を主体とするCaOを多量に含む耐火物とは異なって、相対的に低膨張性であるAlを主たる構成骨材とする。このため、耐熱衝撃性を得るために、一般的な連続鋳造用ノズルの本体部用Al−黒鉛質耐火物と同程度の黒鉛量で耐熱衝撃性を確保することができる。これに対して、内孔側の稼働面にAl等介在物の付着を防止する機能を付加するためにCaOを主体とする耐火物層等を配置する場合にはとくに、その耐火物自体に含む黒鉛で耐熱衝撃性を高めようとすると多量の黒鉛が必要となり、また耐食性や耐摩耗性等の低下を招来する等の弊害もあって現実的ではない。本発明の耐火物ではこのような系に比較して、耐火物の主たる組成を、CaOよりも相対的に低熱膨張性のAlとするので、相対的に黒鉛量を低くすることができる。
【0057】
すなわち本発明の耐火物は、フリーの炭素を8.0質量%以上34.5質量%以下含む。このフリーの炭素は、骨材粒子としての炭素と結合材としての炭素との合計をいう。
【0058】
骨材粒子としての炭素とは、主に黒鉛質骨材であって、これは炭素質結合組織間の充填材として添加することにより、構造体強度を高め、熱伝導率を上げ、熱膨張率を低下させる作用により耐熱衝撃性を改善できる。また、炭素質の骨材粒子(結合材としての炭素もこの一部とみなすことができる)が酸化物等の間に存在することで、酸化物の焼結や低融化反応を抑制する効果があり、鋳造時の品質の安定化も期待できる。なお、黒鉛と共にカーボンブラックを一部に使用することも可能である。
【0059】
本発明の耐火物は、連続鋳造用ノズルの内孔面のみに適用することも可能で、その場合の骨材粒子(黒鉛質骨材等)としての炭素の量は7質量%以上が好ましい。また、本発明の耐火物は連続鋳造用ノズルの本体部にも適用することも可能で、この場合の骨材粒子としての炭素の量は18.0質量%以上33.5質量%以下がより好ましい。18.0質量%未満であると、例えば1000℃程度の予熱温度の低い状態から溶鋼を受鋼した際の熱衝撃に対して十分な抵抗性を確保し難い場合がある。33.5質量%を超えると、溶鋼流の摩耗により損傷しやすくなり、連続鋳造用ノズルの耐用時間が短くなるほか、溶鋼偏流による局部損耗を生じやすくなる。
【0060】
結合材としての炭素は、耐火物自体の強度を担い、構造体としての形態を維持すると共に、主として熱衝撃に対する破壊抵抗性を付与する。結合材としての炭素は、主として高温度(約1000℃以上の非酸化雰囲気中)において固定炭素量が多く炭素結合を形成する樹脂、ピッチ、タール等によって得ることが好ましい。この結合材としての炭素は、1.0質量%以上が好ましい。1.0質量%未満であると、骨材同士を炭素で結合した構造体を維持するに十分な強度が得にくい。また、本発明の耐火物の厚さが相対的に小さい(例えば約10mm以下等)場合等で初期強度を高めることが好ましい場合等には、2.0質量%以上がより好ましい。上限は5.0質量%以下であることが好ましい。5.0質量%を超えると、炭素結合の構造体強度は十分であるが、耐熱衝撃性の低下や製品(本発明の耐火物を使用した連続鋳造用ノズル)を製造する上で歩留まりが低下しやすくなるため好ましくない。この結合材としての炭素量は、前記範囲内で個別の操業や製造時の条件等に応じて変化させ、決定すればよい。
【0061】
本発明では溶鋼中回転試験法による特定のスラグ被覆層の状態を、本発明の効果を評価する基準とする。スラグ被覆層の状態は、操業において直接測定して数値化することは現実的ではない。
【0062】
そこで本発明では、操業におけるスラグ被覆層の状態を推測するための実験室における検証方法として、溶鋼中回転試験法を採用した。そして、この試験の供試料とした耐火物の試験後の表面に、被覆率50%以上かつ厚さが0.1mm以上のスラグ被覆層が形成する(熱間において半溶融状態であったとみなすことができる)ことで、操業におけるAl等介在物の付着防止効果を得ることができることを確認した。
【0063】
次に溶鋼中回転試験法について述べる。
【0064】
図1は下部に4つの所定の形状に加工した対象試料(以下、「供試料」という。)1を保持するホルダー2が、るつぼ4内の溶鋼3中に浸漬された状態を示している。供試料1は直方体で4つ設置してあり、四角柱のホルダー2の下部の4面にそれぞれ固定されている。この供試料1は、四角柱のホルダー2に設けた凹部にモルタルを介して挿入されており、試験終了後は引き抜くことで外すことができる。ホルダー2は上部が図示していない回転軸に接続され長手軸を回転軸として回転可能に保持されている。また、ホルダー2は長手軸に対する水平断面においては1辺が40mmの正方形をしており、長手方向の長さは160mmで、ジルコニア−カーボン質の耐火物製である。供試料1はホルダー2からの露出部が縦20mm、横20mm、長さが25mmである。また供試料1の下端面1aがホルダー2の下端面2aから上に10mmの位置に取り付けられている。
【0065】
るつぼ4は、内径130mm、深さ190mmの円筒形の耐火物製である。このるつぼ4内に溶鋼3を貯留しており、るつぼ4は高周波誘導炉5に内装されていて、溶鋼3の溶融状態及び温度を制御することができる。ホルダー2の溶鋼3中への浸漬深さは50mm以上である。また図示していないが上面には、蓋をすることができる。
【0066】
溶鋼中回転試験は、溶鋼3直上で供試料1を5分間保持することで予熱した後、溶鋼3である低炭アルミキルド鋼中へ供試料1を溶鋼表面より50から100mm浸漬し、供試料1の最外周面で平均1m/秒の周速で回転させる。試験中は、溶鋼中へアルミニウムを添加することで酸素濃度を50ppm以下の範囲に保持し、かつ温度を1550〜1570℃の範囲に保持する。3時間後に供試料1を引き上げて、酸化しないように非酸化雰囲気中でホルダー2ごと供試料を冷却した後、供試料1の寸法を計測する。
【0067】
付着又は溶損速度の測定は、図2に示すように試験終了後の供試料1をホルダーから外して回転軸に対する直角の方向の水平面(回転周方向の面)で供試料高さの半分位置にて切断する。切断面において側端面1bから回転軸方向に向かって3mmピッチで6箇所の長さを測定し平均する。溶鋼中回転試験前の供試料も各々の同位置の長さを測定し平均しておく。溶鋼中回転試験前の平均値(μm)から溶鋼中回転試験後の平均値(μm)を差し引き、その値を試験時間180分で除することで付着又は溶損速度(μm/分)を算出する。
【0068】
溶鋼中回転試験の付着又は溶損速度(μm/分)は4段階で評価した。すなわち溶損・付着量が、(1)±10μm/分以下のもの、(2)±15μm/分以下のもの、(3)±30μm/分以下のもの、(4)±30μm/分を超えるものに分類した。これらの溶損・付着量の異なる材質を適用し実操業でのテストを行った結果、±30μm/分以下では許容できる鋼種があることが判明したため、30μm/分以下を使用可能レベルと判断した。なお、ここで「+」は付着、「−」は溶損を示す。
【0069】
前記溶損・付着速度±30μm/分以下を満たすための条件として、溶鋼中回転試験後に供試料表面のスラグ被覆層の厚さが0.1mm以上であること、及び、生成したスラグ被覆層の供試料の溶鋼接触面における被覆率(スラグ相で被覆された面積の供試料の溶鋼接触面積に対する百分率)が50%以上であることが必要であることが、溶鋼中回転試験法にて判明した。
【0070】
試験後の供試料表面に生成しているスラグ被覆層(熱間で溶融状態であったスラグ相とみなすことができる)の厚さと被覆率は次のように計測する。
【0071】
前述の切断面をもった試験後の供試料を樹脂モノマーにて含浸−重合した後に研磨し、耐火物表面に生成しているスラグ相について顕微鏡にてその厚さを計測する。図2に示した試験終了後の供試料1において溶鋼と接触した領域にて側端面1bから回転軸方向へと3mmピッチで線を引き(図2(b)参照)、回転方向(円周方向の進行方向。図2(b)では上部に位置している面方向)及びその反対側(円周方向の進行方向の反対側。図2(b)では下部に位置している面方向)での耐火物稼働表面との交点近傍でのスラグ被覆層の厚さを計測する。計測方法の詳細は、スラグ被覆層の厚さを健全部の境界(スラグ相と反応したアルミナ骨材を含む場合は、その骨材形状が分かる部分から)よりスラグ被覆層の表層面までをその厚さとし、それぞれ計測値の平均値をスラグ被覆層の厚さとする。
【0072】
被覆率Cについては、次のように計測、算出する。溶鋼と接触した領域にて側端面1bから回転軸方向に向かう回転方向側及びその反対側の稼働面で6mmまでの領域(図2(b)では右端から右第2番目の線までの領域)における耐火物稼働面長さ(L0)(図2(b)では右端から右第2番目の線までのR状の領域)とスラグ被覆層の長さの比率(L1)から、次式により被覆率C(%)を算出する。
C(%)=L1/L0×100 … 式1
【0073】
さらに本発明者らは、耐火物の通気率が特定の範囲にある場合に、スラグ被覆層の連続的な形成効果をより安定的に得ることができることを発見した。
【0074】
具体的に述べると、高温下での揮発性酸化物の成分移動が安定的・効率的に生じるためには、揮発性酸化物が通り抜けるためのよりよい条件を具備すること、すなわち耐火物組織内を連通する経路としての空間(気孔)の存在がより好ましいということである。
【0075】
そして本発明者らは、1000℃非酸化雰囲気下での焼成後の耐火物の、常温での通気率Kがこの指標として最適であることを見出した。
【0076】
この通気率Kは、式2により表すことができる。
K=(Q×L)/(S×(P1−P2)) … 式2
ここで、
Q;単位時間に試料を通過した空気の体積(cm
L;試料の厚さ(cm)
S;試料の断面積(cm
P1:試料流入時の空気の圧力(cmHO)
P2:試料流出時の空気の圧力(cmHO)
【0077】
本発明に関して、1000℃非酸化雰囲気下での焼成後の耐火物の、常温での通気率Kの最適値は、0.4×10−3ないし4.0×10−3cm/(cmHO・sec)の範囲である。通気率が0.4×10−3cm/(cmHO・sec)より低いとガス化したスラグ化成分である揮発性成分が稼働面まで到達しがたく、緻密で粘稠なスラグ被服層の連続的な又は長時間の形成が不十分になることがある。通気率が4.0×10−3cm/(cmHO・sec)より大きいと、鋳造開始後短時間で揮発性成分が消失して、鋳造中の継続的なスラグ被服層の形成ができずにAl付着を招来することもある(溶鋼流速が高い条件下等)。
【0078】
なお、この通気率Kは、直径約30mm〜約60mm×厚さ約5mm〜約30mmの厚さの耐火物につき、通過する空気を測定することにより行い、前記式2により求めた値である。試料は既に製品状態となった耐火物から切り出してもよく、予め当該測定用に製造したものでもよい。
【0079】
前述の特定の通気率を得るための手段はとくに限定する必要はない。この手段としては、例えば次のような方法が挙げられる。
(1)当該耐火物の成形時に、充填密度を小さくする。
(2)揮発性成分以外の耐火骨材の粒子サイズとその構成割合を調整する(最密充填構造を避ける)。
(3)成形前の当該耐火物の成形用はい土に可燃性の液体や微小固体等を配合し、焼成後に微小な空間を形成する。
(4)成形時の圧力を調整する。
【0080】
本発明では、耐火物中のAl含有量を50質量%以上とする。溶鋼/耐火物の稼働界面で生成した溶融スラグ相は一部が組織中の耐火性骨材と反応し、スラグ被覆層の粘性や耐火性などの性状が決定される。溶鋼流速に流され難く平滑、緻密、粘稠なスラグ被覆層を安定して維持するための耐火性骨材としては、Al骨材が最も好ましい。
【0081】
Alは中性系酸化物であって、溶融スラグ相との適度な反応性により粘稠な粘性を得ることができると共に、溶鋼に対する耐食性に優れ、かつAl付着対策用材料に従来用いられているようなZrOやMgO等を主たる成分とする骨材よりも熱膨張が小さく、これを主体とする耐火物は耐熱衝撃性に優れる。
【0082】
Al含有量が50質量%未満であると、稼働界面で濃化した酸化物と骨材との反応により生成したスラグ被覆層の耐火度が不足するため、耐火物稼働界面で溶鋼流速に流されやすくなり緻密なスラグ被覆層を維持するのが難しくなる。
【0083】
前記の本発明の耐火物構成要件としての諸成分の残部の構成については、前記以外の酸化物、たとえばSiO、MgO、スピネル、ZrOなどの併用は可能である。ただし、ZrOは溶融スラグ相への混入により粘性を高める。このため、溶鋼温度が通常より高い、溶鋼流速が通常よりも大きい等の条件の場合等では、スラグ被覆層の流失を抑制することに寄与して、Al介在物等の付着防止効果を維持することができる。しかし、通常の溶鋼温度、溶鋼流速等の条件では、スラグ被覆層の粘性が過度に高まることでAl等介在物の付着が発生しやすくなることがある。このため、通常は、ZrOの含有量は耐火物全体において6質量%以下に制限することが好ましい。
【0084】
また、SiC、TiC、BCなどの炭化物や、SiやBNなどの窒化物、Al、Si、Tiなど金属の群から選択する1種以上から選択することも可能である。
【0085】
耐火物組成中のAlの鉱物相としては熱的に安定なコランダム相が好ましい。コランダムとしてのAlであれば、前記のスラグ相に対して早期に溶解することがなく、構造体としての機能を維持し、適度なノズルの耐用時間を維持することができる。また、一般的な連続鋳造用ノズルの本体部用の材質であるAl−黒鉛系材質と同等の熱膨張特性とすることができるため、耐熱衝撃性面や耐溶損性面での取り扱いが容易であるという利点もある。
【0086】
このコランダムを主体とするAlは、Al純度約95質量以上であることが好ましい。このコランダムを主体とするAlには電融法、焼結法等による人工物、天然に産出した原料を熱処理等したものなどがある。天然に産出する原料を出発原料とする場合にはTiO、SiO等が化合物等の鉱物相等として混入している。このような原料粒子中の不純物による本発明の効果への影響は小さい。
【0087】
また前記不純物は、とくに粒子サイズが小さいほど、またとくにCaO並びにB及びROの総量が少ない本発明の領域では、コランダムを主体とするAl粒子界面でのスラグ相との接着性の向上等に寄与することもある。したがって、とくに粒子サイズ0.21mm程度以下の、すなわちマトリクスを構成する領域においてこれらコランダムを主体とするAlに由来する不純物としてのSiOを、本発明の前述の機能を果たすためのSiO源の一部又は全部として使用することも可能である。
【0088】
なお、耐熱衝撃性の向上を目的として、耐火物中に溶融SiOを粗粒サイズ(約0.5mm〜約0.1mm程度)で含有させることが一般的に行われている。本発明においても、このような溶融SiOを併用することができる。
【0089】
SiO成分はBやRO成分に比べて、溶鋼温度レベル、還元雰囲気下での揮発能は低いが、共存させることにより溶鋼/耐火物界面での皮膜形成を促進する能力がある。しかし、シリカ成分は組織内のCaO成分と共存した場合に組織内でスラグ相として安定化し揮発しがたくなるため、低融化抑制の目的で0.21mm以上の粒度で使用が好ましい。
【0090】
以上に説明した本発明の耐火物は、連続鋳造用ノズルにおいて、溶鋼と接する面の一部又は全部に配置することで、Al等の介在物の付着ないしノズル内閉塞を防止することができる。すなわち、個別の操業の条件、Al等の介在物の付着状況に応じて、その付着の多い部分を主に配置すればよい。また、その厚さは、個別の操業の条件に応じて、本発明の耐火物の溶損の程度、Al等の介在物の付着の程度等と、設定耐用時間とを考慮して決定すればよい。
【0091】
本発明の耐火物からなる層を内孔側に配置する連続鋳造用ノズルは、本発明の耐火物が一般的な連続鋳造用ノズルの本体部のAl−黒鉛質層と同程度の熱膨張特性を有する。これにより、本発明の耐火物からなる層(とくに連続鋳造用ノズルの内孔側層)と、この層に隣接する他の耐火物層(とくに連続鋳造用ノズルの軸から半径方向の外周側にある本体をなすAl−黒鉛質等の層)との間には空間、可縮性を備えたモルタル層等の応力緩和を目的とする層を設置する等の、特異な構造にする必要がない。すなわち、本発明の耐火物からなる層と、これに隣接する他の耐火物層とが直接接合された一体的構造とすることができる。
【0092】
ここで「直接接合」とは、本発明の耐火物からなる層とこの層に隣接する他の耐火物層との接触面が、これら耐火物以外の第3の層、例えばモルタル等の接着材、空間等を介さずに密着している状態をいう。そしてこの密着状態は、2つの層の組織が凹凸に絡み合って見かけ上の一体である場合と、凹凸に絡み合ってはおらずに単に接触している場合とを含む。
【0093】
具体的な構造としては、次のような類型がある。
(1)本発明の耐火物からなる層を連続鋳造用ノズルの内孔側及び底部の層の一部又は全部に、他の耐火物層をその溶鋼流下方向の軸中心を起点とする半径方向の外側、及び底部外側(本体)に配置する類型
(2)本発明の耐火物からなる層を連続鋳造用ノズルの吐出孔の内面層の一部又は全部に、他の耐火物層をその吐出孔の溶鋼流出方向中心の軸を起点とする半径方向の外側に配置する類型
(3)本発明の耐火物からなる層を連続鋳造用ノズルの溶鋼浸漬部の外周面(底部を含む)の一部又は全部の層に、他の耐火物層をその内側(ノズルの内孔方向)に配設する類型
【0094】
このような一体的構造の連続鋳造用ノズルの製造方法においては、連続鋳造用ノズルの一般的な製造方法と同様の製造方法を採ることができる。すなわち、はい土をCIP(Cold Isostatic Press)により成形し、その後乾燥、焼成、機械的加工等を行う方法である。これは、本発明の耐火物が前記の一般的な製造方法に適用される黒鉛含有の耐火物とほぼ同程度の黒鉛を含有すること等の理由による。
【0095】
したがって、本発明の耐火物を溶鋼と接する面の一部又は全部に配置した連続鋳造用ノズルを製造する方法においては、連続鋳造用ノズル内の本発明の耐火物からなる層の一部又は全部につき、その成形に供するはい土と、当該層と隣接する前記耐火物以外からなる層の成形に供するはい土とを、同時に型枠に充填し、同時にCIP成形による加圧をすることができる。これにより、2つの層の接触部分付近で組織が凹凸に絡み合った、見かけ上継ぎ目や両者を隔離する層等のない、一体的構造とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0096】
本発明の耐火物及びこの耐火物を配置した連続鋳造用ノズルにより、連続鋳造の操業における連続鋳造用ノズルの溶鋼と接する面でのAl等の介在物の付着ないしノズル内閉塞を防止することができる。
【0097】
しかも、Al等介在物の付着ないしノズル内閉塞防止機能を、とくにAl−黒鉛やカルシウムジルコネート等を基本構成材料とする従来技術の耐火物及び連続鋳造用ノズルに比較して、長時間継続的に維持することができる。
【0098】
また本発明の耐火物及びこの耐火物を配置した連続鋳造用ノズルは、Al介在物等の付着等防止を目的とした従来技術のCaO含有耐火物固有の高膨張に起因する割れの発生等の問題を解消することができる。これは、本発明の耐火物が耐熱衝撃性に優れる本体用等のAl−黒鉛質耐火物とほぼ同様な熱膨張性や黒鉛量であること、及び耐火物組織内にガラス相ないしはスラグ相を生成し、そのガラス相ないしはスラグ相が熱間で耐火物内部の発生応力を緩和することができる機能をも有するからである。
【0099】
さらには本発明の耐火物及びこの耐火物を配置した連続鋳造用ノズルは、従来のCaO含有耐火物よりも安価かつ容易に製造することができる。これは、本発明の耐火物が耐熱衝撃性に優れる本体用等のAl−黒鉛質耐火物とほぼ同様な熱膨張性や応力緩和能に優れる黒鉛量であることによる。このため、このような本体用等他の耐熱衝撃性に優れる耐火物と直接接触した構造としても、破壊に至るような相互の応力(または歪み)を発生することがないからである。
【0100】
また、本体部等他の耐熱衝撃性に優れる耐火物との一体的な構造とすることにより、操業中のノズルの安定性等も、いわゆる分割構造品よりも向上する。
【0101】
このように一体的な構造とすることができることにより、ノズルの製造においても通常の一体構造品と同様の方法を採ることができる。この通常の製造方法によると、いわゆる分割構造での、各部品を別個に製造してその後に各部品をモルタル等で接合する等の製造方法に比較して、製造工程の簡素化と原料コストの優位性等により、安価に製造することが可能になる。製造工程も短縮できる。
【0102】
また、従来のCaO含有耐火物において、とくに多量のCaO含有量の場合にはCaOの水和反応(消化)に起因する耐火物及びノズルの破壊等も大きな問題となっているが、本発明の耐火物は、CaO源を消化性の低い形態(シリケート、アルミネート等)として使用することができるので、CaOの水和反応に起因する耐火物及びノズルの破壊等も防止することができる。これにより、本発明の耐火物及びこの耐火物を配置した連続鋳造用ノズルのハンドリング、保管等も容易になり、また消化防止対策も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】溶鋼中回転試験の方法を示す説明図である。
【図2】溶鋼中回転試験後の供試料の横断面のイメージ図であり、(a)は付着の場合、(b)は溶損の場合を示す。
【図3】本発明の連続鋳造用ノズルの一例を示す断面図である(内孔面のみに本発明の耐火物を適用する場合)。
【図4】本発明の連続鋳造用ノズルの一例を示す断面図である(溶鋼との接触面全部に本発明の耐火物を適用する場合)。
【図5】本発明の耐火物につき、溶鋼中回転試験法による実験後供試料の稼働面付近の組織を示す断面図であり、(A)は従来技術(実施例の比較例1)の耐火物、(B)は本発明(実施例の実施例17)の耐火物である。
【図6】図5(B)の本発明の耐火物内部、稼働面の成分(稼働面から耐火物内部方向の距離に伴う成分割合の変化)を示す図である。
【図7】実施例Iの連続鋳造用ノズルの使用後の断面写真であり、(A)は従来技術(比較例1の耐火物)の連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)、(B)は本発明(実施例17の耐火物)の連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明の耐火物の製造方法について述べる。
【0105】
の原料としては硼酸、CaO、ROの原料としては、アルカリ土類酸化物、アルカリ金属酸化物など純度の高い試薬等が好ましい。しかし、B、CaO、ROの化合物も使用でき、たとえば、工業的に流通している、硼酸末、硼珪酸スラグ、工業用スラグ粉末、フリット粉末、合成スラグ粉末、ポルトランドセメント、Alセメント、硼素化合物、硼砂粉末、ドロマイト粉末、各種炭酸塩なども使用できる。また、スラグ化基材成分とスラグ化助剤成分とからなる珪酸アルカリ等も使用することができる。ただし、均一なスラグ化のためには予め成分が調整され溶融粉砕されたスラグフリット微粉末の使用が好ましい。
【0106】
また耐火物組織中でCaOと、B及びROのいずれか又は両方を合計で1.0質量%以上、15.0質量%以下、また(CaO)/(B+RO)の質量比が0.1以上3.0以下の条件を満たすための調整は、溶鋼中回転試験法の結果と対比させながら、前記の原料を調整することにより行うことができる。
【0107】
また、これらのスラグ化成分は耐火物組織中に均等に分散させることによりその効果を高めることができる。マトリクスとしては0.21mm程度以下の粒子サイズ領域とすることが好ましい。
【0108】
耐火物の骨材間のマトリクス中に均等にスラグ化成分をより均等に分散させるため、また早期にスラグ相を形成させるためには、これらのスラグ化成分の添加は、骨材サイズの約1/10以下(浸漬ノズルやロングノズルなどの連続鋳造用ノズル用の耐火物に使用される骨材粒子サイズは、組織の均質性と耐熱衝撃性、耐食性の観点から一般的に最大サイズが1mm程度である。本発明においても同様のサイズとすることができる。)の約0.1mm以下の粒子を90.0質量%以上含む粉末で添加し、分散させておくことが好ましい。
【0109】
骨材粒子としての炭素としては、鱗状黒鉛、土状黒鉛粒子、人造黒鉛等の六角網面の結晶が発達した黒鉛質骨材の使用が好適である。とくに、天然で産出する鱗状黒鉛の使用が耐熱衝撃性面で最も好ましい。黒鉛質骨材中の炭素含有量は90.0質量%以上(不可避の不純物を除き100質量%を含む)であることが好ましい。その理由は90.0質量%未満の純度であると、不純物相互又は不純物と他の原料粒子等との焼結反応等によって耐火物組織の高弾性率化等を招来し、耐熱衝撃性が低下するおそれがあるためである。
【0110】
これらの黒鉛質骨材は、炭素質結合組織間の充填材として添加することにより、構造体強度を高め、熱伝導率を上げ、熱膨張率を低下させる作用により耐熱衝撃性を改善できる。また、結合材を含め、炭素が酸化物等の間に均一に分散して存在することで、酸化物の焼結や低融化反応を抑制する効果があり鋳造途中の品質が安定化できる。このように均一に分散した状態で存在させるために、粒子サイズは2mm以下の黒鉛質骨材の使用が好ましい。しかし、粒子サイズが0.1mmより小さい黒鉛質骨材を主体に使用すると組織の均質性に優れる反面、耐熱衝撃性が低下する。また、粒子サイズが2mmより大きい場合は、耐熱衝撃性に優れる反面、組織中での成分の偏在を生じやすい。したがって、黒鉛質骨材の粒子サイズは0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。また、骨材粒子としての炭素として各種カーボンブラックを黒鉛に併用することができる。
【0111】
本発明の耐火物のAlは、その粒子サイズが0.2mm超のものが骨材全体に対して70.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90.0質量%以上である。その理由は、前記のスラグ相を形成する部分はできるだけそれら構成成分のみで耐火物のマトリクスに均一に分散している状態が好ましく、他の耐火物の構造や強度を維持する骨格としての他の粒子は、そのスラグ相に溶解又はスラグ成分と反応して低融物を生成すること等の組織劣化となる要因をできる限り小さくするためである。なお、Al骨材の一部をSiC、ZrO、ジルコニア化合物等のスラグ化成分の原料と反応しにくい耐火性骨材と骨材全体に対して約10.0質量%以下程度の範囲で置換することは可能である。ただし、前述したようにZrO成分はスラグ粘性を過度に高めAl介在物の付着を促進することがあるため、耐火物全体において6質量%以下に制限することが好ましい。
【0112】
ここで、前述のスラグ化成分及び炭素以外の残部については、前述のAl以外に、原料由来又は製造中に混入する等の不可避の成分を含むことがある。これらの不可避成分のうち、Fe、TiOなどの不純物は1.0質量%以下程度に抑制することが好ましい。半溶融状態のスラグ相の粘性を部分的に低下させる可能性等があるからである。
【0113】
これら粉体を混和して均一な粉体混合物にする。そして、この粉体混合物に、結合組織を担う炭素質原料としてのフェノール樹脂、ピッチ、タール等の結合材を適宜選択して添加し、均一に混練して成形用のはい土を得る。この結合材となる原料は粉体でも液体でもよいが、成形に適したはい土の特性に合わせてはい土の可塑性を調整することが重要である。
【0114】
次に、前記の本発明の耐火物のはい土から得られる耐火物を内孔側層に設置した連続鋳造用ノズルの製造方法について一例を述べる。
【0115】
前記の本発明の耐火物のはい土とは別に、外周側層すなわち連続鋳造用ノズルの本体用のはい土を作製する(一般的な製造方法でよい)。次に、成形用鋳型に内孔側層及び外周側層を形成するための、所定の大きさに仕切られた複数の空間を設け、成形用鋳型内の各空間にそれぞれ専用に作製したはい土を充填し、その空間の仕切りを除去する等によって隣接するはい土を直接接触させる。
【0116】
これらの直接接触させたはい土を、CIP装置により同時に加圧して一体的に成形する。得られた成形体を、非酸化雰囲気中又は表面に酸化防止処理を施した状態での酸化雰囲気中で、600℃以上1300℃以下での熱処理をする。なお、この熱処理をする工程に先立って、前記温度より低い温度で、揮発分の除去や樹脂の硬化等を目的とする独立した熱処理工程を含んでもよい。最後に通常の連続鋳造用ノズルの製造と同様に、適宜加工等を行う。
【0117】
前記の各工程の基本的な操作・作業方法、使用する装置等は、一般的な連続鋳造用ノズルの製造方法と同様でよい。
【0118】
なお、本発明の耐火物は、前述のとおり、連続鋳造用ノズルの内孔表面のみに内孔側層として配置することを一実施形態としている。しかし、内孔側層のみにとどまらず他の部分、例えば、底部、吐出孔、外面等の溶鋼と接触する部位、及び本体部分や連続鋳造用ノズル全体に使用することも可能である。
【0119】
本発明の耐火物を使用した連続鋳造用ノズルの製造方法についても、前述の内孔側層として他の材質との一体的な製造方法にとどまらず、(1)筒状の成形体として製造した管体を別に製造した本体部分の内孔に装着し、モルタル等で固定する方法や、(2)ノズル本体部分と内孔側層部分とを本発明の耐火物1種による単体として成形等を行う方法を採用することができる。
【実施例】
【0120】
次に、本発明の実施例(実験例を含む)を示す。なお、実施例の実験例においては、スラグ被覆層の形成、Al等の介在物の付着性について、前述の溶鋼中回転試験法により評価した。
【0121】
<実施例A>
実施例Aは、CaO、B、ROの効果について調査した実験例である。表1に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0122】
【表1】

【0123】
実施例1〜10に示すようにCaO成分を0.5質量%以上含有し、B及びROのいずれか又は両方の合量を0.5質量%以上含有する場合は、供試料稼働面でのスラグ被覆層の厚さは0.1mm以上、スラグ被覆層の被覆率50%以上を得ることができていることがわかる。また、供試料への付着速度又は供試料の溶損速度に関しても、実施例のいずれもが+30μm/分以下の付着速度となって、±30μm/分以下(溶損又は付着)の基準を満たすことができた。
【0124】
また、実施例3、実施例4、実施例5はROのR種をNa、K、Liと変化させた例である。これらの実施例はいずれも基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。すなわち、ROのR種Na、K、Liの違いは、本発明の効果に影響がないことがわかる。
【0125】
これら実施例に対し比較例1〜5は、スラグ被覆層の厚さのみ0.1mmを超える例があるものの、いずれの比較例も被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たしていない。すなわち、これら比較例では、Al等の介在物の付着を抑制するためのスラグ被覆層が十分に形成されていない。
【0126】
<実施例B>
実施例Bは、前記の実施例6の供試料を基本に、耐火物の主成分であるAl骨材の一部をMgOに置換した場合の効果について調査した実験例である。表2に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0127】
【表2】

【0128】
Al含有量が50質量%以上ある実施例11、実施例12、実施例6では、いずれの供試料も基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。しかし、Al含有量が47.4質量%である比較例6では基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たしていない。
【0129】
<実施例C>
実施例Cは、前記の実施例6の供試料を基本に、炭素含有量を変化させた場合の効果について調査した実験例である。表3に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0130】
【表3】

【0131】
炭素含有量が8.0質量%以上である実施例13、実施例6、実施例14では、いずれの供試料も基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。しかし、炭素含有量が8質量%未満の7.3質量%である比較例7では、スラグ被覆層の厚さが僅かに基準を満たしておらず、また被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たしていない。これは、BやROが揮発するための還元雰囲気が不足していたためと考えられる。また、炭素含有量が炭素量34.5質量%を超えた比較例8では、スラグ被覆層の厚さのみは基準を満たしたものの、被覆率の基準を満たすことができず、さらに溶損速度が大きくなって、溶損速度の基準を満たすことができなかった。これは、粘稠なスラグ被覆層が十分できずに耐火物表面の溶鋼に曝される部分が多くなって、炭素の溶鋼への溶解現象が発生したためと考えられる。
【0132】
なお、実施例13の炭素含有量は8.2質量%であるが、僅かに基準に及ばなかった比較例7の結果との相対的な関係から推測して、炭素含有量が8.0質量%以上である場合に基準を満たすことができると判断できる。(このような炭素含有量の領域では、他のスラグを構成する成分の含有量が同一であることから、スラグ被覆層の厚さが炭素含有量を変数として直線的に変化すると考えられる。そうすると、炭素含有量が8.0質量%以上である場合に基準を満たすことが推測できる。)
【0133】
<実施例D>
実施例Dは、CaO、B、ROの合計量を変化させた場合の効果について調査した実験例である。表4に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0134】
【表4】

【0135】
本実施例では、実施例6の供試料を基本に、CaO、B、ROの合計量につき最大16質量%までの範囲を確認した。CaO、B、ROの合計量が1.0質量%以上16質量%までの何れの実施例も基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。またCaO、B、ROの合計量が16.0質量%である比較例9では、溶損傾向とスラグ被覆層の厚さ及び被覆率が小さくなる傾向が観られ、被覆率はCではあるもののDに近い部分も観察された。このような傾向は、Al以外のスラグ相と反応する骨材等の他の成分(例えばZrO)を調整することで或る程度制御することが可能である。しかし、Al骨材を主体とする系においてスラグ被覆層の安定的維持を図る観点からは、CaO、B、ROの合計量は15質量%以下であることが好ましいので、本発明の耐火物は前記合計量を15質量%以下とする。
【0136】
ここで、この実施例Dの実験後の試料を用いて、本発明のスラグ被覆層の性状並びに本発明の耐火物内のCaO成分、B及びROの揮発性成分の挙動等について具体例を示す。
【0137】
図5は、溶鋼中回転試験法による実験後供試料の稼働面付近〜中央側までの組織を示す断面図であり、(A)は従来技術(比較例1)の耐火物、(B)は本発明(実施例17)の耐火物である。図5(A)中、丸囲み数字の1(以下、「丸囲み数字のn」を「丸n」と表記する。)は、従来技術のAl−黒鉛質の耐火物組織、丸2は前記丸1の稼働面の付着物層である。また、図5(B)中、丸3は本発明の耐火物組織、丸4はスラグ被覆層(熱間で粘稠な半溶融状態のスラグ相)、丸5は空間(付着物層がないことを示す)である。
【0138】
丸4のスラグ被覆層は、溶鋼との接触面(丸5)では凹凸状となっており、耐火物との界面では耐火物の気孔等の空隙内に浸透していることがわかる。このことは、スラグ被覆層が熱間で粘稠な半溶融状態のスラグ相であったことを示している。(低粘性であるほど溶鋼との接触面は直線状の平滑面になり、また粘性が高いほどと耐火物との界面では耐火物の気孔等の空隙内に浸透し難くなるが、本実施例はそのような傾向ではない。)
【0139】
また図6は、図5(B)の本発明の耐火物内部、稼働面の成分(稼働面から耐火物内部方向の距離に伴う成分割合の変化)を示す図である。図5(B)中のA,B,Cの位置(白抜きの丸印)が図6中のA,B,Cにそれぞれ対応する。
【0140】
図6中のDは、図5(B)の試料の中心位置における成分を示す。(この図6中のDは図5(B)に表示する顕微鏡撮影の範囲よりも下方にあるので、図5(B)中には示されていない。)
【0141】
なお、これらA,B,C,Dの成分値はいずれもマトリクスの一部について測定したものである。すなわち、これら位置の成分値は耐火物全体に対する割合ではないので、絶対値としての意味は乏しいが、各位置での相対的な差異を確認することができる。
【0142】
図6から、スラグ被覆層の中を除き、CaO成分の量は耐火物の稼働面から内部に亘ってほぼ同一であり、B及びROの揮発性成分の量は耐火物の稼働面側に近くなるほど漸次多くなっており、とくに稼働面付近で多くなっていることがわかる。
【0143】
また、スラグ被覆層の中ではB及びROの揮発性成分の量はさらに多くなっており、CaOは逆に少なくなっている。
【0144】
このようなB及びROの揮発性成分のスラグ被覆層内及び稼働面側での相対的な増加は、これら成分が耐火物組織内から揮発して稼働面側ないしスラグ被覆層内への移動したことを示している。またこのようなCaO量の変化は、スラグ被覆層の中でCaOが溶鋼由来成分(Al、S等)と反応して溶鋼中に流出したことを示している。
【0145】
<実施例E>
実施例Eは、質量比CaO/(B+RO)を変化させた場合の効果について調査した実験例である。表5に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0146】
【表5】

【0147】
本実施例では、実施例17の供試料を基本に、質量比CaO/(B+RO)につき最小0.1から最大3.2までの範囲を確認した。その結果、何れの実施例も基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。しかし、CaO成分が多い実施例23から比較例10での質量比の変化に伴い、溶損傾向とスラグ被覆層の厚さ及び被覆率が小さくなる傾向が観られる。また比較例10では被覆率はCではあるもののDに近い部分も観察された。Al骨材を主体とする系においてスラグ被覆層の安定的維持を図る観点からは、質量比CaO/(B+RO)最大は3.0質量%以下が好ましいので、本発明の耐火物は前記質量比を3.0質量%以下とする。
【0148】
<実施例F>
実施例Fは、通気率(1000℃非酸化雰囲気下での焼成後、常温での値)を変化させた場合の効果について調査した実験例である。表6に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0149】
【表6】

【0150】
本実施例では、実施例6の供試料を基本に、成形時の圧力を変えることで通気率を変化させた。通気率は前述に示す方法で測定及び算出した。その結果、何れの実施例も基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。しかし、通気率が4.4×10−3cm/(cmHO・sec)の実施例28ではスラグ被覆層の厚さが低下し、付着速度が大きくなる傾向が観られる。Al骨材を主体とする系においてスラグ被覆層の安定的維持を図る観点からは、通気率Kは4.0×10−3cm/(cmHO・sec)以下が好ましい。
【0151】
<実施例G>
実施例Gは、ZrO成分の含有量を変化させた場合の効果について調査した実験例である。表7に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0152】
【表7】

【0153】
本実施例では、実施例17の供試料を基本に、ZrO微粉骨材をAl骨材と置換することでZrO成分含有量を変化させた。その結果、ZrO成分の含有量が増加するに伴って、溶損傾向から付着傾向に移行するが、これらいずれの実施例も基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。しかし、ZrO成分の含有量が6.8質量%である実施例31は、ZrO成分の含有量が6.0質量%である実施例30よりも付着傾向が増しており、その含有量の変化(0.8質量%)に対する付着厚さの変化が大きいことがわかる。Al骨材を主体とする系においてスラグ被覆層の安定的維持を図る観点からは、ZrO成分の含有量は6.0質量%以下が好ましい。
【0154】
<実施例H>
実施例Hは、SiO成分の含有量を変化させた場合の効果について調査した実験例である。表8に、供試料の構成、各供試料の成分等、及び結果を示す。
【0155】
【表8】

【0156】
本実施例では、実施例32の供試料を基本に、SiO微粉骨材をAl骨材と置換することでSiO成分含有量を変化させた。本実施例で確認したSiO成分の含有量15質量%までの範囲では、いずれの実施例も基準内のスラグ被覆層の厚さ、被覆率、及び、溶損又は付着速度を満たすことができている。すなわち、このSiO成分含有量の範囲では本発明の効果に影響はないことがわかる。
【0157】
<実施例I>
実施例Iは、前記実施例17の供試料の耐火物を、比較例1の耐火物と共に実操業の溶鋼の連続鋳造に供した試験例である。
【0158】
実施例17の耐火物は、図4に示す構造の浸漬ノズルとした。すなわち浸漬ノズルのパウダー部を除く溶鋼と接触する面の全部に本発明の耐火物を配置した(図4の符号10)。なお、本体用の耐火物(符号12)は、比較例1の耐火物であって、本発明の耐火物(符号10)と本体用の耐火物(符号12)との間は同時成形により製造し、一体的構造となっている。
【0159】
比較例1の耐火物は、図4に示す本発明の耐火物領域(符号10)がなく、本体部(符号12)と一体となった構造の浸漬ノズルとした。すなわち浸漬ノズルのパウダー部を除く溶鋼と接触する面の全部に、比較例1の耐火物を配設した。
【0160】
実施例及び比較例のいずれの浸漬ノズルも、予熱等その他、通常の操業条件で使用した。実施例及び比較例の浸漬ノズルを、ガスバーナーによる予熱の後、鋳型サイズ350×450mm、鋳造速度0.5〜0.8m/minの条件で、カーボン濃度0.1〜0.4%のアルミキルド炭素鋼の連続鋳造に供した。
その結果、比較例のAl等付着物の最大厚さは22mm、付着速度は42μm/min(512分,10ch使用)であったのに対し、その比較例と同時に使用した実施例のAl等付着物の最大厚さは1.5mm、付着速度は3μm/min(512分,10ch使用)であった(図7参照)。さらに、実施例の浸漬ノズルには割れ等の損傷も発生しなかった。
【0161】
本実施例により、本発明の耐火物を配置した連続鋳造用ノズルは、Al介在物等の付着等防止を実現することができ、従来技術で提案されているようなCaO含有耐火物固有の高膨張に起因する割れの発生等の問題を解消し、さらには従来のCaO含有耐火物よりも安価かつ容易に製造することができ、操業においても分割構造(例えば内孔体と本体とが別々の部品からなる構造)よりも安定した構造のノズルを得ることができることがわかる。
【0162】
なお、本実施例では、浸漬ノズルのパウダー部を除く溶鋼と接触する面の全部に本発明の耐火物を配置した、図4に示す構造の浸漬ノズルとしたが、内孔面のみに本発明の耐火物(符号10)を配置した、図3に示す構造の浸漬ノズルとすることもできる。
【符号の説明】
【0163】
1 供試料
1a 供試料の下端面
1b 供試料の側端面
2 ホルダー
2a ホルダーの下端面
3 溶鋼
4 るつぼ
5 高周波発生装置
10 本発明の耐火物
11 連続鋳造用ノズルの内孔
12 Al−黒鉛質耐火物
13 ジルコニア−黒鉛質耐火物
丸1 従来技術のAl−黒鉛質の耐火物組織
丸2 前記丸1の稼働面の付着物層
丸3 本発明の耐火物組織
丸4 スラグ被覆層(熱間で粘稠な半溶融状態のスラグ相)
丸5 空間(付着物層がないことを示す)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaO成分を0.5質量%以上、B及びRO(RはNa、K、Liのいずれか)のいずれか又は両方の合量を0.5質量%以上、Alを50質量%以上、フリーの炭素を8.0質量%以上34.5質量%以下含有し、かつCaO、B及びROの合計が1.0質量%以上15.0質量%以下であり、質量比CaO/(B+RO)が、0.1以上3.0以下の範囲にある耐火物。
【請求項2】
1000℃非酸化雰囲気下での焼成後の常温での通気率が0.4×10−3ないし4.0×10−3cm/(cmHO・sec)の範囲にある請求項1に記載の耐火物。
【請求項3】
ZrO含有量が6質量%以下(ゼロを含む)である請求項1又は請求項2に記載の耐火物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物を、溶鋼と接する面の一部又は全部に配置した連続鋳造用ノズル。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物が溶鋼と接する面の一部又は全部に配置された層が、当該層と隣接する、前記耐火物以外からなる層と直接接合された一体的構造である請求項4に記載の連続鋳造用ノズル。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物を、溶鋼と接する面の一部又は全部に配設した連続鋳造用ノズルの製造方法であって、
連続鋳造用ノズル内の請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物からなる層の一部又は全部を、その成形に供するはい土と、当該層と隣接する前記耐火物以外からなる層の成形に供するはい土とを隣接させて同時に加圧して、一体的構造の成形体とする工程を含む連続鋳造用ノズルの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐火物を、溶鋼と接する面の一部又は全部に配設した連続鋳造用ノズルを使用して、連続鋳造用ノズル壁面へのAl介在物等の介在物の付着を防止する連続鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−230168(P2011−230168A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103809(P2010−103809)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】