説明

耐火物の吹付システムおよび耐火物の吹付方法

【課題】簡便な構成により、リバウンド材の安定した回収、再使用を可能にする、耐火物の吹付システムおよび耐火物の吹付方法を提供する。
【解決手段】吹付ノズル6は被施工体16へ耐火物を吹き付ける。吹付ノズル6は第1搬送管20の先端に接続され、第1搬送管20内には圧縮気体が吹付ノズル6へ向けて流通している。耐火物送出装置4は投入された耐火物を第1搬送管20へ送出する。第2搬送管30内にも圧縮気体が流通している。リバウンド材回収装置5は、吹き付けられた耐火物のうち被施工体16に接着せず落下したリバウンド材12が投入され、リバウンド材12を第2搬送管30へ送出する。リバウンド材添加器40は、第1搬送管20に介在されるとともに第2搬送管30の搬送方向下流側端部に接続され、第1搬送管20内を搬送される耐火物に、第2搬送管30内を搬送されたリバウンド材12を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火物を吹き付け施工するための吹付システムおよび吹付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面等への耐火物の施工方法として、吹付システムを用いて耐火物を施工部位に吹き付ける吹付工法が広く使用されている。吹付工法は、枠組不要、複雑な部位へ施工可能、短施工時間等の利点を有している。
【0003】
このような吹付工法に使用される吹付システムは、材料供給装置および吹付装置を含む。材料供給装置は、投入されたプラスチック耐火物等の吹付材料を一定の切り出し速度で吹付装置へ供給する。また、吹付装置は、搬送ホースおよび搬送ホースの先端に取り付けられた吹付ノズルを備える。材料供給装置から供給された吹付材料は、搬送ホース内をエア圧送されて、吹付ノズルから被施工体へ吹き付けられる。材料供給装置および吹付装置は比較的大きく、ある程度の設置スペースが必要である。そのため、施工場所に設置スペースを確保できないことが多く、材料供給装置および吹付装置は施工場所とは離れた位置に設置されることが多い。
【0004】
ところで、吹付工法は、上述の利点を有するが、施工部位へ吹き付けた材料が施工部位に接着せずに跳ね飛ばされて落下する材料、すなわちリバウンド材(ロス)が発生するという問題がある。特に、製鋼用に使用されるプラスチック耐火物においては、施工部位への接着率は70%程度であり、約30%ものリバウンド材が発生することになる。そのため、このようなリバウンド材は回収され、材料供給装置において、新しい材料(バージン材)に一定割合で混合することにより吹付施工に再利用されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
例えば、特許文献1は、耐火材のリバウンド材を、吸引パイプを通じてサイクロン吸引部に吸引して回収し、回収したリバウンド材を連続的に定量切出しし、コンベア上でバージン材と混合して吹付施工に再利用する技術を開示している。特許文献2は、取鍋内において、多関節アームにより吸引ノズルを側壁下部の適宜方向に向けて、旋回台を回転させることによりリバウンド材を吸引し、ホースを通じて溶湯排出口から外部に搬送して分離器においてリバウンド材を分離回収するリバウンド材の回収装置を開示している。特許文献3は、吸引と圧送とを併用して、リバウンド材を吹付装置まで搬送して再利用する切り出しエジェクタを開示している。切り出しエジェクタは、リバウンド材を吸引と補助用のエア圧送を併用して搬送するため小型化が可能になっている(例えば、特許文献3 段落0013参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−175894号公報
【特許文献2】実開昭62−086960号公報
【特許文献3】特開2009−243868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1が開示する技術では、施工現場から材料供給装置までリバウンド材を吸引によって回収・搬送するために必要なエア量を確保するため、吸引装置が大型になり、施工現場近傍に装置を設置することは困難である。また、施工現場近傍に装置を設置することができない結果、施工現場から材料供給装置までリバウンド材を搬送する吸引ホースが長くなり、リバウンド材によって閉塞されるというリスクもある。特に、プラスチック耐火物等の可塑性材料(例えば、粘土)を含む耐火物は、ホース内で、壁面への衝突に起因する付着が発生しやすく、加えて、リバウンド材は足で踏み固められたり、トリミングされたりして塊状になることがあるため閉塞リスクがさらに増大する。ホ−スに閉塞が発生すると、閉塞を解消するまでリバウンド材を搬送できず、再利用することもできない。加えて、閉塞解消のための作業が必要であり、施工効率が低下することになる。特許文献2が開示する技術も、吸引装置が大型になるため、特許文献1と同様の問題がある。
【0008】
また、特許文献3が開示する技術では、回収装置本体に大型の吸引装置を設置する必要がないため、施工現場近傍に回収装置を設置できる。しかしながら、特許文献1、2と同様に、回収したリバウンド材を吹付装置まで搬送する必要があり、搬送ホースがリバウンド材によって閉塞されるというリスクがある。
【0009】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、簡便な構成により、リバウンド材の安定した回収、再使用を可能にする、耐火物の吹付システムおよび耐火物の吹付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明に係る耐火物の吹付システムは、吹付ノズル、第1搬送管、耐火物送出装置、第2搬送管、リバウンド材回収装置およびリバウンド材添加器を備える。吹付ノズルは被施工体へ耐火物を吹き付ける。当該吹付ノズルは第1搬送管の先端に接続される。また、第1搬送管内は、搬送キャリアである圧縮気体が吹付ノズルへ向けて流通している。耐火物送出装置は、投入された耐火物を第1搬送管へ送出する。また、第2搬送管内にも、搬送キャリアである圧縮気体が流通している。リバウンド材回収装置には、吹き付けられた耐火物のうち被施工体に接着せず落下したリバウンド材が投入される。また、リバウンド材回収装置は投入されたリバウンド材を第2搬送管へ送出する。リバウンド材添加器は、第1搬送管に介在されるとともに第2搬送管の搬送方向下流側端部に接続される。また、リバウンド材添加器は、第1搬送管内を搬送される耐火物に、第2搬送管内を搬送されたリバウンド材を添加する。
【0011】
この耐火物の吹付システムでは、リバウンド材回収装置に投入されたリバウンド材は、圧送により第2供給管内を搬送されるため、従来技術のような大掛かりな吸引装置は不要である。そのため、リバウンド材回収装置の小型化が容易であり、施工現場付近にリバウンド材回収装置を設置することができる。また、第1搬送管の途中、すなわち、耐火物を第1搬送管に送出する耐火物送出装置と吹付ノズルとの間で、第1搬送管を搬送されている耐火物にリバウンド材を添加する構成であるため、リバウンド材添加器を吹付ノズルに近づけて設けることで、リバウンド材回収装置からリバウンド材添加器までの搬送距離を短くすることができる。その結果、リバウンド材による搬送管の閉塞を抑制することができる。さらに、比較的、簡単な構成であるため低コストで実現可能である。
【0012】
例えば、上記リバウンド材添加器には、第1搬送管に介在される主管部と、当該主管部に連通し、第2搬送管が接続される側管部とを有する構成を採用することができる。この構成において、側管部は、外側管および内側管を備える。外側管は主管部に支持される。また、内側管は、下流側端部を遊動端として外側管に支持されている。第2搬送管内を搬送されたリバウンド材は内側管の内部を通過する。
【0013】
このリバウンド材添加器によれば、耐火物が主管部内を搬送されるとき、あるいはリバウンド材が側管部内を搬送されるときに、外側管に固定されていない内側管の下流側端部が振動する。当該振動により、内側管へのリバウンド材の付着を抑制でき、閉塞が発生する可能性の高い、第1搬送管と第2搬送管との接続部において、内部にリバウンド材が付着することを防止できる。振動をより好適に発生する観点では、内側管の遊動端と、外側管との間に隙間を設けることが好ましい、また、ゴム弾性を有する弾性材料により内側管を構成することもできる。
【0014】
一方、他の観点では、本発明は、耐火物の吹付方法を提供することもできる。本発明に係る耐火物の吹付方法では、まず、搬送キャリアである圧縮気体が流通する第1搬送管に耐火物が送出される。当該第1搬送管内を搬送された耐火物は、吹付ノズルを介して被施工体へ吹き付けられる。吹き付けられた耐火物のうち被施工体に接着せず落下したリバウンド材は回収される。回収したリバウンド材は、搬送キャリアである圧縮気体が流通する第2搬送管に送出される。第1搬送管内を搬送される耐火物には、第1搬送管の中間部において、第2搬送管を搬送されたリバウンド材が添加される。そして、リバウンド材が添加された耐火物は、吹付ノズルを介して被施工体へ吹き付けられる。
【0015】
この耐火物の吹付方法によれば、リバウンド材による搬送管の閉塞を抑制することができ、効率よくリバウンド材を再利用できる。そのため、施工コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リバウンド材を回収するホース内の閉塞リスクを軽減し、リバウンド材を安定して再使用することができる。また、非常に簡便な構成で実現可能であるため、施工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における耐火物の吹付システムを示す図
【図2】本発明の一実施形態における耐火物の吹付システムに適用されるリバウンド材添加器の構造を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下の実施形態では、転炉、溶融還元炉、電気炉、取鍋等の溶融金属容器や各種工業炉等の内部にプラスチック耐火物を吹付施工する事例により本発明を具体化している。なお、プラスチック耐火物は耐火性骨材、耐火粘土および少量の粘着材等を含み、水を適当量添加して混練し、適度な軟らかさに調製したものが材料として使用されている。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における耐火物の吹付システムを示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る吹付システム10は、耐火物送出装置(吹付装置)4に投入されるプラスチック耐火物と、リバウンド材回収装置5に投入されるリバウンド材とを使用して、耐火物を被施工体16に吹き付ける構成を有する。
【0020】
なお、本実施形態では、耐火物送出装置4に投入される耐火物は、未使用品(以下、バージン材という。)である。ここでバージン材とは、吹付施工のために調製された耐火物であって、調製後に使用されておらず、吹付施工にあたって再調製の必要もない耐火物を意味する。また、リバウンド材12は、被施工体16に吹き付けられた耐火物のうち被施工体16に接着せず落下した耐火物を指す。図1では、被施工体16として炉15の内壁面を例示している。
【0021】
図1に示すように、コンプレッサ3から供給される圧縮空気が流通する第1搬送管20に耐火物送出装置4が介設されている。第1搬送管20は、耐火物送出装置4より上流側の圧縮気体搬送ホース21、および耐火物送出装置4より下流側の耐火物搬送ホース22により構成されている。耐火物搬送ホース22の下流側端部には、被施工体16へ耐火物を吹き付ける吹付ノズル6が接続されている。なお、圧縮気体搬送ホース21および耐火物搬送ホース22は、耐火物送出装置4を介して連通している。
【0022】
例えば、耐火物送出装置4は、材料送出部41と、当該材料送出部41の上方に配置された材料投入部42とを有し、材料送出部41が材料投入部42に投入されたバージン材を、圧縮気体搬送ホース21と耐火物搬送ホース22との連結部に送出する。材料送出部41には、ロータリーバルブ等のエアシール性に優れる構造を採用することが好ましい。これにより、材料投入部42側への圧縮空気の流出を防止することができる。また、材料投入部42にはホッパを採用することができる。耐火物送出装置4から送出されたバージン材は圧縮空気により耐火物搬送ホース22内を圧送されて吹付ノズル6から噴出する。特に限定されないが、本実施形態では、耐火物搬送ホース22として、内径50mm、長さが60m、壁面厚10mmのホースを使用している。
【0023】
耐火物送出装置4へのバージン材の投入は材料供給装置2が行う。材料供給装置2は、フレキシブルコンテナバック1から投入されたバージン材を一定の切り出し速度で切り出して耐火物送出装置4へ投入する。このような材料供給装置2は、特に特殊な構成を有するものではなく、従来から使用されている公知の装置を使用することができる。
【0024】
一方、コンプレッサ3から供給される圧縮空気が流通する第2搬送管30にリバウンド材回収装置5が介設されている。第2搬送管30は、リバウンド材回収装置5より上流側の圧縮気体搬送ホース31、およびリバウンド材回収装置5より下流側のリバウンド材搬送ホース32により構成されている。リバウンド材搬送ホース32の下流側端部には、後述するリバウンド材添加器40が接続されている。なお、圧縮気体搬送ホース31およびリバウンド材搬送ホース32は、リバウンド材回収装置5を介して連通している。
【0025】
リバウンド材回収装置5は、圧縮気体搬送ホース31とリバウンド材搬送ホース32との連結部にリバウンド材を送出する。送出されたリバウンド材は圧縮空気によりリバウンド材搬送ホース32内を圧送されてリバウンド材添加器40へ到達する。特に限定されないが、本実施形態では、リバウンド材搬送ホース32として、φ32mm、長さが10m、壁面厚7.5mmのホースを使用している。
【0026】
なお、リバウンド材添加器40から吹付ノズル6までの耐火物搬送ホース22の長さは、3m〜20m程度であることが好ましい。3mよりも短い場合、作業者による吹付ノズル6のハンドリングに影響(作業範囲が制限される)があるため好ましくない。また、20mよりも長い場合、リバウンド材添加器40における搬送圧力が高くなる結果、リバウンド材をリバウンド材添加器40まで搬送するための要する圧力が高くなるため好ましくない。本実施形態では、リバウンド材添加器40から吹付ノズル6までの耐火物搬送ホース22の長さは10mとしている。
【0027】
リバウンド材回収装置5には、例えば、施工現場において、人力または機力により回収されたリバウンド材12が投入される。なお、図1に示すように、本実施形態では、リバウンド材回収装置5が施工現場である炉15内に設置されているため、回収したリバウンド材12の投入作業を比較的容易に実施できる。特に限定されないが、本実施形態では、人手による炉15内への搬入が可能となるように、リバウンド材回収装置5の幅を500mm、高さを650mmとしている。
【0028】
特に限定されないが、本実施形態のリバウンド材回収装置5は、リバウンド材送出部51と、当該リバウンド材送出部51の上方に配置されたリバウンド材投入部52とを有する。耐火物送出装置4と同様に、リバウンド材投入部52にはホッパを採用することができ、リバウンド材送出部51には、ロータリーバルブ等のエアシール性に優れる構造を採用することができる。なお、リバウンド材12が塊状で回収される場合は、リバウンド材投入部52とリバウンド材送出部51との間に切り出しコンベア53を配置することが好ましい。切り出しコンベア53は、リバウンド材投入部52に投入されたリバウンド材12を一定の切り出し速度で切り出してリバウンド材送出部51へ投入する。また、リバウンド材回収装置5へのリバウンド材12の投入にスコップ等を使用した人力を採用する場合は、リバウンド材投入部52の投入口に金網を設置し、ホッパゲート等で詰まりを発生させる大きな塊状のリバウンド材12を予め除去することが好ましい。
【0029】
続いて、リバウンド材添加器40について説明する。図2は、本実施形態におけるリバウンド材添加器40の構造を示す部分断面図である。図1に示すように、リバウンド材添加器40は、吹付ノズル6と耐火物送出装置4との間の耐火物搬送ホース22に介在する状態で設けられる。
【0030】
図2に示すように、リバウンド材添加器40は、主管部41と、当該主管部41の外周面に設けられ、主管部41に連通する側管部42とを備える。主管部41は、耐火物搬送ホース22の一部を構成している。また、側管部42には、リバウンド材搬送ホース32の下流側端部が接続される。
【0031】
特に限定されないが、本実施形態では、主管部41の両端に、リバウンド材添加器40より上流側の耐火物搬送ホース22の下流側端部に設けられた継手と嵌合する継手47、およびリバウンド材添加器40より下流側の耐火物搬送ホース22の上流側端部に設けられた継手と嵌合する継手48がそれぞれ設けられており、これらの継手を介した連結により耐火物搬送ホース22が構成されるようになっている。同様に、側管部42の端部には、リバウンド材搬送ホース32の下流側端部に設けられた継手35と嵌合する継手46が設けられており、これらの継手を介してリバウンド材搬送ホース32とリバウンド材添加器40とが連結されるようになっている。
【0032】
また、側管部42は、外側管44および内側管45を備える。リバウンド材搬送ホース32内を搬送されたリバウンド材12は内側管45の内部を通過する。外側管44は、主管部41の外周面および外側管44の外周面に接する支持部材(ケーシング)43によって主管部41に固定されている。支持部材43は、例えば、鉄やアルミニウム等からなる金物により構成することができる。支持部材43と、主管部41および外側管44とは、例えば、ボルトやねじ等により固定することができる。なお、支持部材43は、外側管44を主管部41に固定可能であれば、他の構成を採用可能である。
【0033】
内側管45は、その上流側端部45bが外側管44に支持される。こでは、内側管45の上流側端部45bにフランジ状の鍔部を設け、当該鍔部を、継手46のフランジ部46aと、当該フランジ部46aと外側管44との間に設置されるリング状のライナー押さえ46bとで、挟み込むことで内側管45を外側管44に固定している。なお、内側管45の下流側端部45aは外側管44に固定されておらず、遊動可能に構成されている。以下、上流側端部45bを固定端45b、下流側端部45aを遊動端45aという。
【0034】
特に限定されないが、本実施形態のリバウンド材添加器40は、主管部41の外周面に、主管部41の軸心に対して軸心が傾斜した貫通孔49が設けられており、当該貫通孔49に外側管44が挿入される構成を有する。ここでは、外側管44の挿入側端部は、貫通孔49への挿入時に主管部41の内壁面と面一になる形状を有している。また、貫通孔49は、リバウンド材添加器40より上流側の耐火物搬送ホース22の軸心(継手47の軸心)と、リバウンド材搬送ホース32の軸心(継手46の軸心)とのなす角θが鋭角となる状態で設けられる。角θは、例えば、10度〜45度の範囲内とすることが好ましく、15度〜25度の範囲内とすることがより好ましい。このような角度を採用することで、耐火物搬送ホース22内(主管部41内)を搬送されるバージン材の進行を阻害することなくリバウンド材を良好に混合できるとともに、バージン材の側管部42への進入を防止できる。ここでは、角θを20度としている。
【0035】
以上のような構成を有するリバウンド材添加器40では、バージン材が主管部41内を搬送されるとき、あるいはリバウンド材が側管部42内を搬送されるときに、搬送キャリアである圧縮空気の移動に伴って内側管45の遊動端45aが振動する。本実施形態のリバウンド材添加器40のようにト字状に搬送管が合流する構成では、合流部において異方向に進行する材料が互いに衝突するため、合流部の近傍の搬送管内面に、分岐および合流のない搬送管の直進部に比べて多くの材料が衝突する。特に、本実施形態のリバウンド材添加器40では、主管部41を直進するバージン材に側管部42からリバウンド材が進入するため、主管部41の搬送方向下流側に位置する側管部42内壁に多くのリバウンド材が衝突する。また、本実施形態では、リバウンド材は可塑性材料である粘土を含むため内壁に付着しやすく、また、リバウンド材は、作業者の足で踏まれるなどして塊状になっていることがあり、閉塞が発生しやすい。しかしながら、本実施形態のリバウンド材添加器40では、上述のように、内側管45の遊動端45aが振動するため、内壁へのリバウンド材の付着を抑制することができる。加えて、仮に、付着した場合でも振動により離脱されるため、リバウンド材による内側管45の閉塞を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、遊動端45aと外側管44との間に隙間を設けている。このような隙間を設けることにより、遊動端45aがより容易に振動できるため、リバウンド材による内側管45の閉塞をより確実に防止することができる。例えば、隙間の間隔(外側管44の内壁面に垂直な方向)は、1mm〜20mm、より好ましくは、5mm〜10mmとすればよい。
【0037】
このような隙間は、任意の手法により設けることができる。例えば、外側管44の内径を均一に構成するとともに、内側管45の固定端45bの外径より内側管45の遊動端45aの外径を小さくする構成を採用することにより実現できる。あるいは、内側管45の外径を均一に構成するとともに、外側管44の上流側内径よりも下流側内径を大きくする構成を採用することにより実現できる。本実施形態では、固定端45bから遊動端45aに向かって外径および内径が徐々に小さくなる内側管45を、内径が均一な外側管44に挿入した構成になっている。例えば、遊動端45aの内径を固定端45bの内径の7〜9割程度に設定すると、より容易に遊動端45aを振動させることができる。なお、ここでは、遊動端45aの内径は、内側管45の軸心に垂直な面内、かつ断面の全周に壁面が存在する端部(図2中の位置A)における内径を意味する。
【0038】
内側管45は、遊動端45aが遊動可能であれば任意の材料により構成することができる。リバウンド材の付着をより抑制する観点では、内側管45は弾性体で構成することが好ましい。内側管45を弾性体で構成することにより、リバウンド材が衝突してもその衝撃を緩和できるため、付着をより抑制することができる。このような弾性体としては、ゴムやプラスチック(軟質プラスチック)等のゴム弾性を有する材料を使用することができる。なお、この場合、内側管45の内径の変動を伴う振動が発生する。
【0039】
弾性体としてゴムを使用する場合、例えば、耐摩耗性ゴム、硬質ゴム、軟質ゴム、合成ゴム、天然ゴム等を適宜選択することができる。付着性や弾性、耐摩耗性の観点では、天然ゴムを使用することがより好ましい。例えば、厚さ1mm〜10mm、より好ましくは厚さ3mm〜5mmの天然ゴムを使用することができる。
【0040】
本実施形態では、厚さ4mmの天然ゴムにより内側管45を構成し、遊動端45aの内径を31mm、固定端45bの内径を38mmとしている。また、外側管44の内径は50mmとしているため、遊動端45aにおける内側管45と外側管44との間の隙間の間隔は、5mm(位置A)〜8mm(最先端)程度である。
【0041】
なお、主管部41と外側管44には、例えば、ゴムなど、圧送に使用される公知の材質を適宜使用することができる。
【0042】
以上のような構成を有するリバウンド材添加器40においてリバウンド材が添加されたバージン材(以下、混合材という。)は、耐火物搬送ホース22内を圧送され、吹付ノズル6から被施工体16に向けて吹き付けられる。吹き付けられて被施工体16に付着した混合材は施工体11を構成し、被施工体16に付着せず落下した混合材は、リバウンド材12として、再度、回収・再利用される。
【0043】
以上の構成を有する吹付システム10では、リバウンド材回収装置5に投入されたリバウンド材12は、圧送によりリバウンド材搬送ホース32内を搬送されるため、従来技術のような大掛かりな吸引装置を設ける必要がない。そのため、上述のように、非常に小型のリバウンド材回収装置5を構成でき、施工現場である炉15内にリバウンド材回収装置5を設置することができる。また、施工現場にリバウンド材回収装置5を設置することができるため、バージン材にリバウンド材を添加するリバウンド材添加器40を吹付ノズル6に近づけて設けることで、リバウンド材回収装置5からリバウンド材添加器40までの搬送距離を短くすることができる。すなわち、リバウンド材搬送ホース32を、従来に比べて極めて短くすることができるため、リバウンド材搬送ホース32の閉塞リスクを著しく軽減することができる。その結果、低コストでの吹付施工を実現することができる。
【0044】
また、上述のリバウンド材添加器40を採用することにより、閉塞が発生する可能性が高い、耐火物搬送ホース22とリバウンド材搬送ホース32との接続部における、搬送管内部へのリバウンド材の付着を確実に防止することができる。
【0045】
ここで、以上の構成を有する吹付システム10により吹付施工を実施する場合の手順について簡単に説明する。
【0046】
まず、リバウンド材回収装置5が炉15内に搬入され、吹付システム10を構成する各部が図1に示す状態に設置される。
【0047】
被施工体16に対して耐火物の吹き付けを開始する時点では、当然、リバウンド材12は存在しない。そのため、吹き付け開始から、継続的に再利用可能な程度にリバウンド材12が蓄積するまでの期間は、耐火物送出装置4から送出され、耐火物搬送ホース22内を吹付ノズル6まで圧送されたバージン材のみが被施工体16に吹き付けられる。この場合であっても、上述の構造を有するリバウンド材添加器40では、耐火物搬送ホース22内を高い流速で移動するバージン材が側管部42に流入することがない。また、一部のバージン材は、側管部42の、主管部41の搬送方向下流側に位置する内壁に衝突するが、リバウンド材添加器40では、上述のように、バージン材が主管部41内を搬送されるときでも内側管45の遊動端45aが振動する。そのため、バージン材のみを搬送する状況下であっても、閉塞等の不具合は生じない。
【0048】
当該バージン材の吹き付けにより、継続的に再利用可能な程度にリバウンド材12が蓄積すると、リバウンド材12は、リバウンド材回収装置5を通じて、所定の切り出し速度でリバウンド材搬送ホース32に送出される。リバウンド材搬送ホース32内を圧送されることによりリバウンド材添加器40に到達したリバウンド材12は、耐火物搬送ホース22内を圧送されているバージン材に添加される。そして、耐火物搬送ホース22内を吹付ノズル6まで圧送された当該混合材が被施工体16に吹き付けられる。上述のように、被施工体16に付着せず落下した混合材は、リバウンド材12として、再度、回収・再利用される。
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、搬送管に閉塞を発生させることなく、リバウンド材を添加した耐火物を吹き付けることができ、効率よくリバウンド材を再利用できる。その結果、施工コストを低減することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、プラスチック耐火物の吹付施工について説明したが、吹き付け可能なキャスタブル耐火材等の他の不定形耐火物にも本発明を適用することができる。また、上記では、コンプレッサが供給する圧縮空気によりバージン材およびリバウンド材を圧送したが、搬送キャリアとして使用可能であれば、空気以外の気体を圧送に使用することを妨げない。さらに、耐火物送出装置、コンプレッサ、吹付ノズル等の構成も特に限定されるものではなく、任意の構成のものを使用することができる。加えて、第1および第2搬送管は、金属管等の剛性を有するパイプや柔軟性を有するホース等、任意の材質の配管を採用できる。なお、配管の断面形状は円形であることが好ましいが、他の断面形状を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、簡便な構成により、リバウンド材の安定した回収、再使用を可能であり、耐火物の吹付システムおよび耐火物の吹付方法として有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 フレキシブルコンテナバック
2 材料供給装置
3 コンプレッサ
4 耐火物送出装置
5 リバウンド材回収装置
6 吹付ノズル
10 吹付システム
11 施工体
12 リバウンド材
15 炉
16 被施工体
20 第1搬送管
21 圧縮気体搬送ホース
22 耐火物搬送ホース
30 第2搬送管
31 圧縮気体搬送ホース
32 リバウンド材搬送ホース
40 リバウンド材添加器
41 主管部
42 側管部
44 外側管
45 内側管
45a 遊動端
45b 固定端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火物の吹付システムであって、
被施工体へ耐火物を吹き付ける吹付ノズルと、
先端に前記吹付ノズルが接続され、搬送キャリアである圧縮気体が前記吹付ノズルへ向けて流通する第1搬送管と、
投入された耐火物を、前記第1搬送管へ送出する耐火物送出装置と、
搬送キャリアである圧縮気体が流通する第2搬送管と、
吹き付けられた耐火物のうち前記被施工体に接着せず落下したリバウンド材が投入され、投入された前記リバウンド材を前記第2搬送管へ送出するリバウンド材回収装置と、
前記第1搬送管に介在されるとともに前記第2搬送管の搬送方向下流側端部に接続され、前記第1搬送管内を搬送される耐火物に、前記第2搬送管内を搬送されたリバウンド材を添加するリバウンド材添加器と、
を備える、耐火物の吹付システム。
【請求項2】
前記リバウンド材添加器は、
前記第1搬送管に介在される主管部と、
前記主管部に連通し、前記第2搬送管が接続される側管部と、
を備え、
前記側管部が、
前記主管部に支持される外側管と、
下流側端部を遊動端として前記外側管に支持され、前記第2搬送管内を搬送されたリバウンド材が内部を通過する内側管と、
を備える、請求項1記載の耐火物の吹付システム。
【請求項3】
前記内側管の遊動端と、前記外側管との間に隙間を備える、請求項2記載の耐火物の吹付システム。
【請求項4】
前記内側管が、ゴム弾性を有する弾性材料からなる、請求項2または3記載の耐火物の吹付システム。
【請求項5】
搬送キャリアである圧縮気体が流通する第1搬送管に耐火物を送出する工程と、
前記第1搬送管内を搬送された耐火物を、吹付ノズルを介して被施工体へ吹き付ける工程と、
吹き付けけられた耐火物のうち前記被施工体に接着せず落下したリバウンド材を回収する工程と、
前記回収したリバウンド材を、搬送キャリアである圧縮気体が流通する第2搬送管に送出する工程と、
前記第1搬送管の中間部において、前記第1搬送管内を搬送される耐火物に、前記第2搬送管を搬送されたリバウンド材を添加する工程と、
前記リバウンド材が添加された耐火物を、前記吹付ノズルを介して被施工体へ吹き付ける工程と、
を有する、耐火物の吹付方法。
【請求項6】
前記リバウンド材の添加が、
前記第1搬送管に介在される主管部と、
前記主管部に連通し、前記第2搬送管が接続される側管部と、
を備え、
前記側管部が、
前記主管部に支持される外側管と、
下流側端部を遊動端として前記外側管に支持され、前記第2搬送管内を搬送されたリバウンド材が内部を通過する内側管と、
を備える、リバウンド材添加器によりなされる、請求項5記載の耐火物の吹付方法。

【図1】
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【図2】
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