説明

耐火物の連続混練方法、耐火物の連続施工方法、耐火物の連続混練装置、及び耐火物の連続施工装置

【課題】不定形耐火物の連続混練方法とその補修工法に関して、耐火原料からの直接混練を連続的に行うことを可能とする混練方法および吹き付け施工方法と、その装置を提供する。
【解決手段】耐火原料と水を連続的に供給しながら、スラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練方法であって、材料搬送工程と材料混練工程から構成され、材料搬送工程では、連続的に供給された耐火原料と水を、混合手段により、混合・分散させながら、下流へ搬送させ、材料混練工程では、材料搬送工程から搬送された耐火原料と水の混合物を、混練手段により、混練させながら下流に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属容器、溶融金属処理装置、高温雰囲気炉の内張りライニング、あるいはその補修手段として用いられる不定形耐火物の連続混練方法、および連続施工方法と、そのための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融金属容器、溶融金属処理装置にライニングする不定形耐火物は、耐火原料と水をバッチ式の混練機(ミキサー)に所定量投入して、所定時間混練した後、排出して流し込み施工や吹き付け施工を行っている。混練機(ミキサー)による混練が終了すると、次のバッチを混練する非連続的な混練を行っているのが一般的である。そのため、流し込み施工や吹き付け施工は混練タイミングに合わせて、一時的に施工作業を中断させる必要があった。
【0003】
一方、不定形耐火物の施工方法として、乾式吹き付け施工方法と湿式吹き付け施工方法があるが、それぞれの長所を考慮して用途に応じて使用されている。
乾式吹き付け施工は、吹き付けノズル先端部において乾粉の不定形材料に混練水を添加する方式であるため、作業終了後にミキサーの洗浄作業など、後片付けがほとんど不要であり、熱間で稼動中の耐火物設備に対する、現場での補修施工に適している。
【0004】
しかし、乾式吹き付け施工の欠点は、ノズル先端部において水を添加するため、耐火原料と添加水の混ざりが悪く、その結果、添加水分量をかなり多くした状態で使用しているのが一般的である。
また、耐火原料と水の混ざりが悪いため、施工中に耐火原料が粉塵として発生しやすい。
さらに、添加水分量が多いと、乾燥後の施工体の組織は緻密質ではなく、多孔質な組織になり易いため、施工体の強度も低く、溶融金属との耐食性も低いため、吹き付け施工体の耐用性は充分とはいえない。
【0005】
一方、湿式吹き付け施工方法は、事前に不定形耐火物と水を混練するため、前述の乾式吹き付け施工より添加水分量を減少させることが可能であり、耐火原料と混練水との混ざりも良いことから、施工中の粉塵も少なく、施工体の組織も緻密質な組織が得られ、耐用性も乾式吹き付け施工方法に比べ優れる。
このことより、近年、不定形耐火物と水を事前に混練機(ミキサー)で混練したスラリー状の不定形耐火物をコンクリートポンプで圧送しながら、ノズル先でエアーと急結剤を導入して吹き付ける工法が発達してきた。
【0006】
図6に従来の湿式吹き付け施工装置を示しているが、混練水分を添加し、予め混練した不定形耐火物を圧送ポンプ9から搬送ホース、圧送管10を介して、ノズル11に移送し、急結剤槽12からの急結剤をエアーコンプレッサー13の圧搾空気を用いてノズル11内に添加し、吹き付ける施工方法である。
但し、湿式吹き付け施工方法の問題点としては、事前に不定形耐火物と水とを混練するため、事前の混練作業が必要であり、施工後に混練機(ミキサー)やコンクリートポンプで圧送する際に使用する搬送ホースの洗浄作業等の後片付け作業が発生するため、乾式吹き付け施工方法と比べると、簡便な施工方法とはいえず、熱間で稼動中の耐火物設備に対する、現場における吹き付け補修施工については、乾式吹き付け施工の方が使い易い。
【0007】
したがって、湿式吹き付け補修施工の適用は主に冷間補修、すなわち耐火物設備の稼動を終了させた後の、整備作業場での補修などに限られる。
また、湿式吹き付け施工方法は、添加水分に関しても、乾式補修施工に比べると低水分化が可能であるが、従来の不定形耐火物の流し込みによる施工に比べると、湿式吹き付け施工方法はコンクリートポンプを使って搬送ホース内をスラリー状態で圧送させるため、混練物は適度の流動性が必要であり、一般的な流し込み施工法に比べ、添加水分が増加する傾向にある。
そのため、流し込み施工による施工体と比べると、湿式吹き付け施工体の方が、実際に溶融金属容器などに施工した場合、その耐用性はやはりかなり劣る。
【0008】
一般的に従来の湿式吹き付け施工方法と乾式吹き付け施工方法は、水と混ざった耐火物原料をエアーによって被施工体に吹き付けるため、施工体へのエアーの巻き込みによる施工体内の気孔の発生や、エアー圧の変動による材料吐出流の脈動、材料吐出量のばらつきが発生し、良好な施工体が形成されないという問題がある。
【0009】
このような従来の問題を解決するために、例えば、耐火物の混練機(ミキサー)に関する発明として、ホッパー状容器の中でスクリュー羽根が高速回転する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の二軸ミキサーに改良を加え、送り羽根の反対側の位置に小羽根を取り付けて二条の螺旋状の羽根配置を採用することにより、混練性能を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、上下段に配置された混練機において、それぞれの材料の移動方向を逆方向とした耐火物の連続的な混練方法に関する提案がされている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
一方、吹き付け工法としては、例えば、湿式吹き付け用ノズルに関するもので、ノズル内でエアーと急結剤の圧力バランスが変動するのを防ぐ方法として、エアーと急結剤を別の位置から導入するようなノズル形状が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
また、湿式吹き付け施工において、均質性に優れた施工体を得るために、ノズル先端から被施工面までの距離やスラリー状の耐火物量と圧縮空気の流量比の条件が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
さらに、吹き付け材の供給量に対し、適正な粘性調整剤の添加量をポンプの回転制御を可能としたシステムが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平5−7759号公報
【特許文献2】特開平11−221818号公報
【特許文献3】特開2004−53195号公報
【特許文献4】特開平11−94473号公報
【特許文献5】特開2000−192121号公報
【特許文献6】特開平11−101580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、たとえば、耐火物の混練機(ミキサー)に関するもので、上記特許文献1と特許文献2に記載の発明では、いずれも所定量の混練を行うバッチ式の混練方法であるため、前記の通り、混練タイミングに合わせて、一時的に施工作業を中断させる等の問題がある。
また、上記特許文献3に記載の発明の混練装置は、上段混練機と下段混練機などから構成されているため、上段から下段に混練材料が乗り移る必要がある他、その際、材料の移動方向が逆方向になる等、材料の混練工程が長く、装置構成が複雑となる。
このため、装置は施工現場に据え置く固定方式であり、混練材料を施工場所までホースなどを介して搬送しなくてはいけないという問題がある。
【0013】
一方、吹き付け工法に関する、上記特許文献4に記載の発明では、エアーの変動による不具合の解決に過ぎず、湿式吹き付け施工の本質的な解決になっていないため、前記に記載した様な問題点は依然として残ったままである。
また、上記特許文献5に記載の発明では、吹き付け施工体の品質、すなわち耐用性および均質性を向上させるために、吹き出し口から被施工体までの距離や圧縮空気の流量比を定めているが、事前に耐火物と水の混練が必要であり、エアーを使うなど、作業性の大きな改善にはならない。
さらに、上記特許文献6に記載の発明も、湿式吹き付けに関する施工性を向上させるために、吹き付け材の供給量に対し、急結剤、バインダーなど、粘性調整剤の添加量をポンプの回転制御で行うものであるが、急結剤の供給は改善されるものの、耐火物と水の混練性を改善させるのは困難である。
【0014】
本発明は、溶融金属容器、溶融金属処理装置、高温雰囲気炉の耐火物の内張りライニング施工、補修施工として用いられる不定形耐火物の連続混練方法とその補修工法に関して、耐火原料の乾粉からの直接混練を連続的に行うことを可能とした混練方法および吹き付け施工方法と、そのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 耐火原料と水を連続的に供給しながら、スラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練方法であって、材料搬送工程と材料混練工程から構成され、材料搬送工程では、連続的に供給された耐火原料と水を、混合手段により、混合・分散させながら、下流へ搬送させ、前記材料混練工程では、材料搬送工程から搬送された耐火原料と水の混合物を、混練手段により、混練させながら下流に送ることを特徴とする耐火物の連続混練方法。
【0016】
(2) 少なくとも前記材料混練工程は、前記混練物を内包する容器を回転させることを特徴とする(1)に記載の耐火物の混練方法。
(3) 前記材料搬送工程は、耐火原料と水を、混合・分散させる際に、回転可能な軸と、その軸周りに板状部材を備えた手段を回転させることにより混合処理することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐火物の連続混練方法。
(4) 前記材料混練工程は、耐火原料と水の混合物を混練させる際に、回転可能な軸と、その軸周りに棒状部材を備えた手段を回転させることにより混練処理することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の耐火物の連続混練方法。
【0017】
(5) 前記材料混練工程は、前記回転可能な軸を水平または垂直に配置して行われることを特徴とする(4)に記載の耐火物の連続混練方法。
(6) 前記材料混練工程は、混練処理中の混練物が、該混練物を内包する容器の内壁に接した状態で、連続的に混練処理されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の耐火物の連続混練方法。
【0018】
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の方法により得られたスラリー状の混練物を、被施工面に連続的に吹き付けることを特徴とする耐火物の連続施工方法。
【0019】
(8) 耐火原料と水を連続的に供給しながらスラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練装置であって、円筒形の容器を有する材料搬送部と、円筒形或いは下流方向へ拡大する円錐台状の容器を有する材料混練部とを備え、前記材料搬送部は、容器へ耐火原料を連続供給可能な供給機構と、容器内の耐火原料に水を添加するための水添加機構と、容器の中心軸方向に延びる回転可能な軸と、その軸周りに板状部材を備えた混合手段から構成されることにより、耐火原料と水を、混合・分散させながら、下流の材料混練部に搬送させる機能を有し、前記材料混練部は、容器の中心軸方向に延びる回転可能な軸と、その軸周りに棒状部材を備えた混練手段から構成されることにより、材料搬送部から搬送された耐火原料と水の混合物を、材料混練部の容器の内壁に接した状態で、混練させながら下流に送る機能を有することを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【0020】
(9) 少なくとも前記材料混練部の容器が、回転可能であることを特徴とする(8)に記載の耐火物の連続混練装置。
(10) 前記材料搬送部内の耐火原料に水を添加するための水添加機構が、材料搬送部の円筒形容器の外部から水が添加されるものであり、水の添加口が1箇所以上設置されていることを特徴とする(8)または(9)に記載の耐火物の連続混練装置。
(11) 前記材料搬送部内の耐火原料に水を添加するための水添加機構が、材料搬送部内の回転可能な軸から水が添加されるものであり、水の添加口が1箇所以上設置されていることを特徴とする(8)または(9)に記載の耐火物の連続混練装置。
(12) 前記材料搬送部の回転可能な軸と材料混練部の回転可能な軸が、同軸で構成されていることを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の耐火物の連続混練装置。
【0021】
(13) (8)〜(12)のいずれかに記載の連続混練装置の材料混練部の下流端側に、材料投射部が同心状に収容して配設された耐火物の連続施工装置であって、前記材料投射部は、複数の羽根板を装着したインペラと、投射口を開放する態様でインペラの外周に巻きかけられる無端平ベルトと、無端平ベルトを案内する複数のプーリと、プーリを枢着した取り付け板を備え、該取り付け板を回転させてインペラに対する投射口の位置を可変可能にする機能を有することを特徴とする耐火物の連続施工装置。
(14) 前記材料投射部の中心に設けた開口部から急結剤を添加する機能を有することを特徴とする(13)に記載の耐火物の連続施工装置。
(15) 前記材料投射部の回転軸は、前記連続混練装置の回転軸と同軸で構成されていることを特徴とする(13)または(14)の耐火物の連続施工装置。
(16) 前記連続混練装置は、前記材料混練部の回転可能な軸が水平又は垂直になるように配置されることを特徴とする(13)〜(15)のいずれかに記載の耐火物の連続施工装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、従来のミキサー内でのバッチ式混練では非連続的な混練のため、流し込み施工や吹き付け施工が連続的に行うことが出来なかった施工形態を、連続的に行うことのできる耐火物の連続施工方法に貢献できる。
また、従来の耐火物の乾式吹き付け施工と比較して、大幅な低水分化が図れ、施工体の組織の緻密化に貢献できる。
一方、従来の湿式吹き付け施工方法に比べ、事前の混練工程が不要であり、湿式吹き付け施工では事前に混練した混練物をすべて吹き付け施工するのが一般的であるのに対して、本発明では必要量施工すれば任意に施工を終了できる。
【0023】
さらに、湿式吹き付け施工では混練物はホース内を圧送しなければいけないため、ホース内の混練物の流動性を確保するために、過剰な水分の添加が必要であるが、本発明では、乾粉を直接混練した後、そのまま吹き付けするため、過剰な水分の添加は不要とすることができる。
加えて、従来の湿式方法で不可欠の事前混練に用いる混練機(ミキサー)が不要のため、施工後の混練機(ミキサー)の清掃、搬送ホースの清掃も不要となる。特に、従来の湿式施工方法では、混練を所定量毎に行うバッチ混練であるため、吹き付け施工も中断しなくてはならないが、本発明では、連続的な混練であるため、施工も中断せずに連続的に行える。
【0024】
また、耐火物施工体の材料特性面から見ると、従来の乾式、湿式施工方法ではエアーにより吹き付けているため、施工体中に気孔が残りやすい傾向にあるが、本方法では回転を利用した遠心力による吹き付けであるため、エアーの巻き込みもほとんど起きない。
以上のように、製鉄用耐火物の不定形耐火物補修方法として、耐火物の低水分施工による組織の緻密化が図れ、耐用性を向上させることができ、耐火物コストの削減、窯炉設備の安定稼動に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明者は、従来の不定形耐火物の補修方法や施工体の耐用性の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねたところ、従来の乾式吹き付け施工、湿式吹き付け施工方法では低水分化した混練物を吹き付け施工できていないため、耐火物の施工体の耐用性にばらつきが生じることから、従来の非連続的なバッチ式混練方法に代わり、連続的な混練を可能とした混練技術の必要性に着目し、本発明を考案するに至った。以下に詳細に説明する。
【0026】
本発明は、耐火原料と水を連続的に供給しながら、スラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練方法であって、材料搬送工程と材料混練工程から構成されるものであり、材料搬送工程では、連続的に供給された耐火原料と水を、混合手段により、混合・分散させながら、下流へ搬送させ、材料混練工程では、材料搬送工程から搬送された耐火原料と水の混合物を、混練手段により、混練させながら下流に送る耐火物の連続混練方法である。
【0027】
すなわち、連続的に供給された乾燥状態の粉粒状の耐火原料と添加水は、先ず材料搬送工程において、混合手段により、凝集された微粒子成分が分散され、同時に、添加される水も分散され、その両者が衝突することによりペースト状の混合物が生成されながら、連続的に下流の材料混練工程へ搬送される。
その後、材料混練工程では、混練手段により、上記の混合物を混練させながら、下流に送ることにより、スラリー状の混練物を連続的に得るという方法である。
これにより、従来よりも低水分の耐火物を連続的に得ることができることを新たに見出した。
【0028】
また、得られた混練物は、流し込み施工に直接供給することも可能であるが、同一装置内で混練物に直接に急結剤を投与し、搬送ホースを介さずに、連続的に吹き付け施工を行うことも可能である。
これにより、吹き付け施工体の低水分化が図れ、耐用性の安定と向上に寄与することも新たに見出した。
【0029】
本発明の方法を実現するための、耐火物の連続混練装置としては、円筒形の容器を有する材料搬送部と、円筒形或いは下流方向へ拡大する円錐台状の容器を有する材料混練部とを備え、材料搬送部は、容器へ耐火原料を連続供給可能な供給機構と、容器内の耐火原料に水を添加するための水添加機構と、容器の中心軸方向に延びる回転可能な軸と、その軸周りに板状部材を備えた混合手段から構成されることにより、耐火原料と水を、混合・分散させながら、下流の材料混練部に搬送させる機能を有し、材料混練部は、容器の中心軸方向に延びる回転可能な軸と、その軸周りに棒状部材を備えた混練手段から構成されることにより、材料搬送部から搬送された耐火原料と水の混合物を、材料混練部内壁に沿って混練させながら下流に送る機能を有する装置を見出した。
【0030】
具体的に、粉粒状の耐火原料の乾粉と水を連続的に供給し、連続的に混練した後、ただちに得られた混練物を投射するための装置として、図1に示すような装置を考案したので、これに基づいて詳細に説明する。但し、本発明は図1に示す装置に限定されるものではない。
[第1実施形態]
粉粒状の耐火原料は、一定の切り出しにより、材料供給口1から材料搬送部Aへ連続的に供給され、供給量に見合った最適な水分量は、注水孔2から材料搬送部Aへ連続的に添加される。
【0031】
ここで、最適な水分量とは、耐火物が所望の耐用性を保持できる範囲であれば特に規定するものではないが、従来の乾式吹き付け施工、湿式吹き付け施工方法よりも低い水分量である、7質量%〜9質量%程度(耐火原料に対する質量%で外掛け)が例示できる。
また、粉粒状の耐火原料は、耐火原料を破砕などにより所定の粒度配合に篩い分けし、その後、粒度別、種類別に調合することにより得られ、吹き付け性、施工体品質の点からトップサイズが5mmもしくは3mm以下が吹き付け材として好ましい。
また、粉粒状の耐火原料のサイズの下限値は、適宜、設定すれば良く、特に規定するものではない。
【0032】
さらに、耐火原料の切り出しはテーブルフィーダー等を用いて、水分の添加はバルブ式の流量計等用いて行うことができる。
尚、材料搬送部Aでは、耐火原料は容器の任意の位置から添加して良く、例えば、図1に示す様に上部から添加することができる。
また、材料搬送部Aでの水の添加は容器の外部から注水孔2の1箇所で添加されているものを例示しているが、複数箇所から水を添加しても良い。あるいは、水の添加を容器の外部から行うのではなく、後述の混合手段を構成している回転可能な軸に、添加口を1箇所以上設置したものを用いて、内部から水を添加しても良い。
【0033】
次に、連続的に供給された粉粒状の耐火原料と水は、まず、材料搬送部Aで、容器の中心軸方向に延びる回転可能な回転シャフト3と、その軸周りに板状部材31を備えた混合手段を用いて、この混合手段を回転させることにより、凝集された微粒子成分が板状部材31との衝突により分散され、同時に、添加される水も高速で回転する板状部材31との衝突により霧状に分散され、その両者が衝突することにより混合・分散されて、ペースト状の混合物を生成しながら、下流の材料混練部Bへ搬送させることができる。
材料搬送部Aの容器の形状は、円筒形とすることで、淀みがほとんどなく混合・分散し易いという点で好適である。
【0034】
ここで、混合手段の板状部材31とは、その形状として平面を有する直方体や羽根状のものを意味しており、この様な形状のものであれば、下流の材料混練部と比較して、弱い攪拌を実現でき、ペースト状の混合物を得ることができる。
また、板状部材31のサイズは、対象とする耐火原料の性状等に応じて、事前の実験等により、適宜、設定することができる。
また、回転シャフト3の回転数は、特に規定するものではないが、実験的な知見から、600〜1200rpm程度が推奨される。
【0035】
次に、材料混練部Bでは、中心軸方向に延びる回転可能な回転軸と、その軸周りに撹拌棒4を備えた混練手段を用いて、この混練手段を回転させることにより、材料搬送部Aから搬送されたベースト状の混合物は、材料混練部Bの容器としての外筒5の内壁面に遠心力により付着し、さらに撹拌棒4によって押し込まれることにより効率的な混練が行われながら、外筒5の内壁に接した状態で下流に送られて、スラリー状の混練物を連続的に得ることができる。
材料混練部Bの外筒5の形状は、円筒形或いは下流方向へ拡大する円錐台状とすることで、淀みがほとんどなく混練し易いという点で好適である。
【0036】
ここで、混練手段の撹拌棒4とは、その形状として、円柱状や角柱状のものを意味しており、この様な形状のものであれば、外筒5の内面に付着した材料を撹拌棒4によって強い力で押し込み、練り込む力が発生して混練性が向上するため、上流の材料搬送部Aの混合手段と比較して、より強い攪拌を実現でき、スラリー状の混練物を連続的に得ることができるものと考えられる。
ここで、撹拌棒4のサイズは、対象とする耐火原料の性状等に応じて、事前の実験等により、適宜、設定することができる。
【0037】
また、回転シャフト3の回転数は、特に規定するものではないが、実験的な知見から、600〜1200(rpm)程度が推奨される。なお、撹拌棒4の先端の周速としては850〜1700(cm/sec)程度が推奨される。
尚、材料混練部Bの回転軸は、材料搬送部Aの回転シャフト3と、同じ回転数で使用可能な場合は、これらが同軸で構成されていると装置上、簡略化できるため好ましい。
ここで、材料混練部Bの外筒5は必ずしも回転する必要はないが、この外筒5を横向きに配置しているので、外筒5を低速で回転させると、混練物は外筒5の内面により接しやすくなり、均一な混練を行うことができるため、より好ましい。
【0038】
尚、材料混練部Bの外筒5の回転数も、特に規定するものではないが、実験的な知見から、100〜200(rpm)程度が推奨される。なお、その際の周速は45〜90(cm/sec)程度が推奨される。
また、材料混練部Bは、回転シャフト3の回転方向に対して外筒5の回転方向を逆向きに回転させることも可能であり、このようにすると混練物の分散性の点でより好ましい。好ましい回転数としては、外筒5が600〜1200(rpm)、回転シャフト3が100〜200(rpm)が例示できる。
ちなみに、本発明の装置は、乾燥状態の粉粒状の耐火原料と添加水を直接、かつ連続的に供給しながら、連続混練することが可能であり、コンパクトな装置とすることができる。
このような材料混練部Bにおいて、回転シャフト3が水平方向に配置する、すなわち、図1に示されるように、横置き状態で材料の混練を行うと、外筒5内の混練物が外筒5の内壁に接した状態で混練が行われるため、均一かつ十分な混練を行って均質な混練物を得ることができる。
【0039】
さらに本発明では、上記の方法により得られたスラリー状の混練物を、被施工面に連続的に吹き付けても良い。
材料混練部Bを通過したスラリー状の混練物は、例えば、図1に示す様に、投射円盤としてのインペラ6を含む材料投射部Cに移動し、ここで、必要に応じて投入孔8から急結剤が投与され、投射円盤の回転による遠心力で材料吐出部7から吐出され、製鋼工程で冷間もしくは熱間で稼動中の溶融金属容器である溶鋼鍋などの耐火物側壁等の被施工面に、連続的に吹き付け施工を行うことができる。
【0040】
上記の方法を実現するための装置としては、前記の連続混練装置の材料混練部の下流端側に、材料投射部が同心状に収容して配設された連続施工装置であって、該材料投射部は、複数の羽根板を装着したインペラと、投射口を開放する態様でインペラの外周に巻きかけられる無端平ベルトと、無端平ベルトを案内する複数のプーリと、プーリを枢着した取り付け板を備え、該取り付け板を回転させてインペラに対する投射口の位置を可変可能にする機能を有する連続施工装置を用いることができる。
【0041】
具体的には、図2に示すような装置が例示できるので、これに基づいて詳細に説明する。
材料投射部Cは、外筒5の開口に対向して開口のある円筒状のインペラ6と投射方向が解放される状態でインペラ6に外周面に巻き付けられる無端平ベルト15と、インペラ6の外周囲に配置して無端平ベルト15を案内する複数個(たとえば5個)のプーリ16と、プーリ16が枢着される取り付け板17とで構成される。
インペラ6の円筒の側板には、円周方向に沿って所定間隔毎に放射状に複数枚の(たとえば6枚)の羽根板14が取り付けられ、その羽根板14の間隙の側板には開口部が設けられている。
プーリ16は、インペラ6に巻き付けられることにより生じる摩擦力により、インペラ6から回転が伝達され回転を行う。
【0042】
材料撹拌部の出口である外筒5の開口部とインペラ6との配置関係は、外筒5の下流側終端部がインペラ6内に収納される構成であるので、材料は開口部から遠心力によりインペラ6の側板へ移送され、更に羽根板14の回転方向において前方に配置された間隙を通して無端平ベルト15の内面に遠心力により押しつけられ、無端平ベルト15の移動速度と同調して回転移動する。
材料吐出部7近傍には、吐出角度を制限して投射方向を画定する投射板18を配置させている。
従って、無端平ベルト15とともに回転移動した材料は、材料吐出部7近傍のプーリ16により設けられた解放部から慣性力によりプーリ16の接線方向に放出され、無端平ベルト15から離れ飛翔した材料は投射板18に衝突することにより投射方向が決められる。
投射方向は、取り付け板の回転(駆動装置は図示せず)により、変更することができる。
【0043】
また、この連続施工装置において、材料投射部Cの中心に設けた開口部から急結剤を添加する機能を持たせ、この開口部から急結剤を添加することが、装置の簡略化の点で好ましい。
即ち、図1に示されるように、急結剤は投入孔8が設けられた回転軸端部にある開口部81から噴出し、回転シャフト3の端部に衝突するとともに遠心力により外周方向へ飛散し、無端平ベルト15の内面に遠心力により押しつけられ移動する材料に混合される。
また、急結剤の投入は、例えば、予め急結剤をタンクに貯蔵しておき、このタンクからホース等を介して搬送することで実施できる。
急結剤の搬送は、タンクと材料投射部との高低差を用いても良いが、定量的添加にはポンプを用いて搬送することが望ましく、さらにポンプとエアーを併用することがより望ましい。
【0044】
尚、材料投射部Cの回転軸は、前記の連続混練装置の回転軸(少なくとも材料混練部の軸)と、同じ回転数で使用可能な場合は、これらが同軸で構成されていると装置上、簡略化できるため好ましい。
即ち、図1において、材料投射部Cの回転軸に対し材料混練部Bの回転軸を延長し連結することにより構成することができる。このとき、急結剤は延長した回転軸の外周面法線方向に設けた開口部81から噴出し、遠心力により外周方向に飛散し、無端平ベルト15の内面に遠心力により押しつけられ移動する材料に混合される。
【0045】
また、材料投射部Cを外すと、吹き付け施工として使用せずに、連続混練機能を活用して、耐火物の流し込み工法として活用できる。
この様に、連続的に混練することが可能であるため、異なる材料の切り替えや従来の混練機を持ち込めない現場において、流し込み工法としての混練機(ミキサー)として使用できる。
【0046】
本発明では、対象とする耐火原料の材質には制限はない。
主要な耐火原料であるアルミナ質、アルミナ−シリカ質、アルミナ−スピネル質、アルミナ−マグネシア質、アルミナ−カーボン質、アルミナ−SiC質、アルミナ−SiC−カーボン質、マグネシア質、マグネシア−カーボン質等、およびこれらの組み合わせである材質に問題なく適用できる。
また、急結剤としては、液状、粉末のいずれものものでも使用でき、具体的な種類は何ら特定されるものではない。主要な急結剤としては、例えばアルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム、珪酸ソーダ、珪酸カリウム、リン酸ソーダ等が例示できる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部材、部分と同一の部材等については、同一符号を付してその説明を省略する。
前述した第1実施形態の連続混練装置は、回転軸となる回転シャフト3が水平方向に向くように配置して、材料混練部B内で混練物を均一にかつ十分に混練できるようにしていた。
これに対して第2実施形態に係る連続混練装置は、図3に示されるように、基本的な構造は第1実施形態と同様ではあるが、第1実施形態とは異なり、回転シャフト3を垂直方向に配置、すなわち縦置き状態として混練を行う点が相違する。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る連続混練装置は、上から材料搬送部A、材料混練部Bとなるように配置され、材料混練部Bの下端には、これらと同軸方向に回転させる材料投射部Cが配置されている。材料搬送部Aの上端斜め上方には、粉粒状の耐火原料を供給するための材料供給口1Aが設けられている。
材料供給口1Aから供給された粉粒状の耐火原料は、注水孔2から水が添加されながら板状部材31の回転により、混合、分散が行われペースト状の混合物となるとともに、自重により下方に搬送される。尚、必要に応じて上流側から下流側にエアーを流して搬送を補助してもよい。
【0049】
材料混練部Bでは、材料搬送部Aから搬送されたペースト状の混合物は、第1実施形態の場合と同様に外筒5の内壁面に遠心力により付着し、さらに撹拌棒4によって押し込まれて効率的な混練が行われ、スラリー状の混練物を連続的に得ることができる。
材料投射部Cでは、材料混練部Bで得られたスラリー状の混練物を、材料混練部Bの回転軸と同軸方向に回転させて、材料吐出部7から外方に吐出し、被施工面に連続的に吹き付ける。
【0050】
このような本実施形態に係る連続混練装置は、取鍋等の円筒形状の容器内面のライニングを行う場合に好適である。
すなわち、まず、取鍋の上部開口に昇降可能な架台を設け、その架台上に連続混練装置を縦置き状態に設置し、材料供給口1Aに配管部材等を介し取鍋外部から粉粒状の耐火原料を連続的に供給できるようにするとともに、ホース等を注水孔2に接続し、連続混練装置内に水分を連続的に供給できるようにする。
【0051】
次に、架台を取鍋の底部に降下させ、連続混練装置を駆動させ、材料供給口1Aに粉粒状の耐火原料を連続的に供給するとともに、注水孔2に水分を連続的に供給する。
すると、材料搬送部Aで混練されたペースト状の混合物は、さらに自重により材料混練部Bで混練され、スラリー状の混練物となり、さらに自重により材料投射部Cに供給され、
材料吐出部7から外方にスラリー状の混練物が吐出され、取鍋の内壁面にスラリー状の混練物を吹き付け施工することができる。
この状態で連続混練装置及び材料吐出部7を垂直軸回りに回転させ、360度回転させると、取鍋底部内面にスラリー状の混練物を吹き付けることが可能となる。
【0052】
取鍋底部内面全周の吹き付け施工が終了したら、架台を上昇させ同様に取鍋内面全周の吹き付け施工を行い、これを繰り返す。
このような本実施形態では、連続混練装置の材料混練部Bの回転シャフト3の回転軸と、材料投射部C内で回転するスラリー状の混練物の回転軸が同軸状(厳密には回転軸が回転可能な範囲で若干の軸のずれは許容されるが)とすることにより、材料混練部Bの回転力をも利用して、材料投射部Cから回転接線方向に被施工面に投射することが可能となるので、吹き付け施工における施工能率が向上する。
また、連続混練装置及び材料投射部Cを同軸状に配置することで、これらを連結する機構を極めて単純なものとすることができるため、連続施工装置の構造を簡素化することができる。
【0053】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
前述した第1実施形態に係る連続混練装置では、図1に示されるように、材料混練部Bの外筒5及び回転シャフト3のいずれも回転可能に構成されていた。
これに対して、本実施形態に係る連続混練装置では、図4に示されるように外筒25が回転し、シャフト23が回転せずに材料供給口1Aに支持固定されている点が相違する。
【0054】
外筒25は、材料搬送部A及び材料混練部Bを囲む筒状に一体形成されており、材料搬送部Aの部分では円筒状に、材料混練部Bの部分では下流側に向かって拡径する円錐台状に形成されている。
外筒25の基端側(上流側端部)は、ベアリング26を介して材料供給口1Aの下流側端部開口部分に連結され、外筒25は、材料供給口1Aに回転自在に支持され、図4では不図示の回転駆動源によって回転する。
シャフト23は、構造こそ第1実施形態に係る回転シャフト3(図1参照)と同様ではあるが、基端側端部が材料供給口1Aに固定支持されている点が相違している。
【0055】
具体的には、材料供給口1Aを構成する筒状体を貫通する円筒状部材27を設け、この円筒状部材27にシャフト23を挿入し、円筒状部材27及びシャフト23の間にメカニカルシール構造を形成し、粉粒状の耐火原料が漏れ出すことのない状態とし、シャフト23を材料供給口1Aに固定している。
このような本実施形態に係る連続混練装置は、縦置き、横置きいずれでも使用することが可能であるが、横置きにして混練を行う場合、シャフト23が回転していないため、搬送力をアップさせるという点では上流から下流に向かって強制的にエアーを流すようにして、耐火原料や混練物が滞留することを防止するのが好ましい。
【0056】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
前述の第2実施形態では、連続混練装置の材料混練部Bの外筒5は、図3に示されるように、下流側に向かって次第に拡径する円錐台状に形成されていた。
これに対して、第4実施形態に係る連続混練装置では、図5に示されるように、材料混練部Bを構成する外筒35が円筒状に形成されている点が相違する。
材料搬送部Aの筒状体の下流側端部開口にはフランジが形成され、外筒35の基端側は、このフランジに対してベアリング36を介して回転可能に支持されている。
このような連続混練装置を用いて吹き付け材の施工を行う場合、第2実施形態と同様に、回転シャフト3が垂直となるように配置するのが好ましく、縦置き使用することにより、材料混練部Bで混練された混練物が自重により落下するため、材料投射部Cに混練物を確実に供給することができるからである。
一方、このような連続混練装置を横置き使用した場合、外筒35が円筒状に形成されているため、材料混練部Bで混練された混練物を下流側の材料投射部Cに送りにくく、エアーを流す等の別途の混練物を搬送する手段を必要とするため、縦置きで使用するのが好ましい。
【実施例】
【0057】
一般的な耐火原料であるアルミナ系不定形耐火物を用いて、本発明に係る連続混練吹き付け施工方法(実施例1、実施例2)、従来の乾式吹き付け施工方法(比較例1)、従来の湿式吹き付け施工方法(比較例2)による吹き付け施工を行い、実験による施工体の材料比較、実機での耐用性を評価した結果を、表1に示している。
実施例1は、第1実施形態のように連続混練装置を横置きで使用した場合であり、実施例2は、第2実施形態のように連続混練装置を縦置きで使用した場合である。
尚、表1の「%」は、気孔率以外はすべて「質量%」であり、気孔率は「容量%」である。
【0058】
いずれの場合も、アルミナ系不定形耐火物として、同一の粒度分布の焼結アルミナを用い、結合剤としてアルミナセメントを用いた。また、急結剤としては、比較例1では固体の珪酸ソーダを用い、実施例1、実施例2、および比較例2では液体の珪酸ソーダを用い、外掛けで0.5質量%添加した。
また、水分も外掛けで添加したが、最適な吹き付け施工性を得るためには、添加水分は乾式吹き付け施工方法の場合は25質量%必要であり最も多かったが、実施例1および実施例2の場合は8質量%で良く、最も添加水分を少なくすることができた。
【0059】
【表1】

【0060】
また、施工体について、気孔率、耐食性指数を測定した。
ここで気孔率はJIS R 2205に準じて見掛け気孔率を測定した。
吹き付け施工体を養生後、110℃で24時間乾燥したものを供試々料として見掛け気孔率を測定した。
また、耐食性指数とは鋼:転炉スラグ1:1とした溶剤をもって回転侵食試験(1650℃)し、その損耗寸法を測定し、試験値を指数で示した。尚、数値が大きいほど損耗が大きい。
その結果、本法の施工方法の場合に最も添加水分を少なくすることができたため、施工体に関して、気孔率の低減や耐食性指数の向上に大きく寄与していることが確認できた。
【0061】
さらに、タップフロー値とはJIS R 2521フロー試験に従ってフローコーン、フロー試験用突き棒を用いて測定した。
即ち、フローテーブル上の所定の位置に設置したフローコーンに不定形耐火物を詰め、その後、直ちにフローコーンを上方に取り去り、フローテーブルを15回上下運動させて、
不定形耐火物の広がった最大径と、これに直角の方向とをノギスで測定し、その平均値(mm)を単位とする値をタップフロー値とした。
【0062】
また、付着性(付着率)とは、実際に吹き付け施工試験を一定時間(2分間)実施し、施工面から跳ね返って施工体面の下方、周囲に落下した材料のロス分を採取し、その質量を測定し、実際の材料の通過量から差し引いた量を付着量として、付着率を求めた。
すなわち、付着率=[(実際の吹き付け量)−(跳ね返って落下した材料のロス量)]÷(実際の吹き付け量)×100で求めた。
その結果、本法の施工方法の場合に最も添加水分を少なくすることができたため、付着率を96%と高位に維持しつつ、気孔率を顕著に下げることができたので、実使用における耐食性の大幅な改善に大きく寄与していることが確認できた。
【0063】
次に、製鋼工程で稼動している溶鋼鍋の耐火物側壁に吹き付け施工を実施し、稼動中の吹き付け施工体の耐用性を評価した。
尚、耐用性は、吹き付け施工体の損耗状況を確認し、損耗が発生するまでの、溶鋼鍋への溶鋼のチャージ回数(溶鋼を受け入れ、その後払い出す一連の操作の回数)で評価した。
その結果、比較例1に係る乾式吹き付け施工体は約3〜5回、比較例2に係る湿式吹き付け施工体は約30〜40回の耐用であったのに対し、実施例1に係る連続混練装置を横置きした場合の連続混練吹き付け施工体は60回以上と約2倍の耐用性を示し、実施例2に係る連続混練装置を縦置きした場合の連続混練吹き付け施工体であっても55回以上と極めて高度の耐用性を示している。
また、実施例1及び実施例2を比較した場合、横置きの方が数値的には若干上回るもののその差は微差であり、比較例1、比較例2と比較してすべての点で性能が大きく上回っており、連続混練装置を横置きで使用した場合、縦置きで使用した場合、いずれの場合でも遜色のないことを確認することができた。
【0064】
この様に、本発明の連続混練吹き付けによる施工体は、低水分化による気孔率の低下、すなわち施工組織の緻密化が図れ、連続施工によるむらのない均一な施工体組織の形成、および投射施工による材料飛行速度の増大に伴う施工体面への打ち込みによる施工組織の緻密化の効果などが総合して、実炉でも良好な耐用性を示すことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態による不定形耐火物の混練、施工装置の機構図。
【図2】前記実施形態による材料投射部の装置。
【図3】本発明の第2実施形態による不定形耐火物の混練、施工装置の機構図。
【図4】本発明の第3実施形態による不定形耐火物の混練、施工装置の機構図。
【図5】本発明の第4実施形態による不定形耐火物の混練、施工装置の機構図。
【図6】従来の湿式吹き付け施工装置
【符号の説明】
【0066】
1、1A…材料供給口、2…混練水の注水孔、3…内筒の回転シャフト、4…攪拌棒、5、25、35…外筒、6…インペラ、7…材料吐出部、8…急結剤の投入孔、9…混練物の圧送ポンプ、10…圧送管、11…ノズル、12…急結剤槽、13…エアーコンプレッサー、14…羽根板、15…無端平ベルト、16…プーリ、17…取り付け板、18…投射板、23…シャフト、26…ベアリング、27…円筒状部材、31…板状部材、36…ベアリング、81…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火原料と水を連続的に供給しながら、スラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練方法であって、材料搬送工程と材料混練工程から構成され、
前記材料搬送工程では、連続的に供給された耐火原料と水を、混合手段により、混合・分散させながら、下流へ搬送させ、
前記材料混練工程では、前記材料搬送工程から搬送された耐火原料と水の混合物を、混練手段により、混練させながら下流に送る、
ことを特徴とする耐火物の連続混練方法。
【請求項2】
少なくとも前記材料混練工程は、前記混練物を内包する容器を回転させることを特徴とする請求項1に記載の耐火物の連続混練方法。
【請求項3】
前記材料搬送工程は、耐火原料と水を、混合・分散させる際に、回転可能な軸と、その軸周りに板状部材を備えた手段を回転させることにより混合処理することを特徴とする請求項1または2に記載の耐火物の連続混練方法。
【請求項4】
前記材料混練工程は、耐火原料と水の混合物を混練させる際に、回転可能な軸と、その軸周りに棒状部材を備えた手段を回転させることにより混練処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐火物の連続混練方法。
【請求項5】
前記材料混練工程は、前記回転可能な軸を水平又は垂直に配置して行われることを特徴とする請求項4に記載の耐火物の連続混練方法。
【請求項6】
前記材料混練工程は、混練処理中の混練物が、該混練物を内包する容器の内壁に接した状態で、連続的に混練処理されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐火物の連続混練方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法により得られたスラリー状の混練物を、被施工面に連続的に吹き付けることを特徴とする耐火物の連続施工方法。
【請求項8】
耐火原料と水を連続的に供給しながらスラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練装置であって、
円筒形の容器を有する材料搬送部と、円筒形或いは下流方向へ拡大する円錐台状の容器を有する材料混練部とを備え、
前記材料搬送部は、容器へ耐火原料を連続供給可能な供給機構と、容器内の耐火原料に水を添加するための水添加機構と、
容器の中心軸方向に延びる回転可能な軸と、その軸周りに板状部材を備えた混合手段から構成されることにより、耐火原料と水を、混合・分散させながら、下流の材料混練部に搬送させる機能を有し、
前記材料混練部は、容器の中心軸方向に延びる回転可能な軸と、その軸周りに棒状部材を備えた混練手段から構成されることにより、
材料搬送部から搬送された耐火原料と水の混合物を、材料混練部の容器の内壁に接した状態で、混練させながら下流に送る機能を有することを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【請求項9】
少なくとも前記材料混練部の容器が、回転可能であることを特徴とする請求項8に記載の耐火物の連続混練装置。
【請求項10】
前記材料搬送部内の耐火原料に水を添加するための水添加機構が、前記材料搬送部の円筒形容器の外部から水が添加されるものであり、水の添加口が1箇所以上設置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の耐火物の連続混練装置。
【請求項11】
前記材料搬送部内の耐火原料に水を添加するための水添加機構が、材料搬送部内の回転可能な軸から水が添加されるものであり、水の添加口が1箇所以上設置されていることを
特徴とする請求項8又は9に記載の耐火物の連続混練装置。
【請求項12】
前記材料搬送部の回転可能な軸と前記材料混練部の回転可能な軸が、同軸で構成されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の耐火物の連続混練装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれかに記載の連続混練装置の材料混練部の下流端側に、材料投射部を同心状に収容して配設された耐火物の連続施工装置であって、
前記材料投射部は、複数の羽根板を装着したインペラと、投射口を開放する態様でインペラの外周に巻きかけられる無端平ベルトと、無端平ベルトを案内する複数のプーリと、プーリを枢着した取り付け板を備え、
該取り付け板を回転させてインペラに対する投射口の位置を可変可能にする機能を有することを特徴とする耐火物の連続施工装置。
【請求項14】
前記材料投射部の中心に設けた開口部から急結剤を添加する機能を有することを特徴とする請求項13に記載の耐火物の連続施工装置。
【請求項15】
前記材料投射部の回転軸は、前記連続混練装置の回転軸と同軸で構成されていることを特徴とする請求項13または14記載の耐火物の連続施工装置。
【請求項16】
前記連続混練装置は、前記材料混練部の回転可能な軸が水平又は垂直になるように配置されることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の耐火物の連続施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−292442(P2007−292442A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55809(P2007−55809)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(504092460)
【Fターム(参考)】