説明

耐火複合管用パッキン

【課題】耐火複合管からより脱落し難い耐火複合管用パッキンを提供する。
【解決手段】内層管301と内層管301の外周に耐火性材料を型成形した外層管302とを備えた耐火複合管300に対し、外層管302の型成形の際に取付ける耐火複合管用パッキン100であって、外層管302と当接する当接面10を有し、当接面10に外層管302の型成形時に耐火性材料が流入する流入部11を設け、流入部11に当接面とは異なる面と連通する連通部13を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内層管と当該内層管の外周に耐火性材料を型成形した外層管とを備えた耐火複合管に対し、前記外層管の型成形の際に取付ける耐火複合管用パッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
耐火複合管として、例えば、耐水性や耐薬品性に優れる塩化ビニル樹脂製の内層管の外周に、耐火性に優れるモルタル製の外層管を形成したものが知られている。このような耐火複合管は、耐火複合管用パッキン(以下、単に「パッキン」と称する場合がある)を外嵌した内層管を金型内に配置し、金型とパッキンと内層管とで形成される空間にモルタル等を流し込み、モルタル等を硬化させて外層管を形成することによって作製される。
【0003】
このため、従来のパッキンでは、耐火複合管の外層管とは特に固定されておらず、耐火複合管の配管施工時等の際にパッキンが外層管から剥離して内層管から抜け落ちるという問題があった。
【0004】
この問題に対しては、耐火複合管の外層管と当接する当接面にアンカー突起を設けた耐火複合管用パッキンが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このパッキンでは、アンカー突起を外層管に食い込ませた状態で硬化させることにより、パッキンと外層管との間にいわゆるアンカー効果を発生させることができる。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3126548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の耐火複合管用パッキンでは、金型とパッキンと内層管とで形成される空間にモルタル等を流し込む際に空間内の空気の逃げ場がほとんどなく、モルタル等がアンカー突起の周りにまで十分に行き渡らないまま硬化する恐れがあった。このため、アンカー突起の外層管への食い込みが不十分となり、配管施工時等におけるパッキンの耐火複合管からの脱落を完全に防止することはできなかった。
【0007】
従って、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐火複合管からより脱落し難い耐火複合管用パッキンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る耐火複合管用パッキンの特徴構成は、内層管と当該内層管の外周に耐火性材料を型成形した外層管とを備えた耐火複合管に対し、前記外層管の型成形の際に取付ける耐火複合管用パッキンであって、前記外層管と当接する当接面を有し、当該当接面に前記外層管の型成形時に前記耐火性材料が流入する流入部を設け、当該流入部に前記当接面とは異なる面と連通する連通部を設けた点にある。
【0009】
本構成のように、外層管と当接する当接面に耐火性材料が流入する流入部を設け、流入部に当接面とは異なる面と連通する連通部を設けることにより、外層管を型成形する際に、型内の空気を連通部からに逃がしつつ耐火性材料を充填することができるため、耐火性材料を流入部にまで確実に充填することができる。
したがって、耐火性材料を硬化させると、外層管の一部が耐火複合管用パッキンに嵌合した状態となるため、耐火複合管用パッキンは外層管に対するアンカー効果により耐火複合管から脱落し難くなる。
【0010】
前記流入部は凹部であることが好ましい。
本構成のように流入部を凹部とすることにより、耐火性材料は確実に凹部に溜まり硬化するため、より高いアンカー効果を得ることができる。
【0011】
前記凹部は周方向に複数設けてあることが好ましい。
本構成のように凹部を周方向に複数設けることにより、外層管に対するアンカー効果を高めることができる。
【0012】
前記連通部は前記凹部の一部に設けた孔部であることが好ましい。
本構成のように凹部の一部に孔部を設けることにより、凹部のその他の部分において耐火性材料を溜めつつ空気逃がすことができるため、耐火性材料を硬化させることにより外層管に対する高いアンカー効果を発生させることができる。また、前記連通部を前記凹部の一部に設けた溝部としてもよく、この場合も同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態および図面に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の意図を逸脱しない範囲において、種々の改変等が可能である。
ここでは、本発明に係る耐火複合管用パッキン(以下、「パッキン」と称する)100を、図4及び5に示すように耐火複合管としての耐火二層管継手300に適用した場合を例として説明する。
【0014】
本実施形態に係るパッキン100を適用する耐火二層管継手300は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の内層管301と、内層管301の外周にモルタル等の耐火性材料を型成形した外層管302とを備えており、同様に内層管501と外層管502とを備える耐火二層管500と接合して用いる。
耐火二層管継手300では、耐火二層管500と接合する部位において内層管301及び外層管302が拡径するよう設けてあり、内層管301に耐火二層管500の露出した内層管501が嵌入できるようになっている。
【0015】
パッキン100は、例えば、ポリエチレン等の合成ゴムや合成樹脂等で形成してあり、耐火二層管継手300に、外層管302と耐火二層管500の外層管502とが対向する部位において外層管302に当接させて装着してある。パッキン100は、耐火二層管継手300に対し、外層管302を型成形する際に取り付けて使用する。例えば、図6に示すように、パッキン100を内層管301に外嵌したものを金型400の内に配置し、金型400とパッキン100と内層管301とで形成される空間内にモルタル等の耐火性材料を充填し、硬化させる。
【0016】
このようなパッキン100は、図1〜5に示すように、外層管302の端面と当接する当接面10、当接面と略平行な外面20、内周面30、外周面40を備える。
当接面10には、外層管302の成形時にモルタル等の耐火性材料が流入する流入部としての凹部11が周方向に等間隔に9個設けてある。凹部11の開口面の形状は楕円形状であり、凹部11の開口面と平行な断面の面積が凹部11の深さ方向に沿って等しくなるように設けてある。また、凹部11のそれぞれの底面12には、当接面10とは異なる面の一例である外面20と連通する連通部としての孔部13が設けてある。
【0017】
内周面30には、内層管301の外径の寸法公差を吸収するためのリブ31が周方向に複数設けてある。また、内周面30と当接面10との角部に面取りがなされており、耐火複合管用パッキン100が内層管301に外嵌し易いようになっている。
外周面40は、当接面10の側から外面20の側へ縮径するテーパー状に形成してある。
【0018】
パッキン100の寸法は、装着する耐火二層管継手300の寸法によって変わり、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、パッキン100の内径を125mm、外径を140mm、厚みを5mmとし、凹部11の開口面の長径を10mm、短径を5mm、深さを5mm、孔部13の内径を1mmとして形成してある。
【0019】
このように構成されたパッキン100は、図6に示すように、外層管302の成形時において、パッキン100と内層管302と金型400によって形成される空間にモルタル等を充填口401から充填すると、空間内(凹部11の内を含む)の空気は孔部13を介して外面20の側へと抜け、モルタル等は凹部11にまで充填される。このため、モルタル等が硬化して外層管302が形成された後は、外層管302の一部がパッキン100の凹部11に嵌合した状態となる。したがって、パッキン100は外層管302に対するアンカー効果により耐火複合管から脱落し難くすることができる。
【0020】
この際、パッキン100の内周面30に設けたリブ31は、内周面30と内層管301との間に間隙を作ることができるため、内層管301の寸歩公差を吸収するだけでなく、金型400内の空気を逃がすこともできる。
【0021】
また、金型400を型締めする際には、外周面40が金型400によって削られる場合があり、削屑の処理が問題となる。このため、本実施形態のように外周面40をテーパー状にして金型400と当接する面積を小さくすれば、金型400によって削られる外周面40の面積が小さくなり削屑の量を減らすことができる。
【0022】
〔別実施形態〕
上記の実施形態においては、連通部として凹部11の底面12に孔部13を設けた場合を例として説明したが、これに限定されず、連通部としては、例えば、図7〜9に示すような凹部11のそれぞれの側面15から内周面30に連通する溝部14とすることもできる。この場合では、外層管302を成形する際の空気は溝部14から内周面30の側へと抜けるため、モルタル等を凹部11に流入させることができる。この場合において、内周面30にリブを設けておけば、溝部14からの空気がより抜け易くなり好ましい。
【0023】
上記の実施形態においては、凹部11を周方向に9個設けた場合を例として説明したが、凹部11の数は特に制限はなく、パッキン100のサイズ等に応じて適宜変更することができる。
凹部11の開口面の形状は、楕円形状に限定されず、真円状、四角状等、任意に選択可能であり、周方向に延びる溝状でもよい。また、凹部11は、内周面が凹部11の深さ方向に沿って深くなるほど拡径または縮径するテーパー状にすることもできる。
【0024】
上記の実施形態においては、流入部として凹部11を設けた場合を例として説明したが、流入部は、凹部11の底面12の全部に貫通孔を設けた孔部でもよい。
【0025】
上記の実施形態においては、パッキン100を耐火二層管継手300に適用した場合を例として説明したが、耐火二層管500に適用することもできる。また、内層管301と外層管302とから構成される耐火二層管に限らず、三層以上の耐火複合管に対しても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る耐火複合管用パッキンは、建築物に配設されるユーティリティ管、空調用通気管、配電管等の耐火複合管に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るパッキンの平面図
【図2】本実施形態に係るパッキンの側面図
【図3】本実施形態に係るパッキンの斜視図
【図4】本実施形態に係るパッキンを耐火複合管に取り付けた状態を示す斜視図
【図5】本実施形態に係るパッキンを耐火複合管に取り付けた状態を示す断面図
【図6】耐火複合管を製造する工程を示す模式図
【図7】別実施形態に係るパッキンの平面図
【図8】別実施形態に係るパッキンの側面図
【図9】別実施形態に係るパッキンの斜視図
【符号の説明】
【0028】
10 当接面
11 凹部(流入部)
12 底面
13 孔部(連通部)
14 溝部(連通部)
15 側面
20 外面
30 内周面
31 リブ
40 外周面
100 耐火複合管用パッキン
300 耐火二層管継手(耐火複合管)
301 内層管
302 外層管
400 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層管と当該内層管の外周に耐火性材料を型成形した外層管とを備えた耐火複合管に対し、前記外層管の型成形の際に取付ける耐火複合管用パッキンであって、
前記外層管と当接する当接面を有し、当該当接面に前記外層管の型成形時に前記耐火性材料が流入する流入部を設け、当該流入部に前記当接面とは異なる面と連通する連通部を設けた耐火複合管用パッキン。
【請求項2】
前記流入部は凹部である請求項1に記載の耐火複合管用パッキン。
【請求項3】
前記凹部は周方向に複数設けてある請求項2に記載の耐火複合管用パッキン。
【請求項4】
前記連通部は前記凹部の一部に設けた孔部である請求項2または3に記載の耐火複合管用パッキン
【請求項5】
前記連通部は前記凹部の一部に設けた溝部である請求項2または3に記載の耐火複合管用パッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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