説明

耐熱性フィルム又はシート

【課題】耐熱性と密着強度、表面傷付き性の良好なフィルム又はシート、着色剤又は耐光剤を含有した前記フィルム又はシートを提供することである。
【解決手段】非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる層を表層1a,1bとし、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を内層2として組み合わせた三層から成り立つフィルム又はシートで、厚みが50〜1000μm、三層(表層/内層/表層)の構成比が0.1/9.8/0.1〜4/2/4であること、柔軟温度が75℃以上、引っ張り強度が55N/mm以上の特徴を有することで、耐熱性と密着強度、表面傷付き性の良好なフィルム及びシートが得られる。各層には、着色剤及び/又は耐光剤を混合しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも三層からなる耐熱性に優れるフィルム又はシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的にカードの材料は、コアシートと称せられる白色に着色された中心層とコアシートの表面に積層され、カード表裏面に一対として被覆される透明なオーバーシートから構成される。コアシート及びオーバーシートの積層面の融着は熱融着を介してのドライラミネートもしくは、熱融着接着剤を用いてのプレス融着が使用されてきた(特許文献1を参照)。
【0003】
これらカード用シートは、一般に塩化ビニルシートが用いられてきたが、焼却処理の問題からポリ塩化ビニール系樹脂を敬遠する動きが近年見られている。また、ポリ塩化ビニール代替品としては、オレフィン系樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル樹脂が急速に市場に出回るようになった(特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1によれば、一般に使用されてきたポリ塩化ビニール樹脂では、ETCで使用可能なカードの耐久温度の目安は90℃であり、カードがたわんだり、へこんだりしてしまうといった不具合があった。また、塩化ビニール樹脂の代替品であるポリエチレンテレフタレート樹脂は、熱融着特性に乏しく、熱融着接着剤を用いたプレス融着による生産しかできないという不具合があり、熱融着接着剤をオーバーシートに塗布することでの生産工数とコストに課題があった。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル樹脂は、塩化ビニール系樹脂と同様に耐熱性が不足しており、高温時(90℃)にカードがたわんだり、へこんだりしてしまう不具合があった。
【0005】
また、耐熱性に優れた磁気ストライプカード、ICカード等の耐熱性プラスチックカードの中で、ETCカードのように特に耐熱性が求められるカードの素材として、非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成からなる層とこれより耐熱性が高い樹脂組成として芳香族ポリカーボネートにポリブチレンテレフタレートを溶融結合した樹脂を主成分とする樹脂組成物の層、または芳香族ポリカーボネート樹脂と脂肪族ジカルボン酸との共重合体を主成分とする樹脂組成物の層からなるカード用シートが利用されている(特許文献2を参照)。
【0006】
世の中のエコロジーブームにより、ポリ塩化ビニール系樹脂以外の素材からなるカード用シートのニーズが高まっており、例えば、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した実質的に非結晶性のポリエステル系樹脂からなるシートが提案されており、このシートは、印刷、磁気テープ貼り、プレス融着、打ち抜き、エンボス等のカード加工においてポリ塩化ビニール系樹脂に近いカードへの加工適性を持ち、ポリ塩化ビニール系樹脂シートと同じ設備を用いてカード化できるため、ポリ塩化ビニール系樹脂に替わるシート素材といわれている。また、プレス融着温度が約110℃であり、ポリ塩化ビニール系樹脂シートのプレス融着温度よりかなり低いため、プレスのサイクルを短縮することができて生産効率が高くなる利点がある(特許文献2を参照)。
【0007】
しかし、非結晶性のポリエステル系樹脂シートから製造されたカードは、実用耐熱温度が低く、高い実用耐熱温度が要求されているカード等の用途には適さなかった。非結晶性のポリエステル系樹脂の耐熱性を向上させるため、ポリカーボネート等の耐熱性樹脂をブレンドすることが検討されたが、ブレンドし溶融混練すると、エステルカーボネート反応が起こり、容易にシートが発泡し、またシートが褐色に着色されるなどシートの物性が低下する等の問題が生じていた(特許文献2を参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−118057号公報
【特許文献2】特開2001−80251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は耐熱性と密着強度、表面傷付き性の良好なフィルム又はシート、着色剤又は耐光剤を含有した前記フィルム又はシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、数多く存在する樹脂素材のうち、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物と芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の組み合わせにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち本発明によれば、以下の耐熱性、密着性及び表面傷付き性に優れたフィルム又はシートが提供される。
【0011】
[1]非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる層を表層とし、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を内層として組み合わせた少なくとも三層から成る耐熱性フィルム又はシート。
【0012】
[2]三層(表層/内層/表層)の全体厚みが50〜1000μmである[1]記載の耐熱性フィルム又はシート。
【0013】
[3]三層(表層/内層/表層)の全体厚みが80〜500μmであり、耐傷つき性を有する[1]に記載の耐熱性フィルム又はシート。
【0014】
[4]三層(表層/内層/表層)の各厚さ構成比が0.1/9.8/0.1〜4/2/4である[1]〜[3]のいずれかに記載の耐熱性フィルム又はシート。
【0015】
[5]柔軟温度が75℃以上(JIS K6734で測定)、且つ引っ張り強度が55N/mm以上(JIS K6745で測定)である[4]に記載の耐熱性フィルム又はシート。
【0016】
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のフィルム又はシートを、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる層どうしが接触する形態で、2組以上積層させた耐熱性フィルム又はシート。
【0017】
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の耐熱性フィルム又はシートの表層及び/又は内層へ、着色剤及び/又は耐光剤を添加した耐熱性フィルム又はシート。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐熱性フィルム又はシートによれば、耐熱性に優れたフィルム又はシートが提供でき、該フィルム又はシートは、密着性、傷付き性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
本発明の耐熱性フィルム又はシートは、図1に示すように、表層1a,1bは、非結晶の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなり、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を内層2として組み合わせた三層からなる耐熱性、密着強度、表面傷付き性の良好なフィルム又はシートである。また、図2に示すように該フィルムを非結晶の芳香族ポリエステル系樹脂組成物どうしが接触する形で、層構造として厚くしたフィルム又はシートとすることもできる。図2において、内層4を表層3aと表層3bで挟んだ層10、内層6を表層5aと表層5bで挟んだ層20、内層8を表層7aと表層7bで挟んだ層30を準備し、層10の表層3bと層20の表層5a、層20の表層5bと層30の表層7aが密着するように積層した三層から成る複層構造とし、全体を厚く構成したフィルム又はシートである。複層からなるフィルム又はシートは、内部にICチップ等を搭載したICカードや磁気ストライプカード等のカードの原料、定期券、免許証、キャッシュカード、クレジットカード、病院の診察券、住民基本カード、健康保険証、社員証等のカード等の原料、百貨店、スーパー等のメンバーズカード、ポイントカード等としての利用、工場での工程管理シート、物流管理シート、ICタグシート等としての利用もでき、該フィルム又はシートは、ETC等でも使用可能な耐熱性を有するカードの原料となる耐熱性フィルム又はシートであり、耐熱性が求められるETCカードとしての利用が可能である。
【0021】
本発明で使用される、芳香族ポリエステル系樹脂組成物は、耐衝撃性、熱曲げなど2次加工に優れ、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性が130℃と高く、耐衝撃性や電気絶縁性に優れた特性を持ち、広く利用されているため、本発明のフィルム又はシートは原料費が安く、安価に製造することが可能である。また、内層に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ではなく、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にポリブチレンテレフタレートを溶融混合させて使用されている例(特許文献2を参照)もあるが、本発明の実施例の表3に示すように比較試験の結果、耐熱性、密着強度、傷付き性で不良な結果となり、内層は芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のみで使用するほうが好ましいという結果を得た。この結果は特許文献2の内容と反するが、今回の比較実験では芳香族ポリカーボネート樹脂のみを内層に使用するほうが、良好と判断した。
【0022】
芳香族ポリエステル系樹脂組成物であるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−G)とは、六員環の芳香族を含有する非結晶性のエステルのポリ重合体の熱可塑性樹脂で、耐衝撃性に優れた透明な非結晶性材料である。熱曲げなど2次加工に優れ、アクリルのような透明性を持っている。収納ケース、広告版、医療品、電気部品の包装に使用される。
【0023】
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(PC)とは、ビスフェノールAと塩化カルボニル又はジフェニルカーボネートを反応させて得られるポリエステルの一種で、透明で軽く、耐熱性は、130℃と高く、耐衝撃性や電気絶縁性に優れた特性を持つ。CD、カメラ、携帯電話、OA機器の部品、食品関連用途に使われている。有機溶剤に弱く、シンナーなどに触れるとひび割れや表面が溶かされたりする。また、強アルカリ性の水溶液に接触するとポリカーボネートが加水分解することがある。
【0024】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)とは、テレフタル酸ジメチルと1,4ブチレングリコールを出発原料として製造されるポリエステル樹脂のことを言う。吸水性が小さく、耐候性、耐薬品性が良く、性能、成形性共にバランスの取れた高性能樹脂である。主に電気、電気機器部品、自動車部品、精密機器部品に使用される。ポリブチレンテレフタレートは、熱水中では加水分解するため、長期連続使用には、不向きである。
【0025】
アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)とは、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体でスチレン系の熱可塑性樹脂のことを言う。スチレンとアクリロニトリルの2種類のモノマーが一定の比率で混ぜ合わされて結合し、高分子になったもので、ポリスチレンに似て硬く、やや黄味を帯びた透明な樹脂である。ポリスチレンより優れた耐化学薬品性、耐熱性を有し表面が傷付きにくい特徴を持つ。冷蔵庫低温ケース、コーヒーメーカー部品等に使用されている。
【0026】
耐熱性フィルムの三層(表層/内層/表層)の全体厚みは、50μmでも良いが、表面の傷付き性で不良であり、80μmでやや劣るという結果であった。50μmでも耐熱性は良好であり、本発明の、非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物を表層とし、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を内層とするフィルム又はシートは、三層の全体厚みが、50〜1000μmが最も良く、次に好ましくは70〜800μmである。更に好ましくは、80〜500μmである。
【0027】
耐熱性フィルムの三層(表層/内層/表層)の各厚さ構成比は、最も好ましくは0.1/9.8/0.1〜4/2/4であるが、表層の厚みを高めた、0.5/9/0.5〜3/4/3がより好ましい構成比であり、更に好ましい構成比は、さらに表層の割合を高めた、1/8/1〜2.5/5/2.5である。
【0028】
該耐熱性フィルム又はシートの物理的特性は、JIS K6734で測定したときの柔軟温度が75℃以上且つJIS K6745で測定したときの引っ張り強度が55N/mm以上が望ましい。ETCで使用可能なカードの耐久温度の目安は90℃であり、本発明による表層を芳香族ポリエチレン系樹脂組成物、内層を芳香族ポリカーボネート樹脂組成物とした場合、このETCカードとして求められる耐熱性は充分に備えている。
【0029】
該耐熱性の三層フィルムまたはシートは、密着性に優れているため、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成分からなる層どうしが接触する形態で、図2に示したように2組以上積層させて、ICカードのような厚さにすることができ、傷付き性も良好なため、例えば、ICチップを内蔵した身分証明書、病院での受診カード、銀行の口座カード、企業での社員証カードなど長期にわたって使用するカードで表面が傷付きやすい場合や、定期券、遊技場でのパスポート券のように機械の中に通して利用するカードで表面に傷が付き易い条件でのカードとして利用することができる。また、耐熱性に優れているため、車内で高温となるETC受信機に差し込むETCカードとしても利用が可能である。
【0030】
該耐熱性フィルム又はシートの表層及び/又は内層に着色剤を加えることもでき、カラフルなフィルムやシートが作成できることにより、印刷をしなくとも色のあるカードを作成できる。着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。このうち、無機顔料としては、白色顔料として酸化チタン、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、黄色顔料として酸化鉄、チタンイエロー、赤色顔料として酸化鉄、青色顔料としてコバルトブルー、群青などが挙げられる。また、有機顔料としては、黄色は、モノアゾ、縮合アゾ、アンスラキノン、ジスアゾ、複素環、赤色はキナクリドン、アンスラキノン、ペリレン、モノアゾ、青色はフタロシアニン、緑色はフタロシアニンなどが挙げられる。更に染料としては、黄色はモノアゾ、アンスラキノン、ジスアゾ、複素環、赤色はアンスラキノン、ペリノン、チオインヂゴ、ジスアゾ、青色はアンスラキノンなどが挙げられる。
【0031】
また、紫外線吸収剤等の耐光剤を添加した耐熱性フィルム又はシートとすれば、住宅やビルの窓ガラス、車の窓ガラス等に張ることで紫外線の室内、車内への侵入をカットでき、透過光から紫外線を除くことが可能である。また、例えばサングラスやサンバイザー、ビーチパラソル、日傘等に使用すれば、商品に紫外線カットという付加価値をつけることができる。本発明のフィルム又はシートに耐光剤を含有させ作成したフィルムを、薬品の貯蔵容器に張ることで光による薬品の劣化、分解及び変性等を防ぐことができる。製薬分野で、この耐光剤を含有したフィルムで、薬を包むことで、光による薬の劣化、分解及び変性等を防ぐことができる。
【0032】
本発明のシートを構成する表層及び/又は内層には、必要に応じてその特性を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば離型剤、安定剤、酸化防止剤、強化剤などを添加することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
以下本発明の実施例について述べる。まず、表層が非結晶性芳香族ポリエチレン樹脂組成物、内層が芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成る膜厚80μm、表層/内層/表層の比率(以下厚さ構成比という)0.1/9.8/0.1の実施例1、膜厚120μm、厚さ構成比0.5/9/0.5の実施例2、膜厚500μm、厚さ構成比0.5/9/0.5の実施例3及び膜厚500μm、厚さ構成比4/2/4の実施例4、膜厚50μm、厚さ構成比0.01/9.98/0.01の比較例1膜厚50μm、厚さ構成比0.05/9.9/0.05の比較例2、表層が非結晶性芳香族ポリエチレン樹脂組成物、内層が芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にポリブチレンテレフタレート樹脂を混合した樹脂から成る、膜厚200μm、厚さ構成比0.1/9.8/0.1の比較例3、膜厚200μm、厚さ構成比1/8/1の比較例4、表層がアクリロニトリル・スチレン樹脂、内層が芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成る、膜厚200μm、厚さ構成比0.05/9.9/0.05の比較例5の各フィルムを作り、試験を行った。
【0035】
耐熱性は、JIS K6734に基づいて測定し、柔軟温度が75℃以上のものを良好(○)、75℃以下のものを不良(×)とし、その中間のものをやや劣る(△)として評価し、表1〜4に示す。
【0036】
密着性はJIS K6854に基づいて測定した、密着性の良好なものを(○)、不良なものを(×)、やや劣るものを(△)で評価した。
【0037】
傷付き性は、JIS K5600に基づいて測定した。傷つきにくい傷付き性が良好なものを(○)、傷付きやすい傷付き性が不良のものを(×)、やや劣るものを(△)で評価した。
【0038】
実施例1乃至4では、表層を芳香族ポリエステル系樹脂、内層を芳香族ポリカーボネート樹脂とし三層のフィルムを作成し、表層を内層の比率を変えて耐熱性、密着性、傷付き性を比較した。実施例1は表層より内層の比率を高くしてあり、層厚を80μmとしたが、表層と内層の比率が悪いことから耐熱性、密着性、傷付き性全てでやや劣る結果となった。実施例2は、表層と内層の比率が最適な条件であるが、耐熱性、密着性でやや劣る〜良好な結果となり、傷付き性は良好であった。実施例3は、表層と内層の比率が最良の条件であり、耐熱性、密着性、傷付き性の全てで良好であった。実施例4は、内層に比べ表層の比率が高く、層厚は厚くても耐熱性でやや劣り、密着性、傷付き性は良好であった。
【0039】
表2の比較例1〜2では、表層に芳香族ポリエステル系樹脂、内層を芳香族ポリカーボネート樹脂とし三層のフィルムを作成し、表層を内層の比率、層厚を変えて試験を行った。比較例1では、表層の比率が低く層厚も50μmと薄いため、耐熱性は良好であったが、密着性でやや劣り、傷付き性は不良であった。比較例2では層厚は比較例1と同じ50μmと薄いが、表層の比率を高めて試験をしたが、結果は比較例1と同じであった。
【0040】
表3の比較例3及び4は、内層に芳香族ポリカーボネート樹脂にポリブチレンテレフタレート樹脂を混合比8:2で混合し、表層は、芳香族ポリエステル系樹脂でフィルムを作成した。比較例3及び4で表層と内層の比率を変えているが、層厚が200μmと厚くても、耐熱性、密着性、傷付き性の全てで不良となった。内層にポリブチレンテレフタレート樹脂を混ぜることは、品質を劣化させることが明らかとなった。
【0041】
表4は、表層にアクリロニトリル・スチレン樹脂組成物を使用し、内層は、芳香族ポリカーボネート樹脂とした。比較例5は、表層の比率が内層に比べ低い条件で、層厚は200μmと厚い条件としたが、密着性は良好であったが、耐熱性はやや劣る、傷付き性で不良であった。このことより、表層にアクリロニトリル・スチレン樹脂組成物を用いることは、傷付き性が低下することが明らかとなった。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の耐熱性フィルム又はシートは、耐熱性、密着性、傷付き性に優れ、定期券、免許証、キャッシュカード、クレジットカード、病院の診察券、住民基本カード、健康保険証、社員証、磁気カードやICカードのほか、百貨店、スーパー等のメンバーズカード、ポイントカードとしての利用、工場での工程管理シート、物流管理シート、ICタグシートとしての利用、耐熱性が必要とされるETCカードにも利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の耐熱性フィルム又はシートの一実施形態を示す断面模式図である。
【図2】本発明の耐熱性フィルム又はシートの他の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1a:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、1b:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、2:芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、3a:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、3b:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、4:芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、5a:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、5b:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、6:芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、7a:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、7b:非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂組成物の表層、8:芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる層を表層とし、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を内層として組み合わせた少なくとも三層から成る耐熱性フィルム又はシート。
【請求項2】
三層(表層/内層/表層)の全体厚みが50〜1000μmである請求項1記載の耐熱性フィルム又はシート。
【請求項3】
三層(表層/内層/表層)の全体厚みが80〜500μmであり、耐傷つき性を有する請求項1に記載の耐熱性フィルム又はシート。
【請求項4】
三層(表層/内層/表層)の各厚さ構成比が0.1/9.8/0.1〜4/2/4である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性フィルム又はシート。
【請求項5】
柔軟温度が75℃以上(JIS K6734で測定)、且つ引っ張り強度が55N/mm以上(JIS K6745で測定)である請求項4に記載の耐熱性フィルム又はシート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム又はシートを、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂組成物からなる層どうしが接触する形態で、2組以上積層させた耐熱性フィルム又はシート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱性フィルム又はシートの表層及び/又は内層へ、着色剤及び/又は耐光剤を添加した耐熱性フィルム又はシート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−142893(P2008−142893A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328789(P2006−328789)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(591258587)日本カラリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】