説明

耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シート

【課題】 本発明は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートとゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層との間に、デラミが発生しにくい耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、スチレンとメタクリル酸又はアクリル酸との共重合体を基材樹脂とする耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゴム粒径が1.5μm以下のゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層又はゴム粒径が1.5μm超2.5μm以下かつゲル含有率が28%以上のゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層が押出ラミネートにより積層接着されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートに関し、詳しくは耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートにゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層が積層された積層発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スチレン−メタクリル酸共重合体またはスチレン−アクリル酸共重合体などの耐熱性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートの熱成形容器が、電子レンジ加熱食品用容器として使用され、その需要が増えている。従来は、容器に耐油性を付与するために、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面にポリオレフィン系樹脂フィルムが積層されたものが使用されていたが、最近では、より高い耐熱性や突き刺し強度が必要とされる用途が増え、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートにゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層が押出ラミネートにより積層接着された積層発泡シートや、さらにゴム変性ポリスチレン系樹脂層面にポリスチレン−ポリプロピレン多層フィルムが積層された積層発泡シートの要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記各種の積層発泡シートは、通常、ゴム変性ポリスチレン系樹脂層や樹脂フィルムを積層して数日間のうちに容器へと熱成形されるが、生産工程の変更などにより積層後長期間を経て熱成形が行なわれることがある。積層直後には耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートとゴム変性ポリスチレン系樹脂層とが十分に接着していても、積層後長期間経過すると耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートとゴム変性ポリスチレン系樹脂層との間で接着力が低下し、熱成形時に両者が剥がれてしまうという問題(デラミ)が生じることが判明した。なお、この耐熱ポリスチレン系樹脂発泡シートからのゴム変性ポリスチレン系樹脂層のデラミは、通常のポリスチレンを基材樹脂とする発泡シートにゴム変性ポリスチレン系樹脂を押出ラミネートにより積層接着した場合には、起きない問題である。
【0004】
本発明は、前記問題点に鑑み、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートとゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層との間に、デラミが発生しにくい耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下に示す耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが提供される。
[1] スチレンとメタクリル酸又はアクリル酸との共重合体を基材樹脂とする耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゴム粒径が1.5μm以下のゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層又はゴム粒径が1.5μ超2.5μm以下かつゲル含有率が28%以上のゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層が押出ラミネートにより積層接着されてなることを特徴とする耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明の耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいては、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートに積層する樹脂層に特定のゴム変性ポリスチレン系樹脂を使用する事によって、積層後長期間経時した後でも、該発泡シートと樹脂層間の剥離強度の低下がなく、デラミが発生することがない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートについて詳細に説明する。
本発明の耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、積層発泡シートともいう。)は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に特定のゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層が押出ラミネートにより積層接着されたものである。
【0008】
本発明における耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、耐熱性発泡シートともいう。)の基材樹脂は、スチレンとメタクリル酸又はアクリル酸との共重合体である。本発明においては、メタクリル酸及びアクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸という。耐熱性ポリスチレンとしての一般的なスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中の(メタ)アクリル酸成分の含有量は、該共重合体中に5〜25重量%程度である。また、スチレンと共重合される共重合成分はメタクリル酸とアクリル酸との混合物であってもよい。また、成形性などを改良するために、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが第三成分として少量共重合されることもある。
なお、本明細書において、基材樹脂とは発泡シートを構成する樹脂または樹脂層を構成する樹脂の50重量%以上、好ましくは60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上を占める樹脂成分をいう。
【0009】
但し、前記耐熱性発泡シートを構成するスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体に、本発明の所期の目的が阻害されない程度に、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のポリスチレン系樹脂や、ポリフェニレンエーテル系樹脂を添加することができる。
【0010】
更に、前記スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体に、ブタジエンゴム、エラストマー、エチレンプロピレンゴム、エチレンブタジエンゴム、又、イソプレン、クロロプレン、ブタジエンとスチレンの共重合体等のゴム分や、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂等を、本発明の所期の目的が阻害されない程度に、添加することができる。
【0011】
本発明においては、前記耐熱性発泡シートの片面又は両面に非発泡の樹脂層が積層される。該樹脂層の基材樹脂はゴム変性ポリスチレン系樹脂である。
該ゴム変性ポリスチレン系樹脂は、ゴム状重合体にスチレン系重合体がグラフトし、分散相を形成するゴム状重合体粒子と、連続相を形成するスチレン系重合体で構成されるものである。該ゴム変性ポリスチレン系樹脂は、通常、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体をラジカル重合して得られる樹脂としてなるものである。
【0012】
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の公知のものが使用できるが、好ましくはスチレンである。スチレン系単量体は単独で使用することも混合物として使用することもできる。また、これらのスチレン系単量体と共重合可能なアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のスチレン系単量体以外の単量体も、ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物の性能を損なわない程度、例えばスチレン系単量体100質量部に対し、5質量部以下なら添加して重合したものであってもよい。さらにジビニルベンゼン等の架橋剤をスチレン系単量体100質量部に対し、1質量部未満を添加して重合したものであっても差し支えない。
【0013】
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂を構成するゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンのランダムまたはブロック共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレンのランダムまたはブロック共重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどが挙げられ、特にポリブタジエン、スチレン−ブタジエンのランダムまたはブロック共重合体が好適に用いられる。また、これらは一部水素添加されていても差し支えない。
【0014】
なお、前記樹脂層中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、無機充填剤、着色剤等を添加することができる。
【0015】
本発明においては、前記ゴム変性ポリスチレン系系樹脂の中でも、そのゴム粒径が1.5μm以下のものが用いられる。ゴム粒径が1.5μm以下であれば、積層時の樹脂層表面の凹凸が小さくなり、樹脂層と発泡シートとが十分に密着するために十分な接着強度を維持できるので、経時と共に接着強度が低下しにくくなるものと推察される。ゴム粒径の下限は、概ね0.1μmであり、耐衝撃性の観点から、好ましくは0.2μmである。
【0016】
ゴム粒径が1.5μm以下のゴム変性ポリスチレン系樹脂のゲル含有率は、15%以上であることが好ましい。ゲル含有率が余りにも低すぎると、所望の耐衝撃性が得られない虞がある。かかる観点から、ゴム粒径が1.5μm以下のゴム変性ポリスチレン系樹脂のゲル含有率は、18%以上であることがより好ましい。ゲル含有率の上限は、概ね35%であり、樹脂層の外観の観点からは、好ましくは33%である。
【0017】
また、本発明においては、ゴム粒径が1.5μm超であっても、ゴム粒径が2.5μm以下かつゲル含有率が28%以上のゴム変性ポリスチレン系樹脂も用いられる。このものはゴム粒径がある程度大きいにもかかわらず、ゲル含有率が高いために、耐熱性発泡シートと樹脂層との界面の滑りが少ないことにより、密着性を確保でき所望される接着強度を維持できるので、経時と共に接着強度が低下しにくくなるものと推察される。
但し、ゴム粒径が2.5μm超になるとゲル含有率が28%以上であっても、経時と共に接着強度が低下してしまう。
ゲル含有率の上限は、概ね35%であり、樹脂層の外観の観点からは、好ましくは33%である。
【0018】
本明細書におけるゴム粒径は、ゴム変性ポリスチレン系樹脂の超薄切片の透過型電子顕微鏡写真について、分散ゴム粒子500個の粒径を測定し、下記(1)式により算出した値である。なお、ゴム粒子が配向しているものについては、短径と長径との平均値をもって粒径とする。
ゴム粒径=ΣniDi/ΣniDi ・・・(1)
上記(1)式中、niは粒径Diのゴム粒子の数である。
【0019】
本明細書において、前記ゲル含有率は、次のようにして測定される。
まず、試料約1.5gを精秤し、100mLの共栓付き三角フラスコに入れ、メチルエチルケトン(MEK)30mLを加えて一昼夜放置し、試料がMEKに溶解しているのを確認した後、10分間振とうする。これを精秤した遠心管に入れ、4000回転/分で40分間遠心分離する。デカンテーションにより遠心分離した上澄み液を捨て、遠心管内壁を少量のMEKで洗浄する。遠心管をドラフト内で1日予備乾燥した後、70℃の真空乾燥機で15時間以上乾燥する。乾燥後、デシケーター内で常温まで冷却した後、遠心管を精秤し、下記の(2)式によりゲル含有率を求める。尚、樹脂層のゲル含有率を測定する場合は、積層発泡シートから樹脂層を切り出したものを試料として使用し、ゴム変性ポリスチレン系樹脂原料のゲル含有率を測定する場合には、ゴム変性ポリスチレン系樹脂のペレットを使用する。
【0020】
ゲル含有率(重量%)=(b−a)/S×100 (2)
ただし、S:試料の重量、a:遠心管の重量、b:乾燥ゲルと遠心管の合計重量。
【0021】
該ゴム変性ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は1〜15g/10分が好ましく、より好ましくは2〜10g/10分である。メルトフローレイトが上記範囲内であれば、押出ラミネートにより外観良好な樹脂層を容易に形成することができ、かつ樹脂層が耐衝撃性などの機械的強度に優れたものとなる。
【0022】
前記メルトフローレイトは、JIS K7210(1976)に基づいて、表1の条件8により測定される値である。
【0023】
本発明においては、樹脂層の坪量(積層量)は20〜300g/mが好ましく、特に40〜200g/mが好ましい。樹脂層の積層量が少なすぎると、耐熱性や突き刺し強度を付与するという所期の目的が得られない虞がある。樹脂層の積層量が多すぎると、用途によっては軽量性が損なわれる虞や、容器形状によっては所望の形状どおりに熱成形できなくなる虞がある。
【0024】
本発明においては、耐熱性発泡シートの見かけ密度は、0.05〜0.7g/cmが好ましく、更に好ましくは0.1〜0.3g/cmである。見かけ密度が上記範囲内であると、積層発泡シートを熱成形して得た容器が強度軽量性、断熱性などのバランスに特に優れたものとなる。
【0025】
また、該耐熱性発泡シートの平均気泡径は0.02〜0.4mmが好ましく、更に好ましくは0.04〜0.2mmである。平均気泡径が上記範囲内であることにより、積層発泡シートの熱成形性と、得られた容器の強度、外観、印刷適性などの物性とのバランスが特に優れたものとなる。尚、耐熱性発泡シートの平均気泡径は、気泡調整剤の量を調節したり、耐熱性発泡シートの拡幅比や引取速度の調節や、押出直後に発泡中の発泡体に空気を吹きかけて発泡体の表面を急冷すること等によって微調整することができる。
【0026】
前記平均気泡径は、つぎのように求められる。積層発泡シートの幅方向に等間隔で10箇所、押出方向に垂直方向の断面を顕微鏡で撮影し、各々の断面写真について耐熱性発泡シートの厚さtを測定する。次に、各断面写真の厚さ方向に直線lを引き、直線lと交わる耐熱性発泡シートにおける全ての気泡数nを数える。このようにして得られたtとnから各断面写真について気泡径(t/n)を計算し、10箇所の(t/n)の平均を耐熱性発泡シートの平均気泡径とする。
【0027】
また、樹脂層を積層する側の耐熱性発泡シートの表面から200μmの部分の密度(以下、表層密度という)は、0.1〜0.3g/cmが好ましく、より好ましくは0.15)〜0.25g/cmである。該表層密度が上記範囲内であると、耐熱性発泡シートと樹脂層との接着性に優れたものとなる。
【0028】
前記表層密度の測定は次のように行なう。
耐熱性発泡シートの表面から200μmの部分をスライスし、幅5mm×長さ20mmの試験片に切りそろえるとともに、試験片の重量と厚みをゲージで測定する。試験片の重量を試験片の体積(幅×長さ×厚み)で割算し、単位換算して表層密度を求める。
上記測定を、耐熱性発泡シートの幅方向における等間隔の10箇所について行い、それらの算術平均値を積層面の表層密度とする。
【0029】
樹脂層を積層する側の耐熱性発泡シートの表面粗さは、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上である。該表面粗さが小さすぎると、径時と共に耐熱性発泡シートと樹脂層との接着力が低下しやすくなる虞がある。表面粗さの上限に制限はないが、概ね5μm、好ましくは3μmである。
【0030】
本発明における表面粗さとは中心線表面粗さをいい、表面粗さ計を用いてJIS−B0601(1994)に準じて、積層前の耐熱性発泡シートについて測定する。表面粗さ計としては一般に使用されているものでよく、例えば、(株)小坂研究所製のサーフコーダSE−3OD、サーフコーダSE1700αが挙げられる。中心線表面粗さの測定は、前記測定サンプルの幅方向に沿って8mmの測定距離を5回測定し、その平均値を中心線表面粗さとする。なお、測定時の計測速度は0.25mm/秒以下で実施する。
上記測定を、耐熱性発泡シートの幅方向における等間隔の10箇所について行い、それらの算術平均値を積層面の表面粗さとする。
【0031】
なお、表層密度及び表面粗さは、発泡直後の発泡体の表面にエア等の冷却媒体を吹きかけるなどの従来周知の方法によって調整することができる。すなわち、発泡直後に強く冷却することにより、表層密度を高め、表面粗さを小さくすることができる。
【0032】
本発明の積層発泡シートにおいて、その厚みは、熱成形性と、熱成形により得られる容器の断熱性、剛性などの物性とのバランスに優れることから、好ましくは0.7〜5mm、更に好ましくは1〜3mmである。
【0033】
また、本発明の積層発泡シート全体の独立気泡率は、熱成形時の二次発泡性や得られる成形体の強度等の観点から、70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。
【0034】
本明細書における積層発泡シートの独立気泡率は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用して測定(無作為に積層シートから25mm×25mm×シート厚みに切断したカットサンプルを、サンプルの厚みの総和が20mmに最も近づくように(ただし、20mmを超えない。)複数枚重ねてサンプルカップ内に収容して測定する。)された積層シート(カットサンプル)の真の体積Vxを用い、下記(3)式により独立気泡率S(%)を計算し、N=5の平均値として求める。
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (3)
【0035】
次に、本発明の積層発泡シートの製造方法について説明する。
本発明の積層発泡シートを構成する耐熱性発泡シートは、従来公知の所謂押出発泡により得ることができる。即ち、押出機を用いて前記基材樹脂、発泡剤、必要に応じて気泡調整剤等の各種の添加剤を溶融混練した後、目的とする樹脂温度に調整された発泡性溶融樹脂を、ダイ内から大気圧下に押出することによって形成される。
【0036】
発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類または二酸化炭素、窒素、水等の物理発泡剤を用いることができる。この中では、耐熱性発泡シートの製造が容易で、得られる積層発泡体の物性が優れていることから、ブタンが好ましい。
【0037】
発泡剤の添加量、気泡調節剤の添加量は、基材樹脂の種類・発泡剤の種類、気泡調整剤の種類や、目的とする各発泡層の密度によって適宜選択できるが、通常は、基材樹脂100重量部に対して、発泡剤は0.5〜10重量部、気泡調整剤は0.1〜0.4重量部である。又、上記放出される溶融樹脂混合物の樹脂温度は、基材樹脂の種類、発泡剤の種類、気泡調節剤の種類や、目的とする発泡層の密度によって適宜選択できるが、通常は120〜180℃である。
【0038】
本発明の積層発泡シートにおいては、前記積層発泡シートの樹脂層にさらに熱可塑性樹脂フィルムを積層することができる。該熱可塑性樹脂フィルムの基材樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂が挙げられ、これらの樹脂が用いられた多層フィルムが挙げられる。これらの樹脂フィルムの中でも、耐油性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層発泡シートに積層する場合、ポリオレフィン系樹脂フィルムを接着層を介して積層発泡シートに積層するか、ポリオレフィン系樹脂フィルムとポリスチレン系樹脂フィルムとを予め積層接着したフィルム(PO/PSフィルム)を、ポリオレフィン系樹脂フィルム面側が表面となるように加熱融着させて積層することが好ましい。
【0039】
本発明の積層発泡シートは熱成形性に優れるものであり、熱成形により得られる成形体は電子レンジ加熱食品用容器として好適に用いられるものである。
熱成形方法としては、真空成形や圧空成形、更にこれらの応用としてフリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等やこれらを組み合わせた成形方法等が挙げられる。かかる熱成形法は、短時間に連続して容器を得ることができるので、好ましい方法である。
【実施例1】
【0040】
次に、本発明の耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シートについて、実施例、比較例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1〜8、比較例1〜5
[耐熱性発泡シートの製造]
製造装置として、第一押出機(スクリュー径115mm)と第二押出機(スクリュー径150mm)と第二押出機の出口に取付けられた口径180mmの環状ダイとを有するタンデム押出機を用いた。
耐熱ポリスチレン系樹脂:スチレン−メタクリル酸共重合体(PSジャパン社製G−9001)96重量部と、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(旭化成工業社製タフプレン125)4重量部との混合樹脂100重量部に対し、気泡調整剤としてタルクを表1に示す量添加し、第一押出機のホッパー上にセットしたバッチ式連続混合装置にて均一に混和した後、押出機へ供給した。押出機のシリンダー温度は最高設定温度を240℃とし、発泡剤として表1に示す量の混合ブタン(ノルマルブタン35重量%とイソブタン65重量%との混合物)を前記混合樹脂100重量部に対して圧入し、続いて第二押出機にて、表1に示す押出温度に冷却してから、環状ダイに供給し、ダイのスリットを通して300kg/時の速度で円筒形に押出し、その直後に、円筒の内側と外側にエアーをかけて冷却した。その後、直径670mmのマンドレルにてシートをさらに冷却しながら2枚に切り開いて幅1050mm耐熱性発泡シートを得た。得られた耐熱性発泡シートの物性を表3に示す。
【0042】
[樹脂層の積層]
樹脂層に用いたゴム変性ポリスチレン系樹脂の種類、物性等を表2に示す。
表2に示す種類のゴム変性ポリスチレン系樹脂を押出温度260℃でTダイから押出して、前記耐熱性発泡シートに表3に示す坪量となるように積層し積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートにおける耐熱性発泡シートに対する樹脂層の接着性の評価を表3に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】


【0045】
【表3】


【0046】
表2におけるゴム粒径、ゴム量の測定は前記の方法により行なった。
【0047】
表3における耐熱性発泡シートの厚み及び見掛け密度は以下の方法により求めた。まず、耐熱性発泡シートを幅方向に亘って押出方向に100mmの長さに切り出し、さらに幅方向の両端部25mmずつ切除し幅方向中央部1000mmの部分を試験片とした。この試験片をさらに幅方向に10等分し、その中央付近の厚みをマイクロゲージにより測定した。各測定点における厚みを算術平均した値を耐熱性発泡シートの厚みとした。また、該試験片の重量を測定し、その重量を上記厚みと試験片の面積(具体的には、1000mm×100mm)とから求めた体積で割り算し、さらにg/cmに単位換算して耐熱性発泡シートの見掛け密度とした。
【0048】
表3における耐熱性発泡シートの積層面の表層密度、積層面の表面粗さの測定は、前記の方法により行なった。
【0049】
表3におけるゴム変性ポリスチレン系樹脂層の積層量(坪量)は、積層発泡シートの坪量から、予め測定しておいた耐熱性発泡シートの坪量を引き算することにより求めた。なお、各シートの坪量は以下のようにして求めた。シートを幅方向に亘って押出方向に100mmの長さに切り出し、さらに幅方向の両端部25mmずつ切除し幅方向中央部1000mm部分を試験片とした。試験片の重量を、該試験片の面積(具体的には、1000mm×100mm)で割り算し、さらに[g/m]に単位換算ずることにより各シートの坪量とした。
【0050】
[接着性評価]
発泡シートと樹脂層との接着性は以下のようにして評価した。まず、樹脂層を積層した積層発泡シートを400mm×400mmのサイズに切り出し、切り出した積層発泡シートを木枠(有効枠内300×300mm、枠幅50mm)に挟み160℃のオーブンで25秒加熱した。加熱した積層発泡シートからシートの幅方向に略等間隔に5個の試験片を切り出し、各試験片に対してJIS Z0237に準拠した方法によりそれぞれの剥離強度を測定し、それらの測定値(n=5)を算術平均することにより剥離強度を求めた。この測定を積層発泡シート製造後から1日おきに行い、剥離強度が500mN/25mm以下となり凝集破壊から界面破壊となる日数を求めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンとメタクリル酸又はアクリル酸との共重合体を基材樹脂とする耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゴム粒径が1.5μm以下のゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層又はゴム粒径が1.5μm超2.5μm以下かつゲル含有率が28%以上のゴム変性ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂層が押出ラミネートにより積層接着されてなることを特徴とする耐熱性ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。

【公開番号】特開2012−224025(P2012−224025A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95195(P2011−95195)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】