説明

耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤

【課題】 耐熱性芽胞形成細菌に対して高い増殖抑制作用を有し、しかも生分解性がよく、人体に対する安全性にも優れた耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤を提供する。
【解決手段】 コーヒー生豆を発酵させて得た発酵液を有効成分とすることを特徴とする耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般に、レトルト殺菌等で知られる高温・高圧条件下での加熱殺菌方法や化学薬品処理等以外に有効的な手段がない耐熱性芽胞形成細菌の増殖を抑制することができる耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、天然原料・素材を用いる加工食品の品質保持における最大の課題は、微生物の制御であり、微生物による腐敗や変質を極力抑えて安定的に流通させることが当該製造業者に求められている。一般に、自然界には、多数の微生物が存在し、人類と共存することが常であるが、時と場合によりそれらの存在は有害に作用することがある。耐熱性芽胞形成細菌は、薬剤や熱に対する強固な耐性を持つことが知られており、通常の加熱処理条件では死滅せず、製造場面では最終的な製品にまで残存し品質に悪影響を及ぼすものである。
【0003】通常行われている加熱殺菌は、簡便且つ有効な手段として古くから用いられ、現在も常用されている。しかしながら、加熱殺菌方法は、加熱による食品素材そのものへの負荷・影響を考慮した場合の風味、香味や有用成分の安定性等に対する悪影響は著しく、また、殺菌効果とのバランスから加熱温度と時間に限界があるため、常在菌であるバチルス属に代表される耐熱性芽胞形成細菌には十分な効果が期待できない場合がある。
【0004】従来、食品分野では、防腐・防黴を目的に食品添加物である保存料や、日持ち向上剤が使用され、加工食品や香粧品等の製品の保存流通期間中における品質保持に大きく貢献してきている(「別冊フードケミカル5 保存料総覧」,食品化学新聞社,平成5年5月25日発行)。
【0005】このような事情から、従来以上に食品の保存技術の重要性がますます増してきており、中でも耐熱性芽胞形成細菌に対して顕著な効果を示す制御技術の開発が望まれているのが現状である。特に、食品分野では、人体に摂取されることを考慮し安全であることが必須要件であるが、このような観点からショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルなどの食品添加物を主剤とした保存料、日持ち向上剤が多く用いられている(「食衛誌」第18巻、第3号、第217頁,日高 徹著「食品用乳化剤 第2版」、244ページ、幸書房発行)。
【0006】しかしながら、これらの食品添加物を主剤とした保存料、日持ち向上剤では、耐熱性芽胞形成細菌に対する殺菌効力等の面で未だ十分に満足しうるものではなかったものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、安全性に優れ、且つ耐熱性芽胞形成細菌に対して高い増殖抑制効果を発現させることができる耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来の課題等を解決するため鋭意研究を重ねた結果、コーヒー生豆を発酵させて得た発酵液に、耐熱性芽胞形成細菌に対する増殖抑制効果を見い出し、本発明を完成するに至ったのである。すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)に存する。
(1) コーヒー生豆を発酵させて得た発酵液を有効成分とすることを特徴とする耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤。
(2) 発酵液には、下記分析データで示される成分が含有される上記(1)記載の耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤。
分析データ:分析用ODSカラム(YMC社製分析用ODSカラム、YMC-PACK ODS-AQ AQ-312,6.0×150mm)を用いて、カラム温度30℃、流速1.0ml/分、メタノール/水/酢酸(20/80/0.3)を溶出液として行った高速液体クロマトグラフ―において、市販のコーヒー飲料には存在せず、同条件で検出されるクロロゲン酸やカフェインのより必ず前に溶出される二成分を含むこと。
【0009】なお、本発明で規定する「耐熱性芽胞形成細菌」とは、耐熱性を有する芽胞(胞子)を形成する細菌をいい、具体的には、Bacillus属細菌(例えば、subtilis,cereus,stearothermophilus,megateriumなど)、Clostridium属細菌(例えば、ボツリヌス菌、sporpgenes,pertringensなど)、Actinomyces属細菌(例えば、violaceusなど)等の細菌をいう。また、本発明で規定する耐熱性芽胞形成細菌に対する「増殖抑制(効果)」とは、液体培地中で微生物の増殖に供い観察される濁度の増減、並びに、通常法に従い所定の栄養を含んだ寒天培地と共にシャーレへ混釈後、培養期間を経た後に計測しうるコロニー数での増減の差をいう。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明における耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤は、コーヒー生豆を発酵させて得た発酵液を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0011】本発明に用いるコーヒー生豆としては、例えば、ロブスタ種のインドネシアロブスタ等、リベリカ種、アラビカ種のマンデリン、モカマタリ、ガテマラ、キリマンジャロ、ブルーマウンテン、エチオピアモカ、ハワイコナ、サントス等などが挙げられ、通常コーヒー飲料に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。ただし、これらのコーヒー生豆は、飲用に原料として市販されているいずれのものであってもよいが、コーヒー飲料を製造する以前の生豆であり、本発明では焙煎された一切のコーヒー豆を除くものである。なお、上記コーヒー生豆は、1種を単独で又は二種以上の混合物として使用してもよい。
【0012】本発明において、コーヒー生豆を発酵させる際には、栄養物質を非共存で発酵させることができるが、好ましくは、栄養物質の共存下にて発酵させることが望ましい。栄養物質としては、コーヒー生豆を効率的に発酵することができるものであれば、特に限定されず、例えば、0から5質量%(以下、単に「%」という)のブドウ糖、ソイペプトンが0から1%、リン酸ニカリウムが0から0.5%、トリプトンが0から2%、塩化ナトリウムが0から1%を含有する栄養培地が挙げられ、コーヒー生豆品種により異なるが、更に好ましくは、ブドウ糖5%、ソイペプトン0.5%、リン酸ニカリウム0.1%、塩化ナトリウム1.0%を含有するものが望ましい。
【0013】本発明において、コーヒー生豆を発酵させる際のコーヒー生豆の仕込み量は、仕込み量全量に対して、5から25%であり、好ましくは、10から20%である。仕込み量が5%未満では、発酵の進みが遅く、得られる耐熱性芽胞形成細菌抑制剤が少ないので耐熱性芽胞形成細菌への効果が弱く、また、25%を越える仕込み量では、コーヒー生豆が水分を吸収するため発酵濾液(発酵液から不溶解物質等を分離・除去した溶液)が十分に得られず、好ましくない。本発明では、コーヒー生豆はそのままで、また、粉砕して用いてもよく、粉砕はいかなる粒度に粉砕して用いてもよい。また、コーヒー生豆は発酵させる前に品種により異なるが、の点から加熱処理してもよい。その場合、60℃以上の温度、好ましくは、60〜70℃で10から60分間の加熱処理が好ましい。なお、通常の食用目的に用いられる焙煎されたコーヒー豆は、煮沸に準じた熱湯で処理するものであり、上記加熱処理とは相違するものである。
【0014】本発明において、コーヒー生豆を発酵させる際には、pH4〜6.5の範囲、好ましくは、pH5〜6の範囲で発酵させることが望ましい。発酵は当初pH7から開始するが、pH4未満まで発酵させると、耐熱性芽胞形成細菌への増殖抑制効果が劣り、6.5以上の比較的発酵時間の少ないものでは効力が発現しないことがある。発酵の開始時にpHを調整するアルカリ性化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物、具体的には、炭酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。好ましくは、炭酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の緩衝能を有するものが望ましい。また、上記発酵処理での反応温度は、特に制限はないが、通常、20〜40℃、好ましくは、25〜37℃であり、発酵時間は、通常、24時間〜120時間である。また、本発明において行われる発酵には、接種し用いられる細菌菌株は不必要であり、コーヒー生豆に天然に付着残存する微生物により、その発酵工程は行われる。この発酵は、簡単な開放形タンクで十分であるが、発酵槽として用いられるいかなる装置を用いてもよく、例えば、柴田科学器械工業社より市販されるMDL-500型 バイオファーメンターを使用することができる。
【0015】本発明の耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤は、コーヒー生豆の発酵を終えた発酵液(溶液)を有効成分とするものであるが、好ましくは、この発酵液から不溶解物質並びに微生物等を取り除いたコーヒー生豆発酵濾液とすることが好ましい。発酵濾液を得る方法としては、例えば、遠心分離、滅菌フィルター等のフィルター濾過、限外濾過等を使用する方法が挙げられ、不溶解物質並びに微生物等を取り除くことができるものであれば、いかなる方法を用いてもよい。本発明におけるコーヒー生豆の発酵から得られる発酵液とは、分析用ODSカラム(YMC社製分析用ODSカラム、YMC-PACK ODS-AQ AQ-312,6.0×150mm)を用いて、流速 1.0ml/分、メタノール/水/酢酸(20/80/0.3)を溶出液として行った高速液体クロマトグラフ―において、市販のコーヒー飲料には存在せず、同条件で検出されるクロロゲン酸やカフェインより必ず前に溶出される二成分(耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤)を含むことをいう。
【0016】図1(a)は、市販コーヒー飲料の高速液体クロマトグラフィーの結果を示す特性図であり、(b)はコーヒー生豆発酵液の高速液体クロマトグラフィーの結果を示す特性図である。この図1(a)及び(b)を比較検討すれば、(b)のコーヒー生豆発酵液には市販のコーヒー飲料には存在せず、同条件で検出されるクロロゲン酸やカフェインより必ず前に溶出される二成分が検出されていることが明らかであり、これらの成分が後述するように耐熱性芽胞形成細菌抑制剤となるものである。
【0017】本発明における耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤は、上述の如く、コーヒー生豆を栄養物質非共存あるいは共存下にて発酵させた発酵液を有効成分、好ましくは滅菌フィルター等を用いて不溶解物質並びに微生物等の夾雑物を除外した発酵濾液(水溶液)を有効成分としているものであり、野菜、果実、豆類、穀類、香辛料、魚介類、畜肉類、清涼飲料などの加工食品等に用いる保存料等として好適に使用できるものとなる。本発明における耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤の加工食品や香粧品等に対する配合量は、清涼飲料などの加工食品の用途等により異なるものであるが、加工食品の全量に対して、10ppm(0.001%)〜5%である。耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤の配合量が10ppm未満であると、目的の耐熱性芽胞形成細菌への増殖抑制効果を発揮することができず、また、5%を越えても、目的の耐熱性芽胞形成細菌への増殖抑制効果は変わらないが、不必要な呈色を示し、品質劣化を招く原因となることがある。
【0018】また、本発明は、コーヒー生豆を栄養物質非共存あるいは共存下にて発酵させることにより、好ましくは、得た発酵液を更に滅菌フィルター等を用いて不溶解物質並びに微生物等の夾雑物を除外することにより容易に製造することができ、得た発酵液、好ましくは発酵濾液は、耐熱性芽胞形成細菌に対する増殖抑制効果を発現する耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤となるものである。
【0019】このように構成される本発明の耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤では、コーヒー生豆を発酵させることにより得られるものであり、得られた耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤は著しい耐熱性芽胞形成細菌に対する増殖抑制効果を発現することとなる。また、本発明では、天然物由来であるコーヒー生豆を出発原料として製造することができるので、生分解性が良く、人体に対する安全性も高いことが期待され、食品、清涼飲料等へ添加して使用できるものとなる。更に、本発明では、加工食品の製造工程で制御困難な細菌芽胞の増殖を抑制できるので、製造工程で使用する場合は安定した製造品質を提供することができ、また、本発明の耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤を添加した加工食品等の場合は、過度な加熱殺菌を施す必要がないので、加熱による品質の劣化を極力抑えることができ、香味豊かな加工食品などを提供でき、更に熱に対して不安定な有用成分を有する加工食品に対して配合しても細菌芽胞の増殖を抑制できるものとなる。
【0020】
【実施例】次に、試験例(実施例及び比較例)により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0021】〔試験例1:コーヒー生豆の発酵液による耐熱性芽胞形成細菌に対する芽胞増殖抑制効果試験〕トリプトソイブイヨン培地(栄研化学社製)に、Bacillus subtilis ATCC9372株芽胞の細菌芽胞濃度を1.75×103cfu/ml となるよう常法により接種調製し、下記に示す実施例1及び2のコーヒー生豆発酵液、並びに、比較例1及び2を0.05%(1/2000質量部)添加した培養用試験管を準備する。これらを光学系測定機能を備えた小型振とう培養装置(バイオフォトレコーダー TN−1506 ADVANTECH社製)を使用して、25℃の環境に保ちながら振とう培養し、経時的な濁度の変化(測定波長660nm)を測定した。得られた微生物増殖曲線において、濁度の数値が低い程、耐熱性芽胞形成細菌に対する芽胞増殖抑制効果が高いことを表す。これらの結果を図2に示す。
【0022】(実施例1)滅菌水に、コーヒー生豆(ブラジル種)10%加えた水溶液を調製し、下記表1に示す栄養培地(以下、単に「栄養源」という)■を用いてリン酸一ナトリウム(関東化学社製)1%水溶液でpHを7.0に調製した後、25℃で24時間発酵させたものを実施例1とした。
(実施例2)滅菌水に、コーヒー生豆(マンデリン種)20%加えた水溶液を調製し、下記表1に示す栄養源■を用いて炭酸ナトリウム(関東化学社製)1%水溶液でpHを6.5に調製した後、32℃で30時間発酵させたものを実施例2とした。
(比較例1)ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製P-1670)を比較例1とした。
(比較例2)ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製S-1670)を比較例2とした。
【0023】
【表1】


【0024】図2に示すように、本発明となる実施例1及び2は、比較例1(P-1670)及び比較例2(S-1670)に較べ、Bacillus subtilis ATCC9372株芽胞に対して、顕著な増殖抑制効果を示すことが判った。
【0025】〔試験例2:コーヒー生豆の発酵液による耐熱性芽胞形成細菌に対する芽胞増殖抑制効果試験〕上記試験例1と同様の細菌芽胞培地溶液および培養方法を用いて、下記に示す実施例3及び4、比較例3及び4を0.5%(1/200質量部)添加し、試験例1と同様に発酵濾液を用いた経時的な濁度の変化を測定した。これらの結果を図3に示す。
【0026】(実施例3)滅菌水に、コーヒー生豆(ガテマラ種)5重量%を加えた水溶液を調整し、表1に示す栄養源■を用いて水酸化カリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを8.5に調製した後、25℃で50時間発酵させたものを実施例3とした。
(実施例4)滅菌水に、コーヒー生豆(サントス種)20重量%を加えた水溶液を調整し、表1に示す栄養源■を用いてリン酸一ナトリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを8.0に調製した後、25℃で20時間発酵させたものを実施例3とした。
(比較例3)ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製P-1670)を比較例3とした。
(比較例4)ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製S-1670)を比較例4とした。
【0027】図3に示すように、本発明となる実施例3及び4は、比較例3(P-1670)及び比較例4(S-1670)に較べ、Bacillus subtilis ATCC9372株芽胞に対して、顕著な増殖抑制効果を示すことが判った。
【0028】〔試験例3:ミルクコーヒー飲料中での芽胞増殖抑制効果試験〕コーヒー豆(キリマンジャロ種/ハワイコナ種;60/40%)75gを95℃の熱湯1リットルに加え、静置後20分間抽出した後、プレートクーラーで急冷して得たコーヒー溶液の900gに牛乳100gとグラニュー糖70gを入れ、撹拌溶解してミルクコーヒーを調製した。このミルクコーヒーに1mlあたり103個となるようBacillus stearothermophilus ATCC7953株芽胞液を添加し、更に、下記に示す実施例5及び6、並びに、比較例5及び6を0.05%(1/2000質量部)添加し、滅菌した密閉容器に充填後、55℃、3カ月保存した際の検出される芽胞菌由来の微生物数を常法に従い標準寒天培地へ混釈後、32℃、5日間培養した後に計測されたコロニー数により評価した。これらの結果を下記表2に示す。
【0029】(実施例5)滅菌水に、コーヒー生豆(ガテマラ種)15%を加えた水溶液を調整し、下記表1に示す栄養源■を用いて水酸化カリウム(関東化学社製)1%水溶液を用いてpHを7.0に調製した後、25℃で24時間発酵させたものを実施例5とした。
(実施例6)滅菌水に、コーヒー生豆(ガテマラ種)20%を加えた水溶液を調整し、表1に示す栄養源■を用いて炭酸カリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを7.5に調製した後、25℃で28時間発酵させたものを実施例6とした。
(比較例5)ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製P-1670)を比較例5とした。
(比較例6)ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製S-1670)を比較例6とした。
【0030】
【表2】


【0031】上記表2の結果から明らかなように、本発明となる実施例5及び6は、比較例5及び比較例6に較べ、検出される微生物数が顕著に低いことが判った。
【0032】〔試験例4:加熱したコーヒー生豆の発酵液によるミルクコーヒー飲料中での芽胞増殖抑制効果試験〕コーヒー豆(キリマンジャロ種/ハワイコナ種;60/40%)75gを95℃の熱湯1リットルに加え、静置後20分間抽出した後、プレートクーラーで急冷して得たコーヒー溶液の900gに牛乳100gとグラニュー糖70gを入れ、撹拌溶解してミルクコーヒーを調製した。このミルクコーヒーに1mlあたり103個となるようBacillus stearothermophilus ATCC7953株芽胞液を添加し、更に、下記に示す実施例7及び8、並びに、比較例7及び8を0.05%(1/2000質量部)添加し、滅菌した密閉容器に充填後、55℃、3カ月保存した際の検出される芽胞菌由来の微生物数を常法に従い標準寒天培地へ混釈後、32℃、5日間培養した後に計測されたコロニー数により評価した。これらの結果を下記表3に示す。
【0033】〔実施例7〕滅菌水に、予め水溶液中で65℃、30分の加熱を施したコーヒー生豆(ガテマラ種)15重量%を加えた水溶液を調整し、下記表1に示す栄養源■を用いてリン酸二ナトリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを6.5に調製した後、25℃で41時間発酵させたものを実施例7とした。
〔実施例8〕滅菌水に、予め水溶液中で70℃、40分の加熱を施したコーヒー生豆(ガテマラ種)10重量%を加えた水溶液を調整し、下記表1に示す栄養源■を用いて炭酸ナトリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを8.0に調製した後、25℃で25時間発酵させたものを実施例8とした。
〔比較例7〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製P-1670)を比較例7とした。
〔比較例8〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製S-1670)を比較例8とした。
【0034】
【表3】


【0035】上記表3の結果から明らかなように、本発明となる実施例7及び8は、比較例7及び比較例8に較べ、検出される微生物数が顕著に低いことが判った。
【0036】〔試験例5:大豆煮豆中での芽胞増殖抑制効果試験〕市販の大豆100gを500mlの水道水に入れ、60分間加熱調理した。終了後余分な煮汁を棄て、常温に戻してから大豆煮豆を得た。無菌下でビニール袋を開封し、この大豆煮豆10gと、103個/10gとなるようBacillus stearothermophilus ATCC7953株芽胞液を摂取し、更に、下記に示す実施例9及び10、並びに、比較例9及び10を0.05%(1/2000質量部)添加し、混合した後に充填後、55℃、の恒温室に3カ月保存した。試験毎に検出される芽胞菌由来の微生物数は、常法に従い標準寒天培地へ混釈後、32℃、5日間培養した後に計測されたコロニー数により評価した。これらの結果を下記表4に示す。
【0037】〔実施例9〕滅菌水に、予め水溶液中で65℃、30分の加熱を施したコーヒー生豆(マンデリン種)10%を加えた水溶液を調整し、下記表1に示す栄養源■を用いてリン酸二ナトリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを6.0に調製した後、30℃で44時間発酵させたものを実施例9とした。
〔実施例10〕滅菌水に、予め水溶液中で50℃、35分の加熱を施したコーヒー生豆(ガテマラ種)20重量%を加えた水溶液を調整し、下記表1に示す栄養源■を用いて炭酸ナトリウム(関東化学社製)1%水溶液を用いてpHを7.0に調製した後、32℃で20時間発酵させたものを実施例10とした。
〔比較例9〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製P-1670)を比較例7とした。
〔比較例10〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製S-1670)を比較例8とした。
【0038】
【表4】


【0039】上記表4の結果から明らかなように、本発明となる実施例9及び10は、比較例9及び比較例10に較べ、検出される微生物数が顕著に低いことが判った。
【0040】〔試験例6:生つぶあん中での芽胞増殖抑制効果試験〕市販の小豆100gを500mlの水道水に入れ、30分間加熱処理し、余分な煮汁を棄てた後、再度500mlの新しい水道水を入れ60分間加熱調理した。終了後余分な煮汁を棄て、常温に戻してから小豆をつぶし、つぶあんを得た。無菌下でビニール袋を開封し、このつぶあん10gと、103個/10gとなるようBacillus stearothermophilus ATCC7953株芽胞液を接取し、更に、下記に示す実施例11及び12、並びに、比較例11及び12を0.05%(1/2000質量部)添加し、混合した後に充填後、55℃の恒温室に3カ月保存した。試験毎に検出される芽胞菌由来の微生物数は、常法に従い標準寒天培地へ混釈後、32℃、5日間培養した後に計測されたコロニー数により評価した。これらの結果を下記表5に示す。
【0041】〔実施例11〕滅菌水に、予め水溶液中で65℃、30分の加熱を施したコーヒー生豆(サントス種)15%を加えた水溶液を調整し、下記表1に示す栄養源■を用いてリン酸二ナトリウム(関東化学社製)1%水溶液を用いてpHを7.5に調製した後、25℃で26時間発酵させたものを実施例11とした。
〔実施例12〕滅菌水に、予め水溶液中で60℃、35分の加熱を施したコーヒー生豆(ガテマラ種)16%を加えた水溶液を調整し、表1に示す栄養源■を用いて炭酸ナトリウム(関東化学社製)1%水溶液を用いてpHを8.5に調製した後、25℃で34時間発酵させたものを実施例12とした。
〔比較例11〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製P-1670)を比較例11とした。
〔比較例12〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製S-1670)を比較例12とした。
【0042】
【表5】


【0043】上記表5の結果から明らかなように、本発明となる実施例11及び12は、比較例11及び比較例12に較べ、検出される微生物数が顕著に低いことが判った。
【0044】〔試験例7:コーヒー発酵抽出濾液を用いた生つぶあん中での芽胞増殖抑制効果試験〕市販の小豆150gを500mlの水道水に入れ、45分間加熱処理し、余分な煮汁を棄てた後、再度500mlの新しい水道水を入れ60分間加熱調理した。終了後余分な煮汁を棄て、常温に戻してから小豆をつぶし、つぶあんを得た。無菌下でビニール袋を開封し、このつぶあんを10gと、103個/10gとなるようBacillus stearothermophilus ATCC7953株芽胞液を接種し、更に、下記に示す実施例13及び14,並びに比較例13及び14を0.03%(1/3333質量部)添加し、混合した後に充填後、55℃の恒温室に3カ月保存した。試験毎に検出される芽胞菌由来の微生物数は、常法に従い標準寒天培地へ混釈後、32℃、5日間培養した後に計測されたコロニー数により評価した。これらの結果を下記表6に示す。
【0045】〔実施例13〕滅菌水に、予め水溶液中で60℃、45分の過熱を施したコーヒー生豆(マンデリン種)20重量%を加えた水溶液を調整し、下記表1に示す栄養源 を用いてリン酸二ナトリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを7.0に調製した後、25℃で26時間発酵させ、滅菌フィルター(デラポアメンブレンフィルター、日本ミリポア社)5μm次いで0.22μmの同様のメンブレンフィルターで濾過したものを実施例13とした。
〔実施例14〕滅菌水に、予め水溶液中で60℃、35分の過熱を施したコーヒー生豆(ガテマラ種)20重量%を加えた水溶液を調整し、表1に示す栄養源 を用いて炭酸ナトリウム(関東化学社製)1重量%水溶液を用いてpHを8.0に調製した後、25℃で25時間発酵させ滅菌フィルター(デラポアメンブレンフィルター、日本ミリポア社)5μm次いで0.22μmの同様のメンブレンフィルターで濾過したものを実施例14とした。
〔比較例13〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製P-1670)を比較例13とした。
〔比較例14〕ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製S-1670)を比較例14とした。
【0046】
【表6】


【0047】上記表6の結果から明らかなように、本発明となる実施例13及び14は、比較例13及び比較例14に較べ、検出される微生物数が顕著に低いことが判った。
【0048】上記試験例1〜7(図2〜3、表2〜6を含む)の結果を総合的に考察すると、コーヒー生豆を発酵させて得られる発酵液または発酵濾液を有効成分とする耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤は、顕著な耐熱性芽胞形成細菌に対する増殖抑制効果を発現することが判明した。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、耐熱性芽胞形成細菌に対して高い増殖抑制作用を有し、しかも生分解性がよく、人体に対する安全性にも優れた耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は市販コーヒー飲料とコーヒー生豆発酵液との高速液体クロマトグラフィーの結果を示す特性図である。
【図2】実施例1及び2と比較例1及び2における耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制効果を示す特性図である。
【図3】実施例3及び4と比較例3及び4における耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制効果を示す特性図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コーヒー生豆を発酵させて得た発酵液を有効成分とすることを特徴とする耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤。
【請求項2】 発酵液には、下記分析データで示される成分が含有される請求項1記載の耐熱性芽胞形成細菌増殖抑制剤。
分析データ:分析用ODSカラム(YMC社製分析用ODSカラム、YMC-PACK ODS-AQ AQ-312,6.0×150mm)を用いて、カラム温度30℃、流速1.0ml/分、メタノール/水/酢酸(20/80/0.3)を溶出液として行った高速液体クロマトグラフ―において、市販のコーヒー飲料には存在せず、同条件で検出されるクロロゲン酸やカフェインより必ず前に溶出される二成分を含むこと。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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