説明

耐熱材及び耐熱セラミックス用の接着剤及びコーティング

【課題】カーボン材料、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び石英のような耐熱材及び耐熱セラミックス用の接着剤及びコーティングを提供する。
【解決手段】本発明は、耐熱材及び耐熱セラミックスとの接着用の熱硬化性接着剤又はコーティングに関する。該接着剤又はコーティングは、25ないし50質量%のシリコン粉末、5ないし20質量%のSiC粉末、20ないし60質量%のホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコール及び10ないし30質量%の有機溶媒を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、カーボン材料、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び石英のような耐熱材及び耐熱セラミックス用の接着剤及びコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
技術背景
高温で使用される、カーボン材料、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び石英のような耐熱材及び耐熱セラミックスを接着させるための多数の接着剤が既知である。カーボン成分用の接着剤は、特許文献1より既知である。前記接着剤は、熱硬化性ポリシラゲンポリマー(polysilagen polymer)、前記ポリマーの質量に基づき20ないし50質量%のSiCであり得るセラミックス粉末、前記ポリマーの質量に基づき10ないし40質量%のSi粉末及び前記ポリマーの質量に基づき5ないし15質量%のカーボン粉末を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5474849号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この型の接着剤は、溶融シリコンとの接触が意図されるような炉、鋳型、坩堝又はそれらの小部品に使用されるカーボン材料、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び石英に対しては適するものではないことが見出されている。部品との接着に使用される接着剤は、前述のような炉、鋳型、坩堝又はそれらの小部品と接する溶融シリコンを汚染しないことが重要である。このことは、太陽電池の製造に用いられる高純度シリコンの処理に関して特に重要である。接着部分が溶融シリカによって湿潤しないことがさらに重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の記載
本発明により、扱い易く、高温にて良好な強度を有し、溶融シリコンによっても湿潤されず、且つ、長期間保存され得る接着剤並びにコーティングが提供される。本接着剤及びコーティングはさらに、高温からの冷却中、つまり1000℃未満への下降の間に、その強度が低下するという驚くべき効果を有している。かかる効果は特に、本接着剤が、溶融シリコンの方向性凝固に用いられる例えば窒化ケイ素、石英又はグラファイトのセパレートシートから作られた鋳型を一緒に接着するのに用いられる場合に、特に有益である。シリコンの冷却中に、固体相転移が生じ、このことが容量を増加させ、そして鋳型の失敗を引き起こす。本発明に従った接着剤を用いて接着されたセパレートシートから作られた鋳型の使用により、相転移が生じる温度にある本接着剤は低い強度を有し、そしてそれ故、鋳型が接着層中にひび割れを生じさせる一方で、それぞれのシートが損傷しない。該シートはそれ故、新たな鋳型を作成するのに再利用され得る。
【0006】
本発明はこのように、カーボン材料、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び石英との接着用の熱硬化性接着剤又はコーティングであって、25ないし50質量%のシリコン粉末、5ないし20質量%の炭化ケイ素粉末、20ないし60質量%のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコール及び10ないし30質量%の有機溶媒からなる、前記接着剤又はコーティングに関する。
【0007】
好ましい態様に従うと、有機溶媒は、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールの中より選択される。好ましい有機溶媒は、モノエチレングリコールである。
【0008】
溶媒は、接着剤又はコーティングを適した粘度とするのに十分な量が添加される。
【0009】
好ましい態様に従うと、本接着剤又はコーティングは、35ないし45質量%のシリコン粉末、8ないし18質量%のシリコン粉末、25ないし35質量%のホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコール及び15ないし25質量%の有機溶媒を含有する。
【0010】
別の好ましい態様に従うと、本接着剤又はコーティングは、ホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコールの重合温度を低下させるための硬化剤を含有する。該硬化剤は、好ましくは、ヘキサミンであるが、リン酸アルミニウム、硫酸、p−トルエンスルホン酸(PTS)のような酸、尿素により中和されたPTS及びp−トルエンスルホン酸エチルエステル(PTSEE)もまた用いられ得る。
【0011】
本発明に従う接着剤又はコーティングは、室温にて液体状態であり、長期間保存され得る。
【0012】
硬化剤を含有しない本接着剤又はコーティングを用いた場合、有機溶媒は150℃ないし290℃にて蒸発し、そしてホルムアルデヒド樹脂及びポリフルフリルアルコールの重合が250℃ないし400℃の温度範囲で生じ、それによって固体構造が形成される。硬化剤が添加されると、重合プロセスはより低温で開始する。
【0013】
さらなる加熱の間に、700℃においては、ホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコールの残存物から成るカーボン構造が残留する。かかる温度範囲における接着剤の強度は、20MPaよりも高い。さらに温度が上昇することによって、接着剤中のカーボン構造とシリコン粉末との間で反応が生じ、そして1413℃よりも高い温度まで加熱し続けると、Si粉末は溶融し、カーボンと反応してSiCとなる。しかしながら、温度上昇がゆっくりである場合には、Si粉末とカーボンとの間の反応は固体状態で生じる。
【0014】
精錬用坩堝のためのカーボン蓋の接着用の接着剤を用いる場合、本発明に従う接着剤は、溶融シリコンとの接触に対して密封部を生じることを示した。シリコンの精錬のために用いられた後に精錬用坩堝を冷却する間に、接着剤の強度はなくなり、そして一緒に接着された部品は抵抗なく互い剥離し得る。本発明に従う接着剤は、こうして、接着された部品が高温に保持される限り、その強度を維持する。
【0015】
溶融シリコンの固化のためにグラファイト鋳型におけるコーティングを使用する試験が示すところによれば、本コーティングが孔及びキャビティを充填し、且つ、グラファイト鋳型の壁へのシリコンの浸透に対して完全に密封する層を与える。
【0016】
シリコンの冷却及びシリコンインゴットの除去後、コーティングの残りは埃様の粉末として払い落され得、鋳型が再度、本発明に従うコーティングにより被覆され得る。
【0017】
本発明に従う接着剤はまた、鋳型が一緒に接着されるボトムシート及びサイドシートからなる際のシリコンの方向性凝固に用いる鋳型を接着するのに用いられ得る。本接着剤は、シートのキャビティ及び表面の粗さを密封し、こうしてシート表面の仕上げに対する必要性を低減させ得る。固化及び冷却後、接着剤は、上記したようにその強度が低下し、そしてシートはこうして新たな鋳型を作成するのに用いられ得る。接着されるシートは、予備焼結されたカーボンシート又はグラファイトシートのようなカーボン材料、窒化ケイ素シート又は石英シートから作成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面の簡単な記載
【図1】図1は、本発明に従う接着剤を用いて接着されたグラファイト部品用接着剤の強度試験のための機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な記載
実施例
図1は、本発明に従う接着剤を用いて接着されたグラファイト部品の強度試験のための機構を示す。本接着剤は、下記の組成を有している:38質量%のシリコン粉末、12質量%の炭化ケイ素粉末、28質量%のホルムアルデヒド樹脂、18質量%のモノエチレングリコール及び4質量%のヘキサミン。
【0020】
図1においては、誘導炉内(図示せず)に置かれたグラファイト坩堝1が概略的に示されている。本発明に従う接着剤によって下部グラファイトシリンダー3に接着された直径24mmの上部グラファイトシリンダー2からなる3つのサンプルを製造した。シリンダー3は、グラファイトシリンダー2よりも大きな直径を有していた。3つの接着したサンプルを、坩堝1の蓋4の下側にねじ込んだ。坩堝内の温度を熱電対によって測定し、そして坩堝内の大気を、パイプ6を介したアルゴンの添加により不活性に保持した。サンプルの部品3に対して力を与えるために、蓋4を通してセラミック棒7を挿入した。セラミック棒7を20kgのおもりと繋いだ。
以下のプログラムに従い坩堝を加熱した:
20ないし1000℃:20分
1000ないし1600℃:60分
1600℃での保持時間:60分
1600℃から1000℃への冷却:60分
その後、炉を止め、サンプルをゆっくりと室温まで冷却した。
【0021】
種々の温度及び時間で、サンプル1ないし3に20kgの力で加重をかけた。結果を表1に示す。
【表1】

【0022】
表1に示された結果は、加熱段階中に20kgの質量で加重を与えたサンプル1が、1600℃まで良好な強度を有していたことを示した。
サンプル2には、1600℃にて60分間保持しておいた後に20kgの質量で加重を与えたが、かかる温度にて良好な強度を有していた。また、1350℃への冷却後も、サンプル2は良好な強度を示した。
サンプル3には、1600℃にて60分間保持した後、1350℃への冷却中、及び1000℃へのさらなる冷却中に、20kgの質量で加重を与えた。結果は、接着剤の強度がこれら温度にてきわめて良好であったことを示した。室温へのさらなる冷却によって、サンプル3の部品3は、該サンプルの上部の部品2から離れて落下した。
【0023】
これら実施例からの結果が示すところによれば、本発明に従う接着剤は、1600℃までの加熱中にきわめて良好な強度を有し、そして1000℃未満の温度への冷却中にその強度を維持する一方で、その後には強度が低下した。
【符号の説明】
【0024】
1 グラファイト坩堝 2 上部グラファイトシリンダー 3 下部グラファイトシリンダー 4 蓋 5 熱電対 6 アルゴン用パイプ 7 セラミック棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱材又は耐熱セラミックスとの接着用の熱硬化性接着剤又はコーティングであって、前記接着剤又はコーティングは、25ないし50質量%のシリコン粉末、5ないし20質量%の炭化ケイ素粉末、20ないし60質量%のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコール及び10ないし30質量%の有機溶媒を含有することを特徴とする、前記熱硬化性接着剤又はコーティング。
【請求項2】
前記有機溶媒は、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールの中より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤又はコーティング。
【請求項3】
前記接着剤又はコーティングは、35ないし45質量%のシリコン粉末、8ないし18質量%のシリコン粉末、25ないし35質量%のホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコール及び15ないし25質量%の有機溶媒を含有することを特徴とする、請求項1に記載の接着剤又はコーティング。
【請求項4】
前記接着剤又はコーティングは、前記ホルムアルデヒド樹脂又はポリフルフリルアルコールの重合温度を低下させるための硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の接着剤又はコーティング。
【請求項5】
前記硬化剤は、ヘキサミン、リン酸アルミニウム又は酸より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の接着剤又はコーティング。
【請求項6】
前記酸は、硫酸、尿素により中和したp−トルエンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸エチルエステルの中より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の接着剤又はコーティング。

【図1】
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【公表番号】特表2012−505144(P2012−505144A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530976(P2011−530976)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/NO2010/000158
【国際公開番号】WO2010/131973
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(311012435)
【Fターム(参考)】