説明

耐熱衝撃性セラミックハニカム構造を作製するための改善されたセメントおよびその作製方法

無機繊維および結合相を含む、セメントによって一まとめに接着されている、少なくとも2個の個別の、より小さいセラミックハニカムを含むセラミックハニカム構造であって、より小さいセラミックハニカムおよび繊維は、非晶質シリケート、アルミネート、またはアルミノ−シリケートガラスを含む結合相によって、一まとめに結合されており、セメントは、その他の無機粒子を最大で約5体積%有する。セメントは、例えば、セメント結合されるより小さいハニカムに付着させるのに有用なセメントが作製されるよう、反対に帯電している無機結合剤を一緒に水中に混合することによって、剪断減粘化セメントを実現させながら、その他の無機および有機添加剤の不存在下で作製してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願日の利益の主張
本出願は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれている2008年3月20日出願の、米国出願第61/038,266号の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、改善された耐熱衝撃性を有するセラミックフィルタおよびその作製方法に関する。詳細には、フィルタおよび方法は、セラミック粒状(particulate)フィルタを一まとめにアセンブルしてより大きな耐熱衝撃性フィルタを作製するための改善されたセラミックセメントの使用に関係する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジンは、その動作様式により、典型的な有害ガソリンエンジン排気物(即ち、HCおよびCO)に加えて、煤粒子(soot particles)、または凝縮物の非常に微細な液滴、または2種(微粒子)の集合物を放出する。これらの「微粒子」(本明細書では、ディーゼル煤(Diesel soot))は、凝縮した多核炭化水素に富んでおり、その一部は発癌性である可能性がある。
【0004】
ディーゼル煤が健康に及ぼす危険性に対する認識が、ディーゼルエンジンによって提供されるより高い燃料効率の必要性と衝突するにつれ、放出することが認められるディーゼル煤の量を抑制する規制が制定されてきた。これらの課題を満足させるため、煤フィルタが使用されてきた。そのようなフィルタを使用する場合、フィルタは、煤を燃焼し尽くすことによって定期的に再生されなければならない。この煤の燃焼の結果、軸方向および半径方向の温度差から応力(stresses)が生じ、フィルタに亀裂(cracking)をもたらす可能性がある。
【0005】
応力を克服するために、熱交換器やフィルタなどのセラミックハニカムは、より小さなハニカムをより大きなハニカムにアセンブルすることによって、ハニカムに亀裂を生じさせる応力およびポテンシャルを低減させてきた。ハニカム間のセメント層は、EP1508355に記載されるように、例えば、熱伝導率を上昇させて、アセンブルされたハニカムで達せられる最終的な温度を低下させるのに使用されている。改善された熱伝導率を実現するために、これらのセメント/シール層/接着剤はセラミック微粒子を使用して、熱質量/伝導率を上昇させ、より小さなハニカムセグメントへの適用を容易にしている。しばしば、そのようなセメントは、焼成前のセメントの適用を促進するために(例えば、微粒子の分離を減少させるために)、およびセメントの靭性などいくつかの機械的性質を改善するために、米国特許第5,914,187号に記載されているようなセラミック繊維およびセラミック結合剤(ceramic binder)および有機結合剤(organic binder)を使用することによって増強される。
【0006】
残念ながら、これら増強材の使用の結果、セメントの使用および低い有効性に関係する問題が生じる。例えば、有機結合剤の使用は、セメントの粒子分離を低減させるのを助けるが、その後除去しなければならず、部品(part)を作製するプロセスを減速させ、有機物燃焼による熱勾配および発生したガスからの圧力に起因する損傷のリスクも生じさせる。繊維の使用も、セメント層の熱質量および熱伝導率を低下させる傾向があるが、それは、低効率の充填と、粘度を過剰に増大させずにキャリア流体にかなりの程度まで繊維を添加する能力とに起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、より小さなセラミックハニカムからアセンブルされたより大きなハニカム、および、使用前にアセンブル済みフィルタから有機結合剤を除去するなどの上述の1つまたは複数の課題が回避された方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、無機繊維および結合相を含む、セメントによって一まとめに接着された、少なくとも2個の個別のより小さなハニカムを含むセラミックハニカム構造であって、より小さなハニカムおよび繊維が、非晶質シリケート(silicate)、アルミネート(aluminate)、またはアルミノ−シリケート(alumino-silicate)ガラスを含む結合相(binding phase)によって一まとめに結合されており、セメントが、その他の無機粒子を最大で約5体積%有する、セラミックハニカム構造である。特定の実施形態では、一部(即ち、体積で表した場合に結合相の1/2未満)が、不連続な膨張係数を有する結晶質相を有する。「不連続な」は、特定の温度または幅の狭い温度で、石英−トリジマイト−クリストバライトなど、熱膨張の階段状変化により結晶質相が別の結晶形態に変換することを意味する。
【0009】
本発明の別の態様は、ハニカム構造を形成する方法であって、第1のハニカムセグメントの外面の少なくとも1つに、100マイクロメートルから1000マイクロメートルの間の平均長を有する無機繊維、キャリア流体、コロイド状無機ゾルを含みかつその他の無機粒子の不存在下でセメントを接触させ、ここで繊維が、セメントの全体積の少なくとも約10体積%の固形分添加(loading)を有するステップと、第2のハニカムセグメントに第1のハニカムセメントを機械的に接触させて、前記ハニカムセグメントが接着するようにセメントが前記ハニカムセグメントの間に介在するようにするステップと、セメントの繊維とハニカムセグメントとの間に非晶質セラミック結合が形成されるよう、接着したセグメントを十分に加熱して、ハニカム構造を形成するステップとを含む方法である。
【0010】
別の態様では、本発明は、セラミックセメントを製造する方法であって、

(a)無機繊維と、負または正の表面電荷を有する第1のコロイド状ゾルとを混合するステップと、次いで引き続き;

(b)ステップ(a)の混合物に、第1のコロイド状ゾルとは反対の表面電荷を有する第2のコロイド状ゾルを混合して、セラミックセメントを形成するステップとを含む方法である。このセメントは驚くべきことに、セメントを容易に塗り拡げることを可能にし、かつ有機結合剤の不存在下でセラミックハニカムセグメントに接着させることを可能にする、望ましいレオロジー特性を有する。さらに、熱膨張係数は、セメント中のアルミナとシリカゾルとの比に応じて、ムライトなどの様々なセラミックスに適合させることができる。
【0011】
他の態様では、本発明は、アルカリ土類シリケート、アルカリ土類アルミノ−シリケート、またはこれらの組合せを含む無機繊維を含むセメントによって一まとめに接着されている、少なくとも2つの個別のより小さなセラミックハニカムを含むセラミックハニカム構造であって、より小さなハニカムおよび繊維が、非晶質シリケート、アルミネート、またはアルミノ−シリケートガラスを含む結合相によって一まとめに結合されている、セラミックハニカム構造である。
【0012】
セラミックハニカム構造は、熱交換器、触媒担体、およびフィルタ(例えば、溶融金属および煤フィルタ)など、高温のガスまたは液体への耐性を必要とする任意の適用例で使用することができる。セメントは、前述のハニカム構造など、改善された耐熱衝撃性を必要とする多孔質セラミックスを作製するのに使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のハニカム構造を示す透視図である。
【図2】図2は、セメントにより一まとめにされたセラミックセグメントの、曲げ荷重変位(bending load displacement)を決定するのに使用された、4点曲げ試験の写真である。
【図3】図3は、本発明のおよび本発明ではないハニカム構造の、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図4】図4は、セメントが、セメント内にナッツフラワーポロゲン(nutflour porogen)を使用したものとは異なる多孔度を有する、本発明のハニカム構造の4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図5】図5は、様々な化学的性質の繊維を有する本発明のハニカム構造の、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図6】図6は、少量の無機微粒子を添加した本発明のハニカム構造の、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図7】図7は、シリケート結合相を有する本発明のハニカム構造と、本発明のものではない市販のセメント結合ハニカムとの、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図8】図8は、アルミネート結合剤相およびジルコニウムアルミノ−シリケート繊維を有する本発明のハニカム構造と、本発明のものではない市販のセメント結合ハニカムとの、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図9】図9は、アルミネート結合剤相、ジルコニウムアルミノ−シリケート繊維、および有機添加剤を有する本発明のハニカム構造と、本発明のものではない市販のセメント結合ハニカムとの、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図10】図10は、アルミネート結合剤相およびケイ酸マグネシウム繊維を有する本発明のハニカム構造と、本発明のものではない市販のセメント結合ハニカムとの、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図11】図11は、アルミノ−シリケート結合剤相およびジルコニウムアルミノ−シリケート繊維を有する本発明のハニカム構造と、本発明のものではない市販のセメント結合ハニカムとの、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図12】図12は、アルミノ−シリケート結合剤相、ジルコニウムアルミノ−シリケート繊維、および有機添加剤を有する本発明のハニカム構造と、本発明のものではない商用のセメント結合ハニカムとの、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明のものではないハニカム構造の、セメントの破断面を示す、走査電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、本発明のハニカム構造の、セメントの破断面を示す、走査電子顕微鏡写真である。
【図15】図15は、市販のセラミックセメントを使用して作製された、本発明のものではないハニカム構造の、4点曲げ試験の荷重変位曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ハニカム構造
より小さなセラミックハニカムF1(即ち、ハニカムセグメント)は、例えばディーゼル煤を濾過するために当業者に知られているような、任意の適切な多孔質セラミックであってもよい。例示的なセラミックスには、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素(silicone carbide)、窒化ケイ素および窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素および炭窒化ケイ素、ムライト(mullite)、コージライト(cordierite)、βリシア輝石(beta spodumene)、チタン酸アルミニウム、ケイ酸ストロンチウムアルミニウム、ケイ酸リチウムアルミニウムが含まれる。好ましい多孔質セラミック体には、炭化ケイ素、コージライト、およびムライト、またはこれらの組合せが含まれる。炭化ケイ素は、好ましくは、米国特許No.US6,669,751B1、およびWO公開EP1142619A1、WO2002/070106A1に記載されているものである。その他の適切な多孔質体は、US4,652,286;US5,322,537;WO2004/011386A1;WO2004/011124A1;US2004/0020359A1、およびWO2003/051488A1に記載されている。
【0015】
ムライトは、好ましくは、針状ミクロ構造を有するムライトである。そのような針状セラミック多孔質体の例には、米国特許第5,194,154号;第5,173,349号;第5,198,007号;第5,098,455号;第5,340,516号;第6,596,665号、および第6,306,335号;米国特許出願公開第2001/0038810号;および国際PCT公開WO03/082773に記載されているものが含まれる。
【0016】
ハニカムセグメントF1を構成するセラミックは、一般に、約30%から85%の多孔度を有する。好ましくは、多孔質セラミックは、少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約45%、さらにより好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約55%から、好ましくは最大で約80%、より好ましくは最大で約75%、最も好ましくは最大で約70%の多孔度を有する。
【0017】
ハニカム構造9のセグメントF1は、セラミック熱交換器、触媒、およびフィルタの分野で周知であるような、任意の有用な量、サイズ、配置、および形状であってもよく、その例は、米国特許第4,304,585号;第4,335,783号;第4,642,210号;第4,953,627号;第5,914,187号;第6,669,751号;および第7,112,233号;欧州特許第1508355号;第1508356号;第1516659号、および日本国特許公開第6−47620号に記載されている。さらに、セグメントF1は、ちょうど記述されている分野および米国特許第4416676号および第4417908号に記載されているような、任意の有用なサイズおよび形状のチャネル14を有していてもよい。壁面16の厚さは、前述のおよび米国特許第4329162号に記載されているような、任意の有用な厚さでよい。
【0018】
セメント層15の厚さは、先の段落の最初の文章の分野で記述したような、任意の有用な厚さでよい。セメントは、連続でも不連続であってもよい(不連続な例は、米国特許第4,335,783号に記載されている。)。典型的には、セメント層15の厚さは、0.1mmから約10mmである。典型的には、層の厚さは少なくとも0.2、0.5、0.8、または1mmから最大で約8、6、5、4、または3mmである。
【0019】
セメント層は、広く様々な多孔度を有していてもよいが、一般に、約20%から90%多孔度の間である。典型的には、多孔度は、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、または50%から、最大で約85%、80%、75%、または70%である。
【0020】
セグメントF1は、セメント15によって、一まとめに接着されている。セメント15は、無機繊維を含む。一実施形態では、繊維は、100から1000マイクロメートルの数平均長を有し、セグメントおよび繊維は、非晶質ガラスを含む結合相によって、一まとめに結合されている。驚くべきことに、繊維の長さは、煤フィルタの再生で生じ得る熱衝撃に耐える能力に優れたセメントを生成するために、100マイクロメートルを超えてもよい。このことは、熱質量または熱伝導率を増大させるためにその他の無機微粒子を添加しない場合であっても、言えることである。
【0021】
典型的には、繊維の平均長は、少なくとも約100、150、200、または225マイクロメートルから、最大で約900、800、700、600、500、または400マイクロメートルである。さらに、繊維の長さの分布が広くなり得る場合であっても、典型的には繊維の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%から、本質的にすべて(例えば、繊維の1%未満)は、100から1000マイクロメートルの間の長さを有する。驚くべきことに、そのような繊維長を使用する場合、優れた耐熱衝撃性を有するハニカム構造は、セメント層内にその他の無機粒子を使用することなく作製することができる。
【0022】
その他の無機粒子は、一般に、直径が少なくとも約0.2マイクロメートルから最大で約250マイクロメートル、アスペクト比が最大で約10のサイズを有する粒子を意味し、一般に結晶質である。またこれらの粒子は、意味のあるいかなる方法によっても、繊維またはセグメントを一まとめに結合するステップに寄与せず、繊維およびセグメントは結合相によって一まとめに結合することができる。そのようなその他の無機粒子の例は、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ムライト、コージライト、およびチタン酸アルミニウムである。
【0023】
一般に、繊維の繊維直径は、約0.1マイクロメートルから約20マイクロメートルである。繊維直径は、少なくとも約0.2、0.4、0.6、0.8、1、2、または4マイクロメートルから、最大で約18、15、12、10、または8マイクロメートルであってもよい。
【0024】
繊維は、当技術分野で知られているような、任意の有用な無機繊維であってもよい。繊維は、非晶質もしくは結晶質、またはこれらの組合せであってもよい。繊維は、米国特許第5322537号に記載されているように、開始時に非晶質であってもよく、加熱するとまたは操作中に、例えばディーゼル微粒子の捕捉において、ある程度まで結晶化してもよい。一般に、繊維は、繊維内部におよびガラスに取り囲まれる状態で、例えばムライト結晶を形成しまたは有するように、結晶化することができる、非晶質シリケートまたはアルミノシリケート繊維である。繊維は、希土類、ジルコニウム、アルカリ土類などのその他の化合物を、かなりの体積で(即ち、1モル%よりも大きく、好ましくは少なくとも約2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、7モル%、または10モル%から、最大で約40モル%)含有してもよい。特定の例は、Unifrax LLC、Niagara Fall、NYから商標FIBERFRAXとして入手可能なアルミノシリケート繊維;やはりUnifraxから入手可能な商標ISOFRAXであるアルカリ土類繊維(ケイ酸Mg繊維)、およびSaffil LTD.Cheshire、UKから入手可能なSAFFIL(例えば、SAFFIL RF)アルミナ繊維である。
【0025】
特定の実施形態では、繊維がアルカリ土類アルミノシリケート、アルカリ土類シリケート、またはこれらの組合せである。特に、アルカリ土類は、Mg、Ca、またはこれらの組合せである。好ましくは、繊維は、Mg、Ca、またはこれらの組合せのシリケートであり、さらにより好ましくはケイ酸Mg(Mg-silicate)である。驚くべきことに、このタイプの繊維は、典型的なアルミノシリケート繊維よりも強度が低い場合であっても、使用することができるが、それは、セメントの熱質量を増大させるためにセメントに加えられた微粒子によって摩耗せず、また明らかにその靭性は、一まとめにセメント結合された微粒子から引き出された繊維から生ずるものではないからである。これらのセメントには、典型的なアルミノシリケートセメントよりも有害ではないという利点もある。特定の例は、繰り返すが、上述のISOFRAXである。
【0026】
一般に、非晶質相結合相は、アルミネート、シリケート、またはアルミノシリケートである。「非晶質」は、典型的な分析技法を使用して検出可能な分子構造がないことを意味する。即ち、いくらか非常に小さな規則正しい構造を有していてもよいが、そのような規則正しいサイズにより、そのような規則正しさを測定する技法は、例えば検出できず、または非晶質材料と実質的に異ならない。例えば、規則正しいドメインは、そのようなドメインが存在する場合に最大で約50から100ナノメートルのサイズになり得るような拡散散乱をX線回折または電子回折がもたらすような、小さいサイズのものであってもよい。
【0027】
特定の実施形態では、不連続熱膨張係数を有する結晶質相が、一般に最大で非晶質結合相の40体積%の体積パーセンテージで非晶質結合相に組み込まれる。「不連続熱膨張係数」は、相が、シリカの異なる結晶質形態である石英やトリジマイト、クリストバライトなどの新しい結晶質構造を形成するために、可逆的な結晶再配置を受ける可能性があることを意味する。一般に、そのような相が非晶質結合相に組み込まれる場合、その相は、最大で数マイクロメートル、典型的には約1マイクロメートル未満であるが約100ナノメートルよりも大きいドメイン中に存在する。そのような不連続相が存在する場合、典型的には、非晶質結合相の体積の少なくとも約1%、2%、3%、4%、または5%から、最大で約35%、30%、25%、または20%の体積パーセンテージで存在する。この量は、公知のX線および電子顕微鏡分析技法により決定することができる。
【0028】
ハニカム構造の作製方法
本発明のハニカム構造の作製において、セメントは、上述の繊維を用いて作製する。繊維の所望のサイズおよび分布を実現するために、繊維はまず、ボール/ペブルミリング、アトリション、またはジェットミリングなどの任意の適切な手段により、特定の技法に関する当業者により容易に決定される条件で破砕される。
【0029】
例として、上述のFIBERFRAXやISOFRAXなどの市販の繊維を、ジルコン、アルミナ、石英ペブル、ジルコニア、または有害な不純物を導入しない任意のその他のミリング媒体などのセラミック媒体を使用して、ボールミルで乾式ミリングする。
【0030】
一般に導入される不純物は、微量であり、セメントの無機繊維および非晶質結合相の約1体積%未満の合計体積%でセメント中に現れる(即ち、無機画分)。言い換えれば、セメント中の任意のその他の無機粒子の量は、一般に、セメントの無機画分の1体積%未満であることが望ましく、この量は、繊維のミリングまたはセメントの作製から生じる不純物からのみ生じ得るものである。一般に、任意のその他の無機粒子の量は、無機画分の体積でセメント中に最大で0.75%、0.5%、0.25%、0.1%、または本質的に検出できないものである。しかし望みに応じて、セメントは、その量が繊維とその他の繊維との結合をその長さに沿って妨げない限り、少量の無機粒子を有していてもよい。一般にこれは、その他の無機粒子が最大で5体積%存在することを意味する。
【0031】
次いで適正な長さの繊維を、典型的にはキャリア流体中で非晶質コロイド状無機粒子と混合することにより、セメントを作製する。セメントを作製する場合、繊維画分は、有用なセメントが作製されるよう十分に存在しなければならず、典型的にはこれは、セメントの全体積(無機画分、キャリア流体、および任意のその他の有機添加剤)の少なくとも約10体積%の繊維添加(load)がある場合である。不十分な繊維添加が存在する場合、典型的には、例えば高い破損の可能性なしに排気システムへとハニカム構造を取り扱い加工するためにもたらされた強度が不十分である。典型的には、繊維添加は少なくとも約11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%から、最大で約70%、60%、50%、40%、または30%である。
【0032】
本明細書の「コロイド」は、1マイクロメートル未満の数平均粒度を有する微粒子を意味する。コロイドは、結晶質でも非晶質でもよいが、コロイドが結晶質である場合には、加熱により分解して、少なくとも本明細書に記述される非晶質結合相を形成する。好ましくは、コロイドは非晶質である。コロイドは、好ましくはシリケート、アルミネート、およびアルミノシリケートゾルである。望ましくは、コロイドは、陽イオン(アルカリまたはアンモニウム)で安定化されたまたはその組合せのシリケートで安定化されたゾルであって、一般に、塩基性pHを有するシリカコロイドまたはシリカゾルと呼ばれるものである。これらシリカコロイドの表面電荷は、公知の電気泳動技法によって測定した場合に負である。ゾルがアルミナゾル/コロイドである場合、酸性pHを有するゾルであることが望ましく、アルミナ粒子は、電気泳動技法により測定した場合に正の電荷を有する。当技術分野で知られているような、また、KASILおよびN、PQ Corporation、PO Box 840、Valley Forge、PA.;ZACSIL、Zaclon Incorporated、2981 Independence Rd.、Cleveland、OH;Sodium Silicates、Occidental Chemical Corporation、Occidental Tower、5005 LBJ Freeway、Dallas、TX;NYACOL Nexsil colloidal silicaおよびA120 colloidal aluimina、Nyacol Nanotechnologies Inc.、Ashland MAおよびAremco 644Aおよび644S、Aremco Products Inc.、Valley Cottage、NY.などの商標で入手可能な例示的なコロイド。
【0033】
キャリア液体は、例えば、水、任意の有機液体、例えばアルコール、脂肪族、グリコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、エステル、芳香族、アルケン、アルキン、カルボン酸、カルボン酸塩化物、アミド、アミン、ニトリル、ニトロ、硫化物、スルホキシド、スルホン、有機金属、またはこれらの混合物などであってもよい。好ましくは、キャリア流体は、水、脂肪族、アルケン、またはアルコールである。より好ましくは、液体は、アルコール、水、またはこれらの組合せである。アルコールを使用する場合、メタノール、プロパノール、エタノール、またはこれらの組合せが好ましい。最も好ましくは、キャリア流体が水である。
【0034】
使用されるキャリア流体の総量は、以下に記述されるようなその他の有機添加剤、繊維の固形分添加、およびセグメントを一まとめに接触させるのに使用される技法に応じて、広範にわたり変化してよい。水の総量は、一般に、セメントの無機画分の少なくとも約40体積%から最大で約90%である。
【0035】
セメントは、セラミックペーストを作製する技術分野で知られているような、その他の有用な成分を含有していてもよい。その他の有用な成分の例には、分散剤、解膠剤、凝集剤、可塑剤、消泡剤、潤滑剤、および保存剤であって、例えば第10〜12章、Introduction to the Principles of Ceramic Processing、J.Reed、John Wiley and Sons、NY、1988に記載されているものが含まれる。有機可塑剤を使用する場合、ポリエチレングリコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはこれらの組合せが望ましい。
【0036】
セメントは、結合剤を含有していてもよい。結合剤の例には、第11章、Introduction to the Principles of Ceramic Processing、J.Reed、John Wiley and Sons、NY、NY、1988に記載されているような、セルロースエーテルが含まれる。好ましくは、結合剤は、METHOCELおよびETHOCELという商標でThe Dow Chemical Companyから入手可能であるような、メチルセルロースまたはエチルセルロースである。好ましくは、結合剤は、キャリア液体中に溶解する。
【0037】
セメントは、ポロゲン(porogens)を含有していてもよい。ポロゲンは、非晶質相が形成されるよう加熱した後にセメント中に空隙(voids)を生成するために、特に添加された材料である。典型的には、この材料は、加熱中に分解し、蒸発し、または何らかの方法で揮発除去されることにより空隙を残す、任意の微粒子(particulates)である。その例には、小麦粉(flour)、木粉(wood flour)、炭素微粒子(非晶質または黒鉛状)、ナッツシェルフラワー(nut shell flour)、またはこれらの組合せが含まれる。
【0038】
特定の実施形態では、キャリア流体以外の(もしキャリア流体がアルコールなどの有機溶媒である場合)有機構成成分の不存在下で、セメントを作製する。好ましくは、このセメントの実施形態を作製する場合、キャリア流体は水である。この実施形態の好ましい実施形態では、セメントは、繊維と特定の表面電荷を有するコロイド(例えば、塩基性水中における負の表面電荷を有するシリカコロイド)とを、良好な混合物が得られるまでキャリア流体中で混合し、次いで引き続き、反対の電荷を有する第2のコロイド(例えば、酸性水中などにおける正の表面電荷を有するアルミナコロイド)に添加しまたは混合してセメントを形成することによって、作製される。驚くべきことに、この方法は、セメントの構成成分のいかなる分離も制限しかつそのようなペーストを付着させる公知の方法(例えば、噴霧、スミアリング、パテ付け、およびペーストに剪断力を与えそれをセグメントの外面に接触させる任意のその他の適切な技法)によってセグメントに容易に付着させる、優れた剪断減粘化レオロジー(shear thinning rheology)を有するセメントをもたらす。
【0039】
セメントは、一般にかつ望ましくは、剪断減粘化挙動を有する。「剪断減粘化(Shear thinning)」は、より速い剪断速度での粘度が、より遅い剪断速度での粘度よりも低いことを意味する。例として、低剪断速度(即ち、約5秒−1)での粘度は、典型的には少なくとも約5、10、25、50、75、またはさらに100Pa・sであり、高剪断(即ち、約200秒−1)での粘度は、典型的には最大で約1、0.5、0.1、0.05、またはさらに0.01Pa・sである。そのような粘度測定は、本明細書に記述されたものと同じような剪断速度および粘度でそのようなセメントを測定するために、レオメーター(流量計、rheometers)で行ってもよい。
【0040】
驚くべきことに、本発明のセメントのCTEは、セグメントのCTEと実質的に異なっていてもよい(CTE=熱膨張係数(coefficient of thermal expansion))。例えば、セグメントがムライト(CTE約5.5ppm/℃)である場合、約8ppm/℃のCTEを有するセメント(例えば、mg−シリケート繊維を有する単独の結合剤としてアルミナゾルを使用)が、ほぼ一致するCTEを有するセメントとして、ハニカム構造にいかなる劣化も生じさせることなく熱衝撃を低減させるのに有効である。これにより、あるセメントを多数の異なるセグメントで使用することが可能になり、異なる組成およびCTEのセグメントをセグメント化することがさらに可能になる。特定の実施形態では、セグメントがムライトであり、セメントを形成するのに使用されるコロイドは、熱膨張係数がムライトの熱膨張の10%以内にあるような、シリカおよびアルミナの混合物である。例として、シリカおよびアルミナゾルの混合物を使用する場合、コロイドゾルのシリカとアルミナとの重量比は、1:99から99:1などの任意の有用な比であってよい。望ましくは、その比は、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、または50:50、またはこれらの比を逆にしたものである。
【0041】
1つまたは複数のセグメントの外面にセメントを接触させた後、これらのセグメントを、セグメント間にセメントが介在するように任意の適切な方法によって接触させる。特定の実施形態では、セグメントをまずニート(neat)キャリア流体に曝し、セメント(ペースト)がその表面に接触したときに湿潤するようにする。特定の実施形態では、上記のキャリア流体の湿潤は、セラミックセメントを作製するのに使用されるようなコロイドゾルを使用して、有利に行われる。この実施形態では、コロイドは、セグメントのそれぞれの全体にわたって存在し、驚くべきことに、ディーゼルエンジンから放出された煤の液体微粒子画分を捕捉するのに有用であることがわかった。コロイドゾルは、ハニカム構造を作製した後に、ハニカム構造のセグメントに導入してもよい。使用される方法は、浸漬、噴霧、射出、ブラッシング、またはこれらの組合せなど、流体を付着させるのに適したものにすることができる。ゾルは、本明細書で既に記述されたもののいずれか1種であってよい。
【0042】
例として、セグメントは、四角形の断面を有する場合には、鋳型内に保持し、それらセグメント同士の隙間にセメントを噴出しまたは射出することができる。セグメントは、角を傾斜面(incline plane)に嵌めこみ、この最初の四角形から所望のどのようなパターンも構築するような、所望の外面に配置されたセメントを有する。傾斜面は、望みに応じて、セグメントの第1の層が等距離のスペーシングを有する結果、より均一なセメント層の厚さが得られるように組み込まれるスペーサも有することができる。あるいは、セグメントは、平面に配置し、煉瓦建築と同様の手法で構築することができる。
【0043】
セグメントを接着したら、キャリア流体を、加熱によって、または大気中への気化(just ambient evaporation)もしくは当技術分野で知られているような任意のその他の有用な方法を含んでもよい任意の適切な方法によって除去する。この除去は、繊維とセグメントとの非晶質結合を形成する加熱中に行ってもよい。加熱は、セグメントまたはセメント中のあらゆる有機添加剤を除去するのに使用してもよい。この加熱は、当技術分野で知られているような、任意の適切なものにすることができ、繊維およびセグメントを一まとめにする非晶質結合を形成する加熱中に、行ってもよい。非晶質結合相を生成するには、加熱は、繊維(望ましくない限り)または非晶質結合相中に結晶化が生じ、ハニカム構造が撓み、またはガラス結合相がハニカム構造の性能に有害となる程度まで移行するような温度ほど、高くなるべきではない。典型的には、この温度は、少なくとも約600℃、650℃、700℃、750℃、または800℃から、最大で約1200℃、1150℃、1100℃、1050℃、または1000℃である。
【実施例】
【0044】
試験方法
4点曲げ:約50mm×20mm×7.5mmの2個のハニカムセグメントを、一まとめにセメント結合し、図2の写真に示されるように試験をする。上スパンは40mmであり、下スパンは80mmである。Instron 5543 Load Frameの使用は、0.02インチ/分の速度を使用して行い、添加データを変位に対して記録した。
【0045】
平均繊維長:平均繊維長を、走査型電子顕微鏡で、いくつかの繊維(例えば、100〜200)に関して決定した。
【0046】
粘度測定:セメントの粘度を、小さな羽根付きのロータ固定具(fixture)を有するCouetteを備えたAR G2レオメータ(TA Instruments、New Castle、Delaware)を使用して決定した。温度を20±1℃で制御し、湿度は50±2%の範囲内であった。
【0047】
[実施例1]
ミリングされたケイ酸アルミニウムジルコニウム繊維(Long Staple Fine fiberという製品名でUnifrax LLC、Niagara Fallsから入手可能な、ミリングされた繊維)33重量%、Cerama−Bind 644Sという製品名でAremco Products Inc.、Valley Cottage、NYから入手可能なコロイダルシリカ(コロイド状シリカ)(水中のシリカ固体含量が40重量%)67重量%を、繊維が均一に分散するように見えるまで(約1分)手で一緒に混合した。繊維は、約100〜500マイクロメートルに及ぶ繊維長および約4〜8マイクロメートルに及ぶ直径を有していた。セメントを、4点曲げ試験で記述したサイズのムライトセグメントの表面に付着させた。ムライトセグメントを、WO03/082773A1の実施例4に記載されたものと本質的に同じプロセス(やはりWO03/082773A1の実施例4に記載された1400℃までの熱処理を含む。)によって作製された、より大きなムライトハニカムから切断した。セメントが付着される前に、ハニカムセグメントを水に浸漬し、過剰な水を振り落とした。セメントを各セグメントに付着させ、これらセグメントが一まとめに接着されるように手で接触させた。次いでセグメントを一晩空気乾燥した。乾燥後、接着したセグメントを1100℃に加熱し、2時間保持し、冷却して、セメント結合ハニカム(cemented honeycomb)を形成した。
【0048】
セメントは非常に多孔性であり(約60%〜65%の多孔度)、非晶質シリカ結合相により、繊維に沿って多数の点で繊維が結合されている。この実施例の4点曲げ試験を行い、その荷重変位曲線を図3に示す。
【0049】
[実施例2〜5]
セメント結合ハニカムは、繊維に対してメチルセルロース(METHOCEL A15LV、The Dow Chemical Co.Midland、MIから入手可能)を約2重量部の量で添加し、ナッツフラワー(GLUFIL Products WF−7、AGRASHELL INC、Los Angeles、CAから入手可能)を0重量部(実施例2)、10重量部(実施例3)、20重量部(実施例4)、および50重量部(実施例5)で添加したこと以外、実施例1と同じ手順により作製した。有機結合剤またはポロゲンの添加により、セメントの加工および付着特性が変化するが、破壊抵抗は、図4に示されるこれら実施例の4点曲げ試験荷重曲線により例示されるように、セメントの多孔度が増大しても維持される。
【0050】
[実施例6]
セメント結合ハニカムは、アルミナ繊維(SAFFIL RFアルミナ繊維、直径3〜6マイクロメートル、長さは約100〜500マイクロメートルに及び、Saffil LTD.Cheshire、UK.から入手可能)を使用したこと以外、実施例1と同じ手順により作製した。さらに、構成成分の量は、繊維54重量%、Cerama−Bind 644Sという製品名でAremco Products Inc.、Valley Cottage、NYから入手可能なコロイダルシリカ(水中のシリカ固体含量40重量%)40重量%、およびナッツフラワー(GLUFIL Products WF−7、AGRASHELL INC、Los Angeles、CAから入手可能)6重量%であり、これらを混合して、均一に分散した繊維および結合剤を有するセメントを得た。4点曲げ試験をこの実施例に関して行い、その荷重変位曲線を図5に示す。
【0051】
[実施例7]
セメント結合ハニカムは、使用した繊維がケイ酸アルミニウム繊維(FIBERFRAX 7000 Spun Fibers、直径3〜5ミクロン、長さは約100〜500ミクロンに及び、Unifrax LLC、Niagara Fall、NYから入手可能)であること以外、実施例5と同じ手順により作製した。4点曲げ試験をこの実施例に関して行い、その荷重変位曲線を図5に示す。
【0052】
[実施例8]
セメント結合ハニカムは、使用した繊維がケイ酸アルミニウムジルコニウム(FIBERFRAX Long Staple Fine繊維、直径4〜8マイクロメートル、長さは約100〜500マイクロメートルに及び、Unifrax LLC、Niagara Falls、NYから入手可能)であること以外、実施例5と同じ手順により作製した。4点曲げ試験をこの実施例に関して行い、その荷重変位曲線を図5に示す。
【0053】
[実施例9]
セメント結合ハニカムは、以下の成分および量を使用したこと以外、実施例1と同じ手順により作製した。ミリングしたFIBERFRAX Long Staple Fine繊維31重量%、Cerama−Bind 644Sシリカ結合剤62重量%、メチルセルロース(METHOCEL A15LV、The Dow Chemical Co.Midland、MIから入手可能)1重量%、およびκアルミナ無機微粒子(サイズ1〜5マイクロメートル、Ceramiques Techniques & Industrielles、Salindres、フランスから入手可能)6重量%を一緒に混合して、セメントを調製した。4点曲げ試験をこの実施例に関して行い、その荷重変位曲線を図6に示す。
【0054】
[実施例10]
セメント結合ハニカムは、使用した無機粒子がジルコニア、99+%(金属ベース、Hf除外、HfO 2%)、−325メッシュであってAlfa Aesar、a Johnson Mathey Co.、Ward Hills MAから入手可能なものであること以外、実施例9と同じ手順により作製した。4点試験をこの実施例に関して行い、その荷重変位曲線を図6に示す。
【0055】
[実施例11]
ミリングしたケイ酸マグネシウム繊維(ISOFRAX繊維、直径4〜5マイクロメートル、長さは約100〜500マイクロメートル、Unifrax LLC、Niagara Falls、NYから入手可能)38重量%、コロイダルシリカ(Nexsil 12水性コロイダルシリカ、Nyacol Nano Technologies,Inc.、Ashland、MAから入手可能)56重量%、メチルセルロース(METHOCEL A15LV、The Dow Chemical Co.Midland、MIから入手可能)3重量%、およびAlfa Aesarから入手可能なポリエチレングリコール400 3重量%を混合して、均一な混合物を得た。セメントを、実施例1と同じ手法で、大きなムライトハニカムから切断した乾燥ムライトセグメントに直接付着させた。4点曲げをこの実施例に関して行い、その荷重変位曲線を図7に示す。
【0056】
[実施例12]
ミリングしたケイ酸アルミニウムジルコニウム繊維、実施例1で使用したFIBERFRAX Long Staple Fine繊維33重量%、Cerama−Bind 644Aという製品名の、Aremco Products Inc.、Valley Cottage、NYから入手可能なコロイダルアルミナ(コロイド状アルミナ)(水中のアルミナ固体含量30重量%)67重量%を、繊維が均一に分散するまで一緒に混合した。セメント結合ハニカムを、実施例1と同じ手法で作製し、4点曲げ試験を行った。この実施例の荷重変位曲線を図8に示す。
【0057】
[実施例13]
ミリングしたケイ酸アルミニウムジルコニウム、実施例1で使用したFIBERFRAX Long Staple Fine繊維37重量%、Cerama−Bind 644Aという製品名でAremco Products Inc.、Valley Cottage、NYから入手可能なコロイダルアルミナ(水中のアルミナ固体含量30重量%)59重量%、メチルセルロース(METHOCEL A15LV、The Dow Chemical Co.Midland、MIから入手可能)2重量%、およびポリエチレングリコール400(Alfa Aesar)2重量%を、繊維が均一に分散するまで一緒に混合した。セメント結合ハニカムを、実施例1と同じ手法で作製し、4点曲げ試験を行った。この実施例の荷重変位曲線を、図9に示す。
【0058】
[実施例14]
実施例11で使用した、ミリングしたケイ酸マグネシウム繊維42重量%、コロイダルアルミナ(AL20SD、Nyacol Nano Technologies,Inc、Ashland、MAから入手可能)13重量%、水41重量%、メチルセルロース(METHOCEL A15LV、The Dow Chemical Co.Midland、MIから入手可能)2重量%、およびポリエチレングリコール400(Alfa Aesar)2重量%を混合して、均一な混合物を得た。セメントを、実施例11と同じ手法で大きなムライトハニカムから切断したムライトセグメントに直接付着させた。4点曲げ荷重変位曲線を、図10に示す。剪断速度約5秒−1で、セメントに関して連続して行った3回の測定の平均粘度(剪断速度に対する粘度プロット)は、標準偏差4.25で12.28Pa・sであり、約200秒−1での平均粘度が、標準偏差0.038で0.036Pa・sであった。3回の測定値の測定において、粘度は徐々に上昇したが、これは、有機結合剤の存在に加えて、剪断および一部の水の蒸発によるものと考えられる。さらに、最後の高剪断測定は、粘度が上昇したために行わなかった。
【0059】
[実施例15]
ミリングしたケイ酸アルミニウムジルコニウム繊維、実施例1で使用したFIBERFRAX Long Staple Fine繊維37重量%、およびCerama−Bind 644Aという製品名でAremco Products Inc.、Valley Cottage、NYから入手可能なコロイダルアルミナ(水中のアルミナ固体含量30重量%)49重量%を混合して、均一な混合物を得た。次いでCerama−Bind 644Sという製品名でAremco Products Inc.、Valley Cottage、NYから入手可能なコロイダルシリカ(水中のシリカ固体含量40重量%)15重量%を混合物に添加し、均一な混合物が調製されるまで混合した。セメントを、実施例11と同じ手法で大きなムライトハニカムから切断したムライトセグメントに、直接付着させた。セメント結合セグメント4点曲げプロットの荷重変位曲線を、図11に示す。約5秒−1の剪断速度でセメントに関して連続的に実行した3回の測定値の平均粘度(剪断速度に対する粘度プロット)は、標準偏差2.95で10.37Pa・sであり、約200秒−1での平均粘度は、標準偏差0.1で0.05Pa・sであった。この実施例のセメントは、実施例14のセメントのような時間依存的な粘度の増大を示さず、セメントをセグメントに付着させるときのワーキングタイムを延長できる点で有用である。
【0060】
[実施例16]
実施例16は、有機結合剤を、(アルミナコロイドおよび繊維)を有する初期混合物に添加し、かつ以下の成分および量を使用したこと以外、実施例15と同じである。ミリングしたケイ酸アルミニウムジルコニウム繊維(FIBERFRAX Long Staple Fine繊維)34重量%、コロイダルアルミナ(Cerama−Bind 644A)56重量%、メチルセルロース(METHOCEL A15LV)2重量%、およびポリエチレングリコール400 2重量%を混合して、均一な混合物を得た。次いでコロイダルシリカCerama−Bind 644S 6重量%を混合物に添加して、実施例11のようにムライトセグメントをセメント結合するのに使用されるセメントを形成した。この実施例の荷重変位曲線を、図12に示す。
【0061】
比較例1
比較例1のサンプルは、MSC−111と標識されたNGK SiCハニカム(NGK、名古屋、日本)から直接切断し、4点曲げ試験を行った。荷重変位曲線を、図3および7〜12に比較として示す。これら比較例のセメントでは、繊維が、図13に示されるように無機微粒子のマトリックスに埋め込まれている。
【0062】
本発明の、比較例1に優る最終破壊(曲線の終わり)前の改善されたエネルギーの吸収および継続は、図3および7〜12に示されているが、これは微粒子材料のマトリックスなしで結合繊維網を本発明において使用したことに起因すると考えられる。この結果、図14に示されるように、繊維に沿った多くの点で繊維を結合させ、比較例14の破断と比べて驚くほど有利な破断がもたらされた。
【0063】
比較例2
Saureisen Chemical Set 12は、ジルコン微粒子をベースにしたセメントであり、Saureisen、Pittsburg、PAから入手可能である。加熱後のこのセメントは、上記会社の文献の通り、5.6ppm/℃のCTEを有していた。このセメントを使用して、実施例1と同じ手法でセグメントを作製した。セメント結合セグメントの荷重変位曲線を、図15に示す。
【0064】
比較例3
セメント結合セグメントは、使用したセラミックセメントが、Cotronics Corp.、Brooklyn、NYから入手可能なCotronics 901、即ち少量の繊維で強化されたアルミナをベースにしたセメントであること以外、比較例2と同じ方法で作製し、試験をした。加熱された後のセメントは、上記会社の文献の通り、7.2ppm/℃のCTEを有していた。セメント付きセグメントの荷重変位曲線を、図15に示す。
【0065】
比較例2および3の荷重変位曲線から明らかなように、これらは脆性モードで破壊される(ピーク荷重後に終端に到達しない。)。この破断は、例えばディーゼル微粒子フィルタの場合のように、熱応力により亀裂が伝搬した場合、セグメントそのものの破断を引き起こす可能性があるので望ましくない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維および結合相を含む、セメントによって一まとめに接着されている、少なくとも2個の個別の、より小さいセラミックハニカムを含むセラミックハニカム構造であって、前記のより小さいハニカムおよび繊維が、非晶質シリケート、アルミネート、またはアルミノ−シリケートガラスを含む結合相によって一まとめに結合されており、前記セメントが、その他の無機粒子を最大で約5体積%有する、セラミックハニカム構造。
【請求項2】
前記無機繊維が、100マイクロメートルから1000マイクロメートルの数平均長を有する、請求項1に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項3】
前記セメントが、任意のその他の無機粒子を有していない、請求項1に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項4】
前記繊維の少なくとも90数量%が、100マイクロメートルから1000マイクロメートルの間の長さを有する、請求項3に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項5】
前記繊維の少なくとも95数量%が、100マイクロメートルから1000マイクロメートルの間の長さを有する、請求項4に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項6】
前記繊維の平均長が100から500マイクロメートルである、請求項1に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項7】
前記平均長が少なくとも100マイクロメートルである、請求項6に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項8】
前記平均長が少なくとも200マイクロメートルである、請求項7に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項9】
前記非晶質結合相が、その内部に、0℃から1400℃の不連続熱膨張係数を有する結晶質相を有する、請求項1に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項10】
前記結晶質相が、石英、トリジマイト、クリストバライト、またはこれらの組合せである、請求項9に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項11】
前記繊維が、非晶質アルミノ−シリケート繊維である、請求項1に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項12】
前記繊維がアルカリ土類を含む、請求項11に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項13】
前記アルカリ土類がMgである、請求項12に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項14】
前記より小さいハニカムが、ムライトを含む、請求項13に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項15】
前記より小さいハニカムが、針状ムライトである、請求項14に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項16】
前記セメントが、約20%から約80%の多孔度を有する、請求項1に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項17】
前記セメントが、少なくとも約30%の多孔度を有する、請求項16に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項18】
前記セメントが、最大で約70%の多孔度を有する、請求項16に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項19】
前記繊維がジルコニウムを含有する、請求項1に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項20】
ハニカム構造を形成する方法であって、第1のハニカムセグメントの外面の少なくとも1つに、無機繊維、キャリア流体、コロイド状無機ゾルを含むセメントを、前記無機繊維およびコロイド状無機ゾルの最大で5体積%であるその他の無機粒子の存在下で接触させ、ここで前記繊維は、セメントの全体積の少なくとも約10体積%の固形分添加を有するものであるステップと、第2のハニカムセグメントに第1のハニカムセメントを機械的に接触させて、前記ハニカムセグメントが接着するように前記セメントが前記ハニカムセグメントの間に介在するようにするステップと、前記セメントの繊維とハニカムセグメントとの間に非晶質セラミック結合が形成されるよう、接着したセグメントを十分に加熱して、ハニカム構造を形成するステップとを含む方法。
【請求項21】
前記セメントが有機可塑剤を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記可塑剤が、ポリエチレングリコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはこれらの組合せである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記加熱するステップが、最大で1100℃である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記熱が最大で約1050℃である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記セグメントハニカムを、セメントの付着前に、最初に湿潤させる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記セメント中の繊維の固形分添加が、少なくとも15体積%である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記セメントがポロゲンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記ポロゲンが、繊維および無機結合剤の最大で約20体積%の量で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記セラミックセグメントがムライトであり、前記無機ゾルが、アルミナゾルと混合されたシリカゾルを含み、その熱膨張係数がムライトセグメントの熱膨張係数の10%以内であるようになされている、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
シリカゾルとアルミナゾルとの重量比が、固形分ベースで、1:99から99:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記セメントが、剪断減粘化されている、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記セメントが、5秒−1の剪断速度で少なくとも約1Pa・sの粘度を有し、200秒−1の剪断速度で最大で約0.05Pa・sの粘度を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記セメントが、その他の無機粒子の不存在下で、かつ有機添加剤の不存在下で作製される、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
前記セグメントのそれぞれが、セメント中のコロイド粒子とは別のコロイド状ゾルに曝されている、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記コロイド状ゾルが、前記セメントと同じキャリア流体を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記コロイド状ゾルが、シリカゾル、アルミナゾル、またはこれらの組合せである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
セラミックセメントを製造するための方法であって、
(a)無機繊維と、負または正の表面電荷を有する第1のコロイド状ゾルとを混合するステップと、次いで引き続き、
(b)ステップ(a)の混合物中に、前記第1のコロイド状ゾルとは反対の表面電荷を有する第2のコロイド状ゾルを混合して、セラミックセメントを形成するステップと
を含む方法。
【請求項38】
その他の添加剤の不存在下で行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記セラミックセメントが、剪断減粘化されている、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記繊維が、約100から約1000マイクロメートルの平均長を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
アルカリ土類シリケート、アルカリ土類アルミノ−シリケート、またはこれらの組合せを含む無機繊維を含むセメントによって一まとめに接着されている、少なくとも2個の個別の、より小さいセラミックハニカムを含むセラミックハニカム構造であって、前記のより小さいハニカムおよび繊維が、非晶質シリケート、アルミネート、またはアルミノ−シリケートガラスを含む結合相によって一まとめに結合されている、セラミックハニカム構造。
【請求項42】
前記無機繊維が、アルカリ土類シリケートを含む、請求項41に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項43】
前記無機繊維が、ケイ酸Ca、ケイ酸Mg、またはこれらの組合せである、請求項42に記載のセラミックハニカム構造。
【請求項44】
前記無機繊維がケイ酸Mgである、請求項43に記載のセラミックハニカム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−515319(P2011−515319A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500955(P2011−500955)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/037671
【国際公開番号】WO2009/117580
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】