説明

耐燃性ポリエチレン絶縁電線

【課題】 可撓性に優れ、導体の断面積を変えることなく外径を小さくすることのでき、撚線導体の最外周に絶縁体を均一の厚さに被覆することができ、撚線導体の最外周に絶縁体が食い込むのを防止し、絶縁体を容易に剥離することのできる耐燃性ポリエチレン絶縁電線を提供すること。
【解決手段】 中心導体2の外周に複数本の外層素線3を撚り合わせて高圧で圧縮し、外層素線3を大径の外側円弧3cと小径の内側円弧を有する端面扇状に形成し,かつ、複数本の隣り合う外層素線3の外側円弧3c間に隙間を生じさせることなく外周面を滑らかに形成して圧縮撚線導体4を構成し,圧縮撚線導体4の外周に耐燃性ポリエチレン樹脂からなる絶縁体5を被覆して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐燃性ポリエチレン絶縁電線に係り、特に撚線導体に被覆される耐燃性ポリエチレン樹脂を容易に剥離できるようにすることのできる耐燃性ポリエチレン絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、絶縁被覆撚線は、撚線導体に絶縁体を被覆して形成されている。この絶縁被覆撚線は、被覆電線の導体に高周波電流を流す際に、高周波電流が導体断面の外周に近いほど電流が多く流れて、逆に導体断面の中心に近いほど電流が流れづらくなる表皮効果という現象が起こる。この表皮効果を減らすために、従来の絶縁体が被覆される絶縁被覆撚線導体は、中心導体を1本設けて、この中心導体の周囲に、素線を複数本配置してなる同心撚り軟銅導体が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。この同心撚り軟銅導体は、1本の中心導体の周囲に、前記中心導体と同一の外径からなる素線を6本、12本、24本というように配置するものであって、特許文献1の図4においては6本の素線が撚り合わせて配置された構造となっている。
【0003】
このような絶縁被覆撚線導体51は、内層52を構成する素線53の周囲に、外層54を構成する複数の素線55が配置され撚り合わせて撚線導体58が形成されており、その外周には、樹脂からなる絶縁体56が形成されている。従来の絶縁被覆撚線導体51は、内層52の素線53と、外層54の素線55がとは同径のものが用いられていた。
【0004】
このような絶縁被覆撚線導体51に用いられる同心撚り軟銅導体は、自動車内部の配線や、電子機器等の内部において使用されることが多いため、外径を小さくすることが求められていたが、同心撚り軟銅導体は、1本の中心導体と、該中心導体の周りに配置される素線とが同一の外径を有する円形に形成されていたので、同心撚り軟銅導体としての外径が大きいものであった。
【0005】
しかし、特許文献1の絶縁被覆撚線導体51は、1本の中心導体と、該中心導体の周りに配置される素線とが同一の外径を有する円形に形成されていたので、同心撚り軟銅導体としての外径が大きく、自動車等の低電圧配線に用いられる電線の細径化の要求に応えるものとはなっていない。そこで、単一の中心素線の周囲に、少なくとも、その周方向に沿って取囲むように6本の周辺素線が隣接した状態に集合配置し、中心素線として、その径寸法が周辺素線の径寸法よりも小さいものを用い、周辺素線をその集合形態の中心に向けて圧縮した圧縮導体を用いて、絶縁被覆撚線導体を構成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
この特許文献2の圧縮導体2は、図2に示すように、まず、単一の中心素線3aの周囲に、その周方向に沿って取囲むように6本の周辺素線3bを隣接した状態に集合配置して中心素線3aを中心に撚り合わせる。この状態では、中心素線3aを中心とする正六角形の各項点の位置に各周辺素線3bの中心軸がそれぞれ配設された状態となっている。そして、次に、この中心素線3a,6本の周辺素線3bの集合形態を、その集合形態の中心(中心素線3aの中心)に向けて圧縮する。
【0007】
すると、各周辺素線3bは、互いの接触部分で圧接されて相互に影響を受けて変形しながら、前記集合形態の中心に向けて変形移動することになる。この際、前記中心素線3aと各周辺素線3b間には若干の遊びを持たせた状態となっている。このため、中心素線3aは各周辺素線3bに密着せず、または、弱い力で密着した状態となって、図1に示すような圧縮導体2が形成される。
【特許文献1】特開2003−51214号公報(第2頁、第4図)
【特許文献2】特開2002−100241号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように特許文献1の耐燃性ポリエチレン絶縁電線51は、中心導体(内層52の素線53)の周囲に外層54を構成する複数の素線55を配置して撚り合わせて構成される撚線導体58に絶縁体56である耐燃性ポリエチレン樹脂を被覆して、構成されている。この特許文献1の耐燃性ポリエチレン絶縁電線51に使用している撚線導体(撚り合わせ導体)58は、撚線導体58を構成する全ての素線53,54が円形に形成されているため、撚り合わせた際に導体最外周に大きな凹凸が形成される。この状態で、撚線導体(撚り合わせ導体)58に絶縁体56である耐燃性ポリエチレン樹脂を被覆すると、導体最外周、すなわち外層54の外周に形成されている大きな凹凸の凹み部分に被覆した絶縁体56である被覆材料(耐燃性ポリエチレン樹脂)が食い込むことになる。
【0009】
また、特許文献2の圧縮導体2を用いた電線1の場合も、図1に示す如く、各周辺素線3bが、互いの接触部分で圧接されて相互に影響を受けて変形しながら、前記集合形態の中心に向けて変形移動する。しかし、この中心素線3aと各周辺素線3b間には、若干の遊びを持たせた状態となっており、中心素線3aは各周辺素線3bに密着せず、または、弱い力で密着した状態となって、図1に示すように特許文献2の圧縮導体2は、圧縮導体2を構成する中心素線3aと6本の周辺素線3bの集合形態を撚り合わせた際に、圧縮導体2最外周に凹凸が形成される。
この状態で、圧縮導体2の上に絶縁被腹部(耐燃性ポリエチレン樹脂)5を被覆すると、圧縮導体2の最外周に形成されている大きな凹凸の凹み部分に被覆した絶縁被腹部(耐燃性ポリエチレン樹脂)5が食い込むことになる。
【0010】
この特許文献1の耐燃性ポリエチレン絶縁電線は、耐燃性ポリエチレン絶縁電線の端末を処理する場合、絶縁体56を剥離し、撚線導体(撚り合わせ導体)58を露出することが行われる。この撚線導体(撚り合わせ導体)58から絶縁体56を剥離するにあたって、撚線導体(撚り合わせ導体)58の最外周の大きな凹凸の凹み部分に被覆した絶縁体56である被覆材料(耐燃性ポリエチレン樹脂)が食い込んでいるため、被覆材料(耐燃性ポリエチレン樹脂)の剥離性が著しく悪いという問題点を有している。
【0011】
また、特許文献2の圧縮導体2を用いた電線1耐燃性ポリエチレン絶縁電線の端末を処理する場合、絶縁被腹部(耐燃性ポリエチレン樹脂)5を剥離し、圧縮導体2を露出することが行われる。この圧縮導体2から絶縁被腹部(耐燃性ポリエチレン樹脂)5を剥離するにあたって、圧縮導体2の最外周の大きな凹凸の凹み部分に被覆した絶縁被腹部(耐燃性ポリエチレン樹脂)5である被覆材料(耐燃性ポリエチレン樹脂)が食い込んでいるため、被覆材料(耐燃性ポリエチレン樹脂)の剥離性が著しく悪いという問題点を有している。
【0012】
塩化ビニル絶縁電線の場合、被覆材料が塩化ビニル樹脂で構成されており、この塩化ビニル樹脂材料の性質により撚線導体(撚り合わせ導体)58の最外周の大きな凹凸の凹み部分に被覆材料(塩化ビニル樹脂)が食い込んでいても容易に剥離することができる。しかしながら、被覆材料として耐燃性ポリエチレン樹脂を用いる耐燃性ポリエチレン絶縁電線の場合は、耐燃性ポリエチレン樹脂が導体に強密着する性質を有しており、撚線導体(撚り合わせ導体)58、圧縮導体2の最外周の大きな凹凸の凹み部分に被覆材料(ポリエチレン樹脂)が食い込むと、被覆材料として耐燃性ポリエチレン樹脂の被覆層厚が均一になっておらず、さらに剥離が非常に困難になるという問題点を有している。
【0013】
本発明の目的は、可撓性に優れ、導体の断面積を変えることなく外径を小さくすることのでき、撚線導体の最外周に絶縁体を均一の厚さに被覆することができ、撚線導体の最外周に絶縁体が食い込むのを防止し、絶縁体を容易に剥離することのできる耐燃性ポリエチレン絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1記載の耐燃性ポリエチレン絶縁電線は、中心導体の外周に複数本の外層素線を撚り合わせて高圧で圧縮し、該外層素線を大径の外側円弧と小径の内側円弧を有する端面扇状に形成し,かつ、前記複数本の外層素線の外側円弧間に隙間を生じさせることなく外周面を滑らかに形成して撚線導体を構成し,前記撚線導体の外周に耐燃性ポリエチレン樹脂からなる絶縁体層を被覆して構成したものである。
【0015】
このような特徴を有する請求項1記載の発明によれば、素線を撚り合わせた複数芯導体の最外周表面を強圧縮して、撚り合わせ導体(撚線導体)の表面を真円に近い形状に成形し、撚り合わせ導体(撚線導体)の最外周の凹凸を除去して、外周素線間の隙間を無くしてあるため、耐燃性ポリエチレン絶縁体の導体素線間の食い込みを防止することができる。
【0016】
上記課題を解決するため、請求項2記載の耐燃性ポリエチレン絶縁電線は、請求項1記載の耐燃性ポリエチレン絶縁電線において、前記中心導体の外周に撚り合わせられる各外層素線を,前記中心導体の径よりも小さい径で構成したものである。
【0017】
このような特徴を有する請求項2記載の発明によれば、撚り合わせ導体(撚線導体)を構成する素線に従来品より外径の太い素線を用いて撚り合わせ、中心素線に、他の素線より更に太いものを用いているため、強圧縮後の導体断面積を従来品と同等にし、電線要求特性の1つである導体抵抗値を満足することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐燃性ポリエチレン絶縁電線によれば、可撓性に優れ、導体の断面積を変えることなく外径を小さくすることのでき、撚線導体の最外周に絶縁体を均一の厚さに被覆することができ、撚線導体の最外周に絶縁体が食い込むのを防止し、絶縁体を容易に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の耐燃性ポリエチレン絶縁電線の一実施の形態を示す斜視図である。
【0020】
図1において、1は、本発明に係る耐燃性ポリエチレン絶縁電線である。この耐燃性ポリエチレン絶縁電線1は、中心導体2と、断面扇形状の外層素線3とを有する構造となっていて、1本の中心導体2の外周に複数本の外層素線3を撚り込んで圧縮して圧縮撚線導体4が形成されている。この圧縮撚線導体4は、中心導体2を中心に、その周方向に沿って取囲むように6本の外層素線3を隣接した状態に集合配置し、これらを撚り合わせて撚線導体を形成し、さらに、この撚線導体を強圧縮して圧縮撚線導体4を形成している。
【0021】
このように中心導体2の外周には、6本の外層導体3が設けられている。この6本の各外層導体3は、1本の素線を扇形状となるように伸線したものである。そして、この6本の各外層素線3は、中心導体2の外周に沿って配置されている。本実施の形態においては、中心導体2の外周に6本の同一形状の外層導体3が配置されている。すなわち、本実施の形態においては、6本の外層素線3の隣り合う側面同士が面接触し、6本の外層素線3が一体となって端面形状が略リング状に形成されている。
【0022】
本実施の形態において、中心導体2は、従来の中心導体と同様に軟銅等からなっていて、その外径の大きさは、従来と同一の大きさとなっている。
この中心導体2は真円に成形されている。中心導体2を真円に成形することで、該中心導体2の上に同心円状に樹脂を押出被覆して電線を形成した際に、電線が良好な可撓性を得ることができるようになっている。
そして、この真円に成形された中心導体2の外周には複数本の外層素線3が撚り込まれた状態となっている。本実施の形態においては、1本の中心導体2に6本の外層素線3が撚り込まれている。図において、この外層素線3は、端面が扇形状となるように形成された素線であって、中心導体2の長手方向に沿って、中心導体2の外周に撚り込まれている。
【0023】
本実施の形態において、中心導体2の外周に撚り合わせられる複数本の外層素線3の径は、中心導体2の径よりも小さい径で構成されている。すなわち、圧縮撚線導体4を構成する中心導体2素線、6本の外層素線3は、従来品より外径を太くして撚り合わせ、中心素線2は、他の6本の外層素線3より更に太いものを用いる。従来品と同一外径の外層素線3を強圧縮すると、導体断面積が著しく小さくなり、電線要求特性の1つである導体抵抗値を満足することが困難となるため、強圧縮後の導体断面積を従来品と同等にしてある。
【0024】
中心導体2を中心に、その周方向に沿って取囲むように6本の外層素線3を隣接した状態に集合配置し、これらを撚り合わせて撚線導体を形成し、さらに、この撚線導体を強圧縮して形成される圧縮撚線導体4の6本の各外層素線3は、図2に示す如く、各両端部に側面3a,3bを有する構造となっていて、外層素線3を中心導体2に接合させた際に、隣り合う外層素線3の側面3aと側面3b同士が面接触するようになっている。また、この6本の外層素線3の各外側円弧3cは、6本の各外層素線3を撚り合わせて形成される撚線導体の最外周表面を強圧縮して、圧縮撚線導体4を形成し、この圧縮撚線導体4の表面を真円に近い形状に成形してある。そして、6本の外層素線3の各隣り合う外層素線3の側面3aと側面3b同士の境界(各外周素線3間)に隙間が生じないように接合し、圧縮撚線導体4の最外周に生じる凹凸を除去し、圧縮撚線導体4の導体表面を平滑な面に形成してある。
【0025】
この圧縮撚線導体4は、図3に示す如く、圧縮機10によって撚り合わせ導体を強圧縮して製造される。すなわち、中心導体2と6本の外層素線3は、この中心導体2を中心に、その周方向に沿って、取囲むように隣接した状態に集合配置するように、圧縮機10の分線盤11を通して送り出される。この分線盤11を出てきた中心導体2と6本の外層素線3は、圧縮機10の撚り口金12によって中心導体2を中心に、その周方向に沿って取囲むように隣接した状態に撚り合わされ、円形撚り合わせ導体(撚線導体)13が形成される。
【0026】
このようにして撚り合わされた円形撚り合わせ導体(撚線導体)13は、第1段目の圧縮ダイス14において、圧縮される。この圧縮ダイス14によって圧縮された円形撚り合わせ導体(撚線導体)13は、一次圧縮撚線15となる。この一次圧縮撚線15は、通常の圧縮導体であるが、各外層素線3間の溝15aは、円形撚り合わせ導体(撚線導体)13の溝13aより小さくなっているが、溝5aは、完全に残っている。
【0027】
次に、第1段目の圧縮ダイス14において、圧縮されて形成された一次圧縮撚線15は、次段の圧縮ダイス16に送られ、この圧縮ダイス16よって強圧縮され、圧縮撚線導体17となる。この圧縮ダイス16は、1段とは限らず、内径の異なる圧縮ダイスを複数段有するものである。この圧縮ダイス16は、便宜上、1つで表しているが、一次圧縮撚線15の各外層素線3間の溝15aを無くし、一次圧縮撚線15の最外層表面が平滑になり圧縮撚線導体17が成型されるまでの段数有している。この圧縮ダイス16を構成する一次圧縮撚線15が通過する圧縮ダイスの数量は、
(1)撚り合わせる外層素線3の本数
(2)素線の外径
(3)撚り合わせ後の外径
によって異なる。
【0028】
これは、一次圧縮撚線15を急激に圧縮を行うと、外層素線3の内部に残留応力が強く発生する。この外層素線3の内部に残留応力が強く発生すると、外層素線3の破壊(断線)が発生する。このため、上記の条件によっては、3〜5個の圧縮ダイスを通して徐々に圧縮していかなければならない。
また、この工法の場合、金属の加工硬化により撚り合わせ後の導体が著しく硬くなり、電線・ケーブル用の導体として必要な曲げ伸ばし性能が大きく失われる。このため、圧縮ダイス16における最終圧縮ダイスを通過して一次圧縮撚線15の最外層表面が平滑となり強圧縮された圧縮撚線導体17を、連続焼鈍機20を通過させて、加工硬化した圧縮撚線導体17を連続で焼鈍し軟化させる。
【0029】
このように形成される圧縮撚線導体4の上に絶縁体5として耐燃性ポリエチレン樹脂を被覆してある。このように絶縁体5として耐燃性ポリエチレン樹脂を用いるのは、絶縁体5にポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いた従来の絶縁電線にあっては、例えば、焼却廃却処分するために電線を燃焼すると、ポリ塩化ビニル樹脂組成物から腐食性を有する塩化水素ガスが発生するという問題があった。
そこで、近年、絶縁体にオレフィン系樹脂組成物(例えば、ポリエチレン)を用い、ハロゲン化物を用いない絶縁電線を自動車のワイヤハーネス等、高温を発する箇所の絶縁電線として用いる試みがなされている。このオレフィン系樹脂組成物(例えば、ポリエチレン)の場合、単独では難燃性がないため、耐燃性ポリエチレン絶縁電線では、絶縁体5であるポリエチレン樹脂に水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を混合して難燃性を持たせている。
【0030】
オレフィン系樹脂には、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体があるが、これらのいずれか1種または2種以上の混合物で構成することができる。
この他、ノンハロゲン難燃ポリオレフィン組成物に用いることのできるオレフィン系樹脂には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体がある。
本実施の形態においては、オレフィン系樹脂の内のポリエチレが用いられている。
【0031】
この絶縁体5であるポリエチレンに配合する金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのいずれか1種又は2種以上の混合物で構成することができる。この金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)をオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン)に配合することによってオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン)組成物が燃焼した時、配合されている金属水和物(例えば、水酸化マグネシウム)に含まれる結晶水が噴出して消火作用を行うためオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン)が燃焼し難くなり、燃焼した際にも燃え殻を炭化させ保形性を持たせる作用を有している。
【0032】
また、オレフィン系樹脂組成物(例えば、ポリエチレン)を用いた絶縁電線に対しては、国内、外国ともに規格を設けており、近年、外国の規格に適合する絶縁電線が要求されている。外国の規格では、垂直試験としてICEA規格がある。このICEA規格の線心一条垂直燃焼試験(ICEA S61−402(NEMA WCS)垂直燃焼試験)は、次の要領で行われる。
まず、金属製の箱の上部に、試料である約560mmの長さの電線を固定して吊り下げ、9.5mmの口径、空気吸入から先端まで102mmの長さの点火栓のついたチリルバーナーを20゜の傾斜台にセットして、都市ガスを用い、バーナーの炎の長さを127mm、内部の青炎の長さを38.1mmに調整し、試料との位置をバーナーの青炎の先端が試料に当たるように調整する。試料の上端部には、厚さ0.127mm、幅12.7mmのクラフト紙を試料上部に1回巻付け、19.0mmの長さを出してインジケーターをセットする。このようにセットした後、バーナーの点火栓を点火させた状態でバーナーの元バルブを開放させて、試料に15秒間当てた後、元バルブを閉じて15秒間休止するといった動作を4回繰り返し、試料に5回炎を当てた後、クラフト紙の25%が燃える場合を延焼性と判定し、1分以上試料が燃え続けた場合は不合格としている。
【0033】
このような絶縁体5として用いられるポリエチレンには、架橋した架橋ポリエチレンを用いてもよい。
架橋方法には、γ線または電子線を放射線源として使用し、これらをポリエチレンに照射することにより分子中にラジカルが発生し、これらラジカル同士がカップリングすることにより分子桿の架橋結合が形成される放射線照射架橋、ポリエチレンの可塑化温度で分解しない有機過酸化物を配合しておき、成形加工と同時または成形後に高温高圧下に晒すことにより有機過酸化物が分解しラジカルが発生し、このラジカルにより分子間の架橋反応が進む有機過酸化物架橋、ビニルシラン化合物をポリエチレンにグラフト付加反応させた後、このグラフトマーにシラノール縮合触媒を添加し成形加工後、水分雰囲気下に晒すことによりグラフト末端のアルコキシシラン同士が加水分解後、脱あるこーるし分子間の架橋結合が形成されるシラン架橋(水架橋)があり、このいずれの方法でも良い。
【0034】
このように絶縁体5として耐燃性ポリエチレン樹脂が被覆される圧縮撚線導体4は、中心導体2素線と6本の外層素線3に従来品より外径を太くして撚り合わせ、中心素線2は、他の6本の外層素線3より更に太いものが用いられ、従来品と同一外径の外層素線3を強圧縮し、強圧縮後の導体断面積を従来品と同等にし、圧縮撚線導体4の表面を真円に近い形状に成形してある。しかも、圧縮撚線導体4を構成している6本の外層素線3の各隣り合う外層素線3の側面3aと側面3b同士の境界(各外周素線3間)は、隙間が生じないように接合され、圧縮撚線導体4の最外周に生じる凹凸が除去され、圧縮撚線導体4の導体表面が平滑な面に形成されている。
このため圧縮撚線導体4の上に絶縁体5として耐燃性ポリエチレン樹脂を被覆すると、この被覆された耐燃性ポリエチレン樹脂は、圧縮撚線導体4の最外周の凹凸の除去及び外層素線3間の隙間を無くすることで、導体素線間への食い込みが防止されている。
【0035】
したがって、本実施の形態によれば、絶縁体材料として耐燃性ポリエチレン樹脂の外層素線3間への食い込みを防止し、圧縮撚線導体4からの絶縁体5の剥離性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、導体表面を強圧縮し、平滑な導体表面を形成しても、電気的要求特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の耐燃性ポリエチレン絶縁電線の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1に図示の耐燃性ポリエチレン絶縁電線の圧縮撚線導体の一部拡大断面図である。
【図3】図1に図示の圧縮撚線導体を製造する圧縮機の工程を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1……………………耐燃性ポリエチレン絶縁電線
2……………………中心導体
3……………………外層素線
3c…………………外側円弧
4……………………圧縮撚線導体
5……………………絶縁体
10…………………圧縮機
11…………………分線盤
12…………………撚り口金
13…………………導体(撚線導体)
14…………………圧縮ダイス
15…………………一次圧縮撚線
16…………………圧縮ダイス
17…………………圧縮撚線導体
20…………………連続焼鈍機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の外周に複数本の外層素線を撚り合わせて高圧で圧縮し、該外層素線を大径の外側円弧と小径の内側円弧を有する端面扇状に形成し,
かつ、前記複数本の隣り合う外層素線の外側円弧間に隙間を生じさせることなく外周面を滑らかに形成して圧縮撚線導体を構成し,
前記圧縮撚線導体の外周に耐燃性ポリエチレン樹脂からなる絶縁体層を被覆してなる耐燃性ポリエチレン絶縁電線。
【請求項2】
前記中心導体の外周に撚り合わせられる各外層素線は,
前記中心導体の径よりも小さい径で構成されたものである請求項1に記載の耐燃性ポリエチレン絶縁電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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