説明

耐薬品性のポリプロピレン製梯子

【課題】繊維強化プラスチックの合成樹脂製梯子に代えて横桟が補強されたポリプロピレンの合成樹脂製梯子とし、長期にわたってより劣化しなく安全に使用できる耐薬品性の合成樹脂製梯子を提供する。
【解決手段】両側桁1とその間に複数の足掛け用横桟2を配置して構成した合成樹脂製梯子において、各側桁をポリプロピレン樹脂で筒形に構成すると共に各横桟を補強用の金属パイプ21の外周をポリプロピレン樹脂で覆って構成し、前記金属パイプの両端部に被嵌されている密封キャップ3を介して横桟を側桁の接続してなる耐薬品性のポリプロピレン製梯子構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両側桁とその間に複数の足掛け用横桟を配置して構成した合成樹脂製梯子に関し、特に耐薬品性の合成樹脂製の梯子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、角形筒の両側桁とその間に中空筒の複数の足掛け用横桟を配置して構成した繊維強化プラスチックの合成樹脂製梯子は公知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方,両側桁とその間に複数の足掛け用横桟を配置して構成したポリプロピレンの合成樹脂製梯子も公知である(例えば特許文献2又は特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2764568号公報。
【特許文献2】実公昭50ー21号公報。
【特許文献3】特許第3955068号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例の繊維強化プラスチックの合成樹脂製梯子は、硫化水素ガスや他の薬品ガス等以外のガスに対しては耐蝕性に優れているが、前記硫化水素ガスや他の薬品ガス等が滞留するような場所で使用すると梯子が腐蝕して劣化するおそれがある。一方、従来例のポリプロピレンの合成樹脂製梯子は、硫化水素ガスや他の薬品ガス等のガスに対しては前記繊維強化プラスチックの合成樹脂製梯子に比して耐蝕性に優れているが、気温の上昇によって横桟に被覆されたポリプロピレンが軟化して梯子がたるみ、劣化して安全な梯子とは言い難いものとなるおそれがある。
【0006】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、繊維強化プラスチックの合成樹脂製梯子に代えて横桟が補強されたポリプロピレンの合成樹脂製梯子とし、長期にわたってより劣化しなく安全に使用できる耐薬品性の合成樹脂製梯子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における耐薬品性のポリプロピレン製梯子は、請求項1においては、各側桁をポリプロピレン樹脂で筒形に構成すると共に各横桟を補強用の金属パイプの外周をポリプロピレン樹脂で覆って構成し、前記金属パイプの両端部に被嵌されている密封キャップを介して横桟を側桁に接続してなることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2においては、前記請求項1における横桟のポリプロピレン樹脂端面と側桁間に反射体を介在させ、該反射体を前記密封キャップに被嵌させたことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3においては、前記請求項1又は請求項2における補強用の金属パイプがアルミ材から構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4においては、前記請求項1又は請求項2における横桟の上下面に滑り止め模様を列設し、両側面に握り用波形模様を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5においては、前記請求項1又は請求項2における密封キャップが断面菊形であることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6においては、前記請求項1又は請求項2における側桁と密封キャップと金属パイプの両側面に貫通した係止孔を穿設し、該係止孔にロッドピンを挿着して密封キャップを側桁に位置決めして止着したことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項7においては、前記請求項1又は請求項2における各側桁を押出成形により角形筒に構成し、その上下端を梯子用キャップで封止したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、耐薬品性が充分に期待できるポリプロピレン製梯子でありながらポリプロピレンの弱点である軟化を金属パイプで補強し、該金属パイプも外周面がポリプロピレンで覆われ且つ両端部は密封キャップで塞がれていることにより硫化水素ガスや薬品ガス等が金属パイプに接触することがなく、劣化の少ない耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【0015】
請求項2に係る発明では、前記請求項1の効果に付加して横桟への反射体の配設によりマンホ―ル等の暗所での使用に好適な耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【0016】
請求項3に係る発明では、補強用の金属パイプをアルミパイプとした場合、前記請求項1又は請求項2の効果に付加して、アルミ材によってより軽量で強度を保持できる耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【0017】
請求項4に係る発明では、横桟の上下面に滑り止め模様を列設し、両側面に握り用波形模様を形成した場合、前記請求項1又は請求項2の効果に付加して、作業者が滑べらず把持し易く安全に使用し易い耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【0018】
請求項5に係る発明では、密封キャップの断面を菊形とした場合、前記請求項1又は請求項2の効果に付加して、側桁と横桟との組立時に密封キャップがまわり難く正確,確実に側桁に組付けられる耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【0019】
請求項6に係る発明では、側桁と密封キャップと金属パイプの両側面に貫通した係止孔を穿設し、該係止孔に側桁の両側面からそれぞれロッドピンを挿着して密封キャップを側桁に位置決めして止着した場合、前記請求項1又は請求項2の効果に付加して、側桁に対して横桟の位置決めが確実で、横桟の抜け止めが防止でき、且つロッドピンにより補強部材へのガスの侵入がより抑制されて、梯子の劣化がより少ない耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【0020】
請求項7に係る発明では、各側桁を押出成形により角形筒に構成し、その上下端を梯子用キャップで封止した場合、前記請求項1又は請求項2の効果に付加して、側桁の製作が容易で、梯子用キャップで上下両端角部の破損防止や側桁内へのガスの侵入が抑制されて、梯子の劣化がより少ない耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る耐薬品性のポリプロピレン製梯子の要部の正面図である。
【図2】図1のA部の斜視説明図である。
【図3】図1の横桟の説明図である。
【図4】図1の側桁と横桟との組付け説明図である。
【図5】本発明に係る耐薬品性のポリプロピレン製梯子の他の実施例の要部斜視説明図である。
【図6】図5の側桁と横桟との組付け説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
各側桁をポリプロピレン樹脂で筒形に構成すると共に各横桟を補強用の金属パイプの外周をポリプロピレン樹脂で覆って構成し、前記金属パイプの両端部に被嵌されている密封キャップを介して横桟を側桁の接続してなる耐薬品性のポリプロピレン製梯子。
【実施例1】
【0023】
図1ないし図4は本発明の実施例に関するものであり、図1は耐薬品性のポリプロピレン製梯子の要部の一部断面正面図、図2は図1のA部の斜視説明図、図3は図1の横桟の説明図、図4は図1の側桁と横桟との組付け説明図である。
【0024】
図1ないし図4において、耐薬品性のポリプロピレン製梯子は、両側桁1,1とその間に複数の足掛け用横桟2,2…を配置して構成されていて、特に硫化水素ガスが発生し易いマンホ―ルや薬品ガスが発生し易い浄化槽等で昇降時に使用するのに好適な梯子である。
【0025】
前記各側桁1はポリプロピレン樹脂で筒形に構成して前記硫化水素ガスや薬品ガスによる側桁1の劣化を少なくしながら強度を保持するようになっている。
【0026】
なお、該側桁1をポリプロピレン樹脂の押出成形により角形筒に構成し、その上下端を梯子用キャップ11で封止した場合、該側桁1の製作が容易で、梯子用キャップ11で上下両端角部の破損防止ができ且つ外部から該側桁1内へのガスの侵入が抑制されて、梯子の劣化がより少ないものとなる。
【0027】
前記各横桟2は、補強用の金属パイプ21の両端部に密封キャップ3が予め被嵌されており、その金属パイプ21とその外周に射出されたポリプロピレン樹脂の被覆層22とを一体成形して構成されている。したがって、前記硫化水素ガスや薬品ガスによる横桟2の劣化を少なくしながら強度を充分に補強するようになっている。
【0028】
そして、前記金属パイプ21の両端部の密封キャップ3を介して横桟2を側桁1に接続するようにしているが、この密封キャップ3によっても金属パイプ21が硫化水素ガスや薬品ガスに接触することがなく、前記硫化水素ガスや薬品ガスによる金属パイプ21の劣化を少なくするようになっている。
【0029】
なお、補強用の金属パイプ21としては、鋳鉄やステンレスやアルミ材等が適用されるが、特に該金属パイプ21をアルミパイプとした場合、アルミ材によってより軽量で強度を保持できる梯子となる。
【0030】
また、横桟2の上下面に滑り止め模様23を列設し、両側面に握り用波形模様24を形成した場合、梯子の使用時に作業者が滑べらず把持し易く安全に使用し易い梯子となる。
【0031】
また、密封キャップ3の断面を菊形とした場合、横桟2に配置された密封キャップ3を側桁1の側面に打ち込み側桁1と横桟2との組立時に、密封キャップ3がまわり難く正確,確実に側桁1に組付けられる梯子となる。
【0032】
また、前記側桁1と密封キャップ3と金属パイプ21の両側面に貫通した係止孔31を穿設し、該係止孔31に側桁1の両側面からそれぞれロッドピン32を挿着して密封キャップ3を側桁1に位置決めして止着した場合、側桁1に対して横桟2の位置決めが確実で、横桟2の抜け止めが防止でき、且つロッドピン32により補強部材である金属パイプ21へのガスの侵入がより抑制されて、梯子の劣化がより少ない梯子となる。
【0033】
この耐薬品性のポリプロピレン製梯子は、先ず補強用の金属パイプ21の両端部に密封キャップ3が被嵌され、その状態で金属パイプ21の露出した外周にポリプロピレンが射出されて、金属パイプ21とポリプロピレンの被覆層22と密封キャップ3とが一体成形される。次いで、前記密封キャップ3をポリプロピレン樹脂で筒形に構成した各側桁1の内側面に打ち込んで横桟2の位置決め配置をして梯子を完成するものである。
【0034】
以上のように、各側桁1をポリプロピレン樹脂で筒形に構成すると共に各横桟2を補強用の金属パイプ21の外周をポリプロピレン樹脂で覆って構成し、前記金属パイプ21の両端部に被嵌されている密封キャップ3を介して横桟2を側桁1の接続した場合、耐薬品性が充分に期待できるポリプロピレン製梯子でありながらポリプロピレンの弱点である軟化を金属パイプ21で補強し、該金属パイプ21も外周面がポリプロピレンの被覆層22で覆われ且つ両端部は密封キャップ3で塞がれていることにより硫化水素ガスや薬品ガス等が金属パイプ21に接触することがなく、特に硫化水素ガスが発生し易いマンホ―ルや薬品ガスが発生し易い浄化槽等で昇降時に使用するのに好適な耐薬品性の合成樹脂製梯子となる。
【0035】
なお、前記補強用の金属パイプ21としてアルミ材を用いたり、横桟2の上下面に滑り止め模様23を列設し両側面に握り用波形模様24を形成したり、密封キャップ3の断面形状を菊形としたり、密封キャップ3をロッドピン32で側桁1に位置決めしたり、側桁1の上下端を梯子用キャップ11で封止したり、の構成は個々に適用したり或は複数または全部を同時に適用することができるものである。
【実施例2】
【0036】
前記実施例1における横桟2のポリプロピレン樹脂端面と側桁1間にポリカ―ボネットからなる反射体4を介在させ、該反射体4を前記密封キャップ3に被嵌させた構成としたものである。そして、その余の構成は実質的に実施例1と同一である。
【0037】
このように横桟2と側桁1間に反射体4を介在させたので、硫化水素ガスが発生し易い下水道機構に用いられる通常暗黒なマンホ―ル内等を昇降するのにガイドとして好適な梯子となる。
【符号の説明】
【0038】
1 側桁
2 横桟
3 密封キャップ
4 反射体
11 梯子用キャップ
21 金属パイプ
22 ポリプロピレン樹脂の被覆層
23 滑り止め模様
24 握り用波形模様
31 係止孔
32 ロッドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側桁とその間に複数の足掛け用横桟を配置して構成した合成樹脂製梯子において、各側桁をポリプロピレン樹脂で筒形に構成すると共に各横桟を補強用の金属パイプの外周をポリプロピレン樹脂で覆って構成し、前記金属パイプの両端部に被嵌されている密封キャップを介して横桟を側桁の接続してなることを特徴とする耐薬品性のポリプロピレン製梯子。
【請求項2】
前記横桟のポリプロピレン樹脂端面と側桁間に反射体を介在させ、該反射体を前記密封キャップに被嵌させたことを特徴とする請求項1記載の耐薬品性のポリプロピレン製梯子。
【請求項3】
前記補強用の金属パイプがアルミ材から構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の耐薬品性のポリプロピレン製梯子。
【請求項4】
前記横桟の上下面に滑り止め模様を列設し、両側面に握り用波形模様を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の耐薬品性のポリプロピレン製梯子。
【請求項5】
前記密封キャップが断面菊形であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の耐薬品性のポリプロピレン製梯子。
【請求項6】
前記側桁と密封キャップと金属パイプの両側面に貫通した係止孔を穿設し、該係止孔にロッドピンを挿着して密封キャップを側桁に位置決めして止着したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の耐薬品性のポリプロピレン製梯子。
【請求項7】
前記各側桁を押出成形により角形筒に構成し、その上下端を梯子用キャップで封止したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の耐薬品性のポリプロピレン製梯子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−12768(P2012−12768A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147275(P2010−147275)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(592101149)三山工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】