説明

耕耘爪締結装置

【課題】ボルトの回り止め機能に対する信頼性を向上させる。
【解決手段】耕耘爪締結装置1は、耕耘爪の基部に設けられた一対の連通孔からフランジに設けられた一対の各爪取付孔に挿通されてナット40と螺合して耕耘爪の基部をフランジに固着する2本のボルト10と、2本のボルト10と一体的に結合される結合板30とを備える。ボルト10の側面13bにボルト頭部13の座面13aに延びる溶接用切り欠き部14を設ける。結合板30は、両側部にボルト10のボルト軸部11を挿通する挿通孔31を有する。結合板30の挿通孔31にボルト10のボルト軸部11を挿通し、溶接用切り欠き部14と結合板30との間をすみ肉溶接して、2本のボルト10と結合板30とを一体的に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を耕耘する耕耘ロータリの耕耘軸に耕耘爪を取り付けるための耕耘爪締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を耕耘する耕耘ロータリの耕耘軸に耕耘爪を取り付ける構造としては、耕耘爪の基部に設けられた一対の連通孔から耕耘軸に固着されたフランジに設けられた一対の各爪取付孔にボルトを挿通してナットと螺合して耕耘爪の基部をフランジに固着する構造が知られている。
【0003】
この耕耘爪取付構造によれば、フランジに耕耘爪を取り付けるには、2本のボルトのそれぞれを耕耘爪の基部に設けられた一対の連通孔に挿通するとともに、フランジに設けられた一対の爪取付孔に挿通する。そして、フランジから突出したボルトにナットを螺合してフランジを介して耕耘爪を締め付ける。このナットの螺合操作の際に、ボルトがナットと共回りしないように、ボルト頭部を押さえ付ける必要があり、耕耘爪の取り付け作業の作業性を低下させている。
【0004】
このような不都合を改良したものが特許文献1に記載の耕耘爪取付装置である。この耕耘爪取付装置60は、図3(a)(側面図)に示すように、両側部に挿通孔62を有した座金体61と、これらの挿通孔62に装着された2本のボルト65を有してなる。ボルト65のボルト軸66の基端側端部にはローレット目を形成したローレット軸部66aが設けられ、このローレット軸部66aは挿通孔62の内径よりも僅かに大径である。このため、ローレット軸部66aは挿通孔62に圧入されて挿着される。その結果、2本のボルト65は、座金体61に対して一体的に固定される。このため、図3(b)(断面図)に示すように、耕耘爪85の基部に設けられた一対の連通孔87からフランジ81に設けられた一対の各爪取付孔82に対してボルト65を挿通してナット40を螺合して締め付けても、ボルト65が回ることはなく、また各ボルト頭部67を押さえる必要もなく、ナット40をそれぞれのボルトに対して締め付けて耕耘爪85をフランジ81に固着することができる。
【0005】
【特許文献1】特許第3247835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載の耕耘爪取付装置のボルトは、ボルト軸の基端側にローレット軸部が設けられており、専用品であって市販品をそのまま用いることができない。このため、コストが高いという問題がある。また、ボルトと座金体はローレット軸部を介して一体化されているが、ローレット軸部の外周に形成されたローレット目は座金体の挿通孔に圧入される際に、ローレット目の一部が塑性変形して破断する虞がある。従って、従来の耕耘爪取付装置は、ボルトと座金体との結合強度が弱くなる場合があり、ボルトの回り止め機能に対する信頼性が低いという問題を有する。
【0007】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、コストが安価であり、ボルトの回り止め機能に対する信頼性の高い耕耘爪締結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の耕耘爪締結装置は、耕耘軸に設けられたフランジに耕耘爪を取り付ける耕耘爪締結装置であって、耕耘爪の基部に設けられた一対の連通孔からフランジに設けられた一対の各爪取付孔に挿通されてナットと螺合して耕耘爪の基部をフランジに固着する2本のボルトと、2本のボルトと一体的に結合される結合板とを備え、該結合板は、両側部にボルトのボルト軸部を挿通する挿通孔を有し、ボルト頭部の側面に該ボルト頭部の座面に延びる溶接用切り欠き部を設け、結合板の挿通孔にボルトのボルト軸部を挿通し、溶接用切り欠き部と結合板との間をすみ肉溶接して、2本のボルトと結合板とが一体的に結合されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、ボルトと結合板とは、溶接用切り欠き部と結合板との間をすみ肉溶接によって一体的に結合されるので、ボルトと結合板との結合強度を高めることができると共に、結合強度の信頼性を向上させることができる。また、市販のボルトのボルト頭部に溶接用切り欠き部を加工するだけでよいので、コストの上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わる耕耘爪締結装置によれば、溶接用切り欠き部と結合板との間をすみ肉溶接によって一体的に結合することにより、コストが安価であってボルトの回り止め機能に対する信頼性の高い耕耘爪締結装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる耕耘爪締結装置によって耕耘爪をフランジに固着した耕耘ロータの断面図を示す。
【図2】耕耘爪締結装置を示し、同図(a)は耕耘爪締結装置の側面図であり、同図(b)は耕耘爪締結装置の平面図である。
【図3】従来の耕耘爪締結装置を示し、同図(a)は従来の耕耘爪締結装置の側面図であり、同図(b)は従来の耕耘爪締結装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る耕耘爪締結装置について、図1及び図2を参照して説明する。耕耘爪締結装置1は、図1に示すように、耕耘軸80に設けられたフランジ81に耕耘爪85を取り付けるためのものであり、耕耘爪85の基部86に設けられた一対の連通孔87,88からフランジ81に設けられた一対の各爪取付孔82,83に挿通されてナットと螺合して耕耘爪85の基部86をフランジ81に固着する2本のボルト10と、2本のボルト10と一体的に結合される結合板30とを備えてなる。
【0013】
ボルト10は、図2(a)(側面図)及び図2(b)(平面図)に示すように、市販品と同一形状であり、先端部に雄ねじ11aを形成したボルト軸部11と、この基端部に繋がったボルト頭部13とを有してなる。ボルト頭部13は六角形状を有して、スパナやメガネレンチの使用を可能にしている。ボルト頭部13の対向する側面には、座面13aに延びる溶接用切り欠き部14が設けられている。
【0014】
結合板30は、両側部にボルト10のボルト軸部11を挿通する挿通孔31を有する。結合板30の挿通孔31にボルト10のボルト軸部11を挿通して、溶接用切り欠き部14と結合板30との間をすみ肉溶接すると、2本のボルト10と結合板30とが一体的に結合された耕耘爪締結装置1が完成する。溶接用切り欠き部14と結合板30との間をすみ肉溶接した溶接部16は、溶接用切り欠き部14内に略収まり、ボルト頭部13にスパナ等の工具の装着が可能である。
【0015】
次に、この耕耘爪締結装置1を用いて耕耘爪85を耕耘軸80に設けられたフランジ81に固定する方法について説明する。先ず、図1に示すように、耕耘爪85の基部86をフランジ81の一対の爪取付孔82,83に対向配置して、耕耘爪85の基部86に設けられた一対の連通孔87,88と一対の爪取付孔82,83とを連通させる。そして、耕耘爪締結装置1の2本のボルト10を一対の連通孔87,88から一対の各爪取付孔82,83に挿通させる。そして、爪取付孔82,83から突出したボルト軸部11の先端部にナット40(図2(a)参照)を螺合して、耕耘爪85の基部86を締め付けて耕耘爪85をフランジ81に固着する。
【0016】
ここで、ボルト10は、結合板30の両側部に溶着されて結合板30と一体となって回り止め固定されているので、2本のボルト10は耕耘爪85の連通孔87,88からフランジ81の各爪取付孔82,83に同時に挿通される。また、この2本のボルト10にナット40をそれぞれに強く締め付けてもこの2本のボルト10が回ることはなく、各ボルトのボルト頭部13を押さえ付ける必要もないため、フランジ81に耕耘爪85を固着する作業時間を大幅に短縮することができる。また、耕耘爪85の交換作業のように前述した耕耘ロータがフリーな状態(例えば、PTOクラッチが切断されて耕耘ロータがフリーに回転できる状態)の方が作業し易いような場合、手作業でナット40を締め付けようとすると、その反動で耕耘ロータが回転して作業がやり難くまた危険であるが、溶接部16は溶接用切り欠き部14内に略収まり、ボルト頭部13は六角形状をしているので、スパナやメガネレンチの使用が可能であり、ボルト頭部13にスパナ等を係合させることで、耕耘ロータの回動を規制することができ、安全に耕耘爪85の交換作業を行うことができる。
【0017】
このようにして、耕耘軸80のフランジ81に耕耘爪85を固着する際には、耕耘爪85を固着するボルト10を2本1組として同時に耕耘爪85の基部86とフランジ81に装着でき、ボルト10を1本ずつ装着する必要がない。このため、フランジ81に対する耕耘爪85の装着を簡単な操作で短時間に行うことができる。
【0018】
またボルト10は結合板30に対して溶接によって結合されているので、その結合強度は強いとともに、信頼性も高い。従って、ボルト10の回り止め機能が低下する事態を未然に防止することができ、その結果、フランジ81に対する耕耘爪85の装着作業を常に簡単な操作で行うことができる。
【0019】
また耕耘爪締結装置1のボルト10は、市販品のボルトのボルト頭部に溶接用切り欠き部14を加工するだけでよいので、コストの上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 耕耘爪締結装置
10 ボルト
11 ボルト軸部
13 ボルト頭部
13a 座面
13b 側面
14 溶接用切り欠き部
30 結合板
31 挿通孔
40 ナット
80 耕耘軸
81 フランジ
82,83 爪取付孔
85 耕耘爪
86 基部
87,88 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘軸に設けられたフランジに耕耘爪を取り付ける耕耘爪締結装置であって、
前記耕耘爪の基部に設けられた一対の連通孔から前記フランジに設けられた一対の各爪取付孔に挿通されてナットと螺合して前記耕耘爪の基部を前記フランジに固着する2本のボルトと、
前記2本のボルトと一体的に結合される結合板とを備え、
該結合板は、両側部に前記ボルトのボルト軸部を挿通する挿通孔を有し、
前記ボルト頭部の側面に該ボルト頭部の座面に延びる溶接用切り欠き部を設け、
前記結合板の前記挿通孔に前記ボルトのボルト軸部を挿通し、前記溶接用切り欠き部と前記結合板との間をすみ肉溶接して、前記2本のボルトと前記結合板とが一体的に結合されていることを特徴とする耕耘爪締結装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−17192(P2010−17192A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219438(P2009−219438)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2005−51100(P2005−51100)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】