説明

耳織成装置

【課題】 駆動モータの容量を抑えつつ耳糸開口に関する設定が正確に行える耳織成装置を提供する。
【解決手段】 耳糸を案内する糸ガイドを有し運動方向が耳糸開口方向に規制される2つの支持体と、正逆駆動される駆動モータと、駆動モータの回転運動を支持体の往復運動に変換する運動変換機構とを有する耳織成装置で、運動変換機構は、駆動モータの出力軸に取付られる第1の歯車と、第1の歯車に噛合され、回転中心に対し半径方向に離間する位置に第1の枢着部を有する第2の歯車と、第1の歯車に直接的あるいは間接的に噛合される第3の歯車または第1の歯車のうちいずれか一方に設けられる第2の枢着部であって、回転中心に対し半径方向に離間する位置に設けられる第2の枢着部と、支持体毎に設けられ、その一端が支持体に連結されるとともに他端が第1の枢着部ならびに第2の枢着部に連結される連結ロッドとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに逆方向に往復駆動する第1の耳糸用綜絖と第2の耳糸用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳織成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに逆方向に往復駆動する第1の耳糸用綜絖と第2の耳糸用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳織成装置は、例えば特許文献1〜2に示されている。
【0003】
特許文献1の装置は、電動モータによって2次元クランク機構を駆動し、2次元クランク機構の駆動によって一対の糸ガイド要素を往復直線運動させるように構成される。2次元クランク機構は、電動モータの出力軸に取り付けられたレバーと、レバーの両端に連結された一対のリンクとからなる。一対のリンクは、一対の糸ガイド要素に1対1に連結されている。さらに特許文献1には、耳糸開口量の調整を機構的に設定可能な構成として、公報第6図のようにリンクの角度範囲を調整可能な構成、また、公報第7図のようにリンクにおけるクランクの半径方向長さを調整可能な構成が示されている。
【0004】
特許文献2の装置は、第1の耳糸用綜絖を支持する第1のバンドならびに第2の耳糸用綜絖を支持する第2のバンドには、それぞれ動力受承孔が列設されるとともに、2つのバンドの動力受承孔には、電動モータにより回転される歯車が噛合されて、いわゆるラック・ピニオン機構を構成し、電動モータの正逆回転駆動によって耳糸開口運動を行うことが示されている。
【特許文献1】特表平10−503563号公報(第2図、第6図、第7図)
【特許文献2】特開2004−308064号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
織機では、織物品種の切換りに対応して経糸開口装置の基準高さ(いわゆる枠高さ)や経糸開口量などの開口装置の設定が変更され、耳糸開口に関しても同様の変更が必要になる。これに対し特許文献1の構成によれば、リンクの角度範囲、クランクの半径方向の長さのいずれの構成で行うにしても高い精度で設定する必要があり、またその作業性も悪いという問題がある。
【0006】
これに対し特許文献2では、いわゆるラック・ピニオン機構が構成されるため、上記枠高さや開口量を変更するには、駆動モータの位相や動作工程における駆動量(すなわちモータの回転量)の変更が必要になる。このため、駆動モータの制御がより複雑になったり、出力トルクのより大きな駆動モータを使用する必要が生じ、結果として装置全体が大型化するなどの問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耳織成装置が専用の駆動モータにより駆動され、互いに逆方向に往復駆動する第1の耳糸用綜絖と第2の耳糸用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳織成装置で、駆動モータの容量を抑えつつ耳糸開口における枠高さや開口量などの設定が正確に行える耳織成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段・作用・効果】
【0008】
そこで、本発明の耳織成装置は、耳糸を案内する糸ガイドを有しその運動方向が耳糸開口方向に規制される2つの支持体と、織機主軸モータとは別個に設けられ正逆駆動される駆動モータと、前記駆動モータの回転運動を前記支持体の往復運動に変換する運動変換機構とを有する装置を前提とする。そして本発明の耳織成装置では、運動変換機構は、前記駆動モータの出力軸に取り付けられる第1の歯車と、前記第1の歯車に噛合されるとともに、回転中心に対し半径方向に離間する位置に第1の枢着部を有する第2の歯車と、前記第1の歯車に対して直接的あるいは間接的に噛合される第3の歯車または前記第1の歯車のうちいずれか一方に設けられる第2の枢着部であって、回転中心に対し半径方向に離間する位置に設けられる前記第2の枢着部と、前記支持体毎に設けられ、その一端が対応される前記支持体に連結されるとともに前記他端が前記第1の枢着部ならびに前記第2の枢着部にそれぞれ連結される連結ロッドとを有することを要旨とする。
【0009】
本発明では、駆動モータ出力軸の回転を受けて駆動される第1の枢着部ならびに第2の枢着部がいわゆるクランクピンとして、その運動が耳糸開口方向に規制された第1の支持体ならびに第2の支持体がいわゆるピストンとして、第1の枢着部ならびに第2の枢着部と第1の支持体ならびに第2の支持体とをそれぞれ連結する各連結ロッドは、いわゆるクランクロッドとしてそれぞれ対応し、これらはいわゆるピストン・クランク機構を構成する。駆動モータ出力軸の回転は、運動変換機構を構成する第1の歯車、従動側歯車を経て、第1の枢着部及び第2の枢着部に伝達され、それぞれ連結される連結ロッドの運動により第1の支持体および第2の支持体の往復運動にそれぞれ変換されることにより、互いに逆方向に往復駆動される耳糸開口運動が遂行される。
【0010】
本発明のように、運動変換機構に複数枚の歯車を噛合させて運動を伝達することにより、例えば織物仕様の変更により、耳糸の本数や張力が増大されることがあっても、運動変換機構を構成する第1の歯車と第2の歯車を、適切な歯数のものに入れ替えることにより、モータの駆動トルクを大きく増大させることなく適切に耳糸開口運動を遂行できる。しかも耳糸開口条件である基準高さや耳糸開口量を調整するに際し、例えば、駆動側である第1の歯車と、従動側歯車である枢軸を有する第2の歯車との噛み合わせ位置(位相)をずらすことにより、耳糸開口の基準高さを変更することができ、また、駆動側である第1の歯車と従動側歯車である第2の歯車、または第1の歯車と第3の歯車のうちいずれかの駆動系について、ギア比の異なる歯車に置き換えることにより、他方と異なる耳糸開口量を設定することができ、耳織成装置に対する運転条件を、所望の状態に正確に設定できる。なお、ここでいう耳糸開口の基準高さは、耳糸閉口状態における糸ガイドの位置に対する織機フレーム上端面などの基準端面からの相対的な距離のことであり、耳糸開口量は、耳糸開口状態における2つの糸ガイドの相対的な距離のことである。
【0011】
本発明では、好ましくは、前記第2の枢着部は、前記第1の歯車に設けられるとともに、前記第2の歯車ならびに第1の歯車には、前記第1の枢着部ならびに第2の枢着部が、対応する歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線に対してそれぞれ同じ側に設けられる。これにより、第1の歯車の回転方向に対し、第2の歯車の回転方向が反転される。従って、第1の枢着部と第2の枢着部の運動方向は互いに逆方向となり、第1の枢着部と第2の枢着部を上記設けることにより、2つの糸保持体を互いに逆方向に往復駆動することができる。しかも、駆動モータが回転駆動する歯車の全体枚数を少なくできる分、駆動モータの負荷が小さくなる結果、省エネになる。
【0012】
また本発明では、好ましくは、前記第2の枢着部は、前記第3の歯車に設けられるとともに、前記第2の歯車ならびに第3の歯車には、前記第1の枢着部ならびに第2の枢着部が、対応する歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線に対して互いに反対側に設けられる。第3の歯車が第1の歯車の直接的な噛合により、第1の歯車の回転方向に対し、第2の歯車ならびに第3の歯車の回転方向がともに反転される。従って、第1の枢着部と第2の枢着部の運動方向はともに同じ方向となるから、第1の枢着部と第2の枢着部を上記設けることにより、2つの糸保持体を互いに逆方向に往復駆動することができる。
【0013】
そして第3の歯車側に前記第2の枢着部を設ける場合、より具体的には、前記第2の歯車ならびに第3の歯車は、対応する歯車の回転中心が、前記第1の歯車の外周端の接線であって耳糸開口方向に平行な前記第1の歯車に関する2つの接線によって画定される領域内に位置するように設ければよい。あるいは、前記第2の歯車ならびに第3の歯車は、対応する歯車の回転中心が、前記第1の歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向と平行な仮想直線に対してそれぞれ±45度の交差角度をなすとともに前記第1の歯車の回転中心を通る他の2つの仮想直線により画定される領域内に位置するように、設ければよい。あるいは、前記第2の歯車ならびに第3の歯車は、対応する2つの歯車の回転中心を通る仮想直線が耳糸開口方向に対して交差するように配置されるとともに、前記第1の枢着部ならびに第2の枢着部が、対応する歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線により画定される領域内に位置するように、設ければよい。
【0014】
枢着部を有する各歯車の回転中心位置、耳糸開口方向に直交する仮想直線方向に互いに近づけることにより、第1の枢着部と第2の枢着との相対的な位置を互いに近づけることができる。このように間接的、あるいは直接的に第1の枢着部と第2の枢着との相対的な位置が互いに近づくように、歯車あるいは枢着部を設けることにより、駆動時における連結ロッドの角度変位を小さくすることが可能になり、駆動モータ換言すれば歯車の回転運動を支持体の往復運動に、より効率的に変換できる。この技術では、第2ならびに第3の歯車の回転中心を結ぶ仮想直線が耳糸方向に延びる仮想直線に対して交差するように各歯車を配置する、あるいは前記枢着部を有する2つの歯車の各回転中心が、耳糸開口方向に延びる同一線上に位置するように、従動側歯車である第2ならびに第3の歯車を配置することが考えられる。
【0015】
また本発明では、好ましくは前記第3の歯車は、駆動モータの出力軸に取り付けられた第4の歯車に噛合される。ここで、糸ガイドを有する2つの支持体について、第1の枢着部に連結されている方を第1の支持体とし、第2の枢着部に連結される方を第2の支持体と呼する。これにより、第1の支持体の駆動系である第1の歯車ならびに第2の歯車と、他方の第2の支持体の駆動系である第4の歯車と第3の歯車の各ギア比を各支持体毎に設定することが可能になり、各支持体毎に異なる開口量を設定することができる。従って、耳織成装置に対し、織物仕様の変更に応じてより精度の高い設定が可能になり、耳組織の品位がより向上する。
【0016】
また本発明では、好ましくは耳織成装置は、前記第1の歯車、第2の歯車および第3の歯車のうちいずれかの回転中心位置を、噛合される前記他方歯車の回転中心に対し相対的位置調節可能に構成される。これにより、組み付け可能な歯車の種類(言い換えれば歯数、外径の異なる歯車の種類)が増大されて、より高い精度で耳糸開口を設定できる分、より耳組織の品位の向上を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明である織機の耳織成装置の具体的な実施形態について、以下図面を用いて説明する。図1から図4には、織布4の端部両側に配置されて耳糸3の開口運動を行う耳織成装置1を具体的に示している。耳糸3,3は、いずれも図示しない、織機上に配置される耳糸ボビン、テンサおよび案内ガイドなどを経由して引出され、その先端は、本件発明である耳織成装置1を構成する糸ガイド32,32を通過しており、さらに筬5を通過して織前に達するとともに織布4に連なっている。なお、図示例では、織機前方より見て向かって右側に配置される耳織成装置を一例として示しているが、左側においても、例えば左右対称の図示しない耳織成装置1が同様に配置されている。
【0018】
耳織成装置1は、大まかに言えば、耳糸3が通される糸ガイド32を有する第1の支持体20ならびに第2の支持体21と、駆動モータであるパルスモータ33と、上記駆動モータの回転運動を往復運動に変換する運動変換機構とを有してなる。上記列記した各部材は、実質的に耳織成装置の取付ベースとして機能するベースプレート10に取り付けられる。
【0019】
図1〜図2に示すように、ベースプレート10は、板状部材で構成されるとともに、耳糸開口方向および織幅方向に沿って延在するように配置される。ベースプレート10は、織前側より見てその正面側には、織機フレーム側への取付部として機能するホルダブロック12,13と、駆動モータとしてのパルスモータ33とを配置する一方、その背面側に上記第1の支持体20及び第2の支持体21を受けるための支持部材として機能するホルダブラケット30と、運動変換機構を構成する複数の歯車35,36,37とをそれぞれ配置している。
【0020】
第1の支持体20ならびに第2の支持体21は、大まかに言えば、耳糸3、3…の挿通用糸ガイド32、32…を個々に有する複数のヘルド22、22…と、各ヘルド22の上端位置及び下端位置にそれぞれ配置されて、各ヘルド22を支持するキャリアロッド23,24ならびにキャリアロッド25、26と、耳糸開口方向に延在形成され、対となる2つのキャリアロッド同士を延在方向の両端で連結するスライドガイド28Aならびに28Bとをそれぞれ有してなる。
【0021】
キャリアロッド23、24ならびにキャリアロッド25,26は、対応されるスライドガイド28Aならびにスライドガイド28Bに対してねじ締結するための取付部を有するとともに、織幅方向に延在される延在部を有しており、その織布側への延在方向の端部には、ヘルド22の上端部および下端部に設けられる孔をそれに挿入してヘルド22を保持するヘルドフレーム部を構成する一方、対となるキャリアロッド23,24およびキャリアロッド25,26のうち上側に位置するキャリアロッド23ならびにキャリアロッド25には、後述される連結ロッド51Aならびに連結ロッド51Bとを連結するための連結用孔を備える連結部を構成する。
【0022】
一方、スライドガイド28A、28Bの両側面には、耳糸開口方向に沿って平行に延びるスライドロッド29A,29B,29Cが配置される。より詳しくは図3に示すように、スライドロッド29A,29B,29Cは、例えば丸棒部材で構成されるとともに、その延在方向を耳糸開口方向に一致させ、かつ織幅方向に対して互いに間隔をおいて配置される。スライドガイド28Aならびに28Bには、隣り合う上記スライドロッドに対する断面半円弧状に陥没する摺動部がスライドロッドの延びる方向に沿って延在形成されている。スライドガイド28Aならびに28Bの摺動部が、隣り合うスライドロッド29A,29Bならびにスライドロッド29B,29Cに対して摺動可能にこれらの間に配置されることにより、第1の支持体20ならびに第2の支持体21の移動方向を、スライドガイド28A,28Bの延在方向すなわち耳糸開口方向に規制している。なお、スライドロッド29A,29B,29Cは、その上端部ならびに下端部が、ベースプレート10に取り付けられるホルダブラケット30ならびにホルダブラケット31にそれぞれ収容される。そしてホルダブラケット31について、図示しないが、上記振れ止めステー9と同様8、織機フレーム間に架設される図示しないステーに取り付けられることにより、織機フレームに対してより安定的に組み付けられる。
【0023】
パルスモータ33は、ベースプレート10に設けられる複数のねじ穴17にボルト15を螺入して取り付けられる。ベースプレート10の背面側には、パルスモータ33の出力軸34が、正面側より貫通しかつ背面よりも突出して延びており、出力軸34には、所定数の歯面をその外周に形成するとともに上記第1の歯車として機能する歯車35が上記背面側より取り付けられ、歯車35は、その基軸部に配置された六角穴付ボルト19により出力軸34に対して相対的に移動不能に割締め固定される。これに対し、出力軸34に対して所定の軸間距離を置いて配置される2つの支軸40A,40Bには、ともに所定数の歯面をその外周に形成するとともに、上記第2の歯車ならびに第3の歯車として機能する歯車36ならびに歯車37が、歯車35に対して噛合されるように取り付けられる。
【0024】
ベースプレート10に対する支軸40A,40B、ならびに歯車36、37の各取付について、図4を用いてより具体的に説明する。支軸40A、40Bは、基部40と、基部40との軸方向一半部にこれよりも小径の小径部42と、前記他半部において基部40よりも小径であってその外周にねじ部41とを形成する。ベースプレート10の背面側には、出力軸34に対して所定の軸間距離を隔てた位置にねじ穴18A,18Bが設けられており、支軸40A,40Bは、ねじ部41を対応するねじ穴18A,18Bに螺入されることにより、ベースプレート10に対して一体の支軸を構成する。
【0025】
一方、歯車36,37の回転中心内周側には、回転中心を貫通する貫通孔に対し、内径が拡径方向に変更されて形成される段差部が設けられるとともに、その段差部及び拡径部に当接するように軸受部材46が挿入される。そして、歯車36,37には、軸受部材46を内部に配置した状態で、歯車の回転中心内周部に刻設される環状溝に挿入される止め輪47により、軸受部材46を歯車から抜けないように止着されている。さらに軸受部材46の内輪部を支軸40A,40Bの小径部42に嵌め合わせて、歯車36,37を支軸40A,40Bに対して回転自在に受けるように構成される。なお、支軸40A,40Bには、抜け止め用の環状溝43が形成され、これに挿入される止め輪44により、歯車36ならびに歯車37が対応される支軸40A,40Bから抜けないようにされている。
【0026】
他方、歯車36,37の軸端部には、アーム48A,48Bがそれぞれ取り付けられる。アーム48A、48Bには、止め輪44を着脱するための作業スペースとなる丸穴が形成される一方、その中心より半径方向に離間する位置に延びるアーム部には、後述される連結ロッド51A,51Bとの連結用穴が形成されている。そして、各アーム48A、48Bは、上記中心を取付先の歯車36,37における回転中心と共有するように、また歯車35の外周端を通りかつ耳糸開口方向に平行な仮想直線L2、L3のうち対応する第1の枢着部53A、53Bが、互いに反対側すなわち外側に位置するように、複数のボルト49,49…により固定されている。これにより各歯車36,37には、その中心より半径方向に離間する位置に第1の枢着部53A、53Bが、当該歯車36,37に対して一体に設けられている。
【0027】
上記各アーム48A,48Bと、前記したキャリアロッド23,25は、その両端に枢着用孔を形成した連結ロッド51A,51Bがそれぞれ連結される。より詳しくは、キャリアロッド23,25に設けられた枢着用孔と、アーム48A、48Bに設けられた枢着用孔には、枢軸として機能される連結ピン52A,52Bがそれぞれ挿入されることにより、各アーム48A,48Bの枢着部53A,53Bを構成する。
【0028】
これに対し、各連結ロッド51A,51Bの上記他端は、キャリアロッド23,25の枢着用孔にそれぞれ連結されており、より詳しくは、連結ロッド51の他端に設けられる枢着用孔と、各アーム48A,48Bの枢着用孔には、上記同様、枢軸として機能される連結ピン38A,38Bが挿入されて、第1の支持体20ならびに第2の支持体21における枢着部27A,27Bを構成する。
【0029】
このように上記した実施例では、耳糸3,3を案内する糸ガイド32を有しその運動方向が耳糸開口方向に規制される2つの支持体は、ヘルド22、キャリアロッド23、24,およびスライドガイド28Aからなる第1の支持体20、ならびにヘルド22、キャリアロッド25、26,およびスライドガイド28Bからなる第2の支持体21がそれに対応し、織機主軸モータとは別個に設けられ正逆駆動される駆動モータは、パルスモータ33がそれに対応される。そして、駆動モータの回転運動を前記支持体の往復運動に変換する運動変換機構は、第1の歯車として機能する歯車35と、第2の歯車として機能され、回転中心に対し半径方向に離間する位置に第1の枢着部53Aを有する歯車36と、第1の歯車に対して直接的に噛合される第3の歯車に設けられ、第3の歯車の回転中心に対し半径方向に離間する位置に設けられる第2の枢着部として枢着部53Bと、さらに支持体毎に設けられ、その一端が対応される前記支持体に連結されるとともに前記他端が前記第1の枢着部53Aならびに前記第2の枢着部53Bにそれぞれ連結される連結ロッドとして連結ロッド51A,51Bとがそれに対応する。
【0030】
さて、織機の耳織成装置では、上記パルスモータ33は、その出力軸34を織機主軸(クランク軸)が数回転する毎に、正転方向および逆転方向に交互に所定量回転させる。出力軸34の正逆回転は、運動変換機構により、より具体的には、出力軸に装着される第1の歯車を経て、これに噛み合う第2の歯車36および第3の歯車37に伝達され、さらには歯車36、37の第1の枢着部53Aならびに第2の枢着部53Bの揺動運動が、これらに連結される連結ロッド51Aならびに連結ロッド51Bを介して、第1の支持体20ならびに第2の支持体21に往復運動として伝達される。連結ロッド51A,51Bに連結される第1の支持体20および第2の支持体21は、その運動方向が耳糸開口方向に規制されているため、上記パルスモータ33の出力軸の回転は、第1の支持体20および第2の支持体21の往復運動に変換される。
【0031】
なお、パルスモータ33は、例えば角度的に数°のステップ角度を有するステッピングモータで構成されるか、あるいは回転量を制御可能な公知のモータで構成される。パルスモータ33は、例えば、織機主軸が所定角度を通過したときに発生されるタイミング信号をカウントするとともに、そのカウント数に応じてパルスモータ33に対する正転方向あるいは逆転方向に駆動するための回転量指令パルスを交互に発生させる図示しない制御回路に接続され、このような制御回路からの指令に対応して、パルスモータ33は駆動される。
【0032】
図2には、出力軸34の正逆方向の回転にともなう第1の枢着部53Aならびに第2の枢着部53Bの各運動範囲を、符号P1〜P3、Q1〜Q3を付してそれぞれ図示している。図示例では、パルスモータ33の回転駆動にともなう第1の枢着部53Aの運動範囲角度θ1 が略90°であることを示しており、また第1の枢着部53Aが、符号P1,P2およびP3の各位置に移動したときにおける糸ガイド32の位置を、S1、S2およびS3の各符号を付して図示する。なお、糸ガイド32の位置S1はいわゆる耳開口工程の中間位置に対応しており、いわゆる耳糸開口の基準高さに相当し、糸ガイド32の位置S2と位置S3との間の距離は、いわゆる耳糸開口量に相当する。
【0033】
上記織機の耳織成装置1では、織機の数回転毎に耳糸開口状態を反転させる。これに対し、織機上では、経糸開口運動で形成された緯糸飛走路内に緯糸を緯入れして筬打ち運動を実行することにより、織布4が織成され、耳糸3,3ならびに緯糸により耳組織が織布4の両端に織成される。
【0034】
このような耳織成装置1は、経糸走行方向に対する取付位置について、緯糸飛走に支障がない位置にあればよい。図示例では、耳糸開口量を極力小さくするために、織機前方より見て最先頭列の第1経糸綜絖枠7の位置よりも前方に配置しているが、最終列の経糸綜絖枠の位置よりも後方に位置させることも可能である。
【0035】
このような耳織成装置1は、織布の仕様変更に対応して、織幅方向に位置調節可能にされている。耳織成装置1を構成するベースプレート10は、ホルダブロック12、13を介して図示しない左右一対の織機フレームに架設される振れ止めステー9に取り付けられる。より詳しくは、ホルダブロック12,13は、振れ止めステー9を、上下方向より挟むように配置される。ホルダブロック12,13は、ベースプレート10の正面にボルト15を介して固着される一方、ホルダブロック12には、振れ止めステー9側に向けて設けられるねじ穴が形成されており、これに螺入されるボルト14により振れ止めステー9に対して固定されている。これにより作業者は、必要に応じてボルト14を緩め、ベースプレート10すなわち耳織成装置1を振れ止めステー9に沿わせつつ織布4の幅に対応する位置に移動させることができ、このような耳織成装置1は、織幅方向に位置調節可能になっている。
【0036】
さて、上記実施例では、いわゆる第1の枢着部53Aならびに第2の枢着部53Bを有する従動歯車がクランクピンとして、その運動が耳糸開口方向のみに規制された第1の支持体20ならびに第2の支持体21がピストンとして、第1の枢着部53Aならびに第2の枢着部53Bと第1の支持体20ならびに第2の支持体21とをそれぞれ連結する連結ロッド51Aならびに連結ロッド51Bは、クランクロッドとしてそれぞれ対応し、これらはいわゆるピストン・クランク機構を構成しており、駆動モータの回転は、第1の歯車35を介して上記従動歯車である歯車36,37に伝達されて、第1の支持体20ならびに第2の支持体21の往復運動に変換されることにより、第1の耳糸用綜絖と第2の耳糸用綜絖とが互いに逆方向に往復駆動されて耳糸開口運動が遂行される。
【0037】
本発明によれば、駆動側である第1の歯車としての歯車35と、従動側である枢軸を有する第2の歯車としての歯車36との噛み合わせ位置(位相)をずらすことにより、耳糸開口の基準高さを変更することができる。より具体的には、歯車35を止めている六角穴付ボルト19を緩めることにより、出力軸34から歯車35を軸端側に移動させて2つの歯車の噛み合わせを解除して、噛み合わせ位相をずらすことができる。
【0038】
また、駆動側である第1の歯車と従動側歯車である第2の歯車、および第1の歯車と第3の歯車についてギア比の異なる歯車に置き換えることにより、耳糸開口量を変更することができる。より具体的には、第1の歯車としての歯車35を交換するには、上記手法により出力軸34への脱着が可能であり、また第2ならびに第3の歯車として機能する歯車36,37を置き換える場合には、抜け止め用の止め輪44を取り外すことにより、支軸40A,40Bから歯車36,37を、軸受部材46を当該歯車に装着したまま脱着可能である。
【0039】
また、織物仕様の変更により、耳糸本数あるいは耳糸本数を増大させる必要がある場合、耳糸張力の増加に対応して、例えば歯車35と歯車36ならびに歯車37間における伝達ギア比を大きくすべく、上記手法により、当該歯車を適切な歯数の歯車に交換することが可能である。このようにして、耳織成装置に対する運転条件を、所望の状態に正確に設定できる。
【0040】
上記した第1の実施例について、以下変形例が考えられる。なお、以下に示す図面について、上記説明した図面と機能的に実質的に同じものは、以下同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
上記した第1の実施例では、第2の歯車ならびに第3の歯車として機能する歯車36および歯車37に、出力軸34の回転を従動側に伝達する歯車すなわち第1の歯車ならびに第4の歯車として実質的に機能する歯車について、1つの歯車35で構成する例を示している。このように駆動側の歯車を1つの歯車で共用させる代わりに、駆動系毎に個別に伝達する複数の歯車を設けてもよい。図5に示す実施例では、第2の歯車として機能する歯車36に対して回転中心を共有しかつ回転可能に軸支される第3の歯車である歯車37が配置されており、歯車37に対して専ら噛合され、第4の歯車として機能する歯車55を、歯車35よりも軸端方向に延在された出力軸34に同軸に設ける例である。そしてこの実施例は、第1の枢着部53A、53Bが、対応する歯車36,37の回転中心36a,37aを通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線L1,L0に対して互いに反対側すなわち外側に位置するように設けられる例であり、また、歯車36ならびに歯車37の回転中心36a,37aが、歯車35の外周端の接線であって耳糸開口方向に平行な前記歯車35に関する2つの接線L5,L6によって画定される領域内に位置するように、歯車36ならびに歯車37が設けられる例(より具体的には、図示例は各歯車36,37の回転中心36a,37aが、歯車35の回転中心35aを通過しかつ耳糸開口方向に平行な仮想直線と同一線上にある例)でもある。
【0042】
また、図示例では、歯車35,55と、歯車36,37は、ともに同径で歯数が同一であるように図示されているが、各駆動系で歯車の外径すなわち歯数が異なるように歯車を組み合わせる構成も考えられる。このようにすれば、第1の支持体20と第2の支持体21との運動量すなわち耳糸開口量を、支持体毎に異なる値に設定することができる。
【0043】
上記図5の例に対し、好ましくはパルスモータ33の出力軸あるいは第2ならびに第3の歯車として機能する歯車36,歯車37の少なくともいずれかの回転中心について、駆動軸と従動側の支軸との軸間距離を調節可能に構成すればよい。図14には、上記第1実施例に対し、ベースプレート10を、パルスモータ33の取付位置、および支軸40Aならびに40Bの位置を軸間距離が変わる方向に調節可能に構成する例をその代表例として示す。図14では、ベースプレート10は、パルスモータ33の出力軸34における位置調整範囲にわたり、干渉しないように切欠部62が形成される一方、パルスモータ33を固定するためのねじ穴17に代えて位置調節方向に延びる長穴60が設けられており、パルスモータ33は、出力軸34に取り付けられる図示しない歯車を互いに噛合させた状態で、取付部及び上記長穴60に挿入されるボルト63および図示しないナットを締結させてベースプレート10に組み付けられる。
【0044】
これに対し、支軸40Aならびに支軸40B側で軸間距離を変更するための構成として、ベースプレート10には、支軸40Aならびに支軸40Bの取付用ねじ穴18A、18Bを設ける代わりに、噛合する歯車の中心位置方向に沿って位置調節可能に長穴61A,61Bが設けられる。より詳しくは図15にて示すように、支軸40A,40Bは、第1実施例に対し、ベースプレート10を貫通しかつ突出して延びるねじ部41が形成されており、支軸40Aおよび支軸40Bは、上記長穴61A,61Bに挿入されるとともに、取り付けられる歯車を互いに噛合させた状態で、ねじ部41にベースプレート10を挟むようにナット64を締結することにより、支軸40A,40Bはベースプレート10に対して固定される。なお図示した実施例では、パルスモータ33、支軸40A、40Bの双方の取付位置を調節可能に構成する例であるが、ベースプレート10を、パルスモータ33側のみあるいは支軸40A,40B側のみに位置調節可能に構成することも可能である。
【0045】
上記第1の実施例では、第2の枢着部を有する歯車37を回転させるために、出力軸34の回転運動をこれに装着される歯車35を介して伝達しているが、このような伝達歯車の配置を省略してもよい。より具体的には、図6に示すように、第1の歯車として機能する歯車35を、第2の歯車として機能する歯車36と略同径(歯数がほぼ同一もしくは近い値)に構成するとともに、歯車35に対しその回転中心に離間する方向に第2の枢着部53Bを配置し、連結ロッド51Bをその枢着部53Bに連結すればよい。これによれば、歯車の枚数が減少される分、いわゆる駆動系の慣性量が減少するから、パルスモータ33の駆動トルクを小さくでき、より省エネになる。なおこの例について、第1の枢着部53Aならびに第2の枢着部53Bが、対応する歯車の回転中心36a,35aを通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線L1,L0に対してそれぞれ同じ側(つまり、仮想直線L1,L0を境界とする両側のうち同じ側、より具体的には図示紙面に向かって右側)に設けられる例である。また、歯車35の外周端の接線であって耳糸開口方向に平行な前記歯車35に関する2つの接線L5,L6によって画定される領域内に位置するように、歯車36が設けられる例(より具体的には、図示例は各歯車36の回転中心36aが、歯車35の回転中心35aを通過しかつ耳糸開口方向に平行な仮想直線と同一線上にある例)でもある。
【0046】
上記図1〜図2に示した第1の実施例では、歯車36,37の各回転中心とパルスモータ33の回転中心とが、三角形の頂点をなすように配置される例であるが、パルスモータ33の回転中心位置を、歯車36の回転中心と歯車37の回転中心とを結ぶ同一線上に配置することも可能である。より具体的には、図7に示すように、歯車35に対して耳糸開口方向の仮想直線に対して上下に、歯車36及び歯車37を歯車35に噛合可能に配置する例を示す。そして、第1の枢着部53A、53Bが、対応する歯車36,37の回転中心36a,37aを通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線L1,L0に対して互いに反対側すなわち外側に位置するように設けられる例であり、また、、歯車36ならびに歯車37の回転中心36a,37aが、歯車35の外周端の接線であって耳糸開口方向に平行な前記歯車35に関する2つの接線L5,L6によって画定される領域内に位置するように、歯車36ならびに歯車37が設けられる例(より具体的には、図示例は各歯車36,37の回転中心36a,37aが、歯車35の回転中心35aを通過しかつ耳糸開口方向に平行な仮想直線と同一線上にある例)でもある。このような配置により、第1の枢着部53Aと第2の枢着部53Bとが相対的に近づくように配置されることになる。
【0047】
図7に対し、歯車36ならびに歯車37を、歯車35に対して噛合可能にかつ歯車35の回転中心に対して外周方向に角度的ずれた場所に位置させることも可能であり、図8には、そのような実施形態を示す。より詳しくは、歯車36ならびに歯車37は、歯車35に対して噛合した状態で、歯車35の回転中心に対して反時計方向に角度θ1ならびに角度θ2に角度的にずれた位置に設けられる例であり、言い換えれば、歯車36ならびに歯車37は、当該歯車の回転中心36a,37aが、歯車35の回転中心35aを通りかつ耳糸開口方向と平行な仮想直線L7に対してそれぞれ交差角度θ3をなすとともに歯車35の回転中心36aを通る仮想直線L8,L9により画定される領域内に位置するように、設けられる例(より具体的には、回転中心35aと歯車36の回転中心36aとを通過する仮想直線L21に対し、仮想直線L7との交差角度θ1とし、また回転中心35aと歯車37の回転中心37aとを通過する仮想直線L22に対し、仮想直線L7との交差角度θ2とし、交差角度θ1 ならびにθ2のいずれについても、角度θ3よりも小さくなる位置に、歯車36,37がそれぞれ配置される)例であり、好ましい角度θ3について、具体的には45度である。。さらにこの実施例は、第1の枢着部53A、53Bが、対応する歯車36,37の回転中心36a,37aを通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線L1,L0に対して互いに反対側すなわち外側に位置するように設けられる例でもある。また、この実施例は、歯車37の回転中心37aと枢着部53Bが仮想直線L0を挟むように位置される例であり、このようにすることにより、歯車37の駆動時における連結ロッド51Bの角度変化がより減少されるので、より効率的に往復運動に変換可能である。
【0048】
また、図9に示すように、歯車36ならびに歯車37は、対応する2つの歯車の回転中心36a,37aを通る仮想直線L10が耳糸開口方向に対して交差するように配置されるとともに、前記第1の枢着部53Aならびに第2の枢着部53Bが、対応する歯車の回転中心36a,36bを通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線L11,L12により画定される領域内に位置するように、設けられる例であり、また、第1の枢着部53A、53Bが、対応する歯車36,37の回転中心36a,37aを通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線L11,L12に対して互いに反対側すなわち内側に位置するように設けられる例でもある。このようにすることにより、歯車36,37の回転時における連結ロッド51A,51Bの角度変化がより減少されるので、より効率的に往復運動に変換可能である。
【0049】
さらに、図10に示すように、歯車36ならびに歯車37を、ともに回転中心を共有するように回転軸線方向に間隔をおいて配置するとともに、第1の歯車として機能する歯車35について、歯面部分を軸線方向に延在させて形成し、歯車36ならびに歯車37にともに噛合させる例である。そして、この実施例は、第1の枢着部53A、53Bが、対応する歯車36,37の回転中心36a,37aを通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線L1,L0に対して互いに反対側すなわち外側に位置するように設けられる例であり、また、歯車36ならびに歯車37の回転中心36a,37aが、歯車35の外周端の接線であって耳糸開口方向に平行な前記歯車35に関する2つの接線L5,L6によって画定される領域内に位置するように、歯車36ならびに歯車37が設けられる例でもある。
【0050】
上記したいずれの実施例も、各歯車を平歯車で構成する例であるが、これに限らず他の種類の歯車を用いることも可能である。図11に示される例では、パルスモータ33の出力軸34の向きを、耳糸開口方向に向けるとともに、出力軸に立体的な歯車であるかさ歯車を歯面が下向きになるように設け、さらに歯車36と歯車37とを歯車35と同様のかさ歯車で構成するとともに各歯車の回転軸線が交わるように、かつ歯車36と歯車37の回転中心位置がともに共有されるように配置される例である。このように、枢着部を有する各歯車の回転中心(回転軸線)が共有されるように歯車を配置することにより、上記同様、運動時における連結ロッド53A,53Bの角度的な変位量が減少されるため、パルスモータ33の回転運動がより効率的に、糸ガイド32を有する支持体20,21の往復運動に効率的に変換されるから、パルスモータ33の駆動トルクは少なくて済む結果、省エネになる。
【0051】
さらに図1から図2に示す第1の実施例では、第3の歯車として機能する歯車37を駆動するために、第1の歯車として機能する歯車35を用い、第2の歯車との間でともに共用する例であるが、これに限らない。例えば、図12に示すように歯車36と一体に回転される回転軸59に取り付けられた第4の歯車として機能する歯車56を設け、これを歯車37に噛合させて駆動することにより、出力軸34の回転を受けて回転される歯車56を介し、歯車37を駆動することもできる。さらには図13に示すように、さらにそのような間接的に回転を伝達する複数の歯車56,57を設け、歯車57と一体の歯車37に伝達するように構成することも可能である。
【0052】
上記した、連結ロッド51A,51Bと、アーム48A,48Bならびにキャリアロッド23,25とを連結する枢着部53A,53Bならびに枢着部27A,27Bの具体的構成について、上記したように連結用穴と連結ピン52A,52B等を用いて連結する形態に限らず、連結する一方の部材に枢軸を形成し、これに他方の部材を連結するように構成することも可能であり、これ以外の公知の枢着構造を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本件発明は、エアージェット織機などの流体噴射式織機に限らず、レピア織機やプロジェクタイル織機など、他の無杼織機にも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の耳織成装置の第1実施例を示しており、織機左側面方向より見た耳織成装置(左側面図)である。
【図2】第1実施例で、図1にて丸英字A方向よりみた耳織成装置(背面図)である。
【図3】図2で示したx−x’の断面を示す図である。
【図4】第1実施例で、第2ならびに第3の歯車として機能する歯車36,37の軸周辺部における要部拡大図である。
【図5】本発明の耳織成装置で、駆動側歯車である第1の歯車と第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図6】図5に同じく、第1の歯車と、第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図7】図6に同じく、第1の歯車と第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図8】第1実施例で、第1の歯車と、第1ならびに第2の枢着部を有する第2ならびに第3の歯車の回転中心位置に対する範囲を説明する図である。
【図9】図6に同じく、第1の歯車と第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図10】図6に同じく、第1の歯車と第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図11】図6に同じく、第1の歯車と第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図12】図6に同じく、第1の歯車と第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図13】図6に同じく、第1の歯車と第1ならびに第2の枢着部を有する従動側歯車の他の構成例を示す図である。
【図14】本発明の第1実施例である耳織成装置に対し、噛合される歯車の歯数を変更するに際し、各歯車の軸間距離を変更可能な構成例を示す図である。
【図15】図13におけるy−y’断面を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 耳織成装置
3 耳糸
4 織布
5 筬
7 経糸綜絖枠
9 振れ止めステー
10 ベースプレート
12,13 ホルダブロック
14,15,49 ボルト
17,18A,18B ねじ穴
19 六角穴付ボルト
20 第1の支持体
21 第2の支持体
22 ヘルド
23,24,25,26 キャリアロッド
27A,27B 枢着部
28A,28B スライドガイド
29A,29B,29C スライドロッド
30,31 ホルダブラケット
32 糸ガイド
33 パルスモータ
34 出力軸
35,36,37 歯車
39A,39B 連結ピン
40A,40B 支軸
41 ねじ部
42 小径部
43 環状溝
44,47 止め輪
46 軸受部材
48A,48B アーム
51A,51B 連結ロッド
52A,52B 連結ピン
53A,53B 枢着部
55,56,57,58 歯車
59 回転軸
60,61A,61B 長穴
62 切欠部
63 ボルト
64 ナット
65 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳糸を案内する糸ガイドを有しその運動方向が耳糸開口方向に規制される2つの支持体と、
織機主軸モータとは別個に設けられ正逆駆動される駆動モータと、
前記駆動モータの回転運動を前記支持体の往復運動に変換する運動変換機構とを有する織機の耳織成装置において、
前記運動変換機構は、前記駆動モータの出力軸に取り付けられる第1の歯車と、
前記第1の歯車に噛合されるとともに、回転中心に対し半径方向に離間する位置に第1の枢着部を有する第2の歯車と、
前記第1の歯車に対して直接的あるいは間接的に噛合される第3の歯車または前記第1の歯車のうちいずれか一方に設けられる第2の枢着部であって、回転中心に対し半径方向に離間する位置に設けられる前記第2の枢着部と、
前記支持体毎に設けられ、その一端が対応される前記支持体に連結されるとともに前記他端が前記第1の枢着部ならびに前記第2の枢着部にそれぞれ連結される連結ロッドとを有することを特徴とする織機の耳織成装置。
【請求項2】
前記第2の枢着部は、前記第1の歯車に設けられるとともに、
前記第2の歯車ならびに第1の歯車には、前記第1の枢着部ならびに第2の枢着部が、対応する歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線に対してそれぞれ同じ側に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の織機の耳織成装置。
【請求項3】
前記第2の枢着部は、前記第3の歯車に設けられるとともに、
前記第2の歯車ならびに第3の歯車には、前記第1の枢着部ならびに第2の枢着部が、対応する歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線のうちの対応する仮想直線に対して互いに反対側に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の織機の耳織成装置。
【請求項4】
前記第2の歯車ならびに第3の歯車は、対応する歯車の回転中心が、前記第1の歯車の外周端の接線であって耳糸開口方向に平行な前記第1の歯車に関する2つの接線によって画定される領域内に位置するように設けられることを特徴とする、請求項3に記載の織機の耳織成装置。
【請求項5】
前記第2の歯車ならびに第3の歯車は、対応する歯車の回転中心が、前記第1の歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向と平行な仮想直線に対してそれぞれ±45度の交差角度をなすとともに前記第1の歯車の回転中心を通る他の2つの仮想直線により画定される領域内に位置するように設けられることを特徴とする請求項3に記載の織機の耳織成装置。
【請求項6】
前記第2の歯車ならびに第3の歯車は、対応する2つの歯車の回転中心を通る仮想直線が耳糸開口方向に対して交差するように配置されるとともに、前記第1の枢着部ならびに第2の枢着部が、対応する歯車の回転中心を通りかつ耳糸開口方向に平行な2つの仮想直線により画定される領域内に位置するように、設けられることを特徴とする請求項3に記載の織機の耳織成装置。
【請求項7】
前記第3の歯車は、駆動モータの出力軸に取り付けられた第4の歯車に噛合されることを特徴とする、請求項3から6のうちいずれか1項に記載の織機の耳織成装置。
【請求項8】
前記耳織成装置は、前記第1の歯車、第2の歯車および第3の歯車のうちいずれかの回転中心位置を、噛合される前記他方歯車の回転中心に対し相対的位置調節可能に構成されることを特徴とする、請求項1から6のうちいずれか1項に記載の織機の耳織成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−336171(P2006−336171A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164908(P2005−164908)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】