説明

聴覚補助装置

【課題】多方向からの音を拾うことが可能な聴覚補助装置を提供する。
【解決手段】筐体2の一の角部10には、この角部10を構成する蓋面3,底面4および側面5,6の4面に、マイク50に開口するマイク孔11,12,13,14が形成される。筐体2の角部のうち、一の角部10に近い他の角部15には、蓋面3と底面4の頂点位置が面取りされて三角形状のフランジ部16が形成される。このフランジ部16には、ストラップ110が取り付けられるストラップ取付部17が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳の不自由な人等に対して聴覚の補助を行う聴覚補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活の中にある音を的確に識別できないと、日常生活に支障を来す場合もあり、場合によっては危険に晒される虞もある。
そこで、聴覚機能の低下した者に装着させて、低下した聴覚機能を補助する聴覚補助装置として補聴器が知られている(特許文献1等)。例えば、高音域の聴取機能の低下等の伝音系機能の低下した者向けの補聴器としては、音声マイクで集音した外来音(音声信号)の周波数帯域の一部または全部を増幅するものがある。
【0003】
補聴器の形状は、ポケット型、耳掛け型、耳あな型等がある。ポケット型は、アンプ等が収納される箱形のケースと、このケースから延びるヘッドフォンと、を具備する。マイクは、ケース或いはヘッドフォンに取り付けられる。耳掛け型・耳あな型は、直接耳に装着され、その筐体内には、マイク、スピーカ、アンプ等の電子回路が実装された基板等が格納される。
【0004】
今までは、耳掛け型・耳あな型補聴器が多く使用されてきていたが、昨今の小型音楽プレーヤーの普及により、小型の音楽プレーヤー感覚で使用可能なボックス型の補聴器も普及してきている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−282985号公報
【非特許文献1】意匠登録第1258744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多方向からの集音が可能な聴覚補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の聴覚補助装置の構成は、外部からの音を音声信号に変換するマイクと、前記マイクから出力する音声信号に対し、信号処理を行う信号処理手段と、前記信号処理手段の出力信号を外部に出力する出力部と、前記マイク、前記信号処理手段および前記出力部を収容し、前記マイクを収容するマイク収容部分が、外部から複数の面で囲まれると共に内部に対して隔壁で分離されている筐体と、を有し、前記マイク収容部分の前記複数の面の少なくとも2以上の面には、前記マイクの集音経路となる貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の聴覚補助装置は、上記記載の聴覚補助装置において、前記筐体は、ひも状のストラップが取り付けられるストラップ取付部を有し、前記ストラップ取付部の取り付け位置は、前記ストラップによって前記筐体が吊り上げられたときに、装置全体の自重により、前記マイク収容部分が前記ストラップ取付部を中心に回転して下方に位置するように設定されていることが好ましい。
【0009】
請求項3に記載の聴覚補助装置は、上記記載の聴覚補助装置において、前記筐体を矩形状に形成し、前記マイク収容部分を前記筐体の一の角部に形成することが好ましい。
【0010】
請求項4に記載の聴覚補助装置は、上記記載の聴覚補助装置において、前記貫通孔は、前記一の角部を形成する4面に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の聴覚補助装置によれば、貫通孔を1面にしか形成していないものに比べて、広い範囲からの音をマイクにて集音することができる。
【0012】
請求項2に記載の聴覚補助装置によれば、貫通孔がストラップ取付部よりも下方に位置するため、使用者の発する音声をマイクで拾い難くする。
【0013】
請求項3に記載の聴覚補助装置によれば、一の角部にマイクを配置することができる。
【0014】
請求項4に記載の聴覚補助装置によれば、貫通孔を1面にしか形成していないものに比べて、広い範囲の音をマイクにて集音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る聴覚補助装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態による聴覚補助装置の組立斜視図である。
【図3】本実施形態による聴覚補助装置の使用状態を示す図である。
【図4】変形例によるマイク孔を示す斜視図である。
【図5】変形例によるハート型の筺体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<聴覚補助装置の構成>
図1(a)は、正面から見た本実施形態に係る聴覚補助装置1の斜視図であり、図1(b)は裏面から見た聴覚補助装置1の斜視図であり、図2は、聴覚補助装置1の分解斜視図である。
この聴覚補助装置1は、図1および図2に示すように、筐体2と、この筐体2内に収納された基板40、マイク50、電池51と、を具備する。筐体2は、樹脂材料によって浅底の矩形状体として形成され、対向する蓋面3,底面4、対向する短尺な側面5,7、対向する長尺な側面6,8を有する。蓋面3には、基板40を位置決めするためのリブ3Aが形成され、底面4には、電池カバー9が着脱可能に設けられる、矩形状の開口部4Aが形成される。
【0017】
筐体2の一の角部10(図1(a)中の右上部分)には、この角部10を構成する蓋面3,底面4および側面5,6の4面に、マイク50に開口するマイク孔11,12,13,14が形成される。マイク孔11,12,13,14は2個ずつ形成された長孔となる。
また、筐体2の角部のうち、一の角部10に近い他の角部15(図1(a)中の左上部分)には、蓋面3と底面4の頂点位置が面取りされて三角形状のフランジ部16が形成される。このフランジ部16には、ストラップ110(図3、参照)が取り付けられるストラップ取付部17が形成される。
側面5,6には、コネクタ挿入孔21,22とダイヤル挿入口23,24とが形成される。
【0018】
さらに、筐体2は、図2に示すように、表ケース31と裏ケース32とを貼り合わせることによって成形される。表ケース31のうち短尺な側面5の一の角部10に対応した部分の内側には、断面が略「L」字状となった隔壁部33が形成される。この隔壁部33は、表ケース31と裏ケース32とを併せてた状態で、一の角部10となる蓋面3,底面4および側面5,6の4面と共にマイク収容部分34を形成する。このマイク収容部分34には、マイク孔11〜14が開口する。
【0019】
表ケース31には、少なくとも増幅回路やイコライザー等の信号処理手段を構成する電子部品41が実装された基板40が収容される。基板40には、この基板40から突出するように、雌コネクタ42,43およびダイヤル44,45が実装される。筐体2に基板40を収容した状態にあっては、雌コネクタ42がコネクタ挿入孔21に、雌コネクタ43がコネクタ挿入孔22に、ダイヤル44がダイヤル挿入口23に、ダイヤル45がダイヤル挿入口24に、それぞれ挿入されて、基板40が筐体2に対して位置決めされる。また、基板40の下側には電池51が取り付けられるための端子が設けられる。
【0020】
雌コネクタ42には、リード線101を介してヘッドフォン100(図3、参照)につながる雄コネクタ((図示せず)が接続され、雌コネクタ43には、リード線および外部機器につながる雄コネクタ(いずれも図示せず)が接続される。ダイヤル44は、前記増幅回路の増幅率を設定する可変抵抗器の軸に接続されるものであり、ダイヤル45は、前記イコライザーによる設定音域を決める可変抵抗の軸に接続されるものである。よって、ダイヤル44を回転させることにより、ヘッドフォンから聞こえる音の音量を調整し、ダイヤル45を回転させることにより、ヘッドフォンから聞こえる音の音質を調整する。
【0021】
マイク収容部分34となる隔壁部33には、円柱状のマイク50が収容され、このマイク50からは図示しないリード線が基板40に接続されている。マイク50の種類としては、コンデンサマイクやカーボンマイク等が用いられる。
【0022】
このように構成される各部位を組み立てることにより、聴覚補助装置1が製造される。
まず、基板40にリード線で接続されたマイク50を隔壁部33(マイク収容部分34)の空間に挿入すると共に、表ケース31の開口部から基板40を挿入し、リブ3Aに押し付ける。この状態で、基板40側の雌コネクタ42,43はコネクタ挿入孔21に挿入されており、基板40を表ケース31に固定するために、リブ3Aに対して基板40をネジ止めする。
表ケース31に基板40を取り付けた状態で、開口部同士が合わさるように、裏ケース32を表ケース31に押し当てる。この際、基板側のダイヤル44,45はダイヤル挿入口23,24に挿入される。表ケース31と裏ケース32とは、開口部同士の噛み合わせによって接合されると共に、接着剤によって固着される。
【0023】
(聴覚補助装置1の使用例)
図3は、使用者Mが聴覚補助装置1を装着した状態を示す図である。
ストラップ110をストラップ取付部17に装着し、ヘッドフォン100の雄コネクタを雌コネクタ42に接続し、ストラップ110を使用者Mの首に掛けて、ヘッドフォン100のイヤー部を使用者Mの耳に装着する。
【0024】
聴覚補助装置1は、外部の音をマイク50で拾ってヘッドフォン100のイヤー部から増幅させた音として出力する。また、マイク50は、筐体2の一の角部10の位置に形成されたマイク収容部分34内に配置され、このマイク収容部分34には4面に形成したマイク孔11,12,13,14を介して外部と連通している。また、周囲からの集音が可能となるため、聴覚補助装置1がどちらの方向を向いていても、殆ど受信レベルが変わることはない。さらに、マイク収容部分34が、筐体2が洋服と接触する際に発生するノイズ等がマイク50に伝達されるのを低減し、基板40に実装された電子回路によってノイズの少ない信号処理が実現される。これにより、使用者Mに対して聞き取りやすい音を提供する。
【0025】
聴覚補助装置1は、図3のようにして使用する場合、マイク孔11等がストラップ取付部17よりも下側となって、傾いた状態となるため、使用者Mの口元からマイク50を遠ざけて、使用者Mの発する声を拾い難くして、外部からの音を主にマイク50で拾うことができる。聴覚補助装置1は、マイク孔11,12,13,14は、全角度からの集音を可能にし、こもりのない音の出力を可能とする。また、マイク50は、角部10に位置した容積の小さなマイク収容部分34内に配置されるため、共鳴等による反響を防止して自然に近い音で集音することができる。
また、聴覚補助装置1は、携帯プレーヤー或いは携帯ラジオを使用している感覚で、聴覚補助が行われる。
【0026】
<変形例>
上記実施形態を次のように変形してもよい。
前記実施形態では、筐体2に形成したマイク孔11,12,13,14は、マイク孔11,12は複数個の丸孔、マイク孔13,14は複数の長孔としたが、本発明はこれに限らず、図4(a)に示すように、3面に亘って形成された略「コ」字状のマイク孔201・・・を2面に亘って形成したもの、図4(b)に示すように、略「コ」字状のマイク孔202・・・と円形のマイク孔203・・・とを組み合わせたもの、図4(c)に示すように、円形のマイク孔204・・・とを組み合わせたもの、図4(d)に示すように、側面5に形成された長孔のマイク孔13,13と、この側面5から他の3面に亘って形成されたマイク孔205・・・とを組み合わせたものであってもよい。さらに、他の形状であってもよい。
また、前記実施形態では、筐体2を矩形状とした場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、筐体の形状は、他の形状であってもよい。
例えば、図5に示すように、ハート型の筐体2Aとした場合には、マイク孔206を一方の分岐部の先端側に、ストラップ取付部17Aを他方の分岐部の先端側に設けるようにすれば、ストラップで首から下げた際には、図5(b)のように、マイク孔206がストラップ取付部17Aより下方に位置するようになる。
【符号の説明】
【0027】
1…聴覚補助装置、2,2A…筐体、3…蓋面、4…底面、10…一の角部、11,12,13,14,201,202,203,204,205,206…マイク孔、15…他の角部、17,17A…ストラップ取付部、31…表ケース、32…裏ケース、33…隔壁部、34…マイク収容部分、40…基板、50…マイク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの音を音声信号に変換するマイクと、
前記マイクから出力する音声信号に対し、信号処理を行う信号処理手段と、
前記信号処理手段の出力信号を外部に出力する出力部と、
前記マイク、前記信号処理手段および前記出力部を収容し、前記マイクを収容するマイク収容部分が、外部から複数の面で囲まれると共に内部に対して隔壁で分離されている筐体と、を有し、
前記マイク収容部分の前記複数の面の少なくとも2以上の面には、前記マイクの集音経路となる貫通孔が設けられている
ことを特徴とする聴覚補助装置。
【請求項2】
請求項1記載の聴覚補助装置において、
前記筐体は、ひも状のストラップが取り付けられるストラップ取付部を有し、
前記ストラップ取付部の取り付け位置は、前記ストラップによって前記筐体が吊り上げられたときに、装置全体の自重により、前記マイク収容部分が前記ストラップ取付部を中心に回転して下方に位置するように設定されている
ことを特徴とする聴覚補助装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の聴覚補助装置において、
前記筐体を矩形状に形成し、前記マイク収容部分を前記筐体の一の角部に形成する
ことを特徴とする聴覚補助装置。
【請求項4】
請求項3記載の聴覚補助装置において、
前記貫通孔は、前記一の角部を形成する4面に形成される
ことを特徴とする聴覚補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−55406(P2011−55406A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204566(P2009−204566)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(399008210)松栄電子工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】