説明

肉まん製造方法

【課題】従来に無い新規な味と食感を有し、肉と野菜との双方の食感を生かすことのできる風味豊かな肉まんを提供する。
【解決手段】生地の材料を配合する生地配合工程S1と、少なくとも1種以上の根菜を含む野菜を切断し、3mm以上の長さを保持するようにトリミングする野菜トリミング工程S3と、第一調味料をトリミングされた野菜に含浸させ、その後、第一調味料を濾して野菜を取り出す第一調味工程S4と、第一調味工程の後に、野菜を薄切りの肉で巻いて餡を作成する野菜包み工程S6と、該餡を、生地で包み込んでまんじゅうを作成する生地包み工程S7と、まんじゅうを蒸す蒸しあげ工程S8とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉まんの製造方法に関するものであり、特に、薄切りの肉を用いた肉まんの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中国では、古来より、小麦粉を主原料とする皮で餡を包んで蒸した「包子(パオズ)」という食べ物が広く親しまれている。この食べ物は日本でも親しまれており、餡の材料によって様々な味のバリエーションが展開されている。
【0003】
例えば、小豆と砂糖とで練った餡を用いたものは「あんまん」や「桃まん」などと呼ばれている。また、豚肉と野菜とをミンチ状に挽いた餡を用いたものは、「中華まん」「肉まん」「豚まん」などと呼ばれ、広く流通している。さらに、肉まんのバリエーション展開として、餡や生地にカレー粉を混ぜた「カレーまん」、ケチャップやチーズを餡に混ぜ込んだ「ピザまん」、挽肉に替えて豚の角煮を餡に用いた「角煮まん」なども知られている。
【0004】
以上の従来技術は、当業者において当然として行われているものであり、出願人は、この従来技術が記載された文献を知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばハンバーガーのような食べ物は、ハンバーグ(挽肉を丸めて焼いたもの)の他にもスライスした野菜などが挟み込まれる構造のため、挽肉の食感だけではなく野菜のしゃっきりとした食感も味わうことが可能である。これに対し、中華まんや肉まん等(以下、単に「肉まん」と総称する)では、野菜が細かく刻まれて挽肉に混ぜ込まれているため、しゃっきりとした野菜の食感を楽しむことができず、消費者に単調な食感であると感じさせる虞があった。
【0006】
一方、さいころ大の豚の角煮を用いた「角煮まん」などのように、挽肉以外の肉を用いることで、従来の肉まんの食感とは異なるものを提供することも可能である。また、カレーまんやピザまんのように、食感自体は変わらないものの、具材の味付けを変えることで味の印象を変える方法も行われている。しかし、何れの方法を用いても、野菜が細かく刻まれることには代わりが無いため、野菜独自の食感を楽しませることは困難であるという問題があった。
【0007】
ここで、野菜を大きく刻み、食感が残るように配慮するという方法も考えられるが、係る方法では、餡としてのまとまりが悪くなるため皮で包むことが難しくなるという問題があった。このような場合には、ゲル・ゾル化剤を用いて餡を固める方法も考え得るが、これらの添加剤の中には餡の味を変えてしまうものもあり、昨今の健康ブームも相まって、消費者に好まれない場合が考えられた。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、従来に無い新規な味と食感を有し、肉と野菜との双方の食感を生かすことのできる風味豊かな肉まんを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る肉まん製造方法は、「少なくとも小麦粉、糖類、油脂、水、及び膨張剤を混合して生地の材料を配合する生地配合工程と、少なくとも1種以上の根菜を含む野菜を切断し、3mm以上の長さを保持するようにトリミングする野菜トリミング工程と、少なくとも水、糖類、及び醤油を含む第一調味料を混合し、作成された該第一調味料を前記トリミングされた野菜に含浸させ、その後、前記第一調味料を濾して前記野菜を取り出す第一調味工程と、前記第一調味工程の後に、前記野菜を薄切りの肉で巻いて餡を作成する野菜包み工程と、該餡を、前記生地で包み込んでまんじゅうを作成する生地包み工程と、前記まんじゅうを蒸す蒸しあげ工程とを具備する」ことを特徴とする。
【0010】
ここで、「小麦粉」とは、小麦を挽いて作られた粉の全般を示し、強力粉、中力粉、薄力粉の何れであっても良いし、これらを適宜な割合で混ぜ合わせたものでも構わない。また、「糖類」とは、例えば上白糖や黒砂糖、メープルシロップのような天然甘味料であっても良いし、D−キシロースやステビア抽出物等の人工的な甘味料を用いても良い。さらに、「油脂」とは、所謂「油」の類であればその種類は特に限定されず、植物性であっても良いし動物性であっても良い。例えば、サラダ油、ごま油、菜種油、パーム油、オリーブオイル、紅花油等の脂肪油(常温で液体の油)や、ショートニング、バター、マーガリン、ラード等の脂肪(常温で固体の油)が例示できる。また、「膨張剤」とは、生地を膨らませる機能を有するものであって、例えば重曹やベーキングパウダー、ホイップしたバター等が挙げられる。
【0011】
また、「根菜」とは、土壌中にある根や地下茎を食用部分とする野菜全般を示し、例えばごぼう、大根、人参、レンコン、芋類などの野菜が例示できる。なお、本発明でトリミングされる野菜は、「少なくとも1種以上の根菜を含む野菜」であれば良いから、根菜以外の野菜、例えば筍やもやし、しいたけやまいたけなどの茸類、蕨や蕗などの山菜、キャベツや白菜などの葉野菜をさらに付加しても構わない。
【0012】
また、「トリミングする」とは、野菜を所定の形に切り出す状態を示し、「3mm以上の長さを保持するようにトリミングする」とは、切り出された野菜の欠片のうち、いずれか一辺が3mm以上の長さを保持するように整える状態を示す。つまり、縦・横・奥行きが略一致するサイコロ状の大きさに野菜を切り出すものであっても良いし、3mm以下の厚みであるもののその長さが3mm以上であるような短冊状や千切り状の形状に切り出すものであっても良い。但し、粗くミンチにした結果、たまたま3mm角以上の大きさの野菜が混入していたような状態は含まず、餡に使用する野菜を意図的に3mm以上の長さとなるようにトリミングする状態を示す。なお、あまりに野菜が大きい場合は、餡としてまとめることが困難であり、消費者にとっても食べづらくなる。従って、「3mm以上且つ5cm以下の長さとなるようにトリミングする」方法であれば、より好適である。
【0013】
また、「醤油」とは、大豆や小麦を主原料とする一般的な液体調味料であればその種類は特に限定されず、濃口、淡口、再仕込み、溜り、白、またはこれらのうち何れかを適宜に混合したもの、等が例示できる。さらに、「含浸させる」とは、一定量の調味料の中に野菜を漬け込み、ある程度の長期間放置して野菜に調味料を染み込ませる方法を示し、単に野菜に調味料を垂らしたり、刷毛で塗るだけであるような方法は含まない。
【0014】
また、「薄切りの肉」とは、その厚みや大きさは特に限定されないが、トリミングされた野菜を巻くことができる程度の厚みや大きさであることが望まれる。つまり、野菜を巻くことが難しいような厚みや大きさ(ブロック状の肉片やミンチ状の肉片等)は含まない。但し、一枚分の肉で一個分のまんじゅうの餡を作成する必要はなく、複数枚の薄切りの肉で野菜を巻く方法は除外されないから、ある程度小さな(複数枚で一個分のまんじゅうの餡を作成できるような)サイズは許容される。
【0015】
また、「肉」の種類としては、上述したような大きさの薄切り肉が確保できる大きさの獣肉が好ましく、食感や味のバランス、風味を考慮すると、特に牛肉が好適に使用される。さらに、「薄切りの肉で巻いて」とは、例えば巻き寿司のようにのり巻き状に野菜を巻き上げ、端面側は野菜が開放されている(肉に巻かれていない)状態であっても良いが、野菜の周面を全て肉で包む状態であれば、野菜の旨みや水分を効率的に閉じ込めることができ一層好適である。
【0016】
本発明の肉まん製造方法によれば、まず、生地配合工程において、小麦粉、糖類、油脂、水、及び膨張剤を含む材料を混合して、肉まんの生地の材料を配合する。野菜トリミング工程では、少なくとも一種以上の根菜を含む野菜を切断し、3mm以上の長さを保持するようにトリミングする。第一調味工程では、少なくとも水、糖類、及び醤油を含む第一調味料を配合し、配合された第一調味料の中にトリミングされた野菜を漬け込む。その後、第一調味料を濾してトリミングされた野菜を取り出す。そして、野菜包み工程では、前記の第一調味料が含浸された野菜を取り分け、まんじゅう一個分の前記の野菜を薄切りの肉で巻いて餡を作成する。生地包み工程では、作成された餡を生地で包み込み、まんじゅうの素を作成する。そして、蒸しあげ工程においてまんじゅうの素を蒸しあげ、肉まんを完成させる。
【0017】
なお、生地配合工程は、少なくとも生地包み工程の前に行われていれば良く、野菜トリミング工程、第一調味工程、及び野菜包み工程のうち何れかの工程の前であっても良いし、これらの工程の後であっても良い。また、これらの工程のうち何れかの工程(もしくは何れもの工程)と平行して行われても構わない。
【0018】
従って、本発明の肉まん製造方法によれば、トリミングされた野菜が薄切りの肉に巻かれている新規な餡を採用するので、消費者に対して、従来に無い味と食感を有する肉まんを提供できる。つまり、ミンチ状にされた柔らかいだけの餡の食感とは異なり、薄切りにした肉がほぐれる際の豪華な食感と、根菜を含む野菜のしゃっきりとした食感との双方を提供することができる。また、本発明では、野菜が3mm以上の長さを保持するようにトリミングされているので、より野菜の食感が残りやすく、加熱調理後も消費者に野菜の歯ごたえを楽しませることが可能となっている。
【0019】
また、本発明の肉まん製造方法によれば、野菜包み工程を有しているので、トリミングされた野菜がばらばらになりにくく、簡易に生地で包み込むことができる。さらに、薄切りの肉で野菜が包み込まれているので、その水分や旨みを肉の内側に閉じ込めることができ、ゲル・ゾル化剤などの特段の添加剤を使用することなく餡をまとめることが可能となる。さらに、水分が生地に染み込んで分散することを防止できるので、生地の発酵を妨げず、ふっくらとした皮に仕上げることができる。これにより、具材はジューシーでありながら、かつ生地はふっくらとした肉まんを製造することができる。
【0020】
さらに、本発明の肉まん製造方法によれば、トリミングされた野菜に第一調味料を含浸させる第一調味工程が具備されている。従来の肉まん製造方法によれば、ミンチ状に細かく砕かれた肉及び野菜に調味料を添加する方法である。従って、添加された調味料は、野菜に十分に含浸することなく肉に染み込む場合が考えられる。これに対し、本発明の肉まん製造方法によれば、3mm以上の長さが保持されている野菜を第一調味料に漬け込む方法なので、野菜自体に第一調味料を十分に染み渡らせることが可能となる。これにより、餡の野菜の存在感を増強し、より野菜の味と食感を楽しませることのできる新規な肉まんを提供することができる。
【0021】
また、本発明の肉まん製造方法において、「前記生地配合工程は、卵をさらに混合させて前記生地の材料を配合する」ものとすることができる。
【0022】
ここで、「卵」とは、卵白だけではなく卵黄も含む所謂「全卵」を示す。また、卵の種類は特に限定されないが、特に鶏卵が好適に使用される。
【0023】
従って、本発明の肉まん製造方法によれば、生地に卵をさらに混合させるから、より甘味が強くこしの強い生地を作成することができる。これにより、薄切りの牛肉と野菜とで構成される餡の味をより際立たせる皮が提供できる。また、卵を加えることにより栄養価が高まるだけではなく、焼き色が良くなり、より風味豊かな肉まんを提供することができる。
【0024】
また、本発明の肉まん製造方法において、「前記第一調味工程の後、且つ前記野菜包み工程の前に、粉末状の第二調味料を前記トリミングされた野菜に添加する第二調味工程をさらに具備する」ものとすることができる。
【0025】
ここで、「粉末状の第二調味料」としては、例えば胡麻、塩、胡椒、唐辛子等、常温下で粉末状を呈し且つ液体中に投入しても溶け込みにくい調味料が例示できる。
【0026】
ところで、本発明の肉まん製造方法によれば、トリミングされた野菜は、醤油などの液体状の調味料を含む第一調味料に含浸させる方法を採用している。ここで、胡麻や唐辛子など、粉末状で且つ常温では液状化しにくい調味料を第一調味料に加えると、餡の味が複数のまんじゅう間で異なる場合が考えられた。つまり、液状化した第一調味料中において粉末状の第二調味料が流動し、その分布が偏ることで、味の濃い餡と薄い餡とが存在し得る可能性があった。
【0027】
これに対し、本発明の肉まん製造方法によれば、第一調味工程の後に、さらに、粉末状の第二調味料を野菜に添加する第二調味工程を具備している。これにより、第一調味料を濾した後の野菜に粉末状の第二調味料が添加されるので、比較的手間をかけずとも、野菜全体に偏りなく第二調味料を行き渡らせることができる。従って、複数のまんじゅう間において味のばらつきが少ない肉まん製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本発明の肉まん製造方法によれば、トリミングされた野菜が薄切りの肉に巻かれている新規な餡を提供するので、ミンチ状に細かくされた野菜や肉から構成される従来の肉まんとは違った新たな食感の肉まんを提供することができる。また、野菜が薄切りの肉に包まれているので、3mm以上の長さを有する比較的大きなサイズの野菜がばらばらになりにくく、特段の食品添加物を使用せずとも比較的簡単に餡を生地に包みこませることができる。さらに、野菜が薄切りの肉に包み込まれているので、野菜の旨みや水分を生地の中に分散させにくい。従って、具材はジューシーでありながら、かつ生地はふっくらとした肉まんを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態である肉まん製造方法について、図1乃至図3に基づき説明する。図1は本発明の肉まん製造方法によって製造された肉まんを示す斜視図、図2は肉まんの断面を含む説明図、図3は製造方法の流れを説明するフローチャートである。
【0030】
本発明の肉まん製造方法1は、七つの工程、すなわち、「生地配合工程」、「野菜トリミング工程」、「第一調味工程」、「第二調味工程」、「野菜包み工程」、「生地包み工程」、及び「蒸しあげ工程」に大別することができる。
【0031】
まず、ステップS1の「生地配合工程」では、肉まん2の皮3となる生地を配合する。本実施形態における皮3の生地は、主に砂糖、植物油脂、塩、水、小麦粉、ベーキングパウダーを混ぜ合わせることで作成される。それぞれの配合量は、砂糖2〜3kg、植物油脂70g〜98g、塩60g〜100g、水2.5リットル〜3.0リットルであり、これらを小麦粉4kg〜6kg及びベーキングパウダー150g〜200gに加え、練り合わせる。ここで、小麦粉やベーキングパウダーの量は、室温に応じて調整し生地の膨張具合をコントロールする。なお、これらの分量は、肉まん2の100〜110個分の分量である。
【0032】
さらに、ステップS1では、皮3の生地の材料として、鶏卵が混ぜ合わされる。その分量は、およそ1000g〜1500gであり、皮3の生地全体の重量に対して、およそ7〜10%程度に相当する。上記食材の配合比率は、少なくとも小麦粉、糖類、油脂、水、及び膨張剤を有するものであれば良く、上記数値に限定されるものではないが、本出願人は、鋭意研究を重ねた結果、上記配合比率がもっとも風味豊かで食感の良い肉まん2を創出できるものであると確信するに至った。具体的には、上記食材の配合比率、特に鶏卵を上記配合比率で混ぜ合わせることによって、本例の餡4(後述する)の旨みを引き立たせる甘味の強い皮3を得ることができる。また、腰の強い歯ごたえのある皮3を実現することができるので、従来の肉まんの皮の柔らかい食感とは異なる斬新な食感の皮3を得ることができる。さらに、鶏卵を配合することによって、肉まん2の栄養価が高まることに加え、皮3の焼き色が良くなり、見た目にも美しい肉まん2を提供することができる。
【0033】
次に、ステップS2の「生地発酵工程」では、ステップS1で配合し練りあわされた生地の材料を、乾燥防止のラップや濡れ布巾などで包み、30分寝かせる。生地の材料の発酵時間は、この数値に限定されるものではなく、例えば24時間以上寝かせても良いし、まったく寝かせない(生地発酵工程を具備しない)ものでも良い。但し、本例のように、20〜30分程度の発酵時間を確保することで、適度に伸ばしやすく、歯ごたえのある皮3を得ることができる。発酵時間が長すぎると、生地の発酵が進みすぎて、歯ごたえの少ない柔らかすぎる皮3となりやすい。一方、発酵時間が短すぎる(若しくは、発酵工程を無くす)と、伸びが悪く皮3の作成が困難となったり、生地がべたべたとしすぎて味の質が低下する虞がある。
【0034】
一方、ステップS3の「野菜トリミング工程」では、餡4の材料となる野菜をトリミングする。本発明の「トリミング」とは、具体的には、人参約1kg、ごぼう約2kg、筍約2kg等の野菜を千切りにし、約1cmの長さにカットする工程を示す。本発明の「野菜トリミング工程」では、野菜を従来の肉まんのようにミンチ状にせず、3mm以上の長さを保持するように、具体的には1cm程度の長さを保持するように(図2参照)トリミングするので、野菜の繊維質が有する歯ごたえを損なわせないという効果を奏する。また、大きな(例えば5cm角以上の)ブロック状に野菜をトリミングする場合に比べて、歯ごたえを損なわず且つ比較的食べやすい大きさに構成している。
【0035】
次に、ステップS4の「第一調味工程」において、トリミングされた野菜6に味付けをする。第一調味工程において用いられる第一調味料は、水1.5〜2.0リットル、食塩100g、上白糖1050g、濃口醤油約800g、フルクトース約270g、L−グルタミン酸ナトリウム約25g、クエン酸約5g、及び、L−アスコルビン酸約5gを配合して作成される。こうして作成された第一調味料の中に、トリミングされた野菜6を漬け込み、約17時間放置して第一調味料を含浸させる。従来の肉まんに用いられる餡は、ミンチ状に挽いてあるので、具材の中に調味料を単に混ぜ込んで作成される。従って、添加された調味料は、野菜の中に染み込まずに肉に吸収される場合が考えられた。これに対し、本例の肉まん製造方法1によれば、第一調味料の中にトリミングされた野菜6を漬け込む方法であるから、トリミングされた野菜6の内部にしっかりと調味料を行き渡らせることができる。これにより、消費者が餡4をかみ締めた際に、トリミングされた野菜6の中から第一調味料が染み出てきて深い味わいを楽しませることができる。また、かみ締めればかみ締めるほどトリミングされた野菜6より第一調味料が染み出し、風味が増すように構成できるので、野菜の旨みと共に噛む楽しみを満喫できる新規な肉まん2を提供できる。さらに、本例では、1cm程度の長さにトリミングされているので、トリミングされていない野菜を用いた場合に比べて、切り口より第一調味料がトリミングされた野菜6の内部へと浸透しやすく、味わい深い餡4の提供に資する。
【0036】
そして、第一調味料を濾し、トリミングされた野菜6を取り出す。続いて、ステップS5の「第二調味工程」では、取り出された野菜に第二調味料を添加する。第二調味料は、胡麻油約21g、一味唐辛子約5g、及び白胡麻約15gを有して構成されている。一味唐辛子や白胡麻は、粉末状で且つ常温では液状化しにくい調味料であるため、液状化した第一調味料中に混入させると液中で流動して分布が偏る虞がある。これにより、複数の肉まん2間における餡4の味にムラが生じる虞があるが、本例では、第二調味工程を具備しているから、係る問題が解決される。すなわち、第一調味料を濾した後のトリミングされた野菜6に第二調味料を添加する方法を採用しているから、比較的偏りが少なく、餡4全体に満遍なく第二調味料を行き渡らせることが可能となる。また、第一調味料によって薄められないことにより、比較的少量で濃い味付けをすることができる。なお、本例では、第二調味工程において、さらに公知のゾル・ゲル化剤を添加している。これにより、後述するステップS6の「野菜包み工程」において餡4がまとめやすくなる。
【0037】
そして、ステップS6の「野菜包み工程」では、ステップS5の後に、トリミングされた野菜6をスライス肉5で巻き、餡4を作成する(図2参照)。具体的には、トリミングされた野菜6を約35gづつに小分けし、団子状に丸める。それを、スライス肉5で包み込み、餡4を作成する。本例では、スライス肉5として、飛騨地方を産地とする和牛の牛肉(所謂「飛騨牛」)の切り落としを使用している。飛騨牛は、甘みがあり肉質が高いことで有名な銘柄である。本例では切り落としを使用しているから、飛騨牛の旨みを肉まん2に取り入れつつコストを抑えることに成功している。また、スライス肉5でトリミングされた野菜6を包むから、野菜の水分が皮3側へと染み出るのを効果的に防ぐことができる。これにより、皮3が水っぽくなりふやけるのを防止できると共に、野菜の旨みを餡4の中に閉じ込めジューシーな肉まん2を提供することができる。なお、本例では餡4に公知のゾル・ゲル化剤を添加しているが、本発明の肉まん製造方法1によれば、係る添加剤を添加させずとも餡4を作成することが可能である。ゾル・ゲル化剤を添加すれば、餡4をまとめる作業がより簡易になる。一方、ゾル・ゲル化剤を添加しない場合は、餡4に含まれる野菜等の味をより生かした肉まん2を提供することができる。ここで、「スライス肉5」が、本発明の「薄切りの肉」に相当する。
【0038】
次に、ステップS7の「生地包み工程」では、ステップS2で作成された生地で、ステップS6で作成された餡4を包む。まず、ステップS2で作成された生地を約50gづつに小分けし、麺棒で丸く伸ばす。そして、ステップS6で作成された餡4を生地で包み込み、まんじゅう状に形を整える。
【0039】
続いて、ステップS7で形の整えられたまんじゅうに焼印7を施す「刻印工程」(図示しない)を行う。より詳細には図1に示すように、「飛騨牛」の文字を象った焼印7をまんじゅうに焼き付ける。このような焼印7を肉まん2に施すことにより、餡4に使用されているスライス肉5(飛騨牛)の存在感を前面に押し出し、消費者にアピールすることができる。換言すれば、消費者は、焼印7があることによって、他のまんじゅうと取り違えることなく本発明の肉まん2を選択することができる。また、のっぺりとしがちな皮3の表面に焼印7が施されることによって、皮3の見た目に起伏と変化をもたらし、人目を惹く肉まん2を提供することができる。なお、本例では、「飛騨牛」の文字を象った焼印7を例示したが、このデザインに限定されるものではない。例えば、茶色の焼き面7aの中に、焼き面7aよりも濃い色目(茶褐色等)で「飛騨牛」の文字を象った焼き文字7bを有する刻印でも良いし、当然、これ以外のデザインであっても構わない。但し、「飛騨牛」の文字を有する焼印7とすると、餡4の特徴がより直接的に消費者に伝わるので、好適である。
【0040】
そして、ステップS8の「蒸しあげ工程」では、ステップS7で作成されたまんじゅうを、蒸し器で約15分蒸しあげる。蒸しあがった肉まん2はそのまま消費者に提供することも可能であるが、長期間保存するためには、ステップS9の「冷凍保存工程」において−40℃まで急速に冷凍させることが好ましい。そして、ステップS10の「冷凍保存工程」において、急速に冷凍された肉まん2を−25℃程度の低温で保存する。これにより、比較的長期間肉まん2を保存することができる。このようにして冷凍保存された肉まん2は、風味が損なわれない。従って、店頭や路上、コンビニエンスストア、または家庭等で蒸し器や電子レンジ機器を用いて暖めて、美味しいまま適宜に消費者に提供され得る(ステップS11)。
【0041】
以上のように、本例の肉まん製造方法1によれば、餡4として、約1cm程度の長さを保持するようにトリミングされた野菜6を使用するので、野菜の繊維質が有する歯ごたえのある食感を残した肉まん2を提供できる。また、トリミングされた野菜6が人参やごぼうなどの根菜類を含んでいるので、加熱調理後も野菜の食感が残りやすく、従来に無い食感の肉まん2の提供に資する。
【0042】
さらに、本例の肉まん製造方法1によれば、トリミングされた野菜6をスライス肉5で包み込む新規な餡4を提供するので、トリミングされた野菜6がばらばらになりにくく、簡単に生地で包み込むことができる。また、野菜の旨みや水分をスライス肉5の内側に閉じ込めることができるので、皮3が水っぽくなりにくく、且つジューシーな餡4を提供できる。また、スライス肉5によってトリミングされた野菜6を包むという新規な方法を採用することにより、ゾル・ゲル化剤などの添加物を使用しなくても餡4を作成できる場合がある。この際には、野菜の持つ本来の味を損なわない、風味豊かな肉まん2を提供できる。
【0043】
また、本例の肉まん製造方法1によれば、皮3には、生地全体の重量に対しておよそ7〜10%程度に相当する鶏卵が配合されているから、本例の餡4の味を引き立たせる甘くて風味豊かな皮3を提供できる。また、鶏卵が配合されていることによって、腰の強い歯ごたえのある皮3を実現することができると共に、栄養価が高く、皮3の焼き色が美しい肉まん2を提供することができる。
【0044】
さらに、本例の肉まん製造方法1によれば、第二調味工程がさらに具備されているので、第二調味料の味を効果的に餡4に行き渡らせることができる。また、第一調味料によって第二調味料が薄められないことにより、比較的少量の第二調味料で効果的に餡4を味付けすることができる。
【0045】
また、本例の肉まん製造方法1によれば、「刻印工程」がさらに具備されているから、餡4に使用されているスライス肉5(飛騨牛)の存在感を前面に押し出し、消費者にアピールすることができる。また、のっぺりとしがちな皮3の表面に焼印7が施されることによって、皮3の見た目に起伏と変化をもたらし、人目を惹く肉まん2を提供することができる。
【0046】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0047】
上記実施形態においては、ステップS1の「生地配合工程」及びステップS2の「生地発酵工程」の後にステップS3の「野菜トリミング工程」を説明したが、これらの工程は、この順序に限定されるものではない。ステップS1及びステップS2は、ステップS7の「生地包み工程」が行われる前に終了していれば、そのタイミングは特に限定されない。ステップS3〜ステップS6の何れかの工程の後に行われても良いし、これらの工程と同時に進行するものでも構わない。特に、ステップS4の「第一調味工程」では、約17時間の長い調味時間が必要とされるから、ステップS5の「第二調味工程」やステップS6の「野菜包み工程」の後にステップS1及びステップS2を行うと、生地の発酵時間(30分)を長くしすぎずに後の工程に効率的に移行でき、好適である。なお、ステップS4の前にステップS1及びステップS2を行う場合は、生地の材料を冷蔵保管すると良い。冷蔵保管すると、生地の発酵速度が鈍化し、過発酵状態を回避できる。
【0048】
また、上記実施形態においては、ステップS5の第二調味工程が具備された肉まん製造方法1を例示したが、この方法には限定されず、第二調味工程を具備しない方法でも良い。例えば、第一調味料中に第二調味料を混入させ、よく混ぜ合わせた後にトリミングされた野菜6を投入するものでも構わない。この方法によれば、第二調味工程に必要とされる時間が短縮できるという作用効果を奏する。
【0049】
また、ステップS1〜ステップS10までの工程は、手作業で行っても良いし、機械で自動的に行っても良い。比較的大規模に行うのであれば、機械で自動化することで均一な品質の肉まん2を大量に作成することが可能となる。一方、一度に作成する数が比較的小規模(例えば、本例で例示した100〜110個程度)であれば、人手で行っても構わない。その場合には、手作りの温かみのこもった肉まん2を消費者に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の肉まん製造方法によって製造された肉まんを示す斜視図である。
【図2】肉まんの断面を含む説明図である。
【図3】肉まん製造方法の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 肉まん製造方法
2 肉まん
3 皮
4 餡
5 スライス肉(薄切りの肉)
6 トリミングされた野菜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも小麦粉、糖類、油脂、水、及び膨張剤を混合して生地の材料を配合する生地配合工程と、
少なくとも1種以上の根菜を含む野菜を切断し、3mm以上の長さを保持するようにトリミングする野菜トリミング工程と、
少なくとも水、糖類、及び醤油を含む第一調味料を混合し、作成された該第一調味料を前記トリミングされた野菜に含浸させ、その後、前記第一調味料を濾して前記野菜を取り出す第一調味工程と、
前記第一調味工程の後に、前記野菜を薄切りの肉で巻いて餡を作成する野菜包み工程と、
該餡を、前記生地で包み込んでまんじゅうを作成する生地包み工程と、
前記まんじゅうを蒸す蒸しあげ工程と
を具備することを特徴とする肉まん製造方法。
【請求項2】
前記生地配合工程は、卵をさらに混合させて前記生地の材料を配合することを特徴とする請求項1に記載の肉まん製造方法。
【請求項3】
前記第一調味工程の後、且つ前記野菜包み工程の前に、粉末状の第二調味料を前記トリミングされた野菜に添加する第二調味工程をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の肉まん製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−173036(P2008−173036A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8145(P2007−8145)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(399128758)山一商事 株式会社 (1)
【Fターム(参考)】