説明

肌状態の評価方法

【課題】被験者の顔面の見た目の肌の状態を客観的に評価し得る方法を提供すること。
【解決手段】本発明の肌状態の評価方法は、被験者の顔面における測定対象部位の輝度を測定してそのヒストグラムを得、該ヒストグラムの形状に基づき、該被験者の顔面の肌の状態を評価する。光源の設置位置を、被験者の正中線に対して、水平面でみたときに−90〜90度傾斜した位置で、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角−30〜75度の位置とし、撮像手段の設置位置を、被験者の正中線に対して、水平面でみたときに−90〜90度傾斜した位置で、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角0〜75度の位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚情報処理を利用した顔面の肌状態の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔面における肌の見え方の特徴を客観的に評価する方法が知られている。そのような方法は、主として(1)光学測定を行い、その光学的な特徴を物理的に理解することで見え方を説明する方法(Physics-based)と、(2)画像を取得し、その画像の特徴量を画像処理解析などで抽出し、見え方を説明する方法(Image-based)に大別され、これらの方法が代表的なアプローチとして知られている。
【0003】
特に、春や夏などの汗ばむ季節では化粧くずれが起こりやすいところ、化粧くずれが起こると、例えば20才台の若年肌であっても加齢肌のような外観を呈することが多い。したがって、肌状態を、視覚的な見地(Vision-based)から客観的に評価できる方法が望まれている。
【0004】
肌の状態を評価する従来の方法として、角質細胞の大きさと年齢とを指標とする敏感肌の鑑別方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、角質細胞の大きさを、年齢ごとの標準角質細胞面積と比較している。しかしこの方法は、肌の見え方を評価するものではない。また、非接触式のものではないので、被験者に身体的な負荷が加わる場合がある。
【0005】
肌の見え方とは異なるが、前記の画像処理解析に関し、人間が目視で物体の表面の質感を評価する場合には、物体表面の輝度のヒストグラムの歪度を判断基準としているとの報告がなされている(非特許文献1参照)。この報告では、主として、CRTモニタ等の画像表示デバイス上で、質感の異なる画像をどのように表示するかについて検討がなされているが、この技術を肌の見え方の評価へ適用し得るか否かには言及されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−116623号公報
【非特許文献1】I. Motoyoshi et al., Nature, 447, p.206-209(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、被験者の顔面の見た目の肌の状態を客観的に評価し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被験者の顔面における測定対象部位の輝度を測定してそのヒストグラムを得、該ヒストグラムの形状に基づき、該被験者の顔面の肌の状態を評価する、肌状態の評価方法であって、
光源の設置位置を、被験者の正中線に対して、水平面でみたときに−90〜90度傾斜した位置で、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角−30〜75度の位置とし、撮像手段の設置位置を、被験者の正中線に対して、水平面でみたときに−90〜90度傾斜した位置で、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角−30〜75度の位置とし、
前記光源からの光で被験者の顔面を照らした状態下に、被験者の顔面における前記測定対象部位を前記撮像手段で撮像して肌情報を取得し、
取得された前記肌情報に基づき前記ヒストグラムを得ることを特徴とする肌状態の評価方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔面の肌の状態を客観的に評価することができるので、その肌の状態に見合ったスキンケアのアドバイスやメークアップのアドバイスを的確に行うことができる。また、非医療目的での体全体の健康状態や心理状態の評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明においては、被験者の顔の画像を取得し、この画像から輝度情報を取り出し、その輝度情報に基づき輝度のヒストグラムを得る。輝度のヒストグラムの一例を図1に示す。輝度のヒストグラムは、横軸に輝度をとり、縦軸にその輝度の出現頻度をとる。横軸の輝度は黒を0%とし、白を100%とする。後述するように、実際のデータ解析においては、黒から白までを例えば0から255の256段階の階調に区分する。縦軸の頻度は、測定対象部位を複数の小区画に区分し、該小区画の総数を標本数としたときの、その輝度の出現頻度を表す。後述するように、デジタル処理によって画像処理を行う場合には、前記の小区画の一つ一つは、一つのピクセル(画素)に相当する。
【0011】
図1に示すようなヒストグラムを確率分布とみなすと、その形状特徴は平均まわりの一次から四次モーメントとして記述できる。本発明においては、算出されたモーメントの値を「画像の特徴量」としている。一次から四次までのモーメントのそれぞれは、「平均」、「分散」、「歪度」及び「尖度」である。
【0012】
前記の一次から四次までのモーメントのうち、三次のモーメントである歪度が肌状態と相関性が高いことが、本発明者らの検討の結果判明した。歪度とは、図1に示すようなヒストグラムにおいて、データが平均のまわりに対称に分布していない度合いを示す尺度である。なお、図1に示すヒストグラムの形状は、ほぼ対称であると判定できるものである。歪度は、以下の式(1)から算出される。
【0013】
【数1】

【0014】
データが、平均を中心にして対称のときは、歪度は0となる。平均から右方遠くにデータがあり、左方遠くにはデータがないような分布では、歪度は正で大きくなる(この分布を、正の非対称分布という。)。逆に、平均から左方遠くにデータがあり、右方遠くにはデータがないような分布では、歪度は負で大きくなる(この分布を、負の非対称分布という。)。
【0015】
本発明者らの検討の結果、健康で、ふんわりとした若肌に見える肌ほど、輝度のヒストグラムが、図2に示すように左側にテールが延びた形状になることが判明した。このようなヒストグラムの形状は、該ヒストグラムにおける歪度が負の非対称分布になること、すなわち歪度が負の大きな値になることを意味している。これに対して、加齢したように見える肌や不健康に見える肌ほど、輝度のヒストグラムにおける歪度が正の非対称分布になること、すなわち歪度が正の大きな値になることが判明した。
【0016】
本発明の方法は、被験者が化粧を施しているか否かと無関係に評価される。例えば被験者が20才台の若年であっても、該被験者が化粧を施しており、その化粧がくずれた状態になっている結果、見た目が加齢肌のようになっている場合は、該被験者の肌は加齢肌であると判断される。逆に加齢者であっても、化粧の施し方が良好な場合には、見た目が若年肌のようになり、該被験者の肌は若年肌であると判断される。なお、肌の明るさは、肌の状態の一つの指標と考えられるので、肌の明るさから直接的に肌の状態が評価できると考えられるかもしれないが、上述のヒストグラムから得られる明るさの情報は、平均からのズレに関する情報に過ぎないので、肌の明るさからは肌の状態を正確に記述することはできない。
【0017】
本発明者らの詳細な検討の結果、後述する測定条件に従い測定された輝度のヒストグラムの歪度が−0.7以下である場合には、20才台の若年肌であると判断される。該歪度が−0.7超−0.1以下である場合には、30才台の肌であると判断される。該歪度が−0.1超0.1以下である場合には、40才台の肌であると判断される。該歪度が0.1超である場合には、50才台以降の肌であると判断される。また、本発明者らの詳細な検討の結果、後述する測定条件に従い測定された輝度のヒストグラムの歪度が−0.5以下、特に−0.7以下である場合には、若年肌であると判断される。該歪度が0以上、特に0.1以上である場合には、加齢肌であると判断される。
【0018】
以上のとおり、本発明によれば、前記ヒストグラムの形状に基づき被験者の肌の状態を評価することができる。したがって、本発明の評価方法を用いることによって、その肌の状態に見合ったスキンケアのアドバイスやメークアップのアドバイスを的確に行うことができる。また、非医療目的で、被験者の生活管理や食事管理等のアドバイスやカウンセリングを的確に行うことができる。このように、輝度のヒストグラムの歪度を指標として肌の状態を評価する本発明の方法は、視覚情報処理を反映したvision-basedな評価方法としての可能性を有するものである。
【0019】
本発明者らが更に検討を推し進めたところ、輝度のヒストグラムの二次モーメントである分散も、肌の状態と相関性の高いことが、本発明者らの検討の結果判明した。分散とは、先に述べた図1に示すようなヒストグラムにおいて、データとその平均の差の二乗平均のことである。分散は、以下の式(2)から算出される。
【0020】
【数2】

【0021】
データが、平均からばらついている場合には分散の値は大きくなり、平均の近くに集まっている場合には分散の値は0に近い値となる。
【0022】
本発明者らの検討の結果、健康で、ふんわりとした若肌に見える肌ほど、輝度のヒストグラムにおける分散の値が小さくなる傾向にあることが判明した。これに対して、加齢したように見える肌や不健康に見える肌ほど、輝度のヒストグラムにおける分散の値が大きくなる傾向にあることが判明した。この理由は、分散が大きいとこうことは、測定対象部位における色の分布が大きいことを意味しており、色の分布が大きいことは、測定対象部位における肌の色むらが大きいことを意味していると考えられるからである。
【0023】
本発明者らの詳細な検討の結果、後述する測定条件に従い測定された輝度のヒストグラムの分散が40以下である場合には、20才台の若年肌であると判断される。該分散が40超70以下である場合には、30才台の肌であると判断される。該分散が70超120以下である場合には、40才台の肌であると判断される。該分散が120超である場合には、50才台以降の肌であると判断される。
【0024】
このように、本発明によれば、前記ヒストグラムの分散の値の大小によって被験者の肌の状態を評価することができる。また、この分散を、上述した歪度と組み合わせることで、肌の状態を一層精度良く、かつ客観的に評価することが可能となる。
【0025】
次に、本発明の方法を実施するための具体的な手順について説明する。まず、被験者の顔の肌情報を取得する。肌情報の取得に際しては、被験者の肌には、評価の目的に応じ、化粧が施されていてもよく、あるいは施されていなくてもよい。本発明の方法は、被験者の見た目の肌の状態を評価するものであるからである。後述のように、輝度情報をヒストグラム化し、解析するに当たっては、分割する画素のサイズと観察する面積を選ぶ事が重要である。具体的には、画素サイズとしては好ましくは100DPI以上、更に好ましくは250DPI以上に区切る。画素サイズが粗いと画素間での輝度の平均化が生ずるために、視覚的に感知される肌状態がヒストグラムに反映されにくくなる傾向がある。反対に、画素サイズを細かくすると、計算負荷が大きくなったり、ノイズを拾ってしまい視覚的に感知される肌状態がヒストグラムに反映されにくくなる傾向がある。一方、観察する面積としては好ましくは2〜30cm2、更に好ましくは4〜20cm2である。観察面積が狭いと、場所による偏差を拾ってしまい、再現性の良いデータが得られにくい傾向がある。反対に観察面積が広いと、データ量が増え過ぎて解析に時間を要してしまう傾向がある。
【0026】
被験者の顔面における撮像領域は、見た目に最も影響を及ぼす部位である鼻脇からほほ部とすることが好ましい(図3参照)。測定対象部位は、ほくろ、豊令線、目の下のくまなどの明らかな外乱因子を避けて選ぶ。なお、鼻脇などの明らかに不連続な面を抽出するとヒストグラムが二山以上に分離してしまう場合があるが、これを一山とみなして解析しても視覚的に感知される肌状態に相応した歪度及び分散の値を得ることができる。
【0027】
肌情報の取得には、撮像手段を用いた肌の撮像が用いられる。撮像手段に特に制限はなく、従来公知の撮像手段を用いることができる。どのような撮像手段を用いる場合であっても、撮像手段は輝度の階調を表現できることが必要である。撮像の容易さや肌情報のデータ処理の簡便さの観点からは、デジタルカメラを用いることが好ましい。デジタルカメラを用いる場合には、上記の画素サイズを得るためには、解像度の高いものを用いることが、精密な評価を行う観点から有利である。本発明者らの検討の結果、画素数が100万以上のデジタルカメラを用いることによって、満足すべき結果が得られることが判明した。
【0028】
撮像手段を用いた肌の撮像は、蛍光灯等の指向性が小さい光源を被験者の顔面の全域に当てた状態下に行うことが好ましい。そのような条件は、点光源ではなく面状の光源を用いることで達成される。面光源の発光部の好ましい面積は10〜10000cm2、より好ましくは20〜1000cm2である。かかる光源としては、渦巻き蛍光灯、大型のシェードを備えたハロゲン球やLEDなどが挙げられる。本発明の目的においては光源の色に特に制限はないが、その他の視覚情報を同時に取得するためには白色光であることが好ましい。光源から照射される光の強さは、顔面において100〜3000ルクス、特に200〜2000ルクスとすることが好ましい。
【0029】
撮像手段及び光源の設置位置は、本発明の評価方法の精度を高める観点から重要な要素である。詳細には以下のとおりである。光源は被験者の顔面に対向するように設置される。具体的には、水平面でみたときに、被験者の正中線に対して−90〜90度、好ましくは−60〜60度傾斜した位置に設置し、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角−30〜75度、好ましくは−15〜30度の位置に設置する。なお、俯角−30度は仰角30度と同じである。一方、撮像手段は、被験者の正中線に対して、水平面でみたときに−90〜90度、好ましくは−30〜30度傾斜した位置で、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角−30〜75度、好ましくは−15〜30度の位置に設置する。光源〜被写体〜撮像手段のなす角(挟み角)は0〜120度、好ましくは15〜30度に設置する。この範囲を選ぶことで、被験者の顔形や細かい凹凸に影響されずに肌情報を取得することができる。撮像手段と被験者の顔面との距離は用いるレンズの焦点距離や精度によっても異なるが、10〜300cm、特に40〜200cmとすることが好ましい。
【0030】
本発明の評価方法においては、被験者の顔面における肌情報の取得部位も、評価の精度を高める観点から重要な要素である。この観点から、被験者によらず撮像対象部位を一致させるために、被験者の頭部を固定するための顔台を用意することが好ましい。これに加えて、顔台と撮像手段との距離及び顔台と光源との距離が常に一定になるようにするため、撮像手段及び光源は顔台に固定されていることが好ましい。さらに、撮像手段及び光源は、被験者の顔面との方位を独立かつ任意に変えることができるような態様で顔台に固定されていることが好ましい。
【0031】
以上の条件下に撮像手段によって取得された肌情報をデータ処理する。例えば、パーソナルコンピュータ等からなる演算手段を用い、撮像手段で得られた肌情報をこれに取り込み、肌情報のデータから測定対象部位を抽出する。統計処理のために抽出するデータ数は10000点以上あれば充分であり、上述の画素サイズと観察面積の条件を満たせば足りる。細かい画素サイズで広い面積を観察する場合には、範囲内のデータを無作為に抽出して統計処理しても良い。データ抽出範囲の形状に特に制限はなく、円形でも正方形でもよいが、処理の単純化のためには長方形の範囲を選ぶことが好ましい。この測定対象部位において、各画素ごとの輝度を決定する。例えば、演算手段によって、各画素の輝度を0から255までの256段階の階調で表現する。通常のデジタルカメラ等の撮像手段は実際の輝度と記録される像の輝度との関係が線形ではないので、輝度を算出するに先立ち、線形化の補正を行うことが好ましい。具体的には、輝度が既知のグレースケールを同一条件で撮像したもので校正することが好ましい。そして、各階調の輝度の出現頻度をヒストグラム化する。このようにして得られたヒストグラムが、先に述べた図1及び図2に示すものである。
【0032】
得られたヒストグラムを確率分布とみなし、先に述べた式(1)及び式(2)に従い、演算手段によって歪度及び分散を算出する。このようにして、歪度及び分散の値が得られる。この値から、被験者の肌の状態を評価する。
【0033】
以上の評価方法を用いることによって、被験者の肌の状態に応じたスキンケア剤の選択やメイクアップ化粧料の選択を、容易にかつ迅速に行うことができる。例えば、春や夏などの汗ばむ季節でも一日中化粧くずれを起こさず若肌をキープできる、いわゆる「ロングキープ性能」を有する化粧料を適切に選択することができる。また、被験者の体重管理、運動管理、摂取カロリー管理等の非医療目的のアドバイスやカウンセリングを適切に行うことが可能となる。さらに、以上の評価方法は事前の処理が不要で非接触状態で短時間に行われるので、被験者に過度の身体的な負担が加わることもない。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0035】
〔実施例1〕
被験者として年齢23才の健康な女性を採用した。被験者の顔面には化粧を施さず、素肌の状態とした。被験者の頭部を顔台に固定し、被験者の顔面を渦巻き蛍光灯で照らした。顔面の照度は1500ルクスとした。蛍光灯は、水平面でみたときに被験者の正中線に対して15度傾斜した位置であって、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面上の位置に設置した。撮像手段としては、ニコン製のデジタルカメラD1x(ピクセル数533万画素)を用いた。撮像手段は、水平面でみたときに被験者の正中線上の位置であって、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角15度の位置に設置した。撮像手段と被験者の顔面との距離は60cmとした。
【0036】
撮像手段によって取得された肌情報をパーソナルコンピュータに取り込み、肌情報のデータから一辺が400(横)×512(縦)ピクセルの長方形の測定対象部位を抽出した。この測定対象部位において、各画素ごとの輝度を256段階の階調で表現した。輝度を算出するに先立ち、明るさの線形化補正を行った。そして、各階調の輝度の出現頻度をヒストグラム化した。その結果を図4(a)に示す。
【0037】
図4(a)に示すヒストグラムから、上述の式(1)及び(2)を用いて歪度及び分散を算出した。また平均を算出した。それらの結果を図5(a)ないし(c)に示す。なお図5における歪度の値は、実際の算出値を100倍したものである。
【0038】
〔実施例2ないし4〕
被験者として、それぞれ健康である年齢34才の女性(実施例2)、年齢46才の女性(実施例3)及び年齢58才の女性(実施例5)を採用した。各被験者の顔面には化粧を施さず、素肌の状態とした。そして、被験者が異なる以外は実施例1と同様にして、輝度のヒストグラム(図4(b)、(c)及び(d))を得た。さらに、図4(b)、(c)及び(d)に示すヒストグラムから、上述の式(1)及び(2)を用いて歪度及び分散を算出し、さらに平均を算出した。それらの結果を図5(a)ないし(c)に示す。
【0039】
図4(a)ないし(d)に示す結果から明らかなように、輝度のヒストグラムは、被験者の年齢が低いほど、左側にテールが延びた非対称の形状になることが判る。逆に、被験者の年齢が高いほど、右側にテールが延びた非対称の形状になることが判る。また、輝度のヒストグラムは、被験者の年齢が低いほど、ヒストグラムの幅が狭いことが判る。逆に、被験者の年齢が高いほど、ヒストグラムの幅が広いことが判る。
【0040】
また、図5(a)及び(b)に示す結果から明らかなように、被験者の年齢が低いほど、輝度のヒストグラムの歪度が負に大きくなり、被験者の年齢が高いほど、該歪度が正に大きくなることが判る。また被験者の年齢が低いほど、輝度のヒストグラムの分散が0に近づき、被験者の年齢が高いほど、該分散が大きくなることが判る。
【0041】
更に、図5(c)に示す結果から明らかなように、輝度の平均は、被験者の年齢と相関していないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の従い測定された輝度のヒストグラムの一例である。
【図2】本発明の従い測定された輝度のヒストグラムの他の例である。
【図3】被験者の顔面における撮像部位を示す説明図である。
【図4】実施例1ないし4で測定された輝度のヒストグラムである。
【図5】実施例1ないし4で測定された輝度のヒストグラムから算出された歪度及び分散、平均を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の顔面における測定対象部位の輝度を測定してそのヒストグラムを得、該ヒストグラムの形状に基づき、該被験者の顔面の肌の状態を評価する、肌状態の評価方法であって、
光源の設置位置を、被験者の正中線に対して、水平面でみたときに−90〜90度傾斜した位置で、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角−30〜75度の位置とし、撮像手段の設置位置を、被験者の正中線に対して、水平面でみたときに−90〜90度傾斜した位置で、かつ鉛直面でみたときに被験者の顔面を通る水平面に対して俯角−30〜75度の位置とし、
前記光源からの光で被験者の顔面を照らした状態下に、被験者の顔面における前記測定対象部位を前記撮像手段で撮像して肌情報を取得し、
取得された前記肌情報に基づき前記ヒストグラムを得ることを特徴とする肌状態の評価方法。
【請求項2】
前記撮像手段と前記被験者の顔面との距離を10〜300cmとし、前記被験者の顔面の照度を100〜3000ルクスとし、前記被験者の鼻脇からほほ部を撮像領域とする請求項1記載の肌状態の評価方法。
【請求項3】
前記ヒストグラムの歪度の程度に基づき肌状態を評価する請求項1又は2に記載の肌状態の評価方法。
【請求項4】
前記ヒストグラムの歪度が、負の非対称分布になるほど若年肌であり、正の非対称分布になるほど加齢肌であると判断する請求項3に記載の肌状態の評価方法。
【請求項5】
前記ヒストグラムの分散の程度に基づき肌状態を評価する請求項1ないし4のいずれかに記載の肌状態の評価方法。
【請求項6】
前記ヒストグラムの分散が小さいほど若年肌であり、大きいほど加齢肌であると判断する請求項5記載の肌状態の評価方法。
【請求項7】
前記測定対象部位を複数の小区画に区分し、各小区画の輝度の値に基づき前記ヒストグラムを得る請求項1ないし7のいずれかに記載の肌状態の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−131336(P2009−131336A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308100(P2007−308100)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】