説明

肘関節脱臼整復実習模型

【課題】実際に近い操作感を再現しながら、製造コストの低減化及び高信頼化を図ることができる、普及しやすい肘関節脱臼整復実習模型を提供する。
【解決手段】上腕骨遠位端に相当する部分及び前腕骨近位端に相当する部分が形成された上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3と、肘関節後方脱臼に相当する状態で関節頭2Aを係合させる、前腕骨模擬体3に設けられた係合凹部4と、上腕骨模擬体2遠位端部から近位へ離間した第1位置と前腕骨模擬体3の肘頭部との間を引っ張るように弾性付勢する第1の弾性体5と、上腕骨模擬体2の前記第1位置よりも屈側の第2位置と前腕骨模擬体3の当止部4よりも伸側の位置との間を引っ張るように弾性付勢する第2の弾性体6とを備え、正常状態と肘関節後方脱臼状態との間で弾性体5,6と干渉しないように、上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3に逃げ溝2B,3Bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肘関節脱臼の整復技術を習得するための実習に用いる模型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柔道整復術は、骨・関節・筋・腱・靭帯など運動器に加わる急性、亜急性の原因によって発生する骨折・脱臼・捻挫・挫傷・打撲などの損傷に対し、手術をせずに手技によって整復・固定・後療等を行う治療術であり、柔道整復師が患部の検査や施術を行う際には、全神経を指先に集中させた指先の高度な感覚が必要になる。
このような指先の高度な感覚を身につける必要がある柔道整復師になるためには、専門学校等での学習・実習が必要であり、学生が急増している現状において、臨床の現場以外で整復技術を習得するための整復実習模型(人体模型教材)の普及が望まれている(例えば、特許文献1参照。)。
このような整復実習模型として、橈骨遠位端骨折の整復実習用のもの(特許文献1参照。)や、肩関節脱臼の整復実習用のもの(特許文献2参照。)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3144317号公報
【特許文献2】登録実用新案第3157322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように普及が望まれている整復実習模型において、肩関節脱臼に次いで頻度が高い、肘関節伸展位で手掌を衝き転倒した際等に上腕骨遠位端部が前腕骨の遠位へ転位して前腕が上腕の後方へ転位する肘関節脱臼(後方脱臼)の整復実習用のものは見受けられない。
また、整復実習用模型を普及させるためには、指先の高度な感覚を身につけることができるように実際の徒手整復に近い操作感を再現しながら、低価格化及び高信頼化を図ることができる構造にする必要がある。
【0005】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、実際の徒手整復に近い操作感を再現しながら、簡素な構成により製造コストを低減することができるとともに、繰り返し使用に適した信頼性を確保することができ、実用的で普及しやすい肘関節脱臼整復実習模型を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る肘関節脱臼整復実習模型は、前記課題解決のために、肘関節脱臼の整復技術を習得するための実習に用いる模型であって、肘関節を模して上腕骨遠位端に相当する部分及び前腕骨近位端に相当する部分がそれぞれ形成された上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体と、前記上腕骨模擬体遠位端部の関節頭が前記前腕骨模擬体近位端部の関節窩から外れて前記前腕骨模擬体の遠位へ転位した肘関節脱臼に相当する状態で前記関節頭を係合させる、前記前腕骨模擬体の屈側に設けられた係合凹部と、前記上腕骨模擬体の遠位端部から近位へ離間した第1位置と前記前腕骨模擬体の肘頭部との間を引っ張るように弾性付勢する第1の弾性体と、前記上腕骨模擬体の前記第1位置よりも屈側の第2位置と前記前腕骨模擬体の前記係合凹部よりも伸側の位置との間を引っ張るように弾性付勢する第2の弾性体とを備え、前記上腕骨模擬体遠位端部の関節頭が前記前腕骨模擬体近位端部の関節窩に係合した正常状態と前記肘関節脱臼に相当する状態との間で前記第1の弾性体及び第2の弾性体と干渉しないように、前記上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体に逃げ溝を形成してなることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、上腕骨遠位端部が前腕骨の遠位へ転位して前腕が上腕の後方へ転位する肘関節脱臼(後方脱臼)の際に、前記転位による相対位置変化が筋肉、靱帯及び腱等により制限された状態が、前腕骨模擬体の屈側に設けられた係合凹部により再現されるとともに、肘関節脱臼を整復する際の操作力が、主に第1の弾性体及び第2の弾性体の復元力により再現される。その上、上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体に逃げ溝が形成されているため、整復操作の際に、前記操作力を付与する第1の弾性体及び第2の弾性体が上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体と干渉することがない。
よって、実際の徒手整復に近い操作感を再現することが容易な構成でありながら、簡素な構成により製造コストを低減することができるとともに、繰り返し使用に適した信頼性を確保することができる。
【0008】
ここで、前記第1の弾性体及び第2の弾性体の張力を調節する張力調節手段を備えてなると好ましい。
このような構成によれば、張力調節手段を操作することにより、実際の徒手整復に近い操作感を再現するために熟練者が行う調節を容易に行うことができるとともに、製作した多数の肘関節脱臼整復実習模型における整復実習時の操作感のばらつきを小さくすることができる。
【0009】
また、前記第1の弾性体及び第2の弾性体が引張コイルばねであり、前記張力調節手段がターンバックルであると好ましい。
このような構成によれば、第1の弾性体及び第2の弾性体並びに張力調節手段を、簡素な構成で長期間にわたって動作の信頼性が高く値段が安い引張コイルばね及びターンバックルにより構成しているため、さらに製造コストの低減化及び高信頼化を図ることができるとともに、ターンバックルの胴部を回動させることにより引張コイルばねの張力調節を容易に行うことができる。
【0010】
さらに、前記上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体の少なくとも肘関節周りを、軟部組織を模した軟質素材で被覆してなると好ましい。
このような構成によれば、肘関節周りが軟部組織を模した軟質素材で被覆されているため、肘関節脱臼に相当する状態にした際に実際の肘関節脱臼に近い状態を目視することができ、整復操作をする際の触感が実際に近いものになるとともに、軟質素材が不透明である場合には、内部が見えない状態で整復できたことを確認することが求められる整復実習に好適なものとなる。
その上、透明の軟質合成樹脂素材で形成した軟質素材で肘関節周りを被覆した肘関節脱臼整復実習模型も製作しておくことにより、肘関節脱臼の整復前後の肘関節の状況を視認することができるため、整復実習をより効率的に進めることができる。
【0011】
さらにまた、前記上腕骨模擬体の近位端部に回転関節又は球面関節を設けてなると好ましい。
このような構成によれば、上腕骨模擬体近位端部の回転関節又は球面関節により肘関節脱臼整復実習模型の肘関節の向きを自由に変更することができるため、整復を行う際の実際の腕の姿勢に近い状態を再現しながら整復実習を行うことができる。
【0012】
また、前記上腕骨模擬体を上腕骨遠位端部から上腕骨の途中までの部分に相当する長さとして上腕の近位部を模した上腕近位部模型に取り付け、前記前腕骨模擬体を前腕骨近位端部から前腕骨の途中までの部分に相当する長さとして前腕の遠位部を模した前腕遠位部模型に取り付けて腕模型とし、該腕模型の前記上腕骨模擬体及び上腕近位部模型間並びに前記前腕骨模擬体及び前腕遠位部模型間に回転関節を設けるとともに、前記腕模型を人体又は人体模型に装着する装着手段を備えてなると好ましい。
このような構成によれば、装着手段で人体又は人体模型に装着した人の腕に近い肘関節脱臼整復実習模型により、整復される受傷者の実際の姿勢並びに整復を行う術者及び助手の実際の動作を再現することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る肘関節脱臼整復実習模型によれば、簡素かつ動作が確実な構成により、肘関節脱臼(後方脱臼)の実際に近い状態が再現され、徒手整復の際における実際に近い操作感を再現することができ、製造コストを低減することができるとともに、繰り返し使用に適した信頼性を確保することができるため、実用的で普及しやすいという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る肘関節脱臼整復実習模型を人に装着した状態を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る肘関節脱臼整復実習模型の肘部周りの構造を示す分解斜視図である。
【図3】上腕骨模擬体遠位端部の関節頭が前腕骨模擬体近位端部の関節窩に係合した正常状態を示す斜視図である。
【図4】上腕骨模擬体遠位端部の関節頭が前腕骨模擬体近位端部の関節窩から外れて前腕骨模擬体の遠位へ転位した肘関節脱臼に相当する状態を示す斜視図である。
【図5】縦断側面図であり、(a)は肘関節脱臼に相当する状態を、(b)は整復が完了した状態を示している。
【図6】張力調節手段を備えた構成を示す縦断側面図であり、(a)は肘関節脱臼に相当する状態を、(b)は整復が完了した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係る肘関節脱臼整復実習模型1は、上腕の近位部を模した上腕近位部模型A1に上腕骨模擬体2近位端部を回転関節(回り対偶)11により略骨軸(長軸)まわりに回転可能に取り付けるとともに、前腕の遠位部を模した前腕遠位部模型A2に前腕骨模擬体3遠位端部を回転関節(回り対偶)12により略骨軸(長軸)まわりに回転可能に取り付けてなる腕模型Aとして構成され、装着手段である装着帯Bにより人体等に装着して使用することができる。
また、上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3には、関節頭2A及び関節窩3A等により肘関節を模して上腕骨遠位端に相当する部分及び前腕骨近位端に相当する部分がそれぞれ形成され、前腕骨模擬体3の屈側には、図4及び図5(a)に示す関節頭2Aが関節窩3Aから外れて前腕骨模擬体3の遠位へ転位した肘関節脱臼に相当する状態で関節頭2Aを係合させる係合凹部4が形成される。
なお、前腕骨は、実際は橈骨及び尺骨の2本の骨により構成されるが、模型の簡素化のために一体化している。
【0016】
図2に示すように、上腕骨模擬体2の遠位端部から近位へ離間(肘関節から略骨軸(長軸)方向へ離間)した第1位置(例えば掛止ピン7Aの位置)と前腕骨模擬体3の肘頭部(例えば掛止ピン7Bの位置)との間を引っ張るように弾性付勢する第1の弾性体である第1の引張コイルばね5が、その端末5A,5Bを掛止ピン7A,7Bに掛止することにより取り付けられる。
また、前記第1位置(例えば掛止ピン7Aの位置)よりも屈側の第2位置(例えば掛止ピン8Aの位置)と、前腕骨模擬体3の係合凹部4よりも伸側の位置(例えば掛止ピン8Bの位置)との間を引っ張るように弾性付勢する第2の弾性体である第2の引張コイルばね6が、その端末6A,6Bを掛止ピン8A,8Bに掛止することにより取り付けられる。
なお、第1の弾性体及び第2の弾性体は、引張コイルばねに限定されるものではなく、ゴムチューブやゴム紐等の弾性体であってもよい。
【0017】
さらに、図3及び図5(b)に示す上腕骨模擬体2遠位端部の関節頭2Aが前腕骨模擬体3近位端部の関節窩3Aに係合した正常状態と、図4及び図5(a)に示す前記肘関節脱臼に相当する状態との間で、上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3と第1の引張コイルばね5及び第2の引張コイルばね6とが干渉しないように、上腕骨模擬体2には、例えば鼓状の上腕骨滑車の中間部分を近位へ長く屈側から伸側へ貫通させるように切り欠いた逃げ溝2Bが、前腕骨模擬体3には、例えば鉤状突起の中間部分を伸側へ段落ちさせるように遠位へ前記係合凹部4の伸側まで切り欠いた逃げ溝3Bが形成される。
【0018】
以上のような構成によれば、上腕骨遠位端部が前腕骨の遠位へ転位して前腕が上腕の後方へ転位する肘関節脱臼(後方脱臼)の際に、前記転位による相対位置変化が筋肉、靱帯及び腱等により制限された状態が、図4及び図5(a)に示す前腕骨模擬体3の屈側に設けられた係合凹部4により再現されるとともに、図4及び図5(a)の肘関節脱臼に相当する状態から図3及び図5(b)の正常状態まで徒手整復する際の操作力が、主に第1の弾性体である第1の引張コイルばね5及び第2の弾性体である第2の引張コイルばね6の復元力により再現される。
ここで、図5(a)に示す前記肘関節脱臼に相当する状態における上腕骨模擬体2の骨軸(長軸)方向と前腕骨模擬体3の骨軸(長軸)方向とがなす角度Dを、実際の肘関節脱臼における上腕骨の骨軸(長軸)方向と前腕骨の骨軸(長軸)方向とがなす角度に近い約30°に設定している。
なお、引張コイルばね5,6は、図5(a)に示す前記肘関節脱臼に相当する状態から図5(b)に示す前記正常状態へ整復する間における引張コイルばね5,6のストローク(引張コイルばね5,6の伸びの変化量)が定まるため、材質、線径、コイル径及び巻数を変えて自由長さやばね定数等の特性を変化させた複数の引張コイルばねを付け替えなから、例えば専門学校の柔道整復師学科の教師等の熟練した柔道整復師が、整復実習模型1を操作して、徒手整復する際の操作力を確認しながら、実際の操作力に近くなるものを選定すればよい。
【0019】
また、上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3に逃げ溝2B,3Bが形成されているため、整復操作の際に、前記操作力を付与する第1の引張コイルばね5及び第2の引張コイルばね6が上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3と干渉することがない。
よって、実際の徒手整復に近い操作感を再現することが容易な構成でありながら、簡素な構成により製造コストを低減することができるとともに、繰り返し使用に適した信頼性を確保することができる。
【0020】
さらに、図6に示すように、第1の引張コイルばね5及び第2の引張コイルばね6に対して、これらとそれぞれ直列に張力調節手段であるターンバックル9,10を取り付けることにより、第1の引張コイルばね5及び第2の引張コイルばね6の張力をそれぞれ個別に調節することができる。
すなわち、ターンバックル9,10の胴部9A,10Aには、両端部の一方に右ネジ、他方に左ネジが形成されており、ボルト9B,9C,10B,10Cが螺合しているため、胴部9A,10Aを回動させることにより引張コイルばね5,6の張力調節を行うことができる。
なお、第1の弾性体及び第2の弾性体の張力を調節する張力調節手段は、ターンバックルに限定されるものではなく、例えば、前記第1位置(例えば掛止ピン7Aの位置)及び第2位置(例えば掛止ピン8Aの位置)を可変にして適宜位置に固定することにより張力調節を行ってもよい。
【0021】
このような構成によれば、張力調節手段(ターンバックル9,10等)を操作することにより、実際の徒手整復に近い操作感を再現するために熟練者が行う調節を容易に行うことができるとともに、製作した多数の肘関節脱臼整復実習模型1,1,…を個別に調整することにより、多数の肘関節脱臼整復実習模型1,1,…における整復実習時の操作感のばらつきを小さくすることができる。
また、第1の弾性体及び第2の弾性体並びに張力調節手段を、簡素な構成で長期間にわたって動作の信頼性が高く値段が安い引張コイルばね5,6及びターンバックル9,10により構成することにより、さらに製造コストの低減化及び高信頼化を図ることができるとともに、ターンバックル9,10の胴部9A,10Aを回動させることにより引張コイルばね5,6の張力調節を容易に行うことができる。
【0022】
さらに、図1及び図3〜図6に示すように、例えばシリコーンゴムやウレタンゴム等の軟質合成樹脂素材で形成した、皮膚、皮下組織及び筋肉等の軟部組織を模した軟質素材Cで上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3の肘関節周りを被覆することにより、肘関節脱臼に相当する状態にした際に実際の肘関節脱臼に近い状態を目視することができ、整復操作をする際の触感が実際に近いものになるとともに、軟質素材Cが不透明である場合には、内部が見えない状態で整復できたことを確認することが求められる整復実習に好適なものとなる。
さらにまた、軟質素材Cを不透明とした肘関節脱臼整復実習模型1とともに、例えば高透明シリコンーンゴム等の透明の軟質合成樹脂素材で形成した軟質素材Cで上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3の肘関節周りを被覆した肘関節脱臼整復実習模型1も製作しておくことにより、軟質素材Cが透明であることから肘関節脱臼の整復前後の肘関節の状況を視認することができるため、整復実習をより効率的に進めることができる。
なお、軟質素材Cにより上腕骨模擬体2及び前腕骨模擬体3の肘関節周りを被覆する構成では、図4及び図5(a)の肘関節脱臼に相当する状態から図3及び図5(b)の正常状態まで徒手整復する際に軟質素材Cも変形するため、軟質素材Cも操作力を及ぼすことになる。
【0023】
また、図2〜図4に示すように、上腕骨模擬体2を上腕骨遠位端部から上腕骨の途中までの部分に相当する長さとしてその近位端部に回転関節11を構成する円板11Aを設け、前腕骨模擬体3を前腕骨近位端部から前腕骨の途中までの部分に相当する長さとしてその遠位端部に回転関節12を構成する円板12Aを設けており、図5及び図6に示すように円板11Aを上腕近位部模型A1の遠位端部の回転関節11を構成するハウジング11Bに収容し、円板12Aを前腕遠位部模型A2の近位端部の回転関節12を構成するハウジング12Bに収容して図1に示す腕模型Aとし、腕模型Aを装着手段である装着帯Bにより人体(あるいは、人体模型であってもよい。)に装着することにより、整復される受傷者の実際の姿勢並びに整復を行う術者及び助手の実際の動作を再現しながら、例えば臥位整復法や肘頭圧迫屈曲整復法による整復実習を行うことができる。
なお、回転関節11,12は、本実施の形態のような円板11A,12Aをハウジング11B,12Bにより支持する構成に限定されるものではなく、すべり軸受や玉軸受等を用いた構成にしてもよく、略骨軸(長軸)まわりに約180°程度の相対的な回転をすることができる構成であればよい。
【0024】
さらに、上腕骨模擬体2の近位端部に回転関節11を設けることにより、上腕骨模擬体2近位端部の回転関節11により肘関節脱臼整復実習模型1の肘関節の向きを自由に変更することができるため、整復を行う際の実際の腕の姿勢に近い状態を再現しながら整復実習を行うことができる。
なお、上腕骨模擬体2を上腕骨全体の長さとしてその近位端部に肩関節を模した球面関節(球面対偶)を設けてもく、このような構成によっても、球面関節により肘関節脱臼整復実習模型1の肘関節の向きを自由に変更することができるため、整復を行う際の実際の腕の姿勢に近い状態を再現しながら整復実習を行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
A 腕模型
A1 上腕近位部模型
A2 前腕遠位部模型
B 装着帯(装着手段)
C 軟部組織を模した軟質素材
1 肘関節脱臼整復実習模型
2 上腕骨模擬体
2A 関節頭
2B 逃げ溝
3 前腕骨模擬体
3A 関節窩
3B 逃げ溝
4 係合凹部
5 第1の引張コイルばね(第1の弾性体)
5A,5B 端末
6 第2の引張コイルばね(第2の弾性体)
6A,6B 端末
7A,7B,8A,8B 掛止ピン
9,10 ターンバックル(張力調節手段)
9A,10A 胴部
9B,9C,10B,10C ボルト
11,12 回転関節(回り対偶)
11A,12A 円板
11B,12B ハウジング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肘関節脱臼の整復技術を習得するための実習に用いる模型であって、
肘関節を模して上腕骨遠位端に相当する部分及び前腕骨近位端に相当する部分がそれぞれ形成された上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体と、
前記上腕骨模擬体遠位端部の関節頭が前記前腕骨模擬体近位端部の関節窩から外れて前記前腕骨模擬体の遠位へ転位した肘関節脱臼に相当する状態で前記関節頭を係合させる、前記前腕骨模擬体の屈側に設けられた係合凹部と、
前記上腕骨模擬体の遠位端部から近位へ離間した第1位置と前記前腕骨模擬体の肘頭部との間を引っ張るように弾性付勢する第1の弾性体と、
前記上腕骨模擬体の前記第1位置よりも屈側の第2位置と前記前腕骨模擬体の前記係合凹部よりも伸側の位置との間を引っ張るように弾性付勢する第2の弾性体とを備え、
前記上腕骨模擬体遠位端部の関節頭が前記前腕骨模擬体近位端部の関節窩に係合した正常状態と前記肘関節脱臼に相当する状態との間で前記第1の弾性体及び第2の弾性体と干渉しないように、前記上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体に逃げ溝を形成してなることを特徴とする肘関節脱臼整復実習模型。
【請求項2】
前記第1の弾性体及び第2の弾性体の張力を調節する張力調節手段を備えてなる請求項1記載の肘関節脱臼整復実習模型。
【請求項3】
前記第1の弾性体及び第2の弾性体が引張コイルばねであり、前記張力調節手段がターンバックルである請求項2記載の肘関節脱臼整復実習模型。
【請求項4】
前記上腕骨模擬体及び前腕骨模擬体の少なくとも肘関節周りを、軟部組織を模した軟質素材で被覆してなる請求項1記載の肘関節脱臼整復実習模型。
【請求項5】
前記上腕骨模擬体の近位端部に回転関節又は球面関節を設けてなる請求項1記載の肘関節脱臼整復実習模型。
【請求項6】
前記上腕骨模擬体を上腕骨遠位端部から上腕骨の途中までの部分に相当する長さとして上腕の近位部を模した上腕近位部模型に取り付け、前記前腕骨模擬体を前腕骨近位端部から前腕骨の途中までの部分に相当する長さとして前腕の遠位部を模した前腕遠位部模型に取り付けて腕模型とし、該腕模型の前記上腕骨模擬体及び上腕近位部模型間並びに前記前腕骨模擬体及び前腕遠位部模型間に回転関節を設けるとともに、前記腕模型を人体又は人体模型に装着する装着手段を備えてなる請求項1記載の肘関節脱臼整復実習模型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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