肝性脳症を治療する方法
本願は、胃腸特異的抗生物質を使用した肝性脳症の治療を記載する。胃腸特異的抗生物質の一例はリファキシミンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2008年10月2日出願の米国仮出願第61/102,349号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
肝性脳症(HE)は、肝不全および門脈系シャントに関連した神経学的機能の可逆的な減少により引き起こされる。HEは、米国(US)で報告された劇症肝不全の場合、肝硬変3例中1例で発生し、末期肝疾患に到達する患者のほぼ半分に存在する。いかなる年齢でも発生し得るが、そのピークは、劇症肝疾患(ピーク=40代)および肝硬変(ピーク=50代後半)のピークと平行する。
【0003】
HEの発生率は、一般集団におけるC型肝炎、および高齢患者における肝硬変の発生率と共に増加する可能性が高い。急性HEは、深刻な予後を示し、1年間の生存の可能性は40%である。HEを治療し予防するための組成物および方法が、当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
概要
肝性脳症の予防および治療のための組成物および方法が、本明細書に提供される。
【0005】
一つの態様は、対象へ胃腸(GI)特異的抗生物質を投与する工程を含む、対象における肝性脳症(HE)を治療または予防する方法である。一つの態様において、GI特異的抗生物質はリファキシミンである。別の態様において、リファキシミンは1100mg/日のリファキシミンである。
【0006】
別の態様は、HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与することにより、対象の肝性脳症HEブレークスルーエピソードのリスクを低下させる方法である。
【0007】
さらに別の態様は、HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与することにより、対象における肝性脳症の寛解を維持する方法である。
【0008】
さらに別の態様は、HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、HE患者による入院診療の頻度を低下させる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プラセボを摂取している対象とリファキシミンを摂取している対象との間のラクツロース1日使用量を比較する折れ線グラフである。
【図2】ブレークスルーHEイベントまでの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図3】最初のHE関連入院までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図4】Connスコアの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図5】アステリクシスグレードの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図6】最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)(ITT集団)。
【図7】第1試験(リファキシミン群とプラセボ群との比較)および第2試験(新リファキシミン群)における最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間の比較である。
【図8】第2試験でリファキシミンを開始した第1試験のプラセボ対象における、プラセボ経験中(第1試験)、およびリファキシミン経験へのクロスオーバーの後(第2試験)の、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間の比較を示す。
【図9】最初のHE関連入院までの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)。
【図10】第1試験における最初のHE原因入院までの時間を示す(ITT集団)。
【図11】Connスコアの最初の増加までの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)(ITT集団)。
【図12】アステリクシスグレードの最初の増加までの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)(ITT集団)。
【図13】第1試験においてHEエピソードを有しなかった継続リファキシミン対象についての、プラセボと比較した、最初のブレークスルーHEまでの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
HEの主要な病原は、脳機能に悪影響を及ぼす消化管由来の窒素化合物に関係している。これらの化合物のうちの最も影響力のあるものは、通常は肝臓によって解毒されるタンパク質消化の副産物、アンモニアであると考えられる。しかしながら、肝硬変における血中レベルと精神状態との相関は不正確である。それは、部分的には、アンモニアに対する血液脳関門の透過性が、HEを有する患者においては増加しているためである。その他の消化管由来の毒素も、HEの原因であるとして提唱されている。
【0011】
慢性肝疾患を有する患者において、肝性脳症の発生は、HEのない同年齢の患者と比較して、低い生活の質に関連している。顕性HEエピソードは、消耗性であり、警告なしに現われることがあり、患者のセルフケア能力を奪い、高頻度に入院をもたらす。HEを有する患者は、疲労、昼間の眠気、および意識の低下(Connスコア1);ならびに日々の活動に有意に干渉する錯乱および見当識障害(Connスコア2)、ならびにセルフケア能力の低下を含む症状を経験する。しばしば、このセルフケアの喪失は、不適切な栄養と治療へのノンアドヒアランスとをもたらし、さらに、傾眠の増加、重度の見当識障害、および昏迷(Connスコア3)、または昏睡(Connスコア4)のような、より重度の症状へと進行する。
【0012】
顕性HEエピソードの履歴およびHEエピソードの重症度は、慢性肝疾患を有する患者における生存の減少も予測することが見出された。肝硬変および顕性HEエピソードの履歴を有する患者において、生存の確率は、HEエピソードの経験後、1年目で42%、3年目で23%であった。別の分析において、肝硬変を有する患者におけるConnスコア2のHEエピソードの発生は、死亡のリスクの4倍の増加に関連していた。
【0013】
これらの毒性化合物は、肝機能の低下または門脈系シャントの結果として体循環へ進入する。一旦脳組織に入ると、化合物は、意識および行動に影響を与える神経伝達の改変を生ずる。HEは、γアミノ酪酸(GABA)の興奮およびグルタミン酸の神経伝達の減少をもたらす窒素化合物による全体的な中枢神経系抑圧に起因する。
【0014】
誘発因子には、窒素血症(29%)、鎮静剤、精神安定剤、鎮痛薬(24%)、胃腸出血(18%)、過剰の食事性タンパク質(9%)、代謝性アルカローシス(11%)、感染(3%)、便秘(3%)が含まれる。手術、特に、経頸静脈的肝内門脈体循環短絡術(TIPS)手技も、HEを誘発することがある。未知の原因によるHEは、症例の2%のみを占める。
【0015】
初期の発現は無症候性であり、診断には心理測定的な検査を必要とする。より詳細に以下に記述されるように、ステージ0(人格の検出可能な変化の欠如)からステージ4(昏睡、除脳硬直状態、散大瞳孔)までの範囲の、ウエストヘイブン(West Haven)基準(またはConnスコア)として公知の4つの障害の進行期が存在する。
【0016】
HEは、精神運動機能障害、記憶障害、反応時間増加、感覚異常、集中力低下の連続体として、そして重度の型では昏睡として発現する。変化は、人格、意識、行動、および神経筋肉機能において観察され得る。神経学的兆候には、反射亢進、硬直、ミオクローヌス、およびアステリクシス(筋肉の粗大な「羽ばたき」振戦)が含まれ得る。線で数字をつなぐことのような認知課題が異常になることがある。肝性口臭(甘い呼気臭)が存在することもある。脳波(EEG)追跡は、主として前頭野において、非特異的な遅い三相波活動を示す。プロトロンビン時間が延長され、ビタミンKによって修正可能でないことがある。頭部のコンピューター断層撮影スキャンは、正常である場合もあるし、または全般的な委縮を示す場合もある。最後に、黄疸および腹水のような肝疾患の兆候が認められることもある。
【0017】
HEの診断は、病歴、ならびに身体状態および精神状態の調査に基づき行われ、必要とされる臨床的な要素は、現存の肝疾患の知識、誘発因子、および/または過去のHEの履歴である。EEGは、軽度の症例ですら、徐波活動を示すことがある。血清アンモニアレベルの上昇は、特徴的であるが、不可欠ではなく、脳症のレベルと不十分に相関する。
【0018】
慢性HEを有する患者の管理には、(1)支持療法の準備、(2)誘発因子の同定および除去、(3)消化管からの窒素負荷の低下、ならびに(4)長期治療の必要性の査定が含まれる。消化管からの窒素負荷は、典型的には、非吸収性二糖(ラクツロース)および/または抗生物質を使用して低下させられる。
【0019】
ラクツロースは、米国において一次治療と見なされているが、HEの治療にも予防にも米国では現在認可されていない。ラクツロースは、結腸の腸内細菌によって代謝され、それが、糞便のpHの低下、次いで、緩下効果をもたらし、最終的に、糞便の排除をもたらす。糞便のpHの低下によって、アンモニア(NH3)がアンモニウムイオン(NH4+)へとイオン化され、それが、細菌によって、アミノ酸およびタンパク質の合成のため使用される。これは、血清アンモニアレベルを低下させ、精神機能を改善する。
【0020】
従来の治療は、アンモニアの産生および吸収を低下させることを目標としている。ラクツロースは、典型的には、30〜60gの用量で毎日使用される。しかしながら、用量は、1日2〜3回の半形成便の便通が起こるよう20〜40g TID〜QIDまで滴定され得る。ラクツロースを経口的にまたは経鼻胃管によって投与することができない場合、例えば、ステージ3および4のHEを有する患者には、300cc(200g)の停留浣腸として与えてもよい。
【0021】
急性脳症のため、ラクツロースは、経口的に、内服もしくは経鼻胃管を通して、または停留浣腸を介して投与され得る。通常の経口用量は30gであり、排泄が起こるまで、1〜2時間毎に投薬が続けられる。その時点で、投薬は、毎日2回または3回の軟便の便通を達成するため調整される。
【0022】
ラクツロースは、店頭で容易に入手可能である。商業的には「経口溶液用のラクツロース粉末」としばしば呼ばれる、便利で、比較的無味の製剤が、例えば、Bertek Pharmaceuticals(Sugarland, Tex)から、Kristalose(登録商標)として、10および20gmの小包で入手され得る。緩下薬として一般的に販売されているラクツロースシロップには、Cephulac(登録商標)、Chronulac(登録商標)、Cholac(登録商標)、およびEnulose(登録商標)が含まれる。これらのシロップは、ラクツロースの所望の投薬量を提供するために十分なシロップを使用することにより、ラクツロース粉末の代わりに用いられ得る;典型的には、名前を挙げられたシロップは、シロップ15ml中に約10gmのラクツロースを含有している。
【0023】
ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびパロモマイシンを含む広域性のGI活性抗生物質が、ラクツロースと共に、またはラクツロースなしで使用されている。現在の指針は、定期的に腎臓をモニタリングし、毎年聴覚をモニタリングしながらの、1〜2g/日のネオマイシンの内服、または250のメトロニダゾールを推奨している。ラクツロースは、下痢を誘導して、HEの誘発因子である脱水をもたらすことがある。さらに、ラクツロースに関するコンプライアンスは、その過度に甘い味が患者に嫌われることから制限されている。さらに、排便習慣に連結された投薬スケジュール、ならびに鼓腸、腹部膨満、下痢(脱水をもたらす)、およびアシドーシスという副作用のため、ラクツロースを長期使用することは困難である。
【0024】
HEの治療における抗生物質の使用は、長期使用に関連した毒性によって妨げられる。特に、ネオマイシン、メトロニダゾール、およびアンピシリンの全身吸収は、腎毒性、聴器毒性、腸炎(S.enterocolitis)、および/または耐性菌株の発達の稀な例をもたらしている。さらに、ネオマイシンは、好気性菌のみを阻害する。メトロニダゾールは、肝機能障害を有する患者においては代謝が遅く、アルコール相互作用の可能性を有し(ジスルフィラム様効果)、および高い血中レベルは発作をもたらす場合がある。
【0025】
一つの胃腸特異的抗生物質はリファキシミンである。リファキシミンは、リファマイシンOに由来する非アミノグリコシド系半合成抗生物質である。それは、GI管の腸管病原体に特異的な、非全身性、非吸収性、広域性の経口抗生物質である。リファキシミンは、従来使用されている抗生物質と比べて、HEの治療において有利であることが見出された;例えば、食物摂取またはGI疾患の存在に関わらず、全身吸収が無視し得る程度であり(<0.4%)、高用量または反復投与でも血漿蓄積を示さない。全身吸収の欠如のため、リファキシミンは安全で、よく容認され、従って、患者のコンプライアンスを改善し、現在公知の治療に関連した副作用を低下させる。
【0026】
リファキシミン(INN;The Merck Index, XIII Ed., 8304を参照のこと)は、抗生物質のリファマイシン系に属する抗生物質、例えば、ピリドイミダゾリファマイシンである。リファキシミンは、例えば、胃腸管において、感染性下痢、過敏性腸症候群、小腸内細菌過剰繁殖、クローン病、および/または膵機能不全を引き起こす限局性の胃腸細菌に対して広い抗菌活性を発揮する。リファキシミンは、その化学的特徴および物理的特徴のため、無視し得る程度の全身吸収を特徴とすることが報告されている(Descombe JJ. et al. Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers. Int J Clin Pharmacol Res, 14 (2), 51-56, (1994))。
【0027】
リファキシミンは、イタリア特許IT 1154655およびEP 0161534に記載されている。EP特許0161534は、出発材料としてリファマイシンOを使用したリファキシミン作製の方法を開示している(The Merck Index, XIII Ed., 8301)。US 7,045,620 B1は、リファキシミンの多形相を開示している。ここで言及された出願および特許は、全ての目的のため、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
リファマイシン系抗生物質は、例えば、式I:
の構造を有する化合物であり、
式中、Aは、構造A1:
または構造A2
であり得、-x-は共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず;Rは水素またはアセチルであり;R1およびR2は、独立に、水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、ジ(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、(C1-3)アルコキシ-(C1-4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2-4)-アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2は、ピリジン核の2個の連続している炭素原子と共に、置換されていないか、もしくは1個もしくは2個のメチル基もしくはエチル基によって置換されているベンゼン環を形成し;R3は水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない。
【0029】
Aが上に示されたようなA1またはA2であり、-x-が共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず、Rが水素またはアセチルであり、R1およびR2が、独立に、水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ-(C2-4)アルキル、ジ(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2が、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と共に、ベンゼン環を形成し、R3が水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0030】
Aが上に示されたようなA1またはA2であり、-x-が共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず、Rがアセチルであり、R1およびR2が、独立に、水素、(C1-4)アルキルを表すか、またはR1およびR2が、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と共に、ベンゼン環を形成し、R3が水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0031】
4-デオキシ-4'-メチル-ピリド[1',2'-1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。4-デオキシ-ピリド[1',2':1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0032】
Aが上に示された通りであり、-x-が共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず;Rが水素またはアセチルであり;R1およびR2が、独立に、水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ(C1-3)アルキルアミノ(C1-4)アルキル、ジ(C1-3)アルキルアミノ(C1-4)アルキル、(C1-3)アルコキシ-(C1-4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2-4)アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2が、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と共に、置換されていないか、もしくは1個もしくは2個のメチル基もしくはエチル基によって置換されているベンゼン環を形成し;R3が水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0033】
リファキシミンは式II:
の構造を有する化合物である。
【0034】
ある種の態様において、抗生物質には、リファマイシン系、アミノグリコシド系、アンフェニコール(amphenicol)系、アンサマイシン系、β-ラクタム系、カルバペネム系、セファロスポリン系、セファマイシン系、モノバクタム系、オキサセフェム(oxacephem)系、リンコサミド系、マクロライド系、ポリペプチド系、テトラサイクリン系、または2,4-ジアミノピリミジン系の抗生物質のうちの一つまたは複数が含まれる。これらの系の例示的な抗生物質は以下にリストされる。
【0035】
リファキシミンは、胃腸管において、嫌気性株を含む、感染性下痢を引き起こす限局性の胃腸細菌に対して広い抗菌活性を発揮する。リファキシミンは、その化学的特徴および物理的特徴のため、無視し得る程度の全身吸収を特徴とすることが報告されている(Descombe J.J. et al. Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers. Int J Clin Pharmacol Res, 14 (2), 51-56, (1994))。
【0036】
特定の科学理論に拘束されることは望まないが、リファキシミンは、細菌のデオキシリボ核酸依存性リボ核酸(RNA)ポリメラーゼのβサブユニットに結合して、細菌のRNA合成の阻害をもたらすことにより作用する。それは、好気性および嫌気性の両方の多数のグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して活性である。インビトロデータは、リファキシミンが、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、腸球菌(Enterococcus)、および腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の種に対して活性であることを示している。結腸内細菌叢における細菌低下または抗微生物薬に対する耐性の増加は、高頻度には起こらず、臨床的に重要ではない。リファキシミンは、現在、米国外の17か国で認可されており、米国に関しては2004年5月に食品医薬品局(FDA)によって許可された。
【0037】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は、いずれも、例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されるような本発明を制限するものではないことを理解されたい。本願において、他に特記されない限り、単数形の使用には複数形が含まれる。本願において、他に特記されない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」のような他の形の使用は、限定的なものではない。また、「要素」または「成分」のような用語には、他に特記されない限り、1単位を含む要素および成分と、複数のサブユニットを含む要素および成分との両方が包含される。また、「部分」という用語の使用には、モエティの一部またはモエティ全体が含まれ得る。
【0038】
特許、特許出願、論文、書籍、および専門書を含むが、これらに限定されない、本願において引用される文書または文書の一部は、全て、任意の目的のため、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0039】
一つの態様は、治療的に有効な量の胃腸(GI)特異的抗生物質を対象へ投与することにより、肝性脳症(HE)を治療または予防する方法である。本明細書において使用されるような胃腸抗生物質の例には、リファキシミンのようなリファマイシン系抗生物質が含まれる。
【0040】
本発明の態様は、肝性脳症の治療および予防のために、胃腸(GI)特異的抗生物質が有効であることの発見に関する。態様は、HE症状の開始を予防し、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間も延長するための、GI特異的抗生物質の使用に関する。一つの態様において、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間は、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のベースラインConnスコアを有する対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加により評価された。別の態様において、ブレークスルーHEエピソードまでの時間は、Connスコア(精神状態グレード)またはアステリクシスグレードのいずれかがベースラインから増加するまでの時間により、28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目の増加を有する対象の累積的な割合のカプランマイヤー推定値を用いて、評価された。
【0041】
別の態様は、最初のHE関連入院までの時間、または突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間の測定値であった。別の態様は、血中アンモニア濃度のベースラインからの経時的変化の平均値、または臨界融合周波数値のベースラインからの経時的変化の平均値であった。さらなる態様は、ラクツロースの経時的な1日平均消費量、Connスコアのベースラインからの経時的なシフト;またはアステリクシスグレードのベースラインからの経時的なシフトによって示された。他に特記されない限り、値のシフトとは、その値のベースライン値からの変化である。
【0042】
本明細書に記載された処置の効力のその他の測定値には、慢性肝疾患質問票(CLDQ)スコアのベースラインからの経時的変化の平均値;エプワース眠気尺度のスコアのベースラインからの経時的変化の平均値;および>10のエプワース眠気尺度のスコアを有する対象の割合が含まれた。持続性肝性脳症の重症度の評価も、例えば、Connスコアに基づくかもしれない。
【0043】
別の態様において、肝性脳症(HE)に罹患しているか、肝性脳症(HE)に感受性であるか、または肝性脳症(HE)から寛解中である対象が、約24週〜24ヶ月の間、リファマイシン系抗生物質を投与され得る。HEの治療において、リファマイシン系抗生物質は、12ヶ月以上、例えば、対象の全生涯期間にわたり、対象へ投与され得る。一つの態様において、抗生物質は、対象の死亡時まで毎日投与される。
【0044】
一つの態様において、本発明は、GI特異的抗生物質を対象へ投与することにより、対象のブレークスルーイベントを有するリスクを低下させる方法に関する。一つの態様において、処置開始より90日以上前に最後のHEエピソードを有した対象について、不全発生のリスクは58%低下した。別の態様において、不全発生のリスクは約30〜70%低下した。別の態様において、リスクは約40%〜70%低下した。
【0045】
一つの態様において、GI特異的抗生物質の投与より90日超前に最後のHEエピソードを有した対象について、不全発生のリスクは約60%低下した。別の態様において、不全発生のリスクは約2%〜80%低下した。
【0046】
別の態様において、処置開始前6ヶ月以内に2回以下のHEエピソードを有した対象について、ブレークスルーHEエピソードのリスクは約56%低下した。一つの態様において、ブレークスルーHEエピソードのリスクは、約20%〜70%低下した。
【0047】
別の態様において、処置開始前6ヶ月以内に2回超のHEエピソードを有した対象について、ブレークスルーHEエピソードのリスクは約63%低下した。別の態様において、リスクは約30%〜80%低下した。
【0048】
一つの態様において、胃腸(GI)特異的抗生物質の治療的に有効な量には、約1000mg〜約1200mg/日が含まれる。
【0049】
一つの態様において、胃腸(GI)特異的抗生物質の治療的に有効な量には、約1100mg〜約1200mg/日が含まれる。
【0050】
一つの態様によると、胃腸(GI)特異的抗生物質の治療的に有効な量には、約1150mg/日が含まれる。
【0051】
別の態様において、治療的に有効な量は、1日2回の処方の1カプセルまたは1錠という投薬計画であり、この場合、各錠剤は、リファキシミンのような胃腸(GI)特異的抗生物質を約550mg含む。
【0052】
一つの態様において、治療的に有効な量は、1日3回、2カプセルまたは2錠という投薬計画であり、この場合、各カプセルは、胃腸(GI)特異的抗生物質を約200mg含む。
【0053】
一つの態様において、治療的に有効な量は、1日4回投与される胃腸(GI)特異的抗生物質275mgという投薬量である。別の態様において、275mgの胃腸(GI)特異的抗生物質が、1日2回、2つの剤形で投与される。
【0054】
別の態様は、GI特異的抗生物質を対象へ投与することにより、対象におけるHEの寛解を維持する方法である。
【0055】
別の態様は、GI特異的抗生物質を対象へ投与することにより、HEの治療のための入院までの時間を増加させる方法である。一つの態様において、GI特異的抗生物質の投与は入院頻度を約48%低下させる。別の態様において、GI特異的抗生物質は入院頻度を約13%〜約69%低下させる。
【0056】
一つの態様において、胃腸(GI)特異的抗生物質による処置は、対象におけるHEの寛解を維持する。
【0057】
一つの態様において、GI特異的抗生物質は、6ヶ月間、1年間、2〜3年間、対象に投与されるか、または対象の死亡時まで毎日投与される。
【0058】
一つの態様において、対象についてのConnスコアが、GI特異的抗生物質の投与後にベースラインよりも改善される。
【0059】
一つの態様において、生活の質(QoL)測定値が、リファキシミンによる処置の間に、GI特異的抗生物質の投与によりベースラインから改善される。
【0060】
一つの態様において、GI特異的抗生物質は、ラクツロースと共に、ラクツロースによる処置の前に、またはラクツロースによる処置の後に、対象へ投与される。
【0061】
一つの態様において、GI特異的抗生物質は、アライン(align)、アリニア(alinia)、ラクツロース、ペンタサ、コレスチラミン、サンドスタチン、バンコマイシン、ラクトース、アミティーザ、フラジール、ゼゲリッド(zegerid)、プレバシッド、またはミララックスのうちの一つまたは複数と共に投与される。
【0062】
一つの態様において、GI特異的抗生物質による処置の後、対象のConnスコア(精神状態グレード)が減少する。
【0063】
一つの態様において、GI特異的抗生物質による処置の後、Connスコアのベースラインからの増加が増加する。
【0064】
一つの態様において、GI特異的抗生物質による処置の後、Connスコアの増加までの時間の遅延は、約54%である。例えば、Connスコアの増加までの時間の遅延率は約30%〜約70%であり得る。
【0065】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、Connスコアの増加を防止する。例えば、GI特異的抗生物質の投与は、Connスコアのベースラインからの増加までの時間を増加させる。
【0066】
一つの態様において、GI特異的抗生物質の投与は、アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間の増加をもたらす。
【0067】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、アステリクシスグレードの増加までの時間の遅延をもたらす。
【0068】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、最初のHE関連入院までの時間の増加をもたらす。
【0069】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間の増加をもたらす。
【0070】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、血中アンモニア濃度のベースラインからの減少をもたらす。例えば、ベースラインから170日目までの血中アンモニア濃度の減少は、約6μg/dLであり得る。
【0071】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、臨界融合周波数値のベースラインからの増加をもたらす。
【0072】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、ラクツロースの1日消費量のベースラインからの経時的な減少をもたらす。
【0073】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、ラクツロースの1日消費量の、約7回のラクツロース投与から約2回のラクツロース投与への減少をもたらす。
【0074】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、初期にベースラインから増加するラクツロースの使用をもたらす。例えば、該ラクツロース使用は、約1〜約30日であり得る。
【0075】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、Connスコアのベースラインについての経時的なシフトをもたらす。例えば、Connスコアのベースラインについてのシフトは約1〜約2であり得る。
【0076】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、アステリクシスグレードのベースラインからの経時的なシフトをもたらす。
【0077】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、慢性肝疾患質問票(CLDQ)スコアのベースラインからの経時的な変化をもたらす。
【0078】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、エプワース眠気尺度のスコアのベースラインからの経時的な変化をもたらす。
【0079】
公知のように、末期肝疾患モデル(MELD)スコアは、血清クレアチニン、血清総ビリルビン、およびプロトロンビン時間についての国際標準比INRに基づき、肝疾患の重症度を予測するために利用され得る。MELDスコアは、代償性肝硬変および非代償性肝硬変を有する患者の死亡率の予測において有用であることが示されている。MELDについて与えられる最大スコアは40である。40を越える値には、全て、40というスコアが与えられる。
【0080】
別の態様において、約1〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的の投与を使用した、HEのための処置に応答した。別の態様において、10以下のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答した。別の態様において、11〜18のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する。別の態様において、19〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する。
【0081】
本発明の一つの態様は、28日超の間、1日1100mgのリファキシミンを患者へ投与することにより、HEを治療または予防する方法である。
【0082】
別の態様は、対象におけるラクツロース使用量を減少させる方法である。この方法は、ラクツロースにより処置されている対象にリファキシミンを毎日投与する工程、およびラクツロース消費量を漸減させる工程を含む。例えば、ラクツロース消費量は、ベースラインレベルから、1、2、3、4、5、6単位用量カップまたはそれ以上のラクツロースだけ、減少され得る。あるいは、ラクツロース使用量は、ベースラインレベルから、5、10、15、20、25、30、34、40、45、50、55、60、65、または70gのラクツロースだけ、減少され得る。一つの態様において、ラクツロースのベースライン使用量は、不使用である。
【0083】
本発明の一つの態様は、550mgのリファキシミンを1日2回(BID)対象へ投与する工程を含む、対象におけるHEの寛解を維持する方法である。
【0084】
別の態様は、550mgのリファキシミンを1日2回(BID)対象へ投与する工程を含む、HEの治療のための入院までの時間を増加させる方法である。
【0085】
「投与」または「投与すること」という用語は、意図された機能を達成するために対象へGI特異的抗生物質を導入する経路を含む。使用され得る投与経路の例には、注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、くも膜下腔内)、経口、吸入、直腸、および経皮が含まれる。薬学的調製物は、各投与経路に適した形態で与えられ得る。例えば、これらの調製物は、錠剤またはカプセルの形態で、注射、吸入、眼科用ローション、点眼剤、軟膏、坐剤等によって投与される。注射、注入、または吸入による投与;ローションまたは軟膏による局所投与;および坐剤による直腸投与。経口投与が好ましい。注射は、ボーラスであってもよいし、または連続注入であってもよい。投与経路に依って、GI特異的抗生物質は、意図された機能を達成する能力に悪影響を与えるかもしれない天然条件から防御するため、選択された材料でコーティングされるか、または選択された材料の中に配置されてもよい。GI特異的抗生物質は、単独で投与されてもよいし、または上記のような別の薬剤、または薬学的に許容される担体、またはその両方と共に投与されてもよい。GI特異的抗生物質は、他の薬剤の投与前に、薬剤と同時に、または薬剤の投与後に投与され得る。さらに、GI特異的抗生物質は、インビボで活性代謝物またはより活性な代謝物へと変換される前駆物質として投与されてもよい。
【0086】
一つまたは複数のさらなる治療剤「との組み合わせ」投与には、同時(同時的)投与、および任意の順序での連続投与が含まれる。
【0087】
当業者には容易に明白であるように、投与される有用なインビボの投薬量および特定の投与様式は、年齢、体重、および処置される哺乳動物種、利用される特定の化合物、およびこれらの化合物が利用される具体的な用途に依って変動するであろう。所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルである、有効投薬量レベルの決定は、ルーチンの薬理学的方法を使用して当業者によって達成され得る。典型的には、生成物のヒトへの臨床的適用は、比較的低い投薬量レベルで始められ、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルが増加させられる。
【0088】
本明細書において使用されるように、測定値の「増加」または「減少」とは、他に特記されない限り、典型的には、ベースライン値と比較したものある。例えば、処置を受けている対象についての入院までの時間の増加は、そのような処置を受けていない対象についての入院までの時間のベースライン値と比較したものである。いくつかの場合において、測定値の増加または減少は、その用語が使用される環境に基づき評価され得る。
【0089】
「担体」には、本明細書において使用されるように、利用される投薬量および濃度で、それに曝された細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。しばしば、生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体の例には、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、およびその他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;マンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩を形成する対イオン;ならびに/またはTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0090】
「有効量」という用語には、患者または対象において所望の結果を達成するために必要な、例えば、HEを治療または予防するのに十分な投薬量および期間で、有効である量が含まれる。GI特異的抗生物質の有効量は、対象の疾患状態、年齢、および体重、ならびに対象において所望の応答を誘発するGI特異的抗生物質の能力のような因子によって変動し得る。投薬計画は、最適の治療的応答を提供するよう調整され得る。有効量は、治療的に有益な効果が、GI特異的抗生物質の毒性効果または有害効果(例えば、副作用)を上回るものでもある。
【0091】
「寛解する」、「寛解」、「改善」等は、例えば、対象において、または少なくとも少数の対象において、例えば、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、またはこれらの値のうちの二つの間の範囲で起こる検出可能な改善または改善と一致する検出可能な変化をさす。そのような改善または変化は、リファキシミンにより処置されない対象と比較して、処置された対象において観察され得、この場合、未処置の対象は、同一または類似の疾患、状態、症状等を有するかまたは発症しやすい。疾患、状態、症状、またはアッセイパラメーターの寛解は、例えば、対象による自己査定により、医師の査定により、または、例えば、生活の質査定、疾患もしくは状態の進行の遅延、疾患もしくは状態の重症度の低下、もしくは生体分子、細胞のレベルもしくは活性についての適当なアッセイを含む、適切なアッセイもしくは測定を実施することにより、または対象におけるHEエピソードの検出により、主観的または客観的に決定され得る。寛解は、一時的、長期的、もしくは永久であり得、または、GI特異的抗生物質が対象へ投与されるか、もしくは本明細書もしくは引用された参照に記載されたアッセイもしくはその他の方法において使用される間もしくは後の関連する時点で、例えば、下記の時間枠内で、もしくはGI特異的抗生物質の投与もしくは使用から約1時間後、もしくは対象がそのような処置を受容してから約28日後、もしくは1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、もしくはそれ以降に、可変性であるかもしれない。
【0092】
例えば、症状、分子のレベルまたは生物学的活性等の「モジュレーション」とは、例えば、症状または活性等が、検出可能に増加または減少することをさす。そのような増加または減少は、GI特異的抗生物質により処置されない対象と比較して、処置された対象において観察され得、この場合、未処置の対象は、同一または類似の疾患、状態、症状等を有するかまたは発症しやすい。そのような増加または減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%、またはそれ以上、またはこれらの値のうちの二つの間の範囲であり得る。モジュレーションは、例えば、対象の自己査定によって、医師の査定によって、または、例えば、生活の質査定、対象における分子、細胞、もしくは細胞遊走のレベルもしくは活性についての適当なアッセイを含む、適切なアッセイもしくは測定を実施することによって、主観的または客観的に決定され得る。モジュレーションは、一時的、長期的、もしくは永久であり得、または、GI特異的抗生物質が対象へ投与されるか、もしくは本明細書もしくは引用された参照に記載されたアッセイもしくはその他の方法において使用される間または後の関連する時点で、例えば、下記の時間枠内で、もしくはGI特異的抗生物質の投与もしくは使用から約1時間後〜対象がGI特異的抗生物質を受容してから約3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、もしくはそれ以降に、可変性であるかもしれない。
【0093】
「モジュレートする」という用語も、所望の最終結果が達成されるような、GI特異的抗生物質への曝露に応答して起こる細胞の活性の増加または減少、例えば、動物の細胞の少なくとも一つの亜集団の増殖および/または分化誘導の阻害をさし得、例えば、治療のために使用されたGI特異的抗生物質の治療結果は、特定の処置の間に増加するかもしれないしまたは減少するかもしれない。
【0094】
「GI特異的抗生物質を入手する」のような「入手する」という用語は、GI特異的抗生物質を購入するか、合成するか、またはその他の様式で取得することを含むものとする。
【0095】
「非経口投与」および「非経口投与される」という語句には、本明細書において使用されるように、例えば、経腸投与および局所投与以外の投与様式、通常、注射による投与が含まれ、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内の注射および注入が含まれる。
【0096】
化合物の「予防的に有効な量」という語は、HEの予防または治療において、対象への単回投与または複数回投与により有効であるGI特異的抗生物質の量をさす。
【0097】
「薬学的薬剤組成物」(または薬剤または薬物)という用語は、本明細書において使用されるように、患者へ適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる化学的化合物、組成物、薬剤、または薬物をさす。それは、必ずしも、複数の型の成分を必要としない。
【0098】
組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、ロゼンジ、液体、またはゲル調製物の形態をとり得る。経口投与用の錠剤およびカプセルは、単位用量提示に適した形態をとることができ、従来の賦形剤を含有し得る。これらの例は、以下の通りである:シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、およびポリビニルピロリドンのような結合剤;ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、もしくはグリシンのような賦形剤;ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、ポリエチレングリコール、もしくはシリカのような打錠滑沢剤;ジャガイモデンプンのような崩壊剤;またはラウリル硫酸ナトリウムのような許容される湿潤剤。錠剤は、通常の薬学的実務において周知の方法によってコーティングされてもよい。経口液体調製物は、例えば、水性もしくは油性の懸濁物、溶液、エマルション、シロップ、もしくはエリキシルの形態をとってもよいし、または使用前に水もしくはその他の適当な媒体で再生するための乾燥物として提示されてもよい。そのような液体調製物は、懸濁化剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、水素化食用脂、乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアラビアゴム;非水性媒体(食用油を含む)、例えば、アーモンド油、分画ヤシ油、グリセリン、プロピレングリコール、またはエチルアルコールのような油性エステル;p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、またはソルビン酸のような保存剤のような従来の添加剤を含有していてもよく、所望により、従来の調味剤または着色剤を含有していてもよい。
【0099】
「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、および「末梢投与される」という語句は、本明細書において使用されるように、対象の全身に入り、従って、代謝等の過程を受けるような、GI特異的抗生物質、薬物、またはその他の材料の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0100】
GI特異的抗生物質の「治療的に有効な量」という語は、対象への単回投与または複数回投与により、対象における細菌の増殖および/もしくは侵襲の阻害において、または細菌増殖に関連したHEエピソードのような症状の減少において有効なGI特異的抗生物質の量をさす。「治療的に有効な量」とは、対象におけるHEの重症度を低下させるのに十分な、治療(例えば、GI特異的抗生物質を含む組成物)の量もさす。
【0101】
本明細書において使用されるように、「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、HEエピソードまたはHEのさらなる症状の再発、開始、または発症の予防をさす。予防には、HEエピソードの発生および重症度からの防御が含まれる。
【0102】
本明細書において使用されるように、「予防的に有効な量」という用語は、HEエピソードの発症、再発、もしくは開始の予防をもたらすか、または別の治療の予防効果を増強するかもしくは改善するのに十分な、治療(例えば、GI特異的抗生物質を含む組成物)の量をさす。
【0103】
「リファキシミン」には、本明細書において使用されるように、例えば、リファキシミンのα相、β相、γ相、δ相、ε相、η相、ζ相、非結晶相を含む、分子の溶媒和化合物および多形相が含まれる。これらの相は、例えば、USSN 11/873,841;USSN 11/658,702;2005年5月03日出願のEP 05 004 635.2;USPN 7,045,620;US 61/031,329;およびG. C. Viscomi, et al., CrystEngComm, 2008, 10, 1074-1081 (April 2008)に、より詳細に記載されている。これらの参照は、各々、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【0104】
「多形」とは、本明細書において使用されるように、別個の水和物状態にある単一の化合物の異なる結晶相の発生、例えば、いくつかの化合物および複合体の特性をさす。従って、多形体は、同一の分子式を共有している別個の固体であり、さらに、各多形体は、別個の物理的特性を有することがある。従って、単一の化合物が、各々、可溶性プロファイル、融点温度、吸湿性、粒子形、密度、流動性、稠密性、および/またはX線回折ピークのような、異なった別個の物理的特性を有する、多様な多形相を与えることがある。各多形相の可溶性は変動することがあり、従って、薬学的多形体の存在を同定することは、医薬品に予測可能な可溶性プロファイルを提供するために不可欠である。全ての多形相を含む、薬物の全ての固体相を調査し、各多形相の安定性、溶解性、および流動性を決定することが望ましい。化合物の多形相は、X線回折分光法、および赤外スペクトロメトリーのようなその他の方法によって、実験的に区別され得る。多形体の概説および多形体の薬学的適用については、全て、参照により本明細書に組み入れられる、G. M. Wall, Pharm Manuf. 3, 33 (1986);J. K. Haleblian and W. McCrone, J Pharm. ScL, 58, 911 (1969);およびJ. K. Haleblian, J. Pharm. ScL, 64, 1269 (1975)を参照のこと。
【0105】
本明細書において使用されるように、「ブレークスルーHE」には、例えば、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のベースラインConnスコアを有する対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加が含まれる。
【0106】
本明細書において使用されるように、「最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間」には、例えば、リファキシミンの最初の投与の日と、最初のブレークスルーHEエピソードの日との間の期間が含まれる。
【0107】
本明細書において使用されるように、「最初のHE関連入院までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、最初のHE関連入院の日との間の期間が含まれる。
【0108】
本明細書において使用されるように、「Connスコアのベースラインからの増加までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、Connスコアの最初の増加の日との間の期間が含まれる。
【0109】
本明細書において使用されるように、「アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、アステリクシスグレードの最初の増加の日との間の期間が含まれる。
【0110】
本明細書において使用されるように、「処置終了時(EOT)の慢性肝疾患質問票(CLDQ)の疲労ドメインスコアのベースラインからの変化の平均値」とは、リファキシミンの初回投与前に由来するベースラインに対するスコアの平均値である。
【0111】
本明細書において使用されるように、「EOTの血中アンモニア濃度のベースラインからの変化の平均値」とは、リファキシミンの初回投与前に由来するベースラインに対するスコアの平均値である。
【0112】
本明細書において使用されるように、「突発性細菌性腹膜炎(SBP)の診断までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、SBPの最初のエピソードの日との間の期間が含まれる。
【0113】
本明細書において使用されるように、「臨界融合周波数値の各ベースライン後時点におけるベースラインからの変化の平均値」は、例えば、リファキシミンの初回投与前に確立されたベースラインから測定される。
【0114】
「GI特異的抗生物質」および「GI抗生物質」には、本明細書において使用されるように、GI疾患に対する効果を有することが公知の抗生物質が含まれる。例えば、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)、ネオマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、オーグメンチン、セフレキシン、ペニシリン、アンピシリン、カナマイシン、リファマイシン、バンコマイシン、リファキシミン、およびそれらの組み合わせが、有用なGI特異的抗生物質である。さらに好ましいのは、低い全身吸収を有するGI特異的抗生物質、例えば、リファキシミンである。低い全身吸収には、例えば、10%未満の吸収、5%未満の吸収、1%未満の吸収、および0.5%未満の吸収が含まれる。低い全身吸収には、例えば、約0.01〜1%の吸収、約0.05〜1%の吸収、約0.1〜1%の吸収、約1〜10%の吸収、または約5〜20%の吸収も含まれる。
【0115】
本明細書において使用されるように、「対象」には、ヒトおよび非ヒト動物のような、リファキシミンによって処置可能な腸障害もしくはその他の障害に罹患することができるか、または本明細書に記載されるようなリファキシミンの投与からその他の様式で利益を得ることができる生物が含まれる。好ましいヒト動物には、ヒト対象が含まれる。本発明の「非ヒト動物」という用語には、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、および非ヒト霊長類のような非哺乳動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等が含まれる。腸障害に感受性である、とは、腸障害感染を発症するリスクを有する対象、即ち、免疫抑制に罹患している対象、細菌感染を有する他の対象へ曝された対象、医師、看護師、旅行者下痢を引き起こす細菌が流行していることが既知の遠隔地へ旅行する対象等を含むものとする。
【0116】
「予防的に有効な量」という語は、対象への単回投与または複数回投与により、肝性脳症の予防または治療において有効である、式I、式IIの本発明の化合物、または他の様式で本明細書に記載された化合物の量をさす。
【0117】
別の態様には、例えば、特定の剤形がいつHEの寛解を延長するか、またはHEの将来のエピソードを予防するかもしくは遅延させるかの考察を提供する印刷された添付文書説明書と組み合わせて、リファキシミンの経口投与に適した薬学的組成物を保持している容器を含む、製品が含まれる。投薬量は、HEに罹患している対象への投与のために修飾され得、またはHEに罹患している対象への投与のための添付文書を含み得る。例示的な剤形および投与プロトコルは以下に記載される。組成物は、剤形を保持し分配することができ、組成物と有意に相互作用せず、さらに適切な添付文書と物理的に関係している適当な容器に含有されるであろう。添付文書説明書は、前記のような処置の方法と一致し得る。表示は、二つの物理的な近接を維持する任意の手段によって、容器と会合していてよく、非限定的な例として、それらは、両方とも、ボックスもしくはプラスチック収縮包装のような包装材料に含有されていてもよいし、または添付文書説明書を不明瞭にしない接着剤もしくはその他の結合手段もしくは保持手段等により容器へ説明書を接着させることにより会合していてもよい。
【0118】
一つの態様において、説明書は、リファキシミンの投与がシトクロムP450を誘導し得ることを、肝性脳症に罹患している患者に助言するよう、医療従事者、処方する医師、薬剤師、または対象に通知または助言するであろう。別の態様において、説明書は、リファキシミンを摂取する対象の寛解または再発までに長い時間が存在することを、対象および/または医療提供者に通知するであろう。別の態様において、説明書は、リファキシミンがミダゾラムのCmax、AUC0-t、またはAUC0-∞を有意に改変しないことを、対象および/または医療従事者もしくは医療提供者に通知するであろう。別の態様において、説明書は、リファキシミンがQT延長のリスクを増加させないことを、対象および/または医療従事者もしくは医療提供者に通知するであろう。
【0119】
包装された組成物も提供され、治療的に有効な量のリファキシミンの錠剤またはカプセルを含んでいてよい。キット、例えば、対象におけるHEを治療するためのキットも、本明細書において提供される。キットは、例えば、リファキシミンと、HEのために対象を処置する場合の使用説明書とを含有しているかもしれない。使用説明書は、処方情報、投薬量情報、保管情報等を含有し得る。
【0120】
キットは、薬学的に許容される溶液、担体、および賦形剤と共に、GI特異的抗生物質の薬学的調製物を含み得る。
【0121】
リファキシミンのα相、β相、γ相、δ相、ε相、および非結晶相が、経口使用および局所使用の両方のため、リファキシミンを含有している抗生物質活性を有する薬用調製物の作製において有利に使用され得る。経口使用のための薬用調製物は、他の賦形剤、例えば、マンニトール、ラクトース、およびソルビトールのような希釈剤;デンプン、ゼラチン、糖、セルロース誘導体、天然ゴム、およびポリビニルピロリドンのような結合剤;タルク、ステアリン酸、水素化植物油、ポリエチレングリコール、およびコロイド性二酸化ケイ素のような滑択剤;デンプン、セルロース、アルギン酸、ゴム、および網状ポリマーのような崩壊剤;着色剤、風味剤、および甘味剤と共に、リファキシミンαまたはβまたはγを含有し得る。
【0122】
経口経路によって投与可能な胃腸特異的抗生物質の固体調製物には、例えば、密閉された小包内のコーティング錠および非コーティング錠、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル、糖衣錠、ロゼンジ、ウエハーシート、ペレット、ならびに粉末が含まれる。
【0123】
薬用調製物は、白色ワセリン、白蝋、ラノリンおよびその誘導体、ステアリルアルコール、べんがら、プロピレングリコール、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(ethers of fatty polyoxyethylene alcohols)、エデト酸ナトリウム、グリセロールパルミトステアレート(glycerol palmitostearate)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(esters of fatty polyoxyethylene acids)、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、デンプングリコール酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微晶質セルロース、コロイド性のケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウム、二酸化チタン、プロピレングリコール、コロイド性二酸化ケイ素、またはアルギン酸ナトリウムのような通常の賦形剤と共に、胃腸特異的抗生物質を含有しているかもしれない。
【0124】
ウエストヘイブン基準(Connスコア):
精神状態の変化の評価は、例えば、Connスコア(ウエストヘイブンスコアとしても公知)によってなされ得る。Connスコアは、HE試験において精神状態の測定値として広く使用されており、Connによって修飾されたパーソンズ・スミス(Parsons-Smith)の基準に基づく。以下にリストされるConnスコア化基準を使用して、対象の状態を査定する場合、アステリクシスは考慮されないであろう。
【0125】
Connスコア化システムにおいて使用される尺度を、以下に提供する。
グレード0=人格または行動の異常は検出されない。
グレード1=軽微な意識の低下、多幸感、または不安;注意持続時間の短縮;足し算または引き算の障害。
グレード2=嗜眠;時間に関する見当識障害;明白な人格変化;不適切行動。
グレード3=傾眠〜半昏迷、刺激に対しては応答性;錯乱;重度の見当識障害;奇妙な行動。
グレード4=昏睡;精神状態を検査することが不可能。
【実施例】
【0126】
本発明の態様は、以下に記載される実施例に限定されると解釈されるべきでないことを認識されたい;むしろ、本発明には、本明細書に提供される全ての任意の適用、および通常の当業者の技術の範囲内にある全ての等価な変動が含まれると解釈されたい。
【0127】
実施例1:
1日2回、およそ12時間毎に、リファキシミン550mg錠を1錠、内服するよう、対象に指示した。リファキシミンは、他の薬物治療、例えば、ラクツロース、抗うつ薬、抗炎症薬、メサドン、医師の処方箋による睡眠補助薬、医師の処方箋によらない睡眠補助薬(例えば、Lunesta(商標)(エスゾピクロン)およびAmbien(登録商標)(ゾルピデム酒石酸塩))、抗ヒスタミン薬、利尿薬、緩下薬または便軟化薬、ニューロンチン(neurontin)(ガバペンチン)、ならびにリリカ(lyrica)(プレガバリン)と同時投与されてもよい。
【0128】
ラクツロース使用は、対象のためのオプションであった。ラクツロースを使用した対象については、認められている医療業務に従い、3〜7日間の観察期間に、ある用量に設定された。
【0129】
アステリクシスグレード
アステリクシス(羽ばたき振戦)は、対象に、≧30秒間、手首を背屈させ、指を開き、腕および前腕の両方を伸ばすようにさせて、決定された。アステリクシスは、以下に示されるような5つのグレードの連続体(例えば、グレード0=異常運動なし、に対して、4=ほぼ連続的な羽ばたき動作)で評価された:
グレード0=振戦なし;
グレード1=稀な羽ばたき動作;
グレード2=時々の不規則な羽ばたき;
グレード3=頻繁な羽ばたき;および
グレード4=ほぼ連続的な羽ばたき動作。
【0130】
アステリクシスグレードに関する効力は、アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間として測定された。アステリクシスグレードの増加までの時間は、リファキシミンの初回投与から、アステリクシスグレードのベースラインからの増加の最初の発生までの日数として計算された。
【0131】
ブレークスルーHEエピソード
リファキシミンまたはプラセボのいずれかを摂取する試験において、各対象について、ブレークスルーHEエピソード(例えば、Connスコアグレード≧2(例えば、0もしくは1から≧2へ)、またはConnスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加)を経験する相対リスクを評価した。この分析は、生存時間分析法を使用して、リファキシミンとプラセボとの間で、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間を比較した。最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間は、リファキシミンの初回投与から、ブレークスルーHE(例えば、Connスコアグレード≧2、またはConnスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加)の最初の発生までの日数として計算された。
【0132】
精神状態の変化は、Connスコア(ウエストヘイブンスコアとしても公知)によって評価された。Connスコアは、HE試験において精神状態の測定値として広く使用されており、Connによって修飾されたパーソンズ・スミスの基準に基づく。Connスコア化システムにおいて使用される尺度は、上記の通りである。
【0133】
対象は、0または1のConnスコアを有していた。グレード2以上のConnスコアの増加を、ブレークスルーHEエピソードと見なした。
【0134】
肝性脳症スコア化アルゴリズム(HESA)
肝性脳症スコア化アルゴリズム(HESA)は、精神状態を査定するための、臨床的査定および神経心理学的査定の両方を使用する方法である。このアルゴリズムは、以前に実証されており、Conn基準と相関させられている。
【0135】
臨界融合周波数スコア
専門のCFF装置を使用して、各対象について、臨界融合周波数(CFF)を査定した。CFFとは、対象が連続光の点滅光への移行を観察する周波数であり、ヘルツ(Hz)で測定される。CFFは、精神状態の客観的な査定である。39HzというCFF値が、顕在的なHEを有する対象(例えば、Conn≧1)と、HE症状のない対象(例えば、Conn=0)とを区別するための閾値であることが示されており、より低いCFF値は、より重度のHEを示す(43)。
【0136】
CFFは、連続的な尺度で測定され、迅速に連続して実施された8回の別々の融合点滅移行検査の平均値であった。
【0137】
アンモニア濃度
静脈血試料(10mL)を収集し、アンモニア濃度を当技術分野において公知の方法によって入手した。
【0138】
Connスコア(精神状態グレード)またはアステリクシスグレードのいずれかのベースラインからの増加までの時間
最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間を分析するため、Connスコア(精神状態グレード)またはアステリクシスグレードのいずれかのベースラインからの増加までの時間に対するリファキシミン処置の有効性を査定するため、生存時間分析法を使用した。Connスコアまたはアステリクシスグレードのいずれかの増加までの時間は、リファキシミンの初回投与から、Connスコアまたはアステリクシスグレードのいずれかのベースラインからの増加の最初の発生までの日数として計算された。Connスコアまたはアステリクシスグレードのいずれかの増加までの時間の分析は、リファキシミンとプラセボとの間の、イベントまでの時間の比較に基づいた。
【0139】
最初のHE関連入院までの時間
最初のHE関連入院までの時間に対するリファキシミンの効果を決定した。最初のHE関連入院までの時間は、リファキシミンの初回投与から、HE関連イベントのための最初の入院までの日数として計算された。最初のHE関連入院までの時間の分析は、リファキシミンとプラセボとの間の、入院までの時間の比較に基づいた。
【0140】
突発性細菌性腹膜炎の発症までの時間
突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間に対するリファキシミンの効果を決定した。SBPの発症までの時間は、リファキシミンの初回投与から、腹水収集物がSBP検査陽性となる時までの日数として計算された。SBPの発症までの時間の分析は、リファキシミンとプラセボとの間の、イベントまでの時間の比較に基づいた。
【0141】
血中アンモニア濃度および臨界融合周波数値のベースラインからの経時的変化の平均値
血中アンモニア濃度および臨界融合周波数値の平均値およびベースラインからの変化の平均値を収集した。血中アンモニア濃度および臨界融合周波数値の分析は、(定性的グレードではなく)定量的な値に基づいた。これらのパラメーターのベースラインからの変化の平均値についての処置間の差を、時間およびベースライン値についての固定効果を含む混合効果モデルを使用して推定した。
【0142】
ラクツロースの経時的な1日平均消費量
対象のラクツロース1日消費量を、各月についてのラクツロース1日平均消費量を計算するために使用した。ラクツロース1日平均消費量のベースラインからの変化の平均値についての処置間の差を推定した。
【0143】
CLDQ
CLDQは、以下の6つのドメインに29の項目を含んでいる:腹部症状(3項目)、疲労(5項目)、全身症状(5項目)、活動(3項目)、情動的機能(8項目)、および心配(5項目)。CLDQ全体および6ドメインの各々についての総合スコアを、記述的統計を使用して、ベースライン、ならびに28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目に計算し、集計した。ベースラインから28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目までの全体スコアおよびドメインスコアの変化の平均値についての処置間の差を、収集し、集計し、処置間で比較した。ベースラインからEOTまでの変化の平均値についての処置間の差は、慢性肝疾患質問票(CLDQ)の疲労ドメインスコアのベースラインからEOTまでの変化として決定された。同様に、EOTにおける血中アンモニア濃度のベースラインからの変化の平均値も決定した。
【0144】
生活の質の査定
SF-36、慢性肝疾患質問票(CLDQ)、およびエプワース眠気尺度を、健康関連の生活の質を評価するために使用した。29項目CLDQ質問票は、以下のドメインからなる:疲労、活動、情動的機能、腹部症状、全身症状、および心配。
【0145】
エプワース眠気尺度
エプワース眠気尺度についての総スコアは、記述的統計を使用して、ベースライン、ならびに28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目に計算され集計された。ベースラインから28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目までの総スコアの変化の平均値についての処置間の差を集計し、処置間で比較した。
【0146】
図1は、前記のようなプラセボを摂取する対象とリファキシミンを摂取する対象との間のラクツロース1日使用量を比較する折れ線グラフである。
【0147】
図2は、プラセボ群およびリファキシミン群についてのブレークスルーHEイベントまでの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボを摂取する対象と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、ブレークスルーHEイベントまでの時間が増加した。
【0148】
図3は、最初のHE関連入院までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボ群と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、入院までの時間が増加した。
【0149】
図4は、Connスコアの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボ群と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、Connスコアの最初の増加までの時間が増加した。
【0150】
図5は、アステリクシスグレードの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボ群と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、アステリクシスグレードの最初の増加までの時間が増加した。
【0151】
実施例2:
以下の表は、HEに罹患している対象を治療するための、リファキシミンのようなGI特異的抗生物質の有利な使用を支持する、さらなる証拠を提供する。
【0152】
(表1)ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0153】
(表2)ベースラインConnスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0154】
(表3)過去のラクツロース使用量による、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0155】
(表4)最初のHE関連入院の開始までの時間
【0156】
(表5)Connスコアのベースラインからの増加までの時間
【0157】
(表6)ベースラインMELDスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0158】
(表7)ベースラインMELDスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0159】
(表8)ベースラインMELDスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0160】
(表9)過去のラクツロース使用量による、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0161】
(表10)アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間
【0162】
(表11)血中アンモニア濃度(μg/dL)のベースラインからの変化の平均値
【0163】
(表12)臨界融合周波数検査(Hz)のベースラインからの変化の平均値
【0164】
(表13)臨界融合周波数検査(Hz)のベースラインからの変化の平均値
【0165】
(表14)Connスコアのベースラインからの各変化レベルにおける処置群ごとの対象の数
【0166】
(表15)アステリクシスグレードのベースラインからの各変化レベルにおける処置群ごとの対象の数
【0167】
(表16)総エプワース眠気スコアのベースラインからの変化の平均値
【0168】
(表17)最初のHE関連入院の開始までの時間
【0169】
実施例3:
およそ25%のミダゾラムAUCの減少に基づき、リファキシミンによるCYP3A4の誘導が観察された。比較的高い全身曝露が、標的患者集団の大多数において予想される。
【0170】
リファキシミンを、少なくとも7日間、高用量(1650mg/日)で経口投与した場合、ミダゾラムの平均Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞が<25%低下した。リファキシミンは、可能性のあるCYP3A4誘導剤であり、インビトロ試験は、リファキシミンがリファンピンより低い誘導効力を有することを示した。リファキシミンの推定腸管腔濃度は、およそ5μMである。インビトロ試験において、リファキシミン1μMで1.7倍、10μMで1.8倍、CYP3A4活性が誘導された;同濃度で、リファンピンは、それぞれ3.7倍および4倍、CYP3A4を誘導した。さらに、リファキシミンの消化管を標的とした分布は、CYP3A4誘導機序を腸に限定し、低い全身曝露の結果として肝臓における誘導を減らすと考えられる。即ち、リファキシミンについては、腸における誘導と肝臓における誘導とが区別される。これは、最長7日間のリファキシミン200mg TID後に、ミダゾラムを静脈内投与または経口投与した場合に、誘導が存在しなかったことから支持されるように、リファキシミンを受容するヒトにおける本明細書に開示された試験において示される。
【0171】
特定の科学理論に拘束されることは望まないが、門脈血流の相当部分が肝臓の周囲に短絡されている、肝障害を有する患者においては、肝臓におけるCYP3A4誘導のリスクがさらに軽減される可能性が高いと考えられ;3従って、全身曝露の増加には、肝細胞への曝露の比例する減少が伴うはずであり、患者は、肝臓におけるCYP3A4誘導のリスクの正味の増加を被らないはずである。
【0172】
実施例4:
二つの臨床的薬物間相互作用試験はリファキシミン200mg錠を用いて実施され、一つの薬物間相互作用試験は550mg錠を用いて実施された。CYP3A4の公知の基質であるミダゾラムを使用した二つの試験、ならびにエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含有している経口避妊薬を使用した一つの試験を、これらの薬物の薬物動態に対するリファキシミンの効果を査定するために実施した。これらの試験、ならびにヒト肝臓画分を使用したインビトロの誘導および阻害の試験の結果に基づき、XIFAXANによる臨床的に関連する薬物相互作用は予想されない。
【0173】
インビトロ試験は、リファキシミンがシトクロムP450 3A4(CYP3A4)と相互作用する可能性を証明したが、臨床的な薬物間相互作用試験は、リファキシミンがプレシステミック(presystemically)にもシステミック(systemically)にもミダゾラムの薬物動態に有意に影響を与えないことを証明した。付加的な臨床的薬物間相互作用試験は、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含有している経口避妊薬のプレシステミック代謝に対して、リファキシミンには効果がないことを示した。従って、ヒトシトクロムP450イソ酵素によって代謝される薬物との臨床的相互作用は予期されない。
【0174】
ミダゾラムとの薬物相互作用の可能性を評価するために、二つの試験を実施した。第1は、3日間、8時間毎に(Q8H)経口(PO)投与されたリファキシミン200mg、および7日間、8時間毎にPO投与されたリファキシミン200mgの、単回静脈内(IV)投与されたミダゾラム2mg、または単回PO投与されたミダゾラム6mgの薬物動態に対する効果を査定するために設計された、非盲検無作為化クロスオーバー薬物相互作用試験であった。ミダゾラム単独と、リファキシミンとの併用との間で、IVミダゾラムもしくはPOミダゾラム、またはその主要代謝物1'-ヒドロキシミダゾラムの全身曝露または排除の計量において、有意差は観察されなかった。従って、リファキシミンは、腸または肝臓のCYP3A4活性に有意に影響を与えないことが示された。
【0175】
非盲検薬物相互作用試験であった第2試験は、リファキシミン550mg 1日3回の、連続7日間および14日間投薬された場合の経口投与(PO)ミダゾラム2mgに対する効果を調査した。この試験において、リファキシミンはCYP3A4の弱い誘導剤であることが示された;リファキシミンの低い全身曝露のため、この相互作用は胃腸管に限定されると考えられる。この誘導は、用量および投薬期間の両方に依存性である。リファキシミンを、少なくとも7日間、高用量(1650mg/日)で経口投与した場合、ミダゾラムの平均Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞が<25%低下した。
【0176】
リファキシミンのインビトロhERG効力およびインビトロタンパク質結合。インビトロhERG試験において、300μMまでのリファキシミン濃度は、hERGカリウム電流の50%の阻害を達成し得なかった。リファキシミンは300μMで沈殿するため、IC50は100μMより大きいと推定された。実際、50%の阻害は達成され得ず;100μMで、阻害の平均値は34.5%であった。試験中の肝障害を有する患者において観察された最も高いCmaxは、52.2ng/mLであった(0.0664μM);この試験に登録された患者からの血漿試料のサブセットにおいて観察された最も高い遊離画分は、44.7%であった。これらの数値を使用すると、最も高い予想遊離血漿曝露は0.03μMになるであろう。これは、hERG実験においてリファキシミンを検査することができる最高濃度と比較して、≧3000倍の低下を表す。この安全域は、臨床的なQT延長のリスクの最小化に一般的に関連している、hERG IC50と非結合型Cmaxとの間の30倍の分離を大きく越えている4。
【0177】
実施例5:
第1試験のための効力パラメーターは、処置中のブレークスルー顕性HEのエピソードの発生であった。ブレークスルー顕性HEエピソードは、Connスコア(またはウエストヘイブングレード)およびアステリクシスグレードを使用することにより評価された。第1試験について定義されるブレークスルー顕性HEエピソードとは、セルフケアに対する有害な効果をもたらし、入院をもたらし得る、神経学的機能の顕著な臨床的に有意な増悪であった。有効性エンドポイントである、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間は、リファキシミンの高度に有意な防御効果を示した(相対リスクの群間差について、p<0.0001)。リファキシミン処置は、6ヶ月の処置期間中にブレークスルー顕性HEを経験するリスクを、プラセボと比較して57.9%低下させた。
【0178】
さらに、この試験は、最初のブレークスルー顕性HEまでの時間が、別々の地理的な地域、北米とロシアとで分析された場合にも、リファキシミンの高度に有意な防御効果を示すことを示した。
【0179】
リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者の介助のために必要とされる家族の負担を軽減し、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させることができる。
【0180】
第2試験においても、類似の結果が示され、例えば、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第2試験:最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間のカプランマイヤー推定値は、第1試験のリファキシミン群と、この第2試験の新リファキシミン対象との間で類似していた。また、第1試験のリファキシミン群([リファキシミン群]の22%、140人中31人)、および第2試験の新リファキシミン群(27.6%、196人中54人)で、類似した割合の対象が、ブレークスルー顕性HEを有した。
【0181】
さらに、第1試験のプラセボ対象が、第2試験に参入することによりリファキシミン治療にクロスオーバーした場合、リファキシミンの防御効果が観察された:第2試験におけるリファキシミン処置中のブレークスルー顕性HEを経験するリスクは、第1試験における過去のプラセボ経験と比較して、70%低下した。この低下は、慢性肝疾患を有する集団の老化および推測される進行性にも関わらず起こった。
【0182】
第2試験は、リファキシミンの防御効果が耐久性であることも示した:第1試験への参加後に寛解中であったリファキシミン対象を、第2試験において追跡したところ、最初のブレークスルーHEまでの時間の推定値は、ブレークスルーHEからの寛解の長期的な維持を証明した(最長680日のリファキシミン治療;曝露期間の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)。これらのリファキシミン対象についてのブレークスルーHEエピソードの発生率は、第1試験のプラセボと比べて低く、これは、リファキシミン処置により、ブレークスルーHEエピソードがより少なくなることを示している。
【0183】
CNS機能障害の認識された定量的測定値である臨界融合周波数(CFF)査定が、第1試験における有効性エンドポイントであった。CFF検査は、振動性の視覚的刺激の脳による処理と、HE重症度の増加によるCNS障害との間の相関を利用する10、11、12、13。この検査は、点滅光が一定光として知覚される周波数を同定する。この周波数の低下は、HEの重症度の増加と関連付けられている。同様に、第1試験における別のエンドポイントである血中アンモニアの上昇も、顕性HEの基礎となるCNS効果に関連した定量的査定である。
【0184】
CFF結果および静脈アンモニアレベルのベースラインから試験終了時までの変化の比較は、試験の間、リファキシミン群において、プラセボと比較して、統計的に有意な、より大きな改善を示した(CFF変化についてはp=0.0320、静脈アンモニア変化についてはp=0.0391)。第1試験において、CFF結果とブレークスルー顕性HE(主要な効力測定値)との間の相関が認められた。静脈アンモニアレベルは、第1試験において、ブレークスルー顕性HEの発生と相関することが見出された。
【0185】
その他の有効性エンドポイントについての結果も、リファキシミンの防御効果を証明した。特に、最初のHE関連入院までの時間という、他の有効性エンドポイントが、リファキシミン対象についてリスクの低下を示した。
【0186】
第1試験において、最初のHE関連入院(例えば、HEに直接起因する入院またはHEによって悪化した入院)までの時間の分析は、6ヶ月の処置期間中、ファキシミン群におけるHEによる入院のリスクの低下が、プラセボと比較して50%であったことを証明した。HE関連入院率は、曝露についての規準化の後、プラセボの0.78イベント/人・曝露年数(PEY)に対してリファキシミンでは0.38イベント/PEYであった。
【0187】
第1試験において、HE原因入院(例えば、HEに直接起因する入院のみ)のリスクは、リファキシミン群において、プラセボと比較して、56%低下した。HE原因入院率は、プラセボ群の0.72イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.30イベント/PEYであった。
【0188】
第1試験において、全原因入院率のリスクは、リファキシミン群において、プラセボと比較して、30%低下した。全原因入院率は、プラセボ群の1.31イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.92イベント/PEYであった。
【0189】
第2試験において、低いHE原因入院率が、第1試験のものと一致する率で維持された:第2試験におけるHE原因入院率は0.29イベント/PEYであり、全原因入院は0.66イベント/PEYであった。第1試験および第2試験におけるリファキシミンにより処置された対象における一貫して低いHE関連/HE原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEからの寛解の維持の結果であった。
【0190】
肝性脳症は、HEのない同年齢の患者と比較して、低い生活の質に関連している。HEを有する患者は、疲労、昼間の眠気、および意識の低下(Connスコア1);ならびに日々の機能に有意に干渉する錯乱および見当識障害(Connスコア2)、ならびにセルフケア能力の低下を含む症状を経験する。しばしば、このセルフケアの喪失は、不適切な栄養および治療へのノンアドヒアランスをもたらし、さらに、入院を必要とする、傾眠の増加、重度の見当識障害、および昏迷のような、より重度の症状へと進行し得る。リファキシミン処置は、HE関連/原因入院から防御し、それにより、患者の機能状態を改善し、介助者に利益を与え;そして肝硬変および関連HEに関連した経済コストを低下させる。
【0191】
米国において再発性HEを有する患者のための処置オプションは限定されている。硫酸ネオマイシンは、肝性昏睡における補助的治療にのみ認可されている。従来の治療は、アンモニアの産生および吸収を低下させることを目標としている。非吸収性二糖、例えば、ラクツロースまたはラクチトールが、典型的には、HEのための一次治療として使用される。非吸収性二糖は、結腸内細菌叢における窒素代謝を変化させ、窒素の糞便中への排泄を増加させることにより、血漿アンモニアレベルを低下させるとの証拠が存在する。ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびパロモマイシンを含む広域性のGI活性抗生物質が、ラクツロースと共に、またはラクツロースなしで使用されている。これらの抗生物質は、脱アミノ細菌による尿素の開裂を阻害し、従って、アンモニアおよびその他の可能性のある毒素の産生を低下させることにより、間接的に作用するようである。現在の指針は、非吸収性二糖による処置の代替法として、(FDAによって認可されていない)ネオマイシンまたはメトロニダゾールによる抗生物質治療を推奨している。
【0192】
非吸収性二糖(例えば、ラクツロース)治療の一般的な副作用には、治療コンプライアンスを妨害し得る不愉快な味覚、排便習慣に連結された投薬スケジュール、ならびに腹部膨満、腹部疝痛、および下痢のようなGI副作用が含まれる。ラクツロースの使用により、脱水をもたらす下痢が報告されており、電解質異常としてのHEを有する患者についての重要な影響は、HEを悪化させ、腎機能障害をもたらすことがある。
【0193】
HEの治療におけるネオマイシンのような全身吸収される抗生物質の使用は、長期使用に関連した聴器毒性および腎毒性によって阻止される。アミノグリコシド系により誘導される腎毒性の発生率は、進行した肝疾患を有する患者において、肝疾患のない患者よりも実質的に大きい。一般集団におけるアミノグリコシド系により誘導される腎毒性の頻度は、3%〜11%である。Leitmanは、入院中に静脈内投与によってアミノグリコシド系を受容した、肝疾患のない患者の34%に対して、肝疾患を有する患者の73%において腎毒性が起こったことを報告し;Cabreraは、腎尿細管傷害または機能的腎障害が、アミノグリコシド系により処置された硬変患者(入院中の静脈内投与)の60%において観察されたことを報告した。さらに、アミノグリコシド系により誘導される腎尿細管傷害を発症した硬変患者においては、高い死亡率および持続性の腎傷害が認められた。従って、アミノグリコシド系は、進行した肝疾患を有する患者においては禁忌であると、現在、広く見なされている。
【0194】
リファキシミンは、証明された有効性、良好な安全性プロファイルのため、そして全身アミノグリコシド系および非吸収性二糖の短所のため、HEを有する患者の処置のための魅力的な治療である。リファキシミンは、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して、そして好気性単離物および嫌気性単離物に対して、インビトロ抗菌活性の広いスペクトルを有する。
【0195】
リファキシミンは経口投与後に吸収されにくいため、この薬物は、胃腸管において選択的に活性である。さらに、リファキシミンの使用による薬物間相互作用のリスクは低い。リファキシミンは、他の一般的に使用されている抗菌薬と比較して、病原体の糞便中への根絶のより低い率を有し、消化管細菌叢の最小限の改変を引き起こすことから、リファキシミンは、フルオロキノロンのような腸管細菌感染において一般的に使用されている他の薬物とは異なる作用機序を有することが示唆される。恐らく、耐性は、宿主細胞DNAの変異によって媒介され、プラスミドに基づくのではないため、リファキシミンによる慢性処置においては、ネオマイシンのような他の全身抗生物質と比較して、抗生物質に対する耐性の発達のリスクが低い。
【0196】
遡及的カルテ調査において、6ヶ月間毎日ラクツロースを受容し、次いで、6ヶ月間毎日リファキシミンを受容したHE患者においては、ラクツロース処置と比較して、HEによる入院の数および期間、全治療コスト、ならびにHEエンドポイント(アステリクシスグレード、Connスコア)が劇的に低下することが見出された。
【0197】
第1試験は、文献で報告された以前の試験の限界(例えば、不均一な対象集団、小さな集団サイズ、短い期間、および精神状態についての不十分なエンドポイント)を克服するために設計された。
【0198】
第1に、処置期間を6ヶ月に増加させた。このより長い期間は、試験を≦6週間に限定した場合より多数の対象が、HEエピソードを経験することを可能にするため計画された。また、より長い処置期間は、慢性肝硬変、および関連した再発性顕性突発性HEを有する対象におけるリファキシミンの長期的安全性を評価する機会を提供した。試験は、重要な副次的有効性エンドポイントとしてHEエピソードによる入院を測定することにより、患者のケアおよび経済コストに関するHEの結果を調査した。
【0199】
第1試験および第2試験において臨床的に関連する基準を使用することにより、顕性HEエピソードを評価するため、精神状態障害をConnスコア(ウエストヘイブン基準)を使用することにより評価し、神経運動異常の重症度をアステリクシスグレードによって評価した。Connスコアは、ステージ0(人格の検出可能な変化の欠如)からステージ4(昏睡、除脳硬直状態、散大瞳孔)までの範囲である。Connスコアは、顕性HEにおける精神状態障害の重症度を等級付けるための、推奨され広く使用されている優れた標準である。アステリクシス(羽ばたき振戦)は、神経学的障害の悪化と共に重症度が増加する顕性HEの神経運動症状である。
【0200】
第1試験についての対照群は、活性群におけるリファキシミン処置と平行して、マッチしたプラセボ錠剤を受容した。第2試験は、再発性突発性顕性HEの履歴を有する対象におけるリファキシミン550mg BIDの長期的安全性を評価するための、進行中の非盲検処置延長(treatment-extension)試験であった。安全性の評価に加え、第1試験において最長6ヶ月のリファキシミン処置を完了し、次いで、第2試験に参入した対象において;第1試験でプラセボを受容し、第2試験でリファキシミン処置にクロスオーバーした対象において;新たな対象として第2試験に参入したHEの履歴を有する患者において、最長およそ1年間の処置中のブレークスルー顕性HEに対するリファキシミンの防御効果を評価するため、試験の間、Connスコアおよびアステリクシスグレードを査定した。
【0201】
使用された投薬計画(550mg BID)は、HEを有する患者およびその他の対象集団におけるリファキシミンによる過去の臨床的経験に基づいていた。いくつかの以前の試験において、リファキシミンは、ラクツロースと併用した場合または併用しない場合、1日1200mgの用量で、HEを有する対象において安全かつ有効であった。リファキシミンとネオマイシンとを比較した6ヶ月の試験(各月14日の処置および14日の処置休止)8において、リファキシミン1200mg/日およびネオマイシン(3g/日)は、HEを有する患者において比較可能な効力を有した。アミノグリコシド系抗生物質は、腎毒性のリスクのため、進行した肝疾患を有する患者においては禁忌である。
【0202】
有効性エンドポイントは、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間であった。ブレークスルー顕性HEエピソードとは、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のConnスコアで試験に参入した対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加として定義された。ブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間は、試験薬物の初回投与の時点から、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの期間であった。試験を完了し、ブレークスルー顕性HEエピソードを経験しなかった対象は、6ヶ月目の診察の時点で打ち切られた。ブレークスルー顕性HE以外の理由で早期に終結した対象は、対象がブレークスルー顕性HEエピソードまたはその他の結果(例えば、死亡状態)を経験したか否かを決定するため、無作為化から6ヶ月目に照会され;対象が照会前にブレークスルー顕性HEイベントを有しなかった場合、その対象は照会の時点で打ち切られた。従って、無作為化後6ヶ月までのブレークスルー顕性HEエピソードについて完全な把握が達成された。試験対象は、スクリーニング前6ヶ月以内に、≧2のConnスコアと等価な2回以上の顕性HEエピソードを有していた(即ち、対象は、立証された再発性顕性HEを有していた)。ベースライン査定時、対象は、0または1のConnスコアを有し、寛解中であった。ブレークスルー顕性HEエピソードとは、前記定義の通り、神経学的機能の著しい増悪であった。
【0203】
第1試験における他の有効性エンドポイントには、例えば、以下のものが含まれた:
1. 最初のHE関連入院までの時間;
2. Connスコア(精神状態グレード)のベースラインからの増加までの時間;
3. アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間;
4. 処置終了時のCLDQの疲労ドメインスコアのベースラインからの変化の平均値;および
5. 処置終了時の静脈アンモニア濃度のベースラインからの変化の平均値。
【0204】
第1試験および第2試験の結果が本明細書に提示される。第1試験は、プラセボと比較して、リファキシミン550mg BIDの効力および安全性を評価する、二重盲検無作為化プラセボ対照試験であった。慢性肝硬変に関連した、証明された再発性顕性突発性HEから寛解中の対象を、0日目(2回目の診察時)に、6ヶ月間、リファキシミン550mg BIDまたはプラセボを受容するよう1:1比で無作為化した。主要有効性エンドポイントは、ブレークスルー顕性HEまでの時間であった。ブレークスルー顕性HEとは、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のConnスコアで試験に参入した対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加として定義された。対象は、ブレークスルー顕性HEエピソードの時点で試験を中断した。第1試験への参加の後、対象は、非盲検処置延長試験(第2試験)に登録するオプションを有した。
【0205】
計299人の対象を、リファキシミン(140人の対象)またはプラセボ(159人の対象)を受容するよう無作為化した。全ての無作為化された対象が、試験薬物を少なくとも1回受容した。計251人(84%)([リファキシミン]116人、[プラセボ]135人)の対象が、プロトコルに指定された通りの試験を完了した(例えば、6ヶ月の処置を完了するか、またはブレークスルー顕性HEの時点で試験から撤退した)。
【0206】
試験対象は、スクリーニング前6ヶ月以内にConnスコア≧2と等価な2回以上の顕性HEエピソードを有していた(例えば、対象は再発性顕性HEを有していた)。ベースライン査定時、対象は、0または1のConnスコアを有し、寛解中であった。ブレークスルー顕性HEエピソードは、神経学的機能の著しい増悪であった。6ヶ月(170日目まで)の処置期間中、ブレークスルー顕性HEエピソードは、リファキシミン群の対象140人中31人、プラセボ群の対象159人中73人によって経験された。ブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値の群間の比較は、リファキシミンの防御効果を示した(p<0.0001)。これらのデータは、リファキシミン処置が、ブレークスルー顕性HEを経験するリスクを、プラセボと比較して57.9%低下させたことを示す。リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者を介助するために必要とされる家族の負担を軽減することができ、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させる。
【0207】
以下の予後因子が、ブレークスルー顕性HEエピソードの予測因子であることが見出された:ベースライン年齢(p=0.0160)、MELDスコア(p=0.0003)、現在の確証された寛解の期間(p=0.1089)、および過去のHEエピソードの数(p=0.0022)。これらのデータは、リファキシミン処置が、この試験の間にブレークスルー顕性HEエピソードを経験するリスクを、プラセボと比較して60%低下させたことを示している(p<0.0001)。
【0208】
最初のHE関連入院までの時間;ならびにHE関連入院および全原因入院の頻度
肝性脳症関連入院(HEに直接起因する入院またはHEによって悪化した入院)は、リファキシミン群の対象140人中19人、プラセボ群の対象159人中36人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中、HE関連入院からの防御効果を有していた。プラセボと比較して、リファキシミン群の対象は、6ヶ月の処置期間中、HEによる入院のリスクの50%の低下を有していた。HE関連入院率は、プラセボ群の0.78イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.38イベント/PEYであった。
【0209】
肝性脳症原因入院(HEに直接起因する入院のみ)は、リファキシミン群の対象140人中15人、プラセボ群の対象159人中33人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中のHE原因入院からの有意な防御効果を有し;HE原因入院のリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.438(95%CI:0.238〜0.807)(p=0.0064)であった。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、6ヶ月の処置期間中のHEによる入院のリスクの56%の低下を有していた。HE原因入院率は、プラセボ群の0.72イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.30イベント/PEYであった。
【0210】
全原因入院も、プラセボ群(159人60人)よりリファキシミン群(140人中46人)の方が低かった(プラセボと比較してリファキシミン群では30%の低下)。全原因入院率は、対象曝露について規準化した後、リファキシミン群では0.90イベント/PEY、プラセボ群では1.26イベント/PEYであった。HE関連入院率は、リファキシミン群では0.38イベント/PEY、プラセボ群では0.78イベント/PEYであった。リファキシミン処置は、HE関連入院から防御し、それにより、患者およびその介助者の生活の質を改善し、肝硬変および関連HEに関連した経済コストを低下させる。
【0211】
Connスコアのベースラインからの増加までの時間、およびアステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間
独立に分析された場合、これらのエンドポイント両方に関して、リファキシミンの防御効果が観察された;6ヶ月の処置期間中にConnスコアの増加を経験するリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.463(95%CI:0.312〜0.685)(p<0.0001)、アステリクシスグレードの増加を経験するリスクについては、0.646(95%CI:0.414〜1.008)(p=0.0523)であった。
【0212】
処置終了時の静脈アンモニアレベルのベースラインからの変化
プラセボにより処置された対象と比較して、リファキシミン群の対象は、静脈アンモニアレベルのより大きな低下を有した(p=0.0391)。顕性HEの基礎をなすCNS効果に関連している定量的査定である静脈アンモニアレベルは、Connスコア(またはConnスコアとアステリクシスグレードとの組み合わせ)の臨床的評価によって決定されるようなブレークスルー顕性HEの発生と高度に相関していることが見出された。
【0213】
Connスコアおよびアステリクシスグレードの追跡:Connスコアおよびアステリクシスグレードのベースラインからの変化
ベースラインから処置終了時(最後のベースライン後査定またはブレークスルーHEの時点での査定)までの、Connスコアの-1(改善)もしくは0(変化なし);または1、2、もしくは3(悪化)の変化を有した対象の割合に関して、プラセボと比較して有利なリファキシミンの治療効果が観察された。リファキシミン群においては、プラセボと比較して、より高い割合の対象が、Connスコアの-1の変化を経験したか、または変化を経験せず(53.9%に対して77.1%)、より低い割合の対象が、Connスコアの1、2、3、または4の変化を有した。従って、リファキシミンによる処置は、Connスコアの悪化の防止において、プラセボより有効であった(プラセボに対して2.46倍、p=<0.0001)。
【0214】
ベースラインから処置終了時までのアステリクシスグレードの変化について、リファキシミン群においては、プラセボ群より有意に高い割合の対象が、アステリクシスグレードの-2、-1、および0のベースラインからの変化を有し(77.0%に対して88.5%)、有意に低い割合の対象が、1、2、3、または4の変化を有した(23.2%に対して11.6%)。従って、リファキシミンによる処置は、アステリクシスグレードの悪化の防止において、プラセボより有効であった(プラセボに対して1.92倍、p=0.0262)。
【0215】
CFF結果のベースラインからの変化
CFF結果の増加は、HEを有する患者における神経学的機能の改善を表す10、11。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、有意に大きな、ベースラインから処置終了時までのCFF結果の増加を有していた。CFF結果の変化の平均値(±標準偏差[SD])は、プラセボ群の0.355(±4.70)に対してリファキシミン群では0.945(±4.75)であった(群間差について、p=0.0320)。静脈アンモニアレベルと同様に、CFFは、ブレークスルーHEを高度に予測することが示された。
【0216】
試験薬物への曝露の中央値は、リファキシミン群において168日(10日〜178日の範囲)、プラセボ群において110日(6日〜176日の範囲)であった。計64人の対象([リファキシミン]33人および[プラセボ]31人)が、141〜168日間、処置を受容し、98人の対象([リファキシミン]57人および[プラセボ]41人)が、>168日間、処置を受容した。曝露期間の結果は、プラセボ群より低い割合のリファキシミン群の対象が、試験中断をもたらすブレークスルー顕性HEを経験したという所見と一致している(プロトコルにより、対象はブレークスルー顕性HE後に試験を中断した)。
【0217】
処置下で発現したAEを有した対象、重度のTEAEを有した対象、薬物関連TEAEを有した対象、処置下で発現したSAEを有した対象、中断をもたらすTEAEを有した対象、および死亡した対象の割合は、プラセボ群とリファキシミン群との間で類似していた。計79.9%の対象(299人中239人)が、試験の間にTEAEを経験した。対象によって経験された最も一般的なTEAE(例えば、全対象[リファキシミン+プラセボの合計]の≧10%)は、以下の通りであった:下痢([リファキシミン]10.7%対[プラセボ]13.2%)、悪心(14.3%対13.2%)、末梢浮腫(15%対8.2%)、疲労(12.1%対11.3%)、眩暈(12.9%対8.2%)、腹水(11.4%対9.4%)、および頭痛(10%対10.7%)。
【0218】
第2試験は、再発性顕性突発性HEの履歴を有する対象における、リファキシミン550mg BIDの長期的安全性を評価する、進行中の非盲検処置延長試験である。参加資格のある対象は、全て、スクリーニング前12ヶ月以内にConnスコア≧2と等価な立証された重症度を有する顕性HEエピソードの履歴を有し(≧1回の資格のためのエピソードが要求された)、ベースライン査定時に≦2のConnスコアを有し、第1試験に参加したか、または新たな対象であった。第1試験とは異なり、対象は、ブレークスルー顕性HEエピソードを経験した後に、試験から撤退することは要求されなかった。
【0219】
計267人の対象が登録され、208人が中間臨床カットオフの時点で参加中であった。付加的なデータを、データベース固定の時点まで、中間報告のために収集した。
【0220】
Connスコアおよびアステリクシスグレードを試験の間に査定した。従って、第1試験で6ヶ月のリファキシミン処置を完了し、次いで、第2試験に参入した対象、第1試験でプラセボを受容し、次いで、第2試験でリファキシミンを開始した対象、および第2試験でリファキシミン治療を開始した新たな対象について、ブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間を決定することが可能であった。最長680日(1.9年)間、リファキシミンを摂取した対象において、処置期間中のブレークスルー顕性HEエピソードは、全対象266人中72人(27.1%):新リファキシミン群の対象196人中54人(27.6%)、継続リファキシミン群の対象70人中18人(25.7%)によって経験された。
【0221】
最初のブレークスルーHEまでの時間のプロファイルは、第1試験のリファキシミン群と、第2試験の新リファキシミン群との間で類似していた。第1試験でリファキシミンの受容を開始し、第2試験で継続した対象において、リファキシミンの耐久性の防御効果が観察された(リファキシミンへの曝露の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)。
【0222】
対象266人のうち計133人(新リファキシミン群98人および継続リファキシミン群35人)が、何らかの原因のために入院した。対象曝露について規準化すると、これは、0.60イベント/PEYという入院率を表す。計59人がHEエピソードにより入院した(例えば、HE原因)。対象曝露について規準化すると、これは、0.29イベント/PEYというHE原因入院率を表す。低いHE原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEからの寛解の維持の結果として、第2試験におけるリファキシミン治療(0.29イベント/PEY)と、第1試験におけるリファキシミン治療(0.30イベント/PEY)との間で一致した。Connスコアおよびアステリクシスグレードの追跡:Connスコアおよびアステリクシスグレードのベースラインからの変化。Connスコアは、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されるかまたは改善された。最終診察時、対象の70.7%(対象266人中188人)が、ベースラインと比較して、Connスコアの変化を有しておらず、20.3%(266人中54人)が、改善を有していた。これは、大多数の対象(91%)において、精神状態が、処置期間にわたり維持されたかまたは改善されたことを示している。Connスコア1、2、または3で試験に参入した対象(例えば、測定可能な改善が可能であった対象)84人の対象(新リファキシミン70人および継続リファキシミン14人)のうち、54人の対象(54/84=64.3%)が、中間分析のために記録された最終診察時に、ベースラインからの1グレード(47人の対象;56.0%)または2グレード(7人の対象;8.3%)の改善を示した。全ての対象が、経時的に悪化する可能性があり、24人/266人(9.0%)の対象が実際に1グレードまたは2グレード悪化した。
【0223】
Connスコアと同様に、アステリクシスグレードも、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されたかまたは改善された。最終診察時、対象の77.1%(対象266人中205人)が、変化を有しておらず、16.2%(266人中43人)が、ベースラインと比較して、アステリクシススコアの改善を有していた。これは、神経学的障害の増加に関連した神経運動症状が、対象の83.3%で、処置期間にわたり維持されたことを示している。アステリクシススコア1、2、または3で試験に参入した対象(例えば、改善が可能であった対象)67人の対象(新リファキシミン55人および継続リファキシミン12人)のうち、43人の対象(43/67=64.2%)が、この中間分析のために記録された最終診察時に、ベースラインからの1グレード(34人の対象;50.7%)、2グレード(4人の対象;6.0%)、または3グレード(5人の対象;7.5%)の改善を示した。全ての対象が、経時的に悪化する可能性があり、18人/266人(6.8%)の対象が実際に1グレード、2グレード、または4グレード悪化した;アステリクシスグレードの悪化の発生率は、新リファキシミン群(12人/196人の対象;6.1%)と、継続リファキシミン群(6人/70人の対象;8.6%)との間で類似していた。
【0224】
第2試験における曝露の中央値は、新リファキシミン群(第1試験でプラセボを受容した対象または第1試験に参加しなかった対象)で253日(7日〜680日の範囲)、継続リファキシミン群(第1試験および第2試験でリファキシミンを受容した対象)で265.5日(10日〜673日の範囲)、全リファキシミン群(第2試験でリファキシミンを受容した全ての対象)で255日(7日〜680日の範囲)であった。この中間分析の時点で、大部分の対象が、6〜<9ヶ月間(21.4%)または9〜<12ヶ月間(32.3%)、リファキシミンを受容していた。
【0225】
この中間分析の時点で、230人(86.5%)の対象でTEAEが報告された。対象によって経験された最も一般的なTEAE(例えば、全対象の≧10%)は、以下の通りであった:末梢浮腫(15.8%);尿路感染および悪心(各12.8%);ならびに腹痛および腹水(各10.5%)。HEに関連した兆候および症状は、SAEの定義を満たさない限り、AEと見なされなかったため、効力分析で計数されたHEを有する対象の数(72人の対象;27.1%)は、安全性分析のために計数されたもの(57人の対象;21.4%)より高いことに注意すること。
【0226】
大部分のTEAEの強度が軽度または中程度であり、対象の40.2%が、試験者により重度であると判断されたTEAEを少なくとも一つ経験した。試験薬物に関連すると見なされたTEAEの発生率は、新リファキシミン群(7.7%)と、継続リファキシミン群(7.1%)との間で比較可能であった。処置下で発現したSAEは、対象の47.4%によって経験された。
【0227】
図1は、ITT集団における処置群による最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間のカプランマイヤー推定値を例示する。表18は、処置期間の間にブレークスルー顕性HEを経験した対象の割合のカプランマイヤー推定値および統計分析の結果を提示する。試験を完了し、ブレークスルー顕性HEイベントを経験しなかった対象は、6ヶ月の診察の時点で打ち切られた。ブレークスルー顕性HE以外の理由(例えば、肝臓移植、AE、対象からの要請)で早期に終結した対象は、対象がブレークスルー顕性HEエピソードまたはその他の結果(例えば、死亡状態)を経験したか否かを決定するために、無作為化の日から6ヶ月目に照会された。ブレークスルー顕性HEのなかった対象は、照会時または死亡時のいずれか早い方で打ち切られた。従って、6ヶ月までのブレークスルー顕性HEエピソードについて完全な把握が達成された。
【0228】
(表18)第1試験:最初のブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
表脚注は次の頁にある。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
b 処置期間中に起こったイベントの数。
c 処置期間中にブレークスルー顕性HEを経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までブレークスルー顕性HEがない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群におけるブレークスルー顕性HEのハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0229】
ブレークスルー顕性HEエピソードは、無作為化後6ヶ月の期間(170日まで)に、リファキシミン群の対象140人中31人、プラセボ群の対象159中73人によって経験された。ブレークスルー顕性HEまでの時点のカプランマイヤー推定値の群間の比較は、リファキシミンの防御効果を示した(p<0.0001)。これらのデータは、リファキシミン処置が、この試験の間にブレークスルー顕性HEを経験するリスクを、プラセボと比較して57.9%低下させたことを示す。リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者を介助するために必要とされる家族の負担を軽減することができ、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させる。
【0230】
ブレークスルー顕性HEエピソードに対する予後因子の可能性のある効果を調査するため、以下の予後因子を調査した:
・性別(男性か女性か);
・年齢;
・人種(白人か非白人か);
・分析地域(北米かロシアか);
・MELDレベル;
・Connスコア(0か1か);
・ベースラインにおける糖尿病(あるかないか);
・現在の確証された寛解の期間;および
・無作為化前6ヶ月以内のHEエピソードの数。
【0231】
ブレークスルー顕性HEエピソードの強力な独立した予測因子は、ベースライン年齢(p=0.0160)、MELDスコア(p=0.0003)、現在の確証された寛解の期間(p=0.1089)、および過去のHEエピソードの数(p=0.0022)であった。
【0232】
これらのデータは、有意な予後因子について調整した後、リファキシミン処置が、この試験の間にブレークスルー顕性HEエピソードを経験するリスクを、プラセボと比較して60%低下させたことを示す。最も影響力のある予後因子は、年齢(p=0.0315)およびベースラインMELDスコア(p=0.0003)であった。
【0233】
結果は、リファキシミンのブレークスルー顕性HEエピソードからの高度に有意な防御効果(p<0.0001)が、統計的に有意な競合因子の存在下で維持されたことを示す。
【0234】
第2試験において、曝露の中央値は、新リファキシミン群(第1試験でプラセボを受容した対象または第1試験に参加しなかった対象)で253日(7日〜680日の範囲)、継続リファキシミン群(第1試験および第2試験でリファキシミンを受容した対象)で265.5日(10日〜673日の範囲)、全リファキシミン群(第2試験でリファキシミンを受容した全対象)で255日(7日〜680日の範囲)であった。
【0235】
最長680日(1.9年)間、リファキシミンを摂取した対象において、処置期間中のブレークスルー顕性HEエピソードは、全対象266人中72人(27.1%):新リファキシミン群の対象196人中54人(27.6%)、継続リファキシミン群の対象70人中18人(25.7%)によって経験された。図2は、二重盲検無作為化第1試験に参加した対象を、長期的な非盲検試験である第2試験の新リファキシミン対象と比較したものである。
【0236】
最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間のカプランマイヤー推定値は、第1試験のリファキシミン群と第2試験の新リファキシミン対象との間で類似していた。また、第1試験のリファキシミン群(22%、[リファキシミン群]140人中31人)と、第2試験の新リファキシミン群(27.6%、196人中54人)とで、類似した割合の対象がブレークスルー顕性HEを有した。曝露について調整すると、ブレークスルーHEエピソードの率は、第1試験のリファキシミン群では0.62イベント/PEY、それに対し、第2試験の新リファキシミン対象では0.38イベント/PEYであった。これらのデータは、リファキシミンを受容した対象におけるブレークスルー顕性HEからの防御が、二つの試験の間で一致したことを証明している。
【0237】
図7についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、ブレークスルー顕性HEなしの対象の割合を表す。
【0238】
最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第1試験のデータが、リファキシミン群(短い破線)およびプラセボ群(直線)について示される。新リファキシミン群における最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第2試験のデータは、長い破線で示される。
【0239】
図8において、第1試験のプラセボ対象を、第2試験でリファキシミン治療にクロスオーバーした後、追跡した。ブレークスルー顕性HEは、プラセボ処置中の82人中39人に対して、リファキシミン処置中は82人中15人により経験された。第1試験におけるプラセボ経験と、第2試験におけるリファキシミン経験との間の、最初のブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値の比較において、リファキシミンの著しい防御効果が観察された。プラセボに対するリファキシミンのハザード比は、0.302であった(相対リスクの群間差について、95%CI:0.166〜0.549、p<0.0001)。この結果は、第2試験におけるリファキシミン処置中にブレークスルー顕性HEを経験するリスクが、第1試験における過去のプラセボ経験と比較して70%低下したことを表している。
【0240】
図8についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、ブレークスルー顕性HEなしの対象の割合を表す。最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第1試験のデータが、プラセボ群について、左パネルに示される。右パネルは、第2試験においてリファキシミン治療にクロスオーバーした第1試験のプラセボ対象(n=82)における、第2試験における最初のブレークスルー顕性HEまでの時間を示す。左パネルと右パネルとの間の垂直の線は、二重盲検試験の終了および非盲検試験の開始を示す。
【0241】
図9は、第1試験におけるITT集団における処置群による最初のHE関連入院(例えば、HEに直接起因する入院またはHEが原因の入院)までの時間を例示する。表19は、処置期間の間に最初のHE関連入院を有した対象の割合の推定値および統計分析の結果を提示する。HEによる入院より前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。肝性脳症関連入院は、リファキシミン群の対象140人中19人、プラセボ群の対象159人中36人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中、HE関連入院からの防御効果を有した;HE関連入院のリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.500(95%CI:0.287〜0.873)(p=0.0129)であった。このハザード比は、6ヶ月の処置期間中のHEによる入院のリスクが、プラセボと比較して50%低下したことを表す。これらの結果と一致して、HE関連入院率は、曝露についての規準化後、第1試験のリファキシミン群の方が51%低かった(プラセボの0.78イベント/PEYに対してリファキシミンでは0.38イベント/PEY)。
【0242】
図9についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、HE関連入院なしの対象の割合を表す。破線はリファキシミン群を表し、実線はプラセボ群を表す。白丸および白三角は打ち切られた対象を表す。HEによる入院より前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。肝性脳症関連入院は、HE関連入院CRFに記録された。
【0243】
(表19)第1試験:最初のHE関連入院までの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
略語:CI=信頼区間;SE=標準誤差。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
b 処置期間中に起こったイベントの数。
c 処置期間中にHE関連入院を経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までHE関連入院がない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群におけるHE関連入院のハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0244】
HE原因入院(例えば、HEに直接起因する入院のみ)に対するリファキシミン治療の効果も決定された。図5は、第1試験における処置群による最初のHE原因入院までの時間を例示する。
【0245】
肝性脳症原因入院は、リファキシミン群の対象140人中15人、プラセボ群の対象159人中33人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中のHE原因入院からの有意な防御効果を有し;HE原因入院のリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.438(95%CI:0.238〜0.807)(p=0.0064)であった。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、6ヶ月の処置期間中のHEによる入院のリスクの56%の低下を有した。HE原因入院率は、プラセボ群の0.72イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.30イベント/PEYであった。
【0246】
図10についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、HE原因入院なしの対象の割合を表す。破線はリファキシミン群を表し、実線はプラセボ群を表す。白丸および白三角は打ち切られた対象を表す。入院前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。
【0247】
全原因入院に対するリファキシミン治療の効果も決定された。二重盲検第1試験において、リファキシミン対象140人中46人、プラセボ対象159人中60人が、何らかのSAEのために入院した。全原因入院のリスクは、リファキシミン群において、プラセボと比較して30%低下した(相対リスクの群間差について、p=0.0793)。全原因入院率は、プラセボ群の1.31イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.92イベント/PEYであった。これらのデータは、リファキシミン処置が、第1試験におけるプラセボ処置と比較して、HE関連/原因入院の負担を低下させることを証明した。また、低いHE関連/原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEの寛解の維持の結果として、第1試験(0.38イベント/PEY)および第2試験(0.29イベント/PEY)におけるリファキシミン治療中に一貫して観察された。
【0248】
図11は、ITT集団における処置群によるConnスコアのベースラインからの増加までの時間を例示する。表20は、処置期間の間にConnスコアの増加を有した対象の割合の推定値および統計分析の結果を提示する。Connスコアの増加を経験する前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。Connスコアのベースラインからの増加までの時間を評価することにより、悪化がブレークスルーHE(例えば、0から1へのConnスコアの増加)の定義に到達しなかったとしても、リファキシミン処置群の対象とプラセボ処置群の対象との間の精神状態の最も初期の悪化を比較することが可能であった。Connスコアの増加は、リファキシミン群の対象140人中37人、プラセボ群の対象159人中77人について報告された。リファキシミンの高度に有意な防御効果が観察された;6ヶ月の処置期間中にConnスコアの増加(例えば、精神状態の悪化)を経験するリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.463(95%CI:0.312〜0.685)(p<0.0001)であった。
【0249】
(表20)第1試験:Connスコアの最初の増加までの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
略語:CI=信頼区間;SE=標準誤差。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。
b 処置期間中に起こったイベントの数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
c 処置期間中にConnスコアの増加を経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までConnスコアの増加がない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群のConnスコアの増加を経験するハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0250】
図12は、第1試験におけるITT集団における処置群によるアステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間を例示する。表21は、処置期間の間にアステリクシスグレードの増加を有した対象の割合の推定値および統計分析の結果を提示する。アステリクシスグレードの増加を経験する前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。
【0251】
アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間を評価することにより、リファキシミン処置群の対象とプラセボ処置群の対象との間で、神経運動機能の最も初期の悪化を比較することが可能であった。アステリクシスグレードの増加は、リファキシミン群の対象140人中32人、プラセボ群の対象159人中50人について報告された。統計的有意の傾向を示した、アステリクシスグレードの増加(例えば、神経運動機能の悪化)からのリファキシミンの防御効果が観察された;6ヶ月の処置期間中にアステリクシスグレードの増加を経験するリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.646(95%CI:0.414〜1.008)(p=0.0523)であった。
【0252】
(表21)第1試験:アステリクシスグレードの最初の増加までの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
略語:CI=信頼区間;SE=標準誤差。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
b 処置期間中に起こったイベントの数。
c 処置期間中にアステリクシスグレードの増加を経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までアステリクシスグレードの増加がない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群のアステリクシスグレードの増加を経験するハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0253】
最悪の応答(1、高い疲労度)から最適な応答(7、最小の疲労)までの7点の尺度を使用することにより、疲労のレベルによって対象を分類した。プラセボ群とリファキシミンの群との間で、CLDQ疲労スコアのベースラインからの変化の最小の差が観察された。疲労スコアの平均値(SD)は、プラセボ群およびリファキシミン群において、それぞれ、ベースラインで3.34(1.406)対3.28(1.326)、3.51(1.529)対3.57(1.527)であった。改変された精神状態および神経運動状態のため、顕性HEブレークスルーエピソード中の対象はCLDQ査定を完了することができなかった。
【0254】
表22は、第1試験における処置群によるベースラインから処置終了時までの静脈アンモニアレベルの変化を集計する。
【0255】
第1試験において、静脈アンモニアレベルは、試験の間に高度に可変性であった。しかしながら、リファキシミン群の対象は、プラセボにより処置された対象と比較して、静脈アンモニアレベルの有意に大きな低下を有していた(p=0.0391)。顕性HEの基礎をなすCNS効果に関連している定量的査定である静脈アンモニアレベルは、Connスコア(またはConnスコアとアステリクシスグレードとの組み合わせ)の臨床的評価により決定されるようなブレークスルー顕性HEの発生を高度に予測することが示され、それにより、主要な効力測定値の信頼性および臨床的関連性が強調された。主要有効性エンドポイントの静脈アンモニアレベルとの有意な相関は、第1試験における主要な効力測定値の信頼性および臨床的関連性を証明している。
【0256】
(表22)第1試験:処置群による静脈アンモニアレベルのベースラインからの変化の平均値(SD)(ITT集団)
注釈:ベースライン値は、試験薬物の初回投与前に入手可能であった最後の値であり、処置終了時の値は、処置期間中の最後に入手可能であったベースライン後の値であった。
【0257】
第2試験
第2試験において、Connスコアは、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されたかまたは改善された。最終診察時、対象の70.7%(対象266人中188人)が、ベースラインと比較して変化を有しておらず、20.3%(266人中54人)が、Connスコアの改善を有していた。これは、大多数の対象(91%)において、処置期間にわたり精神状態が維持されたかまたは改善されたことを示している。Connスコアと同様に、アステリクシスグレードも、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されたかまたは改善された。最終診察時、対象の77.1%(対象266人中205人)が、ベースラインと比較して変化を有しておらず、16.2%(266人中43人)が、アステリクシススコアの改善を有していた。これは、対象の83.3%において、神経学的障害の増加に関連した神経運動症状が、処置期間にわたり維持されたことを示している。第2試験のための最終診察は、中間分析のために記録された最終診察である。
【0258】
Connスコアの維持または改善は、最長840日間のリファキシミン処置中に、対象の>85%について観察された;全リファキシミン経験について曝露の平均値(±SD)は273.8日(160.92日)であった(曝露結果は、ISS、モジュール5.3.5.3.2に詳細にある)。計65.5%(337人中220人)の対象が、Connスコアの変化を有しておらず、21.1%(337人中71人)が、ベースラインから最終診察時までのConnスコアの改善を有していた。同様に、アステリクシスグレードの維持または改善が、リファキシミン処置中に対象の>90%について観察された。対象の75.2%(337人中252人)について、アステリクシスグレードのベースラインからの変化が報告されず、17.3%が改善を有していた。
【0259】
≧1のConnスコアで試験に参入した対象、例えば、改善が可能であった対象118人のうち、62.2%(118人中71人)が、最後の査定でベースラインからConnスコア0への改善を示した。また、≧1のアステリクシスグレードで参入した対象、即ち、アステリクシスグレードの改善が可能であった対象99人のうち、58.6%(99人中58人)が、ベースラインから試験終了時までのアステリクシスグレードの改善を示した。
【0260】
第2試験の新リファキシミン対象(例えば、3002でリファキシミンを開始した)と、継続リファキシミン対象(例えば、第1試験および第2試験でリファキシミンを受容した)と、全リファキシミン経験対象(例えば、第1試験または第2試験でリファキシミンを受容した)との間で、Connスコアおよびアステリクシスグレードのベースラインから最終診察時までの変化は類似していた。
【0261】
これらの結果は、リファキシミンによる処置が、Connスコアの悪化の防止(プラセボに対して2.46倍、p<0.0001)およびアステリクシスグレードの悪化の防止(プラセボに対して1.92倍、p=0.0262)においてプラセボより有意に有効であった、第1試験からの結果を支持している。
【0262】
CFF結果のベースラインからの変化(第1試験)
CFF結果の増加は、HEを有する患者における神経学的機能の改善を表す。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、ベースラインから処置終了時までのCFF結果の有意に大きな増加を有していた(表23)。CFF結果の変化の平均値(±SD)は、プラセボ群の0.355(±4.70)に対してリファキシミン群では0.945(±4.75)であった(群間差について、p=0.0320)。
【0263】
静脈アンモニアレベルの相関と同様に、CFF結果の定量的査定とブレークスルー顕性HEの発生との間には、強力な相関があった。
【0264】
(表23)処置群によるCFF検査結果のベースラインからの変化の平均値(SD)(ITT集団)
注釈:ベースライン値は、試験薬物の初回投与前に入手可能であった最後の値であり、処置終了時の値は、処置期間中の最後に入手可能であったベースライン後の値であった。
【0265】
≧6ヶ月間1日2回ラクツロース30mLを受容し、続いて、≧6ヶ月間1日3回リファキシミン400mgによる処置を受容したHEを有する患者145人について、遡及的カルテ調査を実施した。リファキシミン処置を支持する劇的な差が観察された。≧75%のコンプライアンスは、ラクツロース処置中よりリファキシミン処置中の方が有意に良好であった;患者の92%が予定されたリファキシミン用量の≧75%を受容したのに対し、予定されたラクツロース用量の≧75%を受容したのは患者の31%であった。入院の総数、入院の期間、HEエンドポイント、および治療のコストを、二つの処置計画の間で比較した。ラクツロース処置と比べて、有意に少ない入院(0.5対1.6)および入院日数(2.5日対7.3日)が、リファキシミン処置について報告され(p<0.001)、患者1人当たりの入院費用は、ラクツロース処置中の56,635ドルに対して、リファキシミン処置中は14,222ドルであった。
【0266】
処置期間の終了時のHEエンドポイントに関して、アステリクシスは、患者の63%(リファキシミン)対93%(ラクツロース)で報告され(p<0.001)、3または4のConnスコアは、6%(リファキシミン)対25%(ラクツロース)で観察された(p<0.001)。さらに、リファキシミン治療中より有意に多い患者が、ラクツロース治療中に下痢、鼓腸、および腹痛を有した(p<0.001)。
【0267】
2004年1月から2005年11月までの期間に、HE Connスコア2で初診を受けた肝臓移植患者39人のカルテ調査において、入院および治療コストを分析した。24人の患者がラクツロースにより処置され、15人がリファキシミンにより処置された。ラクツロース群については19回、リファキシミン群については3回の入院が報告された。平均在院日数は、ラクツロース群よりリファキシミン群の方が有意に短かった(3.5日[3日〜4日の範囲]対5.0日[3日〜10日の範囲][p<0.001])。患者1人当たりの治療(入院、緊急治療室での診療、および薬物コスト)の平均年間総コストは、リファキシミン群については7958ドル、ラクツロース群については13,285ドルであった。リファキシミンのコストはラクツロースのコストより実質的に高かったが、治療(入院+薬物コスト)の総コストは、ラクツロースにより処置された患者の方が1.67倍高かった。
【0268】
リファキシミンの治療効果の耐久性
第2試験からのデータは、ブレークスルー顕性HEエピソードからの防御についてのリファキシミンの長期耐久性に関する情報を提供する。第1試験(6ヶ月の処置)の終了時に寛解中であった、第1試験からのリファキシミン処置対象を、非盲検試験である第2試験において追跡した(n=60)。リファキシミンロールオーバー対象(第1試験+第2試験)および第1試験のプラセボ対象についての、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間が、図15に示される。これらのロールオーバーリファキシミン対象におけるブレークスルー顕性HEの発生率を、第1試験のプラセボ対象と比較した。リファキシミン対象についてのブレークスルーHEエピソードの発生率は、第1試験のプラセボ群より劇的に低かった(曝露時間について調整した後、ロールオーバーリファキシミンのプラセボに対する比は0.0797であった。リファキシミンとプラセボとの間の差について、p<0.0001)。
【0269】
これらの結果は、リファキシミンが、第1試験において開始し、第2試験において継続した耐久性の防御効果を有していたことを証明した(リファキシミンへの曝露の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)。
【0270】
図13についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、ブレークスルー顕性HEなしの対象の割合を表す。破線は、第1試験(6ヶ月の処置)の終了時に寛解中であって、非盲検試験である第2試験において追跡された、第1試験からのリファキシミン処置対象を表し(n=60)、実線は第1試験のプラセボ群を表す。垂直の線は、二重盲検試験の終了および非盲検試験の開始を示す。白丸は、第1試験のプラセボ群における打ち切られた対象を表し、白三角は継続リファキシミン群における打ち切られた対象を表す。最初のブレークスルー顕性HEエピソードより前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。
【0271】
対象が最初のブレークスルー顕性HEエピソードを経験した後に試験を中断した第1試験とは異なり、第2試験においては、対象はブレークスルー顕性HEを経験した後にリファキシミン治療を継続するオプションを有した。従って、リファキシミン治療中の経時的なブレークスルー顕性HEの発生率を評価した。表24は、試験の間のHEエピソードの総数によるブレークスルー顕性HEエピソードを提示する。
【0272】
全リファキシミン群において、対象の27.1%(266人中72人)が、≧1回のブレークスルー顕性HEエピソードを有した。ブレークスルーHEを有した対象72人のうち、大部分は1回(44人の対象)または2回(18人の対象)のエピソードを有した。10人の対象が、第2試験において、3回以上のブレークスルーHEエピソードを有した。
【0273】
(表24)第2試験:反復エピソードの数によるブレークスルー顕性HEエピソード
略語:HE=肝性脳症。
a HEエピソードの数。対象は、各々の顕性HEエピソードの数のため1回のみ計数された。例えば、対象が3回のエピソードを経験した場合、その対象は3回のエピソードを示す列にのみ含まれ、2回および1回のエピソードについての列には計数されなかった。
【0274】
顕性HEエピソード(HEの負担)の発生率に対するリファキシミンの効果
顕性HEエピソード(例えば、HEの負担)の発生率に対するリファキシミン治療の効果、第1試験または第2試験におけるHEエピソードの数を、リファキシミン治療の非存在下でのHEエピソードの数と比較した。第1試験前の6ヶ月の期間または第2試験前の12ヶ月の期間を、いずれかの試験におけるリファキシミン治療に対して比較した。第1試験への参加の時間は、リファキシミン治療の非存在下での経験を反映せず、従って、第1試験においてHEエピソードのなかった、第2試験にロールオーバーした対象については、第2試験前の12ヶ月の期間を比較のために使用した。第2試験の大部分の対象(266人中152人)が第1試験にも含まれていた。第1試験とは異なり、第2試験の対象は、最初のブレークスルーHEエピソードを経験した後にリファキシミンに残るオプションを有していたため、第2試験における顕性HEエピソードを第1試験と組み合わせた。第1試験前の6ヶ月または第2試験前の12ヶ月の期間に経験された顕性HEエピソードの数は既知であった。リファキシミン治療前の6ヶ月または12ヶ月の期間には、対象の30.8%が>2回のHEエピソードを有したが、第1試験+第2試験における最長840日間(曝露の中央値=253日[およそ8ヶ月])のリファキシミン治療中には、対象の3.6%のみが>2回のHEエピソードを有した。リファキシミン治療の非存在下と比較した、対象がリファキシミンを受容している間の、HEエピソードの発生率のこの差は、再発性顕性HEに関連した重度の肝疾患を有する患者における顕性HEエピソードの負担の軽減におけるリファキシミンの強力な効果を示唆している。
【0275】
肝性脳症は、進行した肝疾患に関連した、重篤で、稀で、複雑で、突発性の神経精神医学的症候群である。肝性脳症は、患者、その家族、および医療システムにとっての驚異的な負担である。顕性HEエピソードは、消耗性であり、患者のセルフケア能力を奪い、高頻度に入院をもたらす。この疾患は、重篤で、慢性的に消耗性であり(セクション1.1にさらに記載される)、一般集団におけるHEの発生率は低いため、リファキシミンは、HE適応症のための稀少医薬品ステータスを与えられている。また、現在のケアの標準には限界があるため、HEを有する患者のための未解決の医学的必要性が存在する。
【0276】
特定の科学理論に拘束されることは望まないが、リファキシミンの作用機序は、標的微生物のDNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、RNA合成における鎖形成の開始の抑制をもたらすことに依ると考えられる。リファキシミンは、他の一般的に使用されている抗菌薬と比較して、病原体の糞便中への根絶の低い率を有し、消化管細菌叢の最小限の改変を引き起こすことから、リファキシミンは、フルオロキノロンのような腸管細菌感染において一般的に使用されている他の薬物とは異なる作用機序を有することが示唆される。リファキシミンの抗菌特性は、MIC以上のリファキシミン濃度での殺菌活性、ならびにMIC未満の濃度で観察される細菌の形態学および生理学的機能の改変に起因するようである。
【0277】
意外なことに、リファキシミンによる慢性処置においては、ネオマイシンのような他の全身抗生物質と比較して、抗生物質に対する耐性の発達のリスクが低いことが、本明細書において発見された。リファキシミン治療中の抗生物質に対する耐性の低いリスクは、リファキシミンに対する耐性が、プラスミドによって媒介されるのではなく、宿主細胞DNAの安定的な変異を必要とするという事実による可能性が高く;従って、プラスミドに基づく機序による、耐性および他の抗生物質に対する交差耐性の蔓延が排除される。また、GI管以外の部位の細菌は、リファキシミンの無視し得る程度の全身濃度のため、認め得る程度の選択圧に曝されない。さらに、高用量のリファキシミンを受容していた潰瘍性大腸炎を有する患者の試験からの微生物学的データは、リファキシミンへのインビボ曝露中に生じたリファキシミン耐性菌コロニーが不安定であり、短期間の処置中断の後に感受性が復活したことを示した。
【0278】
リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者を介助するために必要とされる家族の負担を軽減することができ、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させる。以下は、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第2試験からの結果である。
【0279】
防御効果には再現性があった:最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間の結果は、第1試験のリファキシミン群と第2試験の新リファキシミン対象との間で類似していた;第1試験のリファキシミン群においては22%、第2試験の新リファキシミン群においては27.6%が、ブレークスルー顕性HEを有した。曝露について調整すると、ブレークスルーHEエピソードの率は、第1試験のリファキシミン群においては0.62イベント/PEY、それに対して、第2試験の新リファキシミン対象においては0.38イベント/PEYであった。これらのデータは、リファキシミンを受容した対象におけるブレークスルー顕性HEからの防御が、二つの試験の間で一致したことを証明している。さらに、第1試験のプラセボ対象が第2試験に参入することによりリファキシミン治療にクロスオーバーした場合、第1試験におけるプラセボ経験と第2試験におけるリファキシミン経験との間の、最初のブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値の比較において、リファキシミンの著しい防御効果が観察された。プラセボに対するリファキシミンのハザード比は、0.302(相対リスクの群間差について、95%CI:0.166〜0.549、p<0.0001)であった。この結果は、第1試験における過去のプラセボ経験と比較して、第2試験におけるリファキシミン処置中にブレークスルー顕性HEを経験するリスクが70%低下したことを表す。この低下は、慢性肝疾患を有する集団の老化および推測される進行性にも関わらず起こった。
【0280】
防御効果は耐久性であった:第1試験への参加後に寛解中であったリファキシミン対象を、第2試験において追跡した場合(最長680日間のリファキシミン治療;曝露期間の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)、最初のブレークスルーHEまでの時間のカプランマイヤー推定値は、ブレークスルーHEからの寛解の長期的な維持を証明した。これらのリファキシミン対象についてのブレークスルーHEエピソードの発生率は、第1試験のプラセボと比べて劇的に低く、このことは、リファキシミン処置によりブレークスルーHEエピソードがより少なくなったことを示している(リファキシミンとプラセボとの間の相対リスクの差について、p<0.0001)。
【0281】
他の有効性エンドポイントについての結果も、リファキシミンの統計的に有意な防御効果を証明した。第1試験において、最初のHE関連入院(例えば、HEに直接起因する入院またはHEにより悪化した入院)までの時間の分析は、6ヶ月の処置期間中のリファキシミン群におけるHEによる入院のリスクの低下が、プラセボと比較して、50%であることを証明した、(相対リスクの群間差について、p=0.0129)。第1試験において、リファキシミン群においては、プラセボ群と比較して、HE原因入院(例えば、HEに直接起因する入院のみ)のリスクが56%低下し(相対リスクの群間差について、p=0.0064)、全原因入院のリスクが30%低下した(相対リスクの群間差について、p=0.0793)。第1試験において、リファキシミン群においては、全原因入院率のリスクが、プラセボと比較して30%低下した(相対リスクの群間差について、p=0.0793)。全原因入院率は、プラセボ群の1.31イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.92イベント/PEYであった。
【0282】
第2試験において、低いHE原因入院率は、第1試験のものと一致する率で維持された:第2試験におけるHE原因入院率は0.29イベント/PEYであり、全原因入院は0.66イベント/PEYであった。第1試験および第2試験におけるリファキシミン処置対象における一貫して低いHE関連/HE原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEからの寛解の維持の結果であった。
【0283】
以上、本発明を十分に説明したが、添付の特許請求の範囲の本旨または範囲から逸脱することなく、多くの変化および修飾がなされ得ることが、当業者には明白であろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2008年10月2日出願の米国仮出願第61/102,349号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
肝性脳症(HE)は、肝不全および門脈系シャントに関連した神経学的機能の可逆的な減少により引き起こされる。HEは、米国(US)で報告された劇症肝不全の場合、肝硬変3例中1例で発生し、末期肝疾患に到達する患者のほぼ半分に存在する。いかなる年齢でも発生し得るが、そのピークは、劇症肝疾患(ピーク=40代)および肝硬変(ピーク=50代後半)のピークと平行する。
【0003】
HEの発生率は、一般集団におけるC型肝炎、および高齢患者における肝硬変の発生率と共に増加する可能性が高い。急性HEは、深刻な予後を示し、1年間の生存の可能性は40%である。HEを治療し予防するための組成物および方法が、当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
概要
肝性脳症の予防および治療のための組成物および方法が、本明細書に提供される。
【0005】
一つの態様は、対象へ胃腸(GI)特異的抗生物質を投与する工程を含む、対象における肝性脳症(HE)を治療または予防する方法である。一つの態様において、GI特異的抗生物質はリファキシミンである。別の態様において、リファキシミンは1100mg/日のリファキシミンである。
【0006】
別の態様は、HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与することにより、対象の肝性脳症HEブレークスルーエピソードのリスクを低下させる方法である。
【0007】
さらに別の態様は、HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与することにより、対象における肝性脳症の寛解を維持する方法である。
【0008】
さらに別の態様は、HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、HE患者による入院診療の頻度を低下させる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プラセボを摂取している対象とリファキシミンを摂取している対象との間のラクツロース1日使用量を比較する折れ線グラフである。
【図2】ブレークスルーHEイベントまでの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図3】最初のHE関連入院までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図4】Connスコアの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図5】アステリクシスグレードの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。
【図6】最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)(ITT集団)。
【図7】第1試験(リファキシミン群とプラセボ群との比較)および第2試験(新リファキシミン群)における最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間の比較である。
【図8】第2試験でリファキシミンを開始した第1試験のプラセボ対象における、プラセボ経験中(第1試験)、およびリファキシミン経験へのクロスオーバーの後(第2試験)の、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間の比較を示す。
【図9】最初のHE関連入院までの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)。
【図10】第1試験における最初のHE原因入院までの時間を示す(ITT集団)。
【図11】Connスコアの最初の増加までの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)(ITT集団)。
【図12】アステリクシスグレードの最初の増加までの時間を示す(最長6ヶ月の処置、第1試験の170日目まで)(ITT集団)。
【図13】第1試験においてHEエピソードを有しなかった継続リファキシミン対象についての、プラセボと比較した、最初のブレークスルーHEまでの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
HEの主要な病原は、脳機能に悪影響を及ぼす消化管由来の窒素化合物に関係している。これらの化合物のうちの最も影響力のあるものは、通常は肝臓によって解毒されるタンパク質消化の副産物、アンモニアであると考えられる。しかしながら、肝硬変における血中レベルと精神状態との相関は不正確である。それは、部分的には、アンモニアに対する血液脳関門の透過性が、HEを有する患者においては増加しているためである。その他の消化管由来の毒素も、HEの原因であるとして提唱されている。
【0011】
慢性肝疾患を有する患者において、肝性脳症の発生は、HEのない同年齢の患者と比較して、低い生活の質に関連している。顕性HEエピソードは、消耗性であり、警告なしに現われることがあり、患者のセルフケア能力を奪い、高頻度に入院をもたらす。HEを有する患者は、疲労、昼間の眠気、および意識の低下(Connスコア1);ならびに日々の活動に有意に干渉する錯乱および見当識障害(Connスコア2)、ならびにセルフケア能力の低下を含む症状を経験する。しばしば、このセルフケアの喪失は、不適切な栄養と治療へのノンアドヒアランスとをもたらし、さらに、傾眠の増加、重度の見当識障害、および昏迷(Connスコア3)、または昏睡(Connスコア4)のような、より重度の症状へと進行する。
【0012】
顕性HEエピソードの履歴およびHEエピソードの重症度は、慢性肝疾患を有する患者における生存の減少も予測することが見出された。肝硬変および顕性HEエピソードの履歴を有する患者において、生存の確率は、HEエピソードの経験後、1年目で42%、3年目で23%であった。別の分析において、肝硬変を有する患者におけるConnスコア2のHEエピソードの発生は、死亡のリスクの4倍の増加に関連していた。
【0013】
これらの毒性化合物は、肝機能の低下または門脈系シャントの結果として体循環へ進入する。一旦脳組織に入ると、化合物は、意識および行動に影響を与える神経伝達の改変を生ずる。HEは、γアミノ酪酸(GABA)の興奮およびグルタミン酸の神経伝達の減少をもたらす窒素化合物による全体的な中枢神経系抑圧に起因する。
【0014】
誘発因子には、窒素血症(29%)、鎮静剤、精神安定剤、鎮痛薬(24%)、胃腸出血(18%)、過剰の食事性タンパク質(9%)、代謝性アルカローシス(11%)、感染(3%)、便秘(3%)が含まれる。手術、特に、経頸静脈的肝内門脈体循環短絡術(TIPS)手技も、HEを誘発することがある。未知の原因によるHEは、症例の2%のみを占める。
【0015】
初期の発現は無症候性であり、診断には心理測定的な検査を必要とする。より詳細に以下に記述されるように、ステージ0(人格の検出可能な変化の欠如)からステージ4(昏睡、除脳硬直状態、散大瞳孔)までの範囲の、ウエストヘイブン(West Haven)基準(またはConnスコア)として公知の4つの障害の進行期が存在する。
【0016】
HEは、精神運動機能障害、記憶障害、反応時間増加、感覚異常、集中力低下の連続体として、そして重度の型では昏睡として発現する。変化は、人格、意識、行動、および神経筋肉機能において観察され得る。神経学的兆候には、反射亢進、硬直、ミオクローヌス、およびアステリクシス(筋肉の粗大な「羽ばたき」振戦)が含まれ得る。線で数字をつなぐことのような認知課題が異常になることがある。肝性口臭(甘い呼気臭)が存在することもある。脳波(EEG)追跡は、主として前頭野において、非特異的な遅い三相波活動を示す。プロトロンビン時間が延長され、ビタミンKによって修正可能でないことがある。頭部のコンピューター断層撮影スキャンは、正常である場合もあるし、または全般的な委縮を示す場合もある。最後に、黄疸および腹水のような肝疾患の兆候が認められることもある。
【0017】
HEの診断は、病歴、ならびに身体状態および精神状態の調査に基づき行われ、必要とされる臨床的な要素は、現存の肝疾患の知識、誘発因子、および/または過去のHEの履歴である。EEGは、軽度の症例ですら、徐波活動を示すことがある。血清アンモニアレベルの上昇は、特徴的であるが、不可欠ではなく、脳症のレベルと不十分に相関する。
【0018】
慢性HEを有する患者の管理には、(1)支持療法の準備、(2)誘発因子の同定および除去、(3)消化管からの窒素負荷の低下、ならびに(4)長期治療の必要性の査定が含まれる。消化管からの窒素負荷は、典型的には、非吸収性二糖(ラクツロース)および/または抗生物質を使用して低下させられる。
【0019】
ラクツロースは、米国において一次治療と見なされているが、HEの治療にも予防にも米国では現在認可されていない。ラクツロースは、結腸の腸内細菌によって代謝され、それが、糞便のpHの低下、次いで、緩下効果をもたらし、最終的に、糞便の排除をもたらす。糞便のpHの低下によって、アンモニア(NH3)がアンモニウムイオン(NH4+)へとイオン化され、それが、細菌によって、アミノ酸およびタンパク質の合成のため使用される。これは、血清アンモニアレベルを低下させ、精神機能を改善する。
【0020】
従来の治療は、アンモニアの産生および吸収を低下させることを目標としている。ラクツロースは、典型的には、30〜60gの用量で毎日使用される。しかしながら、用量は、1日2〜3回の半形成便の便通が起こるよう20〜40g TID〜QIDまで滴定され得る。ラクツロースを経口的にまたは経鼻胃管によって投与することができない場合、例えば、ステージ3および4のHEを有する患者には、300cc(200g)の停留浣腸として与えてもよい。
【0021】
急性脳症のため、ラクツロースは、経口的に、内服もしくは経鼻胃管を通して、または停留浣腸を介して投与され得る。通常の経口用量は30gであり、排泄が起こるまで、1〜2時間毎に投薬が続けられる。その時点で、投薬は、毎日2回または3回の軟便の便通を達成するため調整される。
【0022】
ラクツロースは、店頭で容易に入手可能である。商業的には「経口溶液用のラクツロース粉末」としばしば呼ばれる、便利で、比較的無味の製剤が、例えば、Bertek Pharmaceuticals(Sugarland, Tex)から、Kristalose(登録商標)として、10および20gmの小包で入手され得る。緩下薬として一般的に販売されているラクツロースシロップには、Cephulac(登録商標)、Chronulac(登録商標)、Cholac(登録商標)、およびEnulose(登録商標)が含まれる。これらのシロップは、ラクツロースの所望の投薬量を提供するために十分なシロップを使用することにより、ラクツロース粉末の代わりに用いられ得る;典型的には、名前を挙げられたシロップは、シロップ15ml中に約10gmのラクツロースを含有している。
【0023】
ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびパロモマイシンを含む広域性のGI活性抗生物質が、ラクツロースと共に、またはラクツロースなしで使用されている。現在の指針は、定期的に腎臓をモニタリングし、毎年聴覚をモニタリングしながらの、1〜2g/日のネオマイシンの内服、または250のメトロニダゾールを推奨している。ラクツロースは、下痢を誘導して、HEの誘発因子である脱水をもたらすことがある。さらに、ラクツロースに関するコンプライアンスは、その過度に甘い味が患者に嫌われることから制限されている。さらに、排便習慣に連結された投薬スケジュール、ならびに鼓腸、腹部膨満、下痢(脱水をもたらす)、およびアシドーシスという副作用のため、ラクツロースを長期使用することは困難である。
【0024】
HEの治療における抗生物質の使用は、長期使用に関連した毒性によって妨げられる。特に、ネオマイシン、メトロニダゾール、およびアンピシリンの全身吸収は、腎毒性、聴器毒性、腸炎(S.enterocolitis)、および/または耐性菌株の発達の稀な例をもたらしている。さらに、ネオマイシンは、好気性菌のみを阻害する。メトロニダゾールは、肝機能障害を有する患者においては代謝が遅く、アルコール相互作用の可能性を有し(ジスルフィラム様効果)、および高い血中レベルは発作をもたらす場合がある。
【0025】
一つの胃腸特異的抗生物質はリファキシミンである。リファキシミンは、リファマイシンOに由来する非アミノグリコシド系半合成抗生物質である。それは、GI管の腸管病原体に特異的な、非全身性、非吸収性、広域性の経口抗生物質である。リファキシミンは、従来使用されている抗生物質と比べて、HEの治療において有利であることが見出された;例えば、食物摂取またはGI疾患の存在に関わらず、全身吸収が無視し得る程度であり(<0.4%)、高用量または反復投与でも血漿蓄積を示さない。全身吸収の欠如のため、リファキシミンは安全で、よく容認され、従って、患者のコンプライアンスを改善し、現在公知の治療に関連した副作用を低下させる。
【0026】
リファキシミン(INN;The Merck Index, XIII Ed., 8304を参照のこと)は、抗生物質のリファマイシン系に属する抗生物質、例えば、ピリドイミダゾリファマイシンである。リファキシミンは、例えば、胃腸管において、感染性下痢、過敏性腸症候群、小腸内細菌過剰繁殖、クローン病、および/または膵機能不全を引き起こす限局性の胃腸細菌に対して広い抗菌活性を発揮する。リファキシミンは、その化学的特徴および物理的特徴のため、無視し得る程度の全身吸収を特徴とすることが報告されている(Descombe JJ. et al. Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers. Int J Clin Pharmacol Res, 14 (2), 51-56, (1994))。
【0027】
リファキシミンは、イタリア特許IT 1154655およびEP 0161534に記載されている。EP特許0161534は、出発材料としてリファマイシンOを使用したリファキシミン作製の方法を開示している(The Merck Index, XIII Ed., 8301)。US 7,045,620 B1は、リファキシミンの多形相を開示している。ここで言及された出願および特許は、全ての目的のため、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
リファマイシン系抗生物質は、例えば、式I:
の構造を有する化合物であり、
式中、Aは、構造A1:
または構造A2
であり得、-x-は共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず;Rは水素またはアセチルであり;R1およびR2は、独立に、水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、ジ(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、(C1-3)アルコキシ-(C1-4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2-4)-アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2は、ピリジン核の2個の連続している炭素原子と共に、置換されていないか、もしくは1個もしくは2個のメチル基もしくはエチル基によって置換されているベンゼン環を形成し;R3は水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない。
【0029】
Aが上に示されたようなA1またはA2であり、-x-が共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず、Rが水素またはアセチルであり、R1およびR2が、独立に、水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ-(C2-4)アルキル、ジ(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2が、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と共に、ベンゼン環を形成し、R3が水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0030】
Aが上に示されたようなA1またはA2であり、-x-が共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず、Rがアセチルであり、R1およびR2が、独立に、水素、(C1-4)アルキルを表すか、またはR1およびR2が、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と共に、ベンゼン環を形成し、R3が水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0031】
4-デオキシ-4'-メチル-ピリド[1',2'-1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。4-デオキシ-ピリド[1',2':1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0032】
Aが上に示された通りであり、-x-が共有結合性の化学結合であるかまたは存在せず;Rが水素またはアセチルであり;R1およびR2が、独立に、水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ(C1-3)アルキルアミノ(C1-4)アルキル、ジ(C1-3)アルキルアミノ(C1-4)アルキル、(C1-3)アルコキシ-(C1-4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2-4)アルキル、ニトロを表すか、またはR1およびR2が、ピリジン核の2個の連続する炭素原子と共に、置換されていないか、もしくは1個もしくは2個のメチル基もしくはエチル基によって置換されているベンゼン環を形成し;R3が水素原子であるかまたは存在せず;ただし、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらに、AがA2である場合、-x-は共有結合性の化学結合であり、かつR3は存在しない、前記定義のような化合物も、本明細書に記載される。
【0033】
リファキシミンは式II:
の構造を有する化合物である。
【0034】
ある種の態様において、抗生物質には、リファマイシン系、アミノグリコシド系、アンフェニコール(amphenicol)系、アンサマイシン系、β-ラクタム系、カルバペネム系、セファロスポリン系、セファマイシン系、モノバクタム系、オキサセフェム(oxacephem)系、リンコサミド系、マクロライド系、ポリペプチド系、テトラサイクリン系、または2,4-ジアミノピリミジン系の抗生物質のうちの一つまたは複数が含まれる。これらの系の例示的な抗生物質は以下にリストされる。
【0035】
リファキシミンは、胃腸管において、嫌気性株を含む、感染性下痢を引き起こす限局性の胃腸細菌に対して広い抗菌活性を発揮する。リファキシミンは、その化学的特徴および物理的特徴のため、無視し得る程度の全身吸収を特徴とすることが報告されている(Descombe J.J. et al. Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers. Int J Clin Pharmacol Res, 14 (2), 51-56, (1994))。
【0036】
特定の科学理論に拘束されることは望まないが、リファキシミンは、細菌のデオキシリボ核酸依存性リボ核酸(RNA)ポリメラーゼのβサブユニットに結合して、細菌のRNA合成の阻害をもたらすことにより作用する。それは、好気性および嫌気性の両方の多数のグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して活性である。インビトロデータは、リファキシミンが、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、腸球菌(Enterococcus)、および腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の種に対して活性であることを示している。結腸内細菌叢における細菌低下または抗微生物薬に対する耐性の増加は、高頻度には起こらず、臨床的に重要ではない。リファキシミンは、現在、米国外の17か国で認可されており、米国に関しては2004年5月に食品医薬品局(FDA)によって許可された。
【0037】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は、いずれも、例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されるような本発明を制限するものではないことを理解されたい。本願において、他に特記されない限り、単数形の使用には複数形が含まれる。本願において、他に特記されない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」のような他の形の使用は、限定的なものではない。また、「要素」または「成分」のような用語には、他に特記されない限り、1単位を含む要素および成分と、複数のサブユニットを含む要素および成分との両方が包含される。また、「部分」という用語の使用には、モエティの一部またはモエティ全体が含まれ得る。
【0038】
特許、特許出願、論文、書籍、および専門書を含むが、これらに限定されない、本願において引用される文書または文書の一部は、全て、任意の目的のため、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0039】
一つの態様は、治療的に有効な量の胃腸(GI)特異的抗生物質を対象へ投与することにより、肝性脳症(HE)を治療または予防する方法である。本明細書において使用されるような胃腸抗生物質の例には、リファキシミンのようなリファマイシン系抗生物質が含まれる。
【0040】
本発明の態様は、肝性脳症の治療および予防のために、胃腸(GI)特異的抗生物質が有効であることの発見に関する。態様は、HE症状の開始を予防し、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間も延長するための、GI特異的抗生物質の使用に関する。一つの態様において、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間は、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のベースラインConnスコアを有する対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加により評価された。別の態様において、ブレークスルーHEエピソードまでの時間は、Connスコア(精神状態グレード)またはアステリクシスグレードのいずれかがベースラインから増加するまでの時間により、28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目の増加を有する対象の累積的な割合のカプランマイヤー推定値を用いて、評価された。
【0041】
別の態様は、最初のHE関連入院までの時間、または突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間の測定値であった。別の態様は、血中アンモニア濃度のベースラインからの経時的変化の平均値、または臨界融合周波数値のベースラインからの経時的変化の平均値であった。さらなる態様は、ラクツロースの経時的な1日平均消費量、Connスコアのベースラインからの経時的なシフト;またはアステリクシスグレードのベースラインからの経時的なシフトによって示された。他に特記されない限り、値のシフトとは、その値のベースライン値からの変化である。
【0042】
本明細書に記載された処置の効力のその他の測定値には、慢性肝疾患質問票(CLDQ)スコアのベースラインからの経時的変化の平均値;エプワース眠気尺度のスコアのベースラインからの経時的変化の平均値;および>10のエプワース眠気尺度のスコアを有する対象の割合が含まれた。持続性肝性脳症の重症度の評価も、例えば、Connスコアに基づくかもしれない。
【0043】
別の態様において、肝性脳症(HE)に罹患しているか、肝性脳症(HE)に感受性であるか、または肝性脳症(HE)から寛解中である対象が、約24週〜24ヶ月の間、リファマイシン系抗生物質を投与され得る。HEの治療において、リファマイシン系抗生物質は、12ヶ月以上、例えば、対象の全生涯期間にわたり、対象へ投与され得る。一つの態様において、抗生物質は、対象の死亡時まで毎日投与される。
【0044】
一つの態様において、本発明は、GI特異的抗生物質を対象へ投与することにより、対象のブレークスルーイベントを有するリスクを低下させる方法に関する。一つの態様において、処置開始より90日以上前に最後のHEエピソードを有した対象について、不全発生のリスクは58%低下した。別の態様において、不全発生のリスクは約30〜70%低下した。別の態様において、リスクは約40%〜70%低下した。
【0045】
一つの態様において、GI特異的抗生物質の投与より90日超前に最後のHEエピソードを有した対象について、不全発生のリスクは約60%低下した。別の態様において、不全発生のリスクは約2%〜80%低下した。
【0046】
別の態様において、処置開始前6ヶ月以内に2回以下のHEエピソードを有した対象について、ブレークスルーHEエピソードのリスクは約56%低下した。一つの態様において、ブレークスルーHEエピソードのリスクは、約20%〜70%低下した。
【0047】
別の態様において、処置開始前6ヶ月以内に2回超のHEエピソードを有した対象について、ブレークスルーHEエピソードのリスクは約63%低下した。別の態様において、リスクは約30%〜80%低下した。
【0048】
一つの態様において、胃腸(GI)特異的抗生物質の治療的に有効な量には、約1000mg〜約1200mg/日が含まれる。
【0049】
一つの態様において、胃腸(GI)特異的抗生物質の治療的に有効な量には、約1100mg〜約1200mg/日が含まれる。
【0050】
一つの態様によると、胃腸(GI)特異的抗生物質の治療的に有効な量には、約1150mg/日が含まれる。
【0051】
別の態様において、治療的に有効な量は、1日2回の処方の1カプセルまたは1錠という投薬計画であり、この場合、各錠剤は、リファキシミンのような胃腸(GI)特異的抗生物質を約550mg含む。
【0052】
一つの態様において、治療的に有効な量は、1日3回、2カプセルまたは2錠という投薬計画であり、この場合、各カプセルは、胃腸(GI)特異的抗生物質を約200mg含む。
【0053】
一つの態様において、治療的に有効な量は、1日4回投与される胃腸(GI)特異的抗生物質275mgという投薬量である。別の態様において、275mgの胃腸(GI)特異的抗生物質が、1日2回、2つの剤形で投与される。
【0054】
別の態様は、GI特異的抗生物質を対象へ投与することにより、対象におけるHEの寛解を維持する方法である。
【0055】
別の態様は、GI特異的抗生物質を対象へ投与することにより、HEの治療のための入院までの時間を増加させる方法である。一つの態様において、GI特異的抗生物質の投与は入院頻度を約48%低下させる。別の態様において、GI特異的抗生物質は入院頻度を約13%〜約69%低下させる。
【0056】
一つの態様において、胃腸(GI)特異的抗生物質による処置は、対象におけるHEの寛解を維持する。
【0057】
一つの態様において、GI特異的抗生物質は、6ヶ月間、1年間、2〜3年間、対象に投与されるか、または対象の死亡時まで毎日投与される。
【0058】
一つの態様において、対象についてのConnスコアが、GI特異的抗生物質の投与後にベースラインよりも改善される。
【0059】
一つの態様において、生活の質(QoL)測定値が、リファキシミンによる処置の間に、GI特異的抗生物質の投与によりベースラインから改善される。
【0060】
一つの態様において、GI特異的抗生物質は、ラクツロースと共に、ラクツロースによる処置の前に、またはラクツロースによる処置の後に、対象へ投与される。
【0061】
一つの態様において、GI特異的抗生物質は、アライン(align)、アリニア(alinia)、ラクツロース、ペンタサ、コレスチラミン、サンドスタチン、バンコマイシン、ラクトース、アミティーザ、フラジール、ゼゲリッド(zegerid)、プレバシッド、またはミララックスのうちの一つまたは複数と共に投与される。
【0062】
一つの態様において、GI特異的抗生物質による処置の後、対象のConnスコア(精神状態グレード)が減少する。
【0063】
一つの態様において、GI特異的抗生物質による処置の後、Connスコアのベースラインからの増加が増加する。
【0064】
一つの態様において、GI特異的抗生物質による処置の後、Connスコアの増加までの時間の遅延は、約54%である。例えば、Connスコアの増加までの時間の遅延率は約30%〜約70%であり得る。
【0065】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、Connスコアの増加を防止する。例えば、GI特異的抗生物質の投与は、Connスコアのベースラインからの増加までの時間を増加させる。
【0066】
一つの態様において、GI特異的抗生物質の投与は、アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間の増加をもたらす。
【0067】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、アステリクシスグレードの増加までの時間の遅延をもたらす。
【0068】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、最初のHE関連入院までの時間の増加をもたらす。
【0069】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間の増加をもたらす。
【0070】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、血中アンモニア濃度のベースラインからの減少をもたらす。例えば、ベースラインから170日目までの血中アンモニア濃度の減少は、約6μg/dLであり得る。
【0071】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、臨界融合周波数値のベースラインからの増加をもたらす。
【0072】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、ラクツロースの1日消費量のベースラインからの経時的な減少をもたらす。
【0073】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、ラクツロースの1日消費量の、約7回のラクツロース投与から約2回のラクツロース投与への減少をもたらす。
【0074】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、初期にベースラインから増加するラクツロースの使用をもたらす。例えば、該ラクツロース使用は、約1〜約30日であり得る。
【0075】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、Connスコアのベースラインについての経時的なシフトをもたらす。例えば、Connスコアのベースラインについてのシフトは約1〜約2であり得る。
【0076】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、アステリクシスグレードのベースラインからの経時的なシフトをもたらす。
【0077】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、慢性肝疾患質問票(CLDQ)スコアのベースラインからの経時的な変化をもたらす。
【0078】
別の態様において、GI特異的抗生物質の投与は、リファキシミンの投与後、エプワース眠気尺度のスコアのベースラインからの経時的な変化をもたらす。
【0079】
公知のように、末期肝疾患モデル(MELD)スコアは、血清クレアチニン、血清総ビリルビン、およびプロトロンビン時間についての国際標準比INRに基づき、肝疾患の重症度を予測するために利用され得る。MELDスコアは、代償性肝硬変および非代償性肝硬変を有する患者の死亡率の予測において有用であることが示されている。MELDについて与えられる最大スコアは40である。40を越える値には、全て、40というスコアが与えられる。
【0080】
別の態様において、約1〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的の投与を使用した、HEのための処置に応答した。別の態様において、10以下のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答した。別の態様において、11〜18のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する。別の態様において、19〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する。
【0081】
本発明の一つの態様は、28日超の間、1日1100mgのリファキシミンを患者へ投与することにより、HEを治療または予防する方法である。
【0082】
別の態様は、対象におけるラクツロース使用量を減少させる方法である。この方法は、ラクツロースにより処置されている対象にリファキシミンを毎日投与する工程、およびラクツロース消費量を漸減させる工程を含む。例えば、ラクツロース消費量は、ベースラインレベルから、1、2、3、4、5、6単位用量カップまたはそれ以上のラクツロースだけ、減少され得る。あるいは、ラクツロース使用量は、ベースラインレベルから、5、10、15、20、25、30、34、40、45、50、55、60、65、または70gのラクツロースだけ、減少され得る。一つの態様において、ラクツロースのベースライン使用量は、不使用である。
【0083】
本発明の一つの態様は、550mgのリファキシミンを1日2回(BID)対象へ投与する工程を含む、対象におけるHEの寛解を維持する方法である。
【0084】
別の態様は、550mgのリファキシミンを1日2回(BID)対象へ投与する工程を含む、HEの治療のための入院までの時間を増加させる方法である。
【0085】
「投与」または「投与すること」という用語は、意図された機能を達成するために対象へGI特異的抗生物質を導入する経路を含む。使用され得る投与経路の例には、注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、くも膜下腔内)、経口、吸入、直腸、および経皮が含まれる。薬学的調製物は、各投与経路に適した形態で与えられ得る。例えば、これらの調製物は、錠剤またはカプセルの形態で、注射、吸入、眼科用ローション、点眼剤、軟膏、坐剤等によって投与される。注射、注入、または吸入による投与;ローションまたは軟膏による局所投与;および坐剤による直腸投与。経口投与が好ましい。注射は、ボーラスであってもよいし、または連続注入であってもよい。投与経路に依って、GI特異的抗生物質は、意図された機能を達成する能力に悪影響を与えるかもしれない天然条件から防御するため、選択された材料でコーティングされるか、または選択された材料の中に配置されてもよい。GI特異的抗生物質は、単独で投与されてもよいし、または上記のような別の薬剤、または薬学的に許容される担体、またはその両方と共に投与されてもよい。GI特異的抗生物質は、他の薬剤の投与前に、薬剤と同時に、または薬剤の投与後に投与され得る。さらに、GI特異的抗生物質は、インビボで活性代謝物またはより活性な代謝物へと変換される前駆物質として投与されてもよい。
【0086】
一つまたは複数のさらなる治療剤「との組み合わせ」投与には、同時(同時的)投与、および任意の順序での連続投与が含まれる。
【0087】
当業者には容易に明白であるように、投与される有用なインビボの投薬量および特定の投与様式は、年齢、体重、および処置される哺乳動物種、利用される特定の化合物、およびこれらの化合物が利用される具体的な用途に依って変動するであろう。所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルである、有効投薬量レベルの決定は、ルーチンの薬理学的方法を使用して当業者によって達成され得る。典型的には、生成物のヒトへの臨床的適用は、比較的低い投薬量レベルで始められ、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルが増加させられる。
【0088】
本明細書において使用されるように、測定値の「増加」または「減少」とは、他に特記されない限り、典型的には、ベースライン値と比較したものある。例えば、処置を受けている対象についての入院までの時間の増加は、そのような処置を受けていない対象についての入院までの時間のベースライン値と比較したものである。いくつかの場合において、測定値の増加または減少は、その用語が使用される環境に基づき評価され得る。
【0089】
「担体」には、本明細書において使用されるように、利用される投薬量および濃度で、それに曝された細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。しばしば、生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体の例には、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、およびその他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;マンニトールもしくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩を形成する対イオン;ならびに/またはTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0090】
「有効量」という用語には、患者または対象において所望の結果を達成するために必要な、例えば、HEを治療または予防するのに十分な投薬量および期間で、有効である量が含まれる。GI特異的抗生物質の有効量は、対象の疾患状態、年齢、および体重、ならびに対象において所望の応答を誘発するGI特異的抗生物質の能力のような因子によって変動し得る。投薬計画は、最適の治療的応答を提供するよう調整され得る。有効量は、治療的に有益な効果が、GI特異的抗生物質の毒性効果または有害効果(例えば、副作用)を上回るものでもある。
【0091】
「寛解する」、「寛解」、「改善」等は、例えば、対象において、または少なくとも少数の対象において、例えば、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、またはこれらの値のうちの二つの間の範囲で起こる検出可能な改善または改善と一致する検出可能な変化をさす。そのような改善または変化は、リファキシミンにより処置されない対象と比較して、処置された対象において観察され得、この場合、未処置の対象は、同一または類似の疾患、状態、症状等を有するかまたは発症しやすい。疾患、状態、症状、またはアッセイパラメーターの寛解は、例えば、対象による自己査定により、医師の査定により、または、例えば、生活の質査定、疾患もしくは状態の進行の遅延、疾患もしくは状態の重症度の低下、もしくは生体分子、細胞のレベルもしくは活性についての適当なアッセイを含む、適切なアッセイもしくは測定を実施することにより、または対象におけるHEエピソードの検出により、主観的または客観的に決定され得る。寛解は、一時的、長期的、もしくは永久であり得、または、GI特異的抗生物質が対象へ投与されるか、もしくは本明細書もしくは引用された参照に記載されたアッセイもしくはその他の方法において使用される間もしくは後の関連する時点で、例えば、下記の時間枠内で、もしくはGI特異的抗生物質の投与もしくは使用から約1時間後、もしくは対象がそのような処置を受容してから約28日後、もしくは1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、もしくはそれ以降に、可変性であるかもしれない。
【0092】
例えば、症状、分子のレベルまたは生物学的活性等の「モジュレーション」とは、例えば、症状または活性等が、検出可能に増加または減少することをさす。そのような増加または減少は、GI特異的抗生物質により処置されない対象と比較して、処置された対象において観察され得、この場合、未処置の対象は、同一または類似の疾患、状態、症状等を有するかまたは発症しやすい。そのような増加または減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%、またはそれ以上、またはこれらの値のうちの二つの間の範囲であり得る。モジュレーションは、例えば、対象の自己査定によって、医師の査定によって、または、例えば、生活の質査定、対象における分子、細胞、もしくは細胞遊走のレベルもしくは活性についての適当なアッセイを含む、適切なアッセイもしくは測定を実施することによって、主観的または客観的に決定され得る。モジュレーションは、一時的、長期的、もしくは永久であり得、または、GI特異的抗生物質が対象へ投与されるか、もしくは本明細書もしくは引用された参照に記載されたアッセイもしくはその他の方法において使用される間または後の関連する時点で、例えば、下記の時間枠内で、もしくはGI特異的抗生物質の投与もしくは使用から約1時間後〜対象がGI特異的抗生物質を受容してから約3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、もしくはそれ以降に、可変性であるかもしれない。
【0093】
「モジュレートする」という用語も、所望の最終結果が達成されるような、GI特異的抗生物質への曝露に応答して起こる細胞の活性の増加または減少、例えば、動物の細胞の少なくとも一つの亜集団の増殖および/または分化誘導の阻害をさし得、例えば、治療のために使用されたGI特異的抗生物質の治療結果は、特定の処置の間に増加するかもしれないしまたは減少するかもしれない。
【0094】
「GI特異的抗生物質を入手する」のような「入手する」という用語は、GI特異的抗生物質を購入するか、合成するか、またはその他の様式で取得することを含むものとする。
【0095】
「非経口投与」および「非経口投与される」という語句には、本明細書において使用されるように、例えば、経腸投与および局所投与以外の投与様式、通常、注射による投与が含まれ、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内の注射および注入が含まれる。
【0096】
化合物の「予防的に有効な量」という語は、HEの予防または治療において、対象への単回投与または複数回投与により有効であるGI特異的抗生物質の量をさす。
【0097】
「薬学的薬剤組成物」(または薬剤または薬物)という用語は、本明細書において使用されるように、患者へ適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる化学的化合物、組成物、薬剤、または薬物をさす。それは、必ずしも、複数の型の成分を必要としない。
【0098】
組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、ロゼンジ、液体、またはゲル調製物の形態をとり得る。経口投与用の錠剤およびカプセルは、単位用量提示に適した形態をとることができ、従来の賦形剤を含有し得る。これらの例は、以下の通りである:シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、およびポリビニルピロリドンのような結合剤;ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、もしくはグリシンのような賦形剤;ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、ポリエチレングリコール、もしくはシリカのような打錠滑沢剤;ジャガイモデンプンのような崩壊剤;またはラウリル硫酸ナトリウムのような許容される湿潤剤。錠剤は、通常の薬学的実務において周知の方法によってコーティングされてもよい。経口液体調製物は、例えば、水性もしくは油性の懸濁物、溶液、エマルション、シロップ、もしくはエリキシルの形態をとってもよいし、または使用前に水もしくはその他の適当な媒体で再生するための乾燥物として提示されてもよい。そのような液体調製物は、懸濁化剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、水素化食用脂、乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアラビアゴム;非水性媒体(食用油を含む)、例えば、アーモンド油、分画ヤシ油、グリセリン、プロピレングリコール、またはエチルアルコールのような油性エステル;p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、またはソルビン酸のような保存剤のような従来の添加剤を含有していてもよく、所望により、従来の調味剤または着色剤を含有していてもよい。
【0099】
「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、および「末梢投与される」という語句は、本明細書において使用されるように、対象の全身に入り、従って、代謝等の過程を受けるような、GI特異的抗生物質、薬物、またはその他の材料の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0100】
GI特異的抗生物質の「治療的に有効な量」という語は、対象への単回投与または複数回投与により、対象における細菌の増殖および/もしくは侵襲の阻害において、または細菌増殖に関連したHEエピソードのような症状の減少において有効なGI特異的抗生物質の量をさす。「治療的に有効な量」とは、対象におけるHEの重症度を低下させるのに十分な、治療(例えば、GI特異的抗生物質を含む組成物)の量もさす。
【0101】
本明細書において使用されるように、「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、HEエピソードまたはHEのさらなる症状の再発、開始、または発症の予防をさす。予防には、HEエピソードの発生および重症度からの防御が含まれる。
【0102】
本明細書において使用されるように、「予防的に有効な量」という用語は、HEエピソードの発症、再発、もしくは開始の予防をもたらすか、または別の治療の予防効果を増強するかもしくは改善するのに十分な、治療(例えば、GI特異的抗生物質を含む組成物)の量をさす。
【0103】
「リファキシミン」には、本明細書において使用されるように、例えば、リファキシミンのα相、β相、γ相、δ相、ε相、η相、ζ相、非結晶相を含む、分子の溶媒和化合物および多形相が含まれる。これらの相は、例えば、USSN 11/873,841;USSN 11/658,702;2005年5月03日出願のEP 05 004 635.2;USPN 7,045,620;US 61/031,329;およびG. C. Viscomi, et al., CrystEngComm, 2008, 10, 1074-1081 (April 2008)に、より詳細に記載されている。これらの参照は、各々、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【0104】
「多形」とは、本明細書において使用されるように、別個の水和物状態にある単一の化合物の異なる結晶相の発生、例えば、いくつかの化合物および複合体の特性をさす。従って、多形体は、同一の分子式を共有している別個の固体であり、さらに、各多形体は、別個の物理的特性を有することがある。従って、単一の化合物が、各々、可溶性プロファイル、融点温度、吸湿性、粒子形、密度、流動性、稠密性、および/またはX線回折ピークのような、異なった別個の物理的特性を有する、多様な多形相を与えることがある。各多形相の可溶性は変動することがあり、従って、薬学的多形体の存在を同定することは、医薬品に予測可能な可溶性プロファイルを提供するために不可欠である。全ての多形相を含む、薬物の全ての固体相を調査し、各多形相の安定性、溶解性、および流動性を決定することが望ましい。化合物の多形相は、X線回折分光法、および赤外スペクトロメトリーのようなその他の方法によって、実験的に区別され得る。多形体の概説および多形体の薬学的適用については、全て、参照により本明細書に組み入れられる、G. M. Wall, Pharm Manuf. 3, 33 (1986);J. K. Haleblian and W. McCrone, J Pharm. ScL, 58, 911 (1969);およびJ. K. Haleblian, J. Pharm. ScL, 64, 1269 (1975)を参照のこと。
【0105】
本明細書において使用されるように、「ブレークスルーHE」には、例えば、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のベースラインConnスコアを有する対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加が含まれる。
【0106】
本明細書において使用されるように、「最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間」には、例えば、リファキシミンの最初の投与の日と、最初のブレークスルーHEエピソードの日との間の期間が含まれる。
【0107】
本明細書において使用されるように、「最初のHE関連入院までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、最初のHE関連入院の日との間の期間が含まれる。
【0108】
本明細書において使用されるように、「Connスコアのベースラインからの増加までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、Connスコアの最初の増加の日との間の期間が含まれる。
【0109】
本明細書において使用されるように、「アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、アステリクシスグレードの最初の増加の日との間の期間が含まれる。
【0110】
本明細書において使用されるように、「処置終了時(EOT)の慢性肝疾患質問票(CLDQ)の疲労ドメインスコアのベースラインからの変化の平均値」とは、リファキシミンの初回投与前に由来するベースラインに対するスコアの平均値である。
【0111】
本明細書において使用されるように、「EOTの血中アンモニア濃度のベースラインからの変化の平均値」とは、リファキシミンの初回投与前に由来するベースラインに対するスコアの平均値である。
【0112】
本明細書において使用されるように、「突発性細菌性腹膜炎(SBP)の診断までの時間」には、例えば、リファキシミンの初回投与と、SBPの最初のエピソードの日との間の期間が含まれる。
【0113】
本明細書において使用されるように、「臨界融合周波数値の各ベースライン後時点におけるベースラインからの変化の平均値」は、例えば、リファキシミンの初回投与前に確立されたベースラインから測定される。
【0114】
「GI特異的抗生物質」および「GI抗生物質」には、本明細書において使用されるように、GI疾患に対する効果を有することが公知の抗生物質が含まれる。例えば、リファマイシン系抗生物質(例えば、リファキシミン)、ネオマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、オーグメンチン、セフレキシン、ペニシリン、アンピシリン、カナマイシン、リファマイシン、バンコマイシン、リファキシミン、およびそれらの組み合わせが、有用なGI特異的抗生物質である。さらに好ましいのは、低い全身吸収を有するGI特異的抗生物質、例えば、リファキシミンである。低い全身吸収には、例えば、10%未満の吸収、5%未満の吸収、1%未満の吸収、および0.5%未満の吸収が含まれる。低い全身吸収には、例えば、約0.01〜1%の吸収、約0.05〜1%の吸収、約0.1〜1%の吸収、約1〜10%の吸収、または約5〜20%の吸収も含まれる。
【0115】
本明細書において使用されるように、「対象」には、ヒトおよび非ヒト動物のような、リファキシミンによって処置可能な腸障害もしくはその他の障害に罹患することができるか、または本明細書に記載されるようなリファキシミンの投与からその他の様式で利益を得ることができる生物が含まれる。好ましいヒト動物には、ヒト対象が含まれる。本発明の「非ヒト動物」という用語には、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、および非ヒト霊長類のような非哺乳動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等が含まれる。腸障害に感受性である、とは、腸障害感染を発症するリスクを有する対象、即ち、免疫抑制に罹患している対象、細菌感染を有する他の対象へ曝された対象、医師、看護師、旅行者下痢を引き起こす細菌が流行していることが既知の遠隔地へ旅行する対象等を含むものとする。
【0116】
「予防的に有効な量」という語は、対象への単回投与または複数回投与により、肝性脳症の予防または治療において有効である、式I、式IIの本発明の化合物、または他の様式で本明細書に記載された化合物の量をさす。
【0117】
別の態様には、例えば、特定の剤形がいつHEの寛解を延長するか、またはHEの将来のエピソードを予防するかもしくは遅延させるかの考察を提供する印刷された添付文書説明書と組み合わせて、リファキシミンの経口投与に適した薬学的組成物を保持している容器を含む、製品が含まれる。投薬量は、HEに罹患している対象への投与のために修飾され得、またはHEに罹患している対象への投与のための添付文書を含み得る。例示的な剤形および投与プロトコルは以下に記載される。組成物は、剤形を保持し分配することができ、組成物と有意に相互作用せず、さらに適切な添付文書と物理的に関係している適当な容器に含有されるであろう。添付文書説明書は、前記のような処置の方法と一致し得る。表示は、二つの物理的な近接を維持する任意の手段によって、容器と会合していてよく、非限定的な例として、それらは、両方とも、ボックスもしくはプラスチック収縮包装のような包装材料に含有されていてもよいし、または添付文書説明書を不明瞭にしない接着剤もしくはその他の結合手段もしくは保持手段等により容器へ説明書を接着させることにより会合していてもよい。
【0118】
一つの態様において、説明書は、リファキシミンの投与がシトクロムP450を誘導し得ることを、肝性脳症に罹患している患者に助言するよう、医療従事者、処方する医師、薬剤師、または対象に通知または助言するであろう。別の態様において、説明書は、リファキシミンを摂取する対象の寛解または再発までに長い時間が存在することを、対象および/または医療提供者に通知するであろう。別の態様において、説明書は、リファキシミンがミダゾラムのCmax、AUC0-t、またはAUC0-∞を有意に改変しないことを、対象および/または医療従事者もしくは医療提供者に通知するであろう。別の態様において、説明書は、リファキシミンがQT延長のリスクを増加させないことを、対象および/または医療従事者もしくは医療提供者に通知するであろう。
【0119】
包装された組成物も提供され、治療的に有効な量のリファキシミンの錠剤またはカプセルを含んでいてよい。キット、例えば、対象におけるHEを治療するためのキットも、本明細書において提供される。キットは、例えば、リファキシミンと、HEのために対象を処置する場合の使用説明書とを含有しているかもしれない。使用説明書は、処方情報、投薬量情報、保管情報等を含有し得る。
【0120】
キットは、薬学的に許容される溶液、担体、および賦形剤と共に、GI特異的抗生物質の薬学的調製物を含み得る。
【0121】
リファキシミンのα相、β相、γ相、δ相、ε相、および非結晶相が、経口使用および局所使用の両方のため、リファキシミンを含有している抗生物質活性を有する薬用調製物の作製において有利に使用され得る。経口使用のための薬用調製物は、他の賦形剤、例えば、マンニトール、ラクトース、およびソルビトールのような希釈剤;デンプン、ゼラチン、糖、セルロース誘導体、天然ゴム、およびポリビニルピロリドンのような結合剤;タルク、ステアリン酸、水素化植物油、ポリエチレングリコール、およびコロイド性二酸化ケイ素のような滑択剤;デンプン、セルロース、アルギン酸、ゴム、および網状ポリマーのような崩壊剤;着色剤、風味剤、および甘味剤と共に、リファキシミンαまたはβまたはγを含有し得る。
【0122】
経口経路によって投与可能な胃腸特異的抗生物質の固体調製物には、例えば、密閉された小包内のコーティング錠および非コーティング錠、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル、糖衣錠、ロゼンジ、ウエハーシート、ペレット、ならびに粉末が含まれる。
【0123】
薬用調製物は、白色ワセリン、白蝋、ラノリンおよびその誘導体、ステアリルアルコール、べんがら、プロピレングリコール、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(ethers of fatty polyoxyethylene alcohols)、エデト酸ナトリウム、グリセロールパルミトステアレート(glycerol palmitostearate)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(esters of fatty polyoxyethylene acids)、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、デンプングリコール酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微晶質セルロース、コロイド性のケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウム、二酸化チタン、プロピレングリコール、コロイド性二酸化ケイ素、またはアルギン酸ナトリウムのような通常の賦形剤と共に、胃腸特異的抗生物質を含有しているかもしれない。
【0124】
ウエストヘイブン基準(Connスコア):
精神状態の変化の評価は、例えば、Connスコア(ウエストヘイブンスコアとしても公知)によってなされ得る。Connスコアは、HE試験において精神状態の測定値として広く使用されており、Connによって修飾されたパーソンズ・スミス(Parsons-Smith)の基準に基づく。以下にリストされるConnスコア化基準を使用して、対象の状態を査定する場合、アステリクシスは考慮されないであろう。
【0125】
Connスコア化システムにおいて使用される尺度を、以下に提供する。
グレード0=人格または行動の異常は検出されない。
グレード1=軽微な意識の低下、多幸感、または不安;注意持続時間の短縮;足し算または引き算の障害。
グレード2=嗜眠;時間に関する見当識障害;明白な人格変化;不適切行動。
グレード3=傾眠〜半昏迷、刺激に対しては応答性;錯乱;重度の見当識障害;奇妙な行動。
グレード4=昏睡;精神状態を検査することが不可能。
【実施例】
【0126】
本発明の態様は、以下に記載される実施例に限定されると解釈されるべきでないことを認識されたい;むしろ、本発明には、本明細書に提供される全ての任意の適用、および通常の当業者の技術の範囲内にある全ての等価な変動が含まれると解釈されたい。
【0127】
実施例1:
1日2回、およそ12時間毎に、リファキシミン550mg錠を1錠、内服するよう、対象に指示した。リファキシミンは、他の薬物治療、例えば、ラクツロース、抗うつ薬、抗炎症薬、メサドン、医師の処方箋による睡眠補助薬、医師の処方箋によらない睡眠補助薬(例えば、Lunesta(商標)(エスゾピクロン)およびAmbien(登録商標)(ゾルピデム酒石酸塩))、抗ヒスタミン薬、利尿薬、緩下薬または便軟化薬、ニューロンチン(neurontin)(ガバペンチン)、ならびにリリカ(lyrica)(プレガバリン)と同時投与されてもよい。
【0128】
ラクツロース使用は、対象のためのオプションであった。ラクツロースを使用した対象については、認められている医療業務に従い、3〜7日間の観察期間に、ある用量に設定された。
【0129】
アステリクシスグレード
アステリクシス(羽ばたき振戦)は、対象に、≧30秒間、手首を背屈させ、指を開き、腕および前腕の両方を伸ばすようにさせて、決定された。アステリクシスは、以下に示されるような5つのグレードの連続体(例えば、グレード0=異常運動なし、に対して、4=ほぼ連続的な羽ばたき動作)で評価された:
グレード0=振戦なし;
グレード1=稀な羽ばたき動作;
グレード2=時々の不規則な羽ばたき;
グレード3=頻繁な羽ばたき;および
グレード4=ほぼ連続的な羽ばたき動作。
【0130】
アステリクシスグレードに関する効力は、アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間として測定された。アステリクシスグレードの増加までの時間は、リファキシミンの初回投与から、アステリクシスグレードのベースラインからの増加の最初の発生までの日数として計算された。
【0131】
ブレークスルーHEエピソード
リファキシミンまたはプラセボのいずれかを摂取する試験において、各対象について、ブレークスルーHEエピソード(例えば、Connスコアグレード≧2(例えば、0もしくは1から≧2へ)、またはConnスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加)を経験する相対リスクを評価した。この分析は、生存時間分析法を使用して、リファキシミンとプラセボとの間で、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間を比較した。最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間は、リファキシミンの初回投与から、ブレークスルーHE(例えば、Connスコアグレード≧2、またはConnスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加)の最初の発生までの日数として計算された。
【0132】
精神状態の変化は、Connスコア(ウエストヘイブンスコアとしても公知)によって評価された。Connスコアは、HE試験において精神状態の測定値として広く使用されており、Connによって修飾されたパーソンズ・スミスの基準に基づく。Connスコア化システムにおいて使用される尺度は、上記の通りである。
【0133】
対象は、0または1のConnスコアを有していた。グレード2以上のConnスコアの増加を、ブレークスルーHEエピソードと見なした。
【0134】
肝性脳症スコア化アルゴリズム(HESA)
肝性脳症スコア化アルゴリズム(HESA)は、精神状態を査定するための、臨床的査定および神経心理学的査定の両方を使用する方法である。このアルゴリズムは、以前に実証されており、Conn基準と相関させられている。
【0135】
臨界融合周波数スコア
専門のCFF装置を使用して、各対象について、臨界融合周波数(CFF)を査定した。CFFとは、対象が連続光の点滅光への移行を観察する周波数であり、ヘルツ(Hz)で測定される。CFFは、精神状態の客観的な査定である。39HzというCFF値が、顕在的なHEを有する対象(例えば、Conn≧1)と、HE症状のない対象(例えば、Conn=0)とを区別するための閾値であることが示されており、より低いCFF値は、より重度のHEを示す(43)。
【0136】
CFFは、連続的な尺度で測定され、迅速に連続して実施された8回の別々の融合点滅移行検査の平均値であった。
【0137】
アンモニア濃度
静脈血試料(10mL)を収集し、アンモニア濃度を当技術分野において公知の方法によって入手した。
【0138】
Connスコア(精神状態グレード)またはアステリクシスグレードのいずれかのベースラインからの増加までの時間
最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間を分析するため、Connスコア(精神状態グレード)またはアステリクシスグレードのいずれかのベースラインからの増加までの時間に対するリファキシミン処置の有効性を査定するため、生存時間分析法を使用した。Connスコアまたはアステリクシスグレードのいずれかの増加までの時間は、リファキシミンの初回投与から、Connスコアまたはアステリクシスグレードのいずれかのベースラインからの増加の最初の発生までの日数として計算された。Connスコアまたはアステリクシスグレードのいずれかの増加までの時間の分析は、リファキシミンとプラセボとの間の、イベントまでの時間の比較に基づいた。
【0139】
最初のHE関連入院までの時間
最初のHE関連入院までの時間に対するリファキシミンの効果を決定した。最初のHE関連入院までの時間は、リファキシミンの初回投与から、HE関連イベントのための最初の入院までの日数として計算された。最初のHE関連入院までの時間の分析は、リファキシミンとプラセボとの間の、入院までの時間の比較に基づいた。
【0140】
突発性細菌性腹膜炎の発症までの時間
突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間に対するリファキシミンの効果を決定した。SBPの発症までの時間は、リファキシミンの初回投与から、腹水収集物がSBP検査陽性となる時までの日数として計算された。SBPの発症までの時間の分析は、リファキシミンとプラセボとの間の、イベントまでの時間の比較に基づいた。
【0141】
血中アンモニア濃度および臨界融合周波数値のベースラインからの経時的変化の平均値
血中アンモニア濃度および臨界融合周波数値の平均値およびベースラインからの変化の平均値を収集した。血中アンモニア濃度および臨界融合周波数値の分析は、(定性的グレードではなく)定量的な値に基づいた。これらのパラメーターのベースラインからの変化の平均値についての処置間の差を、時間およびベースライン値についての固定効果を含む混合効果モデルを使用して推定した。
【0142】
ラクツロースの経時的な1日平均消費量
対象のラクツロース1日消費量を、各月についてのラクツロース1日平均消費量を計算するために使用した。ラクツロース1日平均消費量のベースラインからの変化の平均値についての処置間の差を推定した。
【0143】
CLDQ
CLDQは、以下の6つのドメインに29の項目を含んでいる:腹部症状(3項目)、疲労(5項目)、全身症状(5項目)、活動(3項目)、情動的機能(8項目)、および心配(5項目)。CLDQ全体および6ドメインの各々についての総合スコアを、記述的統計を使用して、ベースライン、ならびに28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目に計算し、集計した。ベースラインから28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目までの全体スコアおよびドメインスコアの変化の平均値についての処置間の差を、収集し、集計し、処置間で比較した。ベースラインからEOTまでの変化の平均値についての処置間の差は、慢性肝疾患質問票(CLDQ)の疲労ドメインスコアのベースラインからEOTまでの変化として決定された。同様に、EOTにおける血中アンモニア濃度のベースラインからの変化の平均値も決定した。
【0144】
生活の質の査定
SF-36、慢性肝疾患質問票(CLDQ)、およびエプワース眠気尺度を、健康関連の生活の質を評価するために使用した。29項目CLDQ質問票は、以下のドメインからなる:疲労、活動、情動的機能、腹部症状、全身症状、および心配。
【0145】
エプワース眠気尺度
エプワース眠気尺度についての総スコアは、記述的統計を使用して、ベースライン、ならびに28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目に計算され集計された。ベースラインから28日目、56日目、84日目、112日目、140日目、および168日目までの総スコアの変化の平均値についての処置間の差を集計し、処置間で比較した。
【0146】
図1は、前記のようなプラセボを摂取する対象とリファキシミンを摂取する対象との間のラクツロース1日使用量を比較する折れ線グラフである。
【0147】
図2は、プラセボ群およびリファキシミン群についてのブレークスルーHEイベントまでの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボを摂取する対象と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、ブレークスルーHEイベントまでの時間が増加した。
【0148】
図3は、最初のHE関連入院までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボ群と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、入院までの時間が増加した。
【0149】
図4は、Connスコアの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボ群と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、Connスコアの最初の増加までの時間が増加した。
【0150】
図5は、アステリクシスグレードの最初の増加までの時間の分布のカプランマイヤー推定値を示す折れ線グラフである。示されるように、プラセボ群と比較して、リファキシミンを摂取する対象については、アステリクシスグレードの最初の増加までの時間が増加した。
【0151】
実施例2:
以下の表は、HEに罹患している対象を治療するための、リファキシミンのようなGI特異的抗生物質の有利な使用を支持する、さらなる証拠を提供する。
【0152】
(表1)ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0153】
(表2)ベースラインConnスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0154】
(表3)過去のラクツロース使用量による、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0155】
(表4)最初のHE関連入院の開始までの時間
【0156】
(表5)Connスコアのベースラインからの増加までの時間
【0157】
(表6)ベースラインMELDスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0158】
(表7)ベースラインMELDスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0159】
(表8)ベースラインMELDスコアレベルによる、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0160】
(表9)過去のラクツロース使用量による、ブレークスルーHEエピソードの開始までの時間
【0161】
(表10)アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間
【0162】
(表11)血中アンモニア濃度(μg/dL)のベースラインからの変化の平均値
【0163】
(表12)臨界融合周波数検査(Hz)のベースラインからの変化の平均値
【0164】
(表13)臨界融合周波数検査(Hz)のベースラインからの変化の平均値
【0165】
(表14)Connスコアのベースラインからの各変化レベルにおける処置群ごとの対象の数
【0166】
(表15)アステリクシスグレードのベースラインからの各変化レベルにおける処置群ごとの対象の数
【0167】
(表16)総エプワース眠気スコアのベースラインからの変化の平均値
【0168】
(表17)最初のHE関連入院の開始までの時間
【0169】
実施例3:
およそ25%のミダゾラムAUCの減少に基づき、リファキシミンによるCYP3A4の誘導が観察された。比較的高い全身曝露が、標的患者集団の大多数において予想される。
【0170】
リファキシミンを、少なくとも7日間、高用量(1650mg/日)で経口投与した場合、ミダゾラムの平均Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞が<25%低下した。リファキシミンは、可能性のあるCYP3A4誘導剤であり、インビトロ試験は、リファキシミンがリファンピンより低い誘導効力を有することを示した。リファキシミンの推定腸管腔濃度は、およそ5μMである。インビトロ試験において、リファキシミン1μMで1.7倍、10μMで1.8倍、CYP3A4活性が誘導された;同濃度で、リファンピンは、それぞれ3.7倍および4倍、CYP3A4を誘導した。さらに、リファキシミンの消化管を標的とした分布は、CYP3A4誘導機序を腸に限定し、低い全身曝露の結果として肝臓における誘導を減らすと考えられる。即ち、リファキシミンについては、腸における誘導と肝臓における誘導とが区別される。これは、最長7日間のリファキシミン200mg TID後に、ミダゾラムを静脈内投与または経口投与した場合に、誘導が存在しなかったことから支持されるように、リファキシミンを受容するヒトにおける本明細書に開示された試験において示される。
【0171】
特定の科学理論に拘束されることは望まないが、門脈血流の相当部分が肝臓の周囲に短絡されている、肝障害を有する患者においては、肝臓におけるCYP3A4誘導のリスクがさらに軽減される可能性が高いと考えられ;3従って、全身曝露の増加には、肝細胞への曝露の比例する減少が伴うはずであり、患者は、肝臓におけるCYP3A4誘導のリスクの正味の増加を被らないはずである。
【0172】
実施例4:
二つの臨床的薬物間相互作用試験はリファキシミン200mg錠を用いて実施され、一つの薬物間相互作用試験は550mg錠を用いて実施された。CYP3A4の公知の基質であるミダゾラムを使用した二つの試験、ならびにエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含有している経口避妊薬を使用した一つの試験を、これらの薬物の薬物動態に対するリファキシミンの効果を査定するために実施した。これらの試験、ならびにヒト肝臓画分を使用したインビトロの誘導および阻害の試験の結果に基づき、XIFAXANによる臨床的に関連する薬物相互作用は予想されない。
【0173】
インビトロ試験は、リファキシミンがシトクロムP450 3A4(CYP3A4)と相互作用する可能性を証明したが、臨床的な薬物間相互作用試験は、リファキシミンがプレシステミック(presystemically)にもシステミック(systemically)にもミダゾラムの薬物動態に有意に影響を与えないことを証明した。付加的な臨床的薬物間相互作用試験は、エチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含有している経口避妊薬のプレシステミック代謝に対して、リファキシミンには効果がないことを示した。従って、ヒトシトクロムP450イソ酵素によって代謝される薬物との臨床的相互作用は予期されない。
【0174】
ミダゾラムとの薬物相互作用の可能性を評価するために、二つの試験を実施した。第1は、3日間、8時間毎に(Q8H)経口(PO)投与されたリファキシミン200mg、および7日間、8時間毎にPO投与されたリファキシミン200mgの、単回静脈内(IV)投与されたミダゾラム2mg、または単回PO投与されたミダゾラム6mgの薬物動態に対する効果を査定するために設計された、非盲検無作為化クロスオーバー薬物相互作用試験であった。ミダゾラム単独と、リファキシミンとの併用との間で、IVミダゾラムもしくはPOミダゾラム、またはその主要代謝物1'-ヒドロキシミダゾラムの全身曝露または排除の計量において、有意差は観察されなかった。従って、リファキシミンは、腸または肝臓のCYP3A4活性に有意に影響を与えないことが示された。
【0175】
非盲検薬物相互作用試験であった第2試験は、リファキシミン550mg 1日3回の、連続7日間および14日間投薬された場合の経口投与(PO)ミダゾラム2mgに対する効果を調査した。この試験において、リファキシミンはCYP3A4の弱い誘導剤であることが示された;リファキシミンの低い全身曝露のため、この相互作用は胃腸管に限定されると考えられる。この誘導は、用量および投薬期間の両方に依存性である。リファキシミンを、少なくとも7日間、高用量(1650mg/日)で経口投与した場合、ミダゾラムの平均Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞が<25%低下した。
【0176】
リファキシミンのインビトロhERG効力およびインビトロタンパク質結合。インビトロhERG試験において、300μMまでのリファキシミン濃度は、hERGカリウム電流の50%の阻害を達成し得なかった。リファキシミンは300μMで沈殿するため、IC50は100μMより大きいと推定された。実際、50%の阻害は達成され得ず;100μMで、阻害の平均値は34.5%であった。試験中の肝障害を有する患者において観察された最も高いCmaxは、52.2ng/mLであった(0.0664μM);この試験に登録された患者からの血漿試料のサブセットにおいて観察された最も高い遊離画分は、44.7%であった。これらの数値を使用すると、最も高い予想遊離血漿曝露は0.03μMになるであろう。これは、hERG実験においてリファキシミンを検査することができる最高濃度と比較して、≧3000倍の低下を表す。この安全域は、臨床的なQT延長のリスクの最小化に一般的に関連している、hERG IC50と非結合型Cmaxとの間の30倍の分離を大きく越えている4。
【0177】
実施例5:
第1試験のための効力パラメーターは、処置中のブレークスルー顕性HEのエピソードの発生であった。ブレークスルー顕性HEエピソードは、Connスコア(またはウエストヘイブングレード)およびアステリクシスグレードを使用することにより評価された。第1試験について定義されるブレークスルー顕性HEエピソードとは、セルフケアに対する有害な効果をもたらし、入院をもたらし得る、神経学的機能の顕著な臨床的に有意な増悪であった。有効性エンドポイントである、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間は、リファキシミンの高度に有意な防御効果を示した(相対リスクの群間差について、p<0.0001)。リファキシミン処置は、6ヶ月の処置期間中にブレークスルー顕性HEを経験するリスクを、プラセボと比較して57.9%低下させた。
【0178】
さらに、この試験は、最初のブレークスルー顕性HEまでの時間が、別々の地理的な地域、北米とロシアとで分析された場合にも、リファキシミンの高度に有意な防御効果を示すことを示した。
【0179】
リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者の介助のために必要とされる家族の負担を軽減し、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させることができる。
【0180】
第2試験においても、類似の結果が示され、例えば、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第2試験:最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間のカプランマイヤー推定値は、第1試験のリファキシミン群と、この第2試験の新リファキシミン対象との間で類似していた。また、第1試験のリファキシミン群([リファキシミン群]の22%、140人中31人)、および第2試験の新リファキシミン群(27.6%、196人中54人)で、類似した割合の対象が、ブレークスルー顕性HEを有した。
【0181】
さらに、第1試験のプラセボ対象が、第2試験に参入することによりリファキシミン治療にクロスオーバーした場合、リファキシミンの防御効果が観察された:第2試験におけるリファキシミン処置中のブレークスルー顕性HEを経験するリスクは、第1試験における過去のプラセボ経験と比較して、70%低下した。この低下は、慢性肝疾患を有する集団の老化および推測される進行性にも関わらず起こった。
【0182】
第2試験は、リファキシミンの防御効果が耐久性であることも示した:第1試験への参加後に寛解中であったリファキシミン対象を、第2試験において追跡したところ、最初のブレークスルーHEまでの時間の推定値は、ブレークスルーHEからの寛解の長期的な維持を証明した(最長680日のリファキシミン治療;曝露期間の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)。これらのリファキシミン対象についてのブレークスルーHEエピソードの発生率は、第1試験のプラセボと比べて低く、これは、リファキシミン処置により、ブレークスルーHEエピソードがより少なくなることを示している。
【0183】
CNS機能障害の認識された定量的測定値である臨界融合周波数(CFF)査定が、第1試験における有効性エンドポイントであった。CFF検査は、振動性の視覚的刺激の脳による処理と、HE重症度の増加によるCNS障害との間の相関を利用する10、11、12、13。この検査は、点滅光が一定光として知覚される周波数を同定する。この周波数の低下は、HEの重症度の増加と関連付けられている。同様に、第1試験における別のエンドポイントである血中アンモニアの上昇も、顕性HEの基礎となるCNS効果に関連した定量的査定である。
【0184】
CFF結果および静脈アンモニアレベルのベースラインから試験終了時までの変化の比較は、試験の間、リファキシミン群において、プラセボと比較して、統計的に有意な、より大きな改善を示した(CFF変化についてはp=0.0320、静脈アンモニア変化についてはp=0.0391)。第1試験において、CFF結果とブレークスルー顕性HE(主要な効力測定値)との間の相関が認められた。静脈アンモニアレベルは、第1試験において、ブレークスルー顕性HEの発生と相関することが見出された。
【0185】
その他の有効性エンドポイントについての結果も、リファキシミンの防御効果を証明した。特に、最初のHE関連入院までの時間という、他の有効性エンドポイントが、リファキシミン対象についてリスクの低下を示した。
【0186】
第1試験において、最初のHE関連入院(例えば、HEに直接起因する入院またはHEによって悪化した入院)までの時間の分析は、6ヶ月の処置期間中、ファキシミン群におけるHEによる入院のリスクの低下が、プラセボと比較して50%であったことを証明した。HE関連入院率は、曝露についての規準化の後、プラセボの0.78イベント/人・曝露年数(PEY)に対してリファキシミンでは0.38イベント/PEYであった。
【0187】
第1試験において、HE原因入院(例えば、HEに直接起因する入院のみ)のリスクは、リファキシミン群において、プラセボと比較して、56%低下した。HE原因入院率は、プラセボ群の0.72イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.30イベント/PEYであった。
【0188】
第1試験において、全原因入院率のリスクは、リファキシミン群において、プラセボと比較して、30%低下した。全原因入院率は、プラセボ群の1.31イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.92イベント/PEYであった。
【0189】
第2試験において、低いHE原因入院率が、第1試験のものと一致する率で維持された:第2試験におけるHE原因入院率は0.29イベント/PEYであり、全原因入院は0.66イベント/PEYであった。第1試験および第2試験におけるリファキシミンにより処置された対象における一貫して低いHE関連/HE原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEからの寛解の維持の結果であった。
【0190】
肝性脳症は、HEのない同年齢の患者と比較して、低い生活の質に関連している。HEを有する患者は、疲労、昼間の眠気、および意識の低下(Connスコア1);ならびに日々の機能に有意に干渉する錯乱および見当識障害(Connスコア2)、ならびにセルフケア能力の低下を含む症状を経験する。しばしば、このセルフケアの喪失は、不適切な栄養および治療へのノンアドヒアランスをもたらし、さらに、入院を必要とする、傾眠の増加、重度の見当識障害、および昏迷のような、より重度の症状へと進行し得る。リファキシミン処置は、HE関連/原因入院から防御し、それにより、患者の機能状態を改善し、介助者に利益を与え;そして肝硬変および関連HEに関連した経済コストを低下させる。
【0191】
米国において再発性HEを有する患者のための処置オプションは限定されている。硫酸ネオマイシンは、肝性昏睡における補助的治療にのみ認可されている。従来の治療は、アンモニアの産生および吸収を低下させることを目標としている。非吸収性二糖、例えば、ラクツロースまたはラクチトールが、典型的には、HEのための一次治療として使用される。非吸収性二糖は、結腸内細菌叢における窒素代謝を変化させ、窒素の糞便中への排泄を増加させることにより、血漿アンモニアレベルを低下させるとの証拠が存在する。ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびパロモマイシンを含む広域性のGI活性抗生物質が、ラクツロースと共に、またはラクツロースなしで使用されている。これらの抗生物質は、脱アミノ細菌による尿素の開裂を阻害し、従って、アンモニアおよびその他の可能性のある毒素の産生を低下させることにより、間接的に作用するようである。現在の指針は、非吸収性二糖による処置の代替法として、(FDAによって認可されていない)ネオマイシンまたはメトロニダゾールによる抗生物質治療を推奨している。
【0192】
非吸収性二糖(例えば、ラクツロース)治療の一般的な副作用には、治療コンプライアンスを妨害し得る不愉快な味覚、排便習慣に連結された投薬スケジュール、ならびに腹部膨満、腹部疝痛、および下痢のようなGI副作用が含まれる。ラクツロースの使用により、脱水をもたらす下痢が報告されており、電解質異常としてのHEを有する患者についての重要な影響は、HEを悪化させ、腎機能障害をもたらすことがある。
【0193】
HEの治療におけるネオマイシンのような全身吸収される抗生物質の使用は、長期使用に関連した聴器毒性および腎毒性によって阻止される。アミノグリコシド系により誘導される腎毒性の発生率は、進行した肝疾患を有する患者において、肝疾患のない患者よりも実質的に大きい。一般集団におけるアミノグリコシド系により誘導される腎毒性の頻度は、3%〜11%である。Leitmanは、入院中に静脈内投与によってアミノグリコシド系を受容した、肝疾患のない患者の34%に対して、肝疾患を有する患者の73%において腎毒性が起こったことを報告し;Cabreraは、腎尿細管傷害または機能的腎障害が、アミノグリコシド系により処置された硬変患者(入院中の静脈内投与)の60%において観察されたことを報告した。さらに、アミノグリコシド系により誘導される腎尿細管傷害を発症した硬変患者においては、高い死亡率および持続性の腎傷害が認められた。従って、アミノグリコシド系は、進行した肝疾患を有する患者においては禁忌であると、現在、広く見なされている。
【0194】
リファキシミンは、証明された有効性、良好な安全性プロファイルのため、そして全身アミノグリコシド系および非吸収性二糖の短所のため、HEを有する患者の処置のための魅力的な治療である。リファキシミンは、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して、そして好気性単離物および嫌気性単離物に対して、インビトロ抗菌活性の広いスペクトルを有する。
【0195】
リファキシミンは経口投与後に吸収されにくいため、この薬物は、胃腸管において選択的に活性である。さらに、リファキシミンの使用による薬物間相互作用のリスクは低い。リファキシミンは、他の一般的に使用されている抗菌薬と比較して、病原体の糞便中への根絶のより低い率を有し、消化管細菌叢の最小限の改変を引き起こすことから、リファキシミンは、フルオロキノロンのような腸管細菌感染において一般的に使用されている他の薬物とは異なる作用機序を有することが示唆される。恐らく、耐性は、宿主細胞DNAの変異によって媒介され、プラスミドに基づくのではないため、リファキシミンによる慢性処置においては、ネオマイシンのような他の全身抗生物質と比較して、抗生物質に対する耐性の発達のリスクが低い。
【0196】
遡及的カルテ調査において、6ヶ月間毎日ラクツロースを受容し、次いで、6ヶ月間毎日リファキシミンを受容したHE患者においては、ラクツロース処置と比較して、HEによる入院の数および期間、全治療コスト、ならびにHEエンドポイント(アステリクシスグレード、Connスコア)が劇的に低下することが見出された。
【0197】
第1試験は、文献で報告された以前の試験の限界(例えば、不均一な対象集団、小さな集団サイズ、短い期間、および精神状態についての不十分なエンドポイント)を克服するために設計された。
【0198】
第1に、処置期間を6ヶ月に増加させた。このより長い期間は、試験を≦6週間に限定した場合より多数の対象が、HEエピソードを経験することを可能にするため計画された。また、より長い処置期間は、慢性肝硬変、および関連した再発性顕性突発性HEを有する対象におけるリファキシミンの長期的安全性を評価する機会を提供した。試験は、重要な副次的有効性エンドポイントとしてHEエピソードによる入院を測定することにより、患者のケアおよび経済コストに関するHEの結果を調査した。
【0199】
第1試験および第2試験において臨床的に関連する基準を使用することにより、顕性HEエピソードを評価するため、精神状態障害をConnスコア(ウエストヘイブン基準)を使用することにより評価し、神経運動異常の重症度をアステリクシスグレードによって評価した。Connスコアは、ステージ0(人格の検出可能な変化の欠如)からステージ4(昏睡、除脳硬直状態、散大瞳孔)までの範囲である。Connスコアは、顕性HEにおける精神状態障害の重症度を等級付けるための、推奨され広く使用されている優れた標準である。アステリクシス(羽ばたき振戦)は、神経学的障害の悪化と共に重症度が増加する顕性HEの神経運動症状である。
【0200】
第1試験についての対照群は、活性群におけるリファキシミン処置と平行して、マッチしたプラセボ錠剤を受容した。第2試験は、再発性突発性顕性HEの履歴を有する対象におけるリファキシミン550mg BIDの長期的安全性を評価するための、進行中の非盲検処置延長(treatment-extension)試験であった。安全性の評価に加え、第1試験において最長6ヶ月のリファキシミン処置を完了し、次いで、第2試験に参入した対象において;第1試験でプラセボを受容し、第2試験でリファキシミン処置にクロスオーバーした対象において;新たな対象として第2試験に参入したHEの履歴を有する患者において、最長およそ1年間の処置中のブレークスルー顕性HEに対するリファキシミンの防御効果を評価するため、試験の間、Connスコアおよびアステリクシスグレードを査定した。
【0201】
使用された投薬計画(550mg BID)は、HEを有する患者およびその他の対象集団におけるリファキシミンによる過去の臨床的経験に基づいていた。いくつかの以前の試験において、リファキシミンは、ラクツロースと併用した場合または併用しない場合、1日1200mgの用量で、HEを有する対象において安全かつ有効であった。リファキシミンとネオマイシンとを比較した6ヶ月の試験(各月14日の処置および14日の処置休止)8において、リファキシミン1200mg/日およびネオマイシン(3g/日)は、HEを有する患者において比較可能な効力を有した。アミノグリコシド系抗生物質は、腎毒性のリスクのため、進行した肝疾患を有する患者においては禁忌である。
【0202】
有効性エンドポイントは、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間であった。ブレークスルー顕性HEエピソードとは、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のConnスコアで試験に参入した対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加として定義された。ブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間は、試験薬物の初回投与の時点から、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの期間であった。試験を完了し、ブレークスルー顕性HEエピソードを経験しなかった対象は、6ヶ月目の診察の時点で打ち切られた。ブレークスルー顕性HE以外の理由で早期に終結した対象は、対象がブレークスルー顕性HEエピソードまたはその他の結果(例えば、死亡状態)を経験したか否かを決定するため、無作為化から6ヶ月目に照会され;対象が照会前にブレークスルー顕性HEイベントを有しなかった場合、その対象は照会の時点で打ち切られた。従って、無作為化後6ヶ月までのブレークスルー顕性HEエピソードについて完全な把握が達成された。試験対象は、スクリーニング前6ヶ月以内に、≧2のConnスコアと等価な2回以上の顕性HEエピソードを有していた(即ち、対象は、立証された再発性顕性HEを有していた)。ベースライン査定時、対象は、0または1のConnスコアを有し、寛解中であった。ブレークスルー顕性HEエピソードとは、前記定義の通り、神経学的機能の著しい増悪であった。
【0203】
第1試験における他の有効性エンドポイントには、例えば、以下のものが含まれた:
1. 最初のHE関連入院までの時間;
2. Connスコア(精神状態グレード)のベースラインからの増加までの時間;
3. アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間;
4. 処置終了時のCLDQの疲労ドメインスコアのベースラインからの変化の平均値;および
5. 処置終了時の静脈アンモニア濃度のベースラインからの変化の平均値。
【0204】
第1試験および第2試験の結果が本明細書に提示される。第1試験は、プラセボと比較して、リファキシミン550mg BIDの効力および安全性を評価する、二重盲検無作為化プラセボ対照試験であった。慢性肝硬変に関連した、証明された再発性顕性突発性HEから寛解中の対象を、0日目(2回目の診察時)に、6ヶ月間、リファキシミン550mg BIDまたはプラセボを受容するよう1:1比で無作為化した。主要有効性エンドポイントは、ブレークスルー顕性HEまでの時間であった。ブレークスルー顕性HEとは、Connスコアのグレード≧2への増加(例えば、0もしくは1から≧2への増加)、または0のConnスコアで試験に参入した対象については、Connスコアおよびアステリクシススコアのそれぞれ1グレードの増加として定義された。対象は、ブレークスルー顕性HEエピソードの時点で試験を中断した。第1試験への参加の後、対象は、非盲検処置延長試験(第2試験)に登録するオプションを有した。
【0205】
計299人の対象を、リファキシミン(140人の対象)またはプラセボ(159人の対象)を受容するよう無作為化した。全ての無作為化された対象が、試験薬物を少なくとも1回受容した。計251人(84%)([リファキシミン]116人、[プラセボ]135人)の対象が、プロトコルに指定された通りの試験を完了した(例えば、6ヶ月の処置を完了するか、またはブレークスルー顕性HEの時点で試験から撤退した)。
【0206】
試験対象は、スクリーニング前6ヶ月以内にConnスコア≧2と等価な2回以上の顕性HEエピソードを有していた(例えば、対象は再発性顕性HEを有していた)。ベースライン査定時、対象は、0または1のConnスコアを有し、寛解中であった。ブレークスルー顕性HEエピソードは、神経学的機能の著しい増悪であった。6ヶ月(170日目まで)の処置期間中、ブレークスルー顕性HEエピソードは、リファキシミン群の対象140人中31人、プラセボ群の対象159人中73人によって経験された。ブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値の群間の比較は、リファキシミンの防御効果を示した(p<0.0001)。これらのデータは、リファキシミン処置が、ブレークスルー顕性HEを経験するリスクを、プラセボと比較して57.9%低下させたことを示す。リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者を介助するために必要とされる家族の負担を軽減することができ、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させる。
【0207】
以下の予後因子が、ブレークスルー顕性HEエピソードの予測因子であることが見出された:ベースライン年齢(p=0.0160)、MELDスコア(p=0.0003)、現在の確証された寛解の期間(p=0.1089)、および過去のHEエピソードの数(p=0.0022)。これらのデータは、リファキシミン処置が、この試験の間にブレークスルー顕性HEエピソードを経験するリスクを、プラセボと比較して60%低下させたことを示している(p<0.0001)。
【0208】
最初のHE関連入院までの時間;ならびにHE関連入院および全原因入院の頻度
肝性脳症関連入院(HEに直接起因する入院またはHEによって悪化した入院)は、リファキシミン群の対象140人中19人、プラセボ群の対象159人中36人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中、HE関連入院からの防御効果を有していた。プラセボと比較して、リファキシミン群の対象は、6ヶ月の処置期間中、HEによる入院のリスクの50%の低下を有していた。HE関連入院率は、プラセボ群の0.78イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.38イベント/PEYであった。
【0209】
肝性脳症原因入院(HEに直接起因する入院のみ)は、リファキシミン群の対象140人中15人、プラセボ群の対象159人中33人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中のHE原因入院からの有意な防御効果を有し;HE原因入院のリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.438(95%CI:0.238〜0.807)(p=0.0064)であった。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、6ヶ月の処置期間中のHEによる入院のリスクの56%の低下を有していた。HE原因入院率は、プラセボ群の0.72イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.30イベント/PEYであった。
【0210】
全原因入院も、プラセボ群(159人60人)よりリファキシミン群(140人中46人)の方が低かった(プラセボと比較してリファキシミン群では30%の低下)。全原因入院率は、対象曝露について規準化した後、リファキシミン群では0.90イベント/PEY、プラセボ群では1.26イベント/PEYであった。HE関連入院率は、リファキシミン群では0.38イベント/PEY、プラセボ群では0.78イベント/PEYであった。リファキシミン処置は、HE関連入院から防御し、それにより、患者およびその介助者の生活の質を改善し、肝硬変および関連HEに関連した経済コストを低下させる。
【0211】
Connスコアのベースラインからの増加までの時間、およびアステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間
独立に分析された場合、これらのエンドポイント両方に関して、リファキシミンの防御効果が観察された;6ヶ月の処置期間中にConnスコアの増加を経験するリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.463(95%CI:0.312〜0.685)(p<0.0001)、アステリクシスグレードの増加を経験するリスクについては、0.646(95%CI:0.414〜1.008)(p=0.0523)であった。
【0212】
処置終了時の静脈アンモニアレベルのベースラインからの変化
プラセボにより処置された対象と比較して、リファキシミン群の対象は、静脈アンモニアレベルのより大きな低下を有した(p=0.0391)。顕性HEの基礎をなすCNS効果に関連している定量的査定である静脈アンモニアレベルは、Connスコア(またはConnスコアとアステリクシスグレードとの組み合わせ)の臨床的評価によって決定されるようなブレークスルー顕性HEの発生と高度に相関していることが見出された。
【0213】
Connスコアおよびアステリクシスグレードの追跡:Connスコアおよびアステリクシスグレードのベースラインからの変化
ベースラインから処置終了時(最後のベースライン後査定またはブレークスルーHEの時点での査定)までの、Connスコアの-1(改善)もしくは0(変化なし);または1、2、もしくは3(悪化)の変化を有した対象の割合に関して、プラセボと比較して有利なリファキシミンの治療効果が観察された。リファキシミン群においては、プラセボと比較して、より高い割合の対象が、Connスコアの-1の変化を経験したか、または変化を経験せず(53.9%に対して77.1%)、より低い割合の対象が、Connスコアの1、2、3、または4の変化を有した。従って、リファキシミンによる処置は、Connスコアの悪化の防止において、プラセボより有効であった(プラセボに対して2.46倍、p=<0.0001)。
【0214】
ベースラインから処置終了時までのアステリクシスグレードの変化について、リファキシミン群においては、プラセボ群より有意に高い割合の対象が、アステリクシスグレードの-2、-1、および0のベースラインからの変化を有し(77.0%に対して88.5%)、有意に低い割合の対象が、1、2、3、または4の変化を有した(23.2%に対して11.6%)。従って、リファキシミンによる処置は、アステリクシスグレードの悪化の防止において、プラセボより有効であった(プラセボに対して1.92倍、p=0.0262)。
【0215】
CFF結果のベースラインからの変化
CFF結果の増加は、HEを有する患者における神経学的機能の改善を表す10、11。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、有意に大きな、ベースラインから処置終了時までのCFF結果の増加を有していた。CFF結果の変化の平均値(±標準偏差[SD])は、プラセボ群の0.355(±4.70)に対してリファキシミン群では0.945(±4.75)であった(群間差について、p=0.0320)。静脈アンモニアレベルと同様に、CFFは、ブレークスルーHEを高度に予測することが示された。
【0216】
試験薬物への曝露の中央値は、リファキシミン群において168日(10日〜178日の範囲)、プラセボ群において110日(6日〜176日の範囲)であった。計64人の対象([リファキシミン]33人および[プラセボ]31人)が、141〜168日間、処置を受容し、98人の対象([リファキシミン]57人および[プラセボ]41人)が、>168日間、処置を受容した。曝露期間の結果は、プラセボ群より低い割合のリファキシミン群の対象が、試験中断をもたらすブレークスルー顕性HEを経験したという所見と一致している(プロトコルにより、対象はブレークスルー顕性HE後に試験を中断した)。
【0217】
処置下で発現したAEを有した対象、重度のTEAEを有した対象、薬物関連TEAEを有した対象、処置下で発現したSAEを有した対象、中断をもたらすTEAEを有した対象、および死亡した対象の割合は、プラセボ群とリファキシミン群との間で類似していた。計79.9%の対象(299人中239人)が、試験の間にTEAEを経験した。対象によって経験された最も一般的なTEAE(例えば、全対象[リファキシミン+プラセボの合計]の≧10%)は、以下の通りであった:下痢([リファキシミン]10.7%対[プラセボ]13.2%)、悪心(14.3%対13.2%)、末梢浮腫(15%対8.2%)、疲労(12.1%対11.3%)、眩暈(12.9%対8.2%)、腹水(11.4%対9.4%)、および頭痛(10%対10.7%)。
【0218】
第2試験は、再発性顕性突発性HEの履歴を有する対象における、リファキシミン550mg BIDの長期的安全性を評価する、進行中の非盲検処置延長試験である。参加資格のある対象は、全て、スクリーニング前12ヶ月以内にConnスコア≧2と等価な立証された重症度を有する顕性HEエピソードの履歴を有し(≧1回の資格のためのエピソードが要求された)、ベースライン査定時に≦2のConnスコアを有し、第1試験に参加したか、または新たな対象であった。第1試験とは異なり、対象は、ブレークスルー顕性HEエピソードを経験した後に、試験から撤退することは要求されなかった。
【0219】
計267人の対象が登録され、208人が中間臨床カットオフの時点で参加中であった。付加的なデータを、データベース固定の時点まで、中間報告のために収集した。
【0220】
Connスコアおよびアステリクシスグレードを試験の間に査定した。従って、第1試験で6ヶ月のリファキシミン処置を完了し、次いで、第2試験に参入した対象、第1試験でプラセボを受容し、次いで、第2試験でリファキシミンを開始した対象、および第2試験でリファキシミン治療を開始した新たな対象について、ブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間を決定することが可能であった。最長680日(1.9年)間、リファキシミンを摂取した対象において、処置期間中のブレークスルー顕性HEエピソードは、全対象266人中72人(27.1%):新リファキシミン群の対象196人中54人(27.6%)、継続リファキシミン群の対象70人中18人(25.7%)によって経験された。
【0221】
最初のブレークスルーHEまでの時間のプロファイルは、第1試験のリファキシミン群と、第2試験の新リファキシミン群との間で類似していた。第1試験でリファキシミンの受容を開始し、第2試験で継続した対象において、リファキシミンの耐久性の防御効果が観察された(リファキシミンへの曝露の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)。
【0222】
対象266人のうち計133人(新リファキシミン群98人および継続リファキシミン群35人)が、何らかの原因のために入院した。対象曝露について規準化すると、これは、0.60イベント/PEYという入院率を表す。計59人がHEエピソードにより入院した(例えば、HE原因)。対象曝露について規準化すると、これは、0.29イベント/PEYというHE原因入院率を表す。低いHE原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEからの寛解の維持の結果として、第2試験におけるリファキシミン治療(0.29イベント/PEY)と、第1試験におけるリファキシミン治療(0.30イベント/PEY)との間で一致した。Connスコアおよびアステリクシスグレードの追跡:Connスコアおよびアステリクシスグレードのベースラインからの変化。Connスコアは、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されるかまたは改善された。最終診察時、対象の70.7%(対象266人中188人)が、ベースラインと比較して、Connスコアの変化を有しておらず、20.3%(266人中54人)が、改善を有していた。これは、大多数の対象(91%)において、精神状態が、処置期間にわたり維持されたかまたは改善されたことを示している。Connスコア1、2、または3で試験に参入した対象(例えば、測定可能な改善が可能であった対象)84人の対象(新リファキシミン70人および継続リファキシミン14人)のうち、54人の対象(54/84=64.3%)が、中間分析のために記録された最終診察時に、ベースラインからの1グレード(47人の対象;56.0%)または2グレード(7人の対象;8.3%)の改善を示した。全ての対象が、経時的に悪化する可能性があり、24人/266人(9.0%)の対象が実際に1グレードまたは2グレード悪化した。
【0223】
Connスコアと同様に、アステリクシスグレードも、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されたかまたは改善された。最終診察時、対象の77.1%(対象266人中205人)が、変化を有しておらず、16.2%(266人中43人)が、ベースラインと比較して、アステリクシススコアの改善を有していた。これは、神経学的障害の増加に関連した神経運動症状が、対象の83.3%で、処置期間にわたり維持されたことを示している。アステリクシススコア1、2、または3で試験に参入した対象(例えば、改善が可能であった対象)67人の対象(新リファキシミン55人および継続リファキシミン12人)のうち、43人の対象(43/67=64.2%)が、この中間分析のために記録された最終診察時に、ベースラインからの1グレード(34人の対象;50.7%)、2グレード(4人の対象;6.0%)、または3グレード(5人の対象;7.5%)の改善を示した。全ての対象が、経時的に悪化する可能性があり、18人/266人(6.8%)の対象が実際に1グレード、2グレード、または4グレード悪化した;アステリクシスグレードの悪化の発生率は、新リファキシミン群(12人/196人の対象;6.1%)と、継続リファキシミン群(6人/70人の対象;8.6%)との間で類似していた。
【0224】
第2試験における曝露の中央値は、新リファキシミン群(第1試験でプラセボを受容した対象または第1試験に参加しなかった対象)で253日(7日〜680日の範囲)、継続リファキシミン群(第1試験および第2試験でリファキシミンを受容した対象)で265.5日(10日〜673日の範囲)、全リファキシミン群(第2試験でリファキシミンを受容した全ての対象)で255日(7日〜680日の範囲)であった。この中間分析の時点で、大部分の対象が、6〜<9ヶ月間(21.4%)または9〜<12ヶ月間(32.3%)、リファキシミンを受容していた。
【0225】
この中間分析の時点で、230人(86.5%)の対象でTEAEが報告された。対象によって経験された最も一般的なTEAE(例えば、全対象の≧10%)は、以下の通りであった:末梢浮腫(15.8%);尿路感染および悪心(各12.8%);ならびに腹痛および腹水(各10.5%)。HEに関連した兆候および症状は、SAEの定義を満たさない限り、AEと見なされなかったため、効力分析で計数されたHEを有する対象の数(72人の対象;27.1%)は、安全性分析のために計数されたもの(57人の対象;21.4%)より高いことに注意すること。
【0226】
大部分のTEAEの強度が軽度または中程度であり、対象の40.2%が、試験者により重度であると判断されたTEAEを少なくとも一つ経験した。試験薬物に関連すると見なされたTEAEの発生率は、新リファキシミン群(7.7%)と、継続リファキシミン群(7.1%)との間で比較可能であった。処置下で発現したSAEは、対象の47.4%によって経験された。
【0227】
図1は、ITT集団における処置群による最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間のカプランマイヤー推定値を例示する。表18は、処置期間の間にブレークスルー顕性HEを経験した対象の割合のカプランマイヤー推定値および統計分析の結果を提示する。試験を完了し、ブレークスルー顕性HEイベントを経験しなかった対象は、6ヶ月の診察の時点で打ち切られた。ブレークスルー顕性HE以外の理由(例えば、肝臓移植、AE、対象からの要請)で早期に終結した対象は、対象がブレークスルー顕性HEエピソードまたはその他の結果(例えば、死亡状態)を経験したか否かを決定するために、無作為化の日から6ヶ月目に照会された。ブレークスルー顕性HEのなかった対象は、照会時または死亡時のいずれか早い方で打ち切られた。従って、6ヶ月までのブレークスルー顕性HEエピソードについて完全な把握が達成された。
【0228】
(表18)第1試験:最初のブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
表脚注は次の頁にある。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
b 処置期間中に起こったイベントの数。
c 処置期間中にブレークスルー顕性HEを経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までブレークスルー顕性HEがない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群におけるブレークスルー顕性HEのハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0229】
ブレークスルー顕性HEエピソードは、無作為化後6ヶ月の期間(170日まで)に、リファキシミン群の対象140人中31人、プラセボ群の対象159中73人によって経験された。ブレークスルー顕性HEまでの時点のカプランマイヤー推定値の群間の比較は、リファキシミンの防御効果を示した(p<0.0001)。これらのデータは、リファキシミン処置が、この試験の間にブレークスルー顕性HEを経験するリスクを、プラセボと比較して57.9%低下させたことを示す。リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者を介助するために必要とされる家族の負担を軽減することができ、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させる。
【0230】
ブレークスルー顕性HEエピソードに対する予後因子の可能性のある効果を調査するため、以下の予後因子を調査した:
・性別(男性か女性か);
・年齢;
・人種(白人か非白人か);
・分析地域(北米かロシアか);
・MELDレベル;
・Connスコア(0か1か);
・ベースラインにおける糖尿病(あるかないか);
・現在の確証された寛解の期間;および
・無作為化前6ヶ月以内のHEエピソードの数。
【0231】
ブレークスルー顕性HEエピソードの強力な独立した予測因子は、ベースライン年齢(p=0.0160)、MELDスコア(p=0.0003)、現在の確証された寛解の期間(p=0.1089)、および過去のHEエピソードの数(p=0.0022)であった。
【0232】
これらのデータは、有意な予後因子について調整した後、リファキシミン処置が、この試験の間にブレークスルー顕性HEエピソードを経験するリスクを、プラセボと比較して60%低下させたことを示す。最も影響力のある予後因子は、年齢(p=0.0315)およびベースラインMELDスコア(p=0.0003)であった。
【0233】
結果は、リファキシミンのブレークスルー顕性HEエピソードからの高度に有意な防御効果(p<0.0001)が、統計的に有意な競合因子の存在下で維持されたことを示す。
【0234】
第2試験において、曝露の中央値は、新リファキシミン群(第1試験でプラセボを受容した対象または第1試験に参加しなかった対象)で253日(7日〜680日の範囲)、継続リファキシミン群(第1試験および第2試験でリファキシミンを受容した対象)で265.5日(10日〜673日の範囲)、全リファキシミン群(第2試験でリファキシミンを受容した全対象)で255日(7日〜680日の範囲)であった。
【0235】
最長680日(1.9年)間、リファキシミンを摂取した対象において、処置期間中のブレークスルー顕性HEエピソードは、全対象266人中72人(27.1%):新リファキシミン群の対象196人中54人(27.6%)、継続リファキシミン群の対象70人中18人(25.7%)によって経験された。図2は、二重盲検無作為化第1試験に参加した対象を、長期的な非盲検試験である第2試験の新リファキシミン対象と比較したものである。
【0236】
最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間のカプランマイヤー推定値は、第1試験のリファキシミン群と第2試験の新リファキシミン対象との間で類似していた。また、第1試験のリファキシミン群(22%、[リファキシミン群]140人中31人)と、第2試験の新リファキシミン群(27.6%、196人中54人)とで、類似した割合の対象がブレークスルー顕性HEを有した。曝露について調整すると、ブレークスルーHEエピソードの率は、第1試験のリファキシミン群では0.62イベント/PEY、それに対し、第2試験の新リファキシミン対象では0.38イベント/PEYであった。これらのデータは、リファキシミンを受容した対象におけるブレークスルー顕性HEからの防御が、二つの試験の間で一致したことを証明している。
【0237】
図7についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、ブレークスルー顕性HEなしの対象の割合を表す。
【0238】
最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第1試験のデータが、リファキシミン群(短い破線)およびプラセボ群(直線)について示される。新リファキシミン群における最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第2試験のデータは、長い破線で示される。
【0239】
図8において、第1試験のプラセボ対象を、第2試験でリファキシミン治療にクロスオーバーした後、追跡した。ブレークスルー顕性HEは、プラセボ処置中の82人中39人に対して、リファキシミン処置中は82人中15人により経験された。第1試験におけるプラセボ経験と、第2試験におけるリファキシミン経験との間の、最初のブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値の比較において、リファキシミンの著しい防御効果が観察された。プラセボに対するリファキシミンのハザード比は、0.302であった(相対リスクの群間差について、95%CI:0.166〜0.549、p<0.0001)。この結果は、第2試験におけるリファキシミン処置中にブレークスルー顕性HEを経験するリスクが、第1試験における過去のプラセボ経験と比較して70%低下したことを表している。
【0240】
図8についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、ブレークスルー顕性HEなしの対象の割合を表す。最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第1試験のデータが、プラセボ群について、左パネルに示される。右パネルは、第2試験においてリファキシミン治療にクロスオーバーした第1試験のプラセボ対象(n=82)における、第2試験における最初のブレークスルー顕性HEまでの時間を示す。左パネルと右パネルとの間の垂直の線は、二重盲検試験の終了および非盲検試験の開始を示す。
【0241】
図9は、第1試験におけるITT集団における処置群による最初のHE関連入院(例えば、HEに直接起因する入院またはHEが原因の入院)までの時間を例示する。表19は、処置期間の間に最初のHE関連入院を有した対象の割合の推定値および統計分析の結果を提示する。HEによる入院より前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。肝性脳症関連入院は、リファキシミン群の対象140人中19人、プラセボ群の対象159人中36人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中、HE関連入院からの防御効果を有した;HE関連入院のリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.500(95%CI:0.287〜0.873)(p=0.0129)であった。このハザード比は、6ヶ月の処置期間中のHEによる入院のリスクが、プラセボと比較して50%低下したことを表す。これらの結果と一致して、HE関連入院率は、曝露についての規準化後、第1試験のリファキシミン群の方が51%低かった(プラセボの0.78イベント/PEYに対してリファキシミンでは0.38イベント/PEY)。
【0242】
図9についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、HE関連入院なしの対象の割合を表す。破線はリファキシミン群を表し、実線はプラセボ群を表す。白丸および白三角は打ち切られた対象を表す。HEによる入院より前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。肝性脳症関連入院は、HE関連入院CRFに記録された。
【0243】
(表19)第1試験:最初のHE関連入院までの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
略語:CI=信頼区間;SE=標準誤差。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
b 処置期間中に起こったイベントの数。
c 処置期間中にHE関連入院を経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までHE関連入院がない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群におけるHE関連入院のハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0244】
HE原因入院(例えば、HEに直接起因する入院のみ)に対するリファキシミン治療の効果も決定された。図5は、第1試験における処置群による最初のHE原因入院までの時間を例示する。
【0245】
肝性脳症原因入院は、リファキシミン群の対象140人中15人、プラセボ群の対象159人中33人について報告された。リファキシミンは、6ヶ月の処置期間中のHE原因入院からの有意な防御効果を有し;HE原因入院のリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.438(95%CI:0.238〜0.807)(p=0.0064)であった。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、6ヶ月の処置期間中のHEによる入院のリスクの56%の低下を有した。HE原因入院率は、プラセボ群の0.72イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.30イベント/PEYであった。
【0246】
図10についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、HE原因入院なしの対象の割合を表す。破線はリファキシミン群を表し、実線はプラセボ群を表す。白丸および白三角は打ち切られた対象を表す。入院前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。
【0247】
全原因入院に対するリファキシミン治療の効果も決定された。二重盲検第1試験において、リファキシミン対象140人中46人、プラセボ対象159人中60人が、何らかのSAEのために入院した。全原因入院のリスクは、リファキシミン群において、プラセボと比較して30%低下した(相対リスクの群間差について、p=0.0793)。全原因入院率は、プラセボ群の1.31イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.92イベント/PEYであった。これらのデータは、リファキシミン処置が、第1試験におけるプラセボ処置と比較して、HE関連/原因入院の負担を低下させることを証明した。また、低いHE関連/原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEの寛解の維持の結果として、第1試験(0.38イベント/PEY)および第2試験(0.29イベント/PEY)におけるリファキシミン治療中に一貫して観察された。
【0248】
図11は、ITT集団における処置群によるConnスコアのベースラインからの増加までの時間を例示する。表20は、処置期間の間にConnスコアの増加を有した対象の割合の推定値および統計分析の結果を提示する。Connスコアの増加を経験する前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。Connスコアのベースラインからの増加までの時間を評価することにより、悪化がブレークスルーHE(例えば、0から1へのConnスコアの増加)の定義に到達しなかったとしても、リファキシミン処置群の対象とプラセボ処置群の対象との間の精神状態の最も初期の悪化を比較することが可能であった。Connスコアの増加は、リファキシミン群の対象140人中37人、プラセボ群の対象159人中77人について報告された。リファキシミンの高度に有意な防御効果が観察された;6ヶ月の処置期間中にConnスコアの増加(例えば、精神状態の悪化)を経験するリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.463(95%CI:0.312〜0.685)(p<0.0001)であった。
【0249】
(表20)第1試験:Connスコアの最初の増加までの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
略語:CI=信頼区間;SE=標準誤差。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。
b 処置期間中に起こったイベントの数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
c 処置期間中にConnスコアの増加を経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までConnスコアの増加がない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群のConnスコアの増加を経験するハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0250】
図12は、第1試験におけるITT集団における処置群によるアステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間を例示する。表21は、処置期間の間にアステリクシスグレードの増加を有した対象の割合の推定値および統計分析の結果を提示する。アステリクシスグレードの増加を経験する前、かつ6ヶ月の処置期間の完了より前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。
【0251】
アステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間を評価することにより、リファキシミン処置群の対象とプラセボ処置群の対象との間で、神経運動機能の最も初期の悪化を比較することが可能であった。アステリクシスグレードの増加は、リファキシミン群の対象140人中32人、プラセボ群の対象159人中50人について報告された。統計的有意の傾向を示した、アステリクシスグレードの増加(例えば、神経運動機能の悪化)からのリファキシミンの防御効果が観察された;6ヶ月の処置期間中にアステリクシスグレードの増加を経験するリスクについて、プラセボに対するリファキシミン群のハザード比は、0.646(95%CI:0.414〜1.008)(p=0.0523)であった。
【0252】
(表21)第1試験:アステリクシスグレードの最初の増加までの時間のカプランマイヤー推定値および統計分析(最長6ヶ月の処置、170日目まで)(ITT集団)
略語:CI=信頼区間;SE=標準誤差。
a 生命表法を使用して推定された処置期間中のリスクありの対象の数。打ち切られた症例が期間の半分についてリスクありであったと仮定すると、それらはリスクありの数の数値化において半分のみ計数された。
b 処置期間中に起こったイベントの数。
c 処置期間中にアステリクシスグレードの増加を経験する確率の推定値。グリーンウッドの式を使用することにより推定された標準誤差(SE)。
d 少なくとも次の処置期間の開始までアステリクシスグレードの増加がない確率の推定値。
e コックス比例ハザードモデルから決定されたハザード比推定値(プラセボ群と比較したリファキシミン群のアステリクシスグレードの増加を経験するハザード)。スコア統計に基づくP値。
【0253】
最悪の応答(1、高い疲労度)から最適な応答(7、最小の疲労)までの7点の尺度を使用することにより、疲労のレベルによって対象を分類した。プラセボ群とリファキシミンの群との間で、CLDQ疲労スコアのベースラインからの変化の最小の差が観察された。疲労スコアの平均値(SD)は、プラセボ群およびリファキシミン群において、それぞれ、ベースラインで3.34(1.406)対3.28(1.326)、3.51(1.529)対3.57(1.527)であった。改変された精神状態および神経運動状態のため、顕性HEブレークスルーエピソード中の対象はCLDQ査定を完了することができなかった。
【0254】
表22は、第1試験における処置群によるベースラインから処置終了時までの静脈アンモニアレベルの変化を集計する。
【0255】
第1試験において、静脈アンモニアレベルは、試験の間に高度に可変性であった。しかしながら、リファキシミン群の対象は、プラセボにより処置された対象と比較して、静脈アンモニアレベルの有意に大きな低下を有していた(p=0.0391)。顕性HEの基礎をなすCNS効果に関連している定量的査定である静脈アンモニアレベルは、Connスコア(またはConnスコアとアステリクシスグレードとの組み合わせ)の臨床的評価により決定されるようなブレークスルー顕性HEの発生を高度に予測することが示され、それにより、主要な効力測定値の信頼性および臨床的関連性が強調された。主要有効性エンドポイントの静脈アンモニアレベルとの有意な相関は、第1試験における主要な効力測定値の信頼性および臨床的関連性を証明している。
【0256】
(表22)第1試験:処置群による静脈アンモニアレベルのベースラインからの変化の平均値(SD)(ITT集団)
注釈:ベースライン値は、試験薬物の初回投与前に入手可能であった最後の値であり、処置終了時の値は、処置期間中の最後に入手可能であったベースライン後の値であった。
【0257】
第2試験
第2試験において、Connスコアは、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されたかまたは改善された。最終診察時、対象の70.7%(対象266人中188人)が、ベースラインと比較して変化を有しておらず、20.3%(266人中54人)が、Connスコアの改善を有していた。これは、大多数の対象(91%)において、処置期間にわたり精神状態が維持されたかまたは改善されたことを示している。Connスコアと同様に、アステリクシスグレードも、最長18ヶ月、リファキシミン使用により、一般に維持されたかまたは改善された。最終診察時、対象の77.1%(対象266人中205人)が、ベースラインと比較して変化を有しておらず、16.2%(266人中43人)が、アステリクシススコアの改善を有していた。これは、対象の83.3%において、神経学的障害の増加に関連した神経運動症状が、処置期間にわたり維持されたことを示している。第2試験のための最終診察は、中間分析のために記録された最終診察である。
【0258】
Connスコアの維持または改善は、最長840日間のリファキシミン処置中に、対象の>85%について観察された;全リファキシミン経験について曝露の平均値(±SD)は273.8日(160.92日)であった(曝露結果は、ISS、モジュール5.3.5.3.2に詳細にある)。計65.5%(337人中220人)の対象が、Connスコアの変化を有しておらず、21.1%(337人中71人)が、ベースラインから最終診察時までのConnスコアの改善を有していた。同様に、アステリクシスグレードの維持または改善が、リファキシミン処置中に対象の>90%について観察された。対象の75.2%(337人中252人)について、アステリクシスグレードのベースラインからの変化が報告されず、17.3%が改善を有していた。
【0259】
≧1のConnスコアで試験に参入した対象、例えば、改善が可能であった対象118人のうち、62.2%(118人中71人)が、最後の査定でベースラインからConnスコア0への改善を示した。また、≧1のアステリクシスグレードで参入した対象、即ち、アステリクシスグレードの改善が可能であった対象99人のうち、58.6%(99人中58人)が、ベースラインから試験終了時までのアステリクシスグレードの改善を示した。
【0260】
第2試験の新リファキシミン対象(例えば、3002でリファキシミンを開始した)と、継続リファキシミン対象(例えば、第1試験および第2試験でリファキシミンを受容した)と、全リファキシミン経験対象(例えば、第1試験または第2試験でリファキシミンを受容した)との間で、Connスコアおよびアステリクシスグレードのベースラインから最終診察時までの変化は類似していた。
【0261】
これらの結果は、リファキシミンによる処置が、Connスコアの悪化の防止(プラセボに対して2.46倍、p<0.0001)およびアステリクシスグレードの悪化の防止(プラセボに対して1.92倍、p=0.0262)においてプラセボより有意に有効であった、第1試験からの結果を支持している。
【0262】
CFF結果のベースラインからの変化(第1試験)
CFF結果の増加は、HEを有する患者における神経学的機能の改善を表す。リファキシミン群の対象は、プラセボと比較して、ベースラインから処置終了時までのCFF結果の有意に大きな増加を有していた(表23)。CFF結果の変化の平均値(±SD)は、プラセボ群の0.355(±4.70)に対してリファキシミン群では0.945(±4.75)であった(群間差について、p=0.0320)。
【0263】
静脈アンモニアレベルの相関と同様に、CFF結果の定量的査定とブレークスルー顕性HEの発生との間には、強力な相関があった。
【0264】
(表23)処置群によるCFF検査結果のベースラインからの変化の平均値(SD)(ITT集団)
注釈:ベースライン値は、試験薬物の初回投与前に入手可能であった最後の値であり、処置終了時の値は、処置期間中の最後に入手可能であったベースライン後の値であった。
【0265】
≧6ヶ月間1日2回ラクツロース30mLを受容し、続いて、≧6ヶ月間1日3回リファキシミン400mgによる処置を受容したHEを有する患者145人について、遡及的カルテ調査を実施した。リファキシミン処置を支持する劇的な差が観察された。≧75%のコンプライアンスは、ラクツロース処置中よりリファキシミン処置中の方が有意に良好であった;患者の92%が予定されたリファキシミン用量の≧75%を受容したのに対し、予定されたラクツロース用量の≧75%を受容したのは患者の31%であった。入院の総数、入院の期間、HEエンドポイント、および治療のコストを、二つの処置計画の間で比較した。ラクツロース処置と比べて、有意に少ない入院(0.5対1.6)および入院日数(2.5日対7.3日)が、リファキシミン処置について報告され(p<0.001)、患者1人当たりの入院費用は、ラクツロース処置中の56,635ドルに対して、リファキシミン処置中は14,222ドルであった。
【0266】
処置期間の終了時のHEエンドポイントに関して、アステリクシスは、患者の63%(リファキシミン)対93%(ラクツロース)で報告され(p<0.001)、3または4のConnスコアは、6%(リファキシミン)対25%(ラクツロース)で観察された(p<0.001)。さらに、リファキシミン治療中より有意に多い患者が、ラクツロース治療中に下痢、鼓腸、および腹痛を有した(p<0.001)。
【0267】
2004年1月から2005年11月までの期間に、HE Connスコア2で初診を受けた肝臓移植患者39人のカルテ調査において、入院および治療コストを分析した。24人の患者がラクツロースにより処置され、15人がリファキシミンにより処置された。ラクツロース群については19回、リファキシミン群については3回の入院が報告された。平均在院日数は、ラクツロース群よりリファキシミン群の方が有意に短かった(3.5日[3日〜4日の範囲]対5.0日[3日〜10日の範囲][p<0.001])。患者1人当たりの治療(入院、緊急治療室での診療、および薬物コスト)の平均年間総コストは、リファキシミン群については7958ドル、ラクツロース群については13,285ドルであった。リファキシミンのコストはラクツロースのコストより実質的に高かったが、治療(入院+薬物コスト)の総コストは、ラクツロースにより処置された患者の方が1.67倍高かった。
【0268】
リファキシミンの治療効果の耐久性
第2試験からのデータは、ブレークスルー顕性HEエピソードからの防御についてのリファキシミンの長期耐久性に関する情報を提供する。第1試験(6ヶ月の処置)の終了時に寛解中であった、第1試験からのリファキシミン処置対象を、非盲検試験である第2試験において追跡した(n=60)。リファキシミンロールオーバー対象(第1試験+第2試験)および第1試験のプラセボ対象についての、最初のブレークスルーHEエピソードまでの時間が、図15に示される。これらのロールオーバーリファキシミン対象におけるブレークスルー顕性HEの発生率を、第1試験のプラセボ対象と比較した。リファキシミン対象についてのブレークスルーHEエピソードの発生率は、第1試験のプラセボ群より劇的に低かった(曝露時間について調整した後、ロールオーバーリファキシミンのプラセボに対する比は0.0797であった。リファキシミンとプラセボとの間の差について、p<0.0001)。
【0269】
これらの結果は、リファキシミンが、第1試験において開始し、第2試験において継続した耐久性の防御効果を有していたことを証明した(リファキシミンへの曝露の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)。
【0270】
図13についての注釈。Y軸の生存分布推定値は、ブレークスルー顕性HEなしの対象の割合を表す。破線は、第1試験(6ヶ月の処置)の終了時に寛解中であって、非盲検試験である第2試験において追跡された、第1試験からのリファキシミン処置対象を表し(n=60)、実線は第1試験のプラセボ群を表す。垂直の線は、二重盲検試験の終了および非盲検試験の開始を示す。白丸は、第1試験のプラセボ群における打ち切られた対象を表し、白三角は継続リファキシミン群における打ち切られた対象を表す。最初のブレークスルー顕性HEエピソードより前に中断した対象は、中断の時点で打ち切られた。
【0271】
対象が最初のブレークスルー顕性HEエピソードを経験した後に試験を中断した第1試験とは異なり、第2試験においては、対象はブレークスルー顕性HEを経験した後にリファキシミン治療を継続するオプションを有した。従って、リファキシミン治療中の経時的なブレークスルー顕性HEの発生率を評価した。表24は、試験の間のHEエピソードの総数によるブレークスルー顕性HEエピソードを提示する。
【0272】
全リファキシミン群において、対象の27.1%(266人中72人)が、≧1回のブレークスルー顕性HEエピソードを有した。ブレークスルーHEを有した対象72人のうち、大部分は1回(44人の対象)または2回(18人の対象)のエピソードを有した。10人の対象が、第2試験において、3回以上のブレークスルーHEエピソードを有した。
【0273】
(表24)第2試験:反復エピソードの数によるブレークスルー顕性HEエピソード
略語:HE=肝性脳症。
a HEエピソードの数。対象は、各々の顕性HEエピソードの数のため1回のみ計数された。例えば、対象が3回のエピソードを経験した場合、その対象は3回のエピソードを示す列にのみ含まれ、2回および1回のエピソードについての列には計数されなかった。
【0274】
顕性HEエピソード(HEの負担)の発生率に対するリファキシミンの効果
顕性HEエピソード(例えば、HEの負担)の発生率に対するリファキシミン治療の効果、第1試験または第2試験におけるHEエピソードの数を、リファキシミン治療の非存在下でのHEエピソードの数と比較した。第1試験前の6ヶ月の期間または第2試験前の12ヶ月の期間を、いずれかの試験におけるリファキシミン治療に対して比較した。第1試験への参加の時間は、リファキシミン治療の非存在下での経験を反映せず、従って、第1試験においてHEエピソードのなかった、第2試験にロールオーバーした対象については、第2試験前の12ヶ月の期間を比較のために使用した。第2試験の大部分の対象(266人中152人)が第1試験にも含まれていた。第1試験とは異なり、第2試験の対象は、最初のブレークスルーHEエピソードを経験した後にリファキシミンに残るオプションを有していたため、第2試験における顕性HEエピソードを第1試験と組み合わせた。第1試験前の6ヶ月または第2試験前の12ヶ月の期間に経験された顕性HEエピソードの数は既知であった。リファキシミン治療前の6ヶ月または12ヶ月の期間には、対象の30.8%が>2回のHEエピソードを有したが、第1試験+第2試験における最長840日間(曝露の中央値=253日[およそ8ヶ月])のリファキシミン治療中には、対象の3.6%のみが>2回のHEエピソードを有した。リファキシミン治療の非存在下と比較した、対象がリファキシミンを受容している間の、HEエピソードの発生率のこの差は、再発性顕性HEに関連した重度の肝疾患を有する患者における顕性HEエピソードの負担の軽減におけるリファキシミンの強力な効果を示唆している。
【0275】
肝性脳症は、進行した肝疾患に関連した、重篤で、稀で、複雑で、突発性の神経精神医学的症候群である。肝性脳症は、患者、その家族、および医療システムにとっての驚異的な負担である。顕性HEエピソードは、消耗性であり、患者のセルフケア能力を奪い、高頻度に入院をもたらす。この疾患は、重篤で、慢性的に消耗性であり(セクション1.1にさらに記載される)、一般集団におけるHEの発生率は低いため、リファキシミンは、HE適応症のための稀少医薬品ステータスを与えられている。また、現在のケアの標準には限界があるため、HEを有する患者のための未解決の医学的必要性が存在する。
【0276】
特定の科学理論に拘束されることは望まないが、リファキシミンの作用機序は、標的微生物のDNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、RNA合成における鎖形成の開始の抑制をもたらすことに依ると考えられる。リファキシミンは、他の一般的に使用されている抗菌薬と比較して、病原体の糞便中への根絶の低い率を有し、消化管細菌叢の最小限の改変を引き起こすことから、リファキシミンは、フルオロキノロンのような腸管細菌感染において一般的に使用されている他の薬物とは異なる作用機序を有することが示唆される。リファキシミンの抗菌特性は、MIC以上のリファキシミン濃度での殺菌活性、ならびにMIC未満の濃度で観察される細菌の形態学および生理学的機能の改変に起因するようである。
【0277】
意外なことに、リファキシミンによる慢性処置においては、ネオマイシンのような他の全身抗生物質と比較して、抗生物質に対する耐性の発達のリスクが低いことが、本明細書において発見された。リファキシミン治療中の抗生物質に対する耐性の低いリスクは、リファキシミンに対する耐性が、プラスミドによって媒介されるのではなく、宿主細胞DNAの安定的な変異を必要とするという事実による可能性が高く;従って、プラスミドに基づく機序による、耐性および他の抗生物質に対する交差耐性の蔓延が排除される。また、GI管以外の部位の細菌は、リファキシミンの無視し得る程度の全身濃度のため、認め得る程度の選択圧に曝されない。さらに、高用量のリファキシミンを受容していた潰瘍性大腸炎を有する患者の試験からの微生物学的データは、リファキシミンへのインビボ曝露中に生じたリファキシミン耐性菌コロニーが不安定であり、短期間の処置中断の後に感受性が復活したことを示した。
【0278】
リファキシミン処置は、もし処置されなければ患者を無能力にし得る顕性HEエピソードを減らし、患者を介助するために必要とされる家族の負担を軽減することができ、この患者集団における入院の負担および医療システムを低下させる。以下は、最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間に関する第2試験からの結果である。
【0279】
防御効果には再現性があった:最初のブレークスルー顕性HEエピソードまでの時間の結果は、第1試験のリファキシミン群と第2試験の新リファキシミン対象との間で類似していた;第1試験のリファキシミン群においては22%、第2試験の新リファキシミン群においては27.6%が、ブレークスルー顕性HEを有した。曝露について調整すると、ブレークスルーHEエピソードの率は、第1試験のリファキシミン群においては0.62イベント/PEY、それに対して、第2試験の新リファキシミン対象においては0.38イベント/PEYであった。これらのデータは、リファキシミンを受容した対象におけるブレークスルー顕性HEからの防御が、二つの試験の間で一致したことを証明している。さらに、第1試験のプラセボ対象が第2試験に参入することによりリファキシミン治療にクロスオーバーした場合、第1試験におけるプラセボ経験と第2試験におけるリファキシミン経験との間の、最初のブレークスルー顕性HEまでの時間のカプランマイヤー推定値の比較において、リファキシミンの著しい防御効果が観察された。プラセボに対するリファキシミンのハザード比は、0.302(相対リスクの群間差について、95%CI:0.166〜0.549、p<0.0001)であった。この結果は、第1試験における過去のプラセボ経験と比較して、第2試験におけるリファキシミン処置中にブレークスルー顕性HEを経験するリスクが70%低下したことを表す。この低下は、慢性肝疾患を有する集団の老化および推測される進行性にも関わらず起こった。
【0280】
防御効果は耐久性であった:第1試験への参加後に寛解中であったリファキシミン対象を、第2試験において追跡した場合(最長680日間のリファキシミン治療;曝露期間の中央値は、第1試験で168日、第2試験で253日であった)、最初のブレークスルーHEまでの時間のカプランマイヤー推定値は、ブレークスルーHEからの寛解の長期的な維持を証明した。これらのリファキシミン対象についてのブレークスルーHEエピソードの発生率は、第1試験のプラセボと比べて劇的に低く、このことは、リファキシミン処置によりブレークスルーHEエピソードがより少なくなったことを示している(リファキシミンとプラセボとの間の相対リスクの差について、p<0.0001)。
【0281】
他の有効性エンドポイントについての結果も、リファキシミンの統計的に有意な防御効果を証明した。第1試験において、最初のHE関連入院(例えば、HEに直接起因する入院またはHEにより悪化した入院)までの時間の分析は、6ヶ月の処置期間中のリファキシミン群におけるHEによる入院のリスクの低下が、プラセボと比較して、50%であることを証明した、(相対リスクの群間差について、p=0.0129)。第1試験において、リファキシミン群においては、プラセボ群と比較して、HE原因入院(例えば、HEに直接起因する入院のみ)のリスクが56%低下し(相対リスクの群間差について、p=0.0064)、全原因入院のリスクが30%低下した(相対リスクの群間差について、p=0.0793)。第1試験において、リファキシミン群においては、全原因入院率のリスクが、プラセボと比較して30%低下した(相対リスクの群間差について、p=0.0793)。全原因入院率は、プラセボ群の1.31イベント/PEYに対してリファキシミン群では0.92イベント/PEYであった。
【0282】
第2試験において、低いHE原因入院率は、第1試験のものと一致する率で維持された:第2試験におけるHE原因入院率は0.29イベント/PEYであり、全原因入院は0.66イベント/PEYであった。第1試験および第2試験におけるリファキシミン処置対象における一貫して低いHE関連/HE原因入院率は、少なくとも部分的には、末期肝疾患を有する対象における証明されたHEからの寛解の維持の結果であった。
【0283】
以上、本発明を十分に説明したが、添付の特許請求の範囲の本旨または範囲から逸脱することなく、多くの変化および修飾がなされ得ることが、当業者には明白であろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝性脳症(HE)を治療または予防する必要のある対象へ胃腸(GI)特異的抗生物質を投与する工程を含む、肝性脳症(HE)を治療または予防する方法。
【請求項2】
GI特異的抗生物質が対象におけるHEの寛解を維持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、対象の肝性脳症(HE)ブレークスルーエピソードのリスクを低下させる方法。
【請求項4】
投与より90日以上前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約58%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
投与より90日以上前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約30%〜70%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
投与より90日超前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約60%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
投与より90日超前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約2%〜80%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項8】
投与前6ヶ月以内に2回以下のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約56%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項9】
投与前6ヶ月以内に2回以下のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約20%〜70%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項10】
リファキシミン投与前6ヶ月以内に2回超のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約63%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項11】
投与前6ヶ月以内に2回超のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約30%〜約80%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項12】
エピソードのリスクが約58%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項13】
エピソードのリスクが約40%〜約70%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項14】
HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、対象におけるHEの寛解を維持する方法。
【請求項15】
HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、HE患者の入院診療の頻度を低下させる方法。
【請求項16】
リファキシミンの投与が入院の頻度を約48%低下させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
リファキシミンの投与が入院の頻度を約13%〜約69%低下させる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
GI特異的抗生物質がリファマイシン系抗生物質を含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
GI特異的抗生物質がリファキシミンを含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
550mgのリファキシミンが、1日2回(BID)、対象へ投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
275mgのリファキシミンが、1日4回、対象へ投与される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
275mgのリファキシミンが、1日2回、2つの剤形で、対象へ投与される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
GI特異的抗生物質が、6ヶ月間、対象へ投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
GI特異的抗生物質が、1年間、対象へ投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
GI特異的抗生物質が、2〜3年間、対象へ投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
GI特異的抗生物質が、対象の死亡時まで、対象へ毎日投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
対象のConnスコアが、GI特異的抗生物質の投与後、ベースラインよりも改善される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
生活の質(QoL)の測定値が、GI特異的抗生物質の投与後、ベースラインから改善される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
ラクツロースを投与する工程をさらに含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
アライン(align)、アリニア(alinia)、ラクツロース、ペンタサ、コレスチラミン、サンドスタチン、バンコマイシン、ラクトース、アミティーザ、フラジール、ゼゲリッド(zegerid)、プレバシッド、またはミララックスのうちの一つまたは複数を投与する工程をさらに含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
対象のConnスコア(精神状態グレード)が減少する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
対象についてのConnスコアのベースラインからの増加までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
対象のConnスコアの増加までの時間の遅延が約54%増加する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
Connスコアの増加までの時間の遅延が約30%〜約70%増加する、請求項32記載の方法。
【請求項35】
GI特異的抗生物質の投与が、対象のConnスコアの増加を防止する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
対象のアステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
アステリクシスグレードの増加までの時間が遅延する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
対象の最初のHE関連入院までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
対象の突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に血中アンモニア濃度がベースラインから減少する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
170日目までの血中アンモニア濃度のベースラインからの減少が約6μg/dLである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に臨界融合周波数値がベースラインから増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、ラクツロース1日消費量がベースラインから経時的に減少する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
ラクツロース1日消費量の減少が、約7回のラクツロース投与から約2回のラクツロース投与への減少である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
対象のラクツロース使用量が初期にベースラインから増加する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ラクツロース使用量の初期の増加が、約1日〜約30日からである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、Connスコアがベースラインについて経時的にシフトする、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
Connスコアのベースラインについてのシフトが約1〜約2である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、アステリクシスグレードがベースラインから経時的にシフトする、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、慢性肝疾患質問票(CLDQ)スコアがベースラインから経時的に変化する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、エプワース眠気尺度のスコアがベースラインから経時的に変化する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
約1〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
10以下のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
11〜18のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
19〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
550mgのリファキシミンを、28日超の間、投与する工程を含む、HEを治療または予防する方法。
【請求項57】
対象におけるラクツロース使用量を減少させる方法であって、
ラクツロースにより処置されている対象にリファキシミンを毎日投与する工程;および
ラクツロース消費量を漸減させる工程
を含む方法。
【請求項58】
漸減させる工程が、ベースラインレベルから1、2、3、4、5、6単位用量カップまたはそれ以上のラクツロースだけラクツロース消費量を減少させる工程を含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
漸減させる工程が、ベースラインレベルから5、10、15、20、25、30、34、40、45、50、55、60、65、または70gのラクツロースだけラクツロース消費量を減少させる工程を含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
漸減させる工程が、ラクツロース消費量を減少させる工程を含む、請求項57記載の方法。
【請求項61】
漸減させる工程が、ベースラインからラクツロース非消費へと漸減させる工程である、請求項57記載の方法。
【請求項62】
550mgのリファキシミンをBID投与する工程を含む、対象におけるHEの寛解を維持する方法。
【請求項63】
550mgのリファキシミンを1日2回(BID)対象へ投与する工程を含む、HEのための入院までの時間を増加させる方法。
【請求項64】
肝性脳症に罹患している患者を治療する方法であって、
リファキシミンの投与がシトクロムP450活性を誘導し得ることを、肝性脳症に罹患している患者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者にリファキシミンを投与する工程
を含む方法。
【請求項65】
シトクロムP450活性がシトクロムP450 3A4(CYP3A4)活性である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
リファキシミンの投与が、患者への1日1100mgのリファキシミンの投与を含む、請求項64記載の方法。
【請求項67】
リファキシミンの投与が、患者へのリファキシミンの1日2回の投与を含む、請求項64記載の方法。
【請求項68】
シトクロムP450基質を摂取している患者に、さらなる医療指導を受けるよう助言する工程をさらに含む、請求項64記載の方法。
【請求項69】
患者への助言が、患者への資料の提供を含む、請求項64記載の方法。
【請求項70】
資料が薬物のラベル上にある、請求項69記載の方法。
【請求項71】
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与する方法であって、
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与される患者は、シトクロムP450活性を誘発し得ることを、医療従事者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者にリファキシミンを投与する工程
を含む方法。
【請求項72】
医療従事者が医師、看護師、または薬剤師である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
医療従事者への助言が、医療従事者への勧告書の提供を含む、請求項71記載の方法。
【請求項74】
シトクロムP450活性がシトクロムP450 3A4(CYP3A4)活性である、請求項71記載の方法。
【請求項75】
肝性脳症に罹患している患者についてのブレークスルーイベントの間隔を増加させる方法であって、肝性脳症ブレークスルーイベントの間隔を延長するのに有効な量のリファキシミンを患者へ投与する工程を含む方法。
【請求項76】
患者についてのブレークスルーイベントの間隔が、6ヶ月超に延長される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
患者についてのブレークスルーイベントの間隔が、12ヶ月超に延長される、請求項75記載の方法。
【請求項78】
有効量のリファキシミンが、1日1100mgのリファキシミンを含む、請求項75記載の方法。
【請求項79】
抗菌組成物により慢性的に処置する場合の抗菌薬に対する耐性のリスクを低下させる方法であって、過敏性腸症候群、旅行者下痢、小腸内細菌過剰繁殖、クローン病、膵炎、膵機能不全、腹膜炎、肝性脳症、嚢炎、感染性下痢、炎症性腸疾患、憩室疾患、クロストリジウム、C.ディフィシル(difficile)疾患、H.ピロリ(pylori)感染、腸炎、および大腸炎、ならびにその他の関連する状態を治療するため、リファキシミンを慢性的に投与する工程を含む方法。介助者の負担を軽減する方法であって、肝性脳症を治療するため、その必要のある対象へリファキシミンを投与する工程を含む方法。
【請求項80】
入院率を低下させる方法であって、肝性脳症を治療するため、その必要のある対象へリファキシミンを投与する工程を含む方法。
【請求項81】
前記対象が、リファキシミンを投与されていない対象と比較して栄養が不適切である可能性が低い、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記対象における治療へのノンアドヒアランスの割合が、リファキシミンを投与されていない対象と比較して減少する、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記対象がより重度の症状へと進行する可能性が、リファキシミンを投与されていない対象と比較して低い、請求項80記載の方法。
【請求項84】
より重度の症状が、傾眠の増加、重度の見当識障害、および昏迷のうちの一つまたは複数を含む、請求項80記載の方法。
【請求項85】
HEに罹患している対象へリファマイシン系抗生物質を投与する工程を含む、肝硬変および/または関連HEに関する経済コストを低下させる方法。
【請求項86】
対象へリファキシミンを投与し、それにより対象における精神状態を向上させる工程を含む、対象における精神状態を向上させる方法。
【請求項87】
精神状態がConnスコアを使用して評価される、請求項86記載の方法。
【請求項88】
精神状態がアステリクシスグレードを使用して評価される、請求項86記載の方法。
【請求項89】
対象へリファキシミンを投与し、それにより顕性HEエピソードの数を減少させる工程を含む、対象における顕性HEエピソードの数を減少させる方法。
【請求項90】
対象が肝疾患を有する、請求項89記載の方法。
【請求項91】
対象が、少なくとも2年間、顕性HEエピソードの減少した数を有する、請求項89記載の方法。
【請求項92】
有効量のリファキシミンが、1日1650mgのリファキシミンを含む、請求項89記載の方法。
【請求項93】
対象へリファキシミンを投与し、それにより対象の生存の確率を増加させる工程を含む、HEを有する対象の生存の確率を増加させる方法。
【請求項94】
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与する方法であって、
リファキシミンがQT延長のリスクを増加させないことを、医療従事者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者へリファキシミンを投与する工程
を含む方法。
【請求項95】
hERG IC50値と非結合型Cmax値との間に30倍超の差が存在することを、医療従事者に助言する工程をさらに含む、請求項94記載の方法。
【請求項94】
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与する方法であって、
リファキシミンが、ミダゾラムのCmax、AUC0-t、またはAUC0-∞を有意に改変しないことを、医療従事者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者へリファキシミンを投与する工程:
を含む方法。
【請求項95】
対象に1650mg/日のリファジミン(rifazimin)が投与される、請求項94記載の方法。
【請求項96】
対象に1650mg/日のリファジミンが、少なくとも7日間、投与される、請求項95記載の方法。
【請求項1】
肝性脳症(HE)を治療または予防する必要のある対象へ胃腸(GI)特異的抗生物質を投与する工程を含む、肝性脳症(HE)を治療または予防する方法。
【請求項2】
GI特異的抗生物質が対象におけるHEの寛解を維持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、対象の肝性脳症(HE)ブレークスルーエピソードのリスクを低下させる方法。
【請求項4】
投与より90日以上前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約58%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
投与より90日以上前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約30%〜70%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
投与より90日超前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約60%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
投与より90日超前に最後のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約2%〜80%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項8】
投与前6ヶ月以内に2回以下のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約56%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項9】
投与前6ヶ月以内に2回以下のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約20%〜70%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項10】
リファキシミン投与前6ヶ月以内に2回超のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約63%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項11】
投与前6ヶ月以内に2回超のHEエピソードを有した対象についてのエピソードのリスクが約30%〜約80%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項12】
エピソードのリスクが約58%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項13】
エピソードのリスクが約40%〜約70%低下する、請求項3記載の方法。
【請求項14】
HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、対象におけるHEの寛解を維持する方法。
【請求項15】
HEに罹患している対象へGI特異的抗生物質を投与する工程を含む、HE患者の入院診療の頻度を低下させる方法。
【請求項16】
リファキシミンの投与が入院の頻度を約48%低下させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
リファキシミンの投与が入院の頻度を約13%〜約69%低下させる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
GI特異的抗生物質がリファマイシン系抗生物質を含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
GI特異的抗生物質がリファキシミンを含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
550mgのリファキシミンが、1日2回(BID)、対象へ投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
275mgのリファキシミンが、1日4回、対象へ投与される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
275mgのリファキシミンが、1日2回、2つの剤形で、対象へ投与される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
GI特異的抗生物質が、6ヶ月間、対象へ投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
GI特異的抗生物質が、1年間、対象へ投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
GI特異的抗生物質が、2〜3年間、対象へ投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
GI特異的抗生物質が、対象の死亡時まで、対象へ毎日投与される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
対象のConnスコアが、GI特異的抗生物質の投与後、ベースラインよりも改善される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
生活の質(QoL)の測定値が、GI特異的抗生物質の投与後、ベースラインから改善される、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
ラクツロースを投与する工程をさらに含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
アライン(align)、アリニア(alinia)、ラクツロース、ペンタサ、コレスチラミン、サンドスタチン、バンコマイシン、ラクトース、アミティーザ、フラジール、ゼゲリッド(zegerid)、プレバシッド、またはミララックスのうちの一つまたは複数を投与する工程をさらに含む、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
対象のConnスコア(精神状態グレード)が減少する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
対象についてのConnスコアのベースラインからの増加までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
対象のConnスコアの増加までの時間の遅延が約54%増加する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
Connスコアの増加までの時間の遅延が約30%〜約70%増加する、請求項32記載の方法。
【請求項35】
GI特異的抗生物質の投与が、対象のConnスコアの増加を防止する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
対象のアステリクシスグレードのベースラインからの増加までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
アステリクシスグレードの増加までの時間が遅延する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
対象の最初のHE関連入院までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
対象の突発性細菌性腹膜炎(SBP)の発症までの時間が増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に血中アンモニア濃度がベースラインから減少する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
170日目までの血中アンモニア濃度のベースラインからの減少が約6μg/dLである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に臨界融合周波数値がベースラインから増加する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、ラクツロース1日消費量がベースラインから経時的に減少する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
ラクツロース1日消費量の減少が、約7回のラクツロース投与から約2回のラクツロース投与への減少である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
対象のラクツロース使用量が初期にベースラインから増加する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ラクツロース使用量の初期の増加が、約1日〜約30日からである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、Connスコアがベースラインについて経時的にシフトする、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
Connスコアのベースラインについてのシフトが約1〜約2である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、アステリクシスグレードがベースラインから経時的にシフトする、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、慢性肝疾患質問票(CLDQ)スコアがベースラインから経時的に変化する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
対象へのGI特異的抗生物質の投与後に、エプワース眠気尺度のスコアがベースラインから経時的に変化する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
約1〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
10以下のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
11〜18のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
19〜24のMELDレベルを有する対象が、GI特異的抗生物質による処置に応答する、請求項1、3、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
550mgのリファキシミンを、28日超の間、投与する工程を含む、HEを治療または予防する方法。
【請求項57】
対象におけるラクツロース使用量を減少させる方法であって、
ラクツロースにより処置されている対象にリファキシミンを毎日投与する工程;および
ラクツロース消費量を漸減させる工程
を含む方法。
【請求項58】
漸減させる工程が、ベースラインレベルから1、2、3、4、5、6単位用量カップまたはそれ以上のラクツロースだけラクツロース消費量を減少させる工程を含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
漸減させる工程が、ベースラインレベルから5、10、15、20、25、30、34、40、45、50、55、60、65、または70gのラクツロースだけラクツロース消費量を減少させる工程を含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
漸減させる工程が、ラクツロース消費量を減少させる工程を含む、請求項57記載の方法。
【請求項61】
漸減させる工程が、ベースラインからラクツロース非消費へと漸減させる工程である、請求項57記載の方法。
【請求項62】
550mgのリファキシミンをBID投与する工程を含む、対象におけるHEの寛解を維持する方法。
【請求項63】
550mgのリファキシミンを1日2回(BID)対象へ投与する工程を含む、HEのための入院までの時間を増加させる方法。
【請求項64】
肝性脳症に罹患している患者を治療する方法であって、
リファキシミンの投与がシトクロムP450活性を誘導し得ることを、肝性脳症に罹患している患者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者にリファキシミンを投与する工程
を含む方法。
【請求項65】
シトクロムP450活性がシトクロムP450 3A4(CYP3A4)活性である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
リファキシミンの投与が、患者への1日1100mgのリファキシミンの投与を含む、請求項64記載の方法。
【請求項67】
リファキシミンの投与が、患者へのリファキシミンの1日2回の投与を含む、請求項64記載の方法。
【請求項68】
シトクロムP450基質を摂取している患者に、さらなる医療指導を受けるよう助言する工程をさらに含む、請求項64記載の方法。
【請求項69】
患者への助言が、患者への資料の提供を含む、請求項64記載の方法。
【請求項70】
資料が薬物のラベル上にある、請求項69記載の方法。
【請求項71】
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与する方法であって、
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与される患者は、シトクロムP450活性を誘発し得ることを、医療従事者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者にリファキシミンを投与する工程
を含む方法。
【請求項72】
医療従事者が医師、看護師、または薬剤師である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
医療従事者への助言が、医療従事者への勧告書の提供を含む、請求項71記載の方法。
【請求項74】
シトクロムP450活性がシトクロムP450 3A4(CYP3A4)活性である、請求項71記載の方法。
【請求項75】
肝性脳症に罹患している患者についてのブレークスルーイベントの間隔を増加させる方法であって、肝性脳症ブレークスルーイベントの間隔を延長するのに有効な量のリファキシミンを患者へ投与する工程を含む方法。
【請求項76】
患者についてのブレークスルーイベントの間隔が、6ヶ月超に延長される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
患者についてのブレークスルーイベントの間隔が、12ヶ月超に延長される、請求項75記載の方法。
【請求項78】
有効量のリファキシミンが、1日1100mgのリファキシミンを含む、請求項75記載の方法。
【請求項79】
抗菌組成物により慢性的に処置する場合の抗菌薬に対する耐性のリスクを低下させる方法であって、過敏性腸症候群、旅行者下痢、小腸内細菌過剰繁殖、クローン病、膵炎、膵機能不全、腹膜炎、肝性脳症、嚢炎、感染性下痢、炎症性腸疾患、憩室疾患、クロストリジウム、C.ディフィシル(difficile)疾患、H.ピロリ(pylori)感染、腸炎、および大腸炎、ならびにその他の関連する状態を治療するため、リファキシミンを慢性的に投与する工程を含む方法。介助者の負担を軽減する方法であって、肝性脳症を治療するため、その必要のある対象へリファキシミンを投与する工程を含む方法。
【請求項80】
入院率を低下させる方法であって、肝性脳症を治療するため、その必要のある対象へリファキシミンを投与する工程を含む方法。
【請求項81】
前記対象が、リファキシミンを投与されていない対象と比較して栄養が不適切である可能性が低い、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記対象における治療へのノンアドヒアランスの割合が、リファキシミンを投与されていない対象と比較して減少する、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記対象がより重度の症状へと進行する可能性が、リファキシミンを投与されていない対象と比較して低い、請求項80記載の方法。
【請求項84】
より重度の症状が、傾眠の増加、重度の見当識障害、および昏迷のうちの一つまたは複数を含む、請求項80記載の方法。
【請求項85】
HEに罹患している対象へリファマイシン系抗生物質を投与する工程を含む、肝硬変および/または関連HEに関する経済コストを低下させる方法。
【請求項86】
対象へリファキシミンを投与し、それにより対象における精神状態を向上させる工程を含む、対象における精神状態を向上させる方法。
【請求項87】
精神状態がConnスコアを使用して評価される、請求項86記載の方法。
【請求項88】
精神状態がアステリクシスグレードを使用して評価される、請求項86記載の方法。
【請求項89】
対象へリファキシミンを投与し、それにより顕性HEエピソードの数を減少させる工程を含む、対象における顕性HEエピソードの数を減少させる方法。
【請求項90】
対象が肝疾患を有する、請求項89記載の方法。
【請求項91】
対象が、少なくとも2年間、顕性HEエピソードの減少した数を有する、請求項89記載の方法。
【請求項92】
有効量のリファキシミンが、1日1650mgのリファキシミンを含む、請求項89記載の方法。
【請求項93】
対象へリファキシミンを投与し、それにより対象の生存の確率を増加させる工程を含む、HEを有する対象の生存の確率を増加させる方法。
【請求項94】
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与する方法であって、
リファキシミンがQT延長のリスクを増加させないことを、医療従事者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者へリファキシミンを投与する工程
を含む方法。
【請求項95】
hERG IC50値と非結合型Cmax値との間に30倍超の差が存在することを、医療従事者に助言する工程をさらに含む、請求項94記載の方法。
【請求項94】
肝性脳症のための処置としてリファキシミンを投与する方法であって、
リファキシミンが、ミダゾラムのCmax、AUC0-t、またはAUC0-∞を有意に改変しないことを、医療従事者に助言する工程;および
肝性脳症を治療するため、患者へリファキシミンを投与する工程:
を含む方法。
【請求項95】
対象に1650mg/日のリファジミン(rifazimin)が投与される、請求項94記載の方法。
【請求項96】
対象に1650mg/日のリファジミンが、少なくとも7日間、投与される、請求項95記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−504649(P2012−504649A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530261(P2011−530261)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059321
【国際公開番号】WO2010/040020
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510229050)サリックス ファーマシューティカルズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059321
【国際公開番号】WO2010/040020
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510229050)サリックス ファーマシューティカルズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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