説明

肝毒性シアノバクテリアの検出

本発明は、有毒シアノバクテリア、特に肝臓毒素産生シアノバクテリアの検出のための方法およびキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、有毒シアノバクテリア、特に肝臓毒素産生シアノバクテリアを検出するための方法およびキットに関する。
【0002】
発明の背景
藍藻類(blue green algae)としても知られていたシアノバクテリア(cyanobacteria)は、世界中の海洋および淡水環境に広く分布する光合成細菌である。水質およびヒトや動物の健康にとって特に重大なものは、有毒化合物を産生するシアノバクテリアである。広範なシアノバクテリア属が水面に有毒な藍藻類ブルーム(bloom、爆発的発生集団)を形成することは周知である(たとえばCodd et al., 1999; Carmichael, 2001を参照)。ブルームを形成する生物が肝臓毒素および神経毒素を産生し、ブルームが繁茂して沿岸水域、河川、湖沼、ならびに飲料水およびリクリエーション用貯水場に拡散する可能性があるので、これらのブルームの多くはヒトや動物にとって有害である。
【0003】
有毒シアノバクテリアを的確に検出するための迅速な方法であって、シアノバクテリアブルームの健康被害の可能性を評価でき、かつ有毒ブルーム大発生を最小限に抑えるための有効な水質管理方策を実行できる方法が求められている。
【0004】
特に重大な2種類の肝臓毒素はミクロシスチン(microcystin)およびノジュラリン(nodularin)である。両毒素とも真核生物タイプのプロテインホスファターゼ1および2Aの阻害物質であり、脊椎動物においてはこれらの毒素が肝細胞内へ輸送されることにより毒性が仲介される。いずれの毒素への急性被曝も、ヒトを含めた動物に肝障害および死をもたらす可能性がある。さらに、ミクロシスチンおよびノジュラリンへの亜慢性被曝は腫瘍プロモーションに関連し、ノジュラリンの場合は腫瘍イニシエーションに関連する(Hitzfeld et al,, 2000)。
【0005】
ミクロシスチンおよびノジュラリンは、非リボソーム-ペプチドシンセターゼ(NRPS)およびポリケチドシンターゼ(PKS)を含めた多様なモジュールからなる大型の多酵素複合体がリボソームによらず合成する環状ペプチドである(Tillett et al., 2000; Moffitt and Neilan, 2001)。これらのモジュールは、特定のアミノ酸の活性化、修飾および縮合を触媒する。ミクロシスチンは、下記一般式の環状ヘプタペプチドの大きなファミリーを形成する:シクロ-(D-アラニン-X-D-MeAsp-Z-Adda-D-グルタメート-Mdha);式中のD-MeAspはD-β-エリスロ-メチル-アスパラギン酸であり、MdhaはN-メチルデヒドロアラニンであり、XおよびZは種々のL-アミノ酸である。ノジュラリンは、下記一般式の環状ヘプタペプチドである:シクロ-(D-MeAsp-L-アルギニン-Adda-D-グルタメート-Mdhb);式中のMdhbは2-(メチルアミノ)-2-デヒドロ酪酸である。ミクロシスチンおよびノジュラリンの最も異例の部分はAdda (3-アミノ-9-メトキシ-2,3,8-トリメチル-10-フェニル-4,6-デカジエン酸)である。
【0006】
ミクロシスチン産生種は、通常は種々のミクロシスチン変異体のカクテルを産生するが、主に合成されるのは1タイプのみであろう(Mikalsen et al., 2001)。現在までにわずかなノジュラリン変異体が同定されているにすぎない。
【0007】
現在までに4つの目、クロオコックス目(Chroococcales)、ネンジュモ目(Nostocales)、ユレモ目(Oscillatoriales)およびスチグノネマタス目(Stignonematales)に属するシアノバクテリア種によるミクロシスチン産生が報告されており、これには下記のものが含まれる:ミクロシスチス(アオコ)属(Microcystis)種、クロオコックス・ディスペルサス(Chroococcus dispersus)(クロオコックス目)、アナベナ属(Anabaena)種、ネンジュモ属(Nostoc)種、アナベノプシス属(Anabeanopsis)種(ネンジュモ目)、ハファロシフォン属(Haphalosiphon)、フォルミジウム属(Phormidium)種、プランクトスリックス属(Planktothrix)種、およびユレモ属(Oscillatoria)種。しかし、ノジュラリン産生に関する遺伝子はノジュラリア・スプミゲナ(N. spumigena)および1つのノジュラリア・ハルベヤナ(N. harveyana)株において報告されているにすぎない(Moffitt and Neilan, 2001)。
【0008】
この広範な肝臓毒素産生の分布およびシアノバクテリア属における配列差のため、肝臓毒素を産生する可能性があるシアノバクテリア種すべてを検出できる信頼性のある分子プロトコルがない。PCRベースの大部分の検出法は、1つの属または1つの種に由来するミクロシスチンシンセターゼまたはノジュラリンシンセターゼの遺伝子配列の増幅に基づいているにすぎない(たとえばNeilan, 1996; Moffitt et al., 2001; Tillet et al., 2000; Christiansen et al., 2003; Vaitomaa et al., 2003; Kurmayer et al., 2003, 2004)。1組より多いデータに基づくプロトコルは、ミクロシスチンを産生する最も一般的なブルーム形成種であるミクロシスチス属、プランクトスリックス属およびアナベナ属をターゲットとしているにすぎない(Hisbergues et al., 2003)。他のミクロシスチン産生種、たとえばアナベノプシス属、フォルミジウム属およびネンジュモ属の分子検出は、これまで対処されていない。
【0009】
したがって、多数の肝臓毒素産生シアノバクテリア種および属を同定するための簡単な検出系の開発が求められているのは明らかである。
本発明者らは、ミクロシスチンおよびノジュラリンを産生する可能性のある既知のすべての種を単一のPCR反応で検出できる分子法を今回開発した。
【0010】
発明の概要
本発明の第1観点によれば、有毒シアノバクテリアを検出する方法であって、
(a)シアノバクテリア試料を入手し;そして
(b)肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列の存在について試料を分析する
工程を含み、その際、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列が存在することを有毒シアノバクテリアの指標とする方法が提供される。
【0011】
肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列は、ミクロシスチンシンセターゼ遺伝子複合体のmcyEオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログ、あるいは/ならびにノジュラリンシンセターゼ遺伝子複合体のndaFオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログに由来するものであってよい。
【0012】
分析工程(b)は
(i)適切なプライマーを用いて試料からDNAを増幅し;そして
(ii)増幅配列を検出する
ことを含むことができる。
【0013】
プライマーは、SEQ ID No:1〜4のいずれかに示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであってよい。1態様において、増幅はSEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むプライマー対を用いて実施できる。1態様において、増幅はSEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むプライマー対を用いて実施できる。1態様において、増幅はSEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むプライマー対を用いて実施できる。
【0014】
増幅配列の検出は、ゲル電気泳動および/または核酸配列決定を含むことができる。
シアノバクテリア試料は、分離または培養した1以上のシアノバクテリア生物を含むか、あるいは1以上のシアノバクテリア生物を含有する環境試料であってもよい。環境試料は、水試料または藍藻類ブルームからの試料であってもよい。
【0015】
本発明の第2観点によれば、肝臓毒素産生シアノバクテリアを検出する方法であって、
(a)シアノバクテリア試料を入手し;そして
(b)肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列の存在について試料を分析する
工程を含み、その際、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列が存在することを肝臓毒素産生シアノバクテリアの指標とする方法が提供される。
【0016】
肝臓毒素はミクロシスチンまたはノジュラリンであってよい。
肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列は、ミクロシスチンシンセターゼ遺伝子複合体のmcyEオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログ、あるいは/ならびにノジュラリンシンセターゼ遺伝子複合体のndaFオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログに由来するものであってよい。
【0017】
分析工程(b)は
(i)適切なプライマーを用いて試料からDNAを増幅し;そして
(ii)増幅配列を検出する
ことを含むことができる。
【0018】
プライマーは、SEQ ID No:1〜4のいずれかに示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであってよい。1態様において、増幅はSEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むプライマー対を用いて実施できる。1態様において、増幅はSEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むプライマー対を用いて実施できる。1態様において、増幅はSEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むプライマー対を用いて実施できる。
【0019】
増幅配列の検出は、ゲル電気泳動および/または核酸配列決定を含むことができる。
シアノバクテリア試料は、分離または培養した1以上のシアノバクテリア生物を含むか、あるいは1以上のシアノバクテリア生物を含有する環境試料であってもよい。環境試料は、水試料または藍藻類ブルームからの試料であってもよい。
【0020】
本発明の第3観点によれば、有毒シアノバクテリアを検出するためのキットであって、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を検出するために設計した少なくとも1つのプライマーを含むキットが提供される。
【0021】
キットは、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を増幅するために設計した複数のプライマーを含むことができる。プライマーは、SEQ ID No:1〜4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであってよい。オリゴヌクレオチドプライマーは、SEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むことができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、SEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むことができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、SEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むことができる。
【0022】
本発明の第4観点によれば、肝臓毒素産生シアノバクテリアを検出するためのキットであって、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を検出するために設計した少なくとも1つのプライマーを含むキットが提供される。
【0023】
キットは、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を増幅するために設計した複数のプライマーを含むことができる。プライマーは、SEQ ID No:1〜4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであってよい。オリゴヌクレオチドプライマーは、SEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むことができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、SEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むことができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、SEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むことができる。
【0024】
定義
本明細書中で用いる用語”肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列”は、環状ペプチドである肝臓毒素にアミノ基を付加する機能をもつアミノトランスフェラーゼ活性をコードするヌクレオチド配列を意味する。一般にアミノトランスフェラーゼドメイン配列は、肝臓毒素の産生機能をもつ多酵素複合体をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)の一部である;このORFは、ミクロシスチンシンセターゼ遺伝子複合体のmcyE ORFおよびノジュラリンシンセターゼ遺伝子複合体のndaF ORFの場合のように、生物体内で肝臓毒素生合成遺伝子クラスター内に位置する。あるいは、アミノトランスフェラーゼドメインは、アミノトランスフェラーゼ酵素をコードする別個の遺伝子内に位置する場合もある。
【0025】
本明細書に関して、用語”含む”は、”主に含むが、必ずしもそれだけではない”ことを意味する。さらに、”含む”という語の変形、たとえば”含まれる”はそれに応じた意味をもつ。
【0026】
添付の図面を参照して本発明の態様を記載するが、これらは例示にすぎない。
オリゴヌクレオチドプライマーHEPFのヌクレオチド配列をSEQ ID No:1に示し、オリゴヌクレオチドプライマーHEPRのヌクレオチド配列をSEQ ID No:2に示す。オリゴヌクレオチドプライマーHEPF2のヌクレオチド配列をSEQ ID No:3に示す。オリゴヌクレオチドプライマーHEPR2のヌクレオチド配列をSEQ ID No:4に示す。
【0027】
発明を実施するための最良の形態
以下の例を参照して本発明をさらに詳細に記載するが、これらは説明のためのものにすぎない。
【0028】
本明細書に記載するように、本発明者らは肝毒性の可能性があるシアノバクテリア種および藍藻類ブルームを同定できる分子ツールを開発した。このツールは、肝臓毒素合成遺伝子クラスター内のアミノトランスフェラーゼ(AMT)ドメインの存在/不存在に基づく単一PCR反応にある。AMTドメインは、ポリケチドシンターゼ(PKS)モジュールと非リボソーム-ペプチドシンセターゼ(NRPS)モジュールの間に位置し、ミクロシスチンシンセターゼおよびノジュラリンシンセターゼ酵素複合体のそれぞれmcyEおよびndaFオープンリーディングフレーム内にある。AMTはミクロシスチンおよびノジュラリンの生合成に際して、アミノ基をAdda部分へ伝達するという重要な役割をもつ(Tillett et al., 2000)。
【0029】
したがって本発明の一側面は、有毒シアノバクテリアを検出する方法であって、
(a)シアノバクテリア試料を入手し;そして
(b)肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列の存在について試料を分析する
工程を含み、その際、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列が存在することを有毒シアノバクテリアの指標とする方法を提供する。
【0030】
本発明は、有毒シアノバクテリアを検出するためのキットであって、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を検出するために設計した少なくとも1つのプライマーを含むキットをも提供する。
【0031】
本明細書に例示するように、本発明の1態様による方法を用いて、ユレモ目、クロオコックス目およびネンジュモ目に属する肝毒性シアノバクテリアの培養物および藍藻類ブルームを検出することができた。さらに、シアノバクテリアの種およびペプチド肝毒素進化の一致に基づく配列分析により、同定した肝毒性シアノバクテリアの属を判定できる。
【0032】
本発明の方法およびキットは、たとえば水試料から有毒な可能性のあるシアノバクテリア分離体を検出するための有用なツールを提供し、これにより有毒ブルーム発生の可能性を評価し、有毒ブルームを同定し、または毒性の効力を評価し、これにより藍藻類ブルームにより受ける健康被害を評価することができる。したがって本発明の方法およびキットは、ルーティンな水質監視操作の一部を構成することができ、あるいは藍藻類ブルーム大発生の事態に際して、またはそのような大発生を支持もしくは誘導すると思われる状態に際して、必要に応じて使用できる。
【0033】
本発明の方法およびキットを単独で、または有毒シアノバクテリア種およびブルームを同定する際に利用できる他の試験と組み合わせて使用できることは、当業者には認識されるであろう。
【0034】
本発明に関連するシアノバクテリアが、肝毒性の可能性があるあらゆるシアノバクテリア、一般にミクロシスチンまたはノジュラリンを産生しうるものであることは、当業者には認識されるであろう。たとえば、本発明に関連するシアノバクテリアは一般にユレモ目、クロオコックス目、ネンジュモ目およびスチゴネマタレス目(Stigonematales)から選択できる。たとえばシアノバクテリアはアナベナ属、ネンジュモ属、ミクロシスチス属、プランクトスリックス属、ユレモ属、フォルミジウム属およびノジュラリア属(Nodularia)から選択できる。たとえば、シアノバクテリアはミクロシスチス・エルギノサ(Microcystis aeruginosa)、ミクロシスチス・ビリディス(Microcystis viridis)、ミクロシスチス・ウェゼンベルギ(Microcystis wesenbergii)、ノジュラリア・ハルベヤナ(Nodularia harveyana)およびノジュラリア・スプミゲナ(Nodularia spumigena)種から選択できる。たとえばシアノバクテリアはミクロシスチス・エルギノサPCC7806、ミクロシスチス・エルギノサPCC7005、ミクロシスチス・ビリディスNIES 102、ミクロシスチス・ウェゼンベルギNIES 107、ミクロシスチス属種UTEX 2667株、ミクロシスチス属種UTEX 2664株、ノジュラリア・ハルベヤナPCC7804、ノジュラリア・スプミゲナNROS 10、ノジュラリア・スプミゲナBY1、ノジュラリア・スプミゲナHEM、アナベナ属種202A2株、ネンジュモ属種152株、ユレモ属種18R株、ユレモ属種195株、フォルミジウム属種2-26b分離株、フォルミジウム属種1-6c分離株およびフォルミジウム属種4-19b分離株から選択できる。
【0035】
本発明の方法およびキットは、培養コレクション(culture collections)または環境試料中に肝毒性の新種または新属を発見するためにも使用できる。
方法およびキット
本発明の方法およびキットを用いて分析すべきDNAは、混合培養物中の、または分離した個々の種もしくは属としてのシアノバクテリア細胞から抽出することができる。したがって、DNA分離前に細胞を培養してもよく、あるいは水試料または藍藻類ブルームなどの環境試料からDNAを直接抽出してもよい。本発明の目的のためにDNAを抽出および精製するには、当業者に既知の多数の適切な方法を使用できる;たとえばNeilan (1995) および Neilan et al. (2002)、その記載を本明細書に援用する。本発明を特定のDNA分離法の使用に限定すべきでないことは、当業者に自明であろう。実際に、本発明はDNA分析前にDNAを分離しなくても実施できる。
【0036】
一般に、本発明によればDNA分析はPCR増幅により行われる。増幅生成物をさらに核酸配列決定により分析してもよい。PCR増幅は前記のようにシアノバクテリア分離体または環境試料から抽出したDNAについて実施でき、あるいは予めDNAを抽出または精製する工程の必要なしに生物から配列を直接増幅することができる。直接PCRのための多様な方法が当業者に既知である。
【0037】
PCR増幅反応、後続のフラグメント分離、および核酸配列決定に用いる方法および試薬は、当業者に周知である。それぞれの場合、適切なプロトコルおよび試薬は個々の状況に大きく依存するであろう。多様な資料から指針を得ることができる:たとえばSambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, ニューヨーク, 1989、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc, and Wiley-lntersciences, 1992。目的生成物を得る能力に影響を及ぼすことなくこれらの操作の多様なパラメーターを変更できることは、当業者に自明であろう。たとえばPCR増幅の場合、塩類濃度を変更でき、または変性、アニーリングおよび伸長工程のうち1以上について時間及び/または温度を変更できる。同様に、鋳型として用いるDNAの量も、使用できるDNAの量または効率的な増幅に最適な鋳型の量に応じて変更できる。
【0038】
本発明の方法およびキットに使用するためのプライマーは、一般に長さ15〜30塩基のオリゴヌクレオチドである。そのようなプライマーは、たとえば適切な配列の直接化学合成、またはクローニングおよび制限処理を含めた、適切ないずれかの方法で製造できる。必ずしもプライマー中のすべての塩基が、プライマーがハイブリダイズする予定の鋳型分子の配列を反映する必要はなく、プライマーはプライマーが鋳型にハイブリダイズするのに十分な相補的塩基を含みさえすればよい。プライマーは、1以上の位置に不適正塩基、すなわち鋳型中の塩基に対して相補的でない塩基を含んでもよく、むしろ塩基の伸長または増幅に際してDNAに変化を取り込ませるように設計される。増幅DNAのクローニングを容易にするために、プライマーは5'末端に追加塩基、たとえば制限酵素認識配列の形のものを含むことができる。
【0039】
本明細書に例示するように、肝毒性の可能性があるシアノバクテリアを検出するために、AMTドメイン含有生成物の増幅に適切なプライマーは、SEQ ID No:1〜4に示すヌクレオチド配列を含むことができる。PCR増幅に適切なプライマー対は、SEQ ID No:1とSEQ ID No:2、SEQ ID No:1とSEQ ID No:4、またはSEQ ID No:3とSEQ ID No:4に示すヌクレオチド配列を含むことができる。しかし、本発明は例示した特定のプライマーの使用に限定されず、肝毒性シアノバクテリアに由来するAMT配列を増幅しうるのに適切なようにプライマーが設計される限り他のプライマー配列も使用できることは、当業者には認識されるであろう。たとえば別態様において、プライマーのヌクレオチド配列はSEQ ID No:1〜4に示す配列と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性をもつものであってよい。少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性をもつ配列を作製する際に、これらの配列の1以上の塩基を置換、付加または欠失しうることは、当業者には認識されるであろう。
【0040】
さらに、AMT配列の増幅に適切なプライマーの位置は、G+C含量およびある配列が目的外の二次構造を形成する可能性などの要因により決定できる。
適切なプライマー配列は、多大な実験なしにルーティン方法を用いて当業者が決定できる。
【0041】
増幅DNAを分析するのに適切な方法は当業者に周知である:たとえば、ゲル電気泳動(これに先立って制限酵素消化を行ってもよく、行わなくてもよい)、および核酸配列決定。ゲル電気泳動は、アガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動を含むことができ、サイズに基づいてDNAフラグメントを分離するために当業者が慣用する方法である。大部分はゲル中のアガロースまたはポリアクリルアミドの濃度がゲルの分離能を決定するので、アガロースまたはポリアクリルアミドの適切な濃度は識別すべきDNAフラグメントのサイズに依存するであろう。
【0042】
有毒シアノバクテリアを検出するのに使用するためのキットも、本発明により提供される。一般に、本発明のキットはAMTドメイン配列を検出できる成分を用いて特別に設計され、これにより有毒な可能性のあるシアノバクテリアの同定が容易になる。
【0043】
したがって本発明のキットは、シアノバクテリアのAMTドメイン配列に特異的にハイブリダイズして肝毒性シアノバクテリアを検出できる、1以上のオリゴヌクレオチドプライマーを含むことができる。これらのキットにおいては、適切な量のプライマーを適切な容器に入れて提供することができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、たとえば水溶液中に懸濁して、または凍結乾燥した(freeze-driedまたはlyophilized)粉末として提供できる。
【0044】
適切なプライマー配列は多様であってよい。1態様において、本発明のキットはシアノバクテリアに由来するAMT配列のPCR増幅に適切なプライマー対を含む。このプライマー対は、SEQ ID Nos: 1および2に示す配列を含むことができる。このプライマー対は、SEQ ID Nos: 1および4に示す配列を含むことができる。このプライマー対は、SEQ ID Nos: 3および4に示す配列を含むことができる。キット中に供給される各プライマーの量は、その用途の性質に応じたいずれか適切な量であってよく、一般に少なくとも数回の増幅反応を開始させるのに十分な量であってよい。1回の増幅反応に使用するのに適切な各プライマーの量は、当業者が容易に認識できるであろう。
【0045】
本発明によるキットは、対照反応に使用するのに適切な対照鋳型分子および/または対照プライマーをも含むことができる。適切な対照鋳型および対照プライマーならびに対照反応の設計は、当業者に周知である。
【0046】
本発明によるキットは、増幅反応を実施するための他の成分をさらに含むことができ、これにはたとえばDNA試料調製用試薬、適切な緩衝液(たとえばポリメラーゼ用緩衝液)、塩類(たとえば塩化マグネシウム)、ポリメラーゼ酵素、およびデオキシリボヌクレオチド(dNTP)が含まれる。本発明のキットは、増幅DNAの分析を実施するのに必要な試薬、たとえば適切な制限酵素(1以上)、制限酵素消化のための反応用緩衝液(1以上)、および消化フラグメントを分離する際に使用するための試薬(たとえばアガロース)、および/または核酸配列決定に使用するための試薬をさらに含むことができる。一般にキットは、種々の成分を収容するための容器、および本発明に従った増幅反応の実施にキットの成分を使用するための指示を含むこともできる。
【0047】
以下の具体例を参照して本発明をさらに詳細に記載するが、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
実施例
実施例1−環状ペプチド肝臓毒性遺伝子のPCR検出
mcyEミクロシスチンシンセターゼおよびndaFノジュラリンシンセターゼ多酵素複合体内にコードされるアミノトランスフェラーゼ(AMT)ドメインを増幅するのに適切なオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。プライマーの設計は、ミクロシスチス・エルギノサ(Microcystis aeruginosa)PCC7806、ミクロシスチス・エルギノサK-139、アナベナ属(Anabaena)90およびプランクトスリックス属種128/6の4つの完全ミクロシスチンシンセターゼ配列、ならびにノジュラリア・スプミゲナ(Nodularia spumigena)NSOR10のノジュラリンシンセターゼ遺伝子に基づいた(図1を参照)。これら5配列から、図1ならびにそれぞれSEQ ID No:1および2に示す特異的プライマーHEPFおよびHEPRを設計できる2つの保存部位を同定した。HEPF2およびHEPR2と表示する別プライマーも設計および合成した;これらのプライマーは、HEPRのターゲット配列から約170 bpおよび560 bp下流の配列に相補的である(図2を参照)。図2に示すようにHEPF/HEPRプライマーセット、HEPF/HEPR2プライマーセットおよびHEPF2/HEPR2プライマーセットを用いてPCR増幅を実施して、それらがペプチド肝臓毒素を生成するシアノバクテリアをスクリーニングする能力を判定した。
【0048】
培養物および全ブルーム材料中の肝毒性シアノバクテリア種を用いて、これらのプライマーの特異性を試験した。
ミクロシスチス属、アナベナ属、ネンジュモ属、プランクトスリックス属、ユレモ属、フォルミジウム属およびノジュラリア属に属する17の肝毒性培養物を試験した(表1)。検査した株中にミクロシスチンまたはノジュラリンが存在することは、先の試験で既知であった。ミクロシスチス属、アナベナ属、ネンジュモ属、ノジュラリア属、リングビア属(Lyngbya)、フォルミジウム属、シネコシスチス属(Synechocystis)およびシリンドロスペルモプシス属(Cylindrospermopsis)に属する12の無毒性培養物を試験した。これらの試料中の主なブルーム発生属はミクロシスチス属、プランクトスリックス属およびノジュラリア属であった。
【0049】
スクリーニングしたブルーム試料(表2)は、アレキサンドリア湖(Lake Alexandria)、ジョン・オールドマン・パーク湖(Lake John Oldman Park)およびスワン川(Swan River)(オーストラリア)から採集された。スピノ湖(Lake Spino)(イタリア)からのブルーム試料は、Milena Bruno(Department of Environmental Hygiene, National Health Institute, イタリア)により提供された。プランクトスリックス属種のブルーム分離株(アマーシー湖(Lake Ammersee)、ドイツ)およびフォルミジウム属種の分離株は、それぞれDaniel Dietrich(University of Konstanz、ドイツ)およびGeorge Izaguirre(南カリフォルニア、メトロポリタン水域水質部門(Water Quality Section, Metropolitan Water District of Southern California)、米国)により提供された。他のシアノバクテリア株は、ニューサウスウェールズ大学バイオテクノロジー生体分子培養物コレクション学部(School of Biotechnology and Biomolecular Culture collection, University of New South Wales)(オーストラリア)から入手された(表1)。
【0050】
【表1−1】

【0051】
【表1−2】

【0052】
【表2】

【0053】
試験したすべてのブルーム試料がプライマー対HEPF/HEPRを用いて検査された。指示したもの()のみはHEPF/HEPR2またはHEPF2/HEPR2を用いて検査された。
【0054】
これらの株およびブルーム材料の全ゲノムDNAをXS緩衝液により抽出した(Neilan et al., 2002)。各抽出に約200 mgのシアノバクテリア細胞を用いた。細胞を600μlの抽出用XS緩衝液(1%のメチルキサントゲン酸カリウム; 800 mMの酢酸アンモニウム; 20 mMのEDTA; 1%のSDS; 100 mMのTris-HCl, pH 7.4)と混和した。混合物を渦撹拌混合し、65℃で2時間インキュベートし、抽出液を10分間氷冷した。12000×gで10分間の遠心分離により細胞屑を除去した。1体積のイソプロパノールおよび1/10体積の4 M酢酸アンモニウムを4℃で15分間添加することにより、DNAを沈殿させた。沈殿したDNAを12000×gで10分間の遠心分離によりペレット化し、70%エタノールで洗浄した。抽出したDNAを100μlの無菌水に再懸濁した。
【0055】
前記に概説したように、種々のプライマー組合わせによりPCR増幅を実施した:
【0056】
【化1】

【0057】
(図2を参照)。
すべてのPCR反応が、0.2単位のTaqポリメラーゼ(Fischer Biotech、オーストラリア、パース)を用いて、2.5 mMのMgCl2、1×Taqポリメラーゼ用緩衝液(Fischer Biotech)、0.2 mMのdNTP (Fischer Biotech)、0.5 pmolのフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含有する20μlの反応ミックス中で実施された。濃度約100 ng μl-1の鋳型DNAを1μl用いてPCRを実施した。サーマルサイクリングはGeneAmp PCRシステム2400サーマルサイクラー(Perkin Elmer、コネチカット州ノーウォーク)中で実施された。用いたアニーリング温度は、HEPF/HEPRプライマーについては52℃、HEPF/HEPR2については57℃、HEPF2/HEPR2については53℃であった。92℃で2分間の初期変性工程に続いて、92℃で20秒間、52℃/57℃/53℃(適宜)で30秒間、および72℃で1分間を35サイクル実施し、72℃で5分間の最終伸長工程を行った。PCR生成物を1%または2%アガロースゲル上で1×TAE緩衝液を用いて分析した。PCR生成物を臭化エチジウム(1μg/ml)で10分間染色した。光学記録のために、Quantity One 4.1R ソフトウェアを備えたGel-DOC Bio-RADシステム(BIO-RAD、米国)を用いた。
【0058】
増幅生成物それぞれについてHEPF、HEPRおよびHEPF2プライマーを用いて配列決定を行った。PRISM Big Dyeサイクル配列決定システムおよびABI 3730 Capillary Applied Biosystem (カリフォルニア州フォスターシティー)を用いて、自動配列決定を行った。配列決定されたアンプリコンの同一性をGenBankのBLAST検索により判定した。
【0059】
ミクロシスチス属、アナベナ属、ネンジュモ属、プランクトスリックス属、フォルミジウム属およびノジュラリア属に属するすべての肝毒性株のDNAから、HEPF/HEPRプライマーセットを用いたPCRにより、約472 bpのフラグメントが増幅された;これに対し、ミクロシスチス属、アナベナ属、ネンジュモ属、フォルミジウム属、ノジュラリア属、リングビア属、シネコシスチス属およびシリンドロスペルモプシス属に属する無毒性株のいずれからもPCR生成物は得られなかった(データを示さなかった)。したがって、PCR結果は表1に挙げた毒性または無毒性の表示と完全に一致する。
【0060】
増幅フラグメントの同一性を確認するために、すべてのPCR生成物を配列決定した。アンプリコンの配列分析により、それらがmcyEまたはndaFのいずれかのオーソログに由来する予想AMT遺伝子フラグメントであることが明らかになった。HEPF/HEPR PCRは、すべての肝毒性シアノバクテリアブルーム試料から472 bpフラグメントを増幅するのにも成功した(図3を参照)。これらのフラグメントを同様に配列決定して、培養シアノバクテリアからの配列データと比較した。
【0061】
さらに、ミクロシスチス属、アナベナ属、ネンジュモ属、プランクトスリックス属、フォルミジウム属およびノジュラリア属に属する肝毒性株のDNAからは、プライマーセットHEPF/HEPR2を用いて約1000 bpのフラグメント、プライマーセットHEPF2/HEPR2を用いて約400 bpのフラグメントが増幅された;これに対し、ミクロシスチス属種の無毒性株HUB 53からはPCR生成物は得られなかった(表3を参照)。これら2対のプライマーは、ジョン・オールドマン・パーク湖、スピノ湖およびアレキサンドリア湖から得た肝毒性シアノバクテリアブルーム試料からのフラグメント増幅にも成功し(表2を参照)、HEPF/HEPRプライマーセットを用いて得た結果と一致した(データを示さなかった)。増幅フラグメントの同一性を確認するために、ミクロシスチス・エルギノサ(M. aeruginosa)PCC7806株からHEPF/HEPR2およびHEPF2/HEPR2プライマーセットを用いて得たPCR生成物を配列決定した。アンプリコンの配列分析により、それらがmcyEに由来する予想AMT遺伝子フラグメント(ミクロシスチス・エルギノサPCC7806、寄託番号: AAF00958) であることが明らかになった。
【0062】
【表3】

【0063】
実施例2−環状ペプチド肝臓毒素遺伝子の進化
培養物からの配列をアラインし、それらの翻訳アミノ酸配列に従って系統発生分析した。アクイフェックス属(Aquifex)種(GenBank寄託番号AE000709)に由来するグルタミン酸-1-セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼを外集団として用いた。スワン川(オーストラリア)、アレキサンドリア湖(オーストラリア)、ジョン・オールドマン・パーク湖(オーストラリア)およびスピノ湖(イタリア)の試料のように配列が高品質であると考えられる場合は、全ブルームDNAから得た配列も分析に含めた。
【0064】
Applied Biosystem Auto-Assemblerコンピュータープログラムを用いて配列データを分析した。Clustal x (1.8)およびPAM-Dayhoffマトリックスを用いる多重アラインメントで配列を比較した。近隣結合法(Neighbor-Joining method)により系統発生樹を作製し、ブートストラップ法により1000のリサンプリング数を用いて信頼レベルを計算した。標準配列はGenBank (NCBI)から得られた。
【0065】
系統発生比較のために、シアノバクテリア培養物および全ブルーム材料からの増幅AMT領域を全く異なるクラスターAとBに分類した(図3)。クラスターAは、ネンジュモ目に属するアナベナ属、ネンジュモ属およびノジュラリア属の株からなり、一方、クラスターBにはユレモ属/プランクトスリックス属およびフォルミジウム属、ならびにミクロシスチス属の肝毒性株を含めた。ミクロシスチス属の株と分類されたミクロシスチス属ブルーム試料およびノジュラリア属ブルーム材料から得た配列データは、ノジュラリア・スプミゲナNSOR10とアラインした。ユレモ属/プランクトスリックス属の種々の株からのMcyE AMTに関する配列データが同一であった。同じことが3つのフォルミジウム属分離株についてもみられたが、ミクロシスチス属、アナベナ属に関するMcyEデータ、およびノジュラリア属株のNdaF配列データは、100%類似してはいなかった。
【0066】
系統発生分析により、NdaFはMcyEから進化したことが指摘された。さらに、ノジュラリンシンセターゼのAMTは、異質細胞(heterocyst)形成性ミクロシスチン産生体に由来するAMTと最も近い関係を示し、ネンジュモ属152株のAMTの側枝として配置された(図4)。
【0067】
AMTの系統発生により、調査した種の属に従ったクラスタリングが明らかになり、したがってこれらの結果はミクロシスチンおよびノジュラリンは無毒性株において失われた祖先遺留物であるという仮説を支持する。これは、ミクロシスチンシンセターゼ、ノジュラリンシンセターゼ、および16S rDNAの共進化を示唆する。
【0068】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】HEPFおよびHEPRプライマーと、解明された肝毒性種ノジュラリア属(Nodularia)NSOR10 (Moffitt and Neilan, 2004)、アナベナ属(Anabaena)90株(Rouhiainen et al., 2004)、ミクロシスチス・エルギノサ(M. aeruginosa)PCC7806 (Tillett et al., 2000), ミクロシスチス・エルギノサK-139 (Nishizawa et ah, 1999)、およびプランクトスリックス属(Planktothrix)NIVA-CYA126/8 (Christiansen et al., 2003)に由来するアミノトランスフェラーゼターゲット領域とのアラインメントを示す。
【図2】プライマーHEPF、HEPR、HEPF2およびHEPR2の相対位置、ならびにPCR生成物のおおまかなサイズ(bp)を示す。
【図3】藍藻類ブルーム試料からHEPF/HEPRプライマーを用いて得たAMTドメイン含有PCR生成物を、2%アガロースゲル上でのゲル電気泳動により分離したものを示す。M: 1kb + DNA-ラダー、列1:陽性対照(ミクロシスチス・エルギノサPCC7806)、列2:スピノ湖(Lake Spino)(イタリア)試料、列3:アレキサンドリア湖(Lake Alexandria)(オーストラリア)試料、列4:ジョン・オールドマン・パーク湖(Lake John Oldman Park)(オーストラリア)試料、列5:スワン川(Swan River)(オーストラリア)試料。
【図4】472 bpのAMTドメイン含有PCRフラグメントの系統発生分析を示す。近隣結合法(Neighbor-Joining method)により系統発生関係を構築した。ブートストラップ値が500を越えるもの(1000データのリサンプリング事象後に)を示す。目盛はアミノ酸位置当たりの変異数0.05である。ブルーム試料を太字で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有毒シアノバクテリアを検出する方法であって、
(a)シアノバクテリア試料を入手し;そして
(b)肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列の存在について試料を分析する
工程を含み、その際、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列が存在することを有毒シアノバクテリアの指標とする方法。
【請求項2】
肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列が、ミクロシスチンシンセターゼ遺伝子複合体のmcyEオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログ、および/またはノジュラリンシンセターゼ遺伝子複合体のndaFオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログに由来する、請求項1の方法。
【請求項3】
分析工程(b)が
(i)適切なプライマーを用いて試料からDNAを増幅し;そして
(ii)増幅配列を検出する
ことを含む、請求項1または2の方法。
【請求項4】
プライマーが、SEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項3の方法。
【請求項5】
プライマーが、SEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項3の方法。
【請求項6】
プライマーが、SEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項3の方法。
【請求項7】
増幅配列の検出が、ゲル電気泳動および/または核酸配列決定を含む、請求項3〜6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
シアノバクテリア試料が、分離または培養した1以上のシアノバクテリア生物を含む、請求項1〜7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
シアノバクテリア試料が、1以上のシアノバクテリア生物を含有する環境試料を含む、請求項1〜7のいずれか1項の方法。
【請求項10】
環境試料が、塩水または淡水の試料である、請求項9の方法。
【請求項11】
環境試料が、藍藻類ブルームからの試料である、請求項9の方法。
【請求項12】
肝臓毒素産生シアノバクテリアを検出する方法であって、
(a)シアノバクテリア試料を入手し;そして
(b)肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列の存在について試料を分析する
工程を含み、その際、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列が存在することを肝臓毒素産生シアノバクテリアの指標とする方法。
【請求項13】
肝臓毒素がミクロシスチンまたはノジュラリンである、請求項12の方法。
【請求項14】
肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列が、ミクロシスチンシンセターゼ遺伝子複合体のmcyEオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログ、および/またはノジュラリンシンセターゼ遺伝子複合体のndaFオープンリーディングフレームまたはそのオーソログもしくはホモログに由来する、請求項12または13の方法。
【請求項15】
分析工程(b)が
(i)適切なプライマーを用いて試料からDNAを増幅し;そして
(ii)増幅配列を検出する
ことを含む、請求項1〜14の方法。
【請求項16】
プライマーが、SEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項15の方法。
【請求項17】
プライマーが、SEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項15の方法。
【請求項18】
プライマーが、SEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項15の方法。
【請求項19】
増幅配列の検出が、ゲル電気泳動および/または核酸配列決定を含む、請求項15〜18のいずれか1項の方法。
【請求項20】
シアノバクテリア試料が、1以上の分離または培養したシアノバクテリア生物を含む、請求項12〜19のいずれか1項の方法。
【請求項21】
シアノバクテリア試料が、1以上のシアノバクテリア生物を含有する環境試料を含む、請求項12〜19のいずれか1項の方法。
【請求項22】
環境試料が、塩水または淡水の試料である、請求項21の方法。
【請求項23】
環境試料が、藍藻類ブルームからの試料である、請求項21の方法。
【請求項24】
有毒シアノバクテリアを検出するためのキットであって、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を検出するために設計された少なくとも1つのプライマーを含むキット。
【請求項25】
肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を増幅するために設計された複数のプライマーを含む、請求項24のキット。
【請求項26】
プライマーが、SEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項25のキット。
【請求項27】
プライマーが、SEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項25のキット。
【請求項28】
プライマーが、SEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項25のキット。
【請求項29】
肝臓毒素産生シアノバクテリアを検出するためのキットであって、肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を検出するために設計された少なくとも1つのプライマーを含むキット。
【請求項30】
肝臓毒素関連アミノトランスフェラーゼドメイン配列を増幅するために設計された複数のプライマーを含む、請求項29のキット。
【請求項31】
プライマーが、SEQ ID No:1および2に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項30のキット。
【請求項32】
プライマーが、SEQ ID No:1および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項30のキット。
【請求項33】
プライマーが、SEQ ID No:3および4に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項30のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−541735(P2008−541735A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513866(P2008−513866)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000730
【国際公開番号】WO2006/128230
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506093452)ニューサウス イノベーションズ ピーティーワイ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】