説明

肝疾患の治療

本発明は、(a)個体の血液からアルブミンを選択的に取り除くための手段、および(b)個体の血液からエンドトキシンを選択的に取り除くための手段、を含んでなる、肝疾患を有する個体の治療に用いるための装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝疾患の個体を治療することに関する。本発明は、そのような個体を治療するための方法、ならびにそのような治療において使用するためのシステムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国だけで毎年60,000人が肝不全で死亡していると推定されるが、ドナープールは依然として4000人ほどにとどまっており、16,000〜18,000人が待機リストに載っている。待機中の患者がドナー肝を受け取れる見込みは8人中たったの1人にすぎないが、このグループの患者の生存期間を引き延ばすために利用できる有効な治療は皆無である。
【0003】
肝不全は結果的に多臓器不全をもたらし、ほぼ80%程度の死亡率である。肝硬変の患者の場合、肝機能の急性悪化の主要因は感染である。かかる患者において最も広く観察される感染の特定の形態は特発性細菌性腹膜炎である。この終末器機能の急性悪化は根本的な感染症の治療にもかかわらず持続し、最大で40%の死亡率が普通に認められる。しかし、感染に続いて肝機能の急性悪化に至るメカニズムは不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は肝疾患の治療に関し、罹病率と死亡率に影響しうる2つの決定的要因、すなわち肝疾患の患者におけるアルブミンの構造、機能およびレベルの欠陥と、該患者におけるエンドトキシンの血中濃度の増加について取り上げる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、肝疾患を有する個体の治療に使用するための装置を提供し、前記装置は、
(a) 個体の血液からアルブミンを選択的に取り除くための手段、および
(b) 個体の血液からエンドトキシンを選択的に取り除くための手段、
を含んでなる。
【0006】
本発明はまた、下記の方法を提供する:
- 肝疾患を有する個体の治療方法であって、
(a) 個体の血液からアルブミンを取り除くステップ、および
(b) 個体の血液中のエンドトキシンのレベルを低下させるステップ、
を含んでなる方法;
- 個体の血液からアルブミンとエンドトキシンが取り除かれるように、個体からの血液を本発明の装置と接触させるステップを含んでなる、肝疾患の治療方法;
- 肝疾患を有する個体に由来する血液からアルブミンとエンドトキシンを選択的に取り除くことによって血液を体外的に処理する方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】虚血性修飾アルブミン(ischaemia modified albumin:IMA)レベルの増加は肝疾患の重症度と関連することがわかっている。数値は血漿アルブミン1g/LあたりのIMA吸光度単位として表される(平均±SEM)。*=p<0.05、***=p<0.001。
【図2】(A) 対照者、肝硬変のみの患者、および肝硬変+AHの患者における休止時酸化的バースト(resting oxidative burst)(%)、(B) 対照者、肝硬変のみの患者、および肝硬変+AHの患者における、休止時酸化的バーストと大腸菌(E. coli)によるex vivo刺激後の酸化的バーストとの差、(C) 対照者、肝硬変のみの患者、および肝硬変+AHの患者における、好中球1個が飲み込む細菌(FITC標識した大腸菌)の数の尺度としての蛍光強度の幾何平均(geometric mean of fluorescence intensity:GMFI)。統計的有意差を上付き文字で示す。1=対照に対して有意。2=肝硬変に対して有意。
【図3】(A) 生存を決定する際の酸化的バーストの測定の予測的妥当性を検討するための受信者動作曲線下の面積。休止時バースト<55%のカットオフは死の予測に対して75%の感度と64%の特異度を有していた。(B) 高い(>/=55%)または低い(<55%)休止時酸化的バーストに対して階層化された患者についてのカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)生存曲線およびログランク(log-rank)分析。
【0008】

【図4】(A) 生存を決定する際の蛍光強度の幾何平均(GMFI)の測定の予測的妥当性を検討するための受信者動作曲線下の面積。GMFI<295%のカットオフは死の予測に対して86%の感度と76%の特異度を有していた。面積=0.80; 標準誤差=0.08; 有意性=0.02; カットオフ=42; 感度=0.86; 特異度=0.70。(B) 低い(<42)または高い(>/=42)GMFIに対して階層化された患者についてのカプラン・マイヤー生存曲線およびログランク分析。
【0009】

【図5】患者の全血における、および患者血漿とインキュベートした正常好中球における休止時酸化的バースト。高バースト患者からの血漿は正常好中球においても高いバーストを引き起こしたが、休止時バーストの低い患者からの血漿はそのようにできなかった。WB 全血、NN 正常好中球、PP 患者血漿、H 高い休止時バースト (>/=55%)、L 低い休止時バースト (<55%)。* 正常に対してp=0.002。** 正常に対してp=0.0005。
【図6】患者の好中球と正常血漿とのインキュベーションによる休止時酸化的バーストの可逆性。PN 患者好中球、PP 患者血漿、NP 正常血漿。
【図7】エンドトキシンとのインキュベーションによる休止時バーストの用量依存的増加。* p<0.05; ** p<0.001。
【図8】エンドトキシンとのインキュベーションは正常好中球において食作用を変化させないが、患者好中球においては食作用をさらに低下させる。
【図9】休止時酸化的バーストは、血漿をエンドトキシン除去カラムに通すことにより、または血漿をCD14抗体とインキュベートすることにより、可逆性である。低バースト患者由来の血漿または対照血漿を用いる場合、前記カラムまたはCD14抗体は休止時バーストに影響を及ぼさない。NN+PP H 対 NN+PP H CD14 p<0.001。NN+PP H 対 NN+PP H カラム p<0.001。
【図10】食作用の低下は、血漿をエンドトキシン除去カラムに通すことにより、または血漿をCD14抗体とインキュベートすることにより、可逆性である。低バースト患者由来の血漿または対照血漿を用いる場合、前記カラムまたはCD14抗体は休止時バーストに影響を及ぼさない。NN+PP H 対 NN+PP H CD14 p=0.04。NN+PP H 対 NN+PP H カラム p=0.03。
【図11】アルブミン交換システムの説明図。
【図12】実施例3に記載した実験の終了時(T=3時間)に採取した血漿サンプル中の測定エンドトキシンレベル。生理食塩水処置群では、他のすべての処置群と比較して、有意に高いエンドトキシンレベル(p<0.001)が見られた。メーカーによると、このアッセイの検出限界は、図に示すように、0.5EU/mlである。
【図13A】実施例3に記載した実験の終了時に採取した血液サンプル中の測定アルブミンレベル。アルブミンはBDL手術後4週間で有意に減少する(** ナイーブ(手術を施してない)動物に対してp<0.01)ことがわかったが、アルブミン治療の後には著しく増加した(# 生理食塩水に対してp<0.05、Mann-Whitney検定)。
【図13B】実施例3に記載した実験の終了時に採取した血液サンプル中の血漿ALTレベル。生理食塩水を投与した動物と比較して、すべての処置群で血漿ALTの明らかな低下が見られたが、これらの差異は有意性が証明されなかった。
【図13C】実施例3に記載した実験の終了時に採取した血液サンプル中の血漿尿素濃度。アルブミンとポリミキシンBの組合せを受け取った動物は、アルブミンのみを投与した群と比較して、有意に低い尿素レベルを有する(* p<0.05、Mann-Whitney検定)ことが見出された。
【図14】実施例3に記載した試験の時間経過を通して測定された平均動脈圧(MAP)。有意差は認められなかったが、アルブミン/ポリミキシンを併用する治療法を受けた群は、アルブミンのみを受けた動物と比較して、改善されたMAPを有するかのように見える。これらの両群とも、90分後に顕著な低下を示した生理食塩水処置群より優れていた。
【図15】実験期間全体を通して採取した動脈血液サンプルの好中球活性。Y軸は、細菌に応答してバーストする好中球の%を示す。病原菌に応答して酸化的バーストを生じる好中球の割合は、同試験期間にわたりアルブミン処置群とアルブミン/ポリミキシン処置群の双方で次第に増加することが見てとれる。生理食塩水処置群でも3時間でわずかな改善が観察されるが、それは他の処置群よりも低く、有意であるとは見なされなかった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本明細書全体を通して、用語「含む」、またはその変形語「含まれる」もしくは「含んでなる」とは、記載した1つの要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を意味するものであり、他の要素、整数もしくはステップ(群)の除外を意味するものでないことが理解されよう。
【0011】
本明細書中でのあらゆる先行技術の言及は、その先行技術がオーストラリアまたはその他の国で一般常識の一部を構成することを承認したり、何らかの形で示唆したりするものではなく、また、そのようなものとして解釈されるべきでない。
【0012】
現在、肝疾患を有する患者、特に肝不全の患者のために利用できる治療法の範囲は限られている。多くの患者にとって唯一の選択肢は移植であるが、このグループの患者の生存期間を延ばすために利用しうる有効な治療法は存在しない。したがって、肝疾患にかかった個体の症状を改善するために使用可能な治療レジメンを見つけ出すことが求められている。
【0013】
アルブミンは肝臓で産生される主要な血漿タンパク質であり、脂肪酸輸送、金属キレート化、薬物結合、抗酸化剤活性を含めて、さまざまな機能を担っている。肝疾患においては、合成が減少するためか、あるいは分解速度がより速くなるために、その濃度が低下する。本発明者らはさらに、肝疾患の患者では循環血液中の一部のアルブミンが構造的に異常であることを明らかにした。また、本発明者らは、虚血性修飾アルブミン(IMA)の量が健常対照被験者と比較して肝疾患の患者では増加していることを見出した。肝不全の患者に由来するアルブミンの一部はその機能的能力が永久に破壊されている。
【0014】
したがって、一態様において、本発明は肝疾患を有する個体の血液からアルブミンを除去することに関する。
【0015】
これに関連してアルブミンの除去とは、構造的に正常なアルブミンの除去と、さらには個体の血液中に存在する構造的または機能的に修飾された形のアルブミンの除去とを指す。すなわち、好ましくは、本発明に従って用いられるアルブミンの除去手段は、天然に存在する正常なアルブミンだけでなく、異常な構造を有するアルブミンつまり修飾されたアルブミンをも除去できるものである。損傷されたまたは異常なアルブミンの除去は治療上有用であると考えられる。その理由は、損傷されたアルブミンは機能性が低く、損傷を与える副反応を伴う可能性があるからである。例えば、アルブミン除去手段は、正常な非修飾アルブミンと比較して、分子柔軟性が低減した、脂肪酸結合親和性が低下した、輸送の質が低下した、輸送効率が低下した、および/または解毒能力が低下したアルブミンをも除去することができる。アルブミン除去手段はまた、虚血性修飾アルブミン(IMA)のような、特定の修飾型アルブミンをも除去できるものである。そうした構造および機能の修飾は、例えば実施例1に記載するような、従来の技法を用いて検出することができる。特に、アルブミンの機能性はスピンラベルおよび電子常磁性共鳴分光法を用いて評価できる。IMAの存在は金属原子と結合するアルブミンの能力を試験することで検出可能である。
【0016】
アルブミンの除去は、関連したアルブミン結合型トキシンを取り除くことによって血液を解毒することも可能である。すなわち、アルブミン除去手段はまた、アルブミンと結合した血液中のトキシンを結果的に除去することができる。
【0017】
好ましくは、血液からアルブミンを取り除く手段はアルブミンを選択的に除去するものである。すなわち、他のタンパク質などの血液中の他の物質に優先してアルブミンが取り除かれる。血液から取り除かれるアルブミンの量は他の取り除かれる血液成分の量よりも著しく多いことが好ましい。例えば、この態様で取り除かれた成分の99重量%より多くがアルブミンである。この態様で取り除かれた成分の98%より多く、95%より多く、90%より多く、80%より多く、70%より多く、60%より多く、または50%より多くがアルブミンである。ここでのアルブミンの除去には、本明細書に記載した各種の修飾型アルブミンの除去が含まれる。
【0018】
アルブミンを取り除く手段は、血液からアルブミンを選択的に除去することができれば、どのような手段であってもよい。
【0019】
一態様においては、アルブミンと結合するリガンドを用いて、アルブミンを選択的に除去する。前記リガンドは、アルブミンと結合するものであれば、どのような分子でもよい。例えば、いくつかの反応性色素はアルブミンと結合することが知られている。リガンドはアルブミンと特異的に結合する抗体または他の親和性リガンドであってもよい。典型的には、アルブミンと特異的に結合するリガンドは、上で説明したように血液からアルブミンを選択的に取り除くことができるリガンドである。例えば、リガンドは血液の他の成分とよりも強くアルブミンと結合する能力がある。例えば、ヒトアルブミンと特異的に結合する抗体をリガンドとすることができる。そのリガンドはアルブミンに特異的なエピトープと結合する抗体であってよい。リガンドはそれぞれがアルブミンと結合する分子の組合せであってもよく、例えばアルブミン分子の異なる部分に結合する分子の組合せでありうる。リガンドはポリクローナル抗体つまりアルブミンタンパク質の多数のエピトープと結合する抗体の混合物でもよい。そのような組合せ手法は、異なる抗体がアルブミン分子の異なる部分を標的とするので、修飾型アルブミンを取り除くのに有用であると考えられる。
【0020】
抗体はアルブミン分子の特定のエピトープに対して誘導することが可能である。例えば、非修飾アルブミンと特定の修飾型アルブミンとで構造的に類似すると予想される領域に対して抗体を特異的に誘導することができる。
【0021】
本発明において、用語「抗体」は、反対のことを特に明記しないかぎり、アルブミンと結合するフラグメントを含むものである。そうしたフラグメントとしてFv、F(ab’)およびF(ab’)2フラグメント、ならびに一本鎖抗体が挙げられる。さらに、抗体およびそのフラグメントはキメラ抗体、CDRグラフト抗体またはヒト化抗体であってもよい。
【0022】
本発明で用いる抗体はどのような適当な方法でも作製することができる。抗体を作製して特性解析するための手段は当技術分野で公知であり、例えば、Harlow and Lane (1988) “Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい。例えば、抗体を作製するには、宿主動物内で全長ポリペプチドまたはそのフラグメント、例えばその抗原性エピトープ(以後「免疫原」という)に対して抗体を生起させることにより行うことができる。
【0023】
ポリクローナル抗体の作製方法は、適当な宿主動物(例えば実験動物)を免疫原により免疫し、その動物の血清から免疫グロブリンを単離することを含む。したがって、動物に免疫原を接種し、続いてその動物から血液を採取してIgG画分を精製すればよい。
【0024】
モノクローナル抗体の作製方法は、所望の抗体を産生する細胞を不死化することを含む。ハイブリドーマ細胞は、接種した実験動物に由来する脾細胞を腫瘍細胞と融合させることで作製することができる (Kohler and Milstein (1975) Nature 256, 495-497)。
【0025】
所望の抗体を産生する不死化細胞は従来の手法で選択することができる。ハイブリドーマを培養下で増殖させるか、あるいは腹水液の生成のため腹腔内に、または同種異系の宿主もしくは免疫無防備状態の宿主の血流中に注入する。ヒト抗体を作製するには、ヒトリンパ球をin vitroで免疫し、続いてそのリンパ球をエプスタイン・バーウイルスにより形質転換する。
【0026】
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方の作製について、実験動物をヤギ、ウサギ、ラットまたはマウスとすることが好適である。所望により、免疫原をコンジュゲートとして投与してもよく、かかるコンジュゲートは免疫原を、例えば1個のアミノ酸残基の側鎖を介して、適当なキャリアーに結合させたものである。一般に、キャリアー分子は生理学的に許容されるキャリアーである。得られた抗体を単離し、必要であれば精製する。
【0027】
抗体または他のリガンドは、それに特異的なタンパク質と優先的にまたは高い親和性で結合するが、他のタンパク質とは実質的に結合しないか低い親和性でしか結合しない場合、そのタンパク質と「特異的に結合する」とされる。すなわち、抗体が他の血液成分(血液中の他のタンパク質など)と結合するよりも強くアルブミンと結合するならば、その抗体はアルブミンと特異的に結合する。上で説明したとおり、結合の特異度は、抗体が非修飾アルブミンのみならず構造的または機能的に改変された形のアルブミンとも結合するようなものである。好ましくは、それは非修飾アルブミンと同じまたは実質的に同じ結合親和性で構造的または機能的に改変された形のアルブミンと結合する。好ましくは、それは他の血液成分(血液中の他のタンパク質など)よりも高い親和性で修飾型と非修飾型の両方のアルブミンに結合する。抗体の特異的結合能を測定するための競合結合アッセイまたは免疫放射線アッセイのさまざまなプロトコールが当技術分野で公知である(例えば、Maddox et al, J. Exp. Med. 158, 1211-1226, 1993を参照されたい)。そうしたイムノアッセイは一般に、特定のタンパク質とその抗体との複合体の形成および複合体形成の測定を必要とする。
【0028】
アルブミンを取り除くためにリガンドを使用する場合は、そのリガンドを固相支持体に結合させた状態で提供することができる。そのような固相支持体にリガンドを固定化させてもよい。適当な固相支持体は血液を通すことができるカラムの形でありうる。適当な固相支持体は、例えばメンブレン、粒子床またはフィルターのような多孔質材料であってよく、血液細胞がそれを通過できるよう十分に多孔性のものである。あるいはまた、適当な固相支持体は、その表面を血液が通過しうる固相基体であってもよい。好ましくは、固相支持体は個体の血液と支持体に結合されたリガンドが接触する面積を最大限にするために大きな表面積を有するものである。固相支持体はビーズの形をしていてもよく、ビーズは血液を導入したり通過させたりできる容器に充填される。カラムやフィルター床に充填したとき十分な多孔度が得られるように、ビーズは十分な大きさのものであることが好ましい。当技術分野では各種のビーズ材料が公知である。
【0029】
したがって、本発明によりアルブミンを取り除くための手段は、アルブミンと結合することができるリガンドを結合または固定させてある固相支持体を含むか、またはそのような固相支持体から構成される。アルブミンを取り除くための手段は、血液を通すことができる容器を含むか、またはそのような容器から構成される。したがって、容器には入口と出口がある。入口と出口は、容器の中を通過している血液が本明細書に記載する固相支持体と接触するように位置づけられる。好ましくは、血液と固相支持体の間の接触面積を最大限にするように、アルブミンを取り除くための手段を設計するかまたは選択する。当技術分野ではそのような設計がいろいろ知られている。例えば、アルブミンを取り除くための手段として、ビーズ(このビーズ上にアルブミンに対するリガンドが固定される)を充填したカラムまたはフィルター床がある。
【0030】
別の態様において、アルブミンは透析によっても取り除くことができる。そうした方法はアルブミンと一緒に透析される他の血液成分をも取り除くことがある。一般的には、取り除かれる主成分をアルブミンとすべきである。この透析ステップではどのような透析システムを使用してもよい。各種の透析システムが当技術分野で知られている。1つのそのようなシステムは分子吸収再循環システム(molecular absorbance recirculating system:MARS)である。代替システムは一般的な1回通過アルブミン透析(single pass albumin dialysis:SPAD)システムである。これらのシステムは血液中のアルブミンを透析するために孔サイズが50kDaのメンブレンを用いる。このシステムは特に患者の血液からアルブミン結合型トキシンを取り除くように設計されている。
【0031】
このシステムに代わるものとして、患者血液からのアルブミンが透析を介して新鮮なアルブミンと能動的に交換されるように、より大きな孔のメンブレンを利用することができる。これにより、同一のステップでトキシンと異常な形態のアルブミンとを取り除くことが可能となる。また、以下でさらに述べるように、新しい(個体由来ではない)アルブミンを血液中に導入することも可能となる。
【0032】
MARSシステムを改良して、より大きな孔のメンブレンを装備した研究では、標準的な50kDa細孔の装置と比較して、タンパク質結合型トキシンの除去が実質的に改善されることが示される。例えば、50kDaより大きい、60kDaより大きい、70kDaより大きい、80kDaより大きい、90kDaより大きい、または100kDaより大きい孔サイズのメンブレンを使用することができる。メンブレンは60kDaより小さい、75kDaより小さい、100kDaより小さい、または150kDaより小さい孔サイズであってもよい。
【0033】
アルブミンを取り除くために用いる個々の手段に応じて、他の血液成分がアルブミンと一緒に除かれることがある。一実施形態では、アルブミンと一緒に除かれた他の成分を個体の血液に戻すことができる。戻される成分は、血液から取り除かれたアルブミン混合物から精製してもよいし、個体に由来しない新鮮な同等成分と取り替えてもよい。
【0034】
血液からアルブミンを取り除く各種方法が当技術分野では知られている。例えば、米国特許第4,093,612号には、液体からアルブミンを除くために使用できる反応性色素組成物が開示される。本発明に従って、個体の血液からアルブミンを除去するためにそのような組成物を使用することができる。それゆえ、これはアルブミンと特異的に結合する化合物に基づいた選択的アルブミン捕捉システムである。これらは、例えば、シバクロンブルー(cibacron-blue)のような、米国特許第4,093,612号に記載される反応性色素であってもよいし、アルブミン特異的抗体のような、アルブミンと結合する能力がある他の分子であってもよい。
【0035】
したがって、本発明によれば、アルブミンが肝疾患を有する個体の血液から取り除かれる。一態様においては、このアルブミンを、個体に由来しない新しいアルブミンと取り替えることができる。新しいアルブミンは構造的にも機能的にも正常なものが好ましい。すなわち、新しいアルブミンは構造的または機能的に改変された形のアルブミンをまったく含まないか、実質的に含まない。個体の血液から取り出されたアルブミンが1種以上の修飾型アルブミンを含む場合、個体の血液に戻されるアルブミンは、取り出された修飾型アルブミンを少ししか含まないことが好ましい。例えば、個体の血液に戻されるアルブミンは、その個体から取り出された修飾型アルブミンの量の50%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を含んでいてよい。好ましくは、個体に戻されるアルブミンは、修飾型アルブミン、つまり虚血性修飾アルブミン(IMA)のような個体から取り出されたタイプの1種以上の修飾型アルブミンを一切含まないものである。
【0036】
新しいアルブミンは、肝疾患でない個体、肝不全でない個体、または肝機能が正常な個体といった、別の個体に由来するものでありうる。新しいアルブミンは、個体から取り出されたものであるが、純化または精製を行ってトキシンおよび/または修飾アルブミン分子を取り除いてあるアルブミンであってもよい。新しいアルブミンは、一般的に、個体から取り除かれたアルブミンよりも構造的および機能的に正常なアルブミンの比率が高いものである。新しいアルブミンは医薬品グレードのアルブミンとすることもできる。
【0037】
この新しいアルブミンは、個体が適当なレベルの循環アルブミンを確実に保有するように、個体の血液中に導入される。これは取り除かれたアルブミンの直接の代替物とすることができ、例えば、取り除かれた量と同じまたは等しい量のアルブミンが血液に戻される。このシステムでは、個体のアルブミンが新しいアルブミンと効率よく交換される。これとは別に、この段階で導入されるアルブミンの量を変えることによって、血中総アルブミン濃度を必要に応じて増加させたり低下させたりすることができる。したがって、血液に導入されるアルブミンの量は、取り出された量より多くても少なくてもよい。例えば、肝疾患は循環アルブミンレベルの低下を招くことがある。このことは結果的に機能的能力の低下につながりかねない。本発明によれば、患者の血液に導入される新しいアルブミンの量を、取り除かれたアルブミンの量より多くすることができる。これにより個体の循環中のアルブミン量を補うことができる。例えば、血中総アルブミン濃度を肝疾患でない個体に見られるのと同じまたは同様のレベルにまで上昇させる量の新しいアルブミンを導入することが可能である。
【0038】
新鮮なアルブミンは、個体のアルブミンの取り出しと同時に、個体の血液に導入することができる。例えば、アルブミンの交換を透析により行ってもよい。あるいはまた、アルブミンの取り出しとアルブミンの戻しのステップを逐次または別々に行ってもよい。例えば、本発明をex vivoで行う場合には、アルブミン除去手段の中に個体の血液を通し、その後続いて新鮮なアルブミンがそれに添加される。これは同一の装置の異なるパーツにより達成しうる。これとは別に、新鮮なアルブミンの添加を別個に行ってもよい。通常は、新鮮なアルブミンの添加を、患者の血液からのアルブミンの除去後に行う。
【0039】
本明細書に記載する更なる研究において、本発明者らは、エンドトキシンが肝疾患を有する患者の血液中の成分であり、そのような患者の予後(例えば、感染または臓器不全にかかりやすいこと、死亡のリスク、ならびに免疫抑制のようなある種の治療法に対する潜在的応答性)と関連しうることを明らかにした。
【0040】
本発明者らは、これらの予後因子が肝疾患を有する個体の血液中の好中球の活性化に関連しており、そうした活性化が個体の血漿中の伝播性因子の存在と関係しうることを見出した。かくして、高度の好中球活性化を有する個体からの血漿は、正常な好中球の活性化レベルを上げる能力がある。
【0041】
本発明者らはさらに、同様の効果が正常好中球をエンドトキシンと接触させることによって得られること、また、高度の好中球活性化を有する個体の血液からエンドトキシンを取り除くと、その血液中の好中球の活性化レベルを下げられることを見出した。したがって、エンドトキシンの除去は、好中球が活性化状態にある肝疾患の患者の治療に有用であると考えられる。正常な好中球機能を回復させることによって、そうした個体が感染と戦う能力を向上させることができると考えられる。
【0042】
したがって、本発明はまた、患者の血液からエンドトキシンを取り除くことに関する。アルブミンの除去は解毒の問題に対処しており、エンドトキシンの除去は低下した免疫応答の更なる問題に関係している。これら2つの手法を単一の装置または方法で組み合わせることによって、格段に有効な肝疾患の治療が達成される。
【0043】
好ましくは、血液からエンドトキシンを取り除くための手段はエンドトキシンを選択的に除去するものである。すなわち、血液中の他の物質に優先してエンドトキシンが取り除かれる。血液から取り除かれるエンドトキシンの量は、他の血液成分の取り除かれる量よりもかなり多いことが好ましい。例えば、この態様で取り除かれた成分の99重量%より多くがエンドトキシンである。この態様で取り除かれた成分の98%より多く、95%より多く、90%より多く、80%より多く、70%より多く、60%より多く、または50%より多くがエンドトキシンである。
【0044】
エンドトキシンを取り除く手段は、血液からエンドトキシンを選択的に除去することができれば、どのような手段であってもよい。
【0045】
一態様においては、エンドトキシンと結合するリガンドを用いて、エンドトキシンを選択的に除去する。前記リガンドは、エンドトキシンと結合するどのような分子でもよい。例えば、抗エンドトキシン抗体、LPS結合タンパク質、ポリミキシンB、ポリエチレンイミン、アルギニンリガンドおよび種々のペプチドはエンドトキシンと結合することが知られている。リガンドはエンドトキシンと特異的に結合する抗体または他の親和性リガンドでありうる。例えば、リガンドはエンドトキシンと特異的に結合する抗体である。一般的に、エンドトキシンと特異的に結合するリガンドは、上で説明したように血液からエンドトキシンを選択的に取り除くことができるリガンドである。例えば、リガンドは血液の他の成分とよりも強くエンドトキシンと結合する能力がある。そのリガンドはエンドトキシンに特異的なエピトープと結合する抗体であってよい。リガンドはいくつかの分子(それぞれがエンドトキシンと結合する)の組合せであってもよく、例えばエンドトキシン分子の異なる部分または異なるエンドトキシンと結合する分子の組合せでありうる。リガンドはポリクローナル抗体またはエンドトキシン分子の多数のエピトープもしくは異なるエンドトキシンと結合する抗体の混合物でもよい。
【0046】
抗体はエンドトキシン分子の特定のエピトープに対して誘導することができる。適当な抗体の種類は、アルブミンに関して上述したような、どのような種類の抗体でもよく、例えば抗体フラグメントであってよい。
【0047】
エンドトキシンと結合する抗体は、例えばアルブミン結合抗体に関して上述したような、いずれかの方法で作製することができる。得られた抗体を単離し、必要であれば精製する。
【0048】
抗体または他のリガンドは、それに特異的なタンパク質と優先的にまたは高い親和性で結合するが、他のタンパク質とは実質的に結合しないか低い親和性でしか結合しない場合、そのタンパク質と「特異的に結合する」とされる。すなわち、それは他の血液成分(血液中の他のタンパク質など)と結合するよりも強くエンドトキシンと結合する。結合の特異性は、それがエンドトキシンの異なる形態と結合するようなものでありうる。好ましくは、それは他の血液成分よりも高い親和性でさまざまな形態のエンドトキシンと結合する。
【0049】
リガンドを用いてエンドトキシンの除去を行う場合には、そのリガンドを固相支持体に結合させた状態で提供することができる。そうした固相支持体にリガンドを固定化させてもよい。適当な固相支持体はアルブミン結合性リガンドに関して上述したとおりである。
【0050】
したがって、本発明によりエンドトキシンを取り除くための手段は、エンドトキシンと結合することができるリガンドを結合または固定させてある固相支持体を含むか、またはそのような固相支持体から構成される。エンドトキシンを取り除くための手段は、血液を通すことができる容器を含むか、またはそのような容器から構成される。したがって、その容器には入口と出口がある。入口と出口は、容器の中を通過している血液が本明細書に記載する固相支持体と接触するように位置づけられる。好ましくは、血液と固相支持体の間の接触面積を最大限にするように前記手段を設計または選択する。当技術分野ではそのような設計がいろいろ知られている。例えば、前記手段として、ビーズ(このビーズにアルブミンに対するリガンドが固定される)を充填したカラムまたはフィルター床がある。
【0051】
別の態様では、血液からエンドトキシンを物理的に除去するのではなく、個体に薬剤を投与してエンドトキシンレベルを低下させることができる。例えば、血中のエンドトキシンを取り除く代わりに、機能的に中和するのである。エンドトキシンの中和方法は当技術分野でいろいろ知られている。これは、エンドトキシンの活性を選択的に取り除くまたは中和することができる薬剤を個体に投与することを含む。それはエンドトキシンの除去を助ける宿主の免疫系に依存しうる。例えば、適当な薬剤がエンドトキシンと結合し、個体の免疫系にこのエンドトキシン-薬剤複合体を血液から排出させる。循環エンドトキシンレベルを低下させる各種薬剤が知られており、例えば、抗エンドトキシン抗体、アルブミンおよびLPS結合タンパク質、LPS中和CD14抗体などがある。
【0052】
エンドトキシンの除去に用いる個々の手段に応じて、他の血液成分をエンドトキシンと一緒に取り除くことができる。例えば、いくつかのエンドトキシン除去方法は血液から他のトキシンをも取り除くことが可能である。このことは患者にとって都合がよい。いくつかのエンドトキシン除去方法は血液中に残存することが望ましい他の血液成分を取り除いてしまうこともある。その場合には、エンドトキシンと一緒に取り除かれた血液成分を個体の血液に戻すことができる。戻される成分は、取り除いたエンドトキシン混合物から精製してもよいし、個体に由来するものではない新鮮な同等成分と取り替えてもよい。
【0053】
サンプルからエンドトキシンを取り除くための各種手法が当技術分野ではすでに記載されている。例えば、EP-A-0 129 786には、血液からエンドトキシンを除去するための、ポリスチレン繊維に共有結合で固定されたポリミキシンBの使用が記載される。Falkenhagenら (Artificial Organs (1996) 20:420) は、ポリエチレンイミンをコーティングしたビーズを用いて血漿からエンドトキシンを除去することを記載している。WO 01/23413号には、血液や血漿からエンドトキシンを選択的に取り除くために用いる、高度の分散性を有するオリゴペプチドが記載されている。米国特許第5,476,715号には、サンプルからエンドトキシンを取り除くための材料であって、アクリル酸とメタクリル酸とのポリマーから作られた、特定の粒子サイズとスペースを有する多孔質キャリアーからなる材料が記載されている。Staubachら (Transfusion and Apheresis Science (2003) 29: 93-98) は、固定化アルブミンに基づいたエンドトキシン吸着のための装置を記載している。こうして、サンプルからエンドトキシンを除くために使用できると考えられる方法が数多く利用可能である。これらの方法はどれも本発明に従って使用することができるか、または本発明に従って使用するために適合させることができる。当業者であれば、適当な方法とその使用条件を選択することができるだろう。
【0054】
本発明の装置または方法は、好ましくは、循環血中エンドトキシンレベルを著しく低下させるのに有効である。例えば、かかる装置または方法は、個体の血中エンドトキシンレベルを少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%またはそれ以上、低下させることができる。
【0055】
本発明のこれら2つの特徴を合わせることもできる。アルブミンは血中のエンドトキシンと結合する能力がある。したがって、アルブミンの除去はアルブミンに結合している一部のエンドトキシンの除去にもつながる。さらに、個体における正常アルブミンのレベルを高めることによって、再度、血中のアルブミンが循環エンドトキシンと結合できるようになり、血中の遊離エンドトキシンのレベルを低下させる可能性がある。しかし、この方法で達成されるエンドトキシン低下の量は比較的少ないので、本発明では、(a)アルブミンを除去する手段と(b)エンドトキシンレベルを低下させる手段とを別々に利用することが好ましい。このアルブミン除去および/または交換の効果はエンドトキシンを低下させる他の手段を補足し、また、個体の血中に残存するエンドトキシンを「拭い去る(mop up)」のに役立つと考えられる。
【0056】
これらの知見に基づいて、本発明者らは、肝疾患を有する個体の治療に使用するための新規な方法および装置を開発した。これらは肝疾患を有する個体の血液からアルブミンとエンドトキシンの両方を取り除くように機能する構成要素の組合せを含んでなる。
【0057】
特に、本発明者らは、個体の血液からアルブミンを選択的に取り除く手段と、個体の血液からエンドトキシンを選択的に取り除く手段とを含んでなる、肝疾患を有する個体の治療に使用するための装置を開発した。好ましくは、これらは2つの別個の手段であり、各手段がこれらの効果の一方を達成するようになっている。この装置はまた、個体の血液に、その個体に由来するものではない新しいアルブミンを供給するための手段を含んでいてよい。
【0058】
したがって、そのような装置を使用することによって、結果的に、個体の血液からアルブミンが取り除かれ、個体の血中エンドトキシンレベルが低下し、場合によっては個体の血液に新しいアルブミンが導入される。このことはさまざまな面で治療上有用である。個体の血液からの内在性アルブミンの除去は、アルブミンに結合した不必要なトキシンを除去し、また、血液から異常な修飾型アルブミンを除去することにもなる。そうした修飾型アルブミンは機能的能力が低下している。取り除かれたアルブミンを新鮮なアルブミンと取り替えるために、新しいアルブミンを任意で導入してもよい。新鮮なアルブミンはアルブミン分子に結合したトキシンを含まないことが好ましく、また、新鮮なアルブミンは非修飾型であることが好ましい。内在性アルブミンレベルが肝疾患の結果として低下している場合は、それらを補充するために新鮮なアルブミンを血液に添加することも可能である。最後に、肝疾患の個体の血液からエンドトキシンを取り除くことは、その個体の血中の好中球の活性化レベルを低下させるのに役立つ可能性がある。この好中球活性化の低下は、感染のリスク、臓器不全および死亡率の低下をもたらし、また、免疫抑制療法やステロイドもしくは抗生物質による治療に対する個体の応答性を改善することができる。
【0059】
こうして、本発明の方法および装置は、肝疾患に関連した複数の因子に対処して、いろいろな形で個体に恩恵をもたらす、肝疾患の治療への標的手法を提供する。
【0060】
したがって、一態様において、本発明は肝疾患を有する個体の治療に使用するための装置に関する。この装置は、組み合わせてまたは別々に使用できるいくつかの構成要素を含みうる。本発明の装置は、個体の血液からアルブミンを選択的に取り除くための手段および個体の血液からエンドトキシンを選択的に取り除くための手段を含んでなるか、または本質的に前記手段から構成される。
【0061】
本明細書に記載する手段はどれもアルブミンまたはエンドトキシンの除去に使用することができる。一態様では、前記装置の1つの構成要素がアルブミンとエンドトキシンの両方の除去に用いられる。そのような構成要素は典型的にはアルブミン除去手段とエンドトキシン除去手段の両方を含むものである。例えば、アルブミンとエンドトキシンの両方を特異的リガンドへの結合によって除こうとする場合には、アルブミンに特異的な1種以上のリガンドとエンドトキシンに特異的な1種以上のリガンドを前記装置の同一の構成要素において一緒に使用する。例えば、前記装置はこれら2種類のリガンドが固定されている固相支持体を含むカラムまたはフィルター床のような、単一の容器を含んでなる。これらのリガンドは異なる支持体に固定させても、同一の支持体に固定させてもよい。こうして、アルブミンとエンドトキシンを個体の血液から同時に取り除くことが可能である。
【0062】
これとは別に、前記装置はアルブミンとエンドトキシンを取り除くための別個の手段を備えていてもよい。前記装置はアルブミンを取り除くことができる2以上の手段および/またはアルブミンを取り除くことができる2以上の手段を含みうる。
【0063】
前記装置は更なる構成要素を含むことができ、例えば、新しいアルブミン(すなわち、個体に由来するものではないアルブミン)を血液に供給するための手段を含む。前記装置はex vivoで使用するためのものでありうる。例えば、前記装置を設計する際には、個体からの血液がその装置を通過して、個体の体内に戻る前にアルブミン除去とエンドトキシン除去を達成するように設計する。
【0064】
考えられる2つの装置を図11に例示する。所望の効果を達成するために、いくつかの異なる構成要素をさまざまな組み合わせで使用しうることが本明細書の記述および図11に例示した2つの装置から明らかであろう。
【0065】
図11の最初に示した装置の構成要素は次のとおりである:
1. アルブミンをトラップする手段。アルブミントラップは患者の血液からアルブミンを選択的に取り除くものである;
2. トキシンを除くためにアルブミンの透析を実施する手段。例えば、アルブミンの交換を可能にするための大孔径メンブレン(50kDaより大きい)の使用は、患者アルブミンを「クリーニング」フィルターと相互作用させることにより改善されたトキシンの除去を可能にする。これはまた、患者アルブミンがフィルターを横切ってアルブミン透析液と交換されるので、患者アルブミンの除去を可能にする;
3. アルブミンをクリーニングするためのフィルター;
4. エンドトキシンを除去する構成要素;
5. 新しいアルブミンの注入。
【0066】
図11の2番目に示した装置の構成要素は次のとおりである:
1. 細菌性リポ多糖トラップ。これは患者の血液からLPS/エンドトキシンを取り除く手段である;
2. トキシンを除くためにアルブミンの透析を実施する手段。例えば、図11の最初に示した装置について述べたとおり;
3. アルブミンをクリーニングするためのフィルター;
4. アルブミン交換手段。例えば、患者アルブミンを取り除き、それを新鮮なアルブミンと取り替えるための拡散勾配;
5. 新しいアルブミンの注入。
【0067】
本発明はまた、本発明の装置を用いることによる肝疾患の治療方法に関する。例えば、個体からの血液を本発明の装置に接触させて、アルブミンとエンドトキシンが血液から取り除かれ、また場合によっては、個体に由来するものではないアルブミンが血液に供給されるようにする。この方法をex vivoで実施して、その後血液を個体に戻してもよい。
【0068】
本発明は肝疾患を有する個体の治療方法に関する。この方法は次のステップを含むか、本質的に次のステップからなる:(a)個体の血液からアルブミンを取り除くステップ、および(b)個体の血中のエンドトキシンレベルを低下させるステップ。これは本明細書に記載するいずれかの方法または手段により達成される。この方法はex vivoで実施することができる。ステップ(a)は透析を用いて達成しうる。ステップ(a)はアルブミンと特異的に結合することができるリガンドを用いて達成しうる。ステップ(b)は血液からエンドトキシンを直接取り除くことにより達成される。ステップ(b)はエンドトキシンと特異的に結合するリガンドを用いて達成しうる。ステップ(b)は、血中エンドトキシンレベルを低下させることができる治療上有効な量の薬剤を個体に投与することによっても達成しうる。本明細書に記載するステップ(a)方法とステップ(b)方法のどのような組合せを用いてもよい。場合によっては、前記方法は個体に由来するものではないアルブミンを個体の血液に導入するステップをさらに含む。
【0069】
本発明はさらに、血液(肝疾患を有する個体由来のものである)からアルブミンとエンドトキシンを選択的に取り除くことにより血液を体外的に処理する方法に関する。この方法は本明細書に記載するいずれかの適当な手段により達成され、個体に由来するものではないアルブミンを血液に添加する追加のステップを含んでいてもよい。この方法で処理された血液は治療目的のために個体に戻されるか、別の目的のために使用される。例えば、別の個体に輸血する前に、血液をこの方法で処理してもよい。
【0070】
本発明により治療される個体は肝疾患のある個体である。肝不全は肝疾患の最終段階である。肝不全は発症の急速性に応じていくつかのタイプに分けられる。急性肝不全は急速に発症するが、慢性肝不全は発症までに何ヶ月も何年もかかる。定義によれば、脳障害が現れるほど肝臓が病気に冒されているか肝機能が低下している場合に肝不全が生じる。進行性の肝疾患はどれも肝不全を引き起こしうる。例としては、アセトアミノフェンの毒性、肝硬変、ウイルス性肝炎、および転移性肝癌が挙げられる。肝疾患の他の徴候、例えば黄疸、腹水、肝性口臭、血液凝固障害などは、肝臓がその正常な生理的義務を果たす上でトラブルを抱えていることを示すが、精神状態の変化が現れるまではそれを肝不全と呼ばない。
【0071】
肝疾患の患者の予後は、その症状が多くの原因によるため、推測するのが困難である。
【0072】
したがって、治療すべき個体は、肝臓が代償不全である個体または肝性脳症の症状を示す個体でありうる。個体の肝臓が代償期にあるものでもよい。個体は慢性肝疾患を有する者でもよい。個体は、例えばアルコール性肝炎を併発したまたは併発していない、肝硬変を有する者でもよい。個体は急性肝不全を有する者でもよい。個体は肝性脳症を有する者でもよい。
【0073】
急性および慢性肝疾患の発症は生体異物に起因しうる。例えば、そのような個体は、肝損傷を引き起こす化学薬品、薬物またはその他の物質に曝されたことがある者である。個体は、肝損傷を引き起こすような、店頭販売された薬物、処方された薬物、または「耽溺性があり乱用される」薬物に対する反応を有する者でもよい。個体は、Rezulin(商標)(トログリタゾン;Parke-Davis社)、Serzone(商標)(ネファゾドン;Bristol-Myers Squibb社)、または肝損傷を引き起こすと考えられるその他の薬物を摂取していた者であってもよい。個体は、特定の薬物を過剰量摂取したか、または肝損傷を引き起こしうる薬物の推奨投与量を超過した者であってもよい。例えば、個体は、過剰量のパラセタモールを摂取した者である。個体は、例えばその仕事場などで、肝損傷を引き起こしうる化学薬品に曝された者でもよい。例えば、個体は工業または農業分野でそのような化学薬品に曝露された者である。個体は、肝損傷を引き起こしうる化合物を含む植物を摂取した者でもよく、特に、これは個体が草食動物のような動物の場合に当てはまる。例えば、個体はオグルマ(ragwort)のようなピロリジジンアルカロイドを含む植物を摂取した者である。個体は、肝損傷を引き起こすと考えられる環境毒素に曝された者であってもよい。
【0074】
薬物に関連する肝毒性は、急性肝疾患(急性肝不全)を伴う全症例の50%以上を占める。アセトアミノフェン(パラセタモールおよびN-アセチル-p-アミノフェノールとしても知られる)の毒性は、米国および英国における急性肝不全の最も一般的な原因である。アセトアミノフェンを治療用量またはやや過剰用量で服用する適量から大量の長期飲酒者には、重度の肝障害と、恐らくは急性肝不全のリスクがある。飲酒によってアセトアミノフェンの毒性効果が増強される。また、特異体質性薬物毒性も急性肝不全の一因となる。特異体質性薬物毒性は、個体が薬理学的に異常な方法で薬物に応答する過敏性反応であると考えられる。この異常な反応が急性肝不全をもたらす可能性がある。
【0075】
急性肝不全または慢性肝疾患は病原性生物の感染によっても引き起こされる。例えば、肝疾患はウイルス感染に起因しうる。特に、個体は肝炎を引き起こすウイルスに感染しているか、または感染していた者である。個体は慢性ウイルス性肝炎を有する者でもよい。ウイルスは、例えば、B型、C型、またはD型肝炎ウイルスである。場合によっては、特に個体がウイルス性肝炎を有する場合、その個体はHIV-IまたはIIにも感染している可能性がある。個体はAIDSでありうる。個体が肝疾患を引き起こす他の生物(特に、その生活環のある時期に肝臓に存在する生物)に感染していたか、または感染していることが考えられる。例えば、個体は肝吸虫を保有するか、または保有していた者である。
【0076】
個体は、慢性肝疾患を引き起こすか、またはそのリスクを高める遺伝的疾患を有する者でありうる。例えば、個体は肝ヘモクロマトーシス、ウイルソン病またはα1-アンチトリプシン欠損症の1つ以上を有する者である。個体は、肝線維症の可能性を高めるような、肝臓におけるある種の構造または機能異常を引き起こす遺伝的障害を有する者でもよい。個体は、肝臓に損傷を与え、それゆえに肝線維症の一因となりうる自己免疫障害を発症するような遺伝的素因を有する者でもよい。
【0077】
慢性肝疾患はアルコール誘導性でありうる。治療すべき男性または女性はアルコール中毒であるか、またはアルコール中毒であった者である。その男性または女性は、平均50単位以上のアルコール/週、60単位以上のアルコール/週、75単位以上のアルコール/週、さらには100単位以上のアルコール/週を摂取しているか、または摂取していた者である。その男性または女性は、平均100単位までのアルコール/週、150単位までのアルコール/週、さらには200単位までのアルコール/週を摂取しているか、または摂取していた者である。1単位のアルコールの測定量は国ごとに相違する。ここで、英国標準に従うと1単位は8グラムのエタノールに等しい。
【0078】
その男性または女性は、そのようなレベルのアルコールを5年以上、10年以上、15年以上、または20年以上にわたり摂取していた者でありうる。個体は、このようなレベルのアルコールを最長10年間、最長20年間、最長30年間、さらには最長40年間摂取していた者でありうる。アルコール誘導性肝硬変の場合には、個体は、例えば、25歳以上、35歳以上、45歳以上、さらには60歳以上の年齢でありうる。
【0079】
個体は男性または女性のいずれでもよい。女性は男性よりアルコールの有害作用を受けやすいと考えられる。女性は男性より短い時間枠で、しかもより少ない量のアルコールからアルコール性慢性肝疾患を発症する傾向がある。女性の方がアルコール性肝損傷を受けやすいとする理由を説明する単一の要因はないようだが、アルコール代謝に及ぼすホルモンの影響が重要な役割を果たしていると考えられる。
【0080】
このように、個体はアルコール性肝炎を患う者でありうる。アルコール性肝炎は、異常な検査結果が疾患の唯一の指標である軽度の肝炎から、黄疸(ビリルビン滞留によって起こる皮膚の黄染)、肝性脳症、腹水、出血性食道静脈瘤、異常な血液凝固、および昏睡などの合併症を伴う重篤な肝機能不全まで広範囲に及ぶ。
【0081】
個体は、肝損傷を起こすことが知られている多くの他の病状、例えば、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性慢性活動性肝炎、および/または住血吸虫症(寄生虫感染)の1つ以上を有する者でありうる。個体は胆管遮断を有するか、または有していた者でもよい。場合によっては、肝疾患の根本原因が不明であってもよい。例えば、個体は原因不明の肝硬変を有すると診断された者である。したがって、その個体は本明細書に記載した病状のいずれかを有する疑いがある。
【0082】
急性肝不全および肝性脳症のような肝疾患の診断方法は当技術分野でよく知られており、特に、当分野の臨床医や獣医には周知である。好ましくは、個体は、例えば医療または獣医療専門家により、肝疾患および肝性脳症を有すると診断された者である。個体は、肝疾患に伴う1以上の症状、例えば黄疸、腹水、皮膚の変化、体液滞留、爪の変化、あざができやすい、鼻血、食道静脈瘤のうち1以上を示す者であり、また、雄性個体では乳房腫大を有する者でもよい。個体は消耗、疲労、食欲喪失、吐気、衰弱および/または体重減少を示す者でありうる。個体はまた、肝性脳症に伴う1以上の症状、例えば錯乱、見当識障害、痴呆、昏迷、昏睡、脳浮腫、多臓器不全(呼吸不全、心血管不全、もしくは腎不全)、筋硬直/筋固縮、発作、または言語障害のうち1以上を示す者でありうる。治療対象の個体は、肝疾患を治療するための他の薬物を服用していても、服用していなくてもよい。治療対象の個体は肝性脳症を発生するリスクがある者でもよい。
【0083】
肝疾患は、超音波のような技術を含む物理的検査で確認されたものであっても、これから確認されるものでもよい。線維症、壊死細胞、細胞の変性および/または炎症、ならびに、肝疾患に特有のその他の特徴の形成を見つけるために、肝生検材料を採取されたことがあってもよい。個体において肝機能が損傷されているか否かを決定するために、個体の肝機能を評価されたことがあってもよい。肝疾患の性質および根本原因を特性解析することもできる。肝疾患の原因物質に対するあらゆる曝露歴を調べることもできる。
【0084】
治療対象の個体は、肝性脳症エピソードのリスクがある者、例えば、肝移植の待機患者、手術および/または門脈圧亢進症の患者でありうる。肝性脳症エピソードのリスクがある者とは、肝性脳症エピソードを患ったことがないか、または長期間(約12週間以上)にわたり肝性脳症エピソードを患ったことはないが、肝性脳症エピソードのリスクを生み出す障害または病状を有する者である。肝性脳症エピソードとは、肝疾患または肝機能不全を有する患者に脳機能不全が存在することを特徴とする臨床症状である。肝性脳症における精神障害は、主な影響がクォリティー・オブ・ライフの低下である最も軽度のものから、昏睡、そして最終的には死に至る重篤なものまで広範囲に及ぶ。
【0085】
本発明の方法が実施される個体は、肝移植患者、再潅流障害(例えば、肝移植後の移植片における障害)を患う個体、または多臓器不全を発症するリスクがあるか、もしくは発症している患者でありうる。
【0086】
エンドトキシンのレベルを、個体に投与する薬剤を用いて低下させる場合には、その薬剤をさまざまな剤形で投与することができる。こうして、薬剤は経口的に、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁液剤、分散性粉剤または顆粒剤として投与することができる。薬剤はまた、非経口的に投与することもでき、皮下、静脈内、筋内、胸骨内、経皮、または注入法のいずれかにより投与される。また、薬剤を座薬の形で投与してもよい。医師は、特定の患者各々に必要な投与経路を決定することができる。
【0087】
薬剤の製剤化は、薬剤そのものの性質、意図する用途が医薬用なのか獣医薬用なのか、などの要因に左右される。肝疾患の治療に用いられる薬剤は、同時使用、個別使用または逐次使用として製剤化することができる。
【0088】
薬剤は一般に、本発明では製薬上許容される担体または希釈剤を用いて、投与のために製剤化される。製薬用の担体または希釈剤は例えば等張液である。固体の経口製剤は活性化合物と一緒に、例えば、下記の物質を含むことができる:希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばデンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;飽和剤;色素;甘味剤;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;ならびに、一般に、医薬製剤に用いられる無毒かつ薬理学的に不活性の物質。このような医薬製剤は公知の方法、例えば混合、顆粒化、錠剤化、糖コーティング、またはフィルムコーティングなどの各種方法により製造することができる。
【0089】
経口投与用の分散液剤は、シロップ剤、乳剤または懸濁液剤でありうる。シロップ剤は担体として、例えばサッカロース、あるいはグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールを加えたサッカロースを含有しうる。
【0090】
懸濁液剤および乳剤は担体として、例えば天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有しうる。筋内注射用の懸濁液剤または溶液剤は、活性化合物と一緒に、製薬上許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコールを含んでもよく、所望の場合には、適量の塩酸リドカインを含有させてもよい。
【0091】
静脈内投与または注入用の溶液剤は担体として、例えば滅菌水を含み、それらは無菌の等張生理食塩水の形態であることが好ましい。
【0092】
薬剤の用量は各種パラメーターに従って、特に用いる物質;治療しようとする患者の年齢、体重および症状;投与経路;ならびに必要とされる治療計画に応じて決定することができる。
【0093】
この場合も、医師は個々の患者のために必要な投与経路および用量を決定することができよう。典型的な1日用量は、特異的阻害剤の活性、治療しようとする個体の年齢、体重および症状、退化のタイプおよび重症度、ならびに投与の頻度および経路に応じて、体重1kg当たり約0.1〜50mgである。好ましくは、1日用量のレベルは5mg〜2gである。
【0094】
本明細書に記載するあらゆる刊行物および特許出願は、本発明が関わる分野の当業者の水準を示すものである。
【0095】
あらゆる刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願の各々が具体的かつ個別に参照として含まれるのと同じ程度に、参照として本明細書に含めるものとする。
【0096】
理解しやすくする目的で、説明および例を用いて本発明をある程度詳細に記述してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修飾が可能であることが明らかであろう。
【0097】
以下の実施例により本発明を説明する。
【0098】
(実施例)
【実施例1】
【0099】
肝硬変の患者におけるアルブミン試験
この試験の目的は、肝疾患の重症度が増しているときのアルブミンの機能性の定性的評価を、スピンラベルおよび電子常磁性共鳴(EPR)分光法を用いて行うことであった。アルブミン用のスピンラベルとして16-ドキシルステアリン酸(SL)を健常ボランティア(対照、n=5)、安定して十分に代償性の肝硬変被験者(肝硬変、n=5)、および急性または慢性肝不全の患者(ACLF、n=10)から採取した血漿サンプルに添加した。5人の患者を分子吸収再循環システム(MARS、4セッション)で治療し、また5人を標準的な薬物療法で治療した。測定は7日間のMARSの前後に行った。その後、ラベルした血漿サンプルにエタノールの一定分量を添加し、それぞれの添加後にEPRスペクトルを記録した。記録したスペクトルの解析により、アルブミンの立体配座および結合特性に関する情報を得た。測定した各パラメーターについて、患者のアルブミンは、健常対照ボランティア由来のアルブミンよりも機能的能力が低いことがわかった。肝不全においては、更なる機能の低下が見られた。アルブミン状態の変化はMARS治療法の後にまったく認められなかった。
【0100】

【0101】
この試験の結果から、患者のアルブミンは構造および機能がひどく損傷されており、肝不全ではより悪化していることが明確に示された。これらの患者は一般に血漿アルブミン濃度の低下を伴っており、こうした要因の組合せによって機能的能力が極端に低くなるだろう。MARSはアルブミン結合型トキシンを取り除くことが分かったが、患者のアルブミンの質の悪さという根本問題を解決するには至らない。
【0102】
この同じグループの患者において、虚血性修飾アルブミン(IMA)の存在についても血漿サンプルを試験した。IMAは、アルブミンが金属原子と結合する能力を調べることにより測定される。機能性アルブミンでは金属結合機能が高いが、酸化的ストレス(虚血と再潅流の間に発生しうる)の後では、タンパク質の構造が損傷を受けて金属結合能力が低下する。
【0103】
本発明者らの患者グループでは、IMAの量(血漿アルブミン含有量に対する量、図1参照)が健常対照被験者と比較して肝疾患の患者で有意に増加している(p<0.001)ことが見出された。有意な増加は安定した肝硬変被験者とACLF被験者間にも見られ、ここでも、更なるアルブミンの損傷が次第に高まる疾患の重症度と関連することを示している。
【0104】
IMA形成中に生じる正確なタンパク質修飾は今もなお研究対象となっているが、その領域はN末端の20アミノ酸残基内にあると確認されている。このことは、その領域が上記のEPRラベリング法を用いて試験し同定された脂肪酸結合部位と明らかに相違するので、興味深いことである。また、このことは、重症の肝疾患に関連した翻訳後修飾プロセスがいくつも存在することを示している。
【実施例2】
【0105】
好中球機能試験
この試験の目的は、アルコール性肝炎患者において基本的な好中球機能(酸化的バーストおよび食作用)を系統的に試験し、それと感染率、臓器不全および生存率との関係を検討することであった。ex vivo試験で、本発明者らは、好中球機能の欠損が体液性因子によるものであるのか、また、血漿からのエンドトキシンの除去が患者の好中球機能を回復させるのか、について検討した。
【0106】
細胞を用いる実験では、全血または単離した好中球(および患者の血漿)を用いてPhagoburst(登録商標)またはPhagotest(登録商標)アッセイ(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)を行った。すべての実験に対して、無菌的に作業を行い、かつエンドトキシンフリーの器具を用いることによって、エンドトキシン汚染を避けるように細心の注意を払った。
【0107】
方法
患者選別
すべての患者またはその親族からインフォームド・コンセントをとりつけ、また、この試験の承認を地域倫理委員会から受けた。アルコール性肝硬変の理由で入院した患者を、経頸静脈的肝生検が臨床的に必要とされる時に、この試験に向けてスクリーニングした。患者がだんだんひどくなる黄疸、腹水、または肝性脳症グレード1もしくは2により証明されるアルコール性肝硬変の急性代償不全で入院した場合に、それらの患者をこの試験に参加させ、感染の微生物学的証拠(尿、血液、痰および腹水の一般的培養)が存在するかどうかは問わなかった。患者が<18才または>75才であり、臓器不全(強心薬の必要性、腎不全−クレアチニン>150、肝性脳症グレード3もしくは4、機械的人工換気の必要性、重症の心機能不全)、低ナトリウム血症、肝/肝外の悪性疾患、3日以内の胃腸出血の証拠を有する場合、または患者がこの試験に入る前に何らかの免疫調節療法を受けた場合には、それらの患者を除外した。
【0108】
試験デザイン
関連した電解質異常または血液量減少を修復したあと、血液サンプルを採取して、一般的な生化学、好中球機能、サイトカインプロファイル、およびチオバルビツール酸(T-BARS/修飾MDA)検出のために使用した。患者および健常ボランティアから末梢静脈血をパイロジェンフリーのチューブ(BD Vacutainer、リチウム-ヘパリン、60U/チューブ、Beckton and Dickinson社、英国、Plymouth)に無菌的に採取した。細胞を用いる実験では、血液を室温に保ち、血漿を回収するために血液をすぐに氷上に置いた。遠心分離後、血漿をパイロジェンフリーの条件下でエンドトキシンフリーのcryotube(Corning社、ニューヨーク州コーニング)に分注し、更なる分析まで−80℃で保存した。100μLの全血または50μLの単離好中球および50μLの血漿を用いてPhagoburst(登録商標)またはPhagotest(登録商標)を行った。すべての実験に対して、無菌的に作業を行い、かつエンドトキシンフリーの器具を用いることによって、エンドトキシン汚染を避けるように細心の注意を払った。ビリルビン、アルブミン、肝機能検査、凝固パラメーター、総血球数、およびC反応性タンパク質(CRP)をルーチンな方法で評価した。Maddreyの判別関数(discriminant function)およびPughスコアを計算した。患者は将来を見越して90日間にわたり追跡した。臓器機能不全の発症および死亡を記録した。血液培養物のスクリーニングを定期的に行い、大半の患者においてプレゼンテーションの時に予防用の抗生物質を使うことが我々研究班の方針であった。
【0109】
好中球
好中球は、全血アッセイ(以下に記載する)で、またはワンステップ勾配遠心(結果の項に示したとおり、付属書類参照)による単離後に、いずれかで検討した。
【0110】
好中球活性化(酸化的バースト)および食作用: Phagoburst(登録商標)キット(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)を用いて、オプソニン化された大腸菌による刺激の存在下で、または刺激の非存在下で、反応性酸化体を生成する好中球の割合をメーカーの説明書に従って決定した。Phagotest(登録商標)(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)では、食作用を示す好中球の全体からみた割合と、個々の細胞の食作用活性とを、FITC標識しオプソニン化された大腸菌を用いて測定した(付属書類参照)。好中球は特徴的な前方散乱光と側方散乱光(図2)にゲーティングし、その後CD16陽性細胞−FITC陽性細胞の割合(食作用を行う好中球の割合に相当する)および蛍光強度の幾何平均(GMFI)(1個の細胞が飲み込む細菌の数に相当する)を解析した。細菌のバッチごとの差によるバラツキをなくすため、これらの結果を、用いた細菌の新しいバッチにつき少なくとも3つの健常対照サンプルの平均に対して標準化した。サンプルは3回または2回反復して解析した。
【0111】
エンドトキシンとのインキュベーション
エンドトキシン(大腸菌0111:B4 ロット085K4068、Sigma Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス)は1mg/mlの原液として調製し、PBSを用いて表示濃度にそのつど希釈した。全血を水浴中37℃でそれぞれのエンドトキシン濃度と共に1時間インキュベートし、その後Phagotest(登録商標)またはBursttest(登録商標)を行った。
【0112】
患者のカラムからのエンドトキシンの除去
Detoxigelの使用: 細菌性リポ多糖のリピドA部分に結合するポリミキシンBが固定化されているエンドトキシン除去ゲルを含むDetoxi-Gel(登録商標)Affinity-pack充填済みカラム(Pierce Biotechnology社、イリノイ州ロックフォード)を用いて血漿サンプルからエンドトキシンを取り除いた。100μLのこのエンドトキシンフリーの希釈血漿サンプルを50μLの細胞懸濁液と共にインキュベートして、Bursttest(登録商標)またはPhagotest(登録商標)を示されたとおりに行った(付属書類参照)。
【0113】
CD14抗体の使用: 100μLの血漿と50μLのPBSを、5μLの抗ヒトCD14抗体(クローン11D18、Immuntools社、ドイツ、Friesoythe)(LPSを中和することが知られている)と共に60分インキュベートしてから、Phagotest(登録商標)またはBursttest(登録商標)を実施した。
【0114】
サイトカイン
市販のセット(BioSource International社、ベルギー、Nivelles)を用いて、血漿TNFα、sTNFαR1、sTNFαR2、IL-6およびIL-8を測定した。
【0115】
マロンジアルデヒドおよびプロスタグランジンF2α
マロンジアルデヒド(MDA)は当技術分野で知られた修飾チオバルビツール酸反応物質アッセイを用いて測定した。遊離の8-イソプロスタンF2αは市販のEIAキット(Cayman Chemical社、ミシガン州アナーバー)により検出した。
【0116】
統計
2群の比較にはカイ二乗検定、t検定、またはマン・ホイットニー(Mann-Whitney)検定を適宜採用し、3群以上の比較にはANOVA検定をデータセットに関するTurkey(等分散)またはDunnett C(非等分散)の事後解析と共に適宜採用した。診断の正確性を評価するために、受信者動作特性(ROC)曲線を作成し、曲線下の面積(AUROC)を算出した。ログランク検定で生存の差を解析した。ピアソンの相関係数を用いて変数間の関係を評価した。結果を平均±SEMとして示す。p<0.05を有意とみなした。
【0117】
結果
患者特性
スクリーニングした72人の患者のうち、63人が参加した。改変NASHスコアリングシステムを用いて、肝硬変のみと比較して顕著な炎症を有するもの(肝硬変+AH)に患者を組織学的に分類した。肝硬変+AHの患者(n=23)は、肝硬変のみの患者(n=40)と比較して、より高いMELDおよびPughスコア(p<0.001)により証明されるように、より重篤な病気であった。肝硬変+AHの患者はまた、有意に高いCRP(p<0.005)、白血球(p<0.001)、ビリルビン(p<0.001)、およびプロトロンビン時間(p<0.001)を有していた。患者は対照者よりも高レベルのTNFα、IL6、IL8、sTNFαR1、sTNFαR2、MDAおよびプロスタグランジンF2αを示した。肝硬変+AHの患者はIL6、IL8およびsTNFαR2が有意に高いレベルであったが、TNFα、sTNFαR1および酸化的ストレスについては統計的に有意な変化が認められなかった。疾患の重症度との相関関係はみられなかった。ex vivo実験では、これら63人のうち16人の患者に由来する血液または血漿を用いた。これら63人の患者についてのベースライン臨床データは、全コホートと有意に異なっていなかった。表1は、全患者についての、ならびに高いおよび低い休止時バーストを有する亜群についてのベースライン特性を示す(以下を参照のこと)。
【0118】
アルコール性肝硬変患者における酸化的バーストと食作用
刺激されていない患者の好中球では、好中球の酸化的バーストが対照と比較したとき増加した。アルコール性肝硬変患者由来の好中球は全体的に、健常対照者よりも5.6倍高い休止時酸化的バースト(p<0.001)を示した。肝硬変+AH患者由来の好中球は、肝硬変のみの患者(p<0.001)または対照者(p<0.001)と比較して、休止時酸化的バーストが有意に高かった(図2A)。fMLPによる刺激(プライミングを示す)は、対照者と比較して肝硬変患者(p<0.01)および肝硬変+AH患者(p<0.001)において有意に高い酸化的バースト反応を引き起こしたが、グループ間でPMAに対する応答には差異がなかった。休止時バーストとfMLP応答との差は、肝硬変患者(22.4±6.9、p=0.02)よりも肝硬変+AH患者(1.8±4.7)において有意に低かったが、このことは、肝硬変+AH患者へのfMLPの添加が当該細胞の機能をそれ以上増強できないことを示す。さらに、大腸菌による刺激後、休止時レベルからの酸化的バーストの相対的増加が、肝硬変のみ(p=0.001)または対照者(p<0.001)と比べて、肝硬変+AH患者では有意に小さかった(図2B)。
【0119】
食作用能は蛍光強度の幾何平均(GMFI)により測定したが、これは1個の細胞が飲み込む細菌の数を示している。肝硬変+AH患者では、飲み込まれた細菌が対照者よりもかなり少なかった(p=0.031、図2C)。少なくとも1個の細菌を飲み込んでいる細胞の割合はグループ間で差異がなかった。
【0120】
休止時酸化的バーストおよび食作用と感染、臓器不全および生存との関連性
17人(26%)が臓器不全を発症し、13人(試験した全患者の21%)が付属病院への入院中に死亡した。最も一般的に見られた臓器不全は腎不全であり、これは臓器不全患者のうち15人(88%)に見とめられ、そのうち4人の患者は呼吸と循環の補助が必要な多臓器不全の一部として腎不全を発症していた。90日までに、14人(22%)の患者が死亡してしまい、47人が生存しており、2人はもはや追跡調査しなかった。休止時酸化的バーストは90日生存(AUROC 0.77、p=0.003、図3A)および臓器不全(AUROC 0.76、p<0.001)を予測するのに役立つことが判明した。休止時バースト<55%のカットオフは、死を予測するにあたって77%の感度および69%の特異度を有していた。休止時酸化的バースト<55%の患者は、休止時バースト>/=55%の患者よりも有意に良好に生き残っている(p<0.005、図3B)。食作用機能もまた生存(AUROC 0.80、p=0.02、図4A)および臓器不全(AUROC 0.91、p<0.0001)を予測するのに役立った。試験した患者集団における標準に対して42%より低いGMFIは、死を予測するのに86%の感度および70%の特異度を有していた(図4B)。
【0121】
42人(66%)の患者には、入院期間中、感染が臨床上疑われたが、参加した患者で好中球機能の評価時点に感染が証明された者は誰一人としていなかった。我々の管理プロトコールによって、感染の疑いがあるとすぐに広域スペクトル抗生物質の使用を余儀なくされるので、これらのデータはこうした状況を考慮すべきである。これらの患者のうち26人(62%)には、培養陽性感染が確認された。13人には、2種以上の生物が見つかった。休止時バーストが高い(>55%)患者は、入院中比較的早期に(8日対23日、p=0.04)、また、2種以上の生物(n=10; 休止時バーストが低い患者ではn=3)による、培養陽性感染をおこす可能性が高かった(57%対27%、カイ二乗 p=0.01)。肝硬変+AH患者は培養陽性感染をおこす可能性が高かった(65%対28%、p=0.004)。培養陽性感染をおこした患者は臓器不全を発症して(p=0.001)、死亡する(p=0.002)傾向が高かった。GMFIが42%より低い患者の67%は培養陽性感染をおこしたが、GMFIが42%より高い患者ではたったの21%(p=0.007)がそのような感染をおこしたにすぎなかった。GMFIの低い患者では入院中比較的早期に感染が生じた(9日対47日、p=0.03)。
【0122】
好中球の酸化的バーストに及ぼす患者血漿および正常血漿の影響
休止時バーストが高い患者(>55%; n=6)由来の血漿は正常好中球において高い休止時バーストを誘発させた(p=0.005)が、休止時バーストが低い患者(<55%; n=6)由来の血漿はそのような誘発を果たせなかった(図5)。バースト誘発効果は、血漿と細胞を混合した直後に検出可能であったが、最大1時間のインキュベーション後にも見られた(結果は示してない)。この結果は、患者の血漿中に好中球活性化を引き起こす伝播性因子が存在することを示した。
【0123】
全血アッセイで高い休止時バーストを示した患者の単離好中球を正常血漿と共にインキュベートしたとき、患者自身の血漿と共にインキュベートした好中球に比べて、休止時バーストが有意に減少した(p=0.02; 図6)。これらの実験から、血漿中に存在するある因子の除去により患者の細胞における高い休止時バーストを低下させ得ることが示唆された。
【0124】
食作用に及ぼす患者血漿および正常血漿の影響
休止時バーストが低い患者由来の血漿と共にインキュベートした正常好中球では対照との差異がなかったが、休止時バーストが高い患者由来の血漿と共にインキュベートした正常好中球ではGMFIの22%低下が示された(p=0.03、n=6)。正常血漿と共に60分間インキュベートした患者好中球では、患者自身の血漿と共にインキュベートした患者好中球に比べて、食作用の22%増加が示された(p=0.03、n=6)。これらの結果から、食作用機能の欠損は伝播性および可逆性の血清因子に起因しうることが示される。
【0125】
酸化的バーストおよび食作用に及ぼすエンドトキシンの影響
5人の健常ボランティア由来の血液を、次第に濃度を増加させたエンドトキシンと共にインキュベートした。休止時バーストの用量依存的増加が見とめられた(p<0.0001、Turkey事後解析を用いた一元配置ANOVA;図7)。患者の好中球をエンドトキシンと共にインキュベートすることによって、相対的GMFIが20%低下した(n=8、p=0.02、図8)。これらの結果から、エンドトキシンは用量依存的に正常好中球を活性化し、それにより患者血漿とのインキュベーションで見られた作用を模倣することが示される。
【0126】
患者の血漿からエンドトキシンを除去することの効果
a. Detoxi-Gelカラムの使用: 全血アッセイで高い休止時バーストを有することがわかった患者からの血漿は、正常好中球において高い休止時バーストを引き出すことができた。エンドトキシンフリーの血漿(カラムを通過させて得られたもの)は正常好中球において高い休止時バーストを誘発しなかった(p<0.001、n=9)。休止時バーストが低い患者由来の血漿(p=0.91、n=4)および正常血漿(p=0.25、n=3)は休止時バーストを変化させなかった(図9)。休止時バーストが高い患者(n=11)の血漿からエンドトキシンを除去すると、未処置の血漿と共にインキュベートした細胞に比べて、GMFIが31%増加した(p=0.03)。カラムを通過させた、休止時バーストが低い患者由来の血漿(p=0.16、n=8)および正常血漿(p=0.85、n=5)は、GMFIのいかなる変化も生じさせなかった(図11)。このセットの実験は、ポリミキシンBによるエンドトキシン除去が患者血漿のバースト誘発作用および食作用低下作用を逆転させることを示している。
【0127】
b. LPS中和抗体の使用: LPS中和抗ヒトCD14抗体とのインキュベーションは、高バースト患者由来の血漿による正常細胞での高バースト誘発を阻止した(p<0.001、n=7)。低バースト患者由来の血漿(p=0.733、n=8)または正常血漿(p=0.25、n=3)の、前記抗体の存在下でのインキュベーションはバーストを変化させなかった(図9)。高バースト患者由来の血漿の、LPS中和抗ヒトCD14抗体の存在下でのインキュベーションはGMFIを20%増加させる(p=0.04、n=11)が、この抗体は、低バースト患者由来の血漿(p=0.17、n=8)または正常血漿(p=0.78、n=3)を使用した場合には、GMFIのいかなる変化も生じさせない(図10)。この知見は、エンドトキシンが好中球における高い休止時バーストの誘発に関与しうるという観察を支持するものである。
【表1】

【表2】

【0128】
感染に関する表
試験した患者において詳細に記録した培養陽性感染

【0129】
方法論
好中球活性化(酸化的バースト)および食作用
Phagoburst(登録商標)キット(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)を用いて、オプソニン化された大腸菌による刺激の存在下で、または刺激の非存在下で、反応性酸化体を生成する好中球の割合をメーカーの説明書に従って決定した。簡単に述べると、100μlのヘパリン化した全血または単離した好中球(示したとおり)を20μlの細菌、N-ホルミルメチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)と共に、または刺激なしに、37℃で20分間インキュベートした。酸化的バースト中の反応性酸化体の生成をジヒドロローダミン123の添加および酸化によりモニタリングした。好中球を同定するために、細胞を抗CD16-PE抗体(IOTest(登録商標)、Beckman Coulter社)で染色し、蛍光活性化セルソーティング(FACS)(Becton Dickinson FACScan、カリフォルニア州サンノゼ)によりCellquest(商標)ソフトウェアを用いて解析した。好中球を特徴的な前方散乱光と側方散乱光にゲーティングし、その後反応性酸素代謝産物を生成するCD16陽性細胞の割合を緑色蛍光(FL-1)の測定により決定した。サンプルは2回または3回反復して解析した。休止時バーストに関するアッセイ間変動係数(CV)は5.4%であり、刺激バーストに関してが4.2%であった。休止時バーストに関するアッセイ内CVは4.7%であり、刺激バーストに関してが2.4%であった。
【0130】
好中球の食作用
Phagotest(登録商標)(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)を用いて、食作用を示す好中球の全体からみた割合と、個々の細胞の食作用活性とを、FITC標識しオプソニン化された大腸菌を用いて測定した。100μlの全血または単離した好中球(以下に示したとおり)を20μlの細菌と共に37℃で20分間インキュベートし、その間陰性対照サンプルを氷上に置いておいた。好中球を同定するために、細胞を抗CD16-PE抗体(IOTest(登録商標)、Beckman Coulter社)で染色した。好中球を特徴的な前方散乱光と側方散乱光(図2A)にゲーティングし、その後CD16陽性細胞−FITC陽性細胞の割合(食作用を行う好中球の割合に相当する)および蛍光強度の幾何平均(GMFI)(1個の細胞が飲み込む細菌の数に相当する)を解析した(図1B、D、F)。細菌のバッチごとのバラツキによる結果の誤解釈をなくすため、これらの結果を、用いた細菌の新しいバッチにつき少なくとも3つの健常対照サンプルの平均に対して標準化した。3回または2回反復してサンプルを解析した。食作用の割合に関するアッセイ間CVは6.8%であり、GMFIに関してが10.1%であった。食作用の割合に関するそれぞれのアッセイ内CVは4.1%であり、GMFIに関してが1.6%であった。
【0131】
好中球の単離
4mlの全血を5mlのPolymorphoprep (Axis-Shield社、ノルウェー、オスロ)の上に重層し、400g、室温で30分遠心した。2番目の界面から好中球を採取し、PBS(Sigma Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス)を用いて洗浄した。好中球の数をThoma血球計でカウントし、PBS中に50μL中5×106個の細胞密度で懸濁させた。1回のアッセイにつき50μLの細胞懸濁液と50μLの血漿を使用した。トリパンブルー排除法により細胞生存率を計測したところ、98%を超えていた。
【0132】
エンドトキシン除去カラム
細菌性リポ多糖のリピドA部分に結合するポリミキシンBが固定化されているエンドトキシン除去ゲルを含むDetoxi-Gel Affinity-pack充填済みカラム(Pierce Biotechnology社、イリノイ州ロックフォード)を用いて、血漿サンプルからエンドトキシンを取り除いた。カラムを1%デオキシコール酸ナトリウム(Sigma Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス)により再生し、滅菌水で洗浄し、50IU/mlのヘパリン(Multipharm社、英国ワクサム)を添加した0.9%の滅菌塩化ナトリウムにより室温で平衡化した。血漿サンプルをPBSで1:1に希釈してカラムにアプライし、ボイドを捨てた後、パイロジェンフリーのサンプルチューブ中にサンプルを回収した。150μLのこのエンドトキシンフリー希釈血漿サンプルを50μLの細胞懸濁液とインキュベートして、示されたとおりにBursttest(登録商標)またはPhagotest(登録商標)を行った。
【0133】
サイトカイン
TNFα、sTNFαR1、sTNFαR2、IL-6およびIL-8は、エチレンジアミン四酢酸塩で凝固を防止した血漿サンプルから、市販のセット(BioSource International社、ベルギー、Nivelles)を使ってメーカーの説明書に従って測定した。サイトカインの検出下限は3pg/mLであった。アッセイ内変動係数は5.4%〜6.4%であった。対照ではIL-6とIL-8が検出不能であった。
【実施例3】
【0134】
非代償性肝硬変のげっ歯類モデルにおけるアルブミン投与および細菌性エンドトキシン分離の効果
この試験の目的は、アルブミンおよび/またはエンドトキシンの除去が非代償性肝硬変のげっ歯類モデルにおいて有益であるかどうかを検証することであった。このモデルでは、肝硬変に続発する副次的な障害を細菌性エンドトキシン(リポ多糖、LPS)の注入により起こさせたが、この細菌性エンドトキシンは感染の影響をシミュレートするために一般的に用いられるものである。
【0135】
方法
すべての試験は動物科学的処置法1986(Animals in Scientific Procedures Act 1986)のもとに内務省ガイドラインに従って実施した。Sprague-Dawley系の雄ラット(230〜280g、Charles Rivers Ltd.)を、げっ歯類用の標準固形飼料と水を自由に摂取できるようにして、12時間の明暗サイクル、19〜23℃、約50%の湿度で飼育した。
【0136】
麻酔をかけて正中腹部切開を行うことにより胆管結紮(BDL)を実施した。BDL群では、総胆管を取り出し、3-0絹糸で三重に結紮して、結紮と結紮の間で切断した。BDL後、全動物は体重が増え続け、ナイーブ(BDLを施してない)対照ラットに匹敵した。全死亡率は10%未満であり、死亡は手術の36時間以内に生じた。
【0137】
手術後24〜26日の間に、動物に麻酔をかけて、左頸動脈と右頸静脈に留置カニューレを挿入した。動脈ラインは血圧の連続モニタリング(Biopac Systems社、米国カリフォルニア州ゴレタ)と血液サンプルの採取のために使用し、静脈ラインは液体の連続注入のために使用した。
【0138】
全BDL動物はLPS(1mg/Kg、Klebsiella pnuemoniae(肺炎桿菌)、Sigma社、英国Poole)の静脈内注入を20分にわたり受け、続いてi) 生理食塩水; ii) 生理食塩水中のアルブミン (1.5g/Kg、Zenalb、BPL社、英国、Elstree); iii) ポリミキシンB (2mg/Kg、Sigma社、英国、Poole); またはiv) アルブミン+ポリミキシンB (上記の通り)の連続注入(10ml/Kg/時間)を術後に3時間の全実験期間まで受けた。動脈血サンプルを好中球機能の解析のため0、1、2および3時間目に採取した。
【0139】
動物を麻酔下での瀉血により犠牲にし、解析のため血液を回収した。すべての試験をBDL後25〜28日に肝組織で行い、最終解析には各群4匹の動物を用いた。
【0140】
実験の終了時に、血液を氷冷無菌チューブ(BD Vacutainerシステム、Becton Dickenson社、英国)に集めて氷上に置き、遠心(3000rpm、4℃、10分)により血漿を分離し、その後解析に先だって血漿を−80℃で保存した。
【0141】
血漿のエンドトキシン含有量は、Tecan Sunrise 96ウェルプレートリーダー(Tecan社、オーストリア)を用いて測定される市販のEndosafeシステム(Charles Rivers Laboratories、フランス、Cedex)を使ってメーカーの説明書に従い分析した(例えば、Stadlbauer et al J. Hepatol 2007; 47: 726-727を参照されたい)。血漿のアルブミン含有量、ALT、および尿素についてもCobas Integra 400実験室アナライザ(Roche Diagnostics社、英国、Sussex)を用いて測定した。
【0142】
好中球機能は、Phagoburstアッセイキット(Orpegen社、ドイツ、ハイデルベルグ)を用いて、FACScantoフローサイトメーター(Becton Dickenson社、英国)によりメーカーの説明書に従い測定した(例えば、Mookerjee et al Hepatology 2007; 46: 831-840を参照されたい)。
【0143】
統計分析は、Graphpad Prismソフトウェアパッケージ(Graphpad社、米国カリフォルニア州)を用いて、示された方法により行った。
【0144】
結果
図12から、エンドトキシンは3時間後に生理食塩水処置動物の血漿中に容易に検出できたことが見てとれる。ポリミキシンBを、単独でまたはアルブミンと組み合わせて、投与された動物群では、エンドトキシンレベルがアッセイの検出限界より低いことがわかった。アルブミンのみで処置された動物群には少量存在することがわかったが、これは生理食塩水処置動物と比べてごくわずかであった(p<0.001)。アルブミンにはアルブミンと結合する能力があることが知られているが、投与した用量でポリミキシン同様に効果的であるかはわからなかった。
【0145】
BDL動物は血漿アルブミン濃度が著しく低下していることが知られているが、このアルブミン濃度の低下は進行中の肝損傷から生じている。アルブミンの投与は、測定された血漿アルブミンレベルを25%ほど有意に増加させる(生理食塩水に対してp<0.05)ことが見出された。しかし、これは依然として、ナイーブ(BDL手術を施してない)健常動物から採取したサンプルよりもかなり低いことが判明した(p<0.01、図13A)。
【0146】
BDL動物はトランスアミナーゼレベル(ALT、図13B)が増加していると予想されるが、処置群のそれぞれは比較的低いALTスコアをもつことに気がついて興味深かった。これらの差は群内変動ゆえに有意性があるとは認められなかったが、エンドトキシンは基本的な肝臓の状態を悪化させるため、その除去は肝臓にとって有益であると考えられる。
【0147】
尿素レベルはナイーブ健常動物と比較してすべての群で上昇していたが、アルブミンのみの群と比べてアルブミン/ポリミキシン群では有意に低いことが見出された(p<0.05、図13C)。尿素レベルの低下はポリミキシンのみの群においても観察された。
【0148】
図14は、試験期間を通して集められた平均動脈圧(MAP)データを示す。この図から見てとれるように、生理食塩水のみの群は最初の90分間は初期圧を維持し、その後次第に降下していくことが観察される。アルブミン群とアルブミン/ポリミキシン群はどちらも全試験期間にわたって血圧を維持しており、3時間ではアルブミン/ポリミキシン動物は血圧の上昇を示している。注意すべき点として、麻酔したラットの正常MAPはだいたい120mmHgほどであるはずなので、BDL動物のすべてが試験の開始時には低血圧であると考えられる。
【0149】
図15からは、病原菌に応答する好中球の能力がアルブミン群とアルブミン/ポリミキシン群の双方で次第に改善されており、併用療法を用いると明らかに良好な応答であることが見てとれる。生理食塩水で処置した動物には変化が一切見られない。この図にはポリミキシンBのみの群が含まれていないが、それは血液凝固の不規則性により代表的なサンプルサイズの提供が妨げられたためである。自発的好中球活性の測定も行ったが、これらのサンプルにおいて処置群間の差異は認められなかった。
【0150】
考察
樹立された肝硬変ラットモデルへのアルブミンの投与は、細菌毒素に曝露した後の急性悪化を防止するのに効果的であることが明らかである。さらに、これらの効果は、エンドトキシンと結合してそれを除去する薬剤の相乗的添加によって改善される。
【0151】
図12では、当該系からの測定可能なエンドトキシンの除去はポリミキシンBで処置した群において達成されたにすぎないが、アルブミンのみの群もかなりの低下を成し遂げた。アルブミンの投与量を高めたことが血漿エンドトキシンレベルをさらに低下させたのかもしれない。しかし、この用量は入院患者に投与される典型的な量を反映するように選択されたもので、特別にLPS結合を標的としたものではない。ネガティブな生理学的応答を発揮するのにどれくらいの遊離エンドトキシンが当該系で必要とされるのかは明らかでない。
【0152】
予期したとおり、アルブミンの投与は測定血漿レベルの有意な増加をもたらしたが、これらは健常動物におけるレベルよりまだ低いことがわかった。本研究では、アルブミンの典型的な1日治療用量を提供することを目的としたが、入院患者は連日この治療を受けることが期待されるだろう。これらの動物にもともと存在するアルブミンは当該疾患の過程で損傷されており、新しい「健康な」アルブミンの供給はその動物に大きな代謝的恩恵をもたらすと考えられる。
【0153】
すべてのBDL動物では、進行中の肝損傷のため、ALTレベルが増加していると予想されたが、エンドトキシンの投与は処置群で改善された肝臓の状態をさらに悪化させるかのようである。これらの差は群内変動のため有意性があるとは確認されなかったが、ポリミキシンBによる治療はさらなる肝損傷を防止する上で最も効果的であると思われる。
【0154】
尿素レベルは、タンパク質の分解から生じる合成プロセスと、生体から老廃物を排出する腎臓の能力との両方を反映するものである。アルブミンのみで処置した群とアルブミン/ポリミキシンで処置した群の間に有意差が認められたことに気づくことは興味深いことである。アルブミン処置動物は生理食塩水処置群と比較して尿素レベルのわずかな増加を示したが、これは投与されるタンパク質の量を反映するのかもしれない。面白いことに、併用療法を受けた動物は有意に低い血漿尿素レベルを有していた。この血漿尿素の低下は、これらの動物で観察された平均動脈圧レベルの向上に関連づけることができる(図15)。上述したように、これらのBDL動物はすべて低血圧であることが見出され、この低血圧は腎臓の血流量の減少と、それゆえに腎機能の低下とを引き起こすことが知られている。全身の血圧を改善することによって、たとえほんのわずかであろうと、結果的に有益な影響を腎臓の血流量と排泄機能に及ぼす可能性がある。
【0155】
要するに、肝硬変動物へのアルブミンの投与は、その動物の状態を改善し、また、誘発された代償不全の多くの症状を防ぐことが判明した。さらに、エンドトキシンを除去する薬剤を加えると、アルブミンの効果が格段に向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝疾患を有する個体の治療に用いるための装置であって、
(a) 個体の血液からアルブミンを選択的に取り除くための手段、および
(b) 個体の血液からエンドトキシンを選択的に取り除くための手段、
を含んでなる上記装置。
【請求項2】
(c) 個体の血液に、該個体に由来するものではないアルブミンを供給するための手段、
をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
(d) 個体の血液からアルブミンに結合したトキシンを取り除くための手段、
をさらに含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ex vivoで用いるためのものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記手段(a)がアルブミンと選択的に結合することができる固相支持体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記手段(b)がエンドトキシンと選択的に結合することができる固相支持体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
(c)のアルブミンが医薬品グレードのアルブミンである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
個体の血液がex vivoで前記装置を通過する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記手段(a)がアルブミンの透析手段を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記アルブミンの透析手段が50kDaより大きい孔サイズのメンブレンを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
肝疾患を有する個体の治療方法であって、
(a) 個体の血液からアルブミンを取り除くステップ、および
(b) 個体の血液中のエンドトキシンのレベルを低下させるステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項12】
(c) 個体の血液に、該個体に由来するものではないアルブミンを導入するステップ、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)を透析により実施する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a)および(c)を透析により実施する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)が個体の血液からエンドトキシンを取り除くことを含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ex vivoで実施する、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)が血中エンドトキシンレベルを低下させることのできる薬剤を治療上有効な量で前記個体に投与することを含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)のアルブミンが医薬品グレードのアルブミンである、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置を用いて実施する、請求項11〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
個体の血液からアルブミンとエンドトキシンが取り除かれるように、個体からの血液を請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置と接触させるステップを含んでなる、肝疾患の治療方法。
【請求項21】
ex vivoで実施する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
肝疾患を有する個体に由来する血液からアルブミンとエンドトキシンを選択的に取り除くことによって血液を体外的に処理する方法。
【請求項23】
(a) 血液をアルブミンと選択的に結合する固相支持体と共にインキュベートし、それにより血液からアルブミンを取り除くこと、および
(b) 血液をエンドトキシンと選択的に結合する固相支持体と共にインキュベートし、それにより血液からエンドトキシンを取り除くこと、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記血液と同じ個体に由来するものではないアルブミンを前記血液に添加することをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−507432(P2010−507432A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533950(P2009−533950)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004126
【国際公開番号】WO2008/050148
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(505367464)ユーシーエル ビジネス ピーエルシー (20)
【Fターム(参考)】