股関節の面再建
寛骨臼カップ・インプラント(100)を骨盤内に配置する方法は、骨盤上に複数の参照点を配置する工程と、インプラントの目標配置を、参照点に対して定義する工程と、インプラントを目標配置に設置する工程とを含む。また、大腿骨頭部インプラント(102)を配置する方法も、関連するガイダンス・システムと共に開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節の面再建に関し、特に、股関節面再建インプラント、股関節を面再建するときに使用するガイダンスシステム、および股関節を面再建するときに使用する外科手術用工具の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節の寛骨臼および大腿骨の構成体の形態、向き、位置は、その機能を決定する重要な要素である。生来の股関節は、これら構成体の設計パラメータに基づいて、うまく働き、通常の可動範囲内での骨組織と軟組織のインピンジメントが避けられる。生来の臼蓋窩は、完全な半球ではなく、その辺縁も単純な円ではなく、正確に言えば、凹凸が連続する3次元形状である。大腿骨側も同様に、その頭部と頚部の間の接合部は、完全な円ではない。
【0003】
現在の股関節面再建インプラントの設計は、平坦な円形の辺縁を有する半球状の寛骨臼カップに基づいている。大腿骨側については、球の割合を可変としたものが、種々のインプラント・メーカーに採用されている。臼蓋窩の辺縁に、はみ出ている寛骨臼カップは、インピンジメントや、すぐに緩んでしまったり、磨耗しやすいといったことを伴うことが示されている。このはみ出しは、半球状のカップを使用するときに、その辺縁の一部が、寛骨臼縁の外形形状の低い領域に、突き出るため、起こると考えられる。
【0004】
大腿骨頚部に対する、骨盤と大腿骨頭部における臼蓋窩の3次元位置の決定に対する取り組みが、続けられている。寛骨臼の前後位置は、股関節周囲筋の機能に影響するものであるが、これは、平面である放射線写真上では、定量化することができないものである。これもまた、インピンジメントに関連する。大腿骨の頭部と頚部の関係も同様に、定量化することが難しい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、寛骨臼カップ・インプラントを骨盤に配置する方法であって、複数の参照点を前記骨盤上に配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0006】
前記参照点は、前記骨盤の絶対位置を決定し、前記骨盤の画像を解析して前記参照点の絶対位置を決定することによって、配置してもよい。
【0007】
本発明は、骨盤に接触して設置され、前記骨盤の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記骨盤の前記位置入力および画像を処理することによって、寛骨臼カップ・インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記カップ・インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システムを、更に提供する。
【0008】
前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの骨盤の画像上で同定し、前記目標配置を参照点に対して決定するように配設してもよい。前記システムは、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えてもよい。
【0009】
本発明は、大腿骨頭部面再建インプラントを大腿骨上に配置する方法であって、前記方法は、複数の参照点を前記大腿骨上で配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法を、更に提供する。
【0010】
前記参照点は、前記大腿骨の絶対位置を決定し、前記大腿骨の画像を解析して前記参照点の前記絶対位置を決定することによって、配置してもよい。
【0011】
本発明は、大腿骨に接触して設置され、前記大腿骨の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記大腿骨の前記位置入力および画像を処理して、大腿骨面再建インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システムを、更に提供する。
【0012】
前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの大腿骨の画像上で同定し、前記目標配置を前記参照点に対して決定するように配設してもよい。前記システムは、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えてもよい。
【0013】
本発明は、部分球状のカップを備える寛骨臼カップ・インプラントであって、前記インプラントの辺縁は、凹部を恥骨と座骨との間の配置に対して定義するように、前記カップに沿って高さが変化する寛骨臼カップ・インプラントを、更に提供する。前記辺縁は、少なくとも1つの凹部を定義してもよい。それは、3つの凹部を定義してもよい。前記凹部の1つは、他の2つより深くてもよい。前記深い方の凹部は、寛骨臼切痕に対応し、前記座骨と前記恥骨の間に配置されるように配設されてもよい。前記深い方の凹部の底部は、前記カップ中心を通り、前記辺縁を通る最も適合する面、例えば、最小の正方形である最も適合する面に平行な参照面の下方、少なくとも20度としてよい。前記浅い方の凹部の底部は、前記参照面の下方、少なくとも10度としてよい。
【0014】
前記カップは、その内側面を部分球状、または、その外側面を部分球状、または、内側面および外側面の両方を部分球状とすることで、部分球としてもよい。例えば、前記内側面を部分球状とし、前記外側面を非球状としてもよい。
【0015】
前記カップの辺縁は、内側縁部と外側縁部とを有してよく、前記内側縁部における前記辺縁に沿った高さの変化は、前記外側縁部の高さの変化と異なっていてよい。前記内側縁部の高さの変化は、前記外側縁部よりも小さくてもよい。前記内側縁部の高さの変化は、実質的に0であってもよい。前記内側縁部の隆起または凹部の個数または角度位置は、対応する前記外側縁部の個数または角度位置と異なっていてもよい。前記カップは、骨盤の骨に接触するように配設された主骨界面領域と、臼蓋窩の上縁部を越えて延在するように配設された延在領域とを有する外側面を、有してもよい。前記延在領域は、少なくとも1つの前記主骨界面領域と異なる特質を有してもよい。前記特質は、曲率半径、または表面構造であってもよい。例えば、前記延在領域は、主領域よりも、粗さが少なくなるようにしてもよい。前記延在領域は、主領域が粗くなっているスケールよりも小さいスケールにおいてだけ、粗くてもよい。
【0016】
本発明は、大腿骨面再建インプラントであって、部分球状の外側面を有する支承部と、前記インプラントを大腿骨上に支持する支持手段とを備え、前記支承部の辺縁は、前記支承部に沿って高さが変化することを特徴とする大腿骨面再建インプラントを、更に提供する。前記支承部表面は、2つの延在する領域を有し、前記表面が前記延在する領域の間の凹部に中へ延在するよりも更に前記大腿骨に沿って延在してもよい。この延在する領域は、それぞれ、そのどちらかの側に対する各凹部より少なくとも10度大きい角を規定してよく、この場合では、少なくとも15度大きい。
【0017】
本発明は、面再建の用に供する、大腿骨を加工するための加工工具であって、前記工具は、前記大腿骨における配置のための配置部材と、前記大腿骨をカットするカッター、前記カッターを支持し、前記配置部材を中心に前記カッターが回転できるように配設された支持手段と、前記大腿骨をカットする深さが変化するように、前記配置部材を中心に前記カッターを回転させながら、軸方向の前記カッターの動きを制御するように配設されたカムシステムとを備えることを特徴とする加工工具を、更に提供する。
【0018】
本発明は、寛骨臼カップ・インプラントを操作するための工具であって、前記工具は、その内部に形成された空洞と、前記インプラントの内部に適合するように配設されたドーム形の前面と、前記インプラントの内部に対して密封するように前記ドーム形の面の周辺に配設される密封手段とを有するフレキシブルな部材と、前記フレキシブルな部材の後部を支持するための剛性支持手段と、前記フレキシブルな部材の一部を前記インプラントから離れるように引き寄せて、前記インプラントと前記フレキシブルな部材との間に部分的な真空を発生させて、前記インプラントを前記フレキシブルな部材に確実に固定するように配設される引き寄せ手段とを備えることを特徴とする工具を、更に提供する。
【0019】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、以下のうち、1つ以上のいずれかを提供することができる。
【0020】
骨盤の形態と性別に対して特異的な骨盤に対する寛骨臼インプラントの向きを定める方法、
【0021】
骨盤の形態と性別に対して特異的な骨盤に対する寛骨臼カップを配置する方法、
【0022】
ソケットの金属製縁部のはみ出しによる軟組織の損傷を最小にすることと、大腿骨頭部の動作範囲と骨盤骨の支持とを最大にすることとの両方を行う形状の寛骨臼カップ、
【0023】
荷重の移動を最適化して、磨耗を最小にする形状の寛骨臼カップ、
【0024】
アルゴリズムによって定義される形状および位置の腰筋腱に対する腸骨−恥骨凹部を有する形状の寛骨臼カップ、
【0025】
坐骨の「加工面」を含んで、表面区域を増大させ、屈曲時の安定性を高める形状の寛骨臼カップ、
【0026】
大腿骨の形態と性別に対して特異的な大腿骨に対する大腿骨頭部インプラントの向きを定める方法、
【0027】
大腿骨の形態と性別に対して特異的な大腿骨に対する大腿骨頭部インプラントを配置する方法、
【0028】
下にある大腿骨頭部および後上方に隣接する大腿骨頚部に対する軟組織および血管の損傷を最小にする形状の大腿骨構成体、
【0029】
キャム・タイプの股関節変形における前上方の切れ込みによる、大腿骨頚部の骨折の危険性を、最小にする形状の大腿骨頭部インプラント、
【0030】
延在し屈曲した延在加工面を有する形状の大腿骨頭部インプラント、
【0031】
欠損した骨の部分を効果的に代替するように部分的に充実した内部空洞を有することにより、キャム・タイプの股関節変形における相対的に前上方の欠陥に適応できる内部形状。
【0032】
本発明は、寛骨臼カップの新規な解剖学的設計を提供する。寛骨臼カップを、骨盤内で正確に位置調整する確実な方法も提供する。本発明は、インピンジメントの危険性なく、磨耗の進行速度を減少させる最適な可動範囲を提供する、最適に設置される解剖学的股関節装置を提供することを支援することができる。
【0033】
ここで、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を、単に一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】寛骨臼縁の形状を決定するために使用するマーカーを示す、臼蓋窩の外形形状図である。
【図2】図1の臼蓋窩の正面図である。
【図3】図1の臼蓋窩の側面図である。
【図4】男性の骨盤の正面図である。
【図5】女性の骨盤の正面図である。
【図6】男性の骨盤の側面図である。
【図7】女性の骨盤の側面図である。
【図8】直交するCT像を使用した股関節中心の配置を示す図である。
【図9】直交するCT像を使用した大腿骨上の参照点の配置を示す図である。
【図10】頭部−頚部接合部上のマーカーを示す、大腿骨の頭部の正面図である。
【図11】図10のマーカーに対する「時刻」位置を示す、大腿骨頭部の下面図である。
【図12】大腿骨頚部上の参照点を示す、大腿骨頭部の後面図である。
【図13】図12の参照点を示す、大腿骨頭部の内面図である。
【図14】直交するCT像により大腿骨頚部中心の配置を示す図である。
【図15】頚部軸の配置を示す、大腿骨頭部の後面図である。
【図16】頚部軸の配置を示す、大腿骨頭部の内面図である。
【図17】複数の寛骨臼縁の外形形状を示す図である。
【図17a】異なるタイプの股関節の寛骨臼縁の外形形状を示す図である。
【図18】複数の股関節中心の、水平、垂直、および後方にスケーリングされたオフセットの分布を示すグラフである。
【図19】複数の大腿骨頭部/頚部接合部の外形形状を示す図である。
【図20】股関節と、本発明の実施形態による大腿骨インプラントおよび寛骨臼インプラントの斜視分解図である。
【図21】図20のインプラント・セットの正面図である。
【図22】図21のインプラントを分離した正面図である。
【図23】図20のインプラントの更なる斜視図である。
【図24】本発明の実施形態による大腿骨頭部用の加工工具の側面図である。
【図25】図24の加工工具の端面図である。
【図26】図24の加工工具の斜視図である。
【図27】図24の線B−Bに沿った断面図である。
【図28】図24の線A−Aに沿った断面図である。
【図29】図24の加工工具の分解図である。
【図30】本発明の実施形態による、加工された大腿骨頭部の正面図である。
【図31】使用時における図24の加工工具を示す図である。
【図32】本発明の実施形態による寛骨臼カップ・インプラント用の挿入工具の断面図である。
【図33】本発明の実施形態による、外科手術ガイダンス・システムの概略図である。
【図34】インプラントの用に供して大腿骨頭部をカットするための、本発明の更なる実施形態によるカッティング工具の断面図である。
【図35】本発明の更なる実施形態による、大腿骨頭部インプラントの斜視図である。
【図36】図35のインプラントの用に供して大腿骨頭部をカットするために使用するカッティング・ガイドの斜視図である。
【図37】本発明の更なる実施形態による、寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【図38】本発明の更に更なる実施形態による、寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【図39】本発明の更に更なる実施形態による、寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【図40】磨耗した臼蓋窩を示す、女性の股関節の画像である。
【図41】図40に示したタイプの股関節のために使用する寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
臼蓋窩
22例の正常な寛骨臼のCTスキャンを、3次元再構成ソフトウェアを使用して解析した。これらには、正常な寛骨臼を有する、12例の乾燥した死体の寛骨が含まれていた。加えて、片側の寛骨臼を骨折した12人の患者から得た、手術後のCTスキャンを使用して、正常な反対側の臼蓋窩を解析した。これらの患者の平均年齢は、38.4才であった(年齢範囲は22才〜61才)。5人が女性で、7人が男性であった。死体骨の性別は不明であった。
【0036】
図1〜3を参照すると、臼蓋窩12の中心10を、寛骨臼ソケット、すなわち月状面の連結部分の点を通って最も適合する球の中心として定義した。そして、図中、A−Z、A1−Z1等で示されるマーカーは、恥骨端部16から開始し、後上方に移動する寛骨臼縁14全体の周りの各点に割り当てた。完全に一周するために、寛骨臼切痕18も含まれる。そして、最も適合する面は、寛骨臼切痕18上のものを除く、辺縁のすべての点を通って適合するものであった。この面は、寛骨臼面を定義し、寛骨臼中心における、この面に対する法線は、法線ベクトルD2を形成するとした。この法線ベクトルと、該中心と辺縁の点とを結ぶ線との間に規定される角で、図1に示すように、着目している点に対して規定される角を定義した。辺縁の点の角度位置は、2つの上前腸骨棘(ASIS:Anterior Superior iliac Spines)と恥骨結節とで定義される前骨盤平面(APP:Anterior Pelvic Plane)に骨盤を揃えた後に得られる前部辺縁の目印に対して測定された。これにより、辺縁の各点に対する「時刻」位置(‘clock’ position)を提供する。従って、寛骨臼縁の2次元外形形状は、「時刻」位置の関数として規定される角度を示し、前方の目印に対する正確な参照により生成されるとした。これは図17に示され、後で論じる。
【0037】
そして、寛骨臼縁の山と谷を定義する6つの目印を同定した。すなわち、それらは、隆起である恥骨22、腸骨24、および坐骨26上の最高点、ならびに、腸骨−恥骨間隔28、後部辺縁30、および寛骨臼切痕18内の最低点であった。これらの点に対して規定される角に注目し、臼蓋窩の2次元外形形状と共に、この角を第2の独立した観測者によって得られた結果と比較して、その方法の信頼性を確認した。
性特異的3次元寛骨臼位置調整
【0038】
図4〜7を参照すると、37例の股関節(19例が女性、18例が男性)のCT(Computerised Tomography)スキャンを、3次元再構成ソフトウェアを使用することにより、解析した。2つの上前腸骨棘(ASIS)と恥骨結節とで定義される前骨盤平面(APP)を、原点を右側上前腸骨棘に設定した座標系に基づくものとして使用した。x軸は、水平に左から右に示され、y軸は、垂直に上向きに示され、z軸は、後方から前方に示されるものとした。大腿骨頭部中心は、股関節中心を表すものとし、その座標(Cx,Cy,Cz)を測定した。
【0039】
前骨盤平面に骨盤を揃えた後、骨盤の水平方向の大きさ(Dx)を、腸骨稜上の横方向に最も端にある点Fと点Gとの間の距離として定義し、その垂直方向の大きさ(Dy)を、腸骨翼上の最高点Hと坐骨結節上の最低点Iとの間の距離とした。骨盤の奥行き(Dz)を、上後腸骨棘Jと同側上前腸骨棘Dとの間の水平方向の距離として定義した。
【0040】
図8を参照すると、股関節中心は、CTスキャンから得た3つの直交する断面像を使用することによって決定された。そのx、y、z座標を、上記の参照座標系に対して、測定した。これらの座標それぞれの、骨盤の大きさに対する比(Cx/Dx,Cy/Dy,Cz/Dz)を測定した。これらの比は、水平、垂直、および後方でスケーリングされたオフセットを表し、ここで、それぞれ、HSO、VSO、およびPSOと呼ぶものとした。その結果を、男性と女性に対して解析した。これらは、図18に示され、後で論じる。
【0041】
そして、24個の点を、寛骨臼縁の上半分の周りに定義した。これは、臼蓋窩の荷重支承部であり、これらの点を通る、最も適合する寛骨臼面を生成した。この点の集合は、別個に得たものである。但し、図1〜3の点の部分集合を使用することもできた。寛骨臼面の外転角(Inclination)と前捻角(Anteversion)を、前骨盤平面FORに対して、両方のグループについて、測定した。そして、独立した観測者により、この方法の信頼性を試験するため、目印の取得と、すべてのスキャンに対する測定とを繰り返した。
大腿骨
【0042】
7例の正常な股関節のCTスキャンを、3次元再構成ソフトウェアで解析した。そして、大腿骨頭部の中心を、大腿骨頭部の表面上の点の集合を通る球に適合させることによって決定した。
【0043】
図9を参照すると、図9の各スキャン上に十字形で示される参照点が、梨状陥凹の内側縁部に割り当てられるとした。
【0044】
図10および11を参照すると、図10および11で、文字により表される点は、前方に向かう方向に梨状陥凹参照点の高さから開始している大腿骨頭部−頚部接合部上に割り当てられるとした。CTスキャンから得た3次元像と3つの直交する2次元像との組合せを、その目的のために使用した。頭部−頚部接合部の点を通る最も適合する面を決定した。また、頭部中心Aで、その面に対する下向きの垂線により、その面に対する法線ベクトルJ1を定義する。各点に対し、規定される角を、その点と、頭部中心でその平面に対する上向きの法線(−J1)との間の頭部中心における角として定義した。従って、この上向きの法線ベクトル(−J1)と、頭部中心と頭部−頚部接合部の点(例えば、図10に示すような点K)とを結ぶ線との間の、その角度(180−θ)によって、その点で規定される角が定義される。
【0045】
図11を参照すると、頭部−頚部接合部上の、その点の角度位置を、梨状陥凹参照点Bに対して測定した。「時刻」位置角(頭部−頚部接合部の面内の、法線ベクトルに対する角)を、頭部−頚部接合部の全ての点に対し、測定した。また、この「時刻」位置角の関数として規定された角をプロットしたものにより、頭部−頚部接合部が示される。これは、図19に示され、後で論じる。
大腿骨頭部の3次元位置調整
【0046】
図12および13を参照すると、26例の乾燥した死体の大腿骨のCTスキャンを、同じ3次元再構成ソフトウェアを使用して解析した。大腿骨頭部の中心Aを、頭部表面上の点を通って最も適合する球の中心として定義した。標準化された向きに対し、大腿骨頚部の後表面の平坦な部分上の点を通って最も適合する面によって定義される参照面を使用した。点Bは、大腿近位部内の梨状陥凹の内側縁部上で、再現性良く得られた。別の点Pは、大腿骨を後側頚部参照面に揃えた後、小転子上の最高点で、同定された。これらの点B、Pを結ぶ線を水平に揃えることにより、大腿骨の標準化された方向の処理が完了した。そして、点Bに原点を取り、線BPに沿ったX軸、後側頚部参照面内でX軸に垂直なY軸、X軸とY軸に垂直なZ軸により、座標系を定義した。
【0047】
後頚部面上の点の平均を同定した。また、矢状像および冠状像を使用して、この平均の点の高さにある頚部中心を決定した。頚部中心を、頚部面に対する垂線上の、頚部面上の平均の点と頚部の反対側の点Rとの間の途中にある点とした。この点を、頚部中心(NC:Neck Centre)と呼ぶものとする。
【0048】
そして、スクリーンの面内の大腿骨頚部に対し、線BP(梨状陥凹Bと小転子P点とを結ぶ線(頚部基部線))に垂直な頚部中心NCの垂直投影を、線BPから挿入し、NCと同じオフセットによって、決定した。この点は、頚部中心の基部であり、この点と頚部中心とを結ぶ線により、頚部軸が定義される。
【0049】
そして、大腿骨頭部と大腿骨頚部との間の、内反/外反および前傾/後傾の関係が測定できる。梨状陥凹点Bに対して設定された大腿近位部基準系の原点により、頭部中心のx、y、z座標を計算することができる。
【0050】
この方法の信頼性を試験するため、独立した観測者により、目印の取得と測定とを繰り返した。
結果
臼蓋窩
寛骨臼縁の形態
【0051】
臼蓋窩は、半球で単純に表すことができない複雑な構造である。上記の測定により、図17に示すような、2次元外形形状の同定可能な山と谷を伴う、その辺縁内で繰り返されるパターンを見出した。この図は、調査した寛骨臼の、いくつかの外形形状を示しており、それらの「時刻」位置角の関数である、各辺縁点で規定された角をプロットしたものに基づいている。半球からのずれは、90度に規定された角との比較で知ることができ、規定された角が大きいほど、半球より小さいことが示されている。
【0052】
寛骨臼縁上の隆起と谷とに対する、規定された角と「時刻」位置角に注目した(表1)。重要な特徴として、寛骨臼切痕と呼ばれる、腸腰筋腱を収容する腸骨−恥骨間隔内の切り欠き部と、屈曲時の安定性を提供することのできる坐骨隆起における付加物とがある。また、腸骨の領域内の腸骨隆起と、恥骨の領域内の恥骨隆起とがある。腸骨−坐骨間隔、すなわち谷が、座骨と腸骨の間に形成され、腸骨−恥骨間隔、すなわち谷が、腸骨と恥骨の間に形成される。最後に述べたこれら2つの間隔は、寛骨臼切痕ほど深くはない。
【表1】
【0053】
寛骨臼縁の隆起と谷の辺縁点に対する、規定された角と「時刻」位置角
【0054】
寛骨臼縁の形態は、骨組織と軟組織について、解剖学的に適切な考慮がなされている。それらのうちで、重要な要素の1つは、腸腰筋腱を収容する腸骨−恥骨間隔内の谷である。この切り欠き部は、屈曲時のインピンジメントを避けるために必須のものである。良好な範囲は、腸骨隆起により明らかであり、これが不完全なときは、形成異常のような場合となる。また、坐骨の突出部は、通常、重要な役割、例えば、しゃがむ等の場合に適切な動作範囲を提供するといった役割を果たす。本発明のいくつかの実施形態による再建手術は、これらの特性を修復することを目指している。
【0055】
図17aは、寛骨臼縁の形状を、3つのタイプの股関節からなる、3つの異なるグループそれぞれに対して同様にプロットしたものを示している。この場合、角度の測定は、寛骨臼切痕の底部から行った。いちばん上の外形形状は、ピンサー(Pincer)タイプの股関節、中央の外形形状は、通常の股関節、いちばん下の外形形状は、キャム(CAM)タイプの股関節のものである。これらプロットしたものは、股関節のタイプの違いによって、辺縁の絶対高さが変化しながらも、外形の形状は、基本的に、3つのタイプの股関節の全てにおいて、同じであることを示すような関係になっている。これは、1つのインプラントで、異なる股関節のタイプの再構成に適する設計が可能であることを意味する。
寛骨臼の3次元位置調整
【0056】
股関節中心のスケーリングされたオフセットは、予想されるように、性別で変化し、性別の分かっている所定の個人に対し、その座標は、既知の骨盤の目印から求めることができる。男性と女性に対するスケーリングされたオフセットを表2に示す。
【表2】
【0057】
股関節中心のスケーリングされたオフセットは、平均および、それらの95%信頼区間として表した。性別の違いに対するp値も、示している。HSO、VSO、およびPSOは、それぞれ、水平、垂直、および後方に向かってスケーリングされたオフセットである。
【0058】
その結果を、分散が異なると仮定した2つのサンプルのスチューデントのt検定(Student’s t−test)を使用することによって、スケーリングされたオフセットにおける性別の違いについて、精査した。3つのスケーリングされたオフセット全てにおいて、統計的に有意な違いがあった。図18は、股関節中心のスケーリングされたオフセットHSO、VSO、およびPSOの分布を示すグラフである。
大腿骨
大腿骨頭部−頚部接合部の形態
【0059】
大腿骨頭部は、半球よりも大きい。それが作る球の割合は、大腿骨頚部と共に、その辺縁、または接合部に沿って変化する。頭部−頚部接合部の点の規定される角を、頭部−頚部接合部上の、それらの「時刻」位置角の関数としてプロットすることにより、2次元外形形状を作成した。これを図19に示す。
【0060】
大腿骨頭部−頚部接合部に対してパターンがあることが分かる。頭部の前後方向への「延在」は、臼蓋窩を伴う関節のための追加される空間を提供するが、「切り欠き部」は、内側および左右のインピンジメントを避け、血管が頭部へ後外側方で入り込めるようにしている。
大腿骨頭部−頚部の基準系
【0061】
大腿骨頭部の位置と向きは、大腿骨頚部との相対関係で、正確に定義することができる。頚部に依存する図12および13の大腿近位部基準系を使用して、標準化された、再現性のある大腿骨の向きを得ることができる。梨状陥凹にある原点から、大腿骨頭部中心に対するx−、y−、およびz−座標を測定することができ、頭部−頚部接合部の面を使用して、頭部中心の位置と頭部の向きを、両方ともに頚部軸との相対関係で、3次元空間内で定量化することができる。
インプラント設計
【0062】
図20を参照すると、股関節面再建インプラント・セットは、臼蓋窩104を面再建するための寛骨臼カップ100と、大腿骨106の頭部を面再建するための大腿骨頭部インプラント102とを備える。
【0063】
図21〜23を参照すると、寛骨臼カップ100は、実質的に一定の厚さの部分球であり、臼蓋窩それ自身の辺縁に対して、いくつかの点で対応するだけでなく、製造も簡単であるように外形形成された辺縁110を伴う。つまり、その辺縁は、連続的に湾曲しており、寛骨臼切痕112、前恥骨隆起114、坐骨隆起116、腸骨隆起118、および腸骨−恥骨間隔120を形成する、高くなったり、低くなったりする領域を有している。カップ中心を通ると共に、カップ辺縁上の点を通って、RMSが最も適合する面に平行な参照面から測定すると、寛骨臼切痕は、参照面の下方で、深さが少なくとも15度、好ましくは、少なくとも20度である。他方の凹部は、参照面からの深さが少なくとも5度で、好ましくは、少なくとも10度である。しかしながら、このカップは、半球よりも小さいので、その凹部は、参照面からの深さが、隆起の高さよりも大きい。従って、腸骨隆起および坐骨隆起は、好ましくは、参照面の上方に少なくとも5度で突き出るが、そうでなければ、少なくとも参照面と同じ高さとし、恥骨隆起は、好ましくは、少なくとも参照面に、または少なくとも参照面の10度以内に突き出る。凹部の深さを、凹部の底部において規定される角と、そのどちらかの側の2つの隆起の平均角度との差として定義すると、腸骨−恥骨間隔および腸骨−坐骨間隔それぞれの深さは、好ましくは、少なくとも10度であり、寛骨臼切痕の深さの深さは、好ましくは、少なくとも20度である。
【0064】
大腿骨頭部インプラント102は、部分球カップ130を備え、その外側面は、寛骨臼カップ100の内側面からの荷重を受けるように配設される。キャップ130の内部面は、多様な形状をとることができるが、本実施形態では、底部にある平坦な区域131aと、平坦な底部131aから外側へ延在する部分円錐区域131b、および部分円錐区域の外側縁部からキャップの辺縁に向かい上に延在する円柱状部分131cを有する。固定柱132は、平坦な底部の中心から、支承部表面の湾曲の、おおよそ中心を通って、上方に突き出る。柱状部材132は、キャップ130の辺縁を越えて延在する。キャップ130の辺縁において、すなわち、外部支承部表面においても、前側および後側で領域134、136が延在して、高さが変化し、これらに挟まれる内側および外側で、凹部をなす。規定される角は、この延在する領域で約120度〜125度、凹部で約100度〜110度である。従って、この延在する領域は、それぞれ、そのどちらかの側に対する各凹部より少なくとも10度大きい角を規定し、この場合では、少なくとも15度大きい。各凹部の深さを、凹部の底部で規定される角と、そのどちらかの側の2つの延在する領域の規定される角の平均との差とすると、各凹部の深さは、好ましくは、少なくとも10度であり、少なくとも15度とすることができる。このような形状のものが、典型的に関節軟骨で覆われた骨のみを置き換え、軟組織の損傷を防ぎ、血管に対する適切なクリアランスおよび保護を提供すると共に、前側および後側での十分な支承部の支持を提供するように配設される。
【0065】
大腿骨頭部インプラントの重要な部分が、支承部表面であることは理解されよう。内部面および支持部は、複数の異なる手法で設計することができる。更なる実施形態では、寛骨臼カップの設計は、実質的に単純化され、それは、寛骨臼切痕を含み、その中心点に対し平坦な辺縁の残りの部分と対称である。図17を参照すると、カップ上の位置を、臼蓋窩上の前方の目印に配置される点からの角度として定義した場合、カップは、おおよそ290度の点に対して対称となっている。これにより、2つの効果が得られる。まず第一に、製造が簡単であること、第2に、対称なので、カップには左右の区別がない、つまり同じ形状のカップを左右両方の股関節に使用することができる。
【0066】
更に更なる実施形態では、更に図17を参照して、カップは、辺縁上の約160度における対称点を中心とする対称な腸骨−坐骨間隔と、対称点の両側にそれぞれ対称に配置される腸骨隆起および坐骨隆起と、腸骨−坐骨間隔の中心に対して、これもまた対称に配設された腸骨−恥骨間隔および寛骨臼切痕と、腸骨−坐骨間隔の、ちょうど反対側に対称に配置される恥骨隆起とを含む。それぞれの場合において、それら隆起は、辺縁上の全ての点を通って最も適合する面であるカップの参照面を越えて延在し、それら間隔および切痕は、その面の下方へ下がっている。
【0067】
図示されるように、大腿骨頭部インプラントは、対称ではないが、別の実施形態では、このインプラントは対称にして製作することもでき、前方および後方の延在する部分134、136は、辺縁の反対側に対称に設置され、それぞれ、それ自身の中心について対称である。これによってもまた、同じインプラントを左右両方の股関節で使用することができる。
【0068】
インプラントの完全なセットは、適応するインプラントの複数のペアを含むものであり、これらペアは、異なる患者に適合する異なるサイズとなっている。しかしながら、異なるペアの形状は、同一で、縮尺だけが違っている。
【0069】
図24〜29を参照すると、大腿骨を正確な形状に加工して大腿骨キャップ102を受けるための加工工具は、その軸と揃えられ、かつ、その前端から突き出る配置ピン202を有する円柱状ボディ200を備える。カッター204は、ボディ200内の配置ピン202に平行な支承部203上で支持され、配置軸から、ずれている。配置ピン202は、その同軸上で支持されるカム205を有し、軸方向に高さが変化する後側カム面206を有する。図27および28で、最もよく分かるように、ボディ200は、その内部に形成された前側カム追従面208を有し、これが、カム面206と接触し、配置ピンを中心にボディを回転させながら、ボディ200を軸方向に配置ピン202と相対的に動かすように配設されている。カム205の前部の前部のスパイク210を提供することにより、大腿骨に対する回転において、配置ピン202が固定される。カッター204は、ボディ200内で軸方向にスライド可能であり、回転して大腿骨をカットすることができるように支承部203で支持される。ボディ200を通るカッター204の前方への動きは、カッター上の鍔部204aで制限される。ラチェットレバー212は、ボディ200の背部202aから半径方向に突き出て、使用者が、ボディ200およびカッターを、配置ピン202を中心にして回転させることを可能にしている。ボディ202の後端は、適当な位置でネジ218で保持されたカバー216によって、閉じられている。ボディ200の前端のフレキシブルな被覆部(gaiter)220は、大腿骨に対してボディを密封するように配設される。ボディ202は中空であり、洗浄ポート222、224は、背部202aに設けられている。洗浄通路226は、後ボディ部202aと、主ボディ部202bとの間に形成され、食塩溶液洗浄システムをボディの内部に接続して、カッター204を洗浄し、食塩溶液洗浄システムは、ポート222、224に接続することができる。リングシール228は、これら通路を互いに密封する。本工具は、これの骨との相対的な向きを正確に定めることができる光学的誘導装置等の誘導装置を、更に備えてもよい。
【0070】
図31を参照すると、使用に当たっては、まず、大腿骨の頭部を事前に加工して、おおよそ頚部軸に沿って、その端部に浅い円錐面300と、その端部から内部に延在する穴302とを形成する。配置ピン202は、穴302に挿入され、カム205の後のスパイク210が、加工された面300に押し込まれて、回転する配置ピン202およびカム205が固定される。そして、ボディ200は、配置ピン202の上方に設置され、ボディ内のカム追従面208がカム面206に接触するまで前方へ押される。高速ドリル230をカッター204に接続し、カッター上の鍔部204aが、軸方向の前方へのカッター204の動きを制限するまで、カッターが駆動され、その支承部を介して前方に押されて、骨を加工する。そして、ボディ202、カッター204、およびドリル300は、配置ピン202を中心に回転すると共に、カッター204が前方へ押されると、カム205の作用によってカッターが軸方向に動かされて、大腿骨を正確な形状にカットして、大腿骨頭部インプラント102を受ける。
【0071】
図30を参照すると、カム面206は、大腿骨頭部インプラント102の辺縁の形状に対応するように形成されていることが理解されよう。この結果、大腿骨の頭部が、大腿骨の上端部から後方に延在する円柱状部304を有するように、カットされる。その円柱状部の底部縁部306は、前側および後側で深く、上側および下側で浅くなるように外形形成される。この方法の効果は、大腿骨を最小限の量だけ切除して、大腿骨頭部インプラント102を挿入できることである。図30に示すように、一塊の骨308が、加工された円柱状部の下方にあり、これは、円柱状部よりも広い。これにより、骨の強度が維持され、インプラントが支持および配置される。
【0072】
図32を参照すると、寛骨臼カップ100と共に使用するための挿入工具400は、ハンドル404で支持される後端を有する中空シャフト402と、その前端にフランジ406とを備える。スライドロッド408は、シャフト402の内部に配置され、その前端は、ハンドルから最も遠いシャフトの前端から、フランジ406の中心で突き出ている。操作レバー410は、回動可能にシャフト402に備え付けられ、駆動リンク412は、レバー410と、スライドロッド408との間に接続され、その接続は、長穴を通ってシャフト402の一方の側の下方に延在するピン414により行われる。従って、レバー410がシャフト402において回動すると、駆動リンク412およびピン414により、ロッド408がシャフト402に沿って動く。スライドロッド408の前端には、把持装置416が付いている。弾力性のあるカップ418は、例えば、エラストマー系材料で成型され、本工具の前端に覆い被さって設置され、その辺縁は、フランジ406上に支えられている。カップ418の内面の中心の突起部420は、把持装置416によって把持されるように配設されている。カップの外側面の基部の近傍に、溝部422が形成され、カップの周囲に延在しており、Oリングシールが、溝部422に配置される。カップ418の辺縁には、その外側面に、フランジ423が形成され、その前側面423aは、外形形成された寛骨臼カップ100の辺縁に適応するように外形形成される。これにより、工具400上で寛骨臼カップ100が回転可能に配置される。誘導配置装置424は、シャフト402に備え付けられ、これを使用して、本工具の、すなわち寛骨臼カップ100の配置と向きとを決定することができる。
【0073】
使用に当たっては、弾力性のあるカップ418を寛骨臼カップ・インプラント102の内部に設置して、その内側面に対し、Oリングで封止するようになっている。そして、操作レバー410を後方に動かして、スライドロッド408を後方に引く。これにより、弾力性のあるカップ418の基部が、インプラント・カップ100から離れるように引かれ、その間に真空が発生し、インプラント・カップ100を本工具で捕捉し、動かすことができるようになる。インプラント・カップ100の正確な位置は、誘導装置424を使用して監視することができ、インプラント・カップは、所望の位置に動かされ、その後、操作レバーを使用して解放される。
【0074】
図33を参照すると、患者の股関節の面再建手術の間、外科手術ガイダンス・システムが使用される。これは、ガイダンス・プログラムを実行するコンピュータ500という形で、処理システムと、関連付けられたメモリとを含む。骨配置装置502は、骨に取り付けることができ、その位置および向きを、光学的、または他のトラッキング装置504を介して、コンピュータ500に対して通信するように配設される。これにより、実空間における参照位置および向きが提供される。また、大腿骨加工工具508にも、トラッキング装置510が設けられ、その位置および向きを、コンピュータによって決定できるようになっている。また、寛骨臼カップ挿入工具400を、セットして、その誘導装置424がトラッキング出力を提供することにより、コンピュータ500が、その位置および配置を決定できるようになっている。この配設に代わって、CTNシステム(英国、ロンドンAcrobot Co Ltd)を使用することができ、これは、トラッキング・アームを使用して、本工具および骨を配置する。ガイダンス・プログラムを配備して、骨盤および大腿骨の画像を使用することにより、使用者は、それらの骨における参照配置を入力して、それらの参照位置から、インプラントに対する所望の位置を決定できる。
【0075】
患者をスキャンし、骨盤および大腿骨の画像を解析して、股関節中心の位置を特定し、骨に対して固定されている図4〜7の座標系、および臼蓋窩のサイズ、例えば、平均半径を使用して、参照位置および向きに対する骨盤における寛骨臼面の配置および向きを決定する。画像内の骨の目印の特徴の配置に対して、インプラントの目標位置を決定することができ、この配置は、使用者がマウス等の入力装置を使用することにより、同定することができる。あるいは、場合によっては、コンピュータ・プロセッサは、画像処理技術を使用して、画像内の目印の特徴の位置を特定することができる。これらの位置から、使用するインプラントのサイズを決定し、寛骨臼カップ・インプラントの所望の位置および向きを、水平、垂直、および後方にスケーリングされたオフセットに対して選んだ値を使用して決定する。
【0076】
同様に、スキャン画像を使用して、大腿骨における頚部中心線と、頭部/頚部接合面の位置を、図9〜16を参照した上記の方法を使用して特定する。これより、大腿骨頭部インプラントの所望の中心位置および向きを、骨の基準系における参照位置に対して、選ぶことができる。注目すべき点は、大腿骨頭部の磨耗が、インプラントの選んだ位置に影響しないように、頭部インプラントの所望の位置を、大腿骨頚部の特徴に対して決定することである。
【0077】
面再建を実施するために、骨配置装置502を骨に取り付けて、コンピュータ500が、骨の絶対位置、すなわちインプラントの所望の絶対位置および向きを、配置装置と、従って参照位置とを含む画像から決定できるようにする。本加工工具は、外科医によって制御され、同時に、コンピュータは、その位置を監視し、外科医にスクリーン512を介してフィードバックを提供して、外科医が骨を正しく加工してインプラントを所望の位置および向きになるように本加工工具の位置を定めることができるよう、外科医を案内する。
【0078】
図34を参照すると、本発明の更なる実施形態による大腿骨頭部を加工する加工工具は、中心ガイドピン610を備え、その前端612は、とがっている。カムガイド614は、管状部616を備え、これは、ガイドピン610の周囲にスライド可能にはまっており、その前端に頭部618を有する。頭部618は、大腿骨頭部に形成された対応する環状面620に対して配置されるように配設された平坦な環状前面619と、その後側に後側カム面622を有する。カム面622は、環状で、ガイドピン610の周囲で延在し、高さ、すなわち平坦な前面619からの距離が変化する。放射状ブロック624は、管状部616にスライド可能に備え付けられた短い管状部626を備え、その前端から軸方向に突き出るとともにカム面622に点接触するように配設されたカム追従部628を有する。放射状ブロックは、カッター支持部630を更に備え、カッター支持部630は、これを通り、カッター634が支持されるガイドピン610に平行な穴632を有する。カッター634は、長い円柱状ビットをなす形状であり、その前端にカッティング先端部636と、前端から後方に延在するカッティング部640の周囲で延在するカッティング面638とを有する。カッター634は、ガイドピン610からの距離が固定されて、支持され、ガイドピン610を中心に回転して、大腿骨をカットすることができる。半円柱状カッターシールド642は、放射状ブロック624に備え付けられ、そこから前方に突き出て、カッター634の前部の外側を覆うようになっている。カッターの鍔部644は、前方への放射状ブロックを通るカッターの動きを制限して、カッターが、カッターシールド642の前端から少し間隔を置いている完全に挿入された位置へと、前方に動かされることができるようになっている。
【0079】
使用に当たっては、大腿骨の上面をカットして、平坦な面620を形成し、ガイドピン610を、平坦な面620に対して垂直に突き出るように、大腿骨頭部の中に挿入する。そして、カム614は、ガイドピン610を越えて下方にスライドし、カム面622が骨に対して正しい向きとなるような向きにさせられる。そして、カムガイドが前方に押されることにより、その前端の配置ピン646が、骨の中に固定されて、カムガイドを適切な位置に確実に固定する。そして、放射状ブロック624は、カム追従部628がカム面622の位置に来るまで、前方に押される。そして、放射状ブロック624が、回転することにより、大腿骨頭部の側面が、所望の深さに切除され、カッティングの深さ、すなわち切除部627の底部縁部625の高さは、カム面622の外形形状によって決定されるように、大腿骨頭部の周囲で変化する。
【0080】
図35を参照すると、本発明の更なる実施形態による大腿骨インプラント700は、図22のそれと同様に、その内部に内部空洞712を伴う部分球状の外側面710を有し、大腿骨頭部のカット部を覆って適応するように配設されている。このカット部は、事前に、例えば、図34の機械工具を使用して、加工されている。部分球状の外側面の縁部711は、図22の大腿骨インプラントと同じように、その縁部の周囲で高さが変化するが、図35には図示されていない。この場合、空洞712は、ほぼ円柱状で、湾曲した内部面713を有し、その底部端部714は塞がれ、その上端部716は開放されて、大腿骨頭部の加工された部分を受けるようになっている。しかしながら、空洞の一方の側面718は平坦で、空洞は、部分的に充実しており、これによって、空洞の体積は、完全な円柱状の空洞よりも小さくなっている。従って、空洞の円柱状部分の軸を、部分球状の外側面の中心に揃えても、空洞の平坦な側面718の領域内のインプラントの壁部720は、インプラントの壁部の残りの部分よりも厚く、この残りの部分は、空洞の湾曲した側壁部713に沿って一定である。
【0081】
適当な位置で、完全な円柱にカットして、インプラントを支持するには骨が不十分であるような程度に、大腿骨が著しく磨耗している場合、インプラントが大腿骨上の正しい位置にあるとき、図35のインプラントを使用することができる。キャム(CAM)タイプの股関節変形の場合、大腿骨の片側が極端に磨耗する。このような場合、大腿骨をカットして、部分円柱状の一塊の骨を残して、インプラントを支持することができるが、十分な骨がない状態で、完全な円柱を形成する場合、1つの面を切除して、空洞712の平坦な壁部718に対応させる。
【0082】
図36を参照すると、図35のインプラントと共に使用するカッティング・ガイド800は、部分管状スリーブ810を備え、一端812は、大腿骨の切除部の外形形成された下縁部625に対して適合するように外形形成される。ガイドの一方の側814が、切除されて、2つの軸方向に延在する端面818の間に、欠落部分816が残る。各端面818は、ガイドの軸に平行だが、この軸からずれている共通の面内にある。ガイド800の内部面は、インプラント700の湾曲した内部面713と同じサイズおよび形状をしており、欠落部分816の幅は、インプラント700の平坦な内部面718の幅と等しい。
【0083】
使用に当たっては、大腿骨を図34の機械工具でカットしたとき、大腿骨頭部の一方の側が、カッターでカットする半径の内側のレベルにまで、磨耗、消失されているなら、骨のカット部は、完全な円柱でなくてよい。その場合、欠落部分816が、カットされた骨の円柱状でない部分に揃うように、ガイド800を、カットされた骨を覆うように設置される。そして、骨を、ガイド800の端面818と同じレベルの平坦な面に切り落とす。これにより、部分円柱状にカットされた骨部が残り、これは、インプラントの空洞712の形状に対応する。そして、インプラントを、適当な位置で、カットされた骨部を覆うように置くことができ、インプラント内の空洞が、骨によって完全に充実されて、インプラントが、大腿骨上で、しっかり支持されるようになる。インプラント内の空洞の形状は、適宜、変更可能であることは理解されよう。例えば、インプラントとガイドとのセットを使用して、大腿骨の異なるレベルの磨耗に合わせ、それぞれの場合に、残る骨の量が最大になるように、かつ、それぞれの場合に、インプラントの空洞が、骨で完全に充実されるようにすることができる。あるいは、インプラント内の空洞を円柱状にしながらも、部分球状の外部支承部表面の中心から、ずらすこともできる。更に、これは、空洞に沿って半径方向の厚さが変化するインプラントの壁部を実現するものであり、例えば、空洞の底部の上方に固定された高さで、空洞の側面に沿って変化するものである。場合によっては、全てのインプラントが、同じ形状の内部空洞を有するが、異なるサイズの空洞を有し、かつ外部支承部表面が同じサイズであるようなインプラントのセットを有することが有利なこともある。従って、インプラントは、異なる厚さの壁部を有することになる。これにより、面再建されている大腿骨頭部のサイズに適応するように、インプラントを選択することが可能になる。
【0084】
図37を参照すると、本発明の更なる実施形態による寛骨臼カップ・インプラント900は、図21〜23の、それと同様であるが、この場合、カップの壁部902が、はるかに厚くなっている。壁部厚さが変化しうるが、この場合、それは、部分球状の内側支承部表面904の半径よりも大きい。これは、そのインプラントを、支承部表面を伴う大腿骨頭部インプラントと共に使用でき、その曲率半径は、図21〜23のそれよりも、はるかに小さいことを意味する。図37の実施形態では、カップの辺縁906は、図21〜23の実施形態と同じように、外形形成され、3つの隆起912と、3つの凹部、または間隔914とが、カップ壁部の全幅に渡って現れるように、その辺縁の内側および外側縁部908、910は、同じ外形形成に従う。
【0085】
図38を参照すると、更なる実施形態では、辺縁922の外側縁部920は、やはり同じ3つの隆起と、間隔とを有する同じ解剖学的外形形成に従うが、辺縁の内側縁部924は、平坦であり、円を形成する。従って、内部支承部表面926の高さは、その縁部に沿って一定である。カップの辺縁922の外形形成された形状は、その外側縁部920から内側縁部924へ次第に融合し、隆起および凹部の高さは、外側縁部920から内側縁部924へ次第に減少する。これにより、内部支承部表面の支承部区域を最大にし、接触区域の圧力を低減し、脱臼の危険性を低減するという効果が得られる。内側縁部924は、0ではないが、外側縁部920のそれよりも小さい外形形成角度を有しうることは理解されよう。
【0086】
図39を参照すると、更なる実施形態では、辺縁の内側縁部930は、平坦ではないが、外側縁部932と異なるやり方で更に外形形成されている。外形形成角度位置は、外側縁部930から内側縁部930で異なる。これにより、外側縁部932を、上記の実施形態と同様に、最適な解剖学的適合を提供するように外形形成することが可能となり、内側端部930を、大腿骨構成体の頚部の側面とカップの辺縁の内側縁部930との間でインピンジメントが起こらないような、カップに対する大腿骨インプラントの可動範囲を最大にするように外形形成することが可能となる。例えば、本実施形態では、内側縁部930は、その円周の大部分に沿って平坦だが、1つの凹部934を切除して、深く屈曲したときの頚部インピンジメントを低減する。図38の実施形態と同様に、辺縁は、外側縁部932と内側縁部930との間で、次第に融合して外形形成される。内側縁部930における凹部と隆起との数と角度配置は、外側縁部932の外形形成に依存しない複数の異なるやり方で変更できることは理解されよう。場合によっては、図37〜39の設計の2つ、または3つの基づく特徴を含むカップの設計を行うことも可能であり、例えば、カップの辺縁に沿った異なる点で、異なる設計を行うことも可能である。
【0087】
図40を参照すると、正常、もしくは少し形成異常の骨盤を伴う女性の股関節においては、臼蓋窩952の上側面領域950が、股関節中心954における角度として測定され、単に垂直方向Vから横方向に約35度で延在していることが一般的である。このため、大腿骨頭部956に対して、十分な支持を提供することができない。図41を参照すると、このような股関節に使用するために設計された寛骨臼カップ・インプラント960は、部分球状で、一定の曲率半径である内側支承部表面962を有するが、外側面964は、異なる機能を有する2つの主領域965、966を備える。最大領域965は、インプラントが適当な位置にあるとき、骨盤の骨に接触して設置されるように配設された骨界面領域である。小さい方の領域966は、外側面964の上縁部に沿って延在する延在領域であり、辺縁上の最高点で最も広く、前端および後端に向かって、テーパー状になっている。延在領域966は、それを覆う臼蓋窩の辺縁で骨盤骨の成長を促進するように配設され、臼蓋窩の強度と、インプラントに対して、それが提供する支持とを増大させるようになっている。この延在領域966は、骨界面領域965と同じ特性、すなわち同じ表面構造および曲率半径を有してもよく、従って、骨界面領域の延在部分を備えてもよい。しかしながら、実施形態によっては、それは、異なる特性を有する。場合によっては、それは、骨界面領域と異なる曲率半径を有してもよい。場合によっては、それは、それを覆う骨の成長を促進するように設計された異なる表面構造を有してもよい。本実施形態では、延在領域966は、マクロスケールおよびマイクロスケールで平滑、すなわち数ミクロンのスケール、例えば、10ミクロン以上で、そのサイズの表面特徴がない。場合によっては、それは、1ミクロンより大きな表面特徴がなくともよい。しかしながら、それは、ナノメートル・スケールで粗い、すなわち高さが1ミクロンよりも小さい表面特徴を有する。場合によっては、高さ500nm以下の表面特徴だけを有してもよい。これは、骨界面領域965と異なり、本実施形態では、1ミクロンより大きいスケールで粗いが、10ミクロンのスケールで、粗くすることができ、または、100ミクロン以上のマクロスケールで、骨との締まりばめを提供することができる。他の実施形態では、骨界面領域は、延在領域よりも、粗さをより少なくすること、あるいは、より小さいスケールでのみ粗くすることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節の面再建に関し、特に、股関節面再建インプラント、股関節を面再建するときに使用するガイダンスシステム、および股関節を面再建するときに使用する外科手術用工具の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節の寛骨臼および大腿骨の構成体の形態、向き、位置は、その機能を決定する重要な要素である。生来の股関節は、これら構成体の設計パラメータに基づいて、うまく働き、通常の可動範囲内での骨組織と軟組織のインピンジメントが避けられる。生来の臼蓋窩は、完全な半球ではなく、その辺縁も単純な円ではなく、正確に言えば、凹凸が連続する3次元形状である。大腿骨側も同様に、その頭部と頚部の間の接合部は、完全な円ではない。
【0003】
現在の股関節面再建インプラントの設計は、平坦な円形の辺縁を有する半球状の寛骨臼カップに基づいている。大腿骨側については、球の割合を可変としたものが、種々のインプラント・メーカーに採用されている。臼蓋窩の辺縁に、はみ出ている寛骨臼カップは、インピンジメントや、すぐに緩んでしまったり、磨耗しやすいといったことを伴うことが示されている。このはみ出しは、半球状のカップを使用するときに、その辺縁の一部が、寛骨臼縁の外形形状の低い領域に、突き出るため、起こると考えられる。
【0004】
大腿骨頚部に対する、骨盤と大腿骨頭部における臼蓋窩の3次元位置の決定に対する取り組みが、続けられている。寛骨臼の前後位置は、股関節周囲筋の機能に影響するものであるが、これは、平面である放射線写真上では、定量化することができないものである。これもまた、インピンジメントに関連する。大腿骨の頭部と頚部の関係も同様に、定量化することが難しい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、寛骨臼カップ・インプラントを骨盤に配置する方法であって、複数の参照点を前記骨盤上に配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0006】
前記参照点は、前記骨盤の絶対位置を決定し、前記骨盤の画像を解析して前記参照点の絶対位置を決定することによって、配置してもよい。
【0007】
本発明は、骨盤に接触して設置され、前記骨盤の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記骨盤の前記位置入力および画像を処理することによって、寛骨臼カップ・インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記カップ・インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システムを、更に提供する。
【0008】
前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの骨盤の画像上で同定し、前記目標配置を参照点に対して決定するように配設してもよい。前記システムは、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えてもよい。
【0009】
本発明は、大腿骨頭部面再建インプラントを大腿骨上に配置する方法であって、前記方法は、複数の参照点を前記大腿骨上で配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法を、更に提供する。
【0010】
前記参照点は、前記大腿骨の絶対位置を決定し、前記大腿骨の画像を解析して前記参照点の前記絶対位置を決定することによって、配置してもよい。
【0011】
本発明は、大腿骨に接触して設置され、前記大腿骨の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記大腿骨の前記位置入力および画像を処理して、大腿骨面再建インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システムを、更に提供する。
【0012】
前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの大腿骨の画像上で同定し、前記目標配置を前記参照点に対して決定するように配設してもよい。前記システムは、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えてもよい。
【0013】
本発明は、部分球状のカップを備える寛骨臼カップ・インプラントであって、前記インプラントの辺縁は、凹部を恥骨と座骨との間の配置に対して定義するように、前記カップに沿って高さが変化する寛骨臼カップ・インプラントを、更に提供する。前記辺縁は、少なくとも1つの凹部を定義してもよい。それは、3つの凹部を定義してもよい。前記凹部の1つは、他の2つより深くてもよい。前記深い方の凹部は、寛骨臼切痕に対応し、前記座骨と前記恥骨の間に配置されるように配設されてもよい。前記深い方の凹部の底部は、前記カップ中心を通り、前記辺縁を通る最も適合する面、例えば、最小の正方形である最も適合する面に平行な参照面の下方、少なくとも20度としてよい。前記浅い方の凹部の底部は、前記参照面の下方、少なくとも10度としてよい。
【0014】
前記カップは、その内側面を部分球状、または、その外側面を部分球状、または、内側面および外側面の両方を部分球状とすることで、部分球としてもよい。例えば、前記内側面を部分球状とし、前記外側面を非球状としてもよい。
【0015】
前記カップの辺縁は、内側縁部と外側縁部とを有してよく、前記内側縁部における前記辺縁に沿った高さの変化は、前記外側縁部の高さの変化と異なっていてよい。前記内側縁部の高さの変化は、前記外側縁部よりも小さくてもよい。前記内側縁部の高さの変化は、実質的に0であってもよい。前記内側縁部の隆起または凹部の個数または角度位置は、対応する前記外側縁部の個数または角度位置と異なっていてもよい。前記カップは、骨盤の骨に接触するように配設された主骨界面領域と、臼蓋窩の上縁部を越えて延在するように配設された延在領域とを有する外側面を、有してもよい。前記延在領域は、少なくとも1つの前記主骨界面領域と異なる特質を有してもよい。前記特質は、曲率半径、または表面構造であってもよい。例えば、前記延在領域は、主領域よりも、粗さが少なくなるようにしてもよい。前記延在領域は、主領域が粗くなっているスケールよりも小さいスケールにおいてだけ、粗くてもよい。
【0016】
本発明は、大腿骨面再建インプラントであって、部分球状の外側面を有する支承部と、前記インプラントを大腿骨上に支持する支持手段とを備え、前記支承部の辺縁は、前記支承部に沿って高さが変化することを特徴とする大腿骨面再建インプラントを、更に提供する。前記支承部表面は、2つの延在する領域を有し、前記表面が前記延在する領域の間の凹部に中へ延在するよりも更に前記大腿骨に沿って延在してもよい。この延在する領域は、それぞれ、そのどちらかの側に対する各凹部より少なくとも10度大きい角を規定してよく、この場合では、少なくとも15度大きい。
【0017】
本発明は、面再建の用に供する、大腿骨を加工するための加工工具であって、前記工具は、前記大腿骨における配置のための配置部材と、前記大腿骨をカットするカッター、前記カッターを支持し、前記配置部材を中心に前記カッターが回転できるように配設された支持手段と、前記大腿骨をカットする深さが変化するように、前記配置部材を中心に前記カッターを回転させながら、軸方向の前記カッターの動きを制御するように配設されたカムシステムとを備えることを特徴とする加工工具を、更に提供する。
【0018】
本発明は、寛骨臼カップ・インプラントを操作するための工具であって、前記工具は、その内部に形成された空洞と、前記インプラントの内部に適合するように配設されたドーム形の前面と、前記インプラントの内部に対して密封するように前記ドーム形の面の周辺に配設される密封手段とを有するフレキシブルな部材と、前記フレキシブルな部材の後部を支持するための剛性支持手段と、前記フレキシブルな部材の一部を前記インプラントから離れるように引き寄せて、前記インプラントと前記フレキシブルな部材との間に部分的な真空を発生させて、前記インプラントを前記フレキシブルな部材に確実に固定するように配設される引き寄せ手段とを備えることを特徴とする工具を、更に提供する。
【0019】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、以下のうち、1つ以上のいずれかを提供することができる。
【0020】
骨盤の形態と性別に対して特異的な骨盤に対する寛骨臼インプラントの向きを定める方法、
【0021】
骨盤の形態と性別に対して特異的な骨盤に対する寛骨臼カップを配置する方法、
【0022】
ソケットの金属製縁部のはみ出しによる軟組織の損傷を最小にすることと、大腿骨頭部の動作範囲と骨盤骨の支持とを最大にすることとの両方を行う形状の寛骨臼カップ、
【0023】
荷重の移動を最適化して、磨耗を最小にする形状の寛骨臼カップ、
【0024】
アルゴリズムによって定義される形状および位置の腰筋腱に対する腸骨−恥骨凹部を有する形状の寛骨臼カップ、
【0025】
坐骨の「加工面」を含んで、表面区域を増大させ、屈曲時の安定性を高める形状の寛骨臼カップ、
【0026】
大腿骨の形態と性別に対して特異的な大腿骨に対する大腿骨頭部インプラントの向きを定める方法、
【0027】
大腿骨の形態と性別に対して特異的な大腿骨に対する大腿骨頭部インプラントを配置する方法、
【0028】
下にある大腿骨頭部および後上方に隣接する大腿骨頚部に対する軟組織および血管の損傷を最小にする形状の大腿骨構成体、
【0029】
キャム・タイプの股関節変形における前上方の切れ込みによる、大腿骨頚部の骨折の危険性を、最小にする形状の大腿骨頭部インプラント、
【0030】
延在し屈曲した延在加工面を有する形状の大腿骨頭部インプラント、
【0031】
欠損した骨の部分を効果的に代替するように部分的に充実した内部空洞を有することにより、キャム・タイプの股関節変形における相対的に前上方の欠陥に適応できる内部形状。
【0032】
本発明は、寛骨臼カップの新規な解剖学的設計を提供する。寛骨臼カップを、骨盤内で正確に位置調整する確実な方法も提供する。本発明は、インピンジメントの危険性なく、磨耗の進行速度を減少させる最適な可動範囲を提供する、最適に設置される解剖学的股関節装置を提供することを支援することができる。
【0033】
ここで、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を、単に一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】寛骨臼縁の形状を決定するために使用するマーカーを示す、臼蓋窩の外形形状図である。
【図2】図1の臼蓋窩の正面図である。
【図3】図1の臼蓋窩の側面図である。
【図4】男性の骨盤の正面図である。
【図5】女性の骨盤の正面図である。
【図6】男性の骨盤の側面図である。
【図7】女性の骨盤の側面図である。
【図8】直交するCT像を使用した股関節中心の配置を示す図である。
【図9】直交するCT像を使用した大腿骨上の参照点の配置を示す図である。
【図10】頭部−頚部接合部上のマーカーを示す、大腿骨の頭部の正面図である。
【図11】図10のマーカーに対する「時刻」位置を示す、大腿骨頭部の下面図である。
【図12】大腿骨頚部上の参照点を示す、大腿骨頭部の後面図である。
【図13】図12の参照点を示す、大腿骨頭部の内面図である。
【図14】直交するCT像により大腿骨頚部中心の配置を示す図である。
【図15】頚部軸の配置を示す、大腿骨頭部の後面図である。
【図16】頚部軸の配置を示す、大腿骨頭部の内面図である。
【図17】複数の寛骨臼縁の外形形状を示す図である。
【図17a】異なるタイプの股関節の寛骨臼縁の外形形状を示す図である。
【図18】複数の股関節中心の、水平、垂直、および後方にスケーリングされたオフセットの分布を示すグラフである。
【図19】複数の大腿骨頭部/頚部接合部の外形形状を示す図である。
【図20】股関節と、本発明の実施形態による大腿骨インプラントおよび寛骨臼インプラントの斜視分解図である。
【図21】図20のインプラント・セットの正面図である。
【図22】図21のインプラントを分離した正面図である。
【図23】図20のインプラントの更なる斜視図である。
【図24】本発明の実施形態による大腿骨頭部用の加工工具の側面図である。
【図25】図24の加工工具の端面図である。
【図26】図24の加工工具の斜視図である。
【図27】図24の線B−Bに沿った断面図である。
【図28】図24の線A−Aに沿った断面図である。
【図29】図24の加工工具の分解図である。
【図30】本発明の実施形態による、加工された大腿骨頭部の正面図である。
【図31】使用時における図24の加工工具を示す図である。
【図32】本発明の実施形態による寛骨臼カップ・インプラント用の挿入工具の断面図である。
【図33】本発明の実施形態による、外科手術ガイダンス・システムの概略図である。
【図34】インプラントの用に供して大腿骨頭部をカットするための、本発明の更なる実施形態によるカッティング工具の断面図である。
【図35】本発明の更なる実施形態による、大腿骨頭部インプラントの斜視図である。
【図36】図35のインプラントの用に供して大腿骨頭部をカットするために使用するカッティング・ガイドの斜視図である。
【図37】本発明の更なる実施形態による、寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【図38】本発明の更に更なる実施形態による、寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【図39】本発明の更に更なる実施形態による、寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【図40】磨耗した臼蓋窩を示す、女性の股関節の画像である。
【図41】図40に示したタイプの股関節のために使用する寛骨臼カップ・インプラントの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
臼蓋窩
22例の正常な寛骨臼のCTスキャンを、3次元再構成ソフトウェアを使用して解析した。これらには、正常な寛骨臼を有する、12例の乾燥した死体の寛骨が含まれていた。加えて、片側の寛骨臼を骨折した12人の患者から得た、手術後のCTスキャンを使用して、正常な反対側の臼蓋窩を解析した。これらの患者の平均年齢は、38.4才であった(年齢範囲は22才〜61才)。5人が女性で、7人が男性であった。死体骨の性別は不明であった。
【0036】
図1〜3を参照すると、臼蓋窩12の中心10を、寛骨臼ソケット、すなわち月状面の連結部分の点を通って最も適合する球の中心として定義した。そして、図中、A−Z、A1−Z1等で示されるマーカーは、恥骨端部16から開始し、後上方に移動する寛骨臼縁14全体の周りの各点に割り当てた。完全に一周するために、寛骨臼切痕18も含まれる。そして、最も適合する面は、寛骨臼切痕18上のものを除く、辺縁のすべての点を通って適合するものであった。この面は、寛骨臼面を定義し、寛骨臼中心における、この面に対する法線は、法線ベクトルD2を形成するとした。この法線ベクトルと、該中心と辺縁の点とを結ぶ線との間に規定される角で、図1に示すように、着目している点に対して規定される角を定義した。辺縁の点の角度位置は、2つの上前腸骨棘(ASIS:Anterior Superior iliac Spines)と恥骨結節とで定義される前骨盤平面(APP:Anterior Pelvic Plane)に骨盤を揃えた後に得られる前部辺縁の目印に対して測定された。これにより、辺縁の各点に対する「時刻」位置(‘clock’ position)を提供する。従って、寛骨臼縁の2次元外形形状は、「時刻」位置の関数として規定される角度を示し、前方の目印に対する正確な参照により生成されるとした。これは図17に示され、後で論じる。
【0037】
そして、寛骨臼縁の山と谷を定義する6つの目印を同定した。すなわち、それらは、隆起である恥骨22、腸骨24、および坐骨26上の最高点、ならびに、腸骨−恥骨間隔28、後部辺縁30、および寛骨臼切痕18内の最低点であった。これらの点に対して規定される角に注目し、臼蓋窩の2次元外形形状と共に、この角を第2の独立した観測者によって得られた結果と比較して、その方法の信頼性を確認した。
性特異的3次元寛骨臼位置調整
【0038】
図4〜7を参照すると、37例の股関節(19例が女性、18例が男性)のCT(Computerised Tomography)スキャンを、3次元再構成ソフトウェアを使用することにより、解析した。2つの上前腸骨棘(ASIS)と恥骨結節とで定義される前骨盤平面(APP)を、原点を右側上前腸骨棘に設定した座標系に基づくものとして使用した。x軸は、水平に左から右に示され、y軸は、垂直に上向きに示され、z軸は、後方から前方に示されるものとした。大腿骨頭部中心は、股関節中心を表すものとし、その座標(Cx,Cy,Cz)を測定した。
【0039】
前骨盤平面に骨盤を揃えた後、骨盤の水平方向の大きさ(Dx)を、腸骨稜上の横方向に最も端にある点Fと点Gとの間の距離として定義し、その垂直方向の大きさ(Dy)を、腸骨翼上の最高点Hと坐骨結節上の最低点Iとの間の距離とした。骨盤の奥行き(Dz)を、上後腸骨棘Jと同側上前腸骨棘Dとの間の水平方向の距離として定義した。
【0040】
図8を参照すると、股関節中心は、CTスキャンから得た3つの直交する断面像を使用することによって決定された。そのx、y、z座標を、上記の参照座標系に対して、測定した。これらの座標それぞれの、骨盤の大きさに対する比(Cx/Dx,Cy/Dy,Cz/Dz)を測定した。これらの比は、水平、垂直、および後方でスケーリングされたオフセットを表し、ここで、それぞれ、HSO、VSO、およびPSOと呼ぶものとした。その結果を、男性と女性に対して解析した。これらは、図18に示され、後で論じる。
【0041】
そして、24個の点を、寛骨臼縁の上半分の周りに定義した。これは、臼蓋窩の荷重支承部であり、これらの点を通る、最も適合する寛骨臼面を生成した。この点の集合は、別個に得たものである。但し、図1〜3の点の部分集合を使用することもできた。寛骨臼面の外転角(Inclination)と前捻角(Anteversion)を、前骨盤平面FORに対して、両方のグループについて、測定した。そして、独立した観測者により、この方法の信頼性を試験するため、目印の取得と、すべてのスキャンに対する測定とを繰り返した。
大腿骨
【0042】
7例の正常な股関節のCTスキャンを、3次元再構成ソフトウェアで解析した。そして、大腿骨頭部の中心を、大腿骨頭部の表面上の点の集合を通る球に適合させることによって決定した。
【0043】
図9を参照すると、図9の各スキャン上に十字形で示される参照点が、梨状陥凹の内側縁部に割り当てられるとした。
【0044】
図10および11を参照すると、図10および11で、文字により表される点は、前方に向かう方向に梨状陥凹参照点の高さから開始している大腿骨頭部−頚部接合部上に割り当てられるとした。CTスキャンから得た3次元像と3つの直交する2次元像との組合せを、その目的のために使用した。頭部−頚部接合部の点を通る最も適合する面を決定した。また、頭部中心Aで、その面に対する下向きの垂線により、その面に対する法線ベクトルJ1を定義する。各点に対し、規定される角を、その点と、頭部中心でその平面に対する上向きの法線(−J1)との間の頭部中心における角として定義した。従って、この上向きの法線ベクトル(−J1)と、頭部中心と頭部−頚部接合部の点(例えば、図10に示すような点K)とを結ぶ線との間の、その角度(180−θ)によって、その点で規定される角が定義される。
【0045】
図11を参照すると、頭部−頚部接合部上の、その点の角度位置を、梨状陥凹参照点Bに対して測定した。「時刻」位置角(頭部−頚部接合部の面内の、法線ベクトルに対する角)を、頭部−頚部接合部の全ての点に対し、測定した。また、この「時刻」位置角の関数として規定された角をプロットしたものにより、頭部−頚部接合部が示される。これは、図19に示され、後で論じる。
大腿骨頭部の3次元位置調整
【0046】
図12および13を参照すると、26例の乾燥した死体の大腿骨のCTスキャンを、同じ3次元再構成ソフトウェアを使用して解析した。大腿骨頭部の中心Aを、頭部表面上の点を通って最も適合する球の中心として定義した。標準化された向きに対し、大腿骨頚部の後表面の平坦な部分上の点を通って最も適合する面によって定義される参照面を使用した。点Bは、大腿近位部内の梨状陥凹の内側縁部上で、再現性良く得られた。別の点Pは、大腿骨を後側頚部参照面に揃えた後、小転子上の最高点で、同定された。これらの点B、Pを結ぶ線を水平に揃えることにより、大腿骨の標準化された方向の処理が完了した。そして、点Bに原点を取り、線BPに沿ったX軸、後側頚部参照面内でX軸に垂直なY軸、X軸とY軸に垂直なZ軸により、座標系を定義した。
【0047】
後頚部面上の点の平均を同定した。また、矢状像および冠状像を使用して、この平均の点の高さにある頚部中心を決定した。頚部中心を、頚部面に対する垂線上の、頚部面上の平均の点と頚部の反対側の点Rとの間の途中にある点とした。この点を、頚部中心(NC:Neck Centre)と呼ぶものとする。
【0048】
そして、スクリーンの面内の大腿骨頚部に対し、線BP(梨状陥凹Bと小転子P点とを結ぶ線(頚部基部線))に垂直な頚部中心NCの垂直投影を、線BPから挿入し、NCと同じオフセットによって、決定した。この点は、頚部中心の基部であり、この点と頚部中心とを結ぶ線により、頚部軸が定義される。
【0049】
そして、大腿骨頭部と大腿骨頚部との間の、内反/外反および前傾/後傾の関係が測定できる。梨状陥凹点Bに対して設定された大腿近位部基準系の原点により、頭部中心のx、y、z座標を計算することができる。
【0050】
この方法の信頼性を試験するため、独立した観測者により、目印の取得と測定とを繰り返した。
結果
臼蓋窩
寛骨臼縁の形態
【0051】
臼蓋窩は、半球で単純に表すことができない複雑な構造である。上記の測定により、図17に示すような、2次元外形形状の同定可能な山と谷を伴う、その辺縁内で繰り返されるパターンを見出した。この図は、調査した寛骨臼の、いくつかの外形形状を示しており、それらの「時刻」位置角の関数である、各辺縁点で規定された角をプロットしたものに基づいている。半球からのずれは、90度に規定された角との比較で知ることができ、規定された角が大きいほど、半球より小さいことが示されている。
【0052】
寛骨臼縁上の隆起と谷とに対する、規定された角と「時刻」位置角に注目した(表1)。重要な特徴として、寛骨臼切痕と呼ばれる、腸腰筋腱を収容する腸骨−恥骨間隔内の切り欠き部と、屈曲時の安定性を提供することのできる坐骨隆起における付加物とがある。また、腸骨の領域内の腸骨隆起と、恥骨の領域内の恥骨隆起とがある。腸骨−坐骨間隔、すなわち谷が、座骨と腸骨の間に形成され、腸骨−恥骨間隔、すなわち谷が、腸骨と恥骨の間に形成される。最後に述べたこれら2つの間隔は、寛骨臼切痕ほど深くはない。
【表1】
【0053】
寛骨臼縁の隆起と谷の辺縁点に対する、規定された角と「時刻」位置角
【0054】
寛骨臼縁の形態は、骨組織と軟組織について、解剖学的に適切な考慮がなされている。それらのうちで、重要な要素の1つは、腸腰筋腱を収容する腸骨−恥骨間隔内の谷である。この切り欠き部は、屈曲時のインピンジメントを避けるために必須のものである。良好な範囲は、腸骨隆起により明らかであり、これが不完全なときは、形成異常のような場合となる。また、坐骨の突出部は、通常、重要な役割、例えば、しゃがむ等の場合に適切な動作範囲を提供するといった役割を果たす。本発明のいくつかの実施形態による再建手術は、これらの特性を修復することを目指している。
【0055】
図17aは、寛骨臼縁の形状を、3つのタイプの股関節からなる、3つの異なるグループそれぞれに対して同様にプロットしたものを示している。この場合、角度の測定は、寛骨臼切痕の底部から行った。いちばん上の外形形状は、ピンサー(Pincer)タイプの股関節、中央の外形形状は、通常の股関節、いちばん下の外形形状は、キャム(CAM)タイプの股関節のものである。これらプロットしたものは、股関節のタイプの違いによって、辺縁の絶対高さが変化しながらも、外形の形状は、基本的に、3つのタイプの股関節の全てにおいて、同じであることを示すような関係になっている。これは、1つのインプラントで、異なる股関節のタイプの再構成に適する設計が可能であることを意味する。
寛骨臼の3次元位置調整
【0056】
股関節中心のスケーリングされたオフセットは、予想されるように、性別で変化し、性別の分かっている所定の個人に対し、その座標は、既知の骨盤の目印から求めることができる。男性と女性に対するスケーリングされたオフセットを表2に示す。
【表2】
【0057】
股関節中心のスケーリングされたオフセットは、平均および、それらの95%信頼区間として表した。性別の違いに対するp値も、示している。HSO、VSO、およびPSOは、それぞれ、水平、垂直、および後方に向かってスケーリングされたオフセットである。
【0058】
その結果を、分散が異なると仮定した2つのサンプルのスチューデントのt検定(Student’s t−test)を使用することによって、スケーリングされたオフセットにおける性別の違いについて、精査した。3つのスケーリングされたオフセット全てにおいて、統計的に有意な違いがあった。図18は、股関節中心のスケーリングされたオフセットHSO、VSO、およびPSOの分布を示すグラフである。
大腿骨
大腿骨頭部−頚部接合部の形態
【0059】
大腿骨頭部は、半球よりも大きい。それが作る球の割合は、大腿骨頚部と共に、その辺縁、または接合部に沿って変化する。頭部−頚部接合部の点の規定される角を、頭部−頚部接合部上の、それらの「時刻」位置角の関数としてプロットすることにより、2次元外形形状を作成した。これを図19に示す。
【0060】
大腿骨頭部−頚部接合部に対してパターンがあることが分かる。頭部の前後方向への「延在」は、臼蓋窩を伴う関節のための追加される空間を提供するが、「切り欠き部」は、内側および左右のインピンジメントを避け、血管が頭部へ後外側方で入り込めるようにしている。
大腿骨頭部−頚部の基準系
【0061】
大腿骨頭部の位置と向きは、大腿骨頚部との相対関係で、正確に定義することができる。頚部に依存する図12および13の大腿近位部基準系を使用して、標準化された、再現性のある大腿骨の向きを得ることができる。梨状陥凹にある原点から、大腿骨頭部中心に対するx−、y−、およびz−座標を測定することができ、頭部−頚部接合部の面を使用して、頭部中心の位置と頭部の向きを、両方ともに頚部軸との相対関係で、3次元空間内で定量化することができる。
インプラント設計
【0062】
図20を参照すると、股関節面再建インプラント・セットは、臼蓋窩104を面再建するための寛骨臼カップ100と、大腿骨106の頭部を面再建するための大腿骨頭部インプラント102とを備える。
【0063】
図21〜23を参照すると、寛骨臼カップ100は、実質的に一定の厚さの部分球であり、臼蓋窩それ自身の辺縁に対して、いくつかの点で対応するだけでなく、製造も簡単であるように外形形成された辺縁110を伴う。つまり、その辺縁は、連続的に湾曲しており、寛骨臼切痕112、前恥骨隆起114、坐骨隆起116、腸骨隆起118、および腸骨−恥骨間隔120を形成する、高くなったり、低くなったりする領域を有している。カップ中心を通ると共に、カップ辺縁上の点を通って、RMSが最も適合する面に平行な参照面から測定すると、寛骨臼切痕は、参照面の下方で、深さが少なくとも15度、好ましくは、少なくとも20度である。他方の凹部は、参照面からの深さが少なくとも5度で、好ましくは、少なくとも10度である。しかしながら、このカップは、半球よりも小さいので、その凹部は、参照面からの深さが、隆起の高さよりも大きい。従って、腸骨隆起および坐骨隆起は、好ましくは、参照面の上方に少なくとも5度で突き出るが、そうでなければ、少なくとも参照面と同じ高さとし、恥骨隆起は、好ましくは、少なくとも参照面に、または少なくとも参照面の10度以内に突き出る。凹部の深さを、凹部の底部において規定される角と、そのどちらかの側の2つの隆起の平均角度との差として定義すると、腸骨−恥骨間隔および腸骨−坐骨間隔それぞれの深さは、好ましくは、少なくとも10度であり、寛骨臼切痕の深さの深さは、好ましくは、少なくとも20度である。
【0064】
大腿骨頭部インプラント102は、部分球カップ130を備え、その外側面は、寛骨臼カップ100の内側面からの荷重を受けるように配設される。キャップ130の内部面は、多様な形状をとることができるが、本実施形態では、底部にある平坦な区域131aと、平坦な底部131aから外側へ延在する部分円錐区域131b、および部分円錐区域の外側縁部からキャップの辺縁に向かい上に延在する円柱状部分131cを有する。固定柱132は、平坦な底部の中心から、支承部表面の湾曲の、おおよそ中心を通って、上方に突き出る。柱状部材132は、キャップ130の辺縁を越えて延在する。キャップ130の辺縁において、すなわち、外部支承部表面においても、前側および後側で領域134、136が延在して、高さが変化し、これらに挟まれる内側および外側で、凹部をなす。規定される角は、この延在する領域で約120度〜125度、凹部で約100度〜110度である。従って、この延在する領域は、それぞれ、そのどちらかの側に対する各凹部より少なくとも10度大きい角を規定し、この場合では、少なくとも15度大きい。各凹部の深さを、凹部の底部で規定される角と、そのどちらかの側の2つの延在する領域の規定される角の平均との差とすると、各凹部の深さは、好ましくは、少なくとも10度であり、少なくとも15度とすることができる。このような形状のものが、典型的に関節軟骨で覆われた骨のみを置き換え、軟組織の損傷を防ぎ、血管に対する適切なクリアランスおよび保護を提供すると共に、前側および後側での十分な支承部の支持を提供するように配設される。
【0065】
大腿骨頭部インプラントの重要な部分が、支承部表面であることは理解されよう。内部面および支持部は、複数の異なる手法で設計することができる。更なる実施形態では、寛骨臼カップの設計は、実質的に単純化され、それは、寛骨臼切痕を含み、その中心点に対し平坦な辺縁の残りの部分と対称である。図17を参照すると、カップ上の位置を、臼蓋窩上の前方の目印に配置される点からの角度として定義した場合、カップは、おおよそ290度の点に対して対称となっている。これにより、2つの効果が得られる。まず第一に、製造が簡単であること、第2に、対称なので、カップには左右の区別がない、つまり同じ形状のカップを左右両方の股関節に使用することができる。
【0066】
更に更なる実施形態では、更に図17を参照して、カップは、辺縁上の約160度における対称点を中心とする対称な腸骨−坐骨間隔と、対称点の両側にそれぞれ対称に配置される腸骨隆起および坐骨隆起と、腸骨−坐骨間隔の中心に対して、これもまた対称に配設された腸骨−恥骨間隔および寛骨臼切痕と、腸骨−坐骨間隔の、ちょうど反対側に対称に配置される恥骨隆起とを含む。それぞれの場合において、それら隆起は、辺縁上の全ての点を通って最も適合する面であるカップの参照面を越えて延在し、それら間隔および切痕は、その面の下方へ下がっている。
【0067】
図示されるように、大腿骨頭部インプラントは、対称ではないが、別の実施形態では、このインプラントは対称にして製作することもでき、前方および後方の延在する部分134、136は、辺縁の反対側に対称に設置され、それぞれ、それ自身の中心について対称である。これによってもまた、同じインプラントを左右両方の股関節で使用することができる。
【0068】
インプラントの完全なセットは、適応するインプラントの複数のペアを含むものであり、これらペアは、異なる患者に適合する異なるサイズとなっている。しかしながら、異なるペアの形状は、同一で、縮尺だけが違っている。
【0069】
図24〜29を参照すると、大腿骨を正確な形状に加工して大腿骨キャップ102を受けるための加工工具は、その軸と揃えられ、かつ、その前端から突き出る配置ピン202を有する円柱状ボディ200を備える。カッター204は、ボディ200内の配置ピン202に平行な支承部203上で支持され、配置軸から、ずれている。配置ピン202は、その同軸上で支持されるカム205を有し、軸方向に高さが変化する後側カム面206を有する。図27および28で、最もよく分かるように、ボディ200は、その内部に形成された前側カム追従面208を有し、これが、カム面206と接触し、配置ピンを中心にボディを回転させながら、ボディ200を軸方向に配置ピン202と相対的に動かすように配設されている。カム205の前部の前部のスパイク210を提供することにより、大腿骨に対する回転において、配置ピン202が固定される。カッター204は、ボディ200内で軸方向にスライド可能であり、回転して大腿骨をカットすることができるように支承部203で支持される。ボディ200を通るカッター204の前方への動きは、カッター上の鍔部204aで制限される。ラチェットレバー212は、ボディ200の背部202aから半径方向に突き出て、使用者が、ボディ200およびカッターを、配置ピン202を中心にして回転させることを可能にしている。ボディ202の後端は、適当な位置でネジ218で保持されたカバー216によって、閉じられている。ボディ200の前端のフレキシブルな被覆部(gaiter)220は、大腿骨に対してボディを密封するように配設される。ボディ202は中空であり、洗浄ポート222、224は、背部202aに設けられている。洗浄通路226は、後ボディ部202aと、主ボディ部202bとの間に形成され、食塩溶液洗浄システムをボディの内部に接続して、カッター204を洗浄し、食塩溶液洗浄システムは、ポート222、224に接続することができる。リングシール228は、これら通路を互いに密封する。本工具は、これの骨との相対的な向きを正確に定めることができる光学的誘導装置等の誘導装置を、更に備えてもよい。
【0070】
図31を参照すると、使用に当たっては、まず、大腿骨の頭部を事前に加工して、おおよそ頚部軸に沿って、その端部に浅い円錐面300と、その端部から内部に延在する穴302とを形成する。配置ピン202は、穴302に挿入され、カム205の後のスパイク210が、加工された面300に押し込まれて、回転する配置ピン202およびカム205が固定される。そして、ボディ200は、配置ピン202の上方に設置され、ボディ内のカム追従面208がカム面206に接触するまで前方へ押される。高速ドリル230をカッター204に接続し、カッター上の鍔部204aが、軸方向の前方へのカッター204の動きを制限するまで、カッターが駆動され、その支承部を介して前方に押されて、骨を加工する。そして、ボディ202、カッター204、およびドリル300は、配置ピン202を中心に回転すると共に、カッター204が前方へ押されると、カム205の作用によってカッターが軸方向に動かされて、大腿骨を正確な形状にカットして、大腿骨頭部インプラント102を受ける。
【0071】
図30を参照すると、カム面206は、大腿骨頭部インプラント102の辺縁の形状に対応するように形成されていることが理解されよう。この結果、大腿骨の頭部が、大腿骨の上端部から後方に延在する円柱状部304を有するように、カットされる。その円柱状部の底部縁部306は、前側および後側で深く、上側および下側で浅くなるように外形形成される。この方法の効果は、大腿骨を最小限の量だけ切除して、大腿骨頭部インプラント102を挿入できることである。図30に示すように、一塊の骨308が、加工された円柱状部の下方にあり、これは、円柱状部よりも広い。これにより、骨の強度が維持され、インプラントが支持および配置される。
【0072】
図32を参照すると、寛骨臼カップ100と共に使用するための挿入工具400は、ハンドル404で支持される後端を有する中空シャフト402と、その前端にフランジ406とを備える。スライドロッド408は、シャフト402の内部に配置され、その前端は、ハンドルから最も遠いシャフトの前端から、フランジ406の中心で突き出ている。操作レバー410は、回動可能にシャフト402に備え付けられ、駆動リンク412は、レバー410と、スライドロッド408との間に接続され、その接続は、長穴を通ってシャフト402の一方の側の下方に延在するピン414により行われる。従って、レバー410がシャフト402において回動すると、駆動リンク412およびピン414により、ロッド408がシャフト402に沿って動く。スライドロッド408の前端には、把持装置416が付いている。弾力性のあるカップ418は、例えば、エラストマー系材料で成型され、本工具の前端に覆い被さって設置され、その辺縁は、フランジ406上に支えられている。カップ418の内面の中心の突起部420は、把持装置416によって把持されるように配設されている。カップの外側面の基部の近傍に、溝部422が形成され、カップの周囲に延在しており、Oリングシールが、溝部422に配置される。カップ418の辺縁には、その外側面に、フランジ423が形成され、その前側面423aは、外形形成された寛骨臼カップ100の辺縁に適応するように外形形成される。これにより、工具400上で寛骨臼カップ100が回転可能に配置される。誘導配置装置424は、シャフト402に備え付けられ、これを使用して、本工具の、すなわち寛骨臼カップ100の配置と向きとを決定することができる。
【0073】
使用に当たっては、弾力性のあるカップ418を寛骨臼カップ・インプラント102の内部に設置して、その内側面に対し、Oリングで封止するようになっている。そして、操作レバー410を後方に動かして、スライドロッド408を後方に引く。これにより、弾力性のあるカップ418の基部が、インプラント・カップ100から離れるように引かれ、その間に真空が発生し、インプラント・カップ100を本工具で捕捉し、動かすことができるようになる。インプラント・カップ100の正確な位置は、誘導装置424を使用して監視することができ、インプラント・カップは、所望の位置に動かされ、その後、操作レバーを使用して解放される。
【0074】
図33を参照すると、患者の股関節の面再建手術の間、外科手術ガイダンス・システムが使用される。これは、ガイダンス・プログラムを実行するコンピュータ500という形で、処理システムと、関連付けられたメモリとを含む。骨配置装置502は、骨に取り付けることができ、その位置および向きを、光学的、または他のトラッキング装置504を介して、コンピュータ500に対して通信するように配設される。これにより、実空間における参照位置および向きが提供される。また、大腿骨加工工具508にも、トラッキング装置510が設けられ、その位置および向きを、コンピュータによって決定できるようになっている。また、寛骨臼カップ挿入工具400を、セットして、その誘導装置424がトラッキング出力を提供することにより、コンピュータ500が、その位置および配置を決定できるようになっている。この配設に代わって、CTNシステム(英国、ロンドンAcrobot Co Ltd)を使用することができ、これは、トラッキング・アームを使用して、本工具および骨を配置する。ガイダンス・プログラムを配備して、骨盤および大腿骨の画像を使用することにより、使用者は、それらの骨における参照配置を入力して、それらの参照位置から、インプラントに対する所望の位置を決定できる。
【0075】
患者をスキャンし、骨盤および大腿骨の画像を解析して、股関節中心の位置を特定し、骨に対して固定されている図4〜7の座標系、および臼蓋窩のサイズ、例えば、平均半径を使用して、参照位置および向きに対する骨盤における寛骨臼面の配置および向きを決定する。画像内の骨の目印の特徴の配置に対して、インプラントの目標位置を決定することができ、この配置は、使用者がマウス等の入力装置を使用することにより、同定することができる。あるいは、場合によっては、コンピュータ・プロセッサは、画像処理技術を使用して、画像内の目印の特徴の位置を特定することができる。これらの位置から、使用するインプラントのサイズを決定し、寛骨臼カップ・インプラントの所望の位置および向きを、水平、垂直、および後方にスケーリングされたオフセットに対して選んだ値を使用して決定する。
【0076】
同様に、スキャン画像を使用して、大腿骨における頚部中心線と、頭部/頚部接合面の位置を、図9〜16を参照した上記の方法を使用して特定する。これより、大腿骨頭部インプラントの所望の中心位置および向きを、骨の基準系における参照位置に対して、選ぶことができる。注目すべき点は、大腿骨頭部の磨耗が、インプラントの選んだ位置に影響しないように、頭部インプラントの所望の位置を、大腿骨頚部の特徴に対して決定することである。
【0077】
面再建を実施するために、骨配置装置502を骨に取り付けて、コンピュータ500が、骨の絶対位置、すなわちインプラントの所望の絶対位置および向きを、配置装置と、従って参照位置とを含む画像から決定できるようにする。本加工工具は、外科医によって制御され、同時に、コンピュータは、その位置を監視し、外科医にスクリーン512を介してフィードバックを提供して、外科医が骨を正しく加工してインプラントを所望の位置および向きになるように本加工工具の位置を定めることができるよう、外科医を案内する。
【0078】
図34を参照すると、本発明の更なる実施形態による大腿骨頭部を加工する加工工具は、中心ガイドピン610を備え、その前端612は、とがっている。カムガイド614は、管状部616を備え、これは、ガイドピン610の周囲にスライド可能にはまっており、その前端に頭部618を有する。頭部618は、大腿骨頭部に形成された対応する環状面620に対して配置されるように配設された平坦な環状前面619と、その後側に後側カム面622を有する。カム面622は、環状で、ガイドピン610の周囲で延在し、高さ、すなわち平坦な前面619からの距離が変化する。放射状ブロック624は、管状部616にスライド可能に備え付けられた短い管状部626を備え、その前端から軸方向に突き出るとともにカム面622に点接触するように配設されたカム追従部628を有する。放射状ブロックは、カッター支持部630を更に備え、カッター支持部630は、これを通り、カッター634が支持されるガイドピン610に平行な穴632を有する。カッター634は、長い円柱状ビットをなす形状であり、その前端にカッティング先端部636と、前端から後方に延在するカッティング部640の周囲で延在するカッティング面638とを有する。カッター634は、ガイドピン610からの距離が固定されて、支持され、ガイドピン610を中心に回転して、大腿骨をカットすることができる。半円柱状カッターシールド642は、放射状ブロック624に備え付けられ、そこから前方に突き出て、カッター634の前部の外側を覆うようになっている。カッターの鍔部644は、前方への放射状ブロックを通るカッターの動きを制限して、カッターが、カッターシールド642の前端から少し間隔を置いている完全に挿入された位置へと、前方に動かされることができるようになっている。
【0079】
使用に当たっては、大腿骨の上面をカットして、平坦な面620を形成し、ガイドピン610を、平坦な面620に対して垂直に突き出るように、大腿骨頭部の中に挿入する。そして、カム614は、ガイドピン610を越えて下方にスライドし、カム面622が骨に対して正しい向きとなるような向きにさせられる。そして、カムガイドが前方に押されることにより、その前端の配置ピン646が、骨の中に固定されて、カムガイドを適切な位置に確実に固定する。そして、放射状ブロック624は、カム追従部628がカム面622の位置に来るまで、前方に押される。そして、放射状ブロック624が、回転することにより、大腿骨頭部の側面が、所望の深さに切除され、カッティングの深さ、すなわち切除部627の底部縁部625の高さは、カム面622の外形形状によって決定されるように、大腿骨頭部の周囲で変化する。
【0080】
図35を参照すると、本発明の更なる実施形態による大腿骨インプラント700は、図22のそれと同様に、その内部に内部空洞712を伴う部分球状の外側面710を有し、大腿骨頭部のカット部を覆って適応するように配設されている。このカット部は、事前に、例えば、図34の機械工具を使用して、加工されている。部分球状の外側面の縁部711は、図22の大腿骨インプラントと同じように、その縁部の周囲で高さが変化するが、図35には図示されていない。この場合、空洞712は、ほぼ円柱状で、湾曲した内部面713を有し、その底部端部714は塞がれ、その上端部716は開放されて、大腿骨頭部の加工された部分を受けるようになっている。しかしながら、空洞の一方の側面718は平坦で、空洞は、部分的に充実しており、これによって、空洞の体積は、完全な円柱状の空洞よりも小さくなっている。従って、空洞の円柱状部分の軸を、部分球状の外側面の中心に揃えても、空洞の平坦な側面718の領域内のインプラントの壁部720は、インプラントの壁部の残りの部分よりも厚く、この残りの部分は、空洞の湾曲した側壁部713に沿って一定である。
【0081】
適当な位置で、完全な円柱にカットして、インプラントを支持するには骨が不十分であるような程度に、大腿骨が著しく磨耗している場合、インプラントが大腿骨上の正しい位置にあるとき、図35のインプラントを使用することができる。キャム(CAM)タイプの股関節変形の場合、大腿骨の片側が極端に磨耗する。このような場合、大腿骨をカットして、部分円柱状の一塊の骨を残して、インプラントを支持することができるが、十分な骨がない状態で、完全な円柱を形成する場合、1つの面を切除して、空洞712の平坦な壁部718に対応させる。
【0082】
図36を参照すると、図35のインプラントと共に使用するカッティング・ガイド800は、部分管状スリーブ810を備え、一端812は、大腿骨の切除部の外形形成された下縁部625に対して適合するように外形形成される。ガイドの一方の側814が、切除されて、2つの軸方向に延在する端面818の間に、欠落部分816が残る。各端面818は、ガイドの軸に平行だが、この軸からずれている共通の面内にある。ガイド800の内部面は、インプラント700の湾曲した内部面713と同じサイズおよび形状をしており、欠落部分816の幅は、インプラント700の平坦な内部面718の幅と等しい。
【0083】
使用に当たっては、大腿骨を図34の機械工具でカットしたとき、大腿骨頭部の一方の側が、カッターでカットする半径の内側のレベルにまで、磨耗、消失されているなら、骨のカット部は、完全な円柱でなくてよい。その場合、欠落部分816が、カットされた骨の円柱状でない部分に揃うように、ガイド800を、カットされた骨を覆うように設置される。そして、骨を、ガイド800の端面818と同じレベルの平坦な面に切り落とす。これにより、部分円柱状にカットされた骨部が残り、これは、インプラントの空洞712の形状に対応する。そして、インプラントを、適当な位置で、カットされた骨部を覆うように置くことができ、インプラント内の空洞が、骨によって完全に充実されて、インプラントが、大腿骨上で、しっかり支持されるようになる。インプラント内の空洞の形状は、適宜、変更可能であることは理解されよう。例えば、インプラントとガイドとのセットを使用して、大腿骨の異なるレベルの磨耗に合わせ、それぞれの場合に、残る骨の量が最大になるように、かつ、それぞれの場合に、インプラントの空洞が、骨で完全に充実されるようにすることができる。あるいは、インプラント内の空洞を円柱状にしながらも、部分球状の外部支承部表面の中心から、ずらすこともできる。更に、これは、空洞に沿って半径方向の厚さが変化するインプラントの壁部を実現するものであり、例えば、空洞の底部の上方に固定された高さで、空洞の側面に沿って変化するものである。場合によっては、全てのインプラントが、同じ形状の内部空洞を有するが、異なるサイズの空洞を有し、かつ外部支承部表面が同じサイズであるようなインプラントのセットを有することが有利なこともある。従って、インプラントは、異なる厚さの壁部を有することになる。これにより、面再建されている大腿骨頭部のサイズに適応するように、インプラントを選択することが可能になる。
【0084】
図37を参照すると、本発明の更なる実施形態による寛骨臼カップ・インプラント900は、図21〜23の、それと同様であるが、この場合、カップの壁部902が、はるかに厚くなっている。壁部厚さが変化しうるが、この場合、それは、部分球状の内側支承部表面904の半径よりも大きい。これは、そのインプラントを、支承部表面を伴う大腿骨頭部インプラントと共に使用でき、その曲率半径は、図21〜23のそれよりも、はるかに小さいことを意味する。図37の実施形態では、カップの辺縁906は、図21〜23の実施形態と同じように、外形形成され、3つの隆起912と、3つの凹部、または間隔914とが、カップ壁部の全幅に渡って現れるように、その辺縁の内側および外側縁部908、910は、同じ外形形成に従う。
【0085】
図38を参照すると、更なる実施形態では、辺縁922の外側縁部920は、やはり同じ3つの隆起と、間隔とを有する同じ解剖学的外形形成に従うが、辺縁の内側縁部924は、平坦であり、円を形成する。従って、内部支承部表面926の高さは、その縁部に沿って一定である。カップの辺縁922の外形形成された形状は、その外側縁部920から内側縁部924へ次第に融合し、隆起および凹部の高さは、外側縁部920から内側縁部924へ次第に減少する。これにより、内部支承部表面の支承部区域を最大にし、接触区域の圧力を低減し、脱臼の危険性を低減するという効果が得られる。内側縁部924は、0ではないが、外側縁部920のそれよりも小さい外形形成角度を有しうることは理解されよう。
【0086】
図39を参照すると、更なる実施形態では、辺縁の内側縁部930は、平坦ではないが、外側縁部932と異なるやり方で更に外形形成されている。外形形成角度位置は、外側縁部930から内側縁部930で異なる。これにより、外側縁部932を、上記の実施形態と同様に、最適な解剖学的適合を提供するように外形形成することが可能となり、内側端部930を、大腿骨構成体の頚部の側面とカップの辺縁の内側縁部930との間でインピンジメントが起こらないような、カップに対する大腿骨インプラントの可動範囲を最大にするように外形形成することが可能となる。例えば、本実施形態では、内側縁部930は、その円周の大部分に沿って平坦だが、1つの凹部934を切除して、深く屈曲したときの頚部インピンジメントを低減する。図38の実施形態と同様に、辺縁は、外側縁部932と内側縁部930との間で、次第に融合して外形形成される。内側縁部930における凹部と隆起との数と角度配置は、外側縁部932の外形形成に依存しない複数の異なるやり方で変更できることは理解されよう。場合によっては、図37〜39の設計の2つ、または3つの基づく特徴を含むカップの設計を行うことも可能であり、例えば、カップの辺縁に沿った異なる点で、異なる設計を行うことも可能である。
【0087】
図40を参照すると、正常、もしくは少し形成異常の骨盤を伴う女性の股関節においては、臼蓋窩952の上側面領域950が、股関節中心954における角度として測定され、単に垂直方向Vから横方向に約35度で延在していることが一般的である。このため、大腿骨頭部956に対して、十分な支持を提供することができない。図41を参照すると、このような股関節に使用するために設計された寛骨臼カップ・インプラント960は、部分球状で、一定の曲率半径である内側支承部表面962を有するが、外側面964は、異なる機能を有する2つの主領域965、966を備える。最大領域965は、インプラントが適当な位置にあるとき、骨盤の骨に接触して設置されるように配設された骨界面領域である。小さい方の領域966は、外側面964の上縁部に沿って延在する延在領域であり、辺縁上の最高点で最も広く、前端および後端に向かって、テーパー状になっている。延在領域966は、それを覆う臼蓋窩の辺縁で骨盤骨の成長を促進するように配設され、臼蓋窩の強度と、インプラントに対して、それが提供する支持とを増大させるようになっている。この延在領域966は、骨界面領域965と同じ特性、すなわち同じ表面構造および曲率半径を有してもよく、従って、骨界面領域の延在部分を備えてもよい。しかしながら、実施形態によっては、それは、異なる特性を有する。場合によっては、それは、骨界面領域と異なる曲率半径を有してもよい。場合によっては、それは、それを覆う骨の成長を促進するように設計された異なる表面構造を有してもよい。本実施形態では、延在領域966は、マクロスケールおよびマイクロスケールで平滑、すなわち数ミクロンのスケール、例えば、10ミクロン以上で、そのサイズの表面特徴がない。場合によっては、それは、1ミクロンより大きな表面特徴がなくともよい。しかしながら、それは、ナノメートル・スケールで粗い、すなわち高さが1ミクロンよりも小さい表面特徴を有する。場合によっては、高さ500nm以下の表面特徴だけを有してもよい。これは、骨界面領域965と異なり、本実施形態では、1ミクロンより大きいスケールで粗いが、10ミクロンのスケールで、粗くすることができ、または、100ミクロン以上のマクロスケールで、骨との締まりばめを提供することができる。他の実施形態では、骨界面領域は、延在領域よりも、粗さをより少なくすること、あるいは、より小さいスケールでのみ粗くすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寛骨臼カップ・インプラントを骨盤に配置する方法であって、複数の参照点を前記骨盤上に配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記目標配置は、前記インプラントの目標位置および目標向きに関して、定義されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、前記参照点は、少なくとも、腸骨稜上の横方向に最も端にある点の1つと、腸骨翼上の最高点と、前記坐骨結節の最低点と、上後腸骨棘と、同側上前腸骨棘とを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
骨盤に接触して設置され、前記骨盤の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記骨盤の前記位置入力および画像を処理することによって、寛骨臼カップ・インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記カップ・インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの大腿骨の画像上で同定し、前記目標配置を前記参照位置に対して決定するように配設されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4、または請求項5に記載のシステムであって、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
大腿骨頭部面再建インプラントを大腿骨上に配置する方法であって、前記方法は、複数の参照点を前記大腿骨上で配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記目標配置は、前記インプラントの目標位置および目標向きに関して、定義されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の方法であって、前記参照点は、梨状陥凹上の点と、小転子上の点と、大腿骨頚部の後側上の点とのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
大腿骨に接触して設置され、前記大腿骨の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記大腿骨の前記位置入力および画像を処理して、大腿骨面再建インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの大腿骨の画像上で同定し、前記目標配置を参照点に対して決定するように配設されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10、または請求項11に記載のシステムであって、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
部分球状のカップを備える寛骨臼カップ・インプラントであって、前記インプラントの辺縁は、凹部を恥骨と座骨との間の配置に対して定義するように、前記カップに沿って高さが変化する寛骨臼カップ・インプラント。
【請求項14】
請求項13に記載のインプラントであって、前記辺縁は、更なる凹部を恥骨と腸骨との間の配置に対して定義することを特徴とするインプラント。
【請求項15】
請求項13、または14に記載のインプラントであって、前記辺縁は、更なる凹部を腸骨と坐骨との間の配置に対して定義することを特徴とするインプラント。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれかに記載のインプラントであって、辺縁が、高くなって、前記座骨の領域内の配置に対する坐骨の加工面を形成することを特徴とするインプラント。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップの高さが、同一のインプラントを左右の股関節に対して使用できるように、前記辺縁上の点について対称に変化することを特徴とするインプラント。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップの辺縁は、内側縁部と外側縁部とを有し、前記内側端部における前記辺縁に沿った高さの変化は、前記外側縁部の高さの変化と異なることを特徴とするインプラント。
【請求項19】
請求項18に記載のインプラントであって、前記内側縁部の高さの変化は、前記外側縁部よりも小さいことを特徴とするインプラント。
【請求項20】
請求項19に記載のインプラントであって、前記内側縁部の高さの変化は、実質的に0であることを特徴とするインプラント。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載のインプラントであって、前記内側縁部の隆起または凹部の個数または角度位置は、対応する前記外側縁部の個数または角度位置と異なることを特徴とするインプラント。
【請求項22】
請求項13〜21のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップは、骨盤の骨に接触するように配設された主骨界面領域と、臼蓋窩の上縁部を越えて延在するように配設された延在領域とを有する外側面を、有することを特徴とするインプラント。
【請求項23】
請求項22に記載のインプラントであって、前記延在領域は、少なくとも1つの前記主骨界面領域と異なる特質を有することを特徴とするインプラント。
【請求項24】
請求項23に記載のインプラントであって、前記特質は、曲率半径、または表面構造であることを特徴とするインプラント。
【請求項25】
大腿骨面再建インプラントであって、部分球状の外側面を有するカップ状の支承部と、前記インプラントを大腿骨上の適切な位置に支持する支持手段とを備え、前記支承部の辺縁は、前記支承部に沿って高さが変化することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項26】
請求項25に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記辺縁は、恥骨と座骨との間の寛骨臼カップの凹部と揃えて、内側への配置に対して凹部を定義することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項27】
請求項25または26に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記辺縁は、隆起を上部後方位置の配置に対して定義する凹状の部分と、前記大腿骨関節面の屈曲面および延在面を置き換えるように配設された2つの延在部とを有することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップの高さが、同一のインプラントを左右の股関節に対して使用できるように、前記辺縁上の点について対称に変化することを特徴とするインプラント。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれかに記載のインプラントであって、前記支承部表面と空洞の側面との間の前記支承部の厚さは、前記空洞の側面に沿って変化することを特徴とするインプラント。
【請求項30】
部分球状の外側面を有し、大腿骨のカット部を覆って適合するように配設された空洞を定義するカップ状の支承部を備える大腿骨面再建インプラントであって、前記支承部表面と前記空洞の側面との間の前記支承部の厚さは、前記空洞の側面に沿って変化する大腿骨面再建インプラント。
【請求項31】
請求項30に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記支承部の厚さは、前記空洞の底部の上方の固定された高さにおいて、前記空洞の側面に沿って変化することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項32】
請求項30または請求項31に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記空洞は、部分円柱状で、湾曲した側面と、平坦な側面とを有し、前記湾曲した側面に沿って前記支承部の厚さは一定で、前記平坦な側面の少なくとも一部に沿った前記支承部の厚さは、前記湾曲した側面に沿った前記支承部の厚さよりも大きいことを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項33】
請求項30〜32のいずれかに記載のインプラントの用に供する、大腿骨をカットするためのカッティング・ガイドであって、前記カッティング・ガイドは、前記大腿骨の円柱状カット部に沿って適合するように配設された配置面と、カッティング工具をガイドして前記円柱状カット部の一部を切除して、前記カット部が、前記インプラント内の前記空洞の形状に対応するように配設された少なくとも1つのガイド面とを有することを特徴とするカッティング・ガイド。
【請求項34】
請求項33に記載のカッティング・ガイドであって、前記カッティング・ガイドは、部分円柱管を備え、前記部分円柱管の内部面は、前記配置面を形成し、前記部分円柱管は、欠落部分を1つの側面に沿って有し、前記少なくとも1つのガイド面は、前記欠落部分の反対側に形成される2つのガイド面を備えることを特徴とするカッティング・ガイド。
【請求項35】
請求項30〜32のいずれかに記載のインプラントと、請求項33または請求項34に記載のカッティング・ガイドとを備えることを特徴とする大腿骨面再建キット。
【請求項36】
面再建の用に供する、大腿骨を加工するための加工工具であって、前記工具は、前記大腿骨における配置のための配置部材と、前記大腿骨をカットするためのカッター、前記カッターを支持し、前記配置部材を中心に前記カッターが回転できるように配設された支持手段と、前記大腿骨をカットする深さが変化するように、前記配置部材を中心に前記カッターを回転させながら、軸方向の前記カッターの動きを制御するように配設されたカムシステムとを備えることを特徴とする加工工具。
【請求項37】
請求項36に記載の工具であって、前記配置部材は、それに剛結合されたカムを有し、前記支持手段は、カム追従面を有し、前記カム追従面は、前記カム面に係合するように配設されることを特徴とする工具。
【請求項38】
請求項36または請求項37に記載の工具であって、前記支持手段は空洞を定義する中空ボディを備え、前記カッターは前記空洞を通って延在し、前記工具は、注入口手段と排出口手段とを更に備え、前記注入口手段と排出口手段とは、前記空洞に接続されて、前記空洞を通るように冷却剤を流して前記カッターを冷却できることを特徴とする工具。
【請求項39】
請求項36〜38のいずれかに記載の工具であって、前記支持手段は、前記配置部材に回転可能に備え付けられ、前記カッターを支える前記配置部材を中心に回転するように配設されることを特徴とする工具。
【請求項40】
請求項36〜39のいずれかに記載の工具であって、前記支持手段は、前記配置部材に対して軸方向に可動可能であり、前記カッターは、軸方向に前記支持手段に固定されていることを特徴とする工具。
【請求項41】
寛骨臼カップ・インプラントを操作するための工具であって、前記工具は、
その内部に形成された空洞と、前記インプラントの内部に適合するように配設されたドーム形の前面と、前記インプラントの内部に対して密封するように前記ドーム形の面の周辺に配設される密封手段とを有するフレキシブルな部材と、
前記フレキシブルな部材の後部を支持するための剛性支持手段と、
前記フレキシブルな部材の一部を前記インプラントから離れるように引き寄せて、前記インプラントと前記フレキシブルな部材との間に部分的な真空を発生させて、前記インプラントを前記フレキシブルな部材に確実に固定するように配設される引き寄せ手段とを備えることを特徴とする工具。
【請求項42】
請求項41に記載の工具であって、前記工具は、一方の端部にハンドルと、他方に前記支持手段とを有する支持シャフトを備え、前記引き寄せ手段は、前記支持シャフトに沿って可動可能であることを特徴とする工具。
【請求項43】
請求項42に記載の工具であって、前記支持シャフトは中空であり、前記引き寄せ手段は、前記支持シャフト内でスライド可能なロッドを備えることを特徴とする工具。
【請求項44】
請求項41〜43に記載の工具であって、前記フレキシブルな部材は、その上に外形形成された面を有し、前記外形形成された面は、前記インプラントの外形形成された辺縁と係合するように配設されることを特徴とする工具。
【請求項45】
請求項36〜44に記載の工具であって、前記工具の位置を示すように配設される誘導手段を更に備えることを特徴とする工具。
【請求項1】
寛骨臼カップ・インプラントを骨盤に配置する方法であって、複数の参照点を前記骨盤上に配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記目標配置は、前記インプラントの目標位置および目標向きに関して、定義されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、前記参照点は、少なくとも、腸骨稜上の横方向に最も端にある点の1つと、腸骨翼上の最高点と、前記坐骨結節の最低点と、上後腸骨棘と、同側上前腸骨棘とを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
骨盤に接触して設置され、前記骨盤の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記骨盤の前記位置入力および画像を処理することによって、寛骨臼カップ・インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記カップ・インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの大腿骨の画像上で同定し、前記目標配置を前記参照位置に対して決定するように配設されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4、または請求項5に記載のシステムであって、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
大腿骨頭部面再建インプラントを大腿骨上に配置する方法であって、前記方法は、複数の参照点を前記大腿骨上で配置する工程と、前記インプラントの目標配置を前記参照点に対して定義する工程と、前記インプラントを前記目標配置に設置する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記目標配置は、前記インプラントの目標位置および目標向きに関して、定義されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の方法であって、前記参照点は、梨状陥凹上の点と、小転子上の点と、大腿骨頚部の後側上の点とのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
大腿骨に接触して設置され、前記大腿骨の位置を示す位置入力を提供するように配設された配置装置と、前記大腿骨の前記位置入力および画像を処理して、大腿骨面再建インプラントに対する目標配置を決定するように配設された処理手段と、使用者が前記インプラントを前記目標配置に設置するのを指導するための案内を提供するように配設されたユーザーインターフェースとを備えることを特徴とする外科手術ガイダンス・システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記処理手段は、参照位置を少なくとも1つの大腿骨の画像上で同定し、前記目標配置を参照点に対して決定するように配設されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10、または請求項11に記載のシステムであって、使用者が前記参照位置を前記画像上で配置できるように配設されたユーザー入力手段を、更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
部分球状のカップを備える寛骨臼カップ・インプラントであって、前記インプラントの辺縁は、凹部を恥骨と座骨との間の配置に対して定義するように、前記カップに沿って高さが変化する寛骨臼カップ・インプラント。
【請求項14】
請求項13に記載のインプラントであって、前記辺縁は、更なる凹部を恥骨と腸骨との間の配置に対して定義することを特徴とするインプラント。
【請求項15】
請求項13、または14に記載のインプラントであって、前記辺縁は、更なる凹部を腸骨と坐骨との間の配置に対して定義することを特徴とするインプラント。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれかに記載のインプラントであって、辺縁が、高くなって、前記座骨の領域内の配置に対する坐骨の加工面を形成することを特徴とするインプラント。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップの高さが、同一のインプラントを左右の股関節に対して使用できるように、前記辺縁上の点について対称に変化することを特徴とするインプラント。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップの辺縁は、内側縁部と外側縁部とを有し、前記内側端部における前記辺縁に沿った高さの変化は、前記外側縁部の高さの変化と異なることを特徴とするインプラント。
【請求項19】
請求項18に記載のインプラントであって、前記内側縁部の高さの変化は、前記外側縁部よりも小さいことを特徴とするインプラント。
【請求項20】
請求項19に記載のインプラントであって、前記内側縁部の高さの変化は、実質的に0であることを特徴とするインプラント。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載のインプラントであって、前記内側縁部の隆起または凹部の個数または角度位置は、対応する前記外側縁部の個数または角度位置と異なることを特徴とするインプラント。
【請求項22】
請求項13〜21のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップは、骨盤の骨に接触するように配設された主骨界面領域と、臼蓋窩の上縁部を越えて延在するように配設された延在領域とを有する外側面を、有することを特徴とするインプラント。
【請求項23】
請求項22に記載のインプラントであって、前記延在領域は、少なくとも1つの前記主骨界面領域と異なる特質を有することを特徴とするインプラント。
【請求項24】
請求項23に記載のインプラントであって、前記特質は、曲率半径、または表面構造であることを特徴とするインプラント。
【請求項25】
大腿骨面再建インプラントであって、部分球状の外側面を有するカップ状の支承部と、前記インプラントを大腿骨上の適切な位置に支持する支持手段とを備え、前記支承部の辺縁は、前記支承部に沿って高さが変化することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項26】
請求項25に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記辺縁は、恥骨と座骨との間の寛骨臼カップの凹部と揃えて、内側への配置に対して凹部を定義することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項27】
請求項25または26に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記辺縁は、隆起を上部後方位置の配置に対して定義する凹状の部分と、前記大腿骨関節面の屈曲面および延在面を置き換えるように配設された2つの延在部とを有することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれかに記載のインプラントであって、前記カップの高さが、同一のインプラントを左右の股関節に対して使用できるように、前記辺縁上の点について対称に変化することを特徴とするインプラント。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれかに記載のインプラントであって、前記支承部表面と空洞の側面との間の前記支承部の厚さは、前記空洞の側面に沿って変化することを特徴とするインプラント。
【請求項30】
部分球状の外側面を有し、大腿骨のカット部を覆って適合するように配設された空洞を定義するカップ状の支承部を備える大腿骨面再建インプラントであって、前記支承部表面と前記空洞の側面との間の前記支承部の厚さは、前記空洞の側面に沿って変化する大腿骨面再建インプラント。
【請求項31】
請求項30に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記支承部の厚さは、前記空洞の底部の上方の固定された高さにおいて、前記空洞の側面に沿って変化することを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項32】
請求項30または請求項31に記載の大腿骨面再建インプラントであって、前記空洞は、部分円柱状で、湾曲した側面と、平坦な側面とを有し、前記湾曲した側面に沿って前記支承部の厚さは一定で、前記平坦な側面の少なくとも一部に沿った前記支承部の厚さは、前記湾曲した側面に沿った前記支承部の厚さよりも大きいことを特徴とする大腿骨面再建インプラント。
【請求項33】
請求項30〜32のいずれかに記載のインプラントの用に供する、大腿骨をカットするためのカッティング・ガイドであって、前記カッティング・ガイドは、前記大腿骨の円柱状カット部に沿って適合するように配設された配置面と、カッティング工具をガイドして前記円柱状カット部の一部を切除して、前記カット部が、前記インプラント内の前記空洞の形状に対応するように配設された少なくとも1つのガイド面とを有することを特徴とするカッティング・ガイド。
【請求項34】
請求項33に記載のカッティング・ガイドであって、前記カッティング・ガイドは、部分円柱管を備え、前記部分円柱管の内部面は、前記配置面を形成し、前記部分円柱管は、欠落部分を1つの側面に沿って有し、前記少なくとも1つのガイド面は、前記欠落部分の反対側に形成される2つのガイド面を備えることを特徴とするカッティング・ガイド。
【請求項35】
請求項30〜32のいずれかに記載のインプラントと、請求項33または請求項34に記載のカッティング・ガイドとを備えることを特徴とする大腿骨面再建キット。
【請求項36】
面再建の用に供する、大腿骨を加工するための加工工具であって、前記工具は、前記大腿骨における配置のための配置部材と、前記大腿骨をカットするためのカッター、前記カッターを支持し、前記配置部材を中心に前記カッターが回転できるように配設された支持手段と、前記大腿骨をカットする深さが変化するように、前記配置部材を中心に前記カッターを回転させながら、軸方向の前記カッターの動きを制御するように配設されたカムシステムとを備えることを特徴とする加工工具。
【請求項37】
請求項36に記載の工具であって、前記配置部材は、それに剛結合されたカムを有し、前記支持手段は、カム追従面を有し、前記カム追従面は、前記カム面に係合するように配設されることを特徴とする工具。
【請求項38】
請求項36または請求項37に記載の工具であって、前記支持手段は空洞を定義する中空ボディを備え、前記カッターは前記空洞を通って延在し、前記工具は、注入口手段と排出口手段とを更に備え、前記注入口手段と排出口手段とは、前記空洞に接続されて、前記空洞を通るように冷却剤を流して前記カッターを冷却できることを特徴とする工具。
【請求項39】
請求項36〜38のいずれかに記載の工具であって、前記支持手段は、前記配置部材に回転可能に備え付けられ、前記カッターを支える前記配置部材を中心に回転するように配設されることを特徴とする工具。
【請求項40】
請求項36〜39のいずれかに記載の工具であって、前記支持手段は、前記配置部材に対して軸方向に可動可能であり、前記カッターは、軸方向に前記支持手段に固定されていることを特徴とする工具。
【請求項41】
寛骨臼カップ・インプラントを操作するための工具であって、前記工具は、
その内部に形成された空洞と、前記インプラントの内部に適合するように配設されたドーム形の前面と、前記インプラントの内部に対して密封するように前記ドーム形の面の周辺に配設される密封手段とを有するフレキシブルな部材と、
前記フレキシブルな部材の後部を支持するための剛性支持手段と、
前記フレキシブルな部材の一部を前記インプラントから離れるように引き寄せて、前記インプラントと前記フレキシブルな部材との間に部分的な真空を発生させて、前記インプラントを前記フレキシブルな部材に確実に固定するように配設される引き寄せ手段とを備えることを特徴とする工具。
【請求項42】
請求項41に記載の工具であって、前記工具は、一方の端部にハンドルと、他方に前記支持手段とを有する支持シャフトを備え、前記引き寄せ手段は、前記支持シャフトに沿って可動可能であることを特徴とする工具。
【請求項43】
請求項42に記載の工具であって、前記支持シャフトは中空であり、前記引き寄せ手段は、前記支持シャフト内でスライド可能なロッドを備えることを特徴とする工具。
【請求項44】
請求項41〜43に記載の工具であって、前記フレキシブルな部材は、その上に外形形成された面を有し、前記外形形成された面は、前記インプラントの外形形成された辺縁と係合するように配設されることを特徴とする工具。
【請求項45】
請求項36〜44に記載の工具であって、前記工具の位置を示すように配設される誘導手段を更に備えることを特徴とする工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17a】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17a】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公表番号】特表2012−507380(P2012−507380A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535168(P2011−535168)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051488
【国際公開番号】WO2010/052500
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(505167543)インペリアル・イノベ−ションズ・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051488
【国際公開番号】WO2010/052500
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(505167543)インペリアル・イノベ−ションズ・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】
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