肥料散布機の肥料の繰出装置
【課題】粉状・粒状の肥料を精度よく散布し得るようにするため、肥料ホッパの底板部に、開設する繰出穴を、横向きの凸字状の形状に形成している肥料散布機の肥料の繰出装置を、完熟有機肥料を散布する際に、この横向き凸字状の繰出穴の先端側の細巾部に目詰りを生ぜしめず、かつ、繰出穴からの肥料の繰り出しを、作業速度の低下をきたさない充分な繰出量で排出させ得るように構成する。
【解決手段】底板部分に形設する横向き凸字形の繰出穴を、それの基端側の拡巾部にあっては、左右方向の開口巾がシャッタ板に設ける角穴状のシャッタ穴の左右方向の開口巾に略対応し、前後方向の開口巾がシャッタ穴の前後方向の開口巾に略対応する形態とし、先端側の細巾部にあっては、前記拡巾部の前後の略中央部位から、前後の開口巾を狭くした細い巾で、シャッタ穴の左右の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成して底板に開設する。
【解決手段】底板部分に形設する横向き凸字形の繰出穴を、それの基端側の拡巾部にあっては、左右方向の開口巾がシャッタ板に設ける角穴状のシャッタ穴の左右方向の開口巾に略対応し、前後方向の開口巾がシャッタ穴の前後方向の開口巾に略対応する形態とし、先端側の細巾部にあっては、前記拡巾部の前後の略中央部位から、前後の開口巾を狭くした細い巾で、シャッタ穴の左右の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成して底板に開設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの機体に取り付け装架する肥料ホッパ内に投入した肥料を、肥料ホッパの底板に設けた繰出穴から排出させて散布するライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機において、肥料ホッパ内の肥料を、繰出穴から繰り出す繰出装置についての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機Aは、通常、図1に示しているように、前面側(図において左面側)にトラクタ(図示省略)に対し連結装架するための連結ヒッチ部10を装備せしめた機体フレーム1の後面側に、左右方向に横長に形成した肥料ホッパ2を装架し、その肥料ホッパ2の底部に、内部に投入した化成肥料を繰り出す繰出穴3と、その繰出穴3の開口度を調整するシャッタ穴40を具備するシャッタ板4とを設け、肥料ホッパ2の内部には、その内部に投入した化成肥料を攪拌流動させるアジテータ5を設けて構成してある。
【0003】
この形態の肥料散布機Aの、肥料を繰出穴3から散布口となるシャッタ穴40に繰り出す繰出装置は、肥料ホッパ2の底部の、前後巾が狭く左右に長い樋状に形成された底板部分20に、図2にあるように、シャッタ板4のスライド方向となる左右方向の一半側(図2において右半側)が前後巾の狭い細巾部3aで、他半側が前後巾の広い拡巾部3bとなる横向きの凸字状の形状とした繰出穴3を、所定のピッチ間隔で左右方向に並列させて開設しておき、底板部分20の下面側には、左右方向にスライドするシャッタ板4を設け、このシャッタ板4に、図3にあるよう前後方向の開口巾d2が、前記繰出穴3の拡巾部3bの前後方向の開口巾d1に略対応し、左右方向の開口巾L2が、前記繰出穴3の細巾部3aの先端から拡巾部3bの基端に至る左右方向の開口巾L1に略対応する四角な角穴状のシャッタ穴40を、前述の繰出穴3の間隔ピッチに対応する間隔ピッチで並列させて開設しておいて、
シャッタ板4を、図4にあるよう所定位置に引き出しているときは、シャッタ穴40が、底板部分20に並列させて開設してある繰出穴3の下面から外れた位置を占めて、繰出穴3の開口度を全閉とし、
シャッタ板4を少し差し込んで、図5にあるようシャッタ穴40が、左右の開口巾の略半分を繰出穴3の左右の開口長さの略半分に重合する状態としたときは、繰出穴3の細巾部3aだけを開口状態とし、
シャッタ板4を限度まで差し込んで、図6にあるようシャッタ穴40が、繰出穴3の下面にそっくり重合する状態としたときは、繰出穴3の細巾部3aと拡巾部3bとの全部が開口した状態とするようにした構成のものとしている。
【0004】
そして、この肥料の繰出装置の上方で、肥料ホッパ2内の下部に、左右方向の軸により回転するアジテータ軸50に、攪拌羽根51を、前述の底板部分20に設けた繰出穴3のそれぞれに対応する間隔ピッチで並列させて装架したアジテータ5を装架して、肥料の繰出穴3からの排出を均一にするようにしている。
【0005】
このように構成されるライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機における肥料の繰出装置は、粉状や粒状の化成肥料の散布を対象として開発されているもので、粉状や粒状の肥料の散布は精度よく行えるが、散布する肥料に、完熟有機肥を用いたときは、この完熟有機肥料が、肥料成分が少ないことで、面積当たりの散布量を多くしなければならないことと、流動性が悪いことから、開口穴の繰出穴からの繰出量の制約により作業速度を遅くして作業効率を低下させ、また、繰出穴に目詰りを起こし易く、散布精度、散布量にバラツキを生ぜしめる問題がでてくる。
【0006】
特に、粉状・粒状の肥料を精度よく散布するため、横向きの凸字状に形成した繰出穴3の先端側の細巾部3aの部分が、目詰りを起こし易く、散布量にバラツキを生ぜしめる原因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明において解決しようとする課題は、粉状・粒状の肥料を精度よく散布し得るようにするため、肥料ホッパの底板部に、開設する繰出穴を、横向きの凸字状の形状に形成している肥料散布機の肥料の繰出装置を、完熟有機肥料を散布する際に、この横向き凸字状の繰出穴の先端側の細巾部に目詰りを生ぜしめず、かつ、繰出穴からの肥料の繰り出しを、作業速度の低下をきたさない充分な繰出量で排出させ得るように構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するための手段として、本発明においては、肥料ホッパの底板部分に、肥料を繰り出す繰出穴を横向きの凸字状に形成して開設し、この底板部分の下面側に、繰出穴の開度を調整する四角な角穴状のシャッタ穴を開設せるシャッタ板をスライド自在に設けている肥料散布機の肥料の繰出装置において、底板部分20に形設する横向き凸字形の繰出穴3を、それの基端側の拡巾部3bにあっては、左右方向の開口巾L1がシャッタ板4に設ける角穴状のシャッタ穴40の左右方向の開口巾L2に略対応し、前後方向の開口巾d1がシャッタ穴40の前後方向の開口巾d2に略対応する形態とし、先端側の細巾部3aにあっては、前記拡巾部3bの前後の略中央部位から、前後の開口巾を狭くした細い巾で、シャッタ穴40の左右の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成して底板部分20に開設したことを特徴とする肥料散布機の肥料の繰出装置を提起するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明手段による肥料散布機における肥料の散布装置は、シャッタ板4が少し引き出された位置にあって、シャッタ穴40が、底板部分20に設けた繰出穴3の下面から外れた位置を占めている状態時には、繰出穴3は全閉され、シャッタ板4を少し差し込んで、シャッタ穴40が繰出穴3の細巾部3aの下面に重合する状態とすれば、繰出穴3の細巾部3aだけが開口し小量散布に適応する状態となり、シャッタ板4をさらに差し込んで、シャッタ穴40が繰出穴3の拡巾部3bの下面に重合する状態とすれば、繰出穴3の拡巾部3bがそっくり開口して、大量散布に適応する状態となる。このとき、繰出穴3の細巾部3aは、シャッタ穴40から外れた位置を占め閉じられた状態となるから、大量散布時に細巾部に生じる目詰りをないものとする。
【0010】
このことから、粉状・粒状の肥料の小量散布が精度よく行え、また完熟有機肥料の大量散布が、目詰りを生ぜしめずに精度よく行えるようになる。しかも、拡巾部の開口面積が拡げられているので、シャッタ穴40からの散布量を大きくでき、完熟有機肥料を大量散布するときの作業効率を低下させないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機の側面図である。
【図2】同上の肥料散布機の、肥料ホッパの底部の展開した説明図である。
【図3】同上肥料ホッパ底部の一部の拡大図で、底部に設けられる繰出穴及びシャッタ穴の形態を示す説明図である。
【図4】同上肥料ホッパの底部の、シャッタ板が基準位置に引き出されて、繰出穴がシャッタ板により全閉状態に閉じられている状態を示す、展開した説明図である。
【図5】同上肥料ホッパの底部の、シャッタ板が少し差し込まれて、シャッタ穴が繰出穴の先端側の細巾部の下面だけに重合して、その繰出穴の細巾部を開口させた状態を示す、展開した説明図である。
【図6】シャッタ板が深く差し込まれて、シャッタ穴が繰出穴の全域の下面に重合して、繰出穴を全開した状態を示す同上肥料ホッパの底部の展開した説明図である。
【図7】本発明手段による肥料散布機における肥料の繰出装置の、繰出穴を開設した肥料ホッパの底板部とシャッタ穴を開設したシャッタ板との各一部の平面図である。
【図8】同上肥料散布機における肥料の繰出装置の、肥料ホッパの底板部に設ける繰出穴の形状・大きさとシャッタ板に開設するシャッタ穴の形状・大きさとの関係を説明する説明図である。
【図9】同上肥料散布機の肥料の繰出装置の、繰出穴の開度をシャッタ板のスライドにより調整したときの、繰出穴の開口部位の位置とアジャスタ軸に設けた攪拌羽根の位置との関係位置を説明するため肥料ホッパの底部を展開した説明図で、シャッタ板を基準位置まで引き出して繰出穴を全閉としている状態を示す。
【図10】同上の肥料ホッパの底部を展開した説明図で、シャッタ板を少し差し込み、シャッタ穴が繰出穴の細巾部とだけ重合して、繰出穴を小量散布に適応する開口度とした状態を示す。
【図11】同上の説明図で、シャッタ板を限度まで深く差し込み、繰出穴の拡巾部の全てを開口させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に実施の態様を、実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0013】
図7の(イ)において、20は、ライムソワー型の肥料散布機の肥料ホッパ2の底板部分、3は、その底板部分に所定のピッチ間隔をもって多連に並列させて開設した繰出穴を示し、また同7図の(ロ)において、4は前記肥料ホッパ2の底板部分の下面側にスライド自在に装架されるシャッタ板、40はそのシャッタ板に、前述の繰出穴3の間隔ピッチと対応する間隔ピッチをもって多連に並列させて開設したシャッタ穴を示す。
【0014】
肥料ホッパ2の底板部分20は、図1に示す従前の肥料散布機の肥料ホッパ2の底板部分20と同様に樋状に形成したものである。
【0015】
この底板部分20に多連に並列させて開設する繰出穴3は、従前手段の繰出穴3と同様に、シャッタ板4の引き出し方向を基準としてその方向の先端側(図において右端側)が、前後(図において上下)の巾を狭くした細巾部3aで、基端側が前後の巾を拡げた拡巾部3bとなる横向きの凸字状の形状に形成するが、それの基端側の拡巾部3bは、左右方向の開口巾L1が、シャッタ板4に設けられる角穴状のシャッタ穴40の左右方向の開口巾L2に略対応し、前後方向の開口巾d1が、前記シャッタ穴40の前後方向の開口巾d2に略対応する形態に形成し、また、この拡巾部3bの先端側で前後の中間部位から細巾に突出するように設ける先端側の細巾部3aにあっては、拡巾部3bの先端側の前後の略中央部位から前後の巾を狭くした細い巾で、従前手段における繰出穴3の細巾部3aと同様に、シャッタ穴40の左右方向の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成する。
【0016】
そして、これにより、シャッタ板4が規定位置に引き出されているときは、図8の(イ)に示しているように、シャッタ穴40が繰出穴3の下面からずれて位置して、繰出穴3をシャッタ板4により全閉した状態とし、また、シャッタ板4を少し差し込んだときは、図8の(ロ)に示しているように、シャッタ穴40の左半側が繰出穴3の細巾部3aの基端部位の下面位置まで進み、その細巾部3aだけを開口させた状態とし、さらに、シャッタ板4を限度位置まで差し込んだときは、図8の(ハ)に示しているように、シャッタ穴40が、繰出穴3の拡巾部3bの下面と重合する位置に進み、繰出穴3の拡巾部3bをそっくり開口させ、かつ、繰出穴3の細巾部3aを、シャッタ穴40の下面からずり出させ、この細巾部3aがシャッタ板4で閉じられた状態とするように構成している。
【0017】
そして、このような形態として肥料ホッパ2の底板部分20に設ける繰出穴3は、肥料ホッパ2内の底部で繰出穴3の上方位置に、その繰出穴3からの肥料の繰り出しを均一にして散布精度を良好に保持さすために装架するアジテータの攪拌羽根51との位置関係においては、図9に示しているように、アジテータ軸50に多連に並列させて装架する攪拌羽根51の回転による肥料の攪拌部位が、底板部分20に開設する繰出穴3の細巾部3aに略対応してくるように、位置を設定して設けている。
【0018】
このことから、攪拌羽根51による肥料の攪拌作用は、図10にあるように、繰出穴3の細巾部3aだけをシャッタ穴40により開口させて小量散布とした状態時には、肥料の繰出穴3からの繰り出しを均一化して散布精度を向上させるように作用するが、図11にあるように、繰出穴3の拡巾部3bを全開し、細巾部3aを閉じた大量散布の状態時には、攪拌羽根51の攪拌作用部位が、閉じた細巾部3aの上方に位置することになって、殆ど攪拌作用の効果が得られないようになっている。
【0019】
従って、この実施例では、粉状・粒状の化成肥料を小量散布するときだけ、攪拌羽根51による均一化、散布精度の向上の効果が得られることになる。
【符号の説明】
【0020】
A 肥料散布機
L1 L2 左右方向の開口巾
d1 d2 前後方向の開口巾
1 機体フレーム
10 連結ヒッチ部
2 肥料ホッパ
20 底板部分
3 繰出穴
3a 細巾部
3b 拡巾部
4 シャッタ板
40 シャッタ穴
5 アジテータ
50 アジテータ軸
51 攪拌羽根
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの機体に取り付け装架する肥料ホッパ内に投入した肥料を、肥料ホッパの底板に設けた繰出穴から排出させて散布するライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機において、肥料ホッパ内の肥料を、繰出穴から繰り出す繰出装置についての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機Aは、通常、図1に示しているように、前面側(図において左面側)にトラクタ(図示省略)に対し連結装架するための連結ヒッチ部10を装備せしめた機体フレーム1の後面側に、左右方向に横長に形成した肥料ホッパ2を装架し、その肥料ホッパ2の底部に、内部に投入した化成肥料を繰り出す繰出穴3と、その繰出穴3の開口度を調整するシャッタ穴40を具備するシャッタ板4とを設け、肥料ホッパ2の内部には、その内部に投入した化成肥料を攪拌流動させるアジテータ5を設けて構成してある。
【0003】
この形態の肥料散布機Aの、肥料を繰出穴3から散布口となるシャッタ穴40に繰り出す繰出装置は、肥料ホッパ2の底部の、前後巾が狭く左右に長い樋状に形成された底板部分20に、図2にあるように、シャッタ板4のスライド方向となる左右方向の一半側(図2において右半側)が前後巾の狭い細巾部3aで、他半側が前後巾の広い拡巾部3bとなる横向きの凸字状の形状とした繰出穴3を、所定のピッチ間隔で左右方向に並列させて開設しておき、底板部分20の下面側には、左右方向にスライドするシャッタ板4を設け、このシャッタ板4に、図3にあるよう前後方向の開口巾d2が、前記繰出穴3の拡巾部3bの前後方向の開口巾d1に略対応し、左右方向の開口巾L2が、前記繰出穴3の細巾部3aの先端から拡巾部3bの基端に至る左右方向の開口巾L1に略対応する四角な角穴状のシャッタ穴40を、前述の繰出穴3の間隔ピッチに対応する間隔ピッチで並列させて開設しておいて、
シャッタ板4を、図4にあるよう所定位置に引き出しているときは、シャッタ穴40が、底板部分20に並列させて開設してある繰出穴3の下面から外れた位置を占めて、繰出穴3の開口度を全閉とし、
シャッタ板4を少し差し込んで、図5にあるようシャッタ穴40が、左右の開口巾の略半分を繰出穴3の左右の開口長さの略半分に重合する状態としたときは、繰出穴3の細巾部3aだけを開口状態とし、
シャッタ板4を限度まで差し込んで、図6にあるようシャッタ穴40が、繰出穴3の下面にそっくり重合する状態としたときは、繰出穴3の細巾部3aと拡巾部3bとの全部が開口した状態とするようにした構成のものとしている。
【0004】
そして、この肥料の繰出装置の上方で、肥料ホッパ2内の下部に、左右方向の軸により回転するアジテータ軸50に、攪拌羽根51を、前述の底板部分20に設けた繰出穴3のそれぞれに対応する間隔ピッチで並列させて装架したアジテータ5を装架して、肥料の繰出穴3からの排出を均一にするようにしている。
【0005】
このように構成されるライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機における肥料の繰出装置は、粉状や粒状の化成肥料の散布を対象として開発されているもので、粉状や粒状の肥料の散布は精度よく行えるが、散布する肥料に、完熟有機肥を用いたときは、この完熟有機肥料が、肥料成分が少ないことで、面積当たりの散布量を多くしなければならないことと、流動性が悪いことから、開口穴の繰出穴からの繰出量の制約により作業速度を遅くして作業効率を低下させ、また、繰出穴に目詰りを起こし易く、散布精度、散布量にバラツキを生ぜしめる問題がでてくる。
【0006】
特に、粉状・粒状の肥料を精度よく散布するため、横向きの凸字状に形成した繰出穴3の先端側の細巾部3aの部分が、目詰りを起こし易く、散布量にバラツキを生ぜしめる原因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明において解決しようとする課題は、粉状・粒状の肥料を精度よく散布し得るようにするため、肥料ホッパの底板部に、開設する繰出穴を、横向きの凸字状の形状に形成している肥料散布機の肥料の繰出装置を、完熟有機肥料を散布する際に、この横向き凸字状の繰出穴の先端側の細巾部に目詰りを生ぜしめず、かつ、繰出穴からの肥料の繰り出しを、作業速度の低下をきたさない充分な繰出量で排出させ得るように構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するための手段として、本発明においては、肥料ホッパの底板部分に、肥料を繰り出す繰出穴を横向きの凸字状に形成して開設し、この底板部分の下面側に、繰出穴の開度を調整する四角な角穴状のシャッタ穴を開設せるシャッタ板をスライド自在に設けている肥料散布機の肥料の繰出装置において、底板部分20に形設する横向き凸字形の繰出穴3を、それの基端側の拡巾部3bにあっては、左右方向の開口巾L1がシャッタ板4に設ける角穴状のシャッタ穴40の左右方向の開口巾L2に略対応し、前後方向の開口巾d1がシャッタ穴40の前後方向の開口巾d2に略対応する形態とし、先端側の細巾部3aにあっては、前記拡巾部3bの前後の略中央部位から、前後の開口巾を狭くした細い巾で、シャッタ穴40の左右の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成して底板部分20に開設したことを特徴とする肥料散布機の肥料の繰出装置を提起するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明手段による肥料散布機における肥料の散布装置は、シャッタ板4が少し引き出された位置にあって、シャッタ穴40が、底板部分20に設けた繰出穴3の下面から外れた位置を占めている状態時には、繰出穴3は全閉され、シャッタ板4を少し差し込んで、シャッタ穴40が繰出穴3の細巾部3aの下面に重合する状態とすれば、繰出穴3の細巾部3aだけが開口し小量散布に適応する状態となり、シャッタ板4をさらに差し込んで、シャッタ穴40が繰出穴3の拡巾部3bの下面に重合する状態とすれば、繰出穴3の拡巾部3bがそっくり開口して、大量散布に適応する状態となる。このとき、繰出穴3の細巾部3aは、シャッタ穴40から外れた位置を占め閉じられた状態となるから、大量散布時に細巾部に生じる目詰りをないものとする。
【0010】
このことから、粉状・粒状の肥料の小量散布が精度よく行え、また完熟有機肥料の大量散布が、目詰りを生ぜしめずに精度よく行えるようになる。しかも、拡巾部の開口面積が拡げられているので、シャッタ穴40からの散布量を大きくでき、完熟有機肥料を大量散布するときの作業効率を低下させないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ライムソワーと呼ばれる形態の肥料散布機の側面図である。
【図2】同上の肥料散布機の、肥料ホッパの底部の展開した説明図である。
【図3】同上肥料ホッパ底部の一部の拡大図で、底部に設けられる繰出穴及びシャッタ穴の形態を示す説明図である。
【図4】同上肥料ホッパの底部の、シャッタ板が基準位置に引き出されて、繰出穴がシャッタ板により全閉状態に閉じられている状態を示す、展開した説明図である。
【図5】同上肥料ホッパの底部の、シャッタ板が少し差し込まれて、シャッタ穴が繰出穴の先端側の細巾部の下面だけに重合して、その繰出穴の細巾部を開口させた状態を示す、展開した説明図である。
【図6】シャッタ板が深く差し込まれて、シャッタ穴が繰出穴の全域の下面に重合して、繰出穴を全開した状態を示す同上肥料ホッパの底部の展開した説明図である。
【図7】本発明手段による肥料散布機における肥料の繰出装置の、繰出穴を開設した肥料ホッパの底板部とシャッタ穴を開設したシャッタ板との各一部の平面図である。
【図8】同上肥料散布機における肥料の繰出装置の、肥料ホッパの底板部に設ける繰出穴の形状・大きさとシャッタ板に開設するシャッタ穴の形状・大きさとの関係を説明する説明図である。
【図9】同上肥料散布機の肥料の繰出装置の、繰出穴の開度をシャッタ板のスライドにより調整したときの、繰出穴の開口部位の位置とアジャスタ軸に設けた攪拌羽根の位置との関係位置を説明するため肥料ホッパの底部を展開した説明図で、シャッタ板を基準位置まで引き出して繰出穴を全閉としている状態を示す。
【図10】同上の肥料ホッパの底部を展開した説明図で、シャッタ板を少し差し込み、シャッタ穴が繰出穴の細巾部とだけ重合して、繰出穴を小量散布に適応する開口度とした状態を示す。
【図11】同上の説明図で、シャッタ板を限度まで深く差し込み、繰出穴の拡巾部の全てを開口させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に実施の態様を、実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0013】
図7の(イ)において、20は、ライムソワー型の肥料散布機の肥料ホッパ2の底板部分、3は、その底板部分に所定のピッチ間隔をもって多連に並列させて開設した繰出穴を示し、また同7図の(ロ)において、4は前記肥料ホッパ2の底板部分の下面側にスライド自在に装架されるシャッタ板、40はそのシャッタ板に、前述の繰出穴3の間隔ピッチと対応する間隔ピッチをもって多連に並列させて開設したシャッタ穴を示す。
【0014】
肥料ホッパ2の底板部分20は、図1に示す従前の肥料散布機の肥料ホッパ2の底板部分20と同様に樋状に形成したものである。
【0015】
この底板部分20に多連に並列させて開設する繰出穴3は、従前手段の繰出穴3と同様に、シャッタ板4の引き出し方向を基準としてその方向の先端側(図において右端側)が、前後(図において上下)の巾を狭くした細巾部3aで、基端側が前後の巾を拡げた拡巾部3bとなる横向きの凸字状の形状に形成するが、それの基端側の拡巾部3bは、左右方向の開口巾L1が、シャッタ板4に設けられる角穴状のシャッタ穴40の左右方向の開口巾L2に略対応し、前後方向の開口巾d1が、前記シャッタ穴40の前後方向の開口巾d2に略対応する形態に形成し、また、この拡巾部3bの先端側で前後の中間部位から細巾に突出するように設ける先端側の細巾部3aにあっては、拡巾部3bの先端側の前後の略中央部位から前後の巾を狭くした細い巾で、従前手段における繰出穴3の細巾部3aと同様に、シャッタ穴40の左右方向の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成する。
【0016】
そして、これにより、シャッタ板4が規定位置に引き出されているときは、図8の(イ)に示しているように、シャッタ穴40が繰出穴3の下面からずれて位置して、繰出穴3をシャッタ板4により全閉した状態とし、また、シャッタ板4を少し差し込んだときは、図8の(ロ)に示しているように、シャッタ穴40の左半側が繰出穴3の細巾部3aの基端部位の下面位置まで進み、その細巾部3aだけを開口させた状態とし、さらに、シャッタ板4を限度位置まで差し込んだときは、図8の(ハ)に示しているように、シャッタ穴40が、繰出穴3の拡巾部3bの下面と重合する位置に進み、繰出穴3の拡巾部3bをそっくり開口させ、かつ、繰出穴3の細巾部3aを、シャッタ穴40の下面からずり出させ、この細巾部3aがシャッタ板4で閉じられた状態とするように構成している。
【0017】
そして、このような形態として肥料ホッパ2の底板部分20に設ける繰出穴3は、肥料ホッパ2内の底部で繰出穴3の上方位置に、その繰出穴3からの肥料の繰り出しを均一にして散布精度を良好に保持さすために装架するアジテータの攪拌羽根51との位置関係においては、図9に示しているように、アジテータ軸50に多連に並列させて装架する攪拌羽根51の回転による肥料の攪拌部位が、底板部分20に開設する繰出穴3の細巾部3aに略対応してくるように、位置を設定して設けている。
【0018】
このことから、攪拌羽根51による肥料の攪拌作用は、図10にあるように、繰出穴3の細巾部3aだけをシャッタ穴40により開口させて小量散布とした状態時には、肥料の繰出穴3からの繰り出しを均一化して散布精度を向上させるように作用するが、図11にあるように、繰出穴3の拡巾部3bを全開し、細巾部3aを閉じた大量散布の状態時には、攪拌羽根51の攪拌作用部位が、閉じた細巾部3aの上方に位置することになって、殆ど攪拌作用の効果が得られないようになっている。
【0019】
従って、この実施例では、粉状・粒状の化成肥料を小量散布するときだけ、攪拌羽根51による均一化、散布精度の向上の効果が得られることになる。
【符号の説明】
【0020】
A 肥料散布機
L1 L2 左右方向の開口巾
d1 d2 前後方向の開口巾
1 機体フレーム
10 連結ヒッチ部
2 肥料ホッパ
20 底板部分
3 繰出穴
3a 細巾部
3b 拡巾部
4 シャッタ板
40 シャッタ穴
5 アジテータ
50 アジテータ軸
51 攪拌羽根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料ホッパの底板部分に、肥料を繰り出す繰出穴を横向きの凸字状に形成して開設し、この底板部分の下面側に、繰出穴の開度を調整する四角な角穴状のシャッタ穴を開設せるシャッタ板をスライド自在に設けている肥料散布機の肥料の繰出装置において、底板部分(20)に形設する横向き凸字形の繰出穴(3)を、それの基端側の拡巾部(3b)にあっては、左右方向の開口巾がシャッタ板(4)に設ける角穴状のシャッタ穴(40)の左右方向の開口巾に略対応し、前後方向の開口巾がシャッタ穴(40)の前後方向の開口巾に略対応する形態とし、先端側の細巾部(3a)にあっては、前記拡巾部(3b)の前後の略中央部位から、前後の開口巾を狭くした細い巾で、シャッタ穴(40)の左右の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成して底板部分(20)に開設したことを特徴とする肥料散布機の肥料の繰出装置。
【請求項1】
肥料ホッパの底板部分に、肥料を繰り出す繰出穴を横向きの凸字状に形成して開設し、この底板部分の下面側に、繰出穴の開度を調整する四角な角穴状のシャッタ穴を開設せるシャッタ板をスライド自在に設けている肥料散布機の肥料の繰出装置において、底板部分(20)に形設する横向き凸字形の繰出穴(3)を、それの基端側の拡巾部(3b)にあっては、左右方向の開口巾がシャッタ板(4)に設ける角穴状のシャッタ穴(40)の左右方向の開口巾に略対応し、前後方向の開口巾がシャッタ穴(40)の前後方向の開口巾に略対応する形態とし、先端側の細巾部(3a)にあっては、前記拡巾部(3b)の前後の略中央部位から、前後の開口巾を狭くした細い巾で、シャッタ穴(40)の左右の開口巾の略半分の長さに突出する形態に形成して底板部分(20)に開設したことを特徴とする肥料散布機の肥料の繰出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−279257(P2010−279257A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132871(P2009−132871)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000132909)株式会社タカキタ (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000132909)株式会社タカキタ (34)
【Fターム(参考)】
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