説明

肥満の予防用の医薬組成物の製剤におけるコリパーゼ−リパーゼ阻害剤の使用

本発明は肥満の治療または予防に使用される一般式の新規なコリパーゼ−リパーゼ阻害剤と,それを含む医薬組成物,および,前記組成物を使用した肥満の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,特に肥満の予防用のリパーゼ−コリパーゼ系の阻害剤として有用な治療上活性な新規な有機化合物群に関する。
【背景技術】
【0002】
リパーゼは,食品中に存在する脂質を加水分解することにより脂肪の消化に寄与する酵素群であり,これにより,腸管により脂肪が吸収される。リパーゼは主として三つあり,即ち胃リパーゼ,膵臓リパーゼ及びカルボン酸エステルリパーゼである。
【0003】
膵臓リパーゼは,食事中のトリアシルグリセロールの加水分解に寄与する主な酵素である。膵臓リパーゼは界面を形成する水不溶性基質の加水分解に触媒作用を及ぼす典型的なリパーゼである。該酵素は界面によって活性化されると言われている。
【0004】
リパーゼの最も特有の特性は,自然発生の胆汁酸塩のような界面活性剤によって活性が強く阻害されるということである。この性質を克服するために,別の膵臓蛋白質であるコリパーゼが使われるようになる。
【0005】
コリパーゼはリパーゼに1:1のモル比で結合し,また胆汁酸塩で覆われたトリアシルグリセロール界面に結合し,この方法により,リパーゼをそのトリアシルグリセロール基質へ固定する。コリパーゼ自体は脂肪分解の活性を持っていない。
【0006】
コリパーゼは膵臓によって形成され,プレコリパーゼ(precolipase)として排出される。
【0007】
プレコリパーゼを欠損し,高脂肪食を与えたマウスの血清中のコレステロール,トリグリセリド,グルコース及びインシュリン濃度が,低脂肪食を与えたマウスとほぼ同程度であろうということが確立している(ダゴスティーノ,D他(D'Agostino, D. et al.),ジャーナルオブバイオケミストリー(J. Biol. Chem.)277巻,9号,7170〜7177頁 (2002年))。
【0008】
肥満は,近年,先進国の住民において常に増え続けている問題となっており,これにより,例えば,20歳の男性の平均体重は,過去20年間で約10キログラム増加した。肥満は,糖尿病及び心血管疾病が属するいわゆるメタボリックシンドロームの発症を引き起こす。肥満の最悪の形は内臓脂肪の蓄積,肝臓脂肪の蓄積及び筋肉脂肪の蓄積などである。
【0009】
高い脂肪摂取または脂肪の過剰摂取は,多くの要因,例えばじっと座っていることが多すぎること,脂肪に富む食物(いわゆる「ジャンクフード」)の過剰摂取及び誤った食事情報に起因する。さらに,それはより重い仕事日により大きなカロリー摂取を有する昔の伝統の名残である。
【0010】
今日の食物は長期的な充足感を与えず,それは次には増加した食物摂取に結びつく。しかしながら,腸に脂質の食物が残ることは,より長期の充足感を増加させ,従って,脳からの要求を満たすために腸の中に脂質を残す要求がある。肥満を防ぐ一つの方法は,一般にリパーゼ阻害剤である商標XENECAL(登録商標)の製剤を投与することである。
【0011】
米国特許第4,588,843号は,(アルコキシアルキル)アミンの合成を示し,それによって明示的に製造されている化合物は2−(ジメチルアミノ)エチルドデシルエーテルである。この化合物は,洗剤分散剤,流動点降下剤のような潤滑油添加物,界面活性剤及び泡安定剤のような石鹸と洗剤の生成物,ポリウレタン及びエポキシ樹脂のようなポリマー用希釈剤,除草剤,殺菌剤,植物成長調整剤,殺虫剤,駆虫剤,ダニ駆除剤のような農薬等のための中間体としての使用を有すると言われている。医薬としての使用は提案されていない。
【0012】
本発明の主要な目的は,膵臓リパーゼ−コリパーゼ作用を阻害する治療上活性な化合物を提供し,これにより,食事からの脂質の消化を減少させ,一般的には脂肪の吸収を減少させることにより,肥満を防ぐことにある。
【0013】
別の目的は,腸に食事の脂質/脂肪を残し,そのためにより良い充足感の基礎を提供し,これにより食物の過剰摂取を回避する腸内の状態を得ることである。
【0014】
発明の要約
本発明によって,これらの要求を満たすことが可能であることが見出され,肥満の治療のための治療上活性な製剤の製造に使用される一群の化合物が提供される。
【0015】
該化合物群は下記の一般式によって定められる:



式中,R及びRは各々が独立に水素または低級アルキルであり,
及びRは各々が独立に水素または低級アルキル基であり,
Xは−O−,−C−または−S−であり,
Yは共有結合または[−CH−CH−O−]であって,式中,xは0〜8,好ましくは0〜5の整数であり,
mは0〜30,好ましくは4〜16,より好ましくは4〜12の整数であり,
は水素,CHまたはCFであり,
とRが各々メチルである場合,Xは−O−であり,Yは共有結合であり,RはCH であり,mは11でなく,また,RとRが各々メチルである場合,Xは−O−であり,Yは共有結合であり,Rは水素であり,mは12ではない。
【0016】
低級アルキル基R及び低級アルキル基Rは,鎖中に7以下の炭素原子,好ましくは4以下の炭素原子,より好ましくは2以下の炭素原子を有する直鎖または枝分かれ鎖の低級アルキル基を表す。従って,R及びRは各々独立して,メチル,エチル,n―プロピル,イソプロピル,n−ブチル,第二ブチル,イソブチル及び第三ブチルを表すであろう。R及びRは同一でも異なっていてもよい。R及びRは好ましくは各々メチル及び/またはエチルである。
【0017】
低級アルキル基R及び低級アルキル基Rは,鎖中に7以下の炭素原子,好ましくは4以下の炭素原子,より好ましくは2以下の炭素原子を有する直線または枝分かれ鎖の低級アルキル基を表す。従って,R及びRは各々独立して,メチル,エチル,n―プロピル,イソプロピル,n−ブチル,第二ブチル,イソブチル及び第三ブチルを表すであろう。R及びRは同一でも異なっていてもよい。
【0018】
及びRは好ましくは各々水素である。
【0019】
Xは酸素または硫黄,好ましくは酸素である。
【0020】
Yは共有結合または基[−CH−CH−O−]xを表し,従って後者の場合は8単位以下,好ましくは5単位以下のポリエチレングリコール鎖を表す。しかしながら,xは好ましくは0である。従って,xは0,1,2,3,4または5の整数である。
【0021】
整数mは0〜30であり,従って,基―(CH−CHは31以下の炭素原子を含むことができる。この31以下の炭素原子を有する基は,直鎖または分岐鎖であり,好ましくは,直鎖である。mは,11以下,より好ましくは7以下,最も好ましくは3以下である。従って,mは,整数0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29または30である。
【0022】
好ましい実施態様では,X,Y,(CH及びRは合わせて少なくとも8個の炭素原子を含む。
【0023】
さらに好ましい実施態様においては,鎖−(CH−は1個以上の二重結合または三重結合を含み,ここで水素原子の数は2m未満であってよく,従って,1個,2個または3個の三重結合の場合は,2m−2,2m−4,2m−6であることができ,1個,2個または3個の三重結合の場合は,2m−4,2m−8または2m−12であることができる。二重結合及び三重結合の場合,即ち,不飽和の場合は,立体異性体型が存在し得る。従って,ラセミ体,並びに立体異性体の純粋な化合物が存在するであろう。
【0024】
発明の別の観点においては,下記の一般式により定義される化合物の,肥満の予防及び/または低減のための,コリパーゼ−膵臓リパーゼに支配される腸における脂質の消化の阻害のための医薬組成物の製造における使用が包含される。



式中,R及びRは各々独立に水素または低級アルキルであり,
及びRは各々独立に水素または低級アルキル基であり,
Xは−O−,−C−または−S−であり,
Yは共有結合または[−CH−CH−O−]であって,式中,xは0〜8,好ましくは0〜5の整数であり,
mは0〜30,好ましくは4〜16,より好ましくは4〜12の整数であり,
は水素,CHまたはCFである。
【0025】
本発明は特に下記の化合物及びそれらの使用を包含する:
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−テトラデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−ステアリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−リノリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−オレイルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールブチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールメチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールエチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−ブチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−メチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−エチルエーテル
2−(ジプロピルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
N,N−ジメチルヘキサデシルアミン
N,N−ジメチルテトラデシルアミン
N,N−ジメチルドデシルアミン
【0026】
本発明の化合物は,下記の例に従って製造される。
【0027】
ジメチルアミノエチルドデシルエーテルの製造
材料
ジメチルエタノールアミン
ドデシルクロライド
ナトリウム
【0028】
ナトリウムを溶剤としてのトルエン中で還流しながら溶融させた。全てのナトリウムが反応したら,ジメチルエタノールアミンを滴下し,撹拌しながら一晩沸騰させる。生成した塩化ナトリウムは濾去され,ジメチルアミノエチルドデシルエーテルが溶液中に存在する。この溶液を真空下で蒸発させる。その後,生成物をヘプタンに溶解し,反応しないジメチルエタノールアミンを除去するために50%のメタノールを使用して抽出する。この反応混合物を真空下で蒸発させると,所望の生成物及び未反応のドデシルクロライドを含むであろう。この生成物をヘプタンに溶解し,シリカゲルクロマトグラフィーで精製する。生成物の純度は薄層クロマトグラフィを使用して決定される。
【0029】
製造された化合物のいくつかの屈折率及び融点は次のとおりである:

【0030】
本化合物は,インビトロとインビボの異なるモデルで試験することができる。本発明の化合物を試験した一つのインビトロモデル及び一つのインビボモデルを下記に記載する。比較データも示す。
【0031】
インビトロ
コリパーゼ/リパーゼによる脂肪分解の測定
胃腸管の脂質/脂肪の加水分解を担う胃腸管で最も重要な酵素は,蛋白質共同因子コリパーゼを伴うリパーゼ,膵臓リパーゼである。これらは膵臓の腺から分泌される2つの蛋白質である。リパーゼは,腸の形成する脂質/脂肪が胆汁酸によって乳化される環境中でコリパーゼなしでは全く不活性である。コリパーゼはモル比1:1の複合体としてリパーゼに結合し,該複合体をトリグリセリド表面に移動させる。リパーゼとコリパーゼ間の結合には,コリパーゼのarg38とリパーゼのser343の間,及びコリパーゼglu15からリパーゼ分子のasn241に水素結合が存在する。基質(脂質/脂肪)へのコリパーゼの結合では,疎水結合とイオン−イオン結合の両方が存在する。コリパーゼの単独の欠如によって,ヒトの胃腸管にコリパーゼが脂肪分解のための決定的な役割を持っていることが示された。純粋なリパーゼ及びコリパーゼは下記により製造した。
【0032】
材料
トリブチリン
NaTDC(タウロデオキシコール酸ナトリウム)
ヒトの膵臓の腺から精製されたリパーゼ
ヒトの膵臓の腺から精製されたコリパーゼ
【0033】
方法
0.5mlのトリブチリンを,1mMのCaCl,150mMのNaCl,2mMのトリスマレイン酸エステル,pH7.0及び4mMのNaTDC(タウロデオキシコール酸ナトリウム)を含むバッファー15mlと混合する。連続的な撹拌によって乳剤を得る。pHを0.1NのNaOHを自動的に添加して一定のpHを維持するpH−stateによって滴定する。リパーゼを70単位/ml含む原液から10μlのリパーゼを,続いてコリパーゼ1mg/mlを含む原液から10μlのコリパーゼを加える。活性は100%であるとして測定される。その後,阻害剤を添加する。新しい分析を,同じ方法で製造された全ての濃度について用いる。阻害はコントロールのパーセンテージとして記録される。阻害作用のある化合物について用量作用のプロットを得る。
【0034】
本発明の異なる化合物の,上記インビトロモデルにおける阻害効果を下記の表1に示す。
(表1)
A.化合物ジメチルアミノエチルオクチルエーテル


B.化合物ジメチルアミノエチルドデシルエーテル


C.化合物ジメチルアミノエチルペンタエチレングリコールドデシルエーテル


D.化合物ジプロピルアミノエチルオクタエチレングリコールドデシルエーテル


E.化合物N,N−ジメチルテトラデシルアミン


試験した化合物は全て与えられた試験モデルにおいて阻害作用を有する。
【0035】
インビボ
方法
12時間明/12時間暗のサイクルを使用したかごに格納された体重200〜220gのSprague−Dawleyラットに,テストに先立って,食物及び水を自由に摂取させた。試験の前日,ラットを断食させ,その朝,ジエチルエーテルを使用して麻酔をかけた。1mlのイントラリピッド(Intralipid)(200mg/ml)を,阻害剤と共に,または伴わずに,注射器によってラットに経口投与し,胃にとどまらせた。血液サンプルを,試験開始前,即ち時間0,及びイントラリピッドを与えた30,60,120及び180分後に採取した。遠心分離後,血清を分離し,分析に備えて−20℃で保存した。遊離脂肪酸,トリグリセリド及び総コレステロールの分析が行われた。試験した阻害剤を異なる投与量で使用して,試験を繰り返した。
【0036】
下記の表2から明らかなように,結果は,トリグリセリド及び脂肪酸濃度として測定された血液循環への脂肪の吸収の阻害を示す。
【0037】
(表2)
ラットにおいて,コントロールに対する血清中の遊離脂肪酸及びトリグリセリドの濃度に対する影響を示す,ここに与えられたインビボプロトコルに従ったインビボ実験。



*化合物C12はジメチルアミノエチルドデシルエーテルである。
**n.d.は測定されないことを意味する。
【0038】
下記の表3から明らかなように,この結果は,脂肪酸濃度として測定された血液循環への脂肪の吸収の用量依存性阻害を示す。
【0039】
(表3)
量反応評価におけるジメチルアミノエチルドデシルエーテル化合物


【0040】
結果は,本発明の阻害剤が,インビトロ系及びインビボ系の両方で有効であり,高い血液脂質レベル,糖尿病タイプ2及び肥満の治療において大きな可能性を与えることが予測され得ることを示す。
【0041】
本発明の別の観点において,上記化合物は,肥満を低減するために食欲を減少させる医薬の製造に使用される。
【0042】
第1の実験では,5日間経口投与されたジメチルアミノエチルドデシルエーテル(図中の短くされたdimaele)の食物摂取と血中の脂質に対する効果が,雌のSprague−Dawleyラットで試験された。高脂肪食が与えられたラットへの胃管栄養によるジメチルアミノエチルドデシルエーテル投与(50μl)の単回投与は,食物摂取の非常に著しい減少に帰着した。食物摂取の減少は,高脂肪食が与えられたラットにおける体重の減少を伴う。しかしながら,ジメチルアミノエチルドデシルエーテルは,低脂肪食が与えられたラットにおいては食物摂取を減少させなかった。血液脂質分析は,ジメチルアミノエチルドデシルエーテルが血清トリグリセリド及び脂肪酸を減少させたことを示した。しかし,これは統計的な有意差ではなかった。ジメチルアミノエチルドデシルエーテルは血しょうコレステロール値に効果がなかった。更に,我々は,食事のカロリー量に比例して胃腸管から食後に放出される血清ペプチドYY3−36を測定した。コントロールラット(0.85±0.26ng/ml対0.86±0.24ng/ml)と比較して,ジメチルアミノエチルドデシルエーテルを受けたラットにおける血清PYY3−36レベルは差がなかった。血清レプチンレベルは,ジメチルアミノエチルドデシルエーテルで処理されたラットにおいて減少したが,血清グレリンレベルはコントロール群と比較して増加した。実験の終わりに,5日間のジメチルアミノエチルドデシルエーテルの点滴に続いて,膵臓リパーゼ活性及び蛋白質発現を測定した。膵臓リパーゼ活性はジメチルアミノエチルドデシルエーテルで処理したラットにおいて変化しなかったが,リパーゼ蛋白質発現はコントロールラットと比較してわずかに減少した。ジメチルアミノエチルドデシルエーテルの経口投与も血液脂質レベルに影響するかどうか調べるために,続いて第二の実験を行った。17時間絶食させたラットに,イントラリピッド(200mg/ml)またはジメチルアミノエチルドデシルエーテル(200μl)及びイントラリピッドのいずれかを経口投与した。投与後,0,30,60,120及び180分後に血液サンプルを集めた。ジメチルアミノエチルドデシルエーテルは,180分の試験期間中に血しょうトリグリセリド及び脂肪酸レベルを著しく減少させた。従って,高脂肪血症及び肥満に対する治療のツールとしてのこの阻害剤の潜在的な使用が,体重及び食物摂取の減少の有効性によって明らかになった。本実験では,高脂肪食が与えられたラットから,膵臓リパーゼの活性及び発現に対するコリパーゼ阻害剤の影響を調べるであろう。
【0043】
イントロダクション
材料及び方法
動物
雌のSprague−Dawleyラットをすべての実験に使用した。ラットを12時間(6:00〜18:00)明るくした12時間サイクル下で温度管理された部屋(22±1℃)に収容し,水を自由に与え,高脂肪食実験と特記しない限りは,標準食にリビタム(libitum)を与えた。動物を使用する全ての方法は,地方の倫理学委員会によって承認されており,動物実験用のガイドライン(ヨーロッパ経済共同体会議指令,86/609/EEC)に従った。
【0044】
食物摂取の評価
食物消費の測定のために,実験開始前にラットを個々にかごに収容して,一週間高脂肪食を与えた。高脂肪食は,16.4%の蛋白質,25.6%の炭水化物及び58.0%の脂肪からなり,23.6kJ/gのカロリー密度を有する。リビタムとして高脂肪食へアクセスするラットに,暗サイクルの開始時(18:00)に胃管栄養によりジメチルアミノエチルドデシルエーテル(1%のメチルセルロースに溶解した37.5または50μl)または1%のメチルセルロースを経口投与し,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル投与に続く15時間に,かご上部から分配される予め秤量された食物の部分から食物摂取を測定した。食物がこぼれた,また粉砕された形跡についてかごを注意深くモニターした。
【0045】
血液脂質分析
ラットにおいて,麻酔下で血液を眼窩内ブラー叢(intra-orbital bullar plexus)から取り出し,冷チューブに集めた。4℃,3000gで15分間の遠心分離により血清を得た。血液脂質に対するジメチルアミノエチルドデシルエーテルの急性の効果のために,一晩絶食したラットに,200μlのジメチルアミノエチルドデシルエーテル及び1ml(200mg)のイントラリピッドを胃管栄養により経口投与し,0,30,60,120及び180分後に血液を集めた。血しょうトリグリセリドをシグマ診断キットで測定した。血しょう脂肪酸を,NEFACキット(ワコーケミカルGmbH,ノイス,ドイツ)によって測定した。血しょうPYY(3−36)及びレプチンを,PYY酵素イムノアッセーキット及びレプチン酵素イムノアッセー(フェニックスファーマシューティカル,米国)により測定した。
【0046】
膵臓リパーゼ活性及び発現
実験の終わりにラットを殺し,リパーゼ活性及び蛋白質発現の分析のために膵臓を回収した。リパーゼ活性を,基質として胆汁酸塩の中に分散したトリブチリン(ボーグストロム&アーランソン(Borgstrom&Erlanson))を使用して,pH−スタット滴定(メトルコンポーネントDK10,DK11,DV11)で測定した。リパーゼ発現をウェスタンブロットによって分析した。
【0047】
ウェスタンブロット分析
膵臓を,10mMリン酸ナトリウム(pH6.0)及び1mini完全錠剤を含む0.5%のジギトニンバッファー中,氷上でホモジナイズした。14000g,4℃で10分間遠心分離した後,上澄みを集め,内因性のリパーゼを不活性化するために65℃で15分間加熱した。蛋白質量をBCA方法によって測定した。等量(50μg)の蛋白質を,10%SDSポリアクリルアミドゲル上にのせ,ニトロセルロース膜に移し,次に,4℃で一晩,1:1000の稀釈率の抗リパーゼ抗体とインキュベートした。膵臓リパーゼ蛋白質を,ワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗ウサギ抗体(1:8000)を使用して室温で60分間,続いて増強された化学発光(ピアース(Pierce))で検出した。
【0048】
統計
スタットビュー(Stat View)プログラムを統計分析のために使用した。データは,two−way ANOVA,続いて事後(post hoc)テストを用いて,個体差の比較について分析した。トリグリセリド,PYY3−36,レプチン及びグレリンデータの分析のためにスチューデントt検定を使用した。
【0049】
結果
リパーゼ活性阻害のインビトロ分析
基質としてトリブチリンまたはイントラリピッドを使用すると,コリパーゼ阻害剤であるジメチルアミノエチルドデシルエーテルは,用量依存的にリパーゼ活性を阻害した(図1A及び1B)。最大の阻害は,基質としてのトリブチリンとイントラリピッド各々40μmol及び80μmolの投与量で見られた。
【0050】
高脂肪食摂取及び体重の減少
食物摂取を,高脂肪食が与えられた,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル及びビヒクルで処理したラットで測定した。50μlのジメチルアミノエチルドデシルエーテルを与えたラットでは,食物摂取は,投与後1日で著しく阻害された。この阻害は図2A(two−way ANOVA,p<0.001)で見られるように,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル処理後5日まで維持された。37.5μlのジメチルアミノエチルドデシルエーテルを受けたラットにおいて,食物摂取が減少する傾向が見られたが,これは統計的有意差には達しなかった(図2B)。ラットに25μlのジメチルアミノエチルドデシルエーテルを経口投与した場合,食物摂取の阻害はなかった。低脂肪食を与えたラットにおいては,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル処理ラットにおける5日間の食物摂取は,37.5及び50μlの投与量で,コントロールと同様であった(図3)。図4に示されるように,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル(50μl)の5日間の投与により,ラットの体重は,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル非処理グループと比較して,著しく減少した。
【0051】
血清トリグリセリド,脂肪酸及びコレステロールレベルの減少
血清トリグリセリド,NEFA及びコレステロール値を,5日間ジメチルアミノエチルドデシルエーテルで処理したラットにおいて測定した。図5A及び5Bに示されるように,血清トリグリセリド及び脂肪酸レベルは5日間のジメチルアミノエチルドデシルエーテル(50μl)の投与の後に減少し,この減少は統計的な有意差があった(p<0.05)。しかしながら,血清コレステロール値は,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル(50μl)及びビヒクル処理ラットにおいて,5日間の処理後で差異はなかった(データは示されていない)。
【0052】
血清PYY3−36,レプチン及びグレリンの変化
ジメチルアミノエチルドデシルエーテルが高脂肪食摂取を阻害し体重を減少させる可能なメカニズムを調べるために,腸ホルモン・ペプチドYY3−36,及びレプチンとグレリンを含む食欲調節ペプチドを調べた。5日間ジメチルアミノエチルドデシルエーテル(50μl)で処理した絶食させたラットでは,血清PYY3−36レベルはコントロールと同様であったが(図6A),血清レプチンレベルは,ジメチルアミノエチルドデシルエーテルで処理したラットで著しく減少した(図6B)。対照的に,ラットにジメチルアミノエチルドデシルエーテルを5日間経口投与すると,血清グレリンレベルは著しく増加する(図6C)。
【0053】
膵臓リパーゼ活性及び蛋白質発現
図1に示されるように,コリパーゼ阻害剤としてのジメチルアミノエチルドデシルエーテルは,インビトロ分析でのリパーゼ活性を完全に阻害した。さらに,我々は,胃管栄養によってジメチルアミノエチルドデシルエーテル(50μl)を5日間投与した時の,ラットのインビボにおけるリパーゼ活性及び蛋白質発現を測定した。ジメチルアミノエチルドデシルエーテル処理ラットにおける膵臓リパーゼ活性は,コントロールと同様であったが(p>0.05),タンパク質発現は,コントロールラットと比較するとジメチルアミノエチルドデシルエーテル群で減少した(図7)。
【0054】
ジメチルアミノエチルドデシルエーテルの血清トリグリセリド,脂肪酸及びコレステロールレベルに対する急性の効果
5日間ジメチルアミノエチルドデシルエーテルを経口投与したラットの血清トリグリセリド及び脂肪酸の減少の比較のために,ラットに,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル(200μl)注射及び胃管栄養による1mlのイントラリピッド(200mg),またはイントラリピッド単独の単回投与を行った。血清トリグリセリドレベルは,注射の0,30,60,120及び180分後に著しく減少した(図8A,p<0.05)。更に,ジメチルアミノエチルドデシルエーテル注射は,図8Bに示されるように,0,30,60,120及び180分の時点で測定された血清脂肪酸濃度を減少させた。
【0055】
発明のさらに別の実施態様においては,上記化合物を,肥満を減少するために膵臓リパーゼの発現を減少するための医薬の製造に使用する。
【0056】
医薬配合例
医薬として使用される場合,本発明の化合物は,通常は医薬組成物の形態で投与される。これらの化合物は,経口,直腸を含む種々の経路で投与することができる。これらの化合物は経口用組成物として有効である。そのような組成物は,医薬分野でよく知られた方法で製造され,少なくとも1種類の活性化合物を含む。
【0057】
本発明はさらに,活性成分としてここに記述された化合物の1種類またはそれ以上を,薬学的に許容される担体と共に含有する医薬組成物を含む。本発明の組成物を作る際,活性成分は,通常,賦形剤と混合されるか,賦形剤によって希釈されるか,カプセル,サシェ,紙または他の容器の形態であり得る担体の中に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合,それは活性成分のビヒクル,担体または媒体として機能する固体,半固体または液体であることができる。従って,該組成物は,錠剤,丸薬,粉末,トローチ,サシェ,カシェ,エリキシル,懸濁液,乳剤,溶液,シロップ,軟及び硬ゼラチンカプセル,坐薬,またはパッケージされた粉末の形態であることができる。
【0058】
製剤を製造する場合,活性化合物を粉砕して,他の成分と合わせるのに適切な粒度とすることが必要であろう。活性化合物が本質的に不溶性である場合,通常,200メッシュ未満の粒度に粉砕される。活性化合物が本質的に水溶性である場合,通常は,粒度は製剤中で実質的に均一な分散が得られるように,粉砕することにより例えば約40メッシュに調節される。
【0059】
適切な賦形剤の例には,ラクトース,デキストロース,ショ糖,ソルビトール,マンニトール,デンプン,アラビアゴム,リン酸カルシウム,アルギン,トラガカントゴム,ゼラチン,ケイ酸カルシウム,微結晶性セルロース,ポリビニルピロリドン,セルロース,滅菌水,シロップ及びメチルセルロースが含まれる。該配合物はさらに下記のものを含むことができる:タルク,ステアリン酸マグネシウム及び鉱油のような潤滑剤;湿潤剤;乳化剤及び懸濁剤;安息香酸メチル及びプロピルヒドロキシエステルのような保存剤;甘味料;及び香料。本発明の組成物は当該分野で既知の方法を使用することにより患者に投与した後に,迅速な,持続したまたは遅延した放出を提供するように製剤化することができる。
【0060】
組成物は,好ましくは単位投与剤形で製剤化される。「単位投与剤形」の語は,ヒト及び他の哺乳類用の一回の投与に適する物理的に分けられた単位であって,各単位が,所望の治療効果を生むように計算された予め決められた量の活性物質を,適当な医薬の賦形剤と共に含むものを意味する。好ましくは,上記式(I)の化合物は,好ましくは医薬組成物の約20重量パーセント以下で,より好ましくは約15重量%以下で使用され,残部は薬学的に不活性な担体である。
【0061】
活性化合物は広い投与量範囲で有効であり,通常は医薬として有効な量で投与される。例えば,薬が経口経路で投与される場合,各投与量は,約1mg〜約1000mg,好ましくは約2mg〜約500mg,より好ましくは約5mg〜約100mg,さらに好ましくは約5mg〜約60mgの活性成分を含む。しかしながら,実際に投与される化合物の量は,治療すべき状態,選択された投与経路,投与される実際の化合物及びその相対的な活性,個々の患者の年齢,体重及び反応,患者の症状の深刻度等を含む関連する状況に照らして,内科医によって決定されるであろう。原理の観点から,本製剤は食物摂取と同時に投与され,脂質の十分な阻害が得られる量で投与されるべきである。従って,身体は栄養上の観点からいくらかの脂質を必要とするかもしれず,これが投与される本発明の阻害化合物の量に影響を及ぼすであろう。本発明の化合物の影響は小腸の中で起こる。従って,該化合物の可能な代謝物質以外には,そのままで得られる効果しかない。
【0062】
錠剤のような固体組成物の製剤のために,主要な活性成分を医薬用の賦形剤と混合して本発明の化合物の均一な混合物を含有する固体のプレ配合組成物を形成する。これらのプレ配合組成物が均一であると記載する場合,該組成物が,錠剤,丸薬及びカプセル剤のような等しく有効な単位投与剤形に容易に細分されるように,活性成分が組成物の全体にわたって均一に分散することを意味する。その後,この固体プレ配合物を,本発明の活性成分を含む上記タイプの単位投与剤形へ細分する。
【0063】
本発明の錠剤,丸薬または顆粒剤は,コーティングし,またはコンパウンドして,延長された作用の利益を与える投与剤形としてもよい。例えば,錠剤または丸薬は,内部の及び外部の単位投与成分を含み,後者は前者を覆うエンベロープ型の剤型とすることができる。二つの成分は腸溶層で分けられており,これにより胃中での分解に抵抗し,内部の成分が無傷で十二指腸へ通過するか,または放出を遅らせることを可能にしている。種々の材料をそのような腸溶層またはコーティングとして使用でき,そのような材料には,多くの重合体の酸,並びに重合体の酸とシェラック,セチルアルコール及び酢酸セルロースのような材料との混合物が含まれる。
【0064】
本発明の錠剤,丸薬または顆粒剤は,膵臓リパーゼが腸に放出される膵臓での放出を可能にする,持続性放出コーティングで覆われていてもよい。そのような持続性放出コーティングは,少量の放出が胃の中で行われるとしても,全体の放出は小腸の上部で行われることを可能にする。
【0065】
例えば,錠剤は圧縮または成形によって製造され得る。圧縮錠剤は,本発明の組成物を,所望によりバインダー,潤滑剤,不活性な希釈剤及び/または界面活性剤もしくは分散剤と混合して,適切な機械で,粉末または顆粒のような自由に流動する形態で圧縮することにより製造され得る。成型錠剤は,適切な機械中で,不活性な液体希釈剤で湿らせた,粉末化化合物の混合物を成型することにより製造され得る。
【0066】
好ましい実施態様では,少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は,バインダー,増量剤またはそれの混合物である。適切な賦形剤は,潤滑剤,崩壊剤及びその混合物を含む。好ましい賦形剤は,ラクトース,クロスカルメロース(croscarmellose),微結晶性セルロース,あらかじめゼラチンで覆われたデンプン及びステアリン酸マグネシウムを含むがこれに限定されない。
【0067】
本発明の医薬組成物の投与製剤を製造するのに適するバインダーには,コーンスターチ,馬鈴薯デンプンまたは他のデンプン,ゼラチン,アカシア,アルギン酸ナトリウム,アルギン酸,他のアルギン,粉末化トラガカントゴム,グアーガムのような天然及び合成ゴム,セルロース及びその誘導体(例えば,エチルセルロース,酢酸セルロース,カルボキシメチルセルロースカルシウム,カルボキシルメチルセルロースナトリウム),ポリビニルピロリドン,メチルセルロース,あらかじめゼラチン化したデンプン,ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば,No.2208,2906,2910),微結晶性セルロース,並びにそれらの混合物が含まれるが,これに限定されない。
【0068】
適する微結晶性セルロースの型は,例えば,AVICEL−PH−101,AVICEL−PH−103及びAVICEL−PH−105(FMCコーポレイション,マーカス・フック,アメリカンビスコース部門,ペンシルベニア(FMC Corporation, American Viscose Division, of Marcus Hook, Pa.)から購入可能)として売られている材料を含む。特に適するバインダーはFMCコーポレイションによってAVICEL RC−581として販売されている微結晶性セルロース及びカルボキシルメチルセルロースナトリウムの混合物である。
【0069】
本発明の化合物の投与剤形で使用するための適する増量剤の例としては,タルク,炭酸カルシウム(例えば顆粒または粉末),微結晶性セルロース,粉末化セルロース,デキストレート,カオリン,マンニトール,サリチル酸,ソルビトール,デンプン,あらかじめゼラチン化したデンプン,並びにそれらの混合物が挙げられるが,これらに限定されない。
【0070】
典型的には,本発明の固体の投与剤形の約50〜約99重量パーセントはバインダー及び/または増量剤である。
【0071】
崩壊剤は水の環境に露出された時に錠剤を崩れさせるために使用される。崩壊剤が多すぎると,大気の湿気によりボトルの中で崩れる可能性のある錠剤を生産するであろう。また,少なすぎると,崩壊させるには不十分であろう。従って,投与剤形からの本発明の化合物の放出の割合及び範囲が変わってくるかもしれない。従って,薬の放出に悪影響を与えるほど少なすぎも多すぎもしない十分な量の崩壊剤を本発明の固体の投与剤形を形成するために使用すべきである。使用される崩壊剤の量は,製剤の型及び投与剤形により変わってくるが,当該分野の通常の技術者により,容易に識別可能である。典型的には,崩壊剤の約0.5重量%〜約15重量%,好ましくは約1重量%〜約5重量%が,医薬組成物中で使用され得る。
【0072】
固体の投与剤形を形成するために使用され得る適切な崩壊剤は,寒天,アルギン酸,炭酸カルシウム,微結晶性セルロース,クロスカルメロースナトリウム,クロスポヴィドン(crospovidone),ポラクリリン(polacrilin)カリウム,ナトリウムデンプングリコレート,馬鈴薯もしくはタピオカデンプン,他のデンプン,あらかじめゼラチン化したデンプン,他のデンプン,クレー,他のアルギン,他のセルロース,ゴム,並びにそれらの混合物が含まれるが,これらに限定されない。
【0073】
固体の投与剤形と共に使用するのに適する潤滑剤は,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム,鉱油,軽油,グリセリン,ソルビトール,マンニトール,ポリエチレングリコール,他のエチレングリコール,ステアリン酸,ラウリル硫酸ナトリウム,タルク,水素と化合した植物油(例えば落花生油,綿実油,ひまわり油,ゴマ油,オリーブ油,トウモロコシ油または大豆油),ステアリン酸亜鉛,オレイン酸エチル,ラウリル酸エチル,寒天,並びにそれらの混合物を含むが,これらに限定されない。追加の潤滑剤は,例えば,シロイド(syloid)シリカゲル(メリーランド州ボルチモアのWRグレース・カンパニー(W. R. Grace Co.)により製造されているAEROSIL 200),合成珪酸の凝結したエアゾール(テキサス州,プラノのデグサ・カンパニー(Degussa Co.)により市販されている),CAB−O−SIL(マサチューセッツ州,ボストンのカボット・カンパニー(Cabot Co.)により市販されている発熱性の二酸化ケイ素生成物)及びそれらの混合物を含む。潤滑剤は,典型的には医薬組成物の約1重量パーセント未満の量で,所望により添加することができる。
【0074】
好ましくは,個々の固体の投与剤形は,本発明の化合物を約5mg〜約3000mg含む。好ましくは,個々の固体の投与剤形は,本発明の化合物を約5mg,約25mg,約100mg,約200mg,約250mgまたは約500mg含む。経口投与に適する固体の投与剤形は,好ましくは約5mg〜約200mgの本発明の化合物を含む。
【0075】
本発明の新規な組成物を経口投与のために含有させ得る液体の剤形は,適切には水溶液,風味をつけたシロップ,水性の風味を付けた,トウモロコシ油,綿実油,ゴマ油,やし油または落花生油のような食用油との乳剤,並びにエリキシル及び同様の医薬のビヒクルを含むが,これらに限定されない。
【0076】
更に,1またはそれ以上の本発明の化合物を含む医薬組成物を,例えば胃腸障害の治療のための他の適当な医薬と組み合わせて投与することができる。コンビネーション治療が使用される場合,本発明の化合物を含有する医薬組成物を第二の医薬と同時に,連続してまたは別々に投与し得る。コンビネーション治療の中で使用される各成分は,その意図した目的に十分な量で使用される。例えば,問題の症状の低減をインビボで達成するために,第2の医薬を十分な量で使用する。
【0077】
本発明の化合物の投与量範囲は,一投与量当たり好ましくは約1mg〜約1000mg,より好ましくは約2mg〜約500mg,さらに好ましくは約5mg〜約100mg,そしてさらに好ましくは約5mg〜約60mgである。再度述べるが,使用される特定の投与量は患者(年齢,体重など)及び疾病の程度(穏やか,普通,深刻)に依存するであろう。最後に,2つの活性成分を含んでいる医薬組成物も薬を同時に投与するために製造することができる。
【0078】
リパーゼ−コリパーゼが消化により自由になり,最適の阻害が十二指腸以下で得られる場合,本発明の医薬の投与は,通常は食物摂取に関連して行われるであろう。
【0079】
実施例
下記の製剤及び実施例は当該分野の技術者がより明白に理解し,かつ本発明を実行することを可能にするために供する。それらは単に例示であり,発明の範囲を制限すると見なされてはならない。
【0080】
配合例
実施例1
下記の成分を含む硬ゼラチンカプセルを製造する:



上記活性成分を混合し,340mg量の硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0081】
実施例2
錠剤を下記の成分を使用して製造する:


該成分を混合し,圧縮して,重さ各々240mgの錠剤を形成する。
【0082】
実施例3
各々30mgの活性成分を含む錠剤は下記のように製造される:


活性成分,デンプン及びセルロースをNo.20メッシュU.S.シーブに通し,完全に混合した。ポリビニルピロリドンの溶液を,得られた粉末と混合し,その後16メッシュU.S.シーブを通す。このようにして得られた顆粒を50〜60℃で乾燥し,16メッシュU.S.シーブに通す。デンプングリコール酸ナトリウム,ステアリン酸マグネシウム及び予めNo.30メッシュU.S.シーブを通したタルクを該顆粒に添加し,混合した後,錠剤機で圧縮して各々120mgの重量である錠剤を製造する。
【0083】
実施例4
各々40mgの医薬を含むカプセルが,下記のように製造される:


活性成分,デンプン及びステアリン酸マグネシウムを混合し,No.20メッシュU.S.シーブに通し,150mg量の硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0084】
実施例5
各々活性成分を25mg含む坐薬は以下のように製造される:


活性成分をNo.60メッシュU.S.シーブにかけ,予め最小限の熱を用いて融解した飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁する。その後,該混合物を通常2.0g容量の座薬型に注ぎ,冷却する。
【0085】
実施例6
各々5.0mlの投与量について薬剤を50mg含む懸濁液は以下のように製造される:


活性成分,ショ糖及びキサンタンガムを混合し,No.10メッシュのU.S.シーブを通過させ,その後,予め調製された水中の微結晶性セルロース及びカルボキシルメチルセルロースナトリウムの溶液と混合した。安息香酸ナトリウム,香料及び着色料をいくらかの水で希釈し,攪拌しながら添加する。その後,十分な水を添加し,必要な容量とする。
【0086】
実施例7
製剤は以下のように製造され得る:


該活性成分,デンプン及びステアリン酸マグネシウムを混合し,No.20メッシュのU.S.シーブを通し,425.0mgの量で硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0087】
本発明で使用される他の適切な配合物はE.W.マーティン(E. W. Martin)によって編集されたレミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company), 18版, 1990年)に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
記載無し。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3】

【図4】

【図5A】

【図5B】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図7】

【図8A】

【図8B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満の予防及び/または低減のための医薬組成物の製造における,下記の一般式で表される化合物の使用。



式中,R及びRは各々が独立に水素または低級アルキルであり,
及びRは各々が独立に水素または低級アルキル基であり,
Xは−O−,−C−または−S−であり,
Yは共有結合または[−CH−CH−O−]であって,式中,xは0〜8,好ましくは0〜5の整数であり,
mは0〜30,好ましくは4〜16,より好ましくは4〜12の整数であり,
は水素,CHまたはCFである。
【請求項2】
前記医薬組成物が,肥満の予防及び/または低減のための,コリパーゼ−膵臓リパーゼに支配される腸における脂質の消化の阻害のために使用される請求項1記載の使用。
【請求項3】
X,Y,(CH及びRが合わせて少なくとも8個の炭素原子を含む請求項1記載の使用。
【請求項4】
(CHが1個以上の二重結合または三重結合を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記活性化合物が,
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−テトラデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−ステアリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−リノリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−オレイルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールブチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールメチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールエチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−ブチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−メチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−エチルエーテル
2−(ジプロピルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
N,N−ジメチルヘキサデシルアミン
N,N−ジメチルテトラデシルアミン
N,N−ジメチルドデシルアミン
である請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
薬理学的に不活性な賦形剤と共に,肥満の予防及び/または低減のための下記の一般式により定義されるコリパーゼ−リパーゼ阻害剤の阻害量を含む,コリパーゼ−膵臓リパーゼに支配される腸における脂質の消化の阻害のための医薬組成物。



式中,R及びRは各々独立に水素または低級アルキルであり,
及びRは各々独立に水素または低級アルキル基であり,
Xは−O−,−C−または−S−であり,
Yは共有結合または[−CH−CH−O−]であって,式中,xは0〜8,好ましくは0〜5の整数であり,
mは0〜30,好ましくは4〜16,より好ましくは4〜12の整数であり,
は水素,CHまたはCFである。
【請求項7】
所望により薬理学的に不活性な賦形剤と共に,下記の一般式により定義される少なくとも1種類の化合物の治療有効量を投与することにより,コリパーゼ−リパーゼ相互作用を阻害することにより,ヒトを含むほ乳類の肥満を治療する方法。



式中,R及びRは各々独立に水素または低級アルキルであり,
及びRは各々独立に水素または低級アルキル基であり,
Xは−O−,−C−または−S−であり,
Yは共有結合または[−CH−CH−O−]であって,式中,xは0〜8,好ましくは0〜5の整数であり,
mは0〜30,好ましくは4〜16,より好ましくは4〜12の整数であり,
は水素,CHまたはCFである。
【請求項8】
X,Y,(CH及びRが合わせて少なくとも8個の炭素原子を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
(CHが1個以上の二重結合または三重結合を含む請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−テトラデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−ステアリルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−オレイルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−リノリルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−ドデシルエーテル
2−(ジイソプロピルアミノ)−エチル−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−ステアリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−リノリルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−オレイルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコール−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールブチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールメチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−ペンタエチレングリコールエチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−ドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−オクチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−ブチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−メチルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−トリエチレングリコール−エチルエーテル
2−(ジプロピルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
2−(ジメチルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
2−(ジエチルアミノ)−エチル−オクタエチレングリコールドデシルエーテル
N,N−ジメチルヘキサデシルアミン
N,N−ジメチルテトラデシルアミン
N,N−ジメチルドデシルアミン
の一またはそれ以上である請求項7〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
肥満の予防及び/または低減のために食欲を減少させる医薬組成物の製造における,下記の一般式で表される化合物の使用。



式中,R及びRは各々が独立に水素または低級アルキルであり,
及びRは各々が独立に水素または低級アルキル基であり,
Xは−O−,−C−または−S−であり,
Yは共有結合または[−CH−CH−O−]であって,式中,xは0〜8,好ましくは0〜5の整数であり,
mは0〜30,好ましくは4〜16,より好ましくは4〜12の整数であり,
は水素,CHまたはCFである。
【請求項12】
肥満の予防及び/または低減のために膵臓リパーゼの発現を減少させる医薬組成物の製造における,下記の一般式で表される化合物の使用。



式中,R及びRは各々が独立に水素または低級アルキルであり,
及びRは各々が独立に水素または低級アルキル基であり,
Xは−O−,−C−または−S−であり,
Yは共有結合または[−CH−CH−O−]であって,式中,xは0〜8,好ましくは0〜5の整数であり,
mは0〜30,好ましくは4〜16,より好ましくは4〜12の整数であり,
は水素,CHまたはCFである。

【公表番号】特表2007−502811(P2007−502811A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523812(P2006−523812)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001216
【国際公開番号】WO2005/018625
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502004928)フォルスカーパテント イー エスイーデー アーベー (7)
【Fターム(参考)】