説明

肥満症のための低分子介入

PLTP遺伝子発現を活性化する方法および組成物は、有効量のリモノイド(limonoid)を投与することを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロス・リファレンス
本出願は、本明細書中にその開示が援用される、2006年10月17日出願の米国仮出願第60/852,358号の利益を主張する。
【0002】
プリユーリアニン(prieurianin)は、脂質生成を標的とする新規な抗肥満剤である。プリユーリアニンは、前脂肪細胞の増殖および分化を阻害し、更には、分化した培養物中の脂質陽性脂肪細胞の数を減少させる。更に、プリユーリアニンは、脂質生成の生化学および生理学を探査するのに重要な薬理学的手段である。
【背景技術】
【0003】
肥満症発生率の増加およびそれに関連した健康問題は、近年の全体的医療費に有意の影響を与えている。米国だけでも、成人の約3分の2は過体重であると推定され、これらの3分の1は、肥満症と考えられる。肥満症の驚くべき増加率は、体脂肪の形で体重増加をもたらす長期エネルギー平衡異常を生じる高エネルギー食品の過剰消費と相まって、主に、座業的生活様式習慣に依る。脂肪症が増加するにつれて、糖尿病、高血圧症および心臓血管疾患などの共存症を発症するリスクも、有意に上昇する。更に、全ての脂肪が等しく生じるわけではなく、皮下脂肪ではない内臓脂肪組織の蓄積が、心臓血管疾患および代謝性疾患のリスクを増加させるということは理解される。実際に、肥満症は、インスリン抵抗性、異常脂血症(高トリグリセリド血症を特徴とする)、低レベルの高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、低分子稠密HDL粒子およびリン脂質輸送タンパク質(PLTP)活性増加の開始の引き金となる主因である。したがって、この世界的に増加した肥満症有病率およびその共存症の全宿主は、世界的に何十億もの人々を脅かす新生の健康問題と闘うための緊急に有効な治療薬および生活様式発明変更を正当化する。
【0004】
10年より以前のレプチンおよびその体重減少性薬理作用の発見は、脂肪組織機能についての新しい理解をもたらした。脂肪組織は、現在、脂肪酸を貯蔵し且つ放出するのみならず、体重および血中グルコースホメオスタシスの調節に極めて大きい影響を与える多数のホルモン因子またはアディポカインを生産することが知られている。脂肪組織は、内分泌器官として働き、そして食物摂取、エネルギー消費および一連の代謝過程の調節において重要な役割を有する多数の物質を生産する。更に、脂肪細胞は、シグナリング経路に従事するタンパク質を発現し且つ放出し、更には、エネルギーの貯蔵および代謝に臨界的な役割を果たしている。
【0005】
これら進歩は、更に、白色脂肪組織が、実際に、エネルギー平衡の調節に中心的役割を果たし、しかも極めて多数の生理学的および病理学的過程を媒介する分泌/内分泌器官として働くということを明確にした。白色脂肪組織塊の調節異常は、肥満症または脂肪組織萎縮を引き起こす。脂肪細胞のサイズおよび/または数の変化によって生じる白色脂肪組織塊の変更は、前脂肪細胞の増殖と分化との間の複雑な相互作用、および脂肪細胞によって分泌されるいろいろなタンパク質および因子によって調節される。
【0006】
脂肪組織によって放出される主要ホルモン因子の一つは、脂肪細胞によって排他的に生産される最近発見されたホルモンであるアディポネクチンである。アディポネクチンは、血漿中に豊富に存在し、しかも脂肪酸酸化を刺激することによってインスリン感受性を増加させ、血漿トリグリセリドを減少させ、そしてグルコース代謝を向上させることが分かっている。アディポネクチンレベルは、脂肪症の度合いに反比例し、そしてそのレベルは、肥満対象において有意に減少する。臨床的に、血漿中の減少したアディポネクチンレベルは、肥満関連インスリン抵抗性およびアテローム性動脈硬化症にも関連している。アディポネクチンの抗アテローム発生性および抗炎症性、およびそのインスリン感受性を刺激する能力は、アディポネクチンを、潜在的な治療的用途を目的とした生理学的および病態生理学的研究に重要な標的にしている。
【0007】
アディポネクチンに加えて、レジスチン、ビスファチン(visfatin)、腫瘍壊死因子αおよびアシル化刺激性タンパク質を含めた他のタンパク質は、中枢性および末梢性双方の代謝シグナルへの脂肪組織の応答を編成するのに役立つ一連の多様な脂肪組織由来ホルモンおよびサイトカインを構成している。若干のこれらタンパク質は、更に、肥満症を処置する療法の開発のための候補薬物標的として認められていて、現在、薬物開発段階にある。これら進歩は、現在の肥満症蔓延を、近い将来に薬物で有効に処置することができるという希望を与える。
【0008】
肥満症におけるリン脂質輸送タンパク質(PLTP)−肥満症に関連した異常脂血症は、高トリグリセリド血症、低HDLCおよび増加した血漿PLTP活性によって示される。ヒトの場合、現在、血漿PLTP活性は、肥満対象において、更には、高血漿トリグリセリドおよび肥満症に関連したインスリン抵抗性および2型糖尿病において、有意に上昇すると考えられる。更に、胃絞扼手術後の顕著な体重減少は、PLTP活性の有意の減少を引き起こした。PLTPは、HDLのサイズおよび組成を調節する場合に、したがって、血漿HDLレベルを制御する場合に、コレステロール逆輸送で機能すると考えられる。したがって、肥満個体における血漿PLTP活性の逆説的増加は、肥満症においてそれが何の役割を果たしているかに関する疑問を生じさせた。
【0009】
PLTPのプロフィール−ヒトPLTPは、16エクソンを含有し、染色体20q12−q13.1上の約13kbにわたり、1750塩基対および476アミノ酸長さのcDNAを含む遺伝子によってコードされた主要血清タンパク質である。
【0010】
SDS−PAGE上で精製されたPLTPの分子量は、そのcDNAから予想されるタンパク質質量よりはるかに大きい約81kDaであり、そしてそのmRNA転写物は、膵臓、肺、腎臓、心臓、肝、骨格筋および脳を含めたいろいろな組織中に、更には、皮下脂肪組織と内臓脂肪組織との間に貯蔵関連差を示している脂肪組織中に見出される。PLTPは、リポ多糖結合/脂質輸送タンパク質ファミリーのメンバーであり、それには、コレステロールエステル輸送タンパク質、リポ多糖結合タンパク質および殺細菌/透過増加性タンパク質(bactericidal/permeability-increasing protein)が含まれる。細菌/透過増加性タンパク質(bacterial/permeability increasing protein)の結晶構造は、このファミリーの(PLTPを含めた)タンパク質が、固有の脂質結合部位を含有し、しかもリポタンパク質の間を往復して脂質を再分配する担体タンパク質として働くと考えられるということを示している。
【0011】
PLTPの予想モデル構造は、PLTP輸送活性に臨界的なN末端ポケットおよび脂質結合に関与するC末端ポケットを含む、無極性残基を特徴とする二つの脂質結合ポケットから成る。
【0012】
PLTPの機能−アテローム発生促進性または抗アテローム発生性−PLTPは、キロミクロンおよびVLDLの血管内脂肪分解中に、過剰の表面リン脂質およびコレステロールを、トリグリセリドの多いリポタンパク質からHDLへとコレステロール逆輸送で往復輸送する。更に、in vitro 研究は、PLTPが、異なったリン脂質および遊離コレステロールを、リポタンパク質と再構成された小胞との間で輸送することを示した。PLTPは、更に、コレステロールの有効なアクセプターであると考えられるプレ−β−HDLの形成を引き起こすリモデリング(remodeling)またはHDL変換と称される過程であるHDL粒子サイズ分配を修飾することが可能である。更に、相同的組換えノックアウトによるマウスのPLTP欠乏は、HDLレベルの約50%減少を与え、したがって、トリグリセリドの多いリポタンパク質からHDL中にリン脂質を輸送する場合のその不可欠な役割が示される。興味深いことに、PLTPの過発現も、血漿HDLレベルを低下させる。現在、PLTPについて抗アテローム発生可能性があるが、他には、血漿PLTPレベルおよび活性が、冠状動脈疾患に正に且つ独立して相関することが判明しており、そしてPLTPノックアウトかまたは過発現性マウスへと交配された、アテローム性動脈硬化症の発生について増加した感受性を有するトランスジェニックマウスモデルは、PLTPのアテローム発生促進的役割を示したということが考えられる。
【0013】
更に、PLTP mRNAレベルおよび活性は、一貫して、肥満症に関連しているので、PLTPは、体脂肪の調節において別の機能を有するかもしれないということが示唆される。PLTPと肥満症との間のこの機能的有意性は、十分に理解されていないが、PLTP活性は、体重減少後に減少するので、増加したPLTP合成は、増大した脂肪組織塊の結果でありうるということが考えられた。これら結果は、PLTPの染色体遺伝子座内の肥満症関連表現型との連鎖についての有意の証拠を示したゲノム全体走査(genome-wide scans)研究と一致していると考えられる。更に、いくつかのマウス研究において、染色体2上に存在している体肥満に影響する遺伝子は、ヒト染色体20q上の領域とシンテニーである。
【0014】
低PLTPは、更に、増加したウェスト周囲に直接的に関連していることが分かった。更に、逆説的に、ケノルハブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)において、RNA干渉によるPLTP遺伝子の失活は、脂肪貯蔵の増加を引き起こすということが示されたので、哺乳動物PLTPホモログにおける機能的突然変異は、肥満症をもたらすことがありうるということが示唆された。
【0015】
本発明者は、Chin 米国特許第7,078,411号において、コレステロール逆輸送を増加させる方法であって、カンプトテシンまたはカンプトテシン誘導体を投与して、PLTPの増加発現を促進することによる方法を明らかにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】Chin 米国特許第7,078,411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ここで、発明者は、本明細書中において、有効な方式でPLTPを調節するのに有用であるさらなる進歩を提供した。
更に、本明細書中において、肥満症の発生率およびそれに関連した健康関連問題を減少させるのに有用である進歩を提供する。
【0018】
更に、本明細書中において、個体の体重を調節するのに有効な治療薬の開発に有用である進歩も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一つの側面において、本発明は、リン脂質輸送タンパク質(PLTP)遺伝子発現を転写活性化する方法であって、有効量のプリユーリアニンなどのリモノイド(limonoid)を投与することによる方法に関する。
【0020】
別の側面において、本発明は、有意の体重減少および/または食物摂取量の減少を誘導する方法であって、有効量のプリユーリアニンを投与することによる方法に関する。
また他の側面において、本発明は、更に、次の、
内臓および皮下の脂肪組織を減少させる方法であって、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法;
血清非エステル化脂肪酸レベルを減少させる方法であって、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法;
前脂肪細胞の増殖および分化を阻害する方法であって、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法;および
脂肪細胞において脱分化かまたは脂肪蓄積損失を引き起こす方法であって、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法
を提供する。
【0021】
本発明の別の側面は、肥満対象に用いるための体重減少性組成物であって、プリユーリアニンなどのリモノイドを含む組成物に関する。ある態様において、その対象は、哺乳動物を含む。
【0022】
別の側面において、本発明は、脂質生成の生化学および生理学を探査するための薬理学的組成物であって、リモノイドを含む組成物に関する。
本発明のまた別の側面は、リン脂質輸送タンパク質(PLTP)トランス活性化を刺激する方法であって、プリユーリアニンを用いて、対象の体重減少および脂肪症を誘導することを含む方法に関する。
【0023】
更に提供されるのは、対象の前脂肪細胞の増殖を阻害する、および成熟脂肪細胞への前脂肪細胞の分化を予防する方法であって、有効量のプリユーリアニンを対象に投与することを含む方法である。ある態様において、その対象は、肥満と考えられる。
【0024】
更に提供されるのは、分化した成熟脂肪細胞において脱分化を引き起こすかまたは脂質蓄積を阻害する方法である。その方法は、有効量のプリユーリアニンを対象に投与することを包含する。
【0025】
また別の側面において、本発明は、脂質生成についての一つまたはそれを超えるバイオマーカーに関する。ある態様において、そのバイオマーカーは、リン脂質輸送タンパク質(PLTP)を含む。
【0026】
更に提供されるのは、PLTP遺伝子発現を調節する方法であって、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法である。
更に提供されるのは、プリユーリアニンによるPLTPのトランス活性化をブロックする方法であって、有効量のスタウロスポリンを投与する方法である。
【0027】
本発明のいろいろな目的および利点は、次の好ましい態様の詳細な説明から、添付の図面に照らして読めば、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1。DNAマイクロアレイによるトポテカン(topotecan)へのHepG2細胞の薬理学的応答。HepG2細胞を、500nMのトポテカンでいろいろな時間(A)またはいろいろな濃度で24時間(B)処理した。リン脂質輸送タンパク質(PLTP)の発現変化のデンドログラムを示す。(C)トポテカンによるPLTP発現の誘導を、ノーザンブロット分析によって、独立して確かめた。
【図2】図2。トポテカンによるPLTPプロモーターのトランス活性化。
【0029】
図2A。ルシフェラーゼレポーターに融合した1.5Kb PLTPプロモーターを、トポテカンによって用量依存性でトランス活性化した。
図2B。ネオマイシン選択可能マーカーカセットに融合し且つトランスジェニックラインを生じるようにHepG2細胞中に安定してトランスフェクションされたPLTPプロモーター・ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するHepG2トランスジェニック細胞におけるトポテカンによるPLTPプロモーターの活性化(上図)。トポテカンによるPLTPプロモーターの用量依存性誘導(下図)。結果は、Renilla ルシフェラーゼで規格化後の3回の実験の平均値S.E.である。
【図3】図3。プリユーリアニンによるPLTPプロモーターのトランス活性化。
【0030】
図3A。HepG2トランスジェニック細胞におけるプリユーリアニンによるPLTPプロモーターの用量依存性トランス活性化。結果は、Renilla ルシフェラーゼで規格化後の3回の実験の平均値S.E.である。
【0031】
図3B。PLTPプロモーターのプリユーリアニントランス活性化のスタウロスポリンによる阻害。トランスジェニックHepG2/PLTPpLuc細胞を、スタウロスポリンの存在下かまたは不存在下においてプリユーリアニンで処理した。1,対照;2,DMSO;3,200nMスタウロスポリン;4、5および6,それぞれ、500nM、1000nMおよび2000nMのプリユーリアニン;7、8および9,それぞれ、500nM、1000nMおよび2000nMのプリユーリアニン+200nMスタウロスポリン。結果は、三重反復実験の平均値±S.E.である。
【図4】血中インスリン、グルコースおよびNEFAのレベルへのプリユーリアニンの作用。正常およびob/obマウスを、5mg/kgのプリユーリアニンで処置した後、血清試料を、(図4A)インスリン;(図4B)グルコース;および(図4C)非エステル化脂肪酸(NEFA)プロフィール作成用に採取した。結果は、各々の処置についての3匹/群の被験動物の平均値である。青色柱、正常C57BL/6J;および赤色柱、レプチン欠乏ob/obマウス。
【図5】図5。ob/obマウスの脂肪症へのプリユーリアニンの作用。レプチン欠乏ob/obマウスを、5mg/kgのプリユーリアニンで処置し、そして皮下および内臓の脂肪組織を摘出し且つ秤量した。結果は、示されている(n)ような3〜5匹/群の被験動物の平均値である。
【図6】図6。プリユーリアニンによるNIH−3T3/L1前脂肪細胞の阻害。細胞を、いろいろな濃度(0.5μM、1μMおよび2μM)のプリユーリアニンで処理し、そして7日間毎日計数することによって成長を評価した。結果は、三重反復実験の平均値±S.E.である。
【図7】図7。プリユーリアニンによる前脂肪細胞分化の阻害。NIH−3T3/L1細胞を、分化へと誘導し且つ同時に、2μMのプリユーリアニンで処理した。分化した細胞を、オイルレッドOで染色した。図7A。未分化対照。
【0032】
図7B。分化した脂肪細胞。
図7C。2μMプリユーリアニンの存在下における分化の誘導。
図7D。ホスファチジルセリンへのアネキシンV結合のフローサイトメトリー分析。アポトーシス細胞は、右上四半分にある。全ての実験を、三重反復試験で行った。
【図8】図8。分化した脂肪細胞のプリユーリアニンで誘導される損失。NIH−3T3/L1前脂肪細胞を、分化へと誘導した。分化後5日目に、細胞を、いろいろな濃度(0.5μM、1μMおよび2μM)のプリユーリアニンで更に5日間処理後、オイルレッドOで染色した。三重反復実験の代表するものからミクログラフを得た。陽性染色された細胞のイソプロパノール抽出物を、右側のヒストグラムに示されるように、分光測光によって510nmで定量した。結果は、三重反復実験の平均値±S.E.である。
【図9】図9。スタウロスポリンは、前脂肪細胞のプリユーリアニンで誘導される分化をブロックする。プリユーリアニン(0.5μM、1μMおよび2μM)中で分化した前脂肪細胞を、200nMスタウロスポリンと一緒にかまたは不含で処理した。ミクログラフは、誘導後12日目に、オイルレッドOで染色された細胞を示した。
【0033】
図9A,未分化;
図9B,分化した状態;
図9C,2μMプリユーリアニン中で分化した状態;
図9D,200nMスタウロスポリンと一緒の2μMプリユーリアニン中で分化した状態。
【0034】
ヒストグラムは、細胞からのオイルレッドO染料イソプロパノール抽出物のA510nm吸光度である。結果は、三重反復実験の平均値±S.E.である。
【図10】前脂肪細胞および脂肪細胞によるおよび正常マウスの血清中のアディポネクチンおよびPLTPの放出。前脂肪細胞(BおよびD)を、2μMのプリユーリアニンで処理し、そして36時間後に、アディポネクチン(AおよびB)かまたはPLTP(CおよびD)のウェスタンブロット分析用に、培地を集めた。或いは、分化後5日目に、脂肪細胞(AおよびC)のならし培地を、ウェスタン分析用に集めた。E。プリユーリアニンまたはトポテカン(0、2mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg)を与えられた正常C57BL/6Jマウスの血清を、PLTPについてウェスタンブロットで分析した。
【図11】細胞傷害性薬および非細胞傷害性薬によるPLTPプロモーターのトランス活性化。HepG2トランスジェニック細胞中におけるいろいろな細胞傷害性薬および非細胞傷害性薬によるPLTPプロモーターのトランス活性化の測量を行った。結果は、3回の実験の平均値S.E.である。
【図12】プリユーリアニンによるPLTPプロモーターのトランス活性化へのトリコスタチンA(TSA)の作用。200nM TSAの存在下かまたは不存在下におけるプリユーリアニンによるPLTPプロモーターの用量反応活性化。結果は、3回の実験の平均値S.E.である。
【図13】正常C45BL/6JマウスまたはC57BL/6Jレプチン欠乏ob/obマウスにおける体重および食物摂取量へのプリユーリアニン処置の作用。
【図14】正常C57BL/6JマウスまたはC57BL/6Jレプチン欠乏ob/obマウスにおける血清リポタンパク質、PLTP活性およびレプチンのレベルへのプリユーリアニン処置の作用。
【図15】db/dbおよび食事性肥満 Ceacam−/−マウスにおけるプリユーリアニンの作用。
【0035】
図15A。10匹のdb/dbマウス群に、3mg/kgかまたは5mg/kgのプリユーリアニンを腹腔内に30日間毎日与えた。
図15B。遺伝的糖尿病の Ceacam−/−ノックアウトマウスには、肥育用の高脂肪食を4週間供給後、毎日のプリユーリアニン処置(3mg/kgまたは5mg/kg)を21日間行った。ビヒクル被処置db/dbおよび Ceacam−/−マウスには、等容量の Captisol を与えた。結果は、10匹/群の被験動物の平均値S.E.である。
【図16A】食事性肥満C57Bl/6Jマウスにおけるプリユーリアニンの作用。B6マウスに、60%kcal高脂肪食を約15週間与えた後、10匹ずつの群に分け、次に、それらの腹腔内に、1mg/kg(緑色)かまたは3mg/kg(褐色)のプリユーリアニンで3週間毎日処置し、未処置対照(青色)またはビヒクル被処置対照(赤色)と比較した。
【0036】
図16A。プリユーリアニンで処置されたマウスの、対照と比較した3週間の処置中の平均体重変化。
【図16B】図16B。Aの場合と同様にプリユーリアニンで処置されたB6マウスにおける平均食物消費量。
【図16C】図16C。本文中に記載の全4サイクルの「オン・オフ(on-off)」周期的スケジュールでのプリユーリアニンで処置されたB6マウスにおける平均体重変化。結果は、10匹/群の被験動物および20匹のマウスを含む3mg/kg群の平均値S.E.である。
【図17】薬物誘導抵抗性を克服するための「オン・オフ」または「周期的」処置スケジュール。この処置戦略は、間欠的薬物休日と合いまった規定の処置期間の規定用量の処置を含んで成り、薬物誘導抵抗性、脱感作、または代謝性障害および他の障害の処置における応答欠如を克服することができる。
【図18】脂質生成におけるC/EBPαおよびβおよびPPARγに媒介される転写へのプリユーリアニンの作用。C/EBPαおよびβおよびPPARγに該当する応答要素を、pGL3基本ルシフェラーゼレポータープラスミド中にクローン化した。L1前脂肪細胞を、発現ベクター中にクローン化された該当する転写因子の存在下かまたは不存在下において、レポータープラスミドでコントランスフェクション(contransfection)後、2μMのプリユーリアニンで処理した。15〜24時間後、細胞を、ルシフェラーゼ検定用に採取した。結果は、三重反復実験の平均値±S.E.である。
【図19】前脂肪細胞分化および脂肪細胞中の脱分化/脱脂へのブファリンの作用。NIH−3T3/L1細胞を、分化へと誘導し且つ同時に、1μMのブファリンかまたは2μMのプリユーリアニンで処理した。分化した細胞を、ナイルレッドで染色した。或いは、前脂肪細胞を、分化へと誘導し、そして分化後5日目に、細胞を、1μMのブファリンかまたは2μMのプリユーリアニンで更に5日間処理した後、ナイルレッドで染色した。染色された細胞を、蛍光顕微鏡法で評価した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本システムは、PLTP遺伝子発現の誘導方法を提供する。本システムは、更に、PLTPレベルを上昇させ且つコレステロール逆輸送をモジュレーションする方法を提供する。
【0038】
別の側面において、PLTPレベルを上昇させ且つコレステロール逆輸送をモジュレーションする非細胞傷害性天然物低分子を提供する。C.elegans 中のsiRNAで誘導されるPLTP損失は、脂肪貯蔵を増加させる。ここで、プリユーリアニンは、PLTP遺伝子発現をトランス活性化するし且つ摂食抑止剤であるということが分かる。
【0039】
別の側面において、脂質生成の生化学および生理学を探査するのに有用な新規な薬理学的組成物としてプリユーリアニンを使用する方法を、本明細書中で提供する。
プリユーリアニンは、PLTP遺伝子発現を誘導し、そして体重および脂肪質量を有効に減少させる。プリユーリアニンは、更に、前脂肪細胞の増殖および分化を阻害し、そして脂肪細胞を脱分化させるかまたは脂肪細胞が脂質を蓄積するのを予防する。ob/obマウスの脂肪症へのプリユーリアニンの作用および培養された前脂肪細胞および脂肪細胞へのその抗脂質生成作用ゆえに、本発明者は、現在、体重および脂肪質量減少へのプリユーリアニンの抗脂質生成作用にはPLTPが必要であると考えている。
【0040】
別の側面において、有効な抗肥満剤としてプリユーリアニンを使用する方法を提供する。マウスにおけるその効力を調べたところ、プリユーリアニンは、全体重、脂肪および食物摂取量を有意に減少させた。その薬物は、更に、マウスの高血糖状態を、正常マウスに匹敵するレベルへと逆転させた。
【0041】
更に別の分子研究において、プリユーリアニンは、前脂肪細胞の増殖を阻害し、そして更に、脂肪細胞へのそれらの分化を予防するということが確かめられた。プリユーリアニンは、脂肪細胞の脱分化を引き起こすかまたはそれらが脂質を蓄積するのを予防することができる。
【0042】
プリユーリアニンは、前脂肪細胞によるアディポネクチンの放出を阻害するので、それらの脂肪細胞への分化のブロックの原因となりうる。逆説的に、プリユーリアニンは、脂肪細胞中のPLTPの分泌を誘導するが、前脂肪細胞において、PLTPの放出は阻害されない。細胞培養研究において、プリユーリアニンは、トポテカンと比較して、比較的非細胞傷害性であり(データは示されていない)、実験継続期間にその薬物を与えられた被験動物において認められる明白な毒性はなかった。
【0043】
したがって、プリユーリアニンは、脂質生成を標的とする抗肥満作用を有する天然物低分子である。
具体的な側面において、プリユーリアニンは、いろいろな基礎にある病原性機構を有する肥満症のマウスモデルにおいて、食欲を抑制することによって体重減少を生じることに、そして更には、前脂肪細胞の増殖および分化を阻害する場合のその独特の薬理学的プロフィールによって、脂肪細胞の脱分化および脱脂を引き起こすことに作用を有することが、本明細書中に示される。
【0044】
更に、ここで、プリユーリアニンの分子機構は、現在、NFκBシグナリング経路を活性化することによって、および脂肪細胞への前脂肪細胞分化のC/EBPαおよびβまたはPPARγに媒介される転写活性化を阻害することによって、脂質生成の転写調節を阻害するその能力にあると考えられるということが本明細書中に示される。
【0045】
上に記載の利点を、ここで、次の非限定的な実施例によって詳しく説明する。
【実施例】
【0046】
実施例1−HepG2細胞のトポテカンへの薬理学的応答
発現ゲノミクスによるトポイソメラーゼ(Top)1阻害剤への耐性の機構を、DNAマイクロアレイによる時間経過実験および用量反応実験を行うことによって研究して、500nMのトポテカン(細胞傷害性抗癌剤)でいろいろな時間(0、1時間、3時間、5時間、10時間、15時間および24時間)かまたはいろいろな用量のトポテカン(0、10nM、50nM、100nM、300nM、500nMおよび1000nM)で24時間処理されたヒト肝細胞芽細胞腫HepG2細胞のトポテカンへの薬理学的応答を調べた。
【0047】
トポテカンによって誘導された全体の遺伝子発現変化は、穏当であったが、PLTP遺伝子を除いて、大部分の遺伝子は、低レベルの発現変更を示した。
図1の結果は、トポテカンへの応答におけるPLTPの時間経過(図1A)および用量反応(図1B)発現のデンドログラムを示した。トポテカンによるPLTP発現の活性化は、一時的に調節され且つ用量依存性であり、後期開始で、24時間に約20倍誘導でピークに達した。トポテカンで誘導されたPLTP発現は、ノーザンブロット分析によって独立して確かめられたが、それは、PLTPが、マイクロアレイ研究で認められたものと一致して、トポテカンによって用量依存性で誘導されたということを示した(図1C)。
【0048】
PLTP遺伝子発現の誘導は、ブロット分析において、ルシフェラーゼレポーターに融合したPLTPのプロモーターが、トポテカンによって用量依存性でトランス活性化されるように(図2A)、トポテカンによって転写調節される。
【0049】
したがって、Top1阻害剤は、培養中のHepG2細胞中で(図1および図2を参照されたい)、更には、マウスにおいて in vivo で(データは示されていない)、PLTP遺伝子発現を誘導する。更に、本発明者は、ここで、PLTPが、肥満症のバイオマーカーとして有用であり且つ肥満症の場合の脂質生成に重要な役割を有するということを本明細書中に示す。
【0050】
実施例2.PLTP遺伝子発現の天然物低分子誘導物質のスクリーニング
PLTPは、コレステロール逆輸送に関与している。更に、PLTPの発現および活性は、肥満症に関連している。更に、RNAに媒介される干渉によるPLTP遺伝子発現の失活後のC.elegans における脂肪貯蔵の増加は、PLTPを標的とする低分子が、肥満症を処置するための薬物を開発するのに有用でありうるということを示す。
【0051】
非細胞傷害性低分子が、PLTP発現を誘導しうるか否かを確かめるために、本発明者は、ネオマイシン(G418)耐性選択可能マーカーを含有するベクター中にPLTPプロモーター・ルシフェラーゼレポーターをサブクローン化し、そしてトランスジェニックHepG2細胞系を生じたが、それは、安定な遺伝子トランスフェクションおよびG418での選択により、PLTPプロモーター・ルシフェラーゼレポーターを含んでいる。そのトランスジェニック細胞系HepG2/PLTPpLucは、PLTPプロモーターレポーターで一時的にトランスフェクションされたHepG2細胞と同様であったトポテカン応答を示す(図2B)。
【0052】
次に、それらトランスジェニック細胞を、天然物由来の低分子のライブラリーでスクリーニングした。プリユーリアニンは、PLTPプロモーターの最強のトランス活性化を示し、しかもPLTPの誘導を用量依存方式で示した(図3A)。
【0053】
本発明者は、更に、プリユーリアニンによるPLTPプロモーター活性のトランス活性化が、スタウロスポリンによって阻害されることを発見したので、プリユーリアニンによるPLTP発現の転写調節は、プロテインキナーゼによって調節されるということが示唆された(図3B)。
【0054】
実施例3.プリユーリアニンの抗肥満作用
プリユーリアニンについては、ほとんど知られていない。それは、リモノイド化合物であり、しかも培養中のショウジョウバエ細胞において20−ヒドロキシエクジソン活性に対する拮抗作用を示す天然物摂食阻害剤である。その薬物は、細胞培養研究においてトポテカンと比較したところ、比較的非細胞傷害性である。
【0055】
プリユーリアニンを、12〜14週令の正常C57BL/6Jマウスおよび遺伝的レプチン欠乏ob/obマウスに(2mg/kgまたは5mg/kg)、週2回2週間、腹腔内投与した。対照には、薬物ビヒクルの等容量注射を与えた。体重および食物摂取量を、3日毎に測定し、そして実験の最後に、血液試料を採取した。
【0056】
プリユーリアニンでの処置は、2mg/kgかまたは5mg/kgで処置されたレプチン欠乏ob/obマウスについて、2週間後に全体重の10%までの用量依存性減少を生じた(表1がある図13を参照されたい)。
【0057】
更に、食物摂取量の50%程度までの用量依存性減少も、5mg/kgで処置された群において、未処置またはビヒクル被処置対照に相対して認められた。穏当な体重減少、更には、減少した食物摂取量も、正常C57BL/6Jマウスにおいて認められた。これら結果は、得られた体重減少および食物摂取量減少が、プリユーリアニンの摂食抑止作用に依るということを示唆している。
【0058】
実施例4.プリユーリアニンの代謝作用
肥満症は、高血圧症、高血清コレステロール、低LDLコレステロールおよび高血糖症の原因となり、したがって、潜在的に、心臓血管疾患の一層高いリスクをもたらす。腹部肥満症は、特に、代謝性リスクファクターと相関している。レプチン欠乏ob/obマウスは、高脂血症であり且つ高血糖症である。プリユーリアニンが、食欲の他に、代謝性または内分泌学的パラメーターを変化させるか否かを調べるために、血清脂質プロフィール、インスリンおよびグルコースのレベルを測定した。しかしながら、未処置およびプリユーリアニン被処置双方の正常対照並びにob/obマウスにおいて、トリグリセリドレベルに有意の変化が認められたものはなかった(データは示されていない)。
【0059】
総コレステロールおよびHDLのレベルも、正常の未処置およびビヒクル被処置マウスにおいて、プリユーリアニンで処置してもしなくても、比較的未変化のままであった(表2がある図14を参照されたい)。
【0060】
対照的に、プリユーリアニン被処置ob/obマウスの場合、穏当ではあるが、総コレステロールレベルは有意に低下した。更に、HDLレベルは、プリユーリアニン被処置ob/obマウスにおいて、未処置およびビヒクル被処置の被験動物よりも約2倍低かった。プリユーリアニンでの処置は、更に、正常C57BL/6Jマウスにおいて血清PLTP活性の増加を引き起こした(図14)。
【0061】
逆説的に、プリユーリアニンが、PLTP遺伝子の発現を活性化するとしても、プリユーリアニンを与えられたob/obマウスは、血清PLTP活性の減少を示した(図3)。しかしながら、プリユーリアニン被処置ob/obマウスにおけるPLTP活性の減少は、体重減少後のヒト肥満対象において報告されたものと一致する。正常マウスの場合、プリユーリアニンでの処置は、レプチンレベルの減少を引き起こしたが、それは、予想されるように、ob/obマウスにおいて検出不能であった(図14)。
【0062】
ob/obマウスの高血糖症は、プリユーリアニン(5mg/kg)被処置ob/obマウスにおいて、正常対照のものに匹敵するレベルへと逆転した(図4Bを参照されたい)。
【0063】
ob/obマウスの場合、プリユーリアニンは、更に、インスリンレベルを、約3〜4倍減少させた(図4Aを参照されたい)。更に、プリユーリアニン処置は、正常C57BL/6Jマウスにおいて、インスリンレベルもグルコースレベルもほとんど変化させなかった。
【0064】
脂肪分解および脂肪酸調節の経路の妨害は、肥満症の病因論において重要である。骨格筋および脂肪組織による非エステル化脂肪酸(NEFA)の取込みの変更は、その血漿中濃度の臨界的決定因子である。図4Cに示されるように、NEFAレベルは、レプチン欠乏ob/obマウスにおいて、正常C57BL/6Jマウスと比較して高い。正常マウスの場合のプリユーリアニンでの処置は、NEFAレベルの減少を引き起こした。しかしながら、ob/obマウスの場合、プリユーリアニンの投与後に、穏当なNEFAレベル減少だけが認められた。
【0065】
実施例5.脂質生成へのプリユーリアニンの作用
正常C57BL/6Jマウスおよびob/obマウスの脂肪症へのプリユーリアニンの作用を更に調べるために、本発明者は、それらの内臓および皮下の体脂肪を測定した。全体脂肪は、プリユーリアニン被処置ob/obマウスにおいて、未処置およびビヒクル被処置対照と比較して50%を超えて有意に減少した(図5を参照されたい)。正常C57BL/6Jマウスの体脂肪率は、いずれの用量でも、プリユーリアニンによってほとんど変わらなかった(データは示されていない)。
【0066】
培養中の前脂肪細胞の成熟脂肪細胞への分化は、TNFα、IL−1β、IFNγまたはTGFβ1によって完全に阻害されるということが、従来分かっているが、それは、アディポネクチンの放出の消滅によって達成される。プリユーリアニンは、ob/obマウスの場合、皮下および内臓双方の脂肪組織を有意に減少させたので(図5を参照されたい)、本発明者は、細胞培養研究において、(i)前脂肪細胞の増殖;(ii)前脂肪細胞の脂肪細胞への分化;および(iii)脂肪細胞の脂質蓄積の阻害または脱分化の促進についてのその作用を調べた。
【0067】
図6に示されるように、プリユーリアニンは、NIH−3T3/L1前脂肪細胞の増殖を用量依存方式で阻害した。顕著な阻害(50%)は、2μMのプリユーリアニンで7日目に認められた。
【0068】
前脂肪細胞の脂肪細胞への分化についてのプリユーリアニンの作用を確かめるために、NIH−3T3/L1前脂肪細胞を、分化の誘導が開始する時に同時に、薬物でまたは薬物不含で処理した。本発明者は、未処理/未分化対照および分化した対照に相対して、オイルレッドO染色された脂質蓄積性脂肪細胞の数の顕著な減少から明らかなように(図7A〜Cを参照されたい)、プリユーリアニンが、前脂肪細胞の脂質蓄積性脂肪細胞への分化をも、用量依存性で妨げたということを発見した。
【0069】
興味深いことに、プリユーリアニンで処理された前脂肪細胞は、前脂肪細胞と比較して幾分異なった形態を獲得したし(図7C)、しかもホスファチジルセリンへのアネキシンV結合の欠如によって示されるように、前脂肪細胞においてアポトーシスを示差的に誘導しなかった(図7Dを参照されたい)。細胞数も、未処理またはビヒクル被処理対象と、薬物で処理された分化している細胞との間で比較的同様であった。
【0070】
結果は、プリユーリアニンが、前脂肪細胞の増殖を阻害し、そして更に、前脂肪細胞の成熟脂肪細胞への分化を妨げるということを示した。プリユーリアニンが、分化した脂肪細胞への何らかの作用を有するか否かを評価するために、前脂肪細胞を、脂肪細胞へと分化させた後、更に、約5日間培養後、それら脂肪細胞をプリユーリアニンで更に5〜6日間処理した後、脂質蓄積性脂肪細胞の存在についてオイルレッドO染色を行った。
【0071】
プリユーリアニンで処理された細胞において、オイルレッドO染色された細胞数の顕著な用量依存性減少が認められたが(図8下区画を参照されたい)、ビヒクル処理された対照は、分化した対照と匹敵しうる数の脂質陽性染色細胞を示した。オイルレッドO染料A510吸光度で定量した場合、本発明者は、2μMのプリユーリアニンでは、脂質陽性細胞数が、ほぼ不存在で、未分化対照に匹敵しうるレベルへと減少したということを示した(図8右側のヒストグラムを参照されたい)。これら結果は、更に、前脂肪細胞増殖を阻害することおよびそれらの分化を妨げることに加えて、プリユーリアニンが、それらの脱分化を引き起こすことかまたはそれらの脂質蓄積を阻害することによって、分化した成熟脂肪細胞にも働くということを示唆している。
【0072】
実施例6.スタウロスポリンは、プリユーリアニンによる分化の阻害を部分逆転させた
プリユーリアニンによるPLTPのトランス活性化は、「通常型(conventional)」プロテインキナーゼC(PKC)イソ酵素の強力な阻害剤であるスタウロスポリンによってブロックすることができる(図3Bを参照されたい)。本発明者は、更に、プリユーリアニンによるPLTPの転写活性化が、前脂肪細胞分化を阻害するということを示した(図7を参照されたい)。プリユーリアニンで媒介されるPLTPのトランス活性化をスタウロスポリンによって阻害することが、分化のブロックを逆転させることがありうるか否かを評価するために、前脂肪細胞の分化を、プリユーリアニン(0、0.5μM、1μMおよび2μM)の存在下において200nMスタウロスポリンと一緒にかまたは不含で誘導した。上の結果と一致して(図7を参照されたい)、スタウロスポリンの不存在下において、2μMのプリユーリアニンは、前脂肪細胞分化をほぼ完全に阻害した(図9Cを参照されたい)。
【0073】
分化誘導時のスタウロスポリンの添加は、プリユーリアニンによる阻害を部分逆転させたが(図9Dを参照されたい)、スタウロスポリン単独では、分化への観察可能な作用を示さなかった(データは示されていない)。これら結果は、オイルレッドO染色された前脂肪細胞のイソプロパノール抽出物のA510吸光度を監視することによって確認した。プリユーリアニンは、前脂肪細胞分化を用量依存方式で阻害し、そしてその阻害は、スタウロスポリンによって部分逆転した(図9ヒストグラムを参照されたい)。したがって、ここで、本発明者は、プリユーリアニンによって誘導されるPLTP発現が、前脂肪細胞分化の阻害に必要であると考え、したがって、それが示唆される。
【0074】
実施例7.アディポカインおよびPLTPの分泌へのプリユーリアニンの作用
脂肪組織は、前脂肪細胞および脂肪細胞を含めたいろいろなタイプの細胞を含有している。更に、前脂肪細胞は、それら自体の分化に関与する因子を分泌する。いったん分化すると、成熟脂肪細胞は、レプチンおよびアディポネクチンを分泌することにより、脳、肝および骨格筋を含めた他の器官と遠位連絡するし且つ前脂肪細胞、内皮細胞および単球/マクロファージなどの他の細胞と局所連絡する能力を獲得する。更に、抗脂質生成サイトカインは、前脂肪細胞によるアディポネクチンの放出を妨げる。したがって、前脂肪細胞および脂肪細胞によるアディポネクチンおよびPLTPの生産を評価した。前脂肪細胞によるならし培地中へのアディポネクチン放出の阻害は、プリユーリアニンで処置後約36時間に認められた(図10Bを参照されたい)。
【0075】
PLTPの発現を誘導するトポテカンも(図10を参照されたい)、NIH−3T3/L1前脂肪細胞によるアディポネクチンの生産を有意に阻害した(図10B)。これら結果は、前脂肪細胞分化の遮断が、アディポネクチンの放出の阻害によって達成されるという従来の報告と一致する。更に、プリユーリアニンは、高分子量形の生産および放出、更には、分化した脂肪細胞中の全アディポネクチンの分泌の穏当な増加を誘導したが、トポテカンはしなかった(図10Aを参照されたい)。
【0076】
前脂肪細胞および脂肪細胞によるPLTPの発現および分泌も評価した。したがって、前脂肪細胞は、低分子量および高分子量双方の形のPLTPを生産し且つ放出したが、脂肪細胞は、低分子量形だけを、ならし培地中に分泌した(図10Cおよび図10Dを参照されたい)。
【0077】
意外にも、前脂肪細胞におけるトポテカンかまたはプリユーリアニンでの処理後、高分子形ではなく低分子形のPLTPの放出が減少した(図10Dを参照されたい)。
対照的に、トポテカンおよびプリユーリアニンは、脂肪細胞において、低分子量形のPLTPだけの放出の増加を誘導した(図10Cを参照されたい)。PLTPの放出における前脂肪細胞と脂肪細胞との間のこれら示差的プロフィールは、プリユーリアニンの薬理作用への複雑な内因性の生理学的応答を示唆する。
【0078】
実施例8.プリユーリアニンおよびトポテカン処置後の血清PLTPタンパク質レベル
マイクロアレイ分析におけるトポテカンでの時間経過研究および用量反応研究は、PLTPが、薬物で処理後約12〜15時間に誘導開始での後期遺伝子であるということを示した(図10Aを参照されたい)。プリユーリアニンによるPLTPトランス活性化の開始は、トポテカンの場合に類似している。プリユーリアニンかまたはトポテカン(0、2mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg)によるPLTP遺伝子発現の誘導は、血清PLTPタンパク質レベルの上昇によって達成された(図10Eを参照されたい)。
【0079】
実施例9.マウスの体重減少および脂肪症についてのプリユーリアニンによるPLTPトランス活性化の薬理学的阻害
正常マウスおよびob/obマウスの脂肪症についてのスタウロスポリンと一緒のプリユーリアニンの薬理学的阻害を調べた。PKC活性化剤である12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)は、PLTPプロモーターを誘導し(図11を参照されたい)、そしてその活性化は、PKC阻害剤スタウロスポリンによって消滅した。本発明者は、現在、PKCシグナリング経路が、PLTP発現の転写調節に関与しているかもしれないと考えている。これら結果は、更に、プリユーリアニンで誘導されたPLTPプロモーター活性が、スタウロスポリンによって阻害されたということを示した(図3Bを参照されたい)。
【0080】
更に、プリユーリアニンによる前脂肪細胞分化の阻害は、スタウロスポリンによって部分逆転して(図9を参照されたい)、プリユーリアニンによるPLTPのトランス活性化および分化の阻害におけるPKCに可能性のある役割を更に指摘した。プリユーリアニンによるPLTPのトランス活性化は、スタウロスポリンによってブロックされたので、これら結果は、プリユーリアニンで誘導された体重減少および脂質生成の阻害を、スタウロスポリンの共投与によって排除するまたは逆転させることができるということを示している。
【0081】
実施例10.脂質生成についてのプリユーリアニンで誘導されたPLTP発現のスタウロスポリンによる薬理学的阻害
脂質生成性転写因子であるペルオキシソーム増殖応答性レセプター(peroxisome proliferator-activated receptor)−γ(PPARγ)およびCCAAT/エンハンサー結合タンパク質−αおよびβ(C/EBPαおよびβ)は、脂質生成中に起こる複雑な転写カスケードにおいて不可欠な役割を果たす。PPARγとRBとの間の相互作用は、ヒストンデアセチラーゼHDAC3の補強によって、PPARγの転写活性を減少させる。HDAC活性の阻害は、結果として、PPARγの強い活性化を引き起こす。バルプロ酸は、マウスにおいておよびNIH−3T3/L1前脂肪細胞においてアディポネクチン遺伝子発現を阻害することが分かっているが、C/EBPαタンパク質レベルおよびそのアディポネクチンプロモーターへの結合を減少させる。プリユーリアニンは、PLTPの転写活性化剤であるので、本発明者は、現在、薬物の若干の薬理作用が、これら転写因子によって影響されると考えている。
【0082】
図12に示されるように、HDAC阻害剤トリコスタチンA(TSA)は、穏当ではあるが、プリユーリアニンによるPLTPプロモーター活性のトランス活性化を増強したので、PPARは、プリユーリアニンの転写調節においてある役割を果たしているかもしれないということが分かった。これら予備的結果は、更に、PKC阻害剤であるスタウロスポリンが、プリユーリアニンによるPLTPトランス活性化を強く阻害し(図3Bを参照されたい)、そして更に、プリユーリアニンによる前脂肪細胞の増殖および分化の阻害を逆転させた(図6および図7を参照されたい)ということを示した。プリユーリアニンおよびエンドセリン−1による前脂肪細胞分化の阻害には、若干の類似性があるが、プリユーリアニンおよびエンドセリン−1へのスタウロスポリンの薬理作用は同じではないので、エンドセリン−1およびプリユーリアニンは、おそらくは異なった経路によって、前脂肪細胞の分化を阻害したということが分かる。
【0083】
実施例11.プリユーリアニンの抗肥満作用
プリユーリアニンの作用を、遺伝的高インスリン血性レプチン受容体欠乏db/dbマウス、Ceacam−/−グルコース不耐症/糖尿病マウス、および食事性肥満マウスを含めた3種類の追加の肥満症マウスモデルにおいて調べた。プリユーリアニンを、12〜14週令db/dbマウスに、30日間毎日(3mg/kgまたは5mg/kg)腹腔内(i.p.)投与した。食事性肥満 Ceacam−/−糖尿病マウスには、肥育用の高脂肪食を4週間供給後、プリユーリアニン処置(3mg/kgまたは5mg/kg)を3週間行った。ビヒクル被処置対照には、Captisol(CyDex Inc., Lenexa, KS)の等容量注射を与えた。体重および食物摂取量を、3日毎に測定し、そして実験の最後に、血液試料を採取した。
【0084】
プリユーリアニン被処置db/dbマウスにおいて、体重減少は認められなかったが、代わりに、本発明者は、未処置またはビヒクル被処置対照と比較して、3週間にわたって50%までの顕著な体重増加減衰を発見した(図15Aを参照されたい)。
【0085】
食事性肥満 Ceacam−/−糖尿病マウスの場合、プリユーリアニンで処置された被験動物において、対照と比較したところ、>50%の食物摂取量減少(データは示されていない)を伴って、約20〜26%の体重減少が認められた(図15Bを参照されたい)。体重は、3mg/kg被処置群の場合、肥育前レベルに戻った。5mg/kgのプリユーリアニンを与えられたマウスは、激しい体重減少および未知の毒性ゆえに、処置から14日後に安楽死させた。これらマウスの死後分析では、対照に相対して、皮下脂肪も内臓脂肪もほとんど認められなかった(データは示されていない)。
【0086】
世界中に普及している坐業的ライフスタイルと合いまった濃密な高カロリー食は、肥満症の発生率の急上昇の原因となってきた。肥満症の場合のプリユーリアニンの効力を更に調べるために、食事性肥満(DIO)C57BL/6J(B6)マウスモデルにおけるその作用を、更に研究した。
【0087】
B6マウスに、60%kcal高脂肪食を約15週間供給して、体重を増加させた後、腹腔内に1mg/kgかまたは3mg/kgのプリユーリアニンで3週間毎日処置した。マウスは、処置期間中、60%kcal食を随意に入手できる状態であった。
【0088】
それら結果は、7日間の処置中に全体重の10%までの体重減少の用量依存性誘導を示したが(図16Aを参照されたい)、それは、食物消費量の70〜80%減少を伴い、最終的には、3週間処置の最後までにほぼ正常レベルへと戻った(図16Bを参照されたい)。しかしながら、体重減少達成の後、2週後には体重の漸次増加があった。これら結果は、プリユーリアニンで処置されたマウスが、薬物への抵抗性を生じたかもしれないということを示唆した。
【0089】
薬物誘導抵抗性の問題を回避するために、新しいプロトコールを開発したが、その場合、DIOマウスでは、プリユーリアニン処置を止め、そしてそれらマウスを、高脂肪60%kcal食で維持し続けた。4週間後、マウスを、次のプロトコールで再度処置した。3mg/kgのプリユーリアニンを5日間、そして次に、5日間の休薬(無処置)を行い、その処置を更に3サイクル繰り返す;かまたは5mg/kgのプリユーリアニンを3日間、そして次に、5日間の休薬を行い、その処置を更に3サイクル繰り返す。
【0090】
この「オン・オフ」処置戦略(図17を参照されたい)は、薬物誘導抵抗性を克服すると考えられ、そして3mg/kgかまたは5mg/kgのプリユーリアニンで20%までの体重減少の一層顕著な応答を生じ、研究の最後の方まで観察可能な体重増加を生じなかったということが認められた(図16C)。食物消費量は、周期的処置プロトコールの継続期間中に約40%減少し且つ維持された(図16B)。
【0091】
それら結果は、毎日の薬物処置による薬物の有効性の喪失を、この新規な周期的またはオン・オフ処置プロトコールで克服することができるということを示したが、それは、より大きな応答および体重減少の維持を生じ、したがって、薬物誘導抵抗性を回避する。本発明者は、現在、食欲抑制抗肥満薬(Meridia を含めた)および他の抗肥満薬が、おそらくは、エネルギー代謝を破壊する薬物処置に応答した代償性の生理学的ホルモン変化ゆえに、延長された処置過程わたってそれらの有効性を喪失し且つ抵抗性に遭遇すると考えている。
【0092】
この新規な周期的またはオン・オフ処置プロトコールは、抗肥満剤の効力を改善する方法であり、そして一般的な代謝性障害および他のヒト障害の処置に適用可能でありうると考えられる。
【0093】
実施例12.プリユーリアニンの作用機構
プリユーリアニンは、前脂肪細胞の増殖および分化を阻害し、そして更に、脂肪細胞の脱分化かまたは脱脂を引き起こす。プリユーリアニンの分子機構を明らかにするために、脂質生成の転写調節へのプリユーリアニンの作用を評価した。
【0094】
図18に示されるように、プリユーリアニンは、NFκB応答要素に媒介される転写からのトランス活性化を誘導するが、C/EBPαおよびβおよびPPARγのトランス活性化可能性を阻害する(図18を参照されたい)。
【0095】
これらレポーター検定は、したがって、脂質生成を調節するこれら転写過程を標的とするプリユーリアニンの化学類似体またはその関連低分子ファミリーでありうると考えられる化合物について更にスクリーニングするのに有用である。したがって、NFκBに媒介される転写経路の誘導を促進するかまたは、脂質生成を臨界的に調節するC/EBPαおよびβおよびPPARγによる転写の阻害を引き起こす低分子についての高処理スクリーニングは、有効な新規抗肥満薬の識別のための革新的アプローチである。
【0096】
実施例13.脂質生成へのブファリンおよびプリユーリアニンの作用
強心性ステロイドブファリンであるブファジエノリドは、PLTPプロモーター様プリユーリアニンを刺激するが、しかしながら、前脂肪細胞の分化を阻害しなかったし、しかも脂肪細胞において脱分化も脱脂も引き起こさないし(図19を参照されたい)、NFκB、C/EBPαおよびβ、およびPPARγの転写活性をモジュレーションすることもなかった(データは示されていない)。これら結果は、脂質生成におけるプリユーリアニンの作用の特異性を示し、そして更に、プリユーリアニンおよびその誘導体の薬物支持体(pharmacophore)は、脂質生成において特異的作用を有することがありうるということを示している。
【0097】
実施例14.使用および/または処方の非限定的な例
別の側面において、対象の肥満症を予防するまたは処置する方法であって、その対象に、治療的有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法を、本明細書中において提供する。ある種の態様において、その対象は、このような処置または予防を必要としている。
【0098】
別の側面において、対象の皮下脂肪組織中のPLTPの発現をダウンレギュレーションする方法であって、その対象に、治療的有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0099】
別の側面において、哺乳動物の脂質生成を改善するまたは予防する方法であって、その哺乳動物に、治療的有効量のプリユーリアニンまたはその誘導体を投与することを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0100】
本明細書中に開示のそれら方法は、脂質生成が、疾患に関連している場合に、更に有用である。更に、方法は、注射、経口、または脂肪組織中への皮下注射による投与が含まれるがこれに制限されるわけではないいずれか適する方法によって実行することができる。
【0101】
ある種の態様において、脂質生成の予防は、脂肪組織質量を実質的に減少させる。
実施例15.NFκBシグナリング経路を in vivo で刺激すること
別の側面において、NFκBシグナリング経路を刺激することを必要としている対象に、in vivo でNFκBシグナリング経路を刺激する方法であって、プリユーリアニンを投与して、その対象の体重減少および/または脂肪症を誘導することを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0102】
別の側面において、リモノイドまたは他の低分子物質または模倣体のスクリーニングに有用なNFκB応答要素レポーターシステムを、本明細書中において提供する。
別の側面において、一つまたはそれを超える分子物質または模倣体のスクリーニング方法であって、NFκB応答要素レポーターシステムを用いることを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0103】
ある種の態様において、分子物質または模倣体は、一つまたはそれを超えるリモノイドを含む。更に、ある種の態様において、リモノイドを、体重減少および/または脂肪症を誘導する場合の効力についてスクリーニングする。
【0104】
実施例16.天然プロモーターによる in vivo 応答要素
別の側面において、C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を阻害する方法であって、一つまたはそれを超える応答要素を天然プロモーターを通じて in vivo で用いることを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0105】
別の側面において、体重減少および/または脂肪症を誘導する低分子物質についてスクリーニングする方法であって、C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を、一つまたはそれを超える応答要素を天然プロモーターを通じて in vivo で用いることによって阻害することを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0106】
実施例17.転写因子の応答要素
別の側面において、C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を阻害する方法であって、転写因子の応答要素を含有する応答要素駆動レポーターシステムを用いることを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0107】
別の側面において、体重減少および/または脂肪症を誘導する低分子物質についてスクリーニングする方法であって、C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を、転写因子の応答要素を含有する応答要素駆動レポーターシステムを用いることによって阻害することを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0108】
実施例18.分化した成熟脂肪細胞における脱分化および/または分化した成熟脂肪細胞における脂質蓄積の阻害
別の側面において、分化した成熟脂肪細胞において脱分化を引き起こすかまたは脂質蓄積を阻害する方法であって、有効量のプリユーリアニンを対象に投与することを含む方法を、本明細書中において提供する。
【0109】
実施例19.薬物誘導抵抗性を克服すること
別の側面において、薬物を「オン・オフ」または「周期的」スケジュールで投与することによって薬物誘導抵抗性を克服する方法を、本明細書中において提供する。その方法は、対象に、薬物を規定用量で第一規定期間投与し、薬物を投与することを第二規定期間止め、その後、薬物を投与することを一つまたはそれを超える規定期間にしたがって再開し、そしてそのスケジュールを必要とされる限り反復することを含む。
【0110】
ある種の態様において、その方法は、肥満症の処置に有用である。更に、ある種の態様において、薬物は、プリユーリアニンを含む。
実施例20.薬物療法からの最大応答
別の側面において、長期薬物処置が、効力減少、応答欠如、脱感作または抵抗性をもたらすヒトの病気の処置について、その薬物療法からの最大応答を達成するために有用である方法を、本明細書中において提供する。
【0111】
ある種の態様において、本明細書中に記載の方法は、脂質生成の予防が、脂肪組織質量を実質的に減少させる場合に、特に有用である。更に、具体的な態様において、本明細書中に開示の方法は、対象の脂質生成が、疾患に関連している場合に有用である。
【0112】
ある種の態様において、本明細書中に開示の方法は、ドラッグデリバリー投与が、注射による場合に有用である。
ある種の態様において、本明細書中に開示の方法は、ドラッグデリバリー投与が、経口である場合に有用である。
【0113】
ある種の態様において、本明細書中に開示の方法は、ドラッグデリバリー投与が、脂肪組織中への皮下注射による場合に有用である。
ある種の態様において、本明細書中に開示の方法は、ドラッグデリバリー投与が、脂肪組織周辺部位に皮膚科的に適用される場合に有用である。
【0114】
実施例21.プリユーリアニンを含有する組成物を製剤化すること
別の側面において、プリユーリアニンまたはその誘導体を含有する組成物を製剤化する方法であって、その組成物を、Cremophor かまたは Captisol 中に溶解させることを含む方法を、本明細書中において提供する。ある種の態様において、組成物は、プリユーリアニンまたはその誘導体を含む。更に、ある種の態様において、組成物を、それを必要としている対象に投与するために製剤化し、そしてここにおいて、組成物は、予備摂取された(pre-ingested)形の組成物を含む。
【0115】
具体的な態様において、組成物を、それを必要としている対象に投与するために製剤化し、そしてここにおいて、組成物は、in vivo で薬学的に活性な代謝産物を形成する。
本発明を、いろいろな且つ好ましい態様に関して記載してきたが、発明の本質的な範囲から逸脱することなく、いろいろな変更を行うことができるし、そして同等物を、それらの要素に置き換えることができるということは、当業者に理解されるはずである。更に、多くの修飾を、発明の本質的な範囲から逸脱することなく行って、発明の内容に具体的な状況または材料を適合させることができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる本明細書中に開示の具体的な態様に制限されるものではないが、本発明は、請求の範囲の範囲内にある全ての態様を包含するものである。
【0116】
参考文献
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
【表7】

【0124】
【表8】

【0125】
【表9】

【0126】
【表10】

【0127】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質輸送タンパク質(PLTP)を含む脂質生成のバイオマーカー。
【請求項2】
PLTP遺伝子発現のアップレギュレーターとして有用なプリユーリアニン(prieurianin)。
【請求項3】
プリユーリアニンを含む、抗脂質生成及び抗肥満剤。
【請求項4】
体重減少を必要としている対象に用いるための体重減少性組成物であって、有効量のリモノイド(limonoid)を含む組成物。
【請求項5】
リモノイドが、プリユーリアニンを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
PLTP遺伝子発現を調節する方法であって、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項7】
リン脂質輸送タンパク質(PLTP)遺伝子発現を活性化することを必要としている対象のPLTP遺伝子発現を活性化する方法であって、該対象に、有効量のリモノイドを投与することを含む方法。
【請求項8】
体重減少および/または食物摂取量の減少を誘導することを必要としている対象の体重減少および/または食物摂取量の減少を誘導する方法であって、該対象に、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項9】
内臓および皮下の脂肪組織を減少させることを必要としている対象の内臓および皮下の脂肪組織を減少させる方法であって、該対象に、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項10】
血清非エステル化脂肪酸レベルを減少させることを必要としている対象の血清非エステル化脂肪酸レベルを減少させる方法であって、該対象に、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項11】
前脂肪細胞の増殖および/または分化を阻害することを必要としている対象の前脂肪細胞の増殖および/または分化を阻害する方法であって、該対象に、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項12】
脂肪細胞中の脱分化および/または脂肪蓄積損失を引き起こすことを必要としている対象において脂肪細胞中の脱分化および/または脂肪蓄積損失を引き起こす方法であって、該対象に、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項13】
分化した成熟脂肪細胞中の脱分化を引き起こすおよび/または脂質蓄積を阻害することを必要としている対象において分化した成熟脂肪細胞中の脱分化を引き起こすおよび/または脂質蓄積を阻害する方法であって、該対象に、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項14】
リン脂質輸送タンパク質(PLTP)トランス活性化を刺激することを必要としている対象においてPLTPトランス活性化を刺激する方法であって、該対象の体重減少および/または脂肪症を誘導するのに有効な量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項15】
前脂肪細胞の増殖の阻害および成熟脂肪細胞への前脂肪細胞の分化の予防を必要としている対象において、前脂肪細胞の増殖の阻害および成熟脂肪細胞への前脂肪細胞の分化の予防をするための方法であって、該対象に、有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項16】
リモノイドが、プリユーリアニンを含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
対象が、哺乳動物を含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
対象が、肥満と考えられる、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
プリユーリアニンによるPLTPのトランス活性化をブロックすることを必要としている対象においてプリユーリアニンによるPLTPのトランス活性化をブロックする方法であって、該対象に、有効量のスタウロスポリンを投与することを含む方法。
【請求項20】
PLTP遺伝子発現を調節する方法であって、脂質生成についてのプリユーリアニンの薬理作用への細胞応答を変化させることを含む方法。
【請求項21】
対象の肥満症を予防するまたは処置する方法であって、該対象に、治療的有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項22】
対象が、そのような処置または予防を必要としている、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
対象の皮下脂肪組織中のリン脂質輸送タンパク質(PLTP)の発現をダウンレギュレーションする方法であって、該対象に、治療的有効量のプリユーリアニンを投与することを含む方法。
【請求項24】
哺乳動物の脂質生成を改善するまたは予防する方法であって、該哺乳動物に、治療的有効量のプリユーリアニンまたはその誘導体を投与することを含む方法。
【請求項25】
脂質生成が、疾患に関連している、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
投与が、注射による、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
投与が、経口による、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
脂質生成の予防が、脂肪性脂肪組織質量を実質的に減少させる、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
投与が、脂肪組織中への皮下注射による、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
投与が、脂肪組織周辺部位への皮膚科的適用である、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
NFκBシグナリング経路を刺激することを必要としている対象に、in vivo でNFκBシグナリング経路を刺激する方法であって、プリユーリアニンを投与して、該対象の体重減少および/または脂肪症を誘導することを含む方法。
【請求項32】
リモノイドまたは他の低分子物質または模倣体のスクリーニングに有用なNFκB応答要素レポーターシステム。
【請求項33】
一つまたはそれを超える分子物質または模倣体のスクリーニング方法であって、NFκB応答要素レポーターシステムを用いることを含む方法。
【請求項34】
分子物質または模倣体が、一つまたはそれを超えるリモノイドを含む、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
リモノイドを、体重減少および/または脂肪症を誘導する場合の効力についてスクリーニングする、請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を阻害する方法であって、一つまたはそれを超える応答要素を天然プロモーターを通じて in vivo で用いることを含む方法。
【請求項37】
体重減少および/または脂肪症を誘導する低分子物質についてスクリーニングする方法であって、C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を、一つまたはそれを超える応答要素を天然プロモーターを通じて in vivo で用いることによって阻害することを含む方法。
【請求項38】
C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を阻害する方法であって、転写因子の応答要素を含有する応答要素駆動レポーターシステムを用いることを含む方法。
【請求項39】
体重減少および/または脂肪症を誘導する低分子物質についてスクリーニングする方法であって、C/EBPαおよびβ、およびPPARγの内の一つまたはそれを超えるものに媒介される転写活性化を、転写因子の応答要素を含有する応答要素駆動レポーターシステムを用いることによって阻害することを含む方法。
【請求項40】
分化した成熟脂肪細胞において脱分化を引き起こすかまたは脂質蓄積を阻害する方法であって、有効量のプリユーリアニンを対象に投与することを含む方法。
【請求項41】
薬物を「オン・オフ」または「周期的」スケジュールで投与することによって薬物誘導抵抗性を克服する方法であって、
第一規定期間、対象に薬物を規定用量で投与し、
第二規定期間、薬物を投与することを止め、
その後、薬物を投与することを一つまたはそれを超える規定期間にしたがって再開し、そして
該スケジュールを必要とされる限り反復すること
を含む方法。
【請求項42】
前記方法を、肥満症の処置に用いる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
薬物中に、プリユーリアニンを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記方法を、長期薬物処置が、効力減少、応答欠如、脱感作または抵抗性をもたらすヒトの病気の処置について、該薬物療法からの最大応答を達成するために用いる、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
プリユーリアニンまたはその誘導体を含有する組成物を製剤化する方法であって、該組成物を、Cremophor かまたは Captisol 中に溶解させることを含む方法。
【請求項46】
Cremophor または Captisol 中に溶解したプリユーリアニンまたはその誘導体を含む組成物。
【請求項47】
前記組成物を、それを必要としている対象に投与するために製剤化し、そしてここにおいて、該組成物が、予備摂取された形の組成物を含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物を、それを必要としている対象に投与するために製剤化し、そしてここにおいて、該組成物が、in vivo で薬学的に活性な代謝産物を形成する、請求項45に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−506922(P2010−506922A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533359(P2009−533359)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/022144
【国際公開番号】WO2008/048636
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509111043)ユニバーシティ・オブ・トレド (1)
【Fターム(参考)】