説明

肥満症の薬物療法に対する反応性を予測するための方法

減量用医薬品によって誘導される哺乳動物におけるトリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝の調節のためのバイオマーカーとしてTRL V6を使用するための方法。そのバイオマーカーは、個々の患者が、所定の減量用医薬品に対して好ましく反応するかどうかを決定するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年12月19日に出願された米国仮出願番号第61/014881号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
多数の生理系が、体重およびエネルギー恒常性の調節に関与し、これらの系は多数の複雑なフィードバック機構を介して相互に関連する。この複雑性は、薬物療法の影響を受けやすい治療標的の多様性を引き起こすが、複雑な相互調節もまた、肥満症および過体重の効果的な薬学的処置の開発を、困難で時間がかかるものにしている。
【0003】
さらに、いったん一般に効果的な薬理作用のある物質が肥満症および/または過体重の処置のために見出されると、個体間の遺伝的および/または生理学的差異が、患者母集団内の有効性における大きな分散を生じさせ得る;すなわち、個体の生理機能に基づいて治療薬に対して反応する患者であるかまたは反応しない患者であるという患者の部分母集団の傾向が存在する。結果として、所定の個体が所定の薬物療法に対して十分反応するかどうかを、長期の治療過程の前に予測することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある化合物が、治療的減量に対する長期の臨床試験の前に、体重および/またはエネルギー恒常性に対して所望の生理学的効果を有するかどうかを決定する方法を有することは大きな価値があり得る。また、個々の患者が、特定の減量用医薬品の治療効果に好ましく反応するかどうかを、好ましくはその薬剤での治療過程の開始前にあらかじめ決めるための方法を有することも大きな価値がある。本発明は、バイオマーカーならびに医薬品が哺乳動物におけるトリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝を調節する能力、まわり回ってその薬剤の肥満症および/または過体重の処置のための起こり得る生理学的利益の指標となるものを試験するためにそのバイオマーカー使用するための方法、システム、およびコンピュータプラグラム製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様において、V6サブクラスの大きなトリグリセリドリッチリポタンパク質粒子(TRL V6)の濃度の変化が、減量用医薬品によって誘導された哺乳動物におけるトリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝の調節についてのバイオマーカーとして使用できることが見出された。具体的には、トリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝の調節を介する肥満症または過体重の処置に好適な医薬品は、被験体哺乳動物のTRL V6濃度の減少を生じるだろう。そのようなものとして、本発明の1つの実施形態は、減量用医薬品でのヒトにおける肥満症または過体重のための処置に対する反応性を予測する方法であって、ヒトにおいて、医薬品の非存在下でのTRL V6反応と比較して、医薬品の存在下での脂肪負荷に対するTRL V6反応の減少が存在するかどうかを決定することを含む方法を提供する。さらなる実施形態は、医薬品が、5−HT2C受容体アゴニスト、カンナビノイド−1受容体(CB−1)アンタゴニスト、リン脂質ジエステラーゼ−10(PDE−10)阻害剤、オレキシン−1アンタゴニスト、セロトニン−ノルアドレナリン−ドーパミン三重再取り込み阻害剤(SNDRI)、リパーゼ阻害剤、および/または脂質吸収受容体阻害剤からなる群から独立して選択される任意の1種の化合物または2種以上の化合物の任意の組み合わせである場合を含む。
【0006】
本発明の別の態様において、個々の患者が所定の減量用医薬品に対して好ましく反応するかどうかを決定するための方法、すなわち、薬剤が患者のTRL V6反応の減少を生じるかどうかを決定することによって、肥満症および/または過体重のための処置を必要とする個々の患者が所定の減量用医薬品での処置に対して反応する患者であるかまたは反応しない患者であるかを予測するための方法が提供される。本発明のこの態様の種々の実施形態において、減量用医薬品は、5−HT2C受容体アゴニスト、カンナビノイド−1受容体(CB−1)アンタゴニスト、リン脂質ジエステラーゼ−10(PDE−10)阻害剤、オレキシン−1アンタゴニスト、セロトニン−ノルアドレナリン−ドーパミン三重再取り込み阻害剤(SNDRI)、リパーゼ阻害剤、および/または脂質吸収受容体阻害剤からなる群から独立して選択される任意の1種の化合物または2種以上の化合物の任意の組み合わせである。
【0007】
本発明のこの態様の別の実施形態において、肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者を処置するための減量用医薬品の適合性を決定するための方法であって、1回分の減量用医薬品を、患者に脂肪負荷を施すことと併せて患者に投与し、次いで、医薬品の非存在下での脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応と比較して、脂肪負荷に対するTRL V6反応の減少が存在するかどうかを決定することを含み、ここで、TRL V6反応の有意な減少はその減量用医薬品がその患者を処置するのに好適であることを示し、かつ、TRL V6反応の有意な減少の欠如はその減量用医薬品がその患者の処置に好適ではないことを示す方法が提供される。
【0008】
本発明のこの態様の別の実施形態において、肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者を処置するための減量用医薬品の適合性を決定するための方法であって、以下の工程:
1)患者に第一脂肪負荷を施すこと;
2)第一脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を測定すること;
3)患者に第二脂肪負荷を施すとともに、1回分の減量用医薬品を患者に投与すること;
4)第二脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を測定すること;
5)第一脂肪負荷に対するTRL V6反応と比較して、第二脂肪負荷に対するTRL V6反応の減少が存在するかどうかを決定すること;
6)TRL V6反応の相対的減少に基づいて、減量用医薬品の適合性を決定すること
を含み、
ここで、TRL V6反応の有意な減少はその減量用医薬品がその患者を処置するのに好適であることを示し、そしてTRL V6反応の有意な減少の欠如はその減量用医薬品がその患者の処置に好適ではないことを示す方法が提供される。
【0009】
本発明のこの態様のさらに別の実施形態において、肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者を処置するための減量用医薬品の適合性を決定するための方法であって、以下の工程:
1)患者に脂肪負荷を施すとともに、1回分の減量用医薬品を患者に投与すること;
2)脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を測定すること;
3)脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を、減量用医薬品の非存在下での脂肪負荷に対する標準的なTRL V6反応と比較すること;
4)比較する工程に基づいて、減量用医薬品の適合性を決定すること
を含み、
ここで、標準的なTRL V6反応と比較した患者のTRL V6反応の有意な減少はその減量用医薬品がその患者を処置するのに好適であることを示し、そして標準的なTRL V6反応と比較した患者のTRL V6反応の有意な減少の欠如はその減量用医薬品がその患者の処置に好適ではないことを示す方法が提供される。
【0010】
別の実施形態において、肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者が、所定の減量用医薬品での処置に対して反応する患者であるかどうかを予測するための方法であって、以下の工程:
1)患者に第一脂肪負荷を施すこと;
2)第一脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を測定すること;
3)患者に第二脂肪負荷を施すとともに、1回分の医薬品を患者に投与すること;
4)第二脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を測定すること;
5)第一脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応と比較して、第二脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応の減少が存在するかどうかを決定すること;および
6)決定する工程に基づいて、患者が反応する患者であるかどうかを予測すること
を含み、
ここで、TRL V6反応の有意な減少は、患者が反応する患者である可能性が高いことを予測する方法が提供される。
【0011】
別の実施形態において、肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者が、所定の減量用医薬品での処置に対して反応する患者であるかどうかを予測するための方法であって、以下の工程:
1)患者に脂肪負荷を施すとともに、1回分の減量用医薬品を患者に投与すること;
2)脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を測定すること;
3)脂肪負荷に対する患者のV6反応を、減量用医薬品の非存在下での脂肪負荷に対する標準的なV6反応と比較すること;および
4)比較する工程に基づいて、患者がその減量用医薬品での処置に対して反応する患者であるかどうかを予測すること
を含み、
ここで、標準的なV6反応と比較した患者のV6反応の有意な減少は、患者が反応する患者である可能性が高いことを予測する方法が提供される。
【0012】
本発明の別の態様において、医薬品の哺乳動物におけるトリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝に作用する能力を決定するための方法であって、偽薬関連反応と比較して脂肪負荷および/または高脂肪食に応じた哺乳動物におけるTRL V6濃度の減少を測定することを含む方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様は、減量用医薬品に対して好ましく反応する患者の可能性を評価するための方法に向けられる。その方法は:(a)少なくとも1つは患者への減量用医薬品の投与と併せて採取される、患者からの少なくとも2つのインビトロサンプルにおいてTRL V6のレベルを測定すること;(b)減量剤に関連するTRL V6レベルの減少が存在するかどうかを電子的に特定すること;(c)および特定する工程に基づいて、減量用医薬品に対して好ましく反応する患者の可能性を評価することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、例示的なトリグリセリドリッチリポタンパク質粒子亜画分(サブクラス)についての脂質メチル基NMRシグナルのグラフである。
【図2】図2は、本発明の実施形態によるNMRシステムの概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態による例示的なデータ処理システムの概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態による例示的なデータ処理システムの概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態による例示的なTRL V6評価の患者試験報告書の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下で本発明の実施形態が示され、本発明は、より完全に説明されるだろう。しかしながら、本発明は様々な形式で具体化され得、本明細書中に記載される実施形態に限定されるものとしてみなされるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、そして当業者に本発明の範囲を完全に伝達することができるように提供される。図面において、類似の番号は全体にわたって類似の要素を示し、一部の構成要素、線、および特徴の厚み、大きさ、および寸法は、明確にするために誇張され得る。図中に示されるか、または特許請求の範囲において列挙される操作および/または工程の順序は、そうでないことが示されない限り表示された順序に限定されることを意図しない。図中の破線は、使用される場合、そのような示された特徴、操作、または工程がそうでないことが示されない限り任意選択的であることを示す。
【0016】
当業者によって理解されるように、本発明のいくつかの実施形態は、装置、方法、コンピュータプログラム製品、および/またはデータ処理システムまたはシグナル処理システムとして具体化され得る。したがって、特定の方法実施形態は、ソフトウェア限定を必要とせず、一方、特定の他の実施形態は、完全にソフトウェア実施形態の形態をとり得るか、またはソフトウェア態様およびハードウェア態様を組み合わせる実施形態の形態をとり得る。さらに、本発明の特定の実施形態は、媒体中に具体化されたコンピュータ使用可能プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとり得る。ハードディスク、CD−ROM、光学式記憶デバイス、または磁気記憶デバイスを含む、任意の好適なコンピュータ読み取り可能媒体が利用され得る。
【0017】
コンピュータ使用可能またはコンピュータ読み取り可能媒体は、限定されないが、電子、磁気、光学、超電導磁気、赤外線、または半導体のシステム、装置、デバイス、または伝搬媒体であり得る。コンピュータ読み取り可能媒体のより具体的な例(限定的な列挙)は、以下のものを含み得る:1本以上のワイヤを有する電気的接続、携帯用フロッピー(登録商標)ディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能・プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバー、および携帯用コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)。コンピュータ使用可能またはコンピュータ読み取り可能媒体は、プログラムが印刷された紙または別の好適な媒体であることも可能であり、そのプログラムが例えば、紙または他の媒体の光走査を介して電子的に捕捉され、次いで、もし必要であれば好適な様式でコンパイルされ、解釈され、またはそうでない場合処理され、次いで、コンピュータメモリに保存されることができる。
【0018】
本発明の操作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java(登録商標)7、Smalltalk、Python、Labview、C++、またはVisualBasicのようなオブジェクト指向のプログラム言語で書かれ得る。しかしながら、本発明の操作を実行するためのプログラムコードはまた、「C」プログラミング言語またはアセンブリ言語でさえあるような、従来の手続き型プログラミング言語でも書かれ得る。プログラムコードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、独立したソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上でかつ部分的にリモートコンピュータ上で、または完全にリモートコンピュータ上で実行し得る。後者の状況において、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を介してユーザのコンピュータに接続され得、さもなければ接続は、(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用するインターネットを介して)外部コンピュータへとなされ得る。
【0019】
本明細書中で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り複数形も同様に含むことが意図される。本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」が、記載される特徴、完全体(integer)、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、完全体、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されるだろう。本明細書中で使用される場合、用語「および/または」は、1つ以上の、関連して列挙された項目の任意のかつ全ての組み合わせを含む。
【0020】
他のように定義されない限り、本明細書中で使用される(技術的用語および科学的用語を含む)全ての用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されるような用語は、関連する分野および本出願の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書中に明確にそのように定義されない限り理想的な意味または過度に改まった意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されるだろう。
【0021】
本出願の目的のために、以下の用語は、そうでないことが具体的に述べられない限り、以下の意味を有するだろう。
【0022】
用語「BMI」は、ボディマス指数を意味し、それは、身長の二乗で除した個体の体重である(kg/m)。
【0023】
用語「絶食状態」は、食物またはカロリーを含有する飲料無しの約6時間より長い期間の後の個体の生理学的状態を意味する。この状態において、個体の胃内容排出は達成され、そしてトリグリセリドは基礎レベルである。
【0024】
用語「過体重」は、所定の個体について最適な体重よりも著しく重い状態を意味する。定義は大きく異なり得るが、一般的な目的のために、約25〜約29.9kg/mのBMIを有する患者は、過体重であると考えられるだろう(Donato,PiSunyerら、1998)。本発明は、現在のBMI基準によって述べられるような過体重の正確な定義によって影響されず、全てのそのような定義は、等価であると考えられるべきである。
【0025】
用語「肥満症」は、重篤な過体重である状態または重篤な過度の体重を有することを意味する。定義は大きく異なり得るが、一般的な目的のために、30.0kg/m以上のBMIを有する患者は、肥満であると考えられるだろう(Donato,PiSunyerら、1998)。本発明は、現在のBMI基準によって述べられるような肥満症の正確な定義によって影響されず、全てのそのような定義は、等価であると考えられるべきである。
【0026】
用語「脂肪負荷」は、試験被験体において高脂質血症を誘導するのに十分な脂質の用量を意味し、経口脂肪負荷、脂肪含有静脈内注入、高脂肪食品、食事、高脂肪飲料などの形態をとることができる。医薬品が開発されて、脂肪負荷または疑似脂肪負荷を送達するために使用され得ることもまた企図される。
【0027】
用語「TRL V6」は、約90nm〜最大約170nmまでの直径を有する、より典型的には約100nm〜140nmの直径を有するTRL(トリグリセリドリッチリポタンパク質)の粒子または亜画分を示す。用語「TRL V6」はまた、以下の表1において提供されるような推定直径に対応する、脂質メチル基NMRシグナル化学シフト(ppm)に関しても定義されることができる。
【0028】
用語「TRL V5」は、約60nm〜約80nmの直径を有する大きなTRL粒子を示す(関連するNMR化学シフトについて以下の表1を参照のこと)。
【0029】
用語「カイロミクロン」は、TRL V6より大きな直径を有する極めて大きなTRL粒子を示す。そのようなカイロミクロンとしては、約170nm〜約260nmまでの直径を有するTRL粒子または亜画分を示す(関連するNMR化学シフトについて以下の表1を参照のこと)。TRL V5とTRL V6との間、またはTRL V6とカイロミクロンとの間のいずれも明確な区分が存在せず、その結果、TRL V5〜6については約80〜90nm、TRL V6およびカイロミクロンについては約140〜170nmの範囲で重複する、各サブグループに対する粒径の分布が存在することに注意することが重要である。
【0030】
用語「TRL V6反応」は、典型的には、脂肪負荷または高脂肪食の投与に反応した、患者または試験哺乳動物におけるTRL V6トリグリセリド濃度および/または粒子数の増加を意味する。ある状況下では、「V TRL」(本出願の目的のために、TRL V6およびTRL V5粒子サブタイプの両方を含有する極めて大きいTRLのサブグループを意味するために用いられる)を、TRL V5濃度が脂肪負荷に対する実質的な反応を示さない状況下において、TRL V6濃度単独を測定することに代わるものとして測定することは有利であり得、その結果「V TRL」における反応は、特定の状況においてTRL V6反応それ自身を追跡し得ることが理解されるべきである。しかしながらこれは、グループ全体(例えば、全VLDLとして)の全TRLまたはトリグリセリド濃度(または粒子数)を測定することには当てはまらない。種々のTRLの測定は、最終的にはサンプル中のトリグリセリドまたは指定されたTRLの濃度を意味する濃度、または、最終的にはサンプル中のTRL粒子の濃度を意味する粒子数のいずれかとして報告され得ることに注意されるべきである。その両方が、TRL V6反応またはその減少に関して同じ結果を与える。
【0031】
用語「VLDL反応」は、脂肪負荷または高脂肪食の投与に反応する、患者または試験動物におけるグループとしてのTRLサブクラスV1〜6の粒径の増加を意味し、その増加は、クラスとしてのVLDL粒径のサイズ分布上のTRL V6濃度(または粒子数)の増加によって引き起こされた効果(すなわち、TRL亜母集団であるV1〜V6の平均サイズの変化)である。
【0032】
TRL V6反応の有意な減少は、測定されたTRL V6濃度(あるいは粒子数またはVLDL粒径)の統計的に有意な減少を意味する。減少は、TRL V6反応の変化と定義され得、それは、試験化合物または減量用医薬品の非存在下での患者の母集団において測定された時期間(inter−occasion)変位の分布の下限の少なくとも80パーセンタイル値の信頼区間を下回る。いかなるアッセイプロトコルについても、試験化合物または減量用医薬品に対する陽性反応を決定するために選択された実際の信頼区間は、アッセイプロトコルの所望の予測値に依存するだろう。例えば、TRL V6反応のより少ない偽陽性減少を提供することを望むアッセイプロトコルは、より高いパーセンタイル信頼区間、例えば90パーセンタイル値、または例えば95パーセンタイル値を選択するだろう。より少ない偽陰性を望むアッセイプロトコルについては、より低い信頼区間が好適であり得、例えば、80パーセンタイル値のような信頼区間が好適であり得る。
【0033】
用語「減量用医薬品」は、肥満症または過体重の処置のための使用される、または使用されるべき医薬化合物(この用語は、ペプチド、抗体などを含む)、医薬処方物、または医薬組成物を意味し、ここで、求められる治療効果は、患者における減量の促進および/または体重の減少後の体重の維持である。本明細書中で使用される減量用医薬品が、1種の、または単一の組み合わせられた薬剤としてまたは薬剤の組み合わせとして摂取され得る1種以上の活性成分の組み合わせを含み得ることが理解される。同様に、用語「減量」は、実際の減量および/または、典型的には体重の減少後の、所望の範囲内での体重の維持を示す。
【0034】
用語「生体サンプル」は、未加工の形態および/または調製物中の、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、リンパサンプル、便サンプル、組織、および/または体液を含む。しかしながら、全血または血漿の生体サンプルは、本発明の実施形態に特に好適であり得る。生体サンプルは、いかなる標的被験体にも由来することができる。本発明による被験体は、いかなる哺乳動物被験体(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、モルモットその他)、ブタ、霊長類、サル、および/またはウサギ)であることもできる。動物は、天然に存在するか遺伝的に操作または組換えられているかにかかわらず、そして/あるいは、実験的に変更された動物の変化、生活様式および/または食餌が変更された動物の変化、または薬物処置された動物の変化にかかわらず、実験動物または非実験動物であることができる。
【0035】
用語「自動的」は、実質的に全てまたは全てのそのように記載された操作が、ヒト操作者の能動的な手動入力を要求することなく実施されることができることを意味し、典型的には、その操作が、プログラムで指示および/または実行されることができることを意味する。
【0036】
用語「電子的」は、システム、操作、またはデバイスが、任意の好適な電子媒体を使用して通信することができ、そして典型的には、遠く離れ得る制御システムと、コンピュータネットワークを使用する1つ以上のローカルNMR分析器との間の通信をプログラムにより制御することを利用する。
【0037】
リポタンパク質は、血漿、血清、全血、およびリンパにおいて見出される様々な粒子を含み、種々のタイプおよび量のトリグリセリド、コレステロール、リン脂質、スフィンゴ脂質、およびタンパク質を含む。これらの種々の粒子は、血中の他の疎水性脂質分子の可溶化を可能にし、かつ、脂肪分解、脂肪生成、および腸と、肝臓と、筋肉組織と、脂肪組織との間の脂質輸送に関する様々な機能を果たす。血液および/または血漿において、リポタンパク質は、一般的に、密度または電気泳動移動度のような物理的性質に基づいて多くの方法で分類されている。核磁気共鳴による決定された粒径に基づく分類は、少なくとも16種の異なるトリグリセリドリッチリポタンパク質粒子のサブタイプ(高密度リポタンパク質の5種のサブタイプ、低密度リポタンパク質の4種のサブタイプ、および極めて低密度リポタンパク質の6種のサブタイプを含む)、指定されたTRL V1〜V6、およびカイロミクロンを区別する。これらのリポタンパク質サブタイプの中から、かつ他のサブタイプとは対照的に、本発明は最も大きいTRL粒子サブタイプであるTRL V6が、トリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝のバイオマーカーとして使用されることができることを決定し、ここで、TRL V6の濃度が、脂肪含有食の消費後に予測的に上昇され、次いで、試験被験体が絶食状態に近づくにつれて、食後のある時点で基礎レベルに戻る。
【0038】
TRL粒子のNMR特徴を推定直径と関連付けるために、以下の表1は、TRL V6範囲ならびにTRL V5およびカイロミクロンについての化学シフトを規定する。
【0039】
表1:NMR LipoProfile(登録商標)分析によって測定されたトリグリセリドリッチリポタンパク質サブクラスの特徴
【表1】

【0040】
表1は、Ca EDTAの内部基準シグナル(2.519ppm)に対して測定された、単離されたトリグリセリドリッチリポタンパク質(TRL)サブクラス(亜画分)のプロトンNMR化学シフトを示す。図1は、例示的なTRLサブクラスのNMR特性シグナルを示す。NMR測定は、47℃で、400MHz分光計で行った。カイロミクロンとして特定されたTRLサブクラスを、脂肪含有食を摂取した後のヒト被験体から得られた食後の血漿検体から単離した。TRL V6またはTRL V5として特定されたTRLサブクラスを、高トリグリセリド血症のヒト被験体から得られた空腹時血漿検体から得た。TRLサブクラスを、連続的超遠心分離法(カイロミクロンについては密度<0.94g/mL、TRL V5〜V6については<1.006g/mL)によって最初は単離し、120mM KCl、5mM EDTA、1mM CaCl、50mM NaHPO、および0.2g/L NaNを含有する緩衝液(pH7.4)において1%または2%アガロースビーズ(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用する、ゲル濾過クロマトグラフィーによってさらに精製した。リポタンパク質直径の推定を、単離されたTRLサブクラスの電子顕微鏡法測定から得た。
【0041】
したがって、TRL V6は上記で直径によって規定されていたが、表1中のNMR化学シフトは、規定された直径範囲と等価なものを表す。したがって、NMR評価を使用すると、TRL V6はまた、約0.8374〜約0.8402の化学シフトを有するとも規定されることができ、隣接するTRL亜画分(例えば、TRL V5およびカイロミクロン)は表1にも記される化学シフトを有する。それにより、「TRL V6」の定義はまた、記載されるように測定された場合、たとえ論争中の実際の試験が非NMR評価法を利用するか、あるいは密度に関するパラメータを規定するかまたは直径よりも別の様式でパラメータを規定するにしても、上記のNMR化学シフト(+/−合理的な測定範囲)を有するいかなるTRL亜画分も示す。
【0042】
例えば、極めて大きなTRL粒子を測定する1つの公知の技術は、密度ベースの分離を利用する浮遊超遠心分離法である。Redgraveらは、粒子の推定直径に対する粒子の浮遊率(S、Svedberg単位)によって粒子を特徴づけている:S>400の場合、>75nmの粒子を含み;S175〜400の場合、50〜75nmの粒子を含み;S100〜175の場合、37〜50nmの粒子を含み;そしてS20〜100の場合、20〜37nmの粒子を含む。Redgraveら、Changes in plasma in very low density and low density lipoprotein content,composition,and size after a fatty meal in normo−and hypertriglyceridemic man,Journal of Lipid Research,Vol.20,pp.217−229(1979)を参照のこと。また、Karpeら、Differences in Postprandial Concentrations of Very−Low−Density Lipoprotein and Chylomicron Remnants Between Normotryglicyeridemic and Hypertriglyceridemic Men With and Without Coronary Heart Disease,Metabolism,Vol.48,No.3(March),1999,pp.301−307も参照のこと。したがって、たとえ試験方法それ自身によって大きさに基づいて特徴付けられなくても、もし密度によって分離された粒子がおよそ上記の化学シフトを有しているなら、そのTRL粒子はTRL V6粒子である。
【0043】
さらに、本発明は、食後のトリグリセリドレベルがTRL V6濃度の上昇と相関することを決定した。これらのトリグリセリドレベルは、加水分解される内腔内部のトリグリセリド、腸から吸収される脂肪酸に起因し、次いで、トリグリセリドとして再エステル化され、そしてカイロミクロンとしてリンパ循環または門脈循環中に輸送されるか、あるいは、肝臓によって分泌されたVLDLに起因することができる。例えば、正のエネルギーバランスの状態において、過剰な食物摂取の後、トリグリセリドは、筋肉のような脂肪酸酸化によりエネルギーを使用する他の組織とは対照的に、または他の組織に加えて、VLDLの構成要素として脂肪組織に貯蔵のために輸送される。したがって、食後のトリグリセリドレベルの減少は、いずれの場合も脂肪貯蔵の減少と相関する、脂肪酸酸化の増加および/または脂肪吸収の減少を示し得る。いくつかの実施形態において、本発明は、具体的には、TRL V6濃度の減少がこの脂肪貯蔵の減少と相関し、その結果、試験中の化合物または減量用医薬品での処置によるTRL V6濃度の変化が、トリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝に対する効果についてのバイオマーカーとして、特に所定の個々の患者が所定の化合物または減量用医薬品に対して反応する患者であるか、または反応しない患者であるかどうかを予測すること含む、脂肪貯蔵の減少についてのマーカーとして使用されることができることを実証する。
【0044】
TRL V6濃度(または粒子数)の上昇が、いくつかの場合において、平均VLDL粒径の増大(VLDLリポタンパク質粒子、TRL V1〜V6の群の全てのリポタンパク質粒子についての中間または平均の大きさ、または大きなTRL=TRL V5+TRL V6のみでも)によっても追跡され得ることが理解されるだろう。なぜなら、このグループにおいて脂肪負荷に対して変化する濃度を示す主成分が、上記のようにTRL V6成分であるからである。そのようなシグナルは、他のサブタイプからのシグナルによって弱められるが、VLDL反応(平均サイズの変化)を識別すること、それにより、VLDL反応の減少をTRL V6反応を直接的に測定することに代わるものとして識別することは可能であり得る。グループとしてのVLDL V1〜V5の濃度全体は、はっきりとは変化せず、かつ、TRL V6反応は、クラスとして(平均サイズで区別される)VLDL濃度を測定することからは一般的には検出可能ではないことに注意されたい。
【0045】
表2は、NMRによって測定された大きなトリグリセリドリッチリポタンパク質サブクラスについての、偽薬と比較した、脂肪負荷からの曲線下面積(AUC)のシブトラミンによって誘導された減少の統計学的分析を示す。このデータは、シブトラミンがTRL V6反応を減少させるが、TRL V5またはカイロミクロン反応を減少させない(個々のサブグループとして測定された場合に、TRL V6のみが統計学的に有意な変化を有することに注意されたい)ことを示し、これによってTRL V6がバイオマーカーであることを示している。そのデータはまた、ある状況下において、TRL V6反応の減少は他のサブタイプからのシグナルを含む測定の場合でも検出されることができるが、サブタイプの全ての組み合わせでの測定の場合は検出できないことを実証する。この特定の研究において、TRL V6+カイロミクロンは有意な変化を示したが、TRL V6+TRL V5およびTRL V6+TRL V5+カイロミクロンは有意な変化を生じなかった。TRL V6反応が、サブタイプの組み合わせの反応と一致し得る場合、TRL V6シグナルの変化に起因するシグナルの変化の大きさが、基線シグナルと比べて十分に大きいので、有意に異なる(すなわち、基線シグナルにおけるTRL V6からのシグナルが、組み合わせられたシグナルを圧倒し、その結果TRL V6の変化が確実に検出される)ことに注意されたい。
【0046】
表2:NMRによって測定され、かつNMR LipoProfile(登録商標)III リポタンパク質試験(LipoScience,Inc.,Raleigh,NC)によって分析された、大きなトリグリセリドリッチリポタンパク質サブクラスについての、偽薬と比較した、脂肪負荷からのAUC(5〜11時間の時点)のシブトラミンによって誘導された減少の分析。
【表2】

P値<0.05は、統計学的に有意;P値>0.05は、統計学的に有意ではない。
【0047】
ラットにおいて、TRL V6濃度の有意な減少は、典型的な高い(容易に測定可能な)基礎レベルのために容易に測定される。したがって、試験中の化合物または減量用医薬品についての研究は、ラットにおいて容易に行われることができる。しかしながら、ヒトにおいては、基礎レベルは比較的低く、かつ、血漿サンプルに対するNMR分光法のような現在の分析方法による検出の限界に近いかまたはそれを下回りがちである。
【0048】
高脂肪の食餌を与えた、食餌により誘導した肥満ラットを使用するラット研究において、TRL V6濃度は構成的に上昇され、医薬品の投与によって誘導されたTRL V6濃度の減少は、医薬品がトリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝を調節し、その結果、脂肪組織中の脂質の貯蔵が減少される能力の指標である。ヒトにおいて、TRL V6の濃度は、通常確実な定量化のためには低すぎる。しかしながら、本発明の実施形態は、TRL V6の確実に測定可能な濃度が、短期間の脂肪負荷を、特に個々の患者が絶食状態を達成した後に施すことによって誘導されることができることを見出した。さらに、これらの上昇した濃度は、ヒト患者が再び絶食状態に近づくにつれて基礎レベルに戻る。加えて、特定の減量用医薬品の投与は、脂肪負荷に対するTRL V6反応の大きさを減少させることが示される。
【0049】
本発明の特定の実施形態は、各々直接的または間接的にトリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝経路を調節する、1種以上の治療標的を標的にする試験中の減量用医薬品を試験するのに好適である。その調節が本発明の方法を使用してアッセイされることができる治療標的の例は、5−HT2C受容体(アゴニストは、肥満症/過体重を処置するために開発されている)、CB−1受容体(アンタゴニスト)、SNDRI(阻害剤)、PDE−10(阻害剤)、およびオレキシン−1受容体(アンタゴニスト)である。5−HT2C受容体、CB−1受容体、および/またはPDE−10の阻害剤を標的にする医薬品は、本発明のアッセイ方法に特に好適である。他の治療標的は、本発明の方法を使用して標的の調節因子を試験することおよびTRL V6反応の減少が観察されたかどうかを決定することによる過度の実験なしで容易に見出され得る。
【0050】
試験治療薬についての調査のための研究および所定の治療薬に対する個体の反応性/非反応性を試験するための研究を含む、ヒトにおける研究のために、ヒト患者は、典型的には、ウォーキング後、かつ何かを摂取する前に、例えば約5〜10時間、好ましくは約6〜9時間、例えば約8時間の絶食の後に試験される。患者は、試験期間の前または間のいつでも水を飲むことができる。試験前の期間は、食事内容および各試験セッションの前のタイミングについての整合性を容易にするためにもうけられることができる。血液サンプルが、次いで、患者が絶食状態にある場合の、TRL V6濃度または粒子数の基礎レベル測定を提供するために採取される。
【0051】
患者は、次いで、比較的短期間、例えば、40分間以内、好ましくは20分間以内にわたって、好適な脂肪負荷を施されることができる。行われた研究または所望の好ましい所定の試験条件に依存して、1種以上の血液サンプルが、次いで、脂肪負荷に対するTRL V6濃度の上昇を決定するために採取される。典型的には、1回の採血は、例えば、個々の患者の、治療における薬剤に対する反応の可能性をあらかじめ決めるための、確立された減量用医薬品を使用する所定の試験に十分であろう。他の用途のためには、完全なTRL V6反応曲線を得るために、複数回の採血を行うことが好まれ得る。典型的には脂肪負荷を与えてから約2時間後から始まる、脂肪負荷に対するヒトTRL V6反応(すなわち、TRL V6濃度の上昇)は、脂肪負荷を与えてから約4時間〜約6時間後にピークになり、脂肪負荷を与えてから約9時間〜約12時間後に基礎レベルに戻る。極めて高い脂肪濃度が投与される場合、遅い開始/基礎レベルまでの遅い戻りへの時間的経過における推移が存在し得ることに注意されたい。そのような推移は、典型的には約4〜6時間での開始、約10時間でのピーク到達、および約12時間〜15時間での基礎レベルへの戻りを予測する。脂肪負荷に対する典型的なヒトTRL V6反応は、絶食状態での約0mg/dL〜約35mg/dLの基礎レベルから、約80mg/dL〜約250mg/dLへの血漿濃度の上昇である。
【0052】
ヒト患者は、次いで、医薬品の投与と併せて再試験される。医薬品と併せた試験は、その患者の通常のTRL V6反応を決定する試験の前か後のいずれかに行われ得、ただし、それが好ましくないとしても、その医薬品を再試験する前に患者の系をクリアすることが理解されるべきである。試験医薬品または減量用医薬品に対する有益な反応の指標であるヒトTRL V6反応の典型的な減少は、TRL V6反応の統計学的に有意な減少である。約20%〜約80%減少されたTRL V6反応を見ることは一般的である。好ましい反応の指標である典型的な反応は、約50%の減少またはそれ以上であり得る。
【0053】
1つの最適化された実施形態において、例えば、所定の患者が減量用医薬品での提案された治療に対して好ましく反応する可能性をあらかじめ決めること(すなわち、その患者が反応する患者であるか反応しない患者であるかを予測すること)における通常の使用において、1回分の提案された減量用医薬品と併せた脂肪負荷の単回投与は好適であり得、その結果、TRL V6反応の減少は、所定の脂肪負荷に対するあらかじめ決められた患者母集団の平均TRL V6反応から決定され得る。そのような最適化された実施形態において、脂肪負荷および減量用医薬品の投与の前の1回の採血、および脂肪負荷投与後のあらかじめ決められた時点での1回の採血は、減量用医薬品が、脂肪負荷に対する患者のTRL V6反応を減少させたかどうかを決定するのに十分であり、したがって、その薬剤が個々の患者のトリグリセリドおよび/またはリポタンパク質代謝を調節するかどうかをあらかじめ決定することができる。関連するTRL V6反応、または最初の採血をせずに、減量用医薬品の投与と併せた脂肪負荷投与の後のあらかじめ決められた時間範囲内でのサンプルの採取のみでTRL V6反応の減少を決定することもまた可能である。与えられた脂肪負荷が、食物ベースの脂肪負荷よりもむしろ化学的および/または医薬的に誘導または刺激された脂肪負荷であり得ることもまた企図される。
【0054】
使用される特定の臨床アッセイプロトコルが、治療のために検討されている減量用医薬品に依存するであろうこと、およびそのようなプロトコルの決定が当業者の範囲内であることは理解されるだろう。例えば、薬剤および第二脂肪負荷の投与の具体的なタイミングは、その薬剤の薬物動態に依存して変わるだろう。考慮すべき1つの要因は、その薬剤の血中レベルが脂肪負荷の投与の前に有効なレベルであることである。したがって、医薬品と「併せて」とは、薬剤および脂肪負荷の投与が、その薬剤が、それが投与されたときに脂肪負荷の分配/代謝に作用するように患者において有効なレベルであることを可能にするように調整されることを意味すると理解される。これは、薬剤の仕様に依存して、その薬剤が脂肪負荷と同時、あるいはそのすぐ後、脂肪負荷投与後の約30分間までに投与されること、またはその薬剤がその薬剤の有効な血漿レベルを達成するのに必要な期間だけ脂肪負荷の前に、例えば、脂肪負荷の投与の約0時間〜約3時間前、例えば、脂肪負荷の投与の15分〜30分前に投与されることを意味することができる。医薬品がプロドラッグとして投与される場合、または活性代謝物がその医薬品の薬物動態において重要である場合、より長い時間が、活性部分の適切な血漿濃度を蓄積させるのに必要であり得る。そのような投薬養生法の決定は習慣的であり、十分に当業者の範囲内である。
【0055】
同様に、脂肪負荷の投与後の採血のタイミングおよび回数は、脂肪負荷後の採血の後まで薬剤の血中レベルが有効レベルのままであることの重要な要因である薬剤のクリアランス率に依存して変わり得、投与された脂肪負荷に基づくピークTRL V6反応に対応して最適にタイミングを合わせられるべきである。
【0056】
好適な脂肪負荷は、約30gより多い脂肪、好ましくは約50gより多いかそれに等しい脂肪、好ましくは約60g〜70gの脂肪を含む。約80gより多いかそれに等しい脂肪を含む脂肪負荷は、TRL V6反応の開始により長い時間を誘導し始め得る。
【0057】
脂肪負荷の正確な組成は重要ではなく、多くの好適な組成物が当業者の栄養学者によって容易に配合され得ることは理解されるだろう。好適な脂肪負荷配合物は、所望の研究に適するようにおよび/または患者母集団の好みにしたがって合わせられ得る。重要な要因は、十分な脂肪含有量および過剰な全体のカロリー含有量が、短い期間内に提供されて、試験医薬品の非存在下でのTRL V6濃度の測定可能な上昇を生じさせることである。
【0058】
脂肪負荷は、多くの好適な形態、例えば、調理された食事、包装された食事、スナックバー(snack bar)のような1回分の食料品、包装された飲料または粉末の飲料ミックスのような1回分の液体組成物、あるいは経口の錠剤またはカプセル剤のいずれかをとり得る。脂肪負荷として機能し得る好適な組成物の例は以下の通りである。
【0059】
脂肪負荷の例1:
【表3】

【0060】
脂肪負荷の例2:
【表4】

【0061】
脂肪負荷の例3:飲料:所望される量の脂肪を提供するための、全乳またはクリームあるいはそれらの混合物の容量。例えば、約150mL〜約180mLのホイッピングクリーム。美味しさを改善するための香味剤が加えられ得る。
【0062】
TRL V6濃度または粒子数の測定
TRL V6反応は、任意の好適な様式で測定されることができる。TRL V6濃度または粒子数を選択的に測定するための1つの現在知られている方法は、血漿サンプルをNMR分光法によって、その後デコンボリューション分析によって、全NMRシグナルに対する種々のリポタンパク質サブタイプの相対的な寄与を分離する。1つのそのようなデコンボリューション方法は、NMR LipoProfile(登録商標)、NMR LipoProfile(登録商標)−II、および/またはNMR LipoProfile(登録商標)IIIの、LipoScience,Inc.,Raleigh,North Carolinaによって提供されるサブクラス粒子分析である。同様に、平均VLDL粒径も、NMR LipoProfile(登録商標)サブクラス粒子分析で同じように測定され得る。この分析技術の説明については、Otvosに対する米国特許第5343389号、米国特許第6617167号、米国特許第4933844号、および米国特許第7243030号を参照のこと。また、NMRの臨床分析機器の説明については、米国特許出願第2005−0222504号も参照のこと。また、Handbook of Lipoprotein Testing,Chapter 31:「Measurement of lipoprotein subclass profiles by nuclear magnetic resonance spectroscopy」,J.D.Otvos,AACC Press,Washington DC,2000,第2版,pp 609−623、およびJeyarajah EJ,Cromwell WC,Otvos JD.Lipoprotein particle analysis by nuclear magnetic resonance spectroscopy.Clin Lab Med.2006;26:847−70も参照のこと。これらの参考文献の内容は、その全文が本明細書中に引用されるように、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0063】
典型的な例として、全血サンプルを、2mL EDTA採血管中に採取し、よく混合するために数回転倒させ、氷上に置く。サンプルを、次いでおよそ3000rpmで10〜15分間4℃で遠心分離する。遠心分離が完了すると、管を氷上に置き、血漿を取り出す。血漿を、ポリプロピレン管中に入れ、分析まで4℃で保つ。サンプルは、採取の後約4日までいつでも分析され得る。サンプルを、TRL V6反応について、例えば、NMR血漿リポタンパク質分析によって、例えば、LipoScience,Inc.(Raleigh,North Carolina)によって提供されるNMR LipoProfile(登録商標)、NMR LipoProfile(登録商標)−II、またはNMR LipoProfile(登録商標)−IIIリポタンパク質試験によって分析する。
【0064】
NMRスペクトルデータを、Jeyarajahら(上述)に記載されるように分析する。リポタンパク質サブクラス濃度を、脂質質量濃度単位(mg/dLトリグリセリド単位のTRLサブクラス)で、あるいは、nmol/Lの粒子濃度単位(1リットルあたりの粒子のナノモル)で報告する。元の情報(各サブクラスのNMRシグナル振幅)を、正常な脂質組成の単離したカイロミクロン、VLDL、LDL、およびHDLサブクラス基準の化学的脂質分析およびNMR分析から得られた変換計数のセットを使用する、分析ソフトウェアによってこれらの質量濃度単位または粒子濃度単位に変換する。
【0065】
図2は、例示的なNMR分析システム7を示し、それは、TRL V6評価モジュール100を使用してTRL V6分析および/またはTRL V6測定を実行するために使用されることができる。TRL V6評価モジュール100は、シグナルプロセッサおよび/またはコントローラ11中にシステムを搭載することができ、またはサーバー、クライアント、および/または他のコンピュータ上のような異なるローカルプロセッサまたは遠隔プロセッサに部分的または全体的に存在し得る。図2を参照すると、システム7は、生体サンプルのNMR測定を行うためのNMR分光計10を含む。いくつかの実施形態において、分光計10は、NMR測定がプロトンシグナルについて400MHzで行われるように構成され;他の実施形態において、測定は、360MHzまたは別の所望の周波数で実行され得る。すなわち、所望の操作磁場強度に対応する他の周波数もまた利用され得る。典型的には、プロトンフロープローブが、サンプル温度を47+/−0.2℃に維持する温度コントローラとして設置される。分光計10の磁場均一性は、99.8% DOのサンプル上で、HDO MNRシグナルのスペクトル線幅が0.6Hz未満になるまで粗調製する(shimming)ことによって最適化されることができる。DO測定のために使用される90°RE励起パルス幅は、典型的には、約6〜7マイクロ秒である。
【0066】
図2を再度参照すると、分光計10は、デジタルシグナルプロセッサおよび/またはコントローラ11、またはシグナル処理ユニットによって制御される。プロセッサ/コントローラ11は、迅速なフーリエ変換を実施することが可能であるべきであり、この目的のために、配線で接続されたサインテーブル、ならびに配線で接続された乗算回路および除算回路を含み得る。それはまた、外部または遠隔コンピュータ13へのデータリンク12、および電子記憶ユニット15に接続する直接メモリアクセスチャンネル14も含み得る。
【0067】
プロセッサ/コントローラ11はまた、アナログからデジタルへの変換器、デジタルからアナログへの変換器、およびパルスコントロールおよびインターフェース回路16を介して、分光計の操作要素に接続するスローデバイスI/Oポートも含み得る。これらの要素は、デジタルコンピュータ11によって指示されるRF励起パルスの継続時間、周波数、および大きさを生成するRF送信器17、およびパルスを増幅し、かつそれをサンプルセル20を囲むRF送信コイル19に連結するRF電力増幅器18を含む。超電動磁石21によって生成された9.4 Tesla偏光磁場の存在下で励起されたサンプルによって生成されたNMRシグナルは、コイル22によって受信され、RF受信器23に適用される。増幅およびフィルター処理されたNMRシグナルは、24で復調され、生じた直交シグナルはインターフェース回路16に適用され、そこではそれらはデジタル化されデジタルコンピュータ11を介してディスク記憶装置15中のファイルに入力される。システム7は、シグナルプロセッサ/コントローラ11および/または全体的にまたは部分的に、オンサイトまたは遠隔であり得る異なるコンピュータ、サーバー、またはクライアント上の別のプロセッサに配置されたデコンボリューションモジュール含むことができる。好適な臨床NMR分析機器のさらなる説明についてはUS2005/0222504を参照のこと(その内容は、その全文が本明細書中に引用されるように、参照によって本明細書中に組み込まれる。)。
【0068】
NMRデータが測定セル20においてサンプルから獲得された後、シグナル処理は、化学シフトスペクトルのデジタル表示であるデータファイルを生成し、それは、電子的アーカイバルメディア記録記憶装置25中に記憶され得る。パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、または他のコンピュータであり得るコンピュータ13は、化学シフトスペクトルを処理し、プリンター26に出力されるか、または電子的に記憶され、そして所望の電子メールアドレスまたはURLに送られる患者報告書を提供することができる。当業者は、表示装置のような他の出力デバイスもまた、結果を提供するために利用され得ることを認識するだろう。
【0069】
当業者には、コンピュータ13およびその記憶装置25によって実施される機能はまた、分光計のデジタルシグナルプロセッサ/コントローラ11によって実施される機能中に、またはNMR分光計10および/またはプロセッサ11と通信するさらなる回路に組み込まれ得ることはあきらかだろう。当業者に周知であるように、他のインターフェースおよび出力デバイスもまた利用され得る。
【0070】
図3および図4は、TRL V6評価モジュール100a、100bの例を示し、それらは、システム7と通信し、システム7を搭載し、そして/またはシステム7またはTRL V6データを提供できる他の測定システムによって測定されたTRL V6データを分析することができる。示されるように、図3および図4は、本発明の実施形態に従うシステム、方法、および/またはコンピュータプログラム製品として包含されるかまたは提供されることができる、データ処理システムの例示的実施形態を示す。プロセッサ410(任意選択的に、図2のプロセッサ11および/またはコンピュータ13であるか、またはそれらと通信することができる)は、アドレス/データバス448を介してメモリ414と通信する。プロセッサ410は、いかなる市販マイクロプロセッサまたはカスタムマイクロプロセッサでもあることができる。メモリ414は、データ処理システム405の機能を実行するために使用されるソフトウェアおよびデータを含有するメモリデバイスの階層の代表である。メモリ414は、限定されないが、以下のタイプのデバイスを含むことができる:キャッシュメモリ、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、SRAM、およびDRAM。
【0071】
図3および図4に示されるように、メモリ414は、データ処理システム405において使用されるいくつかのカテゴリーのソフトウェアおよびデータ含み得る:操作システム452;アプリケーションプログラム454;入力/出力(I/O)デバイスドライバ458;TRL V6減量反応者予測モジュール100a(図3)および/またはTRL V6ベース研究用減量薬物評価モジュール100b(図4);およびデータ456。
【0072】
データ456は、(図2に示されるシステム7のような)データまたはシグナル獲得システム420から得られ得る、TRL NMR サブクラスシグナル(構成および/または複合スペクトル線形)データ462を含み得る。各患者または動物モデルの生体サンプルについて、データは、TRL V6の固有データ値、またはTRL V6と他の亜画分(例えば、カイロミクロンおよび/またはTRL V5)のデータを含むことができる。当業者によって理解されるように、操作システム452は、例えば、内蔵されたデータ処理システムのための、International Business Machines Corporation(Armonk,NY)製のOS/2、AIX、またはOS/390、Microsoft Corporation(Redmond,WA)製のWindows(登録商標) CE、Windows(登録商標) NT、Windows(登録商標) 95、Windows(登録商標) 98、Windows(登録商標) 2000、またはWindows(登録商標) XP、PalmSource,Inc.(Sunnyvale,CA)製のPalm OS、Apple Computer,Inc製のMac OS、UNIX(登録商標)、FreeBSD、またはLinux、私有の操作システムまたは専用の操作システムのようなデータ処理システムでの使用に好適ないかなる操作システムであっても良い。
【0073】
I/Oデバイスドライバ458は、典型的には、アプリケーションプログラム454によって操作システム452を介してアクセスされるソフトウェアルーチンを含んで、I/Oデータポート、データ記憶装置456、および特定のメモリ414コンポーネントおよび/またはデータ獲得システム420のようなデバイスと通信する。アプリケーションプログラム454は、データ処理システム405の種々の特徴を実施するプログラムの実例であり、好ましくは、本発明の実施形態による操作を支持する少なくとも1つのアプリケーションを含む。最終的には、データ454は、アプリケーションプログラム454、操作システム452、I/Oデバイスドライバ458、およびメモリ414中に存在し得る他のソフトウェアプログラムによって使用される静的および動的データを表す。
【0074】
本発明の実施形態は、例えば、図3および図4のアプリケーションプログラムであるモジュール100a、100bに関して例示的であるが、当業者によって理解されるように、本発明の実施形態の教示から利益を受ける限りは、他の構成もまた利用可能であり得る。例えば、モジュール100a、100bはまた、操作システム452、I/Oデバイスドライバ458、またはデータ処理システム405の他のそのような論理部中に内蔵され得る。したがって、本発明の実施形態は、図3/4の構成に限定されるとみなされるべきではなく、それらは、本明細書中に記載される操作を実行することができるいかなる構成も包含することが意図される。特定の実施形態において、モジュール100aおよび/または100bは、遠隔コントロールシステム(ローカルまたはオフサイト)と通信するためのコンピュータプログラムコードを含み得る。
【0075】
本発明の方法、システム、およびコンピュータプログラム製品が、TRL V6反応またはVLDL反応を測定する手段によって限定されないことは理解されるだろう。そのようなサブタイプを区別する測定は将来発見されるだろうし、また、従来の方法がそのような測定を可能にするために変更され得るからである。例えば、もしTRL V6特異的抗原が公知になり、かつそのような抗体に対して特異的抗体が開発されたときは、TRL V6反応を免疫アッセイ技術によって測定することが可能になり得る。また、TRL V6特異的タンパク質または他のTRL V6特異的成分を識別および定量化することも可能になり得、それによってTRL V6反応を測定するための新しい方法が可能になり得るか、あるいは超遠心分離および浮遊評価、または他の従来の方法が、好適なTRL V6情報を提供するために変更され得る。そのような方法は、本明細書中に記載されるNMR技術を使用する方法と等価であると当業者によって理解されるだろう。
【0076】
図5は、例示的な患者報告書200を示す。示されるように、報告書200は、患者の氏名201および個人データ205(例えば、検体採取日、体重、脂肪負荷投与および薬物投与の時間)を含むことができる。報告書200は、患者からの第二生体サンプルの採取と併せて投与された減量用医薬品(WLPA)の名前も含むことができる(ブロック210)。報告書200は、任意選択的に、2つの異なるTRL V6測定または評価を提供することができ、患者の正常なTRL V6反応の指標であるサンプルの測定または評価と、WLPAと併せて行われる測定または評価である(ブロック215、225)。報告書200は、WLPAと関連する陽性TRL V6反応が存在するかどうかを示すことができる(ブロック230)。報告書200は、その患者がそのWLPAを進めるか、またはそのWLPAがこの患者にとって有益でないようであるという提案を含むことができる(ブロック250)。提案は、TRL V6の減少率(あれば)を示すことができ(示されていない)、少なくとも80%である、減少に反応するであろうTRL V6についての関連する統計値を提供し得る。これは、患者が境界例の反応者である(例えば、60%〜75%の減少)場合に、臨床医がWLPAを進めることを可能にし得る。
【0077】
本発明の実施形態は、以下の非限定的な実施例においてより詳細に説明される。
【実施例】
【0078】
実施例1:交差治療標的ラット研究
試験中の減量用医薬品がラットにおけるTRL V6濃度を減少させる能力を、既知の強力かつ選択的5−HT2C受容体アゴニスト、既知の強力かつ選択的CB−1受容体アンタゴニスト/逆アゴニスト、および強力なSNDRI(シブトラミン)を含む、異なる機構の作用を標的にする3つの化合物で示す。3つの化合物の各々は、ラットにおいて減量を誘導することが知られており、そのため、試験中の減量医薬品の減量を誘導する能力と相関するTRL V6濃度の減少のバイオマーカーである。逆に、ラットまたは過体重かつ肥満のヒト被験体における減量の誘導に効果が無いことが知られている(Malcolm Rら、Int.J.Obes.1985;9(5):347−53.)アヘン剤アンタゴニスト(ナルトレキソン)は、ラットにおいてTRL V6濃度を減少しないことが示され、やはり試験中の減量医薬品の減量を誘導する能力に対するTRL V6濃度の減少のバイオマーカーに相関する。
【0079】
高脂肪食で飼育されたDIO−LEラットに、賦形剤投与または試験化合物の急性投与のいずれかを施す。投与後の特定の時点に、動物を犠牲にし、EDTAを含有する血液サンプル管に血液を採取し、本質的に上記に記載されるように処理する。サンプルを、全ての粒子サブタイプの報告(特に、TRL V6の濃度または粒子数)と共に、NMR LipoProfile(登録商標)リポタンパク質サブ粒子試験によって分析する。
【0080】
10mg/kg用量の5−HT2Cアゴニストは、TRL V6の循環濃度を、投薬の2時間後に約90%、投薬の約8時間後に約80%減少させる。TRL V6血漿濃度およびVLDL平均粒径は、投薬の約18時間後までに基線濃度に戻る。
【0081】
0.3mg/kg用量のCB−1アンタゴニストは、TRL V6の循環濃度およびVLDL粒径を、投薬の約1時間後および投薬の約3時間後に約75%減少させる。反応は、投薬の5時間後に、約50%まで減少し続ける。TRL V6血漿濃度は、投薬の約18時間後までに基線濃度に戻る。
【0082】
3mg/kg用量のSNDRIは、TRL V6の循環濃度およびVLDL粒径を、投薬の約2時間後および投薬の約5時間後に約78%減少させる。TRL V6血漿濃度は、投薬の約18時間後までに基線濃度に戻る。
【0083】
それに対し、10mg/kgの経口投与された用量のナルトレキソンは、循環TRL V6レベルに対して最小の効果を有した。ナルトレキソンは、TRL V6レベルを、投薬の2時間後に30%だけ減少させた。TRL V6レベルは、投薬の5時間には基線レベルに戻り、投薬の18時間後に変化していなかった。
【0084】
【表5】

【0085】
実施例2:SNDRI(シブトラミン)でのヒト研究
ヒトにおいて減量を誘導できることが知られているSNDRI(シブトラミン)を、それが、単純盲検のクロスオーバー設計を利用し、シブトラミンおよび偽薬を含み、高グリセリド血症かつ過体重および肥満であるが、それ以外は健康な被験体における、予備的なバイオマーカー研究においてヒトのTRL V6反応血漿濃度およびV−TRL反応を減少させる能力と相関するか試験する。
【0086】
それぞれ6人の被験体を含有する3つのコホートに、研究の間3つの期間を経験させる。被験体を一晩絶食させ、2つの空腹時採血を入手し、その後、およそ07:00時に朝食をとらせる。偽薬またはシブトラミンを、および10:00時に投与する。血液サンプリングを、朝食の開始のおよそ1時間後に開始し、7時間の間は1時間間隔で、次いで、次の10時間の間は2時間ごとに続ける。脂肪負荷の例2に従う昼食を、および12:00時に供する(および60g〜65gの脂肪)。脂肪負荷投与の12時間後までは他の食物を許可しない。被験体を、最後の血液サンプリングの後に、研究の第2試験期間に戻る前の4〜8日間の洗い流し期間の間解放する。洗い流し期間の後に、被験体を、再度一晩絶食させる。次いで、各被験体がシブトラミンまたは偽薬の交互処置を受けるようクロスオーバーする以外は、研究の第1の試験期間における手順と同じように手順を繰り返す。血液サンプルを、本質的に実施例1に記載されるように採取し、処理し、そして分析する。
【0087】
TRL V6反応およびV−TRL反応を、脂肪負荷の5時間〜11時間の期間に観察する。脂肪負荷投与の5時間〜11時間のAUC(反応曲線下面積)を計算し、混合効果モデル分析を使用して統計学的に分析して、シブトラミン処置群と偽薬処置群を比較する。シブトラミン処置群は、平均して、約28%のTRL V6反応の統計学的に有意な減少を示すが、TRL V1、V2、V3、V4、またはV5サブタイプのいずれかの血漿濃度の有意な変化は示さない。平均V−TRL反応の統計学的に有意な減少もまた観察されるが、この変化の大きさは、TRL V6反応の変化より小さいことが見出される。大半の被験体において、シブトラミンの投与は、彼らの偽薬処置反応と比較してTRL V6反応およびV−TRL反応の大きさを減少した。したがって、TRL V6反応およびV−TRL反応の減少は、ヒトにおいて減量を誘導するSNDRIの既知の能力と相関するSNDRIによって誘導された。
【0088】
実施例3:5−HT2C受容体アゴニストでのヒト研究
ラットおよびサルにおいて減量を誘導することが知られており、かつヒトにおいて減量を誘導すると考えられる5−HT2C受容体アゴニストを、それが、過体重または肥満であるが、それ以外は健康な被験体における、単一中心の、入院患者/外来患者の、二重盲検(被験体および研究者について盲検)の、無作為化された、偽薬コントロールされた、単回投与の、用量漸増研究において、予備的なバイオマーカー研究においてTRL V6反応を減少させる能力と相関するか試験する。
【0089】
各コホートの被験体は、4つの投薬期間に参加する(どの被験体も偽薬を2回受けないことを確実にする無作為化コードに従う、活性薬物での3つの期間と偽薬での1つの期間)。被験体を一晩絶食させ、投薬前の血液採取を得る。次いで、被験体に化合物または偽薬の経口投薬を与える。投薬の2時間後に、経口の上記脂肪負荷の例2に従う脂肪負荷を被験体に投与する。0時間〜12時間の投薬後の期間にわたって、一定の間隔で、血液サンプルを採取および処理し、本質的に上記の実施例2のように分析する。TRL V6反応についてのAUCを、0時間〜12時間の投薬後のサンプリング期間にわたって推量して、化合物または偽薬の存在下での経口脂肪負荷に対するTRL V6反応を評価する。
【0090】
化合物処置群と偽薬処置群についてTRL V6反応を統計学的に比較するために混合効果モデルを使用して、化合物処置群についてTRL V6反応の統計学的に有意な減少を、高脂肪食に反応する偽薬関連反応と比較して確認する。TRL V6反応と化合物の血漿曝露との関係は、より高い血漿薬物濃度でのTRL V6反応の大きさの急な減少を有する非線形である。したがって、5−HT2Cアゴニストによって誘導されたTRL V6反応およびVLDL反応は、化合物のラットにおいて減量を誘導する既知の能力と相関する。
【0091】
上述は、本発明の例示であり、開示された特定の実施形態に限定されるものとしてみなされるべきではない。本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、多くの変更が、本発明の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなく例示的な実施形態において可能であることを容易に理解するだろう。したがって、全てのそのような変更は、特許請求の範囲において規定される本発明の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、手段+機能の節は、使用される場合、挙げられる機能を実施するように本明細書中に記載される構造、およびその等価な構造を含む構造的等価物もまたカバーすることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−HT2C受容体アゴニスト、カンナビノイド−1受容体(CB−1)アンタゴニスト、リン脂質ジエステラーゼ−10(PDE−10)阻害剤、オレキシン−1アンタゴニスト、セロトニン−ノルアドレナリン−ドーパミン三重再取り込み阻害剤(SNDRI)、リパーゼ阻害剤、および/または脂質吸収受容体阻害剤からなる群から選択される医薬品によるヒトにおける肥満症または過体重のための処置に対する反応性を予測する方法であって、前記ヒトにおいて、前記医薬品の非存在下でのTRL V6反応と比較して、前記医薬品の存在下での脂肪負荷に対するTRL V6反応の減少が存在するかどうかを決定することを含む、方法。
【請求項2】
肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者を処置するための減量用医薬品の適合性を決定するための方法であって、以下の工程:
1)前記患者に第一脂肪負荷を施すこと;
2)前記第一脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応を測定すること;
3)前記患者に第二脂肪負荷を施すとともに、減量用医薬品を前記患者に投与すること;
4)前記第二脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応を測定すること;
5)前記第一脂肪負荷に対するTRL V6反応と比較して、前記第二脂肪負荷に対するTRL V6反応の減少が存在するかどうかを決定すること;
6)前記TRL V6反応の相対的減少に基づいて、前記減量用医薬品の適合性を決定すること
を含み、
ここで、TRL V6反応の有意な減少は前記減量用医薬品が前記患者を処置するのに好適であることを示し、かつ、TRL V6反応の有意な減少の欠如は前記減量用医薬品が前記患者の処置に好適ではないことを示す、方法。
【請求項3】
肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者を処置するための減量用医薬品の適合性を決定するための方法であって、以下の工程:
1)前記患者に脂肪負荷を施すとともに、前記減量用医薬品を前記患者に投与すること;
2)前記脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応を測定すること;
3)前記脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応を、前記減量用医薬品の非存在下での前記脂肪負荷に対する標準的なTRL V6反応と比較すること;
4)前記比較する工程に基づいて、前記減量用医薬品の適合性を決定すること
を含み、
ここで、前記標準的なTRL V6反応と比較した前記患者のTRL V6反応の有意な減少は前記減量用医薬品が前記患者を処置するのに好適であることを示し、かつ、前記標準的なTRL V6反応と比較した前記患者のTRL V6反応の有意な減少の欠如は前記減量用医薬品が前記患者の処置に好適ではないことを示す、方法。
【請求項4】
肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者が、所定の減量用医薬品での処置に対して反応する患者であるかどうかを予測するための方法であって、以下の工程:
1)前記患者に第一脂肪負荷を施すこと;
2)前記第一脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応を測定すること;
3)前記患者に第二脂肪負荷を施すとともに、医薬品を前記患者に投与すること;
4)前記第二脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応を測定すること;
5)前記第一脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応と比較して、前記第二脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応の減少が存在するかどうかを決定すること;および
6)前記決定する工程に基づいて、前記患者が反応する患者であるかどうかを予測すること
を含み、
ここで、TRL V6反応の有意な減少は、前記患者が反応する患者である可能性が高いことを予測する、方法。
【請求項5】
肥満症および/または過体重のための処置を必要とする患者が、所定の減量用医薬品での処置に対して反応する患者であるかどうかを予測するための方法であって、以下の工程:
1)前記患者に脂肪負荷を施すとともに、前記減量用医薬品を前記患者に投与すること;
2)前記脂肪負荷に対する前記患者のTRL V6反応を測定すること;
3)前記脂肪負荷に対する前記患者のV6反応を、前記減量用医薬品の非存在下での前記脂肪負荷に対する標準的なV6反応と比較すること;および
4)前記比較する工程に基づいて、前記患者が前記減量用医薬品での処置に対して反応する患者であるかどうかを予測すること
を含み、
ここで、前記標準的なV6反応と比較した前記患者のV6反応の有意な減少は、前記患者が反応する患者である可能性が高いことを予測する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−508218(P2011−508218A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539782(P2010−539782)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/087367
【国際公開番号】WO2009/085917
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】