説明

肥満防止剤及びそれを含有する飲食品

【課題】コラーゲンペプチドを有効成分として含有する肥満防止剤及びそれを含有する飲食品を見出し、更には、運動負荷と組み合わせて摂取することにより肥満防止作用が顕著に増大すると共に脂肪代謝促進効果をも有することを見出し、かかる肥満防止剤及びそれを含有する飲食品により、安全で且つ効果の優れた肥満防止効果を有すると共に脂質代謝促進効果を有する肥満防止剤及びそれを含有する飲食品を提供する。
【解決手段】肥満防止剤として、コラーゲンペプチドを有効成分とし、また運動負荷と組み合わせて使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肥満防止を目的とした肥満防止剤及びそれを含有する飲食品に関し、特にコラーゲンペプチドを有効成分として含有する肥満防止剤及びそれを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪の過剰摂取による内臓脂肪の蓄積と運動不足は、これが原因で様々な生活習慣病を引き起こす。内臓脂肪の蓄積と運動不足に起因する主な生活習慣病としては、肥満・糖尿病・動脈硬化・高脂血症などが挙げられ、健康を著しく損なうことになり得る。脂質の代謝を促進し、内臓脂肪を減少させ、これらの生活習慣病を予防して改善しようとするものでは、緑茶抽出物、アミノ酸混合物など幾つかの素材が知られているが、より効果の高い素材が求められている。
【0003】
一方で、コラーゲンは哺乳類にもっとも多量に存在するタンパク質で、皮膚や骨、腱、軟骨、血管、歯の主要な繊維性要素である。コラーゲンは古くから摂取されており、骨関節炎の症状緩和(非特許文献1参照)、美容効果(非特許文献2参照)などの効果が報告されている。
【0004】
また、コラーゲンの主要アミノ酸である、微生物由来のヒドロキシプロリンおよびその誘導体が高トリグリセリド血症および高遊離脂肪酸血症を改善させる脂質代謝改善剤が報告されている(特許文献1)。更に、蛋白質と水溶性食物繊維及び/またはゼラチンと塩基性アミノ酸及び/または塩基性ペプチドよりなる抗肥満組成物が報告されている(特許文献2)。ここでは蛋白質として、コラーゲン、コラーゲン水解物が記載され、塩基性ペプチドとして分子量500〜4000程度のものが例示されている。更に、コラーゲン蛋白(平均分子量20000)とゼラチンと塩基性ペプチド(平均分子量1800)を加えたものがゲル強度を向上させる試験例と、市販飼料と大豆蛋白(平均分子量50000)とカラギーナンとアルギニンによるラットを用いた抗肥満試験例が記載されている。更に、実施例としてコラーゲン加水分解物80%とゼラチン10%と塩基性ペプチド(分子量1800)と塩化カリウム3%の組成物が記載されている。蛋白質と水溶性食物繊維と塩基性アミノ酸等からなる混合組成物によりゲルの強度を向上させ、胃内でゲル状態を安定維持させることにより消化吸収を抑制し肥満防止に役立つことが記載されている。更に、ラットを用いた試験で、ゼラチンが血清トリグリセライド、コレステロールの改善効果を示したことが報告されている(非特許文献3)。しかしながら、これらの文献はいずれもコラーゲンペプチド自体の抗肥満活性、脂質代謝改善活性は十分には検討されていない。また、肥満の形態、原因は多様であり薬剤に対する反応の個人差も大きいため、新規で安全で効果的な抗肥満剤が常に求められており、脂質代謝異常の形態、原因もまた多様であり薬剤に対する個人差も大きいため新規で安全で効果的な代謝改善剤が常に求められている。
【非特許文献1】Biomed Pharmacother,Vol.50,p.24−28,1996
【非特許文献2】Cosmet Toiletries,Vol.103,p.77−80,1988
【非特許文献3】Nutriton Research,Vol.22,No.3,p.297−311,2002
【特許文献1】再公表特許第WO2004/085389号公報
【特許文献2】特開2000−1440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肥満防止を目的とした肥満防止剤及びそれを含有する飲食品を提供し、特にコラーゲンペプチドを有効成分として含有する肥満防止剤及びそれを含有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、コラーゲンペプチドに顕著な肥満防止作用があることを見出した。また、運動負荷状態において使用することにより肥満防止作用が顕著に増大することを見出した。すなわち本発明は、主に以下の構成を有する。
(1)コラーゲンペプチドを有効成分として含有することを特徴とする肥満防止剤。
(2)上記(1)に記載の肥満防止剤が運動負荷と組み合せて摂取するものであることを特徴とする肥満防止剤。
(3)上記(1)または(2)に記載の肥満防止剤を含有することを特徴とする飲食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、コラーゲンペプチドを有効成分として含有することを特徴とする肥満防止剤、及び該肥満防止剤を含有する飲食品を提供することができ、更なる別の有効成分等組み合わせることなく、これを経口摂取等することにより、また軽度の運動負荷状態で摂取することにより、特に体重減少効果と共に内臓脂肪の蓄積が顕著に抑制され、脂質代謝にも影響する容易で安全で且つ効果の優れた肥満防止効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明に関わるコラーゲンペプチドは、市販のもの、あるいは動物の骨、皮等を加熱して抽出したコラーゲンを用いて、酵素処理により分解、低分子化したものを用いることができる。なおコラーゲンペプチドは、コラーゲンを低分子化したものであり、低分子化されていないコラーゲンおよびコラーゲンを加熱、変性したゼラチンと比較して飲食品等に使用される酸性多糖類やタンニン類との反応、沈殿、白濁を生じにくく、また使用前に水に溶解させた際にゲル化を生じることなく大量摂取が可能である。コラーゲンペプチドは、ゼラチンを酵素や酸で加水分解して得られたもので、本発明では、市販品を含むいずれの分子量のものも使用できるが、特に豚由来の平均分子量500〜20000程度のコラーゲンペプチドが好ましい。より好ましくは、平均分子量1000〜10000の範囲のコラーゲンペプチドである。
【0010】
本発明に関わる肥満防止剤を製造するには、上記の方法で製造したコラーゲンペプチドを用いることができ、常法に従って公知の医薬用無毒性担体と組み合わせて製剤化することができる。本発明に関わる肥満防止剤は、種々の剤型での投与が可能であり、例えば、経口投与剤としては錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳化剤等の液剤、凍結乾燥剤等があげられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、でんぷん、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルでんぷん、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。本発明に関わる肥満防止剤において、肥満防止剤成分の投与量は、患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択、決定されるが、例えば、一日当たり0.01〜2g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。より好ましい投与量の範囲は、一日当たり0.05〜0.5g/kg体重程度である。
【0011】
また、コラーゲンペプチドは、毒性を有することは報告されていないことから、肥満防止を目的とした飲食品として摂取することもできる。コラーゲンペプチドは、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品等として位置付けることができる。機能性食品としては、例えば、コラーゲンペプチドに適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した状態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。この飲食品は、そのまま食用に供してもよく、また種々の食品(例えばハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、粉乳、菓子など)に添加して使用したり、水、酒類、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲物に添加して使用してもよい。コラーゲンペプチドをこれらの飲食品に対して配合する量は、特に制限されないが、好ましくは1〜95重量%が効能を期待する上で好ましい。かかる食品の形態における本発明のコラーゲンペプチドの摂取量は、年齢、体重、症状、疾患の程度、食品の形態等により適宜選択・決定されるが、例えば、一日当たり0.01〜2g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与してもよい。より好ましい投与量の範囲は、一日当たり0.05〜0.5g/kg体重程度である。
【0012】
さらに、本発明に関わる肥満防止剤並びにそれを含有する飲食品を摂取するにあたり、運動負荷を与えた状態で摂取した場合に、肥満効果が顕著に増大する。すなわち、肥満防止剤およびその飲食品の摂取と運動負荷とを組み合わせると、体重減少効果が顕著に示されると共に内臓脂肪組織重量の低下効果が顕著に示された。この場合運動強度は軽度の負荷であり、例えば体重に対して4%の重りを負荷して数十分の遊泳運動を行う程度のものである。
【0013】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
コラーゲンペプチド経口投与と運動負荷による体重減少効果
以下に示した条件についてコラーゲンペプチドの体重減少効果について実験を行った。
【0015】
(試料)
豚皮由来のコラーゲンペプチド平均分子量5000(分子量分布500〜20000)の粉末を使用した。
【0016】
(使用動物)
4週齢、雄のddYマウス(n=10)を餌、水を自由摂取して1週間予備飼育した。
【0017】
(試料の投与方法)
1週間の予備飼育後、以下のように6群に群別した。
コントロール群
コラーゲンペプチド1083mg/kg投与群
コラーゲンペプチド2166mg/kg投与群
運動負荷コントロール群
運動負荷+コラーゲンペプチド1083mg/kg投与群
運動負荷+コラーゲンペプチド2166mg/kg投与群
【0018】
ここで、コラーゲンペプチド投与群は、コラーゲンペプチド1083mg/kgおよび2166mg/kgをそれぞれ蒸留水0.3mlに溶解して調製し、週5日1日1回ゾンデにて強制経口投与を行った。コントロール群、運動負荷コントロール群には蒸留水0.3mlを経口投与した。
【0019】
(運動負荷方法)
マウスの運動負荷には尻尾に体重の4%のおもりを負荷した遊泳運動を用いた。1週間目の遊泳運動は15分間、30分間、45分間に分けて行い、2週目以降は、週3回45分間の遊泳運動を5週間で、計6週間運動負荷を行った。縦24cm、横15cm、高さ15cmの水槽を用い、水深は20cm、水温は28±2℃として遊泳運動を行った。
【0020】
以上の条件において飼育した上記各6群のマウスに対して、1週間ごとに体重を測定し6週間までの測定結果を図1に示す。数値は平均値±標準誤差(g/g体重)であり、カッコ内に上記各6群を示す符号を説明したものである。また、図中の*、**は、コラーゲンペプチド投与群のコントロール群に対する有意差を示し(studentのT-TEST)、*はp<0.05、**はp<0.01を表す。更に図中の#は、コラーゲンペプチド投与群の運動負荷コントロール群に対する有意差を示し、#はp<0.05を表す。
【0021】
図1から、2週目において、運動負荷+コラーゲンペプチド2166mg/kg投与群がコントロール群および運動負荷コントロール群に対して、また5週目において、コントロール群に対して、体重が有意に低い値を示した。このことから、コラーゲンペプチドは、体重減少効果があることが示され、運動負荷とコラーゲンペプチドを組み合わせて摂取することでより効果が顕著に増大することが示された。また、コラーゲンペプチド1083mg/kgよりもコラーゲンペプチド2166mg/kg投与群の方がより効果が明確に示された。
【実施例2】
【0022】
コラーゲンペプチド経口投与と運動負荷による精巣周囲脂肪組織重量の低下効果
実施例1と同様な条件においてマウスを飼育し、6週間後に解剖した各群における精巣周囲脂肪組織重量の測定を行った。その結果を図2に示す。数値は平均値±標準誤差(g/g体重)であり、図中の***は、コラーゲンペプチド投与群のコントロール群に対する有意差を示し(studentのT-TEST)、***はp<0.005を表す。図中の#は、コラーゲンペプチド投与群の運動負荷コントロール群に対する有意差を示し、#はp<0.005を表す。また、図2で示した測定値を以下の表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
図2および表1から、コラーゲンペプチド投与群は、コントロール群よりも精巣周囲脂肪組織重量が低い値を示す傾向があり、特に、運動負荷+コラーゲンペプチド2166mg/kg投与群は、コントロール群および運動負荷コントロール群に対して、有意に精巣周囲脂肪組織重量が低い値を示した。このことから、コラーゲンペプチドは、精巣周囲脂肪組織重量の低下効果があることが示され、すなわち体内脂肪蓄積抑制効果を有し、運動負荷とコラーゲンペプチドを組み合わせて摂取することでその効果がより顕著に増大することが示された。
【実施例3】
【0025】
コラーゲンペプチド経口投与と運動負荷による血漿中遊離脂肪酸濃度の低下効果
実施例1と同様な条件においてマウスを飼育し、6週間後に各群における血漿中遊離脂肪酸濃度の測定を行った。その結果を図3に示す。数値は平均値±標準誤差(mEq/l)であり、図中の*は、コラーゲンペプチド投与群のコントロール群に対する有意差を示し(studentのT-TEST)、p<0.05を表す。また、図3で示した測定値を以下の表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
図3および表2から、運動負荷+コラーゲンペプチド2166mg/kg投与群は、コントロール群に対して、有意に血漿中遊離脂肪酸濃度が低い値を示した。このことから、運動負荷とコラーゲンペプチドを組み合わせて摂取することにより、肥満防止効果のみならず、脂質代謝に影響を及ぼすことも示された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、コラーゲンペプチドを含有することを特徴とする肥満防止剤及びそれを含有する飲食品を提供することが可能となり、コラーゲンペプチドの新たな用途が提供される。また、コラーゲンペプチドを運動負荷と組み合わせて摂取することにより、より優れた肥満防止効果および脂肪代謝促進効果が得られるため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】運動負荷とコラーゲンペプチド投与による体重変化を示す図である。
【図2】運動負荷とコラーゲンペプチド投与による精巣周囲脂肪組織重量の変化を示す図である。
【図3】運動負荷とコラーゲンペプチド投与による血漿中遊離脂肪酸濃度の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンペプチドを有効成分として含有することを特徴とする肥満防止剤。
【請求項2】
豚由来のコラーゲンペプチドであることを特徴とする請求項1記載の肥満防止剤。
【請求項3】
平均分子量500〜20000のコラーゲンペプチドであることを特徴とする請求項1または2記載の肥満防止剤。
【請求項4】
経口投与にて摂取することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の肥満防止剤。
【請求項5】
一日当たりの投与量が0.01〜2g/kg体重であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の肥満防止剤。
【請求項6】
運動負荷と組み合せて摂取するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の肥満防止剤。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の肥満防止剤を含有する飲食品。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−102233(P2009−102233A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273202(P2007−273202)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第61回日本栄養・食糧学会大会「講演要旨集」日本栄養・食糧学会創立60周年記念式典、日本栄養・食糧学会大会 会頭 小川 正、平成19年4月20日発行 第61回日本栄養・食糧学会大会 日本栄養・食糧学会創立60周年記念式典、社団法人日本栄養・食糧学会、平成19年5月17日〜20日開催
【出願人】(307013857)株式会社ロッテ (101)
【Fターム(参考)】